特許第5973832号(P5973832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5973832-増幅器及び放射線検出器 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973832
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】増幅器及び放射線検出器
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/34 20060101AFI20160809BHJP
   H03F 3/08 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   H03F3/34 Z
   H03F3/08
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-172332(P2012-172332)
(22)【出願日】2012年8月2日
(65)【公開番号】特開2014-33315(P2014-33315A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】512202440
【氏名又は名称】ポリテクニコ ディ ミラノ
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(72)【発明者】
【氏名】カルロ フィオリーニ
(72)【発明者】
【氏名】ルカ ボンベリ
【審査官】 柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03582675(US,A)
【文献】 特開平05−095237(JP,A)
【文献】 特開2002−221541(JP,A)
【文献】 米国特許第05252928(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/34
H03F 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1増幅回路と、該第1増幅回路の入力端及び出力端の間に接続されたキャパシタと、該キャパシタを放電させるためのスイッチとを備える増幅器において、
1倍よりも小さい正の利得を有する第2増幅回路を備え、
該第2増幅回路の入力端が前記第1増幅回路の出力端に接続され、
前記第2増幅回路の出力端前記第1増幅回路の入力端との間に前記スイッチ接続されており、
前記第1増幅回路の入力端に信号が入力され、前記第1増幅回路の出力端から外部へ信号を出力するようにしてあること
を特徴とする増幅器。
【請求項2】
放射線検出時に電荷信号を発生する放射線検出素子と、
該放射線検出素子が発生した電荷信号を入力され、入力された電荷信号を電圧信号に変換する請求項1に記載の増幅器と
を備えることを特徴とする放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出器に関し、より詳しくは、放射線検出素子から出力された電荷信号を電圧信号へ変換する増幅器、及びその増幅器を備えた放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
X線等の放射線を検出する放射線検出器は、SDD(Silicon Drift Detector)等の放射線検出素子を備える。放射線検出素子は、検出した放射線に応じた電荷信号を出力し、電荷信号はプリアンプによって電圧信号に変換され、更に電圧信号は増幅され、増幅された電圧信号に基づいてスペクトル生成等の信号処理が行われる。
【0003】
図2は、従来の放射線検出器のプリアンプの回路図である。増幅回路31に並列に、帰還用のキャパシタ33と常開のスイッチ34とが夫々接続されている。放射線検出素子からプリアンプへ電荷信号が入力される都度、キャパシタ33には電荷が溜まっていくので、プリアンプが出力する電圧信号の値は上昇をし続けることになる。そこで、電圧信号が所定の値に達した場合にスイッチ34を閉じることにより、キャパシタ33に溜まった電荷を放電させるリセットを行う必要がある。リセット中は放射線検出ができない不感時間となる。不感時間を短くするためには、リセットに必要なリセット時間を短くする必要がある。特許文献1には、増幅回路においてリセット時間を短くするための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−4326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のプリアンプにおいてリセットを行った場合、増幅回路31の入力端と出力端とが短絡される。増幅回路31の入力端と出力端とが短絡された状態では、ループ利得が大きくなり、発振が発生し易い。従来、リセット時の発振を防止するために、増幅回路31内に補償容量を備えることが行われていた。補償容量を大きくすると位相余裕が大きくなり、発振が発生し難くなる。しかしながら、補償容量を大きくすると、増幅回路31の処理速度が遅くなる。このため、プリアンプが出力する電圧信号の立ち上がり時間及びリセット時間が長くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、回路の構成を改善することにより、発振の発生を抑制しながらも信号の立ち上がり時間及びリセット時間を短くすることができる増幅器及び放射線検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る増幅器は、第1増幅回路と、該第1増幅回路の入力端及び出力端の間に接続されたキャパシタと、該キャパシタを放電させるためのスイッチとを備える増幅器において、1倍よりも小さい正の利得を有する第2増幅回路を備え、該第2増幅回路の入力端が前記第1増幅回路の出力端に接続され、前記第2増幅回路の出力端前記第1増幅回路の入力端との間に前記スイッチ接続されており、前記第1増幅回路の入力端に信号が入力され、前記第1増幅回路の出力端から外部へ信号を出力するようにしてあることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る放射線検出器は、放射線検出時に電荷信号を発生する放射線検出素子と、該放射線検出素子が発生した電荷信号を入力され、入力された電荷信号を電圧信号に変換する本発明に係る増幅器とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、放射線検出器のプリアンプに用いられる増幅器は、信号の入出力が行われる第1増幅回路と、第1増幅回路に並列に接続されたキャパシタと、1倍より小さい正の利得を有する第2増幅回路とを備え、第2増幅回路は、第1増幅回路の入力端及び出力端の間にスイッチを介して接続されている。