特許第5973792号(P5973792)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973792
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】MEMS素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B81C 1/00 20060101AFI20160809BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20160809BHJP
   H04R 31/00 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   B81C1/00
   B81B3/00
   H04R31/00 C
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-124957(P2012-124957)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-248710(P2013-248710A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098372
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 保人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏
(72)【発明者】
【氏名】落合 洋介
(72)【発明者】
【氏名】福留 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】臼井 孝英
(72)【発明者】
【氏名】掛札 尚
(72)【発明者】
【氏名】成田 健司
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩希
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−058866(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0158279(US,A1)
【文献】 特開2009−060600(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0104825(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81B 1/00−7/04
B81C 1/00−99/00
H04R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準層上に下部犠牲層を形成し、この下部犠牲層の一部を除去して段差部を形成する段差形成工程と、
上記下部犠牲層上に上部犠牲層を形成し、上記段差部の上に先鋭溝を持つ凹部を形成する凹部成形工程と、
上記上部犠牲層上に絶縁膜を形成すると共に、この絶縁膜に上記凹部を露出する貫通孔を設ける絶縁膜形成工程と、
この絶縁膜形成工程で得られた絶縁膜上に導電膜を形成すると共に、上記凹部の先鋭溝を埋めるように導電膜を形成する導電膜形成工程と、
少なくとも上記凹部の上記下部/上部犠牲層を選択的に除去することにより、上記基準層と上記絶縁膜の間を中空構造として、上記絶縁膜の貫通孔から突出する導電体の先鋭化突起を形成する工程と、を含むMEMS素子の製造方法。
【請求項2】
基準層上に下部犠牲層を形成し、この下部犠牲層の一部を除去して段差部を形成する段差形成工程と、
上記下部犠牲層上に上部犠牲層を形成し、上記段差部の上に先鋭溝を持つ凹部を形成する凹部成形工程と、
上記凹部の先鋭溝を埋めるようにして上記上部犠牲層上に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
上記絶縁膜の上に導電膜を形成する導電膜形成工程と、
少なくとも上記凹部の上記下部/上部犠牲層を選択的に除去することにより、上記基準層と上記絶縁膜の間を中空構造として、上記絶縁膜に絶縁体の先鋭化された突起を形成する工程と、を含むMEMS素子の製造方法。
【請求項3】
