(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第二絶縁保護層と前記導電性インクを用いて形成した層(A−1)及び層(A−2)との間に高分子層(B)を有するものである請求項1〜5のいずれか1項記載のシールドフィルム。
前記導電性インクが、反応性官能基[X]として塩基性窒素原子含有基を有する化合物(a1)及び導電性物質(a2)を含有する導電性インクである請求項7記載のシールドフィルム。
前記塩基性窒素原子含有基を有する化合物(a1)が、ポリアルキレンイミン、または、オキシエチレン単位を含むポリオキシアルキレン構造を有するポリアルキレンイミンである請求項8記載のシールドフィルム。
前記反応性官能基[Y]が、ケト基、エポキシ基、カルボキシル基、N−アルキロール基、イソシアネート基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基からなる群より選ばれる1種以上である請求項7〜9のいずれか1項記載のシールドフィルム。
前記導電性インク(A)として金属ナノ粒子を主成分とするインクを用い、インクジェット印刷で開口率40〜90%の開口パターンと、前記開口パターンの開口内部に開口面積の15〜95%のパターンを形成する請求項12または13記載のシールドフィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のシールドフィルムは、ベース絶縁基材上に信号配線とグランド配線及び第一絶縁保護層が設けられたプリント配線板用のシールドフィルムであって、
前記第一絶縁保護層上の全面に積層された導電性接着剤層と、
前記導電性接着剤層上に膜厚0.5〜20μm、開口率40〜95%でパターン化された銅めっき層と、
前記銅めっき層上に導電性インクを用いて形成した層(A−1)と、
前記導電性接着剤層上の前記銅めっき層の開口内部に、導電性インクを用いて形成した層(A−2)と、
前記導電性接着剤層、前記銅めっき層、前記層(A−1)及び前記層(A−2)上に第二絶縁保護層とを有するものである。
【0019】
前記ベース絶縁基材は、プリント配線板の基材となるものである。前記ベース絶縁基材の材質としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、LCP(液晶ポリマー)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEI(ポリエーテルイミド)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PSF(ポリサルフォン)樹脂、PES(ポリエーテルサルフォン)樹脂、ポリアリレート樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアセタール、ナイロン、セラミックス、アルミナ、ムライト、ステアタイト、フォルステライト、ジルコニア、ガラス、ガラス・エポキシ樹脂、ガラスポリイミド、紙フェノール、セルロースナノファイバー等が挙げられる。
【0020】
また、前記ベース絶縁基材としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維等の合成繊維;綿、麻等の天然繊維などからなる基材を用いることもできる。前記繊維には、予め加工が施されていてもよい。
【0021】
前記ベース絶縁基材としては、後述する本発明のシールドプリント配線板が、折り曲げ可能な柔軟性を求められる用途に用いられる場合、柔軟でフレキシブルな支持体を用いることが好ましい。具体的には、フィルムまたはシート状の支持体を用いることが好ましい。
【0022】
フィルムまたはシート状のベース絶縁基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、液晶ポリマー(LCP)フィルム等が挙げられる。
【0023】
また、前記ベース絶縁基材は、後述する信号配線やグランド配線との密着性を向上するため、必要に応じて、その表面をサンドブラスト法、溶剤処理法等による表面の凹凸化処理、電気的処理(コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理)、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線・電子線照射処理、酸化処理等により処理をしたものを使用することができる。
【0024】
前記ベース絶縁基材の形状がフィルム状またはシート状の場合、フィルム状またはシート状の支持体の厚さは、通常、1〜5,000μm程度であることが好ましく、1〜300μm程度の厚さであることがより好ましい。また、本発明の導電性パターンをフレキシブルプリント基板等の屈曲性が求められるものに用いる場合には、前記ベース絶縁基材として、1〜200μm程度の厚さのフィルム状のものを用いることが好ましい。
【0025】
前記ベース絶縁基材としては、後述する信号配線やグランド配線を形成するために、市販の銅張基材を使用することができる。銅張基材を使用する場合、銅張基材上にレジスト材を設け、フォトマスクでパターンを露光した後、エッチング処理で配線部以外の銅を取り除いて配線パターンを形成することができる。
【0026】
また、信号配線やグランド配線は、前述の銅を主成分とした配線が使用できるとともに、その他の導電性物質で構成されていても良く、例えば、銀を主体とする導電性インクを印刷して形成した配線パターンを使用することも可能である。また、この導電性インクのパターン上に銅めっきやニッケルめっき等で厚膜化して配線とすることもできる。
