(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の芳香容器は、水平に空気を吹き出す排気口に取り付けられるが、自動車の中にはデフロスターの排気口のように、上方へ流れる空気を吹き出す箇所があり、このような空気も芳香や消臭作用に利用することも考えられる。また、上方へ流れる空気は、デフロスターの排気口のほか、自動車以外でも散見され、例えば、床に設置されるエアコンなど、種々の装置に設けられている。そして、このような空気の流れは、芳香や消臭作用に効果的に利用可能と考えられるが、これを利用した装置は未だ提案されていない。そこで、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、上方へ流れる空気を利用する薬剤揮散装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上方に流れる空気を利用した薬剤揮散装置であって、下方に開口し前記空気が流入する流入口、及び前記流入口とは異なる向きに開口する前記空気の排出口を有するとともに、前記流入口及び排出口を介して外部と連通する内部空間を有する筐体と、前記筐体の内部空間に収容される薬剤と、前記薬剤と前記流入口との間に隙間を形成する隙間形成部と、を備え、前記排出口と前記隙間とが連通している。
【0006】
本発明は、上方に流れる空気を利用するために、この空気を取り込む流入口を下向きに形成している。そして、流入口から筐体内へ流入する空気を薬剤に効率的に接触させるためには、流入口の上方に薬剤を配置する必要があるが、このようにすると、薬剤が自重によって下方に移動し、流入口を塞ぐおそれがある。そこで、本発明では、流入口と薬剤との間に隙間形成部を設けることで、これらの間に隙間を形成し、この隙間が排出口と連通するように構成している。そのため、薬剤によって流入口が塞がれるのを防止するとともに、流入口、隙間、排出口をこの順で流れる空気の流路を確保することができる。したがって、本発明では、空気の流れを阻害することなく、上方へ流れる空気を効果的に利用することができる。なお、本発明において、流入口の向きは「下方」であるが、これは厳密な鉛直下向きを指すのではなく、上方に向かう空気を流入可能な限りにおいて下向きであればよく、鉛直下向きを挟んで、例えば、0〜150度程度の範囲内の向きになっていればよい。
【0007】
上記薬剤揮散装置において、排出口を設ける位置は、流入口とは異なる向きに開口する限りは、特には限定されないが、例えば、流入口と反対側、つまり上方に向かって開口する排出口を設けると、空気を装置よりも上方に放出することができ、薬剤成分を効果的に拡散させることができる。なお、排出口の向きは厳密な上方でなくてもよく、斜め上方(鉛直上向きを挟んで、例えば、0〜150度の範囲内の向き)であっても同様の効果を得ることができる。
【0008】
上記各薬剤揮散装置においては、薬剤を直接筐体に収容することもできるが、例えば、筐体に収容され、薬剤を収容し、開口部を有する収容部材をさらに設けることができる。このとき、収容部材は、開口部が流入口側を向くように筐体内に支持される。これにより、液体状、ゲル状の薬剤を収容部材に配置した上で、筐体内に収容することができる。
【0009】
上記のように、収容部材を設ける場合、この収容部材の開口部を取り外し可能に塞ぐ蓋部材をさらに設けることができる。そして、収容部材を、開口部が流入口側を向くように筐体内に支持し、蓋部材の一部を、排出口から筐体の外部に突出させるように構成することができる。このようにすると、排出口から突出した蓋部材の一部を引っ張ることで、蓋部材を取り外すことができるため、蓋部材を取り外すために、筐体を分解する手間を省くことができる。
【0010】
このとき、例えば、流入口から薬剤に向かう第1方向と直交する第2方向に沿って、隙間を延ばし、筐体の内壁面と隙間とが交わる箇所に、排出口を形成することができる。このようにすると、蓋部材を第2方向に沿って延ばすことができるため、蓋部材の取り付け方向と蓋部材を取り外す方向とがおおむね一致するため、蓋部材の取り外しが容易になる。なお、ここでいう「直交」とは厳密な直交を意味するのではなく、空気の流れがスムーズである限りは、直交から多少ずれたものも含まれる。