上記導電膜を絶縁膜とし、上記絶縁膜を導電膜として、この導電膜に導電体の先鋭化突起を形成したことを特徴とする請求項記載のMEMS素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はMEMS素子の製造方法、特にマイクロフォン、各種センサ、スイッチ等として用いられる容量型のMEMS素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体プロセスを応用したMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術において、半導体基板上の絶縁膜表面に固定電極を形成し、それに対向する電極(可動電極)を可動部とし、これら固定電極と可動電極の間を中空(エアーギャップ)にして構成される容量型MEMS素子の形成技術は広く知られている。このMEMS素子は、例えば可動部が圧力等の力学量の作用により変位するように構成され、その変位量を電気的信号に変換するようになっている。このような容量型のMEMS素子では、犠牲層と呼ばれる中間膜を介して固定電極及び可動電極を形成し、最終的には上記中間膜を化学的に除去(エッチング)して、両電極間を中空構造に形成する。
【0003】
一般的に、上記犠牲層を除去するエッチングには、沸酸系の溶液を用いたウェットエッチング、或いは沸酸系のガスを用いたドライエッチングが用いられる。比較的安価にMEMS素子を作製する場合は、従来のウェットエッチングがよいが、エッチング後に使われる置換液が乾燥する際に、電極間に表面張力による力が働き、可動電極が固定電極に接着し、固着する現象が起きる。この固着した電極は、引き離すことが難しく、結果として可動部が動作しなくなり、MEMS素子のセンサ等の機能が阻害され、歩留りも低下してしまう。
【0004】
図7には、下記特許文献1等で行われている従来の可動部(可動電極)の形成方法が示されており、まず図7(a)において、半導体基板1上に犠牲層2を堆積し、図7(b)では、レジスト3を用いた既存のフォトリソグラフィー及びエッチング技術により、上記犠牲層2を加工することで、段差部4が形成される。このとき、段差部4の先端(底側)が少し細くなるように犠牲層2はエッチングされる。その後、図7(c)のように、上記犠牲層2の上に可動電極5が形成され、この可動電極5には上記段差部4の存在により先端が少し細くなる突起5aが形成される。また、この可動電極5には、この犠牲層2をエッチングするための貫通孔5bが形成される。最後に、図7(d)のように、スペーサ部2aを残すようにして、上記貫通孔5bから犠牲層2がエッチングされる。なお、半導体基板1側には、図示していないが、固定電極や信号線が形成される。
【0005】
上記のようにして、半導体基板1上の犠牲層2のスペーサ部2aに支持され、かつ基板1側からエアーギャップGを持つ可動電極5が製作される。そして、この可動電極5には先端が少し細い突起5aが形成され、この突起5aによって可動電極5の半導体基板1側(固定電極や信号線等)への固着が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2009−9884号公報
【特許文献2】特許第3500780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した容量型のMEMS素子の製造において、半導体基板1側の電極等と可動電極5との固着を防止するための突起5aは、仮に両者が触れた場合でも容易に離れるようにするため、その先端面の接触面積を小さくすることが好ましい。このため、従来では、露光装置の解像限界を超えたフォトリソグラフィー技術を使い、図7(b)の段差部4の形成では、レジスト3の底部の形状を細らせながら、一定の深さまで犠牲層2をエッチングすることで、先端が尖った突起を形成するようにしている。
【0008】
しかしながら、上記フォトリソグラフィー技術を用いた方法では、露光装置性能の許容範囲を超えており、装置管理のばらつき等を考慮すると、突起5aの先端を安定して細く作製することは困難である。また、上記特許文献1,2では、犠牲層2のエッチング技術について特に記述がないことから、エッチング時間を固定して加工していると考えられるが、その場合、突起5a形成のための段差4の深さも安定して作製することは困難である。
【0009】