【0027】
本発明のシールドプリント配線板は、信号配線とグランド配線の上に第一絶縁保護層が設けられる。この第一絶縁保護層としては、ポリイミドフィルム等の片面に接着剤を塗布したものや、感光性カバーレイフィルム等の感光性を有しており露光現像によりパターンが形成できるものや、液状カバーレイ、感光性液状カバーレイ、ソルダーレジスト等の液状の材料を塗工して絶縁保護層を形成することもできる。
【0028】
次に、本発明のシールドフィルムは、第一絶縁保護層上の全面に積層される導電性接着剤層と、前記導電性接着剤層上に膜厚0.5〜20μm、開口率40〜95%でパターン化された銅めっき層と、前記銅めっき層上に導電性インクを用いて形成した層(A−1)と、前記導電性接着剤層上の前記銅めっき層の開口内部に、導電性インクを用いて形成した層(A−2)と、第二絶縁保護層を有することを特徴とするシールドフィルムである。
【0029】
前記導電性接着剤層は、導電性物質を含有する接着性樹脂からなり、導電性物質としては、例えば、銅、銀、ニッケル、アルミニウム等の金属粉や金属ウィスカー、銅粉に銀めっきを施した銀コート銅粉、ニッケル粉に銀めっきを施した銀コートニッケル粉、ニッケル粉に金めっきを施した金コートニッケル粉、カーボン、樹脂粒子やガラスビーズに金属めっきを施したフィラー等が挙げられる。これらの導電性物質は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0030】
前記接着性樹脂は、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、アミド樹脂、アミドイミド樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、(メタ)アクリル−ブタジエン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂等の熱硬化性樹脂;ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、アクリルアクリレート等の紫外線硬化型樹脂などが挙げられる。これらの接着性樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0031】
本発明のシールドフィルムは、前記導電性接着剤層上に膜厚0.5〜20μm、開口率40〜95%でパターン化された銅めっき層を有する。前記銅めっき層のパターンとしては、その形状には特に制限はないが、要求されるシールド性、制御するインピーダンス等に応じて適宜選択することができる。前記銅めっき層の具体的なパターンとしては、メッシュ状のパターンが好ましく、開口部の形状は、正三角形、二等辺三角形、直角三角形等の三角形;正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形等の四角形;(正)五角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形等の(正)n角形(nは5以上の整数);円、楕円、星形などの幾何学図形が挙げられる。開口部は、等間隔で配置されていることが、電磁波のシールド性に優れるため好ましい。また、パターンの開口率は40〜95%の範囲とすることが好ましい。開口率は、シールドプリント配線板のインピーダンスを制御する上で重要な因子となるが、開口率が40%未満の場合、シールドプリント配線板の信号配線の線幅を調整することなくインピーダンスを制御できる範囲が小さくなり、開口率を95%以下とすることで、シールドプリント配線板の信号線のインピーダンスを所望の値とし、かつ、キャパシタンスを小さくして波形の鈍化を防止することができる。なお、本発明における開口率とは、前記銅めっき層において、銅めっき層が無い部分を開口部とした際の開口率である。また、銅めっき層の開口内部に位置する導電性インクを用いて形成した層(A−2)は、開口内部の非開口部といい、開口内部パターンということもある。
【0032】
前記銅めっき層の膜厚は0.5〜20μmの範囲である。前記銅めっき層の膜厚を0.2μm以上とすることで、シールドプリント配線板の信号線のインピーダンスを所望の値とし、かつ、キャパシタンスを小さくして波形の鈍化を防止することができる。前記銅めっき層の膜厚が20μmを超えるとシールドプリント配線板自体を薄型化するという要求を満たすことが難しくなるとともに、フレキシブルプリント配線板として使用する場合においては、屈曲性が大幅に低下する問題がある。さらに、銅めっき層の膜厚は、0.5〜8μmの範囲とすることが好ましい。
【0033】
前記銅めっき層の形成方法としては、銅箔から開口部のパターンをエッチング処理で取り除く方法が挙げられるが、この方法では製造方法が複雑となることや、銅めっき層を薄膜化しにくい問題がある。そこで、本発明では、前記銅めっき層を所望とする開口率でパターン化することが容易で、インピーダンスの制御における設計の自由度が高くなることから、後述する導電性インクを用いて形成した層(A−1)でパターンを作製した後、その上に前記銅めっき層を形成する。
【0034】