【0011】
上記各薬剤揮散装置において、隙間形成部は、種々の構成にすることができる。例えば、隙間形成部を薬剤と同一の材料で形成し、薬剤と一体化した形態にすることもできる。このような形態としては、例えば、薬剤に突起を設け、この突起を隙間形成部とすることができる。また、隙間形成部が、収容部材を支持することで隙間を形成する、少なくとも1つの支持部材を備えることができる。薬剤が液体やゲル状である場合には、これを直接支持することが難しいため、収容部材を支持して隙間を形成することができる。但し、液体やゲル状以外の薬剤でも当然に適用することができる。
【0012】
また、例えば、薬剤が固形である場合には、隙間形成部は、薬剤を支持する少なくとも1つの支持部材を備えることができる。なお、上述した収容部材を支持する支持部材によって薬剤を支持することもできるし、薬剤を支持する支持部材によって収容部材を支持するように構成することもできる。また、収容部材用、及び薬剤用の支持部材を個別に設けることもできる。
【0013】
上記各薬剤揮散装置においては、筐体の向き及び位置の少なくとも一方を調整可能な調整機構をさらに設けることができる。これにより、上方に向かう空気に対して、流入口を適切な位置又は角度に調節することができるため、空気を効率的に流入させることができる。
【0014】
第2の本発明は、自動車のデフロスター等の上方に向かって排気口から排出される空気を利用する薬剤揮散装置であって、前記薬剤を収容し、空気の流入口及び排出口を有するとともに、前記流入口及び排出口を介して外部と連通する内部空間を有する筐体と、前記筐体の内部空間に収容される薬剤と、前記自動車内に着脱可能に固定される設置部と、前記設置部に対する前記筐体の角度及び位置の少なくとも一方を調整可能な調整機構と、を備えている。
【0015】
この構成によれば、装置を、薬剤を収容する筐体と、自動車内等に着脱可能に固定される設置部とに分割し、一体的な構造よりも小型化しているため、狭い空間にも配置することができる。また、調整機構により、設置部に対する筐体の角度及び位置の少なくとも一方を調整できるため、デフロスターの排気口等に対し、筐体の流入口の位置又は角度を調整することができる。これにより、排気口からの空気を筐体の流入口へ効果的に流入させることができ、良好な揮散作用を得ることができる。
【0016】
上記各薬剤揮散装置において、調整機構は種々の構成を取ることができるが、例えば、設置部と筐体とを連結する連結部材を備え、この連結部材を設置部に対して傾動可能に構成することができる。このようにすると、連結部材を傾動させることで、筐体と排気口との距離を調整できるほか、排気口に対する筐体の角度も調整することができ、筐体の流入口に対して効果的に空気が流入するように調整することができる。
【0017】
上記各薬剤揮散装置においては、連結部材を設置部に対して着脱自在に取り付けるように構成することができる。このようにすると、次の効果を得ることができる。設置部は自動車内等に着脱自在に取り付けられるものであり、例えば、両面テープなどで取り付けられることが多い。しかし、この装置を交換する際、設置部を取り外すと両面テープの跡が残り、設置面が汚れるおそれがある。そこで、連結部材を設置部から取り外し可能にすると、設置部を自動車内等に残したまま、薬剤の交換が可能となり、両面テープの跡が残るのを防止することができる。
【0018】
上記調整機構は、連結部材が設置部に対して所定の角度範囲にあるときに、当該連結部材を設置部から取り外し不能に規制し、角度範囲外にあるときに連結部材が設置部から取り外し可能とする規制部を備えることができる。上記のように、連結部材は、設置部に対して傾動可能となっているが、通常、使用される傾斜範囲において取り外し不能にしておけば、使用中に連結部材が設置部から取り外されるのを防止することができる。
【0019】
また、上記各薬剤揮散装置においては、上記流入口に設けられた弁部材をさらに備えることができる。この弁部材は、流入口を塞ぐ閉位置と、筐体の外部からの正圧によって流入口を開く開位置とを取り得ることができる。これにより、流入口に空気が流入しないときは、弁部材によって流入口が塞がれるため、不使用時に薬剤成分が余分に放出されるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