更に、マイクロフォンのような容量型MEMSセンサでは、半導体基板上の絶縁膜(犠牲層)をストッパ層とし、半導体基板をその裏面側からエッチングすることで、バックチャンバーが作製され、その後、可動電極と固定電極の間の犠牲層がエッチングされる。このとき、可動電極と半導体基板の間の絶縁層もエッチングされることから、この可動電極が半導体基板に吸着し固着することも生じる。従って、この場合は、可動電極と固定電極の間だけでなく、可動電極と半導体基板の間についても、固着しないような対策が必要である。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、露光装置保証内のフォトリソグラフィー技術を用い、犠牲層のエッチング量を制御することで、固着防止の高い先鋭化された突起を安定して作製できるMEMS素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1の発明に係るMEMS素子の製造方法は、基準層上に下部犠牲層を形成し、この下部犠牲層の一部を除去して段差部を形成する段差形成工程と、上記下部犠牲層上に上部犠牲層を形成し、上記段差部の上に先鋭溝を持つ凹部を形成する凹部成形工程と、上記上部犠牲層上に絶縁膜を形成すると共に、この絶縁膜に上記凹部を露出する貫通孔を設ける絶縁膜形成工程と、この絶縁膜形成工程で得られた絶縁膜上に導電膜を形成すると共に、上記凹部の先鋭溝を埋めるように導電膜を形成する導電膜形成工程と、少なくとも上記凹部の上記下部/上部犠牲層を選択的に除去することにより、上記基準層と上記絶縁膜の間を中空構造として、上記絶縁膜の貫通孔から突出する導電体の先鋭化突起を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項に係る発明は、基準層上に下部犠牲層を形成し、この下部犠牲層の一部を除去して段差部を形成する段差形成工程と、上記下部犠牲層上に上部犠牲層を形成し、上記段差部の上に先鋭溝を持つ凹部を形成する凹部成形工程と、上記凹部の先鋭溝を埋めるようにして上記上部犠牲層上に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、上記絶縁膜の上に導電膜を形成する導電膜形成工程と、少なくとも上記凹部の上記下部/上部犠牲層を選択的に除去することにより、上記基準層と上記絶縁膜の間を中空構造として、上記絶縁膜に絶縁体の先鋭化された突起を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項に係る発明は、上記導電膜を絶縁膜とし、上記絶縁膜を導電膜として、この導電膜に導電体の先鋭化突起を形成したことを特徴とする。
【0015】
上記請求項1の構成によれば、作製される突起の高さに応じた厚さの下部犠牲層を形成すると共に、この下部犠牲層に段差部を設け、この段差部に上部犠牲層を形成(堆積)することで、段差部の上に所定のステップカバレッジ(段差部での膜の被覆状態)で先鋭溝を持つ犠牲層凹部が形成される。この後、上部犠牲層上に、凹部を露出する貫通孔が設けられた絶縁膜を形成し、この絶縁膜の上に凹部の先端溝を埋めるようにして導電膜を形成し、スペーサ部等を残して下部犠牲層と上部犠牲層を除去することで、基準層(基板)側に対し空間を介して絶縁膜が形成され、かつこの絶縁膜の空間側に導電膜の先鋭化された突起が形成される。
【0016】
上記請求項の構成によれば、上部犠牲層上に絶縁膜を形成した後、この絶縁膜の上に導電膜を形成し、スペーサ部等を残して下部犠牲層と上部犠牲層を除去することで、基準層(基板)側に対し空間を介して絶縁膜が形成され、かつこの絶縁膜から空間側に先鋭化された絶縁体突起が形成される。また、上記導電膜と絶縁膜を逆にし、導電膜に先鋭化突起を形成することもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のMEMS素子の製造方法によれば、露光装置保証内のフォトリソグラフィー技術を用い、犠牲層のエッチング量を制御すること、特に下部犠牲層の厚み、段差部の寸法(直径、厚み)により段差部上の犠牲層の被覆形状を制御することで、固着防止の高い先鋭化された突起を安定して作製することができ、半導体基板の信号線等と電極との固着や対向する電極の固着を良好に防止することが可能になる。従って、製品の高歩留化を向上させ、コスト低減を図ることができる。
【0018】
また、本発明で製造されたMEMS素子によれば、先鋭化された突起により電極等の固着が良好に防止される。
更に、可動電極と固定電極の間だけでなく、可動電極と半導体基板の間の固着が防止可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の参考第1実施例に係る容量型MEMS素子の構成を示し、図(A)はMEMS素子の断面図、図(B)は図(A)の突起部の下面図、図(C)は突起の拡大斜視図である。