前記導電性インクは、上記の通り銅めっき層の下地としてパターンを作製するために使用されるが、その上に形成する銅めっき層との密着性や、銅めっき時のめっき析出性に優れることから、導電性物質(a2)として金属ナノ粒子を含有するものが好ましい。さらに、前記金属ナノ粒子は、後述する第二絶縁保護層との密着性に優れることから、高分子分散剤により分散された金属ナノ粒子であることが好ましい。
【0035】
前記高分子分散剤は、金属ナノ粒子に配位する官能基を有する高分子が好ましい。前記官能基としては、例えば、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、アセトアセトキシ基、リン原子含有基、チオール基、チオシアナト基、グリシナト基等が挙げられる。
【0036】
前記金属ナノ粒子としては、遷移金属またはその化合物が挙げられ、前記遷移金属の中でもイオン性の遷移金属が好ましい。前記イオン性の遷移金属としては、例えば、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト等の金属やこれら金属の複合体が挙げられる。これらの金属ナノ粒子は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの金属ナノ粒子の中でも、特に酸化劣化などの取り扱い上の問題点が少ないことやコストの面から、銀ナノ粒子が好ましい。
【0037】
また、前記導電性インクに含まれる導電性物質(a2)は、金属ナノ粒子に代えて、めっき核剤を用いることもできる。その場合には、前記遷移金属の酸化物、有機物によって表面被覆された金属等を使用することができる。これらのめっき核剤は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0038】
前記遷移金属の酸化物は、通常、不活性(絶縁)な状態であるが、例えば、ジメチルアミノボラン等の還元剤を用いて処理することによって金属を露出させ、活性(導電性)を付与することができる。
【0039】
また、前記有機物によって表面被覆された金属としては、乳化重合法等によって形成した樹脂粒子(有機物)中に金属を内在させたものが挙げられる。これらは、通常、不活性(絶縁)な状態であるが、例えば、レーザー等を用いて前記有機物を除去することによって、金属を露出させ、活性(導電性)を付与することできる。
【0040】
前記導電性物質(a2)としては、1〜100nm程度の平均粒子径を有する粒子状のものを使用することが好ましく、1〜50nmの平均粒子径を有するものを使用することが、マイクロメートルオーダーの平均粒子径を有する導電性物質を用いる場合と比較して、微細な導電性パターンが形成でき、後述する焼成後の抵抗値をより低下できることからより好ましい。なお、本発明において、平均粒子径は、前記導電性物質(a2)を分散良溶媒にて希釈し、動的光散乱法により測定した体積平均値である。この測定にはマイクロトラック社製「ナノトラックUPA」を用いることができる。
【0041】
本発明のシールドフィルムは、前記パターン化された銅めっき層の開口内部に、導電性インクを用いて形成した層(A−2)を有する。前記層(A−2)は、銅めっき層の開口内部を埋めて電磁波の遮蔽性を高める機能を発揮する。前記層(A−2)のパターンとしては、その形状には特に制限はないが、要求される電磁波シールド効果に応じて適宜選択することができ、電磁波の遮蔽性能を高くするためには、前記銅めっき層の開口面積の15〜95%の範囲に前記層(A−2)を形成することが好ましく、40〜95%の範囲がより好ましい。前記層(A−2)は、前記銅めっき層と接触していても良いが、前記銅めっき層を後述する電解銅めっき法で製造する場合は、前記層(A−2)は銅めっき層と接触していないことが好ましい。
【0042】
前記層(A−2)の具体的なパターン形状としては、例えば、正三角形、二等辺三角形、直角三角形等の三角形;正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形等の四角形;(正)五角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形等の(正)n角形(nは5以上の整数);円、楕円、星形等の幾何学図形;渦巻き形、リング形、コイル形、螺旋形などの形状が挙げられる。
【0043】
前記層(A−2)の膜厚は、0.02〜2μmの範囲が好ましい。前記層(A−2)の膜厚を0.02μm以上とすると、シールドプリント配線板の電磁波シールド効果を高めることができる。前記層(A−2)の膜厚を2μm未満とすることで、前記銅めっき層との膜厚に差を設けることができ、前記層(A−2)の膜厚を前記銅めっき層の膜厚より薄くすると、シールドプリント配線板のインピーダンスを所望の値に調整することが容易になるため好ましい。
【0044】
前記銅めっき層の膜厚は、前記層(A−2)の膜厚の3〜100倍とすることが好ましい。すなわち開口内部の金属層の膜厚を薄くし、開口パターン部の銅めっき層を厚くすることで、インピーダンスを所望の値とし、かつ、キャパシタンスを小さくして波形の鈍化を防止することができ、さらに電磁波の遮蔽も両立できる。
【0045】
前記層(A−2)を構成する導電性インクとしては、前記層(A−1)と同じものを使用することができる。
【0046】
前記層(A−2)は、導電性インクのみから形成されていても良いが、導電性インクの上に金属めっき層が形成されていても良い。金属めっき層としては、特に制限はないが、銅、ニッケル、金、銀、白金、パラジウム、クロム、スズ等が挙げられる。前記層(A−2)の上にめっきを施す方法としては、無電解めっき法で実施することができる。