上記のように、本発明によれば、上方へ流れる空気を利用する薬剤揮散装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る薬剤揮散装置の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施形態に係る薬剤揮散装置の斜視図、
図2は
図1の平面図、
図3は
図2の側面図、
図4は
図2のA−A線断面図、
図5は
図2のB−B線断面図である。以下の説明では、便宜上、
図1の上下方向を「上下」と称することがある。また、長手方向、これと直交する方向を幅方向ということがある。
【0023】
本実施形態に係る薬剤揮散装置は、上方に流れる空気を利用して芳香成分や消臭成分を揮散させるものであり、例えば、自動車内のデフロスターの排気口、床に設置されるエアコンの排気口などから排出される空気を利用することができる。すなわち、この装置は、これら排気口の近傍に配置され、排出される空気を流入し、薬剤と接触させた後、この空気を排出して芳香成分等を揮散させる。以下、具体的に説明する。
【0024】
図1〜
図5に示すように、この薬剤揮散装置は、上述した排気口Cの近傍に設置される設置部1と、薬剤が収容された筐体2とを備えており、これらが連結部材3によって連結されている。これら設置部1、筐体2及び連結部材3は、プラスチック樹脂などで形成されている。また、筐体2の内部には、薬剤4、及びこの薬剤を収容する収容部材5が配置されている。まず、筐体から説明する。
【0025】
筐体2は、一方向に延びる長方形状に形成されており、カップ状に形成された基部21と、これを覆う蓋部22とで構成されている。なお、筐体2の形状はこれには限定されず、例えば楕円状など、種々の形状にすることができる。そして、これら基部21と蓋部22とが合わさることで内部に薬剤が収容される内部空間Sが形成される。基部21は、デフロスターやエアコンにおいて空気が排出される排気口Cと対向するように、筐体2の下側に配置される。また、この基部21は、平坦な底面部211と、この底面211の周縁から立ち上がる側面部212とを有し、全体的にカップ状に形成されている。底面部211には、長手方向に、一直線上に並ぶ複数の流入口213が形成されている(本実施形態では流入口213は複数設けられているが、1つでもよい)。これら流入口213は、線状に延びる長方形状に形成されており、内部空間Sと外部とを連通している。なお、内部空間Sとは、筐体2の内部に形成されて薬剤4を収容する空間であり、少なくとも一部が、流入口213から流入した空気が薬剤4に接触した後に、排出口217から排出されるような空間であればよい。
【0026】
図6は、基部21の内面の平面図である。基部21の内面には、各流入口213を挟むように、各一対の第1突起(支持部材)214が形成されている。この第1突起214は、使用前の
図4及び
図5に示す状態では、薬剤4から離間しているが、
図9に示すように、使用時には薬剤4を支持するようになっている。流入口213を挟んで配置される第1突起214の間隔X1は、後述するように、薬剤4の幅方向の長さDよりも小さくなっている。また、底面部211と側面部212との連結部分には、複数箇所において第2突起(支持部材)215が形成されている。この第2突起215は、後述するように、使用時に収容部材5を支持するようになっているが(
図9参照)、使用前において支持してもよい。第2突起215は、底面から垂直に立ち上がる板状に形成されており、第1突起214よりも外側で各流入口213を挟むように配置されている。流入口213を挟んで配置される第2突起215間の間隔X2は、後述する収容部材5の幅D2よりも小さくなっている。また、第2突起215の底面部211からの高さは、第1突起214の高さよりも大きくなっている。なお、本実施形態では第1及び第2突起214、215を複数箇所に設けているが、1つでもよい
【0027】