図2参考第1実施例の容量型MEMS素子の製造方法における第1下部犠牲層形成[図(a)]から第2下部犠牲層形成[図(d)]までの工程を示す図である。
図3参考第1実施例の容量型MEMS素子の製造方法における第2上部犠牲層形成[図(e)]から第2絶縁膜形成[図(g)]までの工程を示す図である。
図4参考第1実施例の容量型MEMS素子の製造方法におけるシリコン基板の一部の除去[図(h)]から犠牲層の除去[図(i)]までの工程を示す図である。
図5参考実施例における先鋭突起形成のための先鋭溝を持つ凹部の構成を説明する断面図である。
図6参考第2実施例の容量型MEMS素子の製造方法を示す工程図である。
図7】従来の容量型MEMS素子の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、本発明を説明するために参考となる第1実施例に係る容量型MEMS素子の構成が示され、図2乃至図4には、第1実施例の容量型MEMS素子の製造方法が示されており、この第1実施例のMEMS素子(センサ)は例えば小型マイクロフォン用トランスデューサーである。
【0021】
図1において、MEMS素子は、シリコン基板10にその中央部をエッチングしたバックチャンバー23が備えられ、このシリコン基板10の上に第1下部犠牲層11及び第1上部犠牲層12から形成したスペーサ部(絶縁膜)25に支持される形で、可動電極膜14と第1絶縁膜15が形成される。この可動電極膜14では、その貫通孔から下側に突出するように、第1絶縁膜15の一部から構成される絶縁体の第1突起15Pが設けられており、この第1突起15Pは、後述するが、段差部に対し所定のステップカバレッジで形成した凹部先鋭溝の転写により、その底面周囲(縁部)の先端が尖った状態に形成される。
【0022】
また、上記可動電極膜14の上方には、第2下部犠牲層17及び第2上部犠牲層18から形成したスペーサ部(絶縁膜)26に支持される形で、固定電極膜19と第2絶縁膜20が形成される。この固定電極膜19でも、その貫通孔から下側に突出するように、第2絶縁膜20の一部から構成される絶縁体の第2突起20Pが設けられており、この第2突起20Pも、段差部に対し所定のステップカバレッジで形成した凹部先鋭溝の転写により、その底面周囲の先端が尖った状態に形成される。なお、図の2つの配線22は、導電性材料により形成され、可動電極膜14と固定電極膜19のそれぞれを外部へ引き出すための配線である。
【0023】
このような構成により、先鋭化された第1突起15Pは、シリコン基板10と可動電極膜14の間に形成されるエアーギャップGにおいて、可動電極膜14とシリコン基板10の固着を良好に防止し、また先鋭化された第2突起20Pは、可動電極膜14と固定電極膜19の間に形成されるエアーギャップGにおいて、可動電極膜14と固定電極膜19の固着を良好に防止することができる。
【0024】
図2乃至図4には、参考実施例の容量型MEMS素子の製造方法が示されている。まず、図2(a)では、結晶方位(100)面の厚さ約420μmのシリコン基板(基準層)10上に、第1突起15Pの長さ(高さ)と略同一の厚さの絶縁体の例えば厚さ約0.1μmの第1下部犠牲層(熱酸化膜)11が形成され、既存のフォトリソグラフィー及びエッチング技術にて第1下部犠牲層11の一部を除去して第1段差部D(下部犠牲層の開口部で、第1突起形成領域)が作られる。この第1段差部Dのマスクレイアウト寸法は、例えば直径2μmの円形とする。
【0025】
図2(b)では、上記第1下部犠牲層11の上面に、絶縁体の第1上部犠牲層12として、厚さ約0.3μmのUSG(Undoped Silicate Glass)膜が堆積され、これにより第1段差部Dの上に第1凹部12Fが形成される。実施例では、第1段差部Dにおける第1上部犠牲層12の被覆形状(ステップカバレッジ)を約50%とすることで、深さ約0.1μmの円形先鋭溝を持つ第1凹部12Fを形成する。なお、第1下部犠牲層11と第1上部犠牲層12で形成される最終的な絶縁膜は、約0.4μmの厚さとなる。
【0026】
図5には、下部犠牲層の段差部に形成される上部犠牲層の凹部が示されており、a:上部犠牲層の厚み、b:段差縁から溝先端(深さ方向先端)までの長さ、c:凹部中央部から溝先端までの長さとすると、ステップカバレッジであるb/aを約0.5とすることで、上記第1凹部12Fの場合は、c≒0.1μmとなる先鋭溝が形成される。