【0047】
前記無電解めっき法は、例えば、前記層(A−2)のパターンを構成する導電性物質に、無電解めっき液を接触させることで、無電解めっき液中に含まれる金属を析出させ金属皮膜からなる無電解めっき層(被膜)を形成する方法である。
【0048】
前記無電解めっき液としては、例えば、金属と、還元剤と、水性媒体、有機溶剤等の溶媒とを含有するものが挙げられる。
【0049】
前記還元剤としては、例えば、ジメチルアミノボラン、次亜燐酸、次亜燐酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、フェノール等が挙げられる。
【0050】
また、前記無電解めっき液としては、必要に応じて、酢酸、蟻酸等のモノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマール酸等のジカルボン酸化合物;リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸化合物;グリシン、アラニン、イミノジ酢酸、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸化合物;イミノジ酢酸、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンジ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸等のアミノポリカルボン酸化合物などの有機酸、またはこれらの有機酸の可溶性塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等);エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物等の錯化剤を含有するものなどを使用することができる。
【0051】
前記無電解めっき液は、20〜98℃の範囲で使用することが好ましい。
【0052】
前記導電性インクを用いて形成した前記層(A−1)及び前記層(A−2)は、本発明の製造方法では後述する第二絶縁保護層の上に形成されるが、後述する第二絶縁保護層の表面と前記層(A−1)及び前記層(A−2)との密着性をより向上するため、この第二絶縁保護層を形成する高分子は、後述する反応性官能基[Y]を有しているものが好ましい。
【0053】
また、後述する第二絶縁保護層を形成する高分子が、後述する反応性官能基[Y]を有していない場合でも、第二絶縁保護層の表面に高分子を塗布、乾燥して高分子層(B)を設けた後、その上に前記層(A−1)及び前記層(A−2)を形成することで、後述する第二絶縁保護層の表面と前記層(A−1)及び前記層(A−2)との密着性をより向上することができる。また、前記高分子層(B)を形成する高分子は、後述する反応性官能基[Y]を有しているものが好ましい。
【0054】
後述する反応性官能基[Y]を有する高分子層(B)を設ける場合には、前記導電性インクとしては、前記銅めっき層と後述する第二絶縁保護層との密着性をさらに向上させるため、反応性官能基[X]を有する化合物(a1)及び前記導電性物質(a2)を含有するものが好ましい。
【0055】
前記化合物(a1)が有する反応性官能基[X]は、後述する反応性官能基[Y]との結合に関与するものであり、具体例としては、アミノ基、アミド基、アルキロールアミド基、カルボキシル基、無水カルボキシル基、カルボニル基、アセトアセトキシ基、エポキシ基、脂環エポキシ基、オキセタン環、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、(ブロック化)イソシアネート基、(アルコキシ)シリル基等を有する化合物、シルセスキオキサン化合物等が挙げられる。
【0056】
特に、後述する第二絶縁保護層との密着性をより向上させるため、前記反応性官能基[X]が塩基性窒素原子含有基であることが好ましい。
【0057】
前記塩基性窒素原子含有基を有する化合物中の塩基性窒素原子含有基としては、例えばイミノ基、1級アミノ基、2級アミノ基等が挙げられる。
【0058】
また、1分子中に複数の塩基性窒素原子含有基を有する化合物(a1)を用いることで、前記塩基性窒素原子含有基の一方は、前記層(A−1)及び前記層(A−2)のパターンを形成した際に、後述する第二絶縁保護層を形成する高分子、または前記高分子層(B)を形成する高分子が有する反応性官能基[Y]との結合に関与し、他方は、前記層(A−1)及び前記層(A−2)中に含まれる銀等の導電性物質(a2)との相互作用に寄与し、最終的に得られる前記銅めっき層と第二絶縁保護層との密着性をさらに向上できるため好ましい。
【0059】
前記塩基性窒素原子含有基を有する化合物(a1)は、前記導電性物質(a2)の分散安定性、及び後述する第二絶縁保護層との密着性をより向上できることから、ポリアルキレンイミン、または、オキシエチレン単位を含むポリオキシアルキレン構造を有するポリアルキレンイミンが好ましい。
【0060】
前記を有するポリアルキレンイミンとしては、ポリエチレンイミンとポリオキシアルキレンとが、直鎖状の結合したものであってもよく、前記ポリエチレンイミンからなる主鎖に対して、その側鎖に前記ポリオキシアルキレンがグラフトしたものであってもよい。
【0061】