側面部212の幅方向の一端部には、板状の連結部材3が一体的に取り付けられており、この連結部材3を挟むように、側面部212の上端部には、外部へ突出する一対の係合片216が設けられている。また、側面部212の他端部には、連結部材3と対向する位置に一つの係合片216が設けられている。そして、これら係合片216は、後述するように、蓋部22の開口周縁に設けられた凹部222に嵌まるようになっている。また、基部21の側面において、長手方向の一方には、矩形状に切り欠かれた排出口217が形成されている。
【0028】
次に、蓋部22について説明する。蓋部22は、上述したように、長手方向に延びるカップを逆さにした形状に形成されており、外表面は曲面をなすようにドーム状に形成されている。蓋部22の内面には、後述する収容部材5を固定するための一対の位置決め部材221が取り付けられている。これら位置決め部材221は、蓋部22の長手方向の両端部に取り付けられており、その間隔は収容部材5の長手方向の長さより若干大きくされている。また、各位置決め部材221は、収容部材5を挟むように、幅方向の両端がやや傾斜した平面視U字型の板状に形成されている。また、蓋部22の開口周縁には、上述したように、基部21の係合片216が嵌まる凹部222が3箇所に形成されている。
【0029】
次に、筐体2の内部に配置される収容部材5について、
図7を参照しつつ説明する。
図7は収容部材及び薬剤の斜視図である。同図に示すように、この収容部材5は、プラスチックなどの樹脂材料で形成され、長手方向に延び直方体状の収容空間を有するカップ状に形成された基台部51と、この基台部51の開口周縁に形成されたフランジ部52とで構成されている。筐体2の内部において、この収容部材5は、基台部51の開口が、筐体2の流入口213と対向するような向きに配置されている。このとき、フランジ部52が第2突起215に載るように筐体2内に配置される。また、基台部51の収容空間には、棒状に形成された固形の薬剤4が収容されている。この薬剤4は、芳香成分及び消臭成分の少なくとも一方を含有し、これらの成分を揮散する公知の薬剤である。そして、基台部51に薬剤4が収容された状態で、フランジ部52には、基台部51の開口を覆うように、樹脂フィルムなどで形成された蓋部材7が取り付けられている。蓋部材7は、例えば、熱融着などによってフランジ部52に取り付けられており、力を加えることよってフランジ部52から取り外せるようになっている。また、蓋部材7は、基台部51に沿って長手方向に延びるとともに、さらに基台部51から長手方向に突出し、排出口217から外部へと延びている。なお、
図5に示すように、流入口213から4薬剤に向かう方向Hが本発明の第1方向に相当し、これと直交する方向Gが本発明の第2方向に相当する。
【0030】
続いて、設置部1及び連結部材3について説明する。
図4に示すように、連結部材3は、中間部分が屈曲した板状に形成された本体部31を有し、その一端部が筐体2に一体的に連結されるとともに、他端部が設置部1に傾斜可能にされている。本体部31の他端部には、円筒状の回転部材32が取り付けられている。より詳細には、本体部31は、回転部材32の外周面に一体的に固定されており、回転部材32の軸心Zが筐体2の長手方向と平行に延びるように構成されている。回転部材32の外周面には、軸心Zと平行に延びる凸条321が所定間隔をおいて形成されている(
図8参照)。すなわち、回転部材32の外周面には多数の凹凸が形成されている。また、回転部材32の軸心Zの両端には、外形が円筒状の支持部33が設けられている。
【0031】
図8は、連結部材の一部及び設置部の斜視図である。同図に示すように、設置部1は、球体を4分の1に分割したような形状を有している。すなわち、設置面に配置される半円状の基面11と、この基面11から垂直に立ち上がり、上記回転部材32が挿入される半円状の取り付け面12と、これら基面11と取り付け面12とを連結する球面状の外周面13とを有している。取り付け面12には、組み立て時に、連結部材3を挿入するための挿入通路121が形成されている。この挿入通路121は、回転部材32が挿入される第1通路1211と、この第1通路1211の両側に隣接し支持部33が挿入される一対の第2通路1212とで構成されている。第2通路1212は、入り口付近の高さK1が支持部33の径よりも若干小さくなっており、奥端付近の高さK2が支持部33の径よりも大きくなっている。これにより、支持部33を弾性変形させながら、奥端付近まで押し込むようになっている。すなわち、入り口付近は支持部33の抜け止めを構成し、奥端部において支持部33は回転可能となっている。
