【実施例】
【0034】
三酸化アンチモン中の白安鉱の含有量及び方安鉱の含有量の測定:
測定は粉末X線回折法により行った。このため、三酸化アンチモン粉末をSiemens製の「D5000Theta/Theta」粉末X線回折装置で測定した。測定パラメータは次の通りである:
【0035】
【表1】
【0036】
シグナルの高さは、各シグナルの最大強度と測定背景との間の差により得られる。白安鉱の含有量を測定するため、2シータ=27.7°(方安鉱、シグナル高さa)及び28.4°(白安鉱、シグナル高さb)におけるシグナルを採用した。白安鉱の含有量はb/(a+b)であり、方安鉱の含有量はa/(a+b)である。
【0037】
例1(本発明)
触媒領域CZ1:
3.38gの炭酸セシウム、459.3gの二酸化チタン(Fuji TA 100C、アナターゼ、BET表面積20m
2/g)、196.9gの二酸化チタン(Fuji TA 100、アナターゼ、BET表面積7m
2/g)並びに51.4gの五酸化バナジウム及び13.2gの三酸化アンチモン(Merck Selectipur 7835、白安鉱含有量=0.18、方安鉱含有量0.82、99.5%のSb
2O
3含有量、300質量ppmのAs、500質量ppmのPb、50質量ppmのFe、平均粒子径2μm)を、1869gの脱ミネラル水に懸濁させ、18時間撹拌し、均質に分布させた。酢酸ビニルとラウリン酸ビニルの共重合体を含む有機バインダー78.4gを、50質量%濃度の水性分散体の形態で、この懸濁液に加えた。流動床装置において、この懸濁液820gを、寸法が7mm×7mm×4mmのリング状の2kgのステアタイト(ケイ酸マグネシウム)に噴霧し、乾燥させた。450℃において1時間触媒を焼成した後、ステアタイトリングに施された活性組成物の量は9.1%であった。分析された活性組成物の化学組成は、7.1%のV
2O
5、1.8%のSb
2O
3、0.38%のCs、残りがTiO
2であった。
【0038】
触媒領域CZ2:
懸濁液の化学組成を変更してCZ1と同様に製造。触媒を450℃で1時間焼成した後、ステアタイトリングに施された活性組成物の量は8.5%であった。分析された活性組成物の化学組成は、7.95%のV
2O
5、2.7%のSb
2O
3、0.31%のCs、残りが平均BET表面積が18m
2/gのTiO
2であった。
【0039】
触媒領域CZ3:
懸濁液の化学組成を変更してCZ1と同様に製造。触媒を450℃で1時間焼成した後、ステアタイトリングに施された活性組成物の量は8.5%であった。分析した活性組成物の化学組成は、7.1%のV
2O
5、2.4%のSb
2O
3、0.10%のCs、残りが平均BET表面積が17m
2/gのTiO
2であった。
【0040】
触媒領域CZ4
懸濁液の化学組成を変更し、Fuji TA 100Cの代わりにFuji TA 100CT(アナターゼ、BET表面積27m
2/g)を使用してCZ1と同様に製造。触媒を450℃で1時間焼成した後、ステアタイトリングに施された活性組成物の量は9.1%であった。分析した活性組成物の化学組成は、20%のV
2O
5、0.38%のP、残りが平均BET表面積が23m
2/gのTiO
2であった。
【0041】
例2(非本発明)
触媒領域CZ5:
白安鉱の含有量が少ない三酸化アンチモン等級(例えば、Antraco製Triox white 白安鉱含有量=0.015、方安鉱含有量=0.985、99.3%のSb
2O
3含有量、0.3質量%のAs
2O
3、0.18質量%のPbO、0.02質量%の酸化鉄、平均粒径1.5μm)を使用したこと以外はCZ1と同様に製造。
【0042】
触媒領域CZ6:
白安鉱の含有量が少ない三酸化アンチモン等級(例えば、Antraco製Triox white 白安鉱含有量=0.015、方安鉱含有量=0.985、99.3%のSb
2O
3含有量、0.3質量%のAs
2O
3、0.18質量%のPbO、0.02質量%の酸化鉄、平均粒径1.5μm)を使用したこと以外はCZ2と同様に製造。
【0043】
触媒領域CZ7:
白安鉱の含有量が少ない三酸化アンチモン等級(例えば、Antraco製Triox white 白安鉱含有量=0.015、方安鉱含有量=0.985、99.3%のSb
2O
3含有量、0.3質量%のAs
2O
3、0.18質量%のPbO、0.02質量%の酸化鉄、平均粒径1.5μm)を使用したこと以外はCZ3と同様に製造。
【0044】
例3(本発明によるモデル管スケールでのo−キシレンの無水フタル酸への酸化)
o−キシレンの無水フタル酸への触媒酸化を、内径が25mmの管を有する塩浴冷却管型反応器内で行った。反応器の入口から反応器の出口まで、130cmのCZ1、70cmのCZ2、60cmのCZ3及び60cmのCZ4を、長さ3.5m、内径25mmの鉄管に導入した。この鉄管は温度を調整するための塩溶融物に取り囲まれていた;外径が4mmであり内蔵プルアウト式素子を有するシース熱電対が触媒温度の測定するために機能した。
【0045】
30〜100g/標準m
3の99.2質量%濃度のo−キシレン負荷を有する4.0標準m
3/hの空気を管の頂部から下方に送通した。これにより表1に要約した結果を得た(「PAn収率」は、100%濃度のo−キシレンに対して得られた無水フタル酸の量の質量パーセントの量である。)。
【0046】
例4(モデル管スケールでのo−キシレンの無水フタル酸への酸化(非本発明))
反応器の入口から反応器の出口まで、130cmのCZ5、70cmのCZ6、60cmのCZ7及び60cmのCZ4を含む触媒床を用いたこと以外は例3を参照。
【0047】
【表2】
【0048】
表1の例3及び4の比較は、例3における触媒の触媒活性が例4のものよりも高いことを示している。そのため、例3(本発明)の塩浴温度は更に低下させることができ、o−キシレン及びフタリドの含有量が低いP
An収率は、例4(非本発明)よりも著しく高い。
【0049】
例5(工業的規模でのo−キシレンの無水フタル酸への酸化(本発明))
o−キシレンから無水フタル酸への触媒酸化を、管の内径が25mmの15105本の管を有する塩浴冷却管型反応器で行った。反応器の入口から反応器の出口まで、130cmのCZ1、90cmのCZ2、60cmのCZ3及び60cmのCZ4を導入した。温度データを記録するため、反応器の管の一部に熱電体を取り付けた。0〜100g/標準m
3のo−キシレン負荷(純度約99質量%)を有する4.0標準m
3/hの空気を管に送通した。反応器の出口のガスにおいてPAn収率を測定し、100%濃度のo−キシレンに対する質量%(反応したo−キシレン1kg当たりのPAnのkg)を表2に示している。
【0050】
例6(工業的規模でのo−キシレンの無水フタル酸への酸化(非本発明))
反応器の入口から反応器の出口まで130cmのCZ5、90cmのCZ6、60cmのCZ7及び60cmのCZ4を含む触媒床を用いたこと以外は例5を参照。
【0051】
【表3】
【0052】
表2の例5及び6の比較は、例5の触媒の触媒活性が例6のものよりも高いことを示している。そのため、例5(本発明)における塩浴温度は更に低下させることができ、o−キシレンとフタリドの含有量が低いPAn収率は例6(非本発明)よりも著しく高い。