前記ポリオキシアルキレン構造を有するポリアルキレンイミンの具体例としては、ポリエチレンイミンとポリオキシエチレンとのブロック共重合体、ポリエチレンイミンの主鎖中に存在するイミノ基の一部にエチレンオキサイドを付加反応させてポリオキシエチレン構造を導入したもの、ポリアルキレンイミンが有するアミノ基と、ポリオキシエチレングリコールが有する水酸基と、エポキシ樹脂が有するエポキシ基とを反応させたもの等が挙げられる。
【0062】
前記ポリアルキレンイミンの市販品としては、株式会社日本触媒製の「エポミン(登録商標)PAOシリーズ」の「PAO2006W」、「PAO306」、「PAO318」、「PAO718」等が挙げられる。
【0063】
前記ポリアルキレンイミンの数平均分子量は、3,000〜30,000の範囲が好ましい。
【0064】
前記化合物(a1)が有する反応性官能基[X]が、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、アセトアセトキシ基、リン原子含有基、チオール基、チオシアナト基、グリシナト基等である場合は、これらの官能基は金属ナノ粒子と配位する官能基としても機能するため、前記化合物(a1)は金属ナノ粒子の高分子分散剤としても用いることができる。
【0065】
前記導電性インクは、後述する各種印刷方式での印刷適性を付与するため、溶媒を用いて適正な粘度にすることが好ましい。前記溶媒としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等の水性媒体;アルコール溶剤、エーテル溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤等の有機溶剤が挙げられる。
【0066】
前記アルコール溶剤またはエーテル溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ステアリルアルコール、アリルアルコール、シクロヘキサノール、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0067】
前記ケトン溶剤としては、例えば、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等が挙げられる。また、前記エステル溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、3―メトキシブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート等が挙げられる。さらに、その他の有機溶剤として、シクロヘキサン、トルエン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、シクロオクタン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ドデシルベンゼン、テトラリン、トリメチルベンゼン等の非極性溶剤が挙げられ、他の溶媒と必要に応じて組み合わせて用いることができる。さらに、混合溶剤であるミネラルスピリット、ソルベントナフサ等の溶媒を併用することもできる。
【0068】
前記導電性インクは、例えば、前記高分子分散剤と、前記導電性物質と、必要に応じて前記溶媒とを混合することによって製造することができる。具体的には、ポリアルキレンイミン鎖と、親水性セグメントと、疎水性セグメントとを有する化合物を分散した媒体中に、予め調製した前記導電性物質のイオン溶液を加え、該金属イオンを還元することによって製造することができる。
【0069】
また、前記導電性インクには、水性媒体、有機溶剤等の溶媒中における導電性物質の分散安定性、被塗布面への濡れ性を向上するために、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、レオロジー調整剤等を加えてもよい。
【0070】
本発明では後述する第二絶縁保護層の上に前記導電性インクを印刷して、前記層(A−1)及び前記層(A−2)からなるパターンを形成するが、前記導電性インクを印刷する方法としては、例えば、インクジェット印刷法、反転印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法等が挙げられる。これらの印刷法の中でも、シールドプリント配線板のインピーダンスを制御するために銅めっき層のパターンを変更する場合において、パターンに応じた印刷版を作製する必要がなく、パターンの変更に容易に対応できるため、インクジェット印刷法が好ましい。
【0071】
前記インクジェット印刷法としては、一般にインクジェットプリンターといわれるものを使用することができる。具体的には、「コニカミノルタEB100、XY100」(コニカミノルタIJ株式会社製)、「ダイマティックス・マテリアルプリンターDMP−3000、DMP−2831」(富士フィルム株式会社製)等が挙げられる。
【0072】
また、高精細な金属層のパターンを作製する場合には、細線の印刷精度に優れる反転印刷法が好ましい。
【0073】
反転印刷法としては、凸版反転印刷法、凹版反転印刷法が知られており、例えば、各種ブランケットの表面に前記導電性インクを塗布し、非画線部が突出した版と接触させ、前記非画線部に対応する導電性インクを前記版の表面に選択的に転写させることによって、前記ブランケット等の表面に前記パターンを形成し、次いで、前記パターンを、前記第二絶縁保護層の上(表面)に転写させる方法が挙げられる。
【0074】