【0032】
また、第1通路1211の奥端部まで押し込まれた回転部材32は、この位置で軸心Z周りに回転可能となっている。また、第1通路1211の奥端面には、突起122が形成されており、この突起122が回転部材32の凸条321と係合するようになっている。そのため、回転部材32を設置部1内で回転させるには、回転部材32と突起122との係合による抵抗に抗して力を加えて回転させる必要がある。そのため、力を加えないときには、回転部材32を所望の回転位置に保持することができる。さらに、第1通路1211は、取り付け面12から外周面13に亘って開口しており、これにより、連結部材3の本体部31が、取り付け面12から外周面13に亘って約90度、旋回できるようになっている。なお、上記のような連結部材3が設置部1に対して傾斜可能とするための連結部材3と設置部1の機構が、本発明の調整機構に相当する。
【0033】
次に、上記のように構成された薬剤揮散装置の使用方法について説明する。まず、筐体2の排出口217から突出した蓋部材7の端部を引っ張り、収容部材5から蓋部材7を取り外す。これにより、
図9に示すように、薬剤4が筐体2の内部に露出する。このとき、薬剤4は自重により流入口213側へ移動するが、第1突起214により支持され、薬剤4と流入口213との間には隙間S1が形成される。また、収容部材5は、第2突起215に支持されているため、収容部材5と流入口213との間にも隙間が形成される。続いて、デフロスターの排気口、エアコンの排気口の近傍など、所望の設置面に設置部1を取り付ける。設置部1の取付には、例えば、両面テープなどを設置部1の基面11に取り付けることができる。設置が完了すると、連結部材3の設置部1に対する角度を調整し、筐体2の流入口213が排気口Cと対向するようにする。こうして、装置を設置した後、排気口Cから空気が排出されると、この空気は流入口213から筐体2の内部に流入する。この空気は、流入口213と対向する薬剤4に接触した後、筐体2の内壁面と薬剤4との間の隙間S1を長手方向に流れ、薬剤の芳香成分及び消臭成分とともに、排出口217から排出され、揮散される。
【0034】
以上の本実施形態によれば、流入口213と薬剤4との間に第1及び第2突起214,215を設けているため、流入口213と薬剤4の間に隙間S1を形成することができ、この隙間S1が排出口217と連通するように構成している。そのため、薬剤4の自重によって、下向きに開口する流入口213が薬剤4によって塞がれるのを防止するとともに、流入口213、隙間S1、排出口217をこの順で流れる空気の流路を確保成することができる。そのため、上方へ流れる空気を効果的に利用して薬剤成分を揮散させることができる。
【0035】
特に、上記薬剤揮散装置を、自動車のデフロスターからの排気を利用するように用いる場合には、次のような利点がある。まず、エアコンの吹き出し口に取り付けられる薬剤揮散装置と比べ、エアコンの吹き出し口を塞がないので、エアコンの排気の邪魔にならない。また、薬剤揮散装置の代わりにドリンクホルダーを取り付けることができるため、エアコンの吹き出し口を有効に活用することができる。また、エアコンの吹き出し口に薬剤揮散装置を取り付けた場合には、エアコンをONにするボタン及び吹き出し口を選択するボタンの2つを押さなければならないが、デフロスターの排気を利用する場合には、デフロスターをONにするボタンのみを押せばよいため、操作が簡単になる。
【0036】
さらに、エアコンの吹き出し口からの排気は横向きであるので、自動車内の空間全体に空気を行き渡らせるには効率的ではないが、上向きの排気を利用すると、空間全体に空気を効率的に広げやすいという利点がある。特に、薬剤揮散装置から上向きに空気を排出すると、薬剤成分は重く下方に落ちてくるため、最終的に空間の上方から下方まで薬剤成分を行き渡らせることができる。
【0037】
