(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973173
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】熱処理装置及び熱処理装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20160809BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20160809BHJP
C23C 16/46 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
H01L21/31 E
H01L21/205
C23C16/46
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-11203(P2012-11203)
(22)【出願日】2012年1月23日
(65)【公開番号】特開2013-149916(P2013-149916A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 五郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 孝規
(72)【発明者】
【氏名】王 文凌
(72)【発明者】
【氏名】吉井 弘治
(72)【発明者】
【氏名】山口 達也
【審査官】
小川 将之
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0026460(US,A1)
【文献】
米国特許第06207937(US,B1)
【文献】
特表2002−515648(JP,A)
【文献】
特開2002−334844(JP,A)
【文献】
特開2002−297245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/205
C23C 16/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体を収納する処理室と、
前記処理室に収納された被処理体を加熱する加熱部と、
前記処理室内の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部によって検出された温度が、外乱によって、予め設定された第1の設定温度より低くなった場合に、前記温度検出部によって検出された温度と等しい第2の設定温度を設定し、かつ、
前記第2の設定温度と前記第1の設定温度との間にある第3の設定温度と、前記温度検出部が検出した温度と、が等しくなるように前記加熱部を制御し、かつ
前記第3の設定温度と前記温度検出部が検出した温度とが等しくなった後に、前記第1の設定温度と、前記温度検出部が検出した温度と、が等しくなるように前記加熱部を制御する、制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記温度検出部によって検出された温度が、外乱によって、予め設定された前記第1の設定温度より低くなった場合であって、前記温度検出部が検出した温度の時間に対する変化率が所定の閾値を超えたときに、前記第2の設定温度を設定する、
熱処理装置。
【請求項2】
被処理体を収納する処理室と、
前記処理室に収納された被処理体を加熱する加熱部と、
前記処理室内の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部によって検出された温度が、外乱によって、予め設定された第1の設定温度より低くなった場合に、前記温度検出部によって検出された温度と等しい第2の設定温度を設定し、かつ、
前記第2の設定温度と前記第1の設定温度との間にある第3の設定温度と、前記温度検出部が検出した温度と、が等しくなるように前記加熱部を制御し、かつ
前記第3の設定温度と前記温度検出部が検出した温度とが等しくなった後に、前記第1の設定温度と、前記温度検出部が検出した温度と、が等しくなるように前記加熱部を制御する、制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記温度検出部によって検出された温度が、外乱によって、予め設定された前記第1の設定温度より低くなった場合であって、前記温度検出部が検出した温度の時間に対する変化率が所定の閾値を超えたとき、かつ、前記温度検出部によって検出された温度が、外乱によって、前記第1の設定温度よりも連続して低くなる時間が、所定の閾値を超えたときに、前記第2の設定温度を設定する、
熱処理装置。
【請求項3】
被処理体を収納する処理室と、