また、上記のように、後述する第二絶縁保護層の表面と前記層(A−1)及び前記層(A−2)との密着性をより向上する目的で高分子層(B)を設ける場合に、前記高分子層(B)を形成する高分子としては、例えば、ウレタン樹脂、ビニル樹脂、ウレタン−ビニル複合樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の各種樹脂と溶媒とを含有するものが挙げられる。
【0075】
前記高分子(B)として用いる樹脂の中でも、ウレタン樹脂、ビニル樹脂、ウレタン−ビニル複合樹脂が好ましく、ポリエーテル構造を有するウレタン樹脂、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂、ポリエステル構造を有するウレタン樹脂、アクリル樹脂、及び、ウレタン−アクリル複合樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂がより好ましい。また、ウレタン−アクリル複合樹脂は、密着性、導電性に優れた導電性パターンが得られるのでさらに好ましい。
【0076】
前記導電性インク中に前記反応性官能基[X]を有する化合物(a1)を含有する場合、前記高分子層(B)を形成する高分子は、反応性官能基[X]との反応性を有する官能基[Y]を有する化合物(b1)であることが好ましい。前記反応性官能基[Y]を有する化合物(b1)としては、例えば、アミノ基、アミド基、アルキロールアミド基、カルボキシル基、無水カルボキシル基、カルボニル基、アセトアセトキシ基、エポキシ基、脂環エポキシ基、オキセタン環、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、(ブロック化)イソシアネート基、(アルコキシ)シリル基等を有する化合物、シルセスキオキサン化合物などが挙げられる。
【0077】
特に、前記導電性インク中の前記反応性官能基[X]を有する化合物(a1)が、前記塩基性窒素原子含有基を有する化合物(a1)の場合、前記高分子層(B)を形成する高分子は、反応性官能基[Y]として、カルボキシル基、カルボニル基、アセトアセトキシ基、エポキシ基、脂環エポキシ基、アルキロールアミド基、イソシアネート基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基であることが、最終的に得られる前記金属層と前記第二絶縁保護層との密着性を向上できるので好ましい。
【0078】
前記高分子層(B)を形成する高分子を後述する第二絶縁保護層の表面に塗布する方法としては、例えば、グラビア方式、コーティング方式、スクリーン方式、ローラー方式、ロータリー方式、スプレー方式等が挙げられる。
【0079】
また、後述する第二絶縁保護層の表面は、前記高分子層(B)との密着性をより向上するため、例えば、コロナ放電処理法等のプラズマ放電処理法;紫外線処理法等の乾式処理法;水、酸性またはアルカリ性薬液、有機溶剤等を用いた湿式処理法によって、表面処理されていてもよい。
【0080】
前記高分子層(B)を形成する高分子を後述する第二絶縁保護層の表面に塗布した後、その塗布層に含まれる溶媒を除去する方法としては、例えば乾燥機を用いて乾燥させ、前記溶媒を揮発させる方法が一般的である。乾燥温度としては、前記溶媒を揮発させることが可能で、かつ支持体に悪影響を与えない範囲の温度に設定することが好ましい。
【0081】
前記高分子(B)を用いて形成する高分子(B)層の厚さは、前記第二絶縁保護層と前記金属層との密着性をより向上できることから、5〜5,000nmの範囲が好ましく、10〜500nmの範囲がより好ましい。
【0082】
また、前記高分子(B)をそのまま前記第二絶縁保護層として使用することも可能であり、さらに、前記第二絶縁保護層に前記高分子(B)を混合して使用することも可能であるが、この場合、前記高分子(B)が前記第二絶縁保護層の前記導電性インクと接触する部分に存在する必要がある。
【0083】
次に、前記導電性インクで、めっき下地としてのパターンを形成するために前記導電性インクを塗布した後に行う焼成工程は、前記導電性インク中に含まれる導電性物質同士を密着し接合することで導電性を有するめっき下地パターンを形成するために行う。前記焼成は、80〜300℃の温度範囲で、1〜200分程度行うことが好ましい。ここで、前記第二絶縁保護層との密着性に優れためっき下地パターンを得るためには、前記焼成の温度を100〜200℃の範囲にすることがより好ましい。
【0084】
前記焼成は大気中で行っても良いが、導電性物質が酸化することを防止するため、焼成工程の一部または全部を還元雰囲気下で行ってもよい。
【0085】
また、前記焼成工程は、例えば、オーブン、熱風式乾燥炉、赤外線乾燥炉、レーザー照射、マイクロウェーブ、光照射(フラッシュ照射装置)等を用いて行うことができる。
【0086】
上記のような方法により、前記導電性インクを用いて形成された前記層(A−1)及び前記層(A−2)からなるパターンは、前記パターン中に80〜99.9質量%の範囲で導電性物質を含有し、0.1〜20質量%の範囲で高分子分散剤を含有するものであることが好ましい。
【0087】
前記導電性インクを用いて形成した前記層(A−1)及び前記層(A−2)の膜厚は、低抵抗で導電性に優れた導電性パターンを形成できることから、0.05〜1μmの範囲が好ましい。
【0088】