また、連結部材3の設置部1に対する角度を調整することで、デフロスターの排気口Cと筐体2との間の距離を調整することができるため、薬剤成分の排出の度合いを調整することができる。例えば、排気口Cと筐体2との距離を近づけると、筐体2内に多量の空気が流入するため、薬剤成分を伴った空気を多量に排出することができる。一方、排気口Cと筐体2との距離を大きくすると、筐体2内に流入する空気の量が減少するため、薬剤成分の揮散を抑制することができる。したがって、特に、芳香剤の香りの量の調整に有効である。
【0038】
また、本実施形態に係る装置は、主として、薬剤を収容する筐体1と設置部3とに分割されているため、一体的な構造よりも、一つ一つのパーツの嵩が小さくなっている。そのため、デフロスターの排気口周辺のような狭い空間にも配置することができる。すなわち、排気口Cの直上に筐体2を配置し、排気口Cの周辺に設置部1を配置できるため、フロントガラスによって上方の空間が制限されている排気口周辺にも容易に配置することが可能である。
【0039】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、薬剤4や収容部材5を支持する突起214、215の形状や数は特には限定されず、少なくとも流入口213との間に隙間を形成できればよい。例えば、第2突起215を別個に設けることなく、筐体2の内壁面(例えば側面部212)で、収容部材5を支持するように構成することもでき、この場合には、筐体2の内壁面が本発明の支持部材となる。また、流入口213及び排出口217の数、形状は、それぞれ内部空間に空気を流入したり、内部空間から外部に空気を排出できる限りにおいては特には限定されない。さらに、上述した収容部材4を支持する突起215によって、薬剤を支持することもできるし、薬剤を支持する突起214によって収容部材4を支持するように構成することもできる。
【0040】
上記実施形態では、薬剤4の例として芳香成分や消臭成分を有するものを挙げたが、本発明では、これ以外にも、例えば、殺虫成分や除菌成分など、空気とともに揮散するような成分を含む薬剤全般を用いることができる。また、薬剤4の形状や筐体2内で配置される位置も特には限定されない。但し、薬剤4が流入口213と対向する位置にあれば、空気が接触しやすいため、好ましい。
【0041】
また、上記実施形態では、設置部1に対して、連結部材3を傾斜可能にしているが、筐体2に対して連結部材3を傾斜可能にすることができる。そのときの構成は、設置部1と連結部材3との関係を適用することができる。また、連結部材3は、設置部1に対する角度を調整し、筐体2と排気口Cとの位置関係を調整できるようにしているが、これ以外にも種々の構成が可能である。例えば、
図10に示すように、平面視で、設置部1に対して連結部材3を回転させることもできる。すなわち、接地面と略垂直な軸に対して連結部材3を回転させる調整機構を設けることができる。
【0042】
また、連結部材3及び設置部1を
図11のようにすることもできる。この例では、回転部材32の両側に設けられている支持部34を断面楕円状に形成する。そして、支持部34は、楕円の長辺が本体部31と平行となるような向きにする。また、設置部1は、図示のように、上部に挿入通路125を設け、支持部34が通過する第2通路1252の幅を、上部の入り口側(Y1)で、支持部34の断面の短辺よりも若干大きく長辺よりは小さくする。そして、第2通路1252の奥端部においては(Y2)、その幅を支持部34の断面の長辺よりも若干大きくする。これにより、
図11(b)に示すように、断面楕円状である支持部34の向きが、長辺が第2通路1252の向きと平行になったときのみ、連結部材3を設置部に対して、着脱することができる。このとき、連結部材3は、設置部1に対してほぼ垂直になるため、筐体2の流入口213も下向きにはならない。すなわち、この状態は通常は使用しない状態である。したがって、連結部材3の角度が通常は使用しない角度になったときに取り外し可能とすることで、通常の使用中の角度では設置部1から取り外しできないようになっている。このような簡単な構成で、連結部材3及び筐体2を設置部1に対して着脱可能とすることができる。
【0043】