前記処理室に収納された被処理体を加熱する加熱部と、
前記処理室内の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部によって検出された温度が、外乱によって、予め設定された第1の設定温度より低くなった場合に、前記温度検出部によって検出された温度と等しい第2の設定温度を設定し、かつ、
前記第2の設定温度と前記第1の設定温度との間にある第3の設定温度と、前記温度検出部が検出した温度と、が等しくなるように前記加熱部を制御し、かつ
前記第3の設定温度と前記温度検出部が検出した温度とが等しくなった後に、前記第1の設定温度と、前記温度検出部が検出した温度と、が等しくなるように前記加熱部を制御する、制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記温度検出部によって検出された温度が、外乱によって、予め設定された前記第1の設定温度より低くなった場合であって、前記温度検出部が検出した温度の時間に対する変化率が所定の閾値を超えたとき、かつ、前記温度検出部によって検出された温度と、前記第1の設定温度と、の差が、所定の閾値を超えたときに、前記第2の設定温度を設定する、
熱処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記被処理体を加熱するランピングレートを変更するように、前記加熱部を制御する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項5】
基板を処理する処理室と、
前記処理室に収納された被処理体を加熱する加熱部と、
前記処理室内の温度を検出する温度検出部と、
予め設定された設定温度と前記温度検出部が検出した温度とが等しくなるように、前記加熱部を制御する制御部と、
を有する熱処理装置の制御方法であって、
前記温度検出部によって検出された温度が、外乱によって、予め設定された第1の設定温度より低くなった場合に、前記温度検出部によって検出された温度と等しい第2の設定温度を設定する、第1のステップと、
前記第2の設定温度と前記第1の設定温度との間にある第3の設定温度と、前記温度検出部が検出した温度と、が等しくなるように前記加熱部を制御する、第2のステップと、
前記第3の設定温度と前記温度検出部が検出した温度とが等しくなった後に、前記第1の設定温度と、前記温度検出部が検出した温度と、が等しくなるように前記加熱部を制御する、第3のステップと、
を有し、
前記第1のステップは、
前記温度検出部によって検出された温度が、外乱によって、予め設定された第1の設定温度より低くなった場合であって、前記温度検出部が検出した温度の時間に対する変化率が所定の閾値を超えたときに、前記第2の設定温度を設定する、
熱処理装置の制御方法。
【請求項6】
基板を処理する処理室と、
前記処理室に収納された被処理体を加熱する加熱部と、
前記処理室内の温度を検出する温度検出部と、
予め設定された設定温度と前記温度検出部が検出した温度とが等しくなるように、前記加熱部を制御する制御部と、
を有する熱処理装置の制御方法であって、
前記温度検出部によって検出された温度が、外乱によって、予め設定された第1の設定温度より低くなった場合に、前記温度検出部によって検出された温度と等しい第2の設定温度を設定する、第1のステップと、
前記第2の設定温度と前記第1の設定温度との間にある第3の設定温度と、前記温度検出部が検出した温度と、が等しくなるように前記加熱部を制御する、第2のステップと、
前記第3の設定温度と前記温度検出部が検出した温度とが等しくなった後に、前記第1の設定温度と、前記温度検出部が検出した温度と、が等しくなるように前記加熱部を制御する、第3のステップと、
を有し、
前記第1のステップは、
前記温度検出部によって検出された温度が、外乱によって、予め設定された第1の設定温度より低くなった場合であって、前記温度検出部が検出した温度の時間に対する変化率が所定の閾値を超えたとき、かつ、前記温度検出部によって検出された温度が、外乱によって、前記第1の設定温度よりも連続して低くなる時間が、所定の閾値を超えたときに、前記第2の設定温度を設定する、
熱処理装置の制御方法。
【請求項7】
基板を処理する処理室と、
前記処理室に収納された被処理体を加熱する加熱部と、
前記処理室内の温度を検出する温度検出部と、
予め設定された設定温度と前記温度検出部が検出した温度とが等しくなるように、前記加熱部を制御する制御部と、
を有する熱処理装置の制御方法であって、
前記温度検出部によって検出された温度が、外乱によって、予め設定された第1の設定温度より低くなった場合に、前記温度検出部によって検出された温度と等しい第2の設定温度を設定する、第1のステップと、