次に、本発明のシールドフィルム及びシールドプリント配線板では、シールドフィルム側の主導電層として、前記導電性インクを用いて形成した前記層(A−1)をめっき下地パターンとして、その上に膜厚0.5〜20μm、開口率40〜95%でパターン化された銅めっき層を有する。一方、前記特許文献2では、導電層として、導電性インキまたは導電性ペーストを基材フィルム上に所定のパターンで印刷する方法、金属箔にエッチング処理することで開口部を形成する方法、金属の蒸着またはスパッタリングにより所定のパターンの金属層を形成する方法により作製したもの、さらにはこのような導電層として、金網を使用することが開示されている。また、前記特許文献2では、導電層の素材は、金、銀、または銅等の金属及びその合金、または、導電性フィラー含有樹脂、導電性高分子等を使用することが好ましいことが開示されている。しかし、導電層の素材として、導電性インクまたは導電性ペーストとして、導電性フィラー含有樹脂を使用した場合は、導電層自体の導電性が乏しく、プリント配線板の信号線の伝送損失を悪化させることが知られている。また、金属箔にエッチング処理をすることで開口部を形成する方法では、製造工程が複雑となり、シールドプリント配線板が高価になることや、導電層の膜厚を任意に調整(薄膜化)することが困難となる。また、金属の蒸着またはスパッタリングにより所定のパターンの金属層を形成する方法では、導電層の膜厚が薄いものしか形成できず、さらに、開口部をパターン化する方法についても課題を有する。また、金属の金網を使用する方法では、導電層のパターンを細線化することが困難であり、開口部の面積を小さくすることに制約を受ける。本発明では、シールドフィルム側の導電層として、前記導電性インクでパターンを形成した前記層(A−1)をめっき下地とし、その上に銅めっきを行った銅めっき層を使用することで、前述の問題点を全て解決することができる。
【0089】
前記銅めっき層の形成方法としては、例えば、電解めっき法、無電解めっき法等の湿式めっき法が挙げられ、これらのめっき法を2つ以上組み合わせて前記銅めっき層を形成してもよい。
【0090】
前記めっき法の中でも、前記層(A−1)のパターンと、前記めっき法で形成した銅めっき層との密着性がより向上し、また、導電性に優れたパターンが得られることから、電解めっき法、無電解めっき法等の湿式めっき法が好ましく、生産性や得られる金属膜の力学的特性に優れることから、電解めっき法がより好ましい。また、開口部を有するパターンである前記層(A−1)の上のみに銅めっきを施す場合は、電解めっき法で実施すること好ましい。
【0091】
前記電解めっき法は、例えば、前記層(A−1)を構成する金属、または、前記無電解処理によって形成された無電解めっき層(被膜)の表面に、電解めっき液を接触した状態で通電することにより、前記電解めっき液中に含まれる銅等の金属を、カソードに設置した前記層(A−1)を構成する導電性物質の表面に析出させ、電解めっき層(金属被膜)を形成する方法である。
【0092】
前記電解めっき液としては、例えば、銅の硫化物と、硫酸と、水性媒体とを含有するもの等が挙げられる。具体的には、硫酸銅と硫酸と水性媒体とを含有するものが挙げられる。
【0093】
前記電解めっき液は、20〜98℃の範囲で使用することが好ましい。
【0094】
前記電解めっき処理の方法は、無電解めっき法と比較して毒性の高い物質を用いることなく、作業性がよいため好ましい。また、電解銅めっきは、無電解銅めっきと比較して、めっき時間が短縮でき、めっきの膜厚の制御が容易であることから好ましい。さらに、電解銅めっきにより得られる銅めっき層は、力学的特性に優れ、折り曲げても破断し難い、優れたフレキシビリティーを有することから、フレキシブルプリント配線板に使用する場合、電解銅めっき法で形成した銅めっき層を用いることが好ましい。
【0095】
前記銅めっき層は、銅めっき層の上にさらに別の金属のめっき層が積層されていてもよく、ニッケルめっき層や金めっき層、スズめっき層を設けると銅めっき層表面の酸化劣化や腐食が防止できる。
【0096】
前記めっき法で形成した銅めっき層の厚さは、導電層としての導電性に優れることと、シールドプリント配線板への薄膜化の要求に対応できることから、0.5〜20μmの範囲が好ましい。また、電解めっき法により銅めっき層を形成する場合、その層の厚さは、銅めっき処理工程における処理時間、電流密度、めっき用添加剤の使用量等を制御することによって調整することができる。
【0097】
本発明のシールドプリント配線板は、前記銅めっき層、前記層(A−1)及び前記層(A−2)のパターンの上に第二絶縁保護層が設けられている。第二絶縁保護層としては、絶縁樹脂のシートまたはフィルム、または絶縁樹脂の塗工層からなる。絶縁樹脂のシートまたはフィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、液晶ポリマー(LCP)フィルム、ポリシクロオレフィンフィルム等が挙げられる。絶縁樹脂の塗工層としては、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、アミド樹脂、アミドイミド樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、(メタ)アクリル−ブタジエン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂等の熱硬化性樹脂や、ウレタン−アクリレート、エポキシ−アクリレート、アクリル−アクリレート等から成る紫外線硬化型樹脂等を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、プリント配線板を搭載する電子機器を製造する際における過酷な熱条件(例えば、はんだリフロー時)を考慮すると、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン−アクリレート、エポキシアクリレート、アクリル−アクリレート等を単独で、または2種以上を組み合わせて、または架橋剤などと組み合わせて使用することが好ましい。また、フレキシブルなシールドプリント配線板として使用される場合は、ウレタン樹脂を含んでいることが好ましい。