【0027】
図2(c)では、図2(b)の第1上部犠牲層12の上面に、可動電極膜(第1導電膜)14として厚さ約0.4μmの導電性ポリシリコン膜が形成され、上記第1凹部12Fの部分の可動電極膜(14)についてはフォトリソグラフィー及びエッチング技術にて除去することで、この第1凹部12Fの上方に電極膜の貫通孔が形成される。次いで、可動電極膜14の上に、厚さ約0.2μmの第1絶縁膜(窒化膜)15を堆積することにより、第1凹部12Fの上に先鋭化された第1突起15Pが形成される。即ち、この第1突起15Pは図5で説明した第1上部犠牲層12の第1凹部12Fの先鋭溝が転写されて、底面周囲(円形縁)の先端が尖った形状となる。なお、第1絶縁膜15は、後述する第2突起を形成する際の基準層となる。
【0028】
図2(d)では、第2突起20Pの長さ(高さ)と略同一の厚さの絶縁体の例えば膜厚約0.1μmの第2下部犠牲層(USG膜)17が形成され、フォトリソグラフィー及びエッチング技術にて第2下部犠牲層17の一部を除去して第2段差部D(第2突起形成領域)が作られる。この第2段差部Dのマスクレイアウト寸法は、例えば直径5μmの円形とする。
【0029】
図3(e)では、上記第2下部犠牲層17の上面に、絶縁体の第2上部犠牲層(USG膜)18が厚さ約2.4μmで堆積され、これにより第2段差部Dに第2凹部18Fが形成される。この場合も、第2段差部Dにおける第2上部犠牲層18の被覆形状(ステップカバレッジ)を約50%とすることで、深さ約0.1μmの円形先鋭溝を持つ第2凹部18Fを形成する。なお、第2下部犠牲層17と第2上部犠牲層18で形成される最終的な絶縁膜は、約2.5μmの厚さとなる。
【0030】
図3(f)では、図3(e)の第2上部犠牲層18の上面に、固定電極膜(第2導電膜)19として厚さ0.6μmの導電性ポリシリコン膜が形成され、上記第2凹部18Fの部分の固定電極膜についてはフォトリソグラフィー及びエッチング技術にて除去することで、この第2凹部18Fの上方に電極膜の貫通孔が形成される。このとき、同時に固定電極膜19には、後に第2下部/上部犠牲層17,18等を除去するための貫通孔19aが作られる。次いで、固定電極膜19の上に、厚さ約0.2μmの絶縁膜(窒化膜)20を堆積することにより、第2凹部18Fの上に先鋭化された第2突起20Pが形成される。即ち、この第2突起20Pは、図5で説明した第2上部犠牲層18の第2凹部18Fの先鋭溝が転写されて、底面周囲の先端(円形縁)が尖った形状となる。
【0031】
図3(g)では、AlSi材料からなる膜厚1.0μm程度の配線部(可動電極14,固定電極19に接続される配線)22がスパッタリング法等にて形成され、この配線部22は既知のリソグラフィー及びエッチング技術を用いて所定の大きさに加工される。
【0032】
図4(h)では、シリコン基板10の裏側から第1下部/上部犠牲層(絶縁層)11,12が露出するまで(この犠牲層11,12をストッパ層として)、リソグラフィー及びエッチング技術を用いてパターン加工することで、シリコン基板10の中央部にバックチャンバー23が形成される。上記エッチング技術としては、SF6系ガス等による深堀ドライエッチングが用いられる。
【0033】
図4(i)では、上記バックチャンバー23を介して第1下部/上部犠牲層11,12が除去されると共に、固定電極膜19の貫通孔19aを介して第2下部/上部犠牲層(USG膜)17,18が除去される。この犠牲層の除去は、配線材料に対してエッチング選択比の高い沸酸系の混酸水溶液を用いたウェットエッチングにより行われ、これによって、シリコン基板10と可動電極膜14の間、そして可動電極膜14と固定電極膜19の間が中空構造となる。即ち、第1下部/上部犠牲層11,12の残りの部分からなるスペーサ部(支持層)25に支持されることで、シリコン基板10−可動電極膜14間に所定のエアーギャップGが形成され、第2下部/上部犠牲層17,18の残りの部分からなるスペーサ部26に支持されることで、可動電極膜14−固定電極膜19間にエアーギャップGが形成される。
【0034】