スイッチが閉じるとき、リセットが行われると共に、第1増幅回路から出力された信号が第2増幅回路で増幅されて再度第1増幅回路へ入力される。第2増幅回路の利得が1倍より小さいので、リセット時のループ利得は第1増幅回路のみを使用する場合のループ利得よりも小さくなり、発振が発生し難くなる。従って、第1増幅回路内の補償容量を従来よりも小さくすることができ、その結果、信号の立ち上がり時間及びリセット時間を短くすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明にあっては、放射線検出器のプリアンプに用いられる増幅器は、増幅回路内の補償容量を大きくせずとも、リセット時の発振の発生を抑制することができる。従って、発振の発生を抑制しながらも、増幅回路内の補償容量を従来よりも小さくして、放射線検出器のプリアンプの信号の立ち上がり時間及びリセット時間を短くすることが可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の放射線検出器の模式的回路図である。
図2】従来の放射線検出器のプリアンプの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
図1は、本発明の放射線検出器の模式的回路図である。放射線検出器は、X線等の放射線を検出するための放射線検出素子2を備えている。放射線検出素子2は、SDD等の半導体検出素子である。放射線検出素子2は、放射線が入射した場合に、放射線のエネルギーに比例した電荷信号を発生する。放射線検出素子2の出力端には、プリアンプ1が接続されている。プリアンプ1は本発明の増幅器である。放射線検出素子2からは電荷信号が出力され、プリアンプ1は、放射線検出素子2からの電荷信号を、放射線のエネルギーに比例した電圧信号に変換する。プリアンプ1の出力端には、放射線検出器の出力端が接続されている。
【0013】
放射線検出器は、例えば、X線検出装置に備えられ、放射線検出器の出力端はX線検出装置内でアンプを介して信号処理部に接続される。放射線検出器が出力した電圧信号は、アンプで増幅され、信号処理部で処理される。例えば、信号処理部は、各値の電圧信号をカウントし、検出したX線のスペクトルを取得する処理を行う。また例えば、放射線検出器は、蛍光X線分析装置に備えられる。蛍光X線分析装置は、試料からの蛍光X線を検出し、試料の蛍光X線分析を行う。
【0014】
プリアンプ1は、第1増幅回路11を備えている。放射線検出素子2から第1増幅回路11の入力端へ電荷信号が入力され、第1増幅回路11の出力端からプリアンプ1外へ電圧信号が出力される。第1増幅回路11に並列に、帰還用のキャパシタ13が接続されている。即ち、キャパシタ13は第1増幅回路11の入力端と出力端との間に接続されている。プリアンプ1は、更に、第2増幅回路12を備えている。第2増幅回路12は、1倍よりも小さい正の利得を有している。第2増幅回路12の入力端は第1増幅回路11の出力端に接続されており、第2増幅回路12の出力端は常開のスイッチ14を介して第1増幅回路11の入力端に接続されている。
【0015】
スイッチ14が開放されている状態では、第2増幅回路12は第1増幅回路11から電気的に分離されている。この状態では、プリアンプ1の利得は第1増幅回路11単独の利得と同一であり、第1増幅回路11からプリアンプ1外へ電圧信号が出力される。
【0016】
スイッチ14が閉状態になったとき、第2増幅回路12の出力端は第1増幅回路11の入力端に接続される。この状態では、キャパシタ13の両端は、第2増幅回路12及びスイッチ14を介して接続される。キャパシタ13に溜まった電荷は、第2増幅回路12及びスイッチ14を通じて放電される。このようにして、リセットが行われる。リセットの最中、第1増幅回路11から出力された信号は、第2増幅回路12及びスイッチ14を通じて第1増幅回路11へ再入力される。このとき、プリアンプ1の回路全体の利得は、第1増幅回路11の利得と第2増幅回路12の利得とを掛け合わせたものとなる。第2増幅回路12の利得は1倍よりも小さい正の利得であるので、プリアンプ1の回路全体のループ利得は第1増幅回路11のみを使用した場合のループ利得よりも小さくなる。
【0017】
リセットの最中に、プリアンプ1のループ利得は第1増幅回路11のみを使用した場合のループ利得よりも小さくなるので、位相余裕が大きくなり、リセット時に発振が発生し難い。このため、プリアンプ1は、第1増幅回路11内の補償容量を大きくせずとも、リセット時の発振の発生を抑制することができる。従って、プリアンプ1は、リセット時の発振の発生を抑制しながらも、第1増幅回路11の補償容量を従来よりも小さくすることができる。第1増幅回路11の補償容量が従来よりも小さくなることによって、第1増幅回路11の処理速度が従来よりも速くなり、プリアンプ1が出力する電圧信号の立ち上がり時間及びリセット時間を従来よりも短くすることができる。このように、本発明のプリアンプ1は、発振の発生を抑制しながらも、電圧信号の立ち上がり時間及びリセット時間を従来よりも短くすることが可能となる。電圧信号の立ち上がり時間及びリセット時間が短くなった結果、プリアンプ1を備える放射線検出器では、放射線検出の不感時間が短くなり、より効率的な放射線検出が可能となる。
【0018】
なお、図1に示したプリアンプ1の回路構成はプリアンプ1の最小構成であり、プリアンプ1はその他の回路素子を含んだ形態であってもよい。また、プリアンプ1は、集積回路で構成されていてもよい。また、本実施の形態においては、放射線検出素子として半導体検出素子を用いた例を示したが、本発明の放射線検出器は、検出した放射線に応じた電荷信号を出力する素子であればその他の放射線検出素子を用いた形態であってもよい。
【符号の説明】
【0019】
1 プリアンプ(増幅器)
11 第1増幅回路
12 第2増幅回路
13 キャパシタ
14 スイッチ
2 放射線検出素子
図1
図2