【0098】
本発明のシールドフィルムの製造方法としては、例えば、前記第二絶縁保護層の上に直接、または前記第二絶縁保護層の上に前記高分子層(B)を形成した上に、導電性インクを用いて開口率40〜95%の開口パターンと、前記開口パターンの開口内部に、開口面積の15〜95%の開口内部パターンを形成し、前記開口パターンの上のみに電解銅めっきを施して銅めっき層を形成し、その上に導電性接着剤層を形成する方法が挙げられる。
【0099】
また、第二絶縁保護層上または第二絶縁保護層上に設けた高分子層(B)上に、導電性インクで、開口率40〜90%の開口パターンと、前記開口パターンの開口内部に、開口面積の15〜95%のパターンを形成し、前記開口パターン及びその開口内部に形成したパターン上に無電解めっきを施して銅めっき層を形成し、次いで、前記開口パターン上のみに電解銅めっきを施して銅めっき層を形成し、その上に導電性接着剤層を形成する方法も挙げられる。
【0100】
前記開口率40〜95%の開口パターンと、前記開口パターンの開口内部に、開口面積の15〜95%のパターンを形成する方法としては、
(1)導電性インクを用いて開口パターンを形成した後、開口パターンに電解銅めっきを施して銅めっき層を形成し、次いで前記開口パターンの内部に導電性インクを用いて開口面積の15〜95%の開口内部パターンを形成する方法、(2)導電性インクを用いて、開口パターンと開口内部パターンを同時に形成し、開口パターンのみに電解銅めっきを施して銅めっき層を形成する方法、特に、前記(2)の開口パターンと開口内部パターンを同時に形成する方法が、生産効率に優れるため好ましい。前記(2)の方法の場合、開口パターンのみに電解銅めっきを施す必要があるため、開口パターンのみを電解銅めっきの導電層として使用するためには、開口パターンと開口内部パターンは非接触であることが好ましい。また、前記(2)の方法において、開口パターンと開口内部パターンを形成した後、無電解めっき法で開口パターンと開口内部パターンの両方を厚膜化した後、開口パターン部のみに電解銅めっきを施して銅めっき層を形成する方法でも実施することができる。この場合においても、開口パターンと開口内部パターンは非接触であることが好ましい。なお、前記高分子層(B)及び前記層(A−1)及び前記層(A−2)の形成方法は、前述した通りである。
【0101】
前記第二絶縁保護層は、前述のように絶縁樹脂のシートまたはフィルムや、絶縁樹脂の塗工層が使用できるが、絶縁樹脂を塗工して第二絶縁保護層を製造する場合は、支持基材として剥離フィルムを用いることができる。
【0102】
前記剥離フィルムとしては、プラスチックフィルムや剥離紙を用いることができる。前記プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられ、さらにこれらのフィルムにシリコーン系離型層、フッ素系離型層、オレフィン系離型層等を設けたフィルムも挙げられる。前記剥離紙としては、例えば、紙基材の上に目止め層が設けた後、その上にシリコーン系離型層、フッ素系離型層、オレフィン系離型層を設けたものが挙げられる。
【0103】
塗工により形成した前記第二絶縁保護層としては、例えば、前述で例示した樹脂等を塗工したものが使用でき、前記剥離フィルムに絶縁樹脂を塗工し、乾燥し、必要に応じて樹脂を加熱硬化、紫外線硬化で硬化させて第二絶縁保護層を製造することができる。
【0104】
本発明のシールドフィルムの製造方法では、前記銅めっき層の上に導電性接着剤層を形成する。導電性接着剤層としては、具体的には前述したものが使用でき、導電性接着剤を銅めっき層パターンの上に塗工して、必要に応じて乾燥して形成することができる。このようにして得られるシールドフィルムは、本発明のシールドプリント配線板の最表面に貼り付けられるシールドフィルムとして用いることができる。
【0105】
本発明のシールドプリント配線板の製造方法について説明する。本発明のシールドプリント配線板を構成するプリント配線板は、プリント配線板基材上に信号配線及びグランド配線を形成し、その上に第一絶縁保護層が設けられ、前記第一絶縁保護層は前記グランド配線の一部が露出したビアを有しているものを用いる。また、本発明のシールドプリント配線板をフレキシブルプリント配線板(FPC)とする場合は、ベースフィルムの一方の面にのみプリント回路を有する片面型FPC、ベースフィルムの両面にプリント回路を有する両面型FPC、この様なFPCが複数層積層された多層型FPC、多層部品搭載部とケーブル部を有するフレクスボード(登録商標)、多層部を構成する部材を硬質なものとしたフレックスリジッド基板、あるいは、テープキャリアパッケージのためのTABテープ等を適宜採用して実施することができる。
【0106】
前記プリント配線板の第一絶縁保護