そして、図1(A),(B)にも示されるように、可動電極膜14上の第1絶縁膜15には、可動電極膜14の貫通孔から下側へ突出するように第1突起15Pが形成され、固定電極膜19上の第2絶縁膜20には、固定電極膜19の貫通孔から下側へ突出するように第2突起20Pが形成されることになり、これら第1突起15Pと第2突起20Pは、図1(C)に示されるように、円形底面の周縁の先端が鋭く尖った絶縁体となる。このような絶縁体の第1突起15Pにより、シリコン基板10に対する可動電極膜14の固着が防止され、また絶縁体の第2突起20Pにより、固定電極膜19に対する可動電極14の固着が防止される。
【0035】
上記参考実施例の第1突起15P及び第2突起20Pは、露光装置保証内のフォトリソグラフィー技術を使うことができ、その突起長は、第1及び第2下部犠牲層11,17の厚み、段差部D,Dの寸法(直径、深さ)で制御でき、また突起先端形状は、第1及び第2上部犠牲層12,18の被覆状態(形状)で制御でき、従来よりも安定して作製することが可能となる。
【0036】
更に、参考第1実施例によれば、可動電極14と固定電極19の間の固着だけでなく、可動電極14とシリコン基板10の間の固着も防止できるという利点がある。
そして、本発明の実施例は、上記電極膜14,19を絶縁膜、上記絶縁膜15,20を電極膜とし(それぞれの膜厚は適した厚さに変更し)、この電極膜に対して先鋭化突起を形成するようにしたものである
また、上記参考第1実施例では、可動電極膜14、固定電極膜19の上に絶縁膜15,20を形成するようにしたが、本発明の他の実施例は、この可動電極膜14、固定電極膜19の下に絶縁膜を形成し、この絶縁膜に先鋭化突起を設けるようにしたものである。
【0037】
図6には、参考の第2実施例の容量型MEMS素子の製造方法が示されており、この第2実施例は、図7の従来例と同様に電極に突起を形成するものである。
図6において、半導体基板30の上に、突起33Pの長さと略同一の厚さの下部犠牲層(熱酸化膜)31が堆積され、レジスト36を用いたフォトリソグラフィー及びエッチング技術にて下部犠牲層31の一部が除去されることで、円形の段差部D(突起形成領域)が設けられる。その後、最終的な絶縁層の厚みを考慮した上部犠牲層(USG膜)32を堆積することにより、段差部Dでの上記犠牲層32の被覆形状(ステップカバレッジ)から、段差部Dの上方に底面周囲が先鋭溝となる凹部32Fが形成される。この凹部32Fでは、下部犠牲層31及び上部犠牲層32の厚み、段差部Dの寸法を適正に設定することで、所望の先鋭溝が形成できることになる。
【0038】
次いで、上部犠牲層32の上に、可動電極33が形成されると共に、下部/上部犠牲層31,32をエッチングするための貫通孔33aが形成される。その後、この貫通孔33aから下部/上部犠牲層31,32をエッチングし、除去することにより、この下部/上部犠牲層31,32の一部からなるスペーサ部34が形成さる。従って、可動電極33は、スペーサ部34に支持された状態で、半導体基板30上に形成された固定電極(或いは信号線)等に対しエアーギャップGを介して配置されることになる。
【0039】
そして、上記可動電極33の下側には、上記凹部32Fの先鋭溝が転写されることで、先鋭化された突起33Pを形成できることになり、この先鋭化された導電体の突起33Pによっても、半導体基板30側の固定電極等に対する固着が防止される。なお、この突起33Pも、露光装置保証内のフォトリソグラフィー技術を使い、その突起長は、主に下部犠牲層31の厚みで制御でき、その先端形状は上部犠牲層32の被覆状態で制御することができる。
【0040】
記実施例では、円形の段差部D,D,Dとし、突起15P,20P,33Pは、円形底面の円周縁が尖った形状となるようにしたが、これらの段差部D,D,Dはその他の形状でもよく、また突起15P,20P,33Pは、逆円錐形の先端のように、中心部が先鋭化される形状等としてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1,30…半導体基板、 2…犠牲層、
5,14,33…可動電極、10…シリコン基板、
11…第1下部犠牲層、 12…第1上部犠牲層、
12F…第1凹部、 15…第1絶縁膜、
15P…第1突起、 17…第2下部犠牲層、
18…第2上部犠牲層、 18F…第2凹部、
19…固定電極、 20…第2絶縁膜、
20P…第2突起、 23…バックチャンバー、
25,26,34…スペーサ部、
31…下部犠牲層、 32…上部犠牲層、
32F…凹部、 33P…突起、
…第1段差部、 D…第2段差部、
…段差部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7