前記第2の設定温度と前記第1の設定温度との間にある第3の設定温度と、前記温度検出部が検出した温度と、が等しくなるように前記加熱部を制御する、第2のステップと、
前記第3の設定温度と前記温度検出部が検出した温度とが等しくなった後に、前記第1の設定温度と、前記温度検出部が検出した温度と、が等しくなるように前記加熱部を制御する、第3のステップと、
を有し、
前記第1のステップは、
前記温度検出部によって検出された温度が、外乱によって、予め設定された第1の設定温度より低くなった場合であって、前記温度検出部が検出した温度の時間に対する変化率が所定の閾値を超えたとき、かつ、前記温度検出部によって検出された温度と、前記第1の設定温度と、の差が、所定の閾値を超えたときに、前記第2の設定温度を設定する、
熱処理装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理装置及び熱処理装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体ウエハに対して成膜処理、酸化処理、拡散処理といった熱処理を施す装置の例として、縦型熱処理装置や横型熱処理装置が知られている。この中でも、大気の巻き込みが少ないなどの理由から、縦型熱処理装置が主流に使用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
これらの熱処理装置では、通常、設定温度やランピングレートが変更になった場合、ランピングの開始温度は前回のターゲット温度から開始される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−334844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の熱処理装置では、例えば、ウエハボートの搬入時などの外乱によってアクチャル温度が一時的に下がった場合に、ターゲット温度とアクチャル温度との間に大きな温度差が発生し、熱処理装置の出力が大きくなる。その結果、アクチャル温度がオーバーシュートし、これに対応して、熱処理装置の内部温度及び半導体ウエハの温度が目標温度にリカバリするのに要する時間が長くなるという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明においては、外乱によって熱処理装置内部の温度が変わった場合に、熱処理装置内部の温度を速やかにリカバリさせることができる熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
被処理体を収納する処理室と、
前記処理室に収納された被処理体を加熱する加熱部と、
前記処理室内の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部によって検出された温度が、外乱によって、予め設定された第1の設定温度より低くなった場合に、前記温度検出部によって検出された温度と等しい第2の設定温度を設定し、かつ、
前記第2の設定温度と前記第1の設定温度との間にある第3の設定温度と、前記温度検出部が検出した温度と、が等しくなるように前記加熱部を制御し、かつ
前記第3の設定温度と前記温度検出部が検出した温度とが等しくなった後に、前記第1の設定温度と、前記温度検出部が検出した温度と、が等しくなるように前記加熱部を制御する、制御部と、
を備え
、
前記制御部は、
前記温度検出部によって検出された温度が、外乱によって、予め設定された前記第1の設定温度より低くなった場合であって、前記温度検出部が検出した温度の時間に対する変化率が所定の閾値を超えたときに、前記第2の設定温度を設定する、
熱処理装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外乱によって熱処理装置内部の温度が変わった場合に、熱処理装置内部の温度を速やかにリカバリさせることができる熱処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明に係る熱処理装置の構成例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る熱処理装置の制御方法の例を説明するための概略図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る熱処理装置の制御方法の例のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0011】
[熱処理装置]
まず、本発明に係る熱処理装置の構成例について説明する。