上記のように、設置部1は両面テープによって設置面に取り付けられることが多いが、頻繁に取り外しを行うと、設置面が汚れたり、粘着力が低下して脱落する可能性がある。そこで、薬剤を使い切って交換をする場合には、設置部1を残し、筐体2と連結部材3とを新しいものに交換すれば、設置面が汚れるのを防止することができる。
図11の例は、このような使用方法に適している。
【0044】
あるいは、設置部1及び連結部材3を設けず、排気口Cを覆うように筐体2を直接、設置面には配置することもできる。また、筐体2に脚部を設け、設置面上で筐体2を支持することもできる。
【0045】
上記実施形態においては、薬剤を収容部材5に収容した上で、この収容部材5を筐体2の内部に配置しているが、薬剤4が固形である場合には、収容部材5を設けず、薬剤4を筐体2の内部に直接配置することもできる。この場合には、第2突起215は不要となり、第1突起214によって、薬剤4と流入口213との間に隙間が形成される。なお、薬剤がゲル状又は液状である場合、収容部材5の開口部と蓋部材7との間にガス透過性のフィルムを配置することもできる。
【0046】
また、上記実施形態では、排出口217を筐体2の側面に設けているが、流入口213と異なる向きに開口するように形成されていれば、その位置は、特には限定されない。例えば、
図12に示すように、薬剤4を挟んで流入口213とは反対側、つまり筐体2の上部側に配置することもできる。すなわち、流入口213から上向きに流入した空気が薬剤に接触した後、そのまま上方に向かって排出口217から排出されるように構成することができる。これにより、上方に向かう空気の流れを阻害することなく、薬剤成分を空気とともにスムーズに排出することができる。なお、この場合には、排出口217の形成位置は、筐体の上部であれば、特には限定されない(例えば、
図12の範囲W)。なお、
図11では、収容部材や薬剤を支持する突起を省略している。
【0047】
また、
図13に示すように、流入口213に弁部材28を設けることもできる。この弁部材28は、流入口213を塞ぐ閉位置と、筐体2の外部からの正圧によって流入口213を開く開位置とを取り得るように構成することができる。その構成としては、種々の例が考えられるが、例えば、
図13(a)に示すように、ヒンジ29によって弁部材28が筐体2内部に揺動可能に取り付けられ、筐体2の内部空間側から流入口213を塞ぐようにする。そして、空気が流入しないとき、つまり、外部から圧力が加えられていないときは弁部材28が流入口213を塞ぎ、空気が流入したとき、つまり圧力が作用した場合には、弁部材28が開き、流入口213から筐体2内へ空気を流入させる。これにより、流入口213に空気が流入しないときは、弁部材28によって流入口213が塞がれるため、不使用時に薬剤成分が余分に放出されるのを防止することができる。また、他の構成でも可能であり、例えば、
図13(b)に示すように、流入口213をすり鉢状に形成し、内側から球状の弁部材28を配置することもできる。これにより、空気が流入しないときは、弁部材28によって、流入口213が塞がれ、空気が流入すると、弁部材28が浮き上がって、流入口213が開く。
【0048】
なお、上記実施形態において示された構造のうち、連結部材3と設置部1で示された機構を採用し、筐体2には少なくとも薬剤4が収容された構成を採用することもできる。すなわち、上記のような調整機構が採用されていれば、筐体の構成は特には限定されない構成を含むことができる。このような構成では、特に、デフロスターの排気口からの空気を利用する場合に有利である。すなわち、デフロスターの排気口は、自動車のフロントガラスの下端部付近の狭い空間に設けられているため、上記のような調整機構を有していると、薬剤を収容する筐体2と、自動車内に着脱可能に固定される設置部1とに分割され、一体的な構造よりも小型化することができる。そのため、狭い空間にも配置することができる。また、調整機構により、設置部1に対する筐体2の角度及び位置の少なくとも一方を調整できるため、デフロスターの排気口に対し、筐体2の流入口213の位置又は角度を調整することができる。これにより、排気口からの空気を筐体2の流入口213へ効果的に流入させることができ、良好な芳香作用を得ることができる。