図1は、本発明の熱処理装置の構成例を示す概略図である。しかしながら、本発明の熱処理装置は、基板を処理する処理室と、前記処理室に収納された被処理体を加熱する加熱部と、前記処理室内の温度を検出する温度検出部と、前記加熱部を制御する制御部と、を有し、後述する熱処理方法を実行することができれば、
図1の構成に限定されない。また、
図1では、被処理体として半導体ウエハW(以後、ウエハWと称する)を処理する熱処理装置について説明するが、本発明はこの点において限定されない。
【0012】
図1に示すように、熱処理装置2は、長手方向が垂直に配設された円筒状の処理容器4を有する。処理容器4は主に、外筒6と、この内側に同心的に配置された内筒8(特許請求の範囲における、処理室に対応)と、から構成され、2重管構造になっている。外筒6及び内筒8は、耐熱性材料、例えば石英から形成される。外筒6及び内筒8は、ステンレスなどからなるマニホールド10によって、その下端部が保持される。また、マニホールド10は、ベースプレート12に固定される。
【0013】
マニホールド10の下端部の開口部には、例えばステンレススチール等からなる円盤状のキャップ部14が、Oリング等のシール部材16を介して気密封止可能に取り付けられている。また、キャップ部14の略中心部には、例えば磁性流体シール18により気密状態で回転可能な回転軸20が挿通されている。この回転軸20の下端は、回転機構22に接続されており、その上端は例えばステンレススチールよりなるテーブル24が固定されている。
【0014】
テーブル24上には、例えば石英製の保温筒26が設置されている。また、保温筒26上には、支持具として例えば石英製のウエハボート28が戴置される。ウエハボート28には、例えば50〜150枚の被処理体としての半導体ウエハWが、所定の間隔、例えば10mm程度間隔のピッチで収容される。ウエハボート28、保温筒26、テーブル24及びキャップ部14は、例えばボートエレベータである昇降機構30により、処理容器4内に一体となってロード、アンロードされる。
【0015】
マニホールド10の下部には、処理容器4内へ必要なガスを導入するための、ガス導入手段32が設けられる。ガス導入手段32は、マニホールド10を気密に貫通させて設けたガスノズル34を有する。
【0016】
通常、ガスノズル34から処理容器4へと導入されるガスは、図示しない流量制御機構により、流量制御される。なお、ガスノズル34は、
図1においては、1本のみ記載されているが、用いるガス種に応じて、複数本設けても良い。
【0017】
マニホールド10の上部には、ガス出口36が設けられており、ガス出口36には排気系38が連結される。排気系38は、ガス出口36に接続された排気通路40と、排気通路40の途中に順次接続された、圧力調整弁42と真空ポンプ44と、を含む。排気系38により、処理容器4内の雰囲気を圧力調整しつつ排気することができる。
【0018】
なお、マニホールド10を設けず、処理容器4全体を、例えば石英により形成する構成であっても良い。
【0019】
処理容器4の外周側には、処理容器4を囲むようにしてウエハWなどの被処理体を加熱するヒータ装置48が設けられる。ヒータ装置48は、円筒体状に形成された有天井の断熱層50を有する。断熱層50は、例えば熱伝導性が低く、柔らかい無定形のシリカ及びアルミナの混合物により形成される。断熱層50の厚さは、通常、30mm〜40mm程度である。また、断熱層50の内面は、処理容器4の外面よりも所定の距離だけ離間されている。さらに、断熱層50の外周面には、例えばステンレススチールよりなる保護カバー51が、断熱層50全体を覆うように取り付けられている。
【0020】
断熱層50の内周側には、ヒータエレメント52(特許請求の範囲における、加熱部に対応)が、螺旋状に巻回して配置されている。ヒータエレメント52は、例えば、断熱層50の側面の全体に亘って巻回して設けられており、処理容器4の高さ方向の全体をカバーできる構成になっている。即ち、ヒータエレメントの外周側に断熱層50を設けた構造となっている。
【0021】
また、内筒8の内側には、熱電対60(特許請求の範囲における、温度検出部に対応)が挿入され、内筒8内の温度(即ち、ウエハWの温度)を測定できる構成となっている。
【0022】
ヒータエレメント52及び熱電対60は、高さ方向において、1又は2以上のゾーンに分割されており(
図1では便宜上、ゾーンに分割していない例を示す)、各ゾーン毎に制御部70により、各ゾーン毎に独立して個別に温度制御できる構成となっている。なお、ヒータエレメント52及び熱電対60は、高さ方向において、複数のゾーンに分割される構成の場合、単一の制御部70が、温度制御する構成としても良く、各々のゾーンに対応する制御部を準備して温度制御する構成であっても良い。各々のゾーンに対応して(ゾーン数に応じる複数の)制御部を準備する構成の場合、各々の制御部が、後述する熱処理装置の制御方法を実行するよう構成することが好ましい。
【0023】
制御部70は、例えば、図示しない演算処理部、記憶部及び表示部を有する。演算処理部は、例えばCPU(Central Processing Unit)を有するコンピュータである。記憶部は、演算処理部に、各種の処理を実行させるためのプログラムを記録した、例えばハードディスクにより構成されるコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。表示部は、例えばコンピュータの画面よりなる。演算処理部は、記憶部に記録されたプログラムを読み取り、そのプログラムに従って、加熱部を制御する構成となっている。
【0024】
[熱処理装置の制御方法]
次に、
図1で説明した熱処理装置などの熱処理装置の制御方法を、
図2を参照して説明する。
図2(a)に、本発明に係る熱処理装置の制御方法を説明するための図であって、従来の制御方法を説明する図を示す。なお、
図2(a)における縦軸は熱処理装置内の温度を指し、横軸は時間を指す。また、
図2(a)における実線は、
図1における熱電対60などによって検出された熱処理装置内(即ち内筒8内)の温度(以後、アクチャル温度と称する)を指し、点線は熱処理装置の設定温度(特許請求の範囲における、第1の設定温度)を指す。さらに、
図2では、予め設定された熱処理装置内の温度が700℃であり、外乱によって700℃未満になった熱処理装置の温度を制御する例について説明するが、本発明はこの点において限定されない。
【0025】
図2(a)に示すように、従来の熱処理装置の制御方法では、外乱が発生すると、アクチャル温度が、設定温度に対して低下し始める。アクチャル温度が設定温度よりも低下すると、アクチャル温度を設定温度に戻すように、ヒータに大きな電力が供給されるため、熱処理装置内の温度低下に遅れてヒータの発熱量が大きくなり、アクチャル温度がオーバーシュートする。アクチャル温度がオーバーシュートすると、これに対応して熱処理装置内の温度が目標温度に安定するまでに長い時間がかかり、スループットが低下する。
【0026】
なお、ここでいう外乱とは、熱処理装置内の設定温度よりも、アクチャル温度を低下させる要因のことを指す。具体的には、
図1において、ウエハボート28に保持された半導体ウエハWが、昇降機構30によって処理容器4内にロード(又はアンロード)されることや、プロセス条件の変化、などが挙げられる。プロセス条件の変化とは、例えば、ガス導入手段32を介してガスノズル34を通って処理容器4内へと導入されたガスによって、アクチャル温度が低下すること、ガスの排出による処理容器4内の圧力の変化を伴って、アクチャル温度が低下すること、などが挙げられる。
【0027】
図2(b)に、本発明に係る熱処理装置の制御方法の例を説明する図を示す。
図2(b)における縦軸は熱処理装置内の温度を指し、横軸は時間を指す。また、
図2(b)における実線は、アクチャル温度を指し、点線は熱処理装置の設定温度又はターゲット温度を指す。また、
図3に、本発明に係る熱処理装置の制御方法の例のフロー図を示す。
【0028】
図2(b)に示すように、本発明に係る熱処理装置の制御方法では、予め設定された設定温度(S101)と比較して、外乱によりアクチャル温度が低下した場合(S102:Yes)、制御部は、まず、設定温度をアクチャル温度と等しい温度(特許請求の範囲における第2の設定温度に対応)へと設定する(S103)。
【0029】
第1の設定温度から第2の設定温度へと設定温度を変える判定基準としては、外乱によりアクチャル温度が設定温度に対して低下した後であれば、特に限定されない。外乱の要因によっても好ましい判定基準は異なるが、一例としては、アクチャル温度の、時間に対する変化率が所定の閾値を超えたときに、第2の設定温度を設定する;アクチャル温度が、第1の設定温度よりも連続して低くなる時間が、所定の閾値を超えたときに、第2の設定温度を設定する;アクチャル温度と第1の設定温度との差が、所定の閾値を超えたときに、第2の設定温度を設定する;上述した判定基準を組み合わせて第2の設定温度を設定する;ことなどが挙げられるが、本発明はこれらの判定基準に限定されない。
【0030】
第1の設定温度から第2の設定温度へと設定温度を変えたあと、制御部は、第2の設定温度と第1の設定温度との間にある第3の設定温度を設定し、第3の設定温度とアクチャル温度が等しくなるようにヒータ(特許請求の範囲における加熱部)を制御する(S104)。
【0031】
第3の設定温度としては、第1の設定温度と第2の設定温度との間であれば特に限定されず、例えば、第1の設定温度と第2の設定温度と間の真ん中の温度を第3の設定温度としても良く;第1の設定温度と第2の設定温度との間を、x:y(x及びyは各々独立に自然数であり、x=yの場合を除く)に分ける温度を第3の設定温度としても良く;アクチャル温度と第1の設定温度との差が、所定の閾値を超えている場合に、第1の設定温度より前記所定の閾値だけ低い温度を第3の設定温度として良い。
【0032】
アクチャル温度を第3の設定温度と等しくなるようにヒータを制御する方法としては、特に限定されないが、通常、ランピングレートを変更して制御する。この場合、ランピングレートを所定の値(例えば、2℃/min、10℃/minなど)に設定しても良く、第2の設定温度から第3の設定温度へとリカバリする時間が、所定の時間(例えば、10min)となるように、第3の設定温度(又は、第1の設定温度及び前記所定の閾値)と、アクチャル温度と、前記所定の時間と、からランピングレートを設定しても良い。
【0033】
アクチャル温度が第3の設定温度が等しくなった後に、制御部は、再び第1の設定温度を設定し、第1の設定温度とアクチャル温度とが等しくなるようにヒータを制御する(S105)。
【0034】
アクチャル温度を第1の設定温度と等しくなるようにヒータを制御する方法としては、特に限定されないが、前述と同様、通常、ランピングレートを変更して制御する。この場合も、ランピングレートを所定の値(例えば、2℃/min、10℃/minなど)に設定しても良く、第3の設定温度から第1の設定温度へとリカバリする時間が、所定の時間(例えば、10min)となるように、第1の設定温度と、アクチャル温度と、前記所定の時間と、からランピングレートを設定しても良い。
【0035】
本発明では、外乱が発生して熱処理装置内の温度が第1の設定温度から低下した場合に、第1の設定温度へと速やかかつオーバーシュート無く(又は抑制して)リカバリするために、先ず第2の設定温度を設定し、その後第1の設定温度と第2の設定温度との間に第3の設定温度とを設定する例について述べた。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第1の設定温度と第2の設定温度との間に、第3の設定温度を設定してアクチャル温度と第3の設定温度が等しくなるように加熱部を制御し、その後、第3の設定温度と第1の設定温度との間に、第4の設定温度(更には第n(nは5以上の自然数)の設定温度)を設定して、アクチャル温度と第4の設定温度が等しくなるように加熱部を制御して、その後、アクチャル温度を第1の設定温度へとリカバリする、多段ステップの構成であっても良い。
【0036】
なお、制御部が記憶部を有する実施形態の場合は、プロセス条件又は半導体ウエハWのロード速度に応じて、上述した制御方法を記憶する構成であっても良い。そのような構成とすることによって、熱処理装置の制御方法が同じ若しくは予測性が高いとき、及び/又は、ウエハボート28に保持された半導体ウエハWのロード速度が同じ若しくは予測性が高いとき、記憶部に記憶された以前の制御方法を呼び出して実行する構成とすることができる。
【0037】
本発明は、基板を処理する処理室と、前記処理室に収納された被処理体を加熱する加熱部と、前記処理室内の温度を検出する温度検出部と、予め設定された設定温度と前記温度検出部が検出した温度とが等しくなるように、前記加熱部を制御する制御部と、を有する熱処理装置に対して、
前記温度検出部によって検出された温度が、外乱によって、予め設定された第1の設定温度より低くなった場合に、前記温度検出部によって検出された温度と等しい第2の設定温度を設定するステップと、
前記第2の設定温度と前記第1の設定温度との間にある第3の設定温度と、前記温度検出部が検出した温度と、が等しくなるように前記加熱部を制御するステップと、
前記第3の設定温度と前記温度検出部が検出した温度とが等しくなった後に、前記第1の設定温度と、前記温度検出部が検出した温度と、が等しくなるように前記加熱部を制御するステップと、
を有して、熱処理装置を制御することによって、外乱によって熱処理装置内部の温度が低下した場合においても、熱処理装置の出力の大幅な上昇を抑制することができ、オーバーシュートを抑制する(又は無くす)ことができるため、熱処理装置内部の温度を、自動で、かつ、速やかにリカバリさせることができる。
【符号の説明】
【0038】
2 熱処理装置
4 処理容器
6 外筒
8 内筒
28 ウエハボート
48 ヒータ装置
50 断熱層
51 保護カバー
52 ヒータエレメント
60 熱電対
70 制御部
W 半導体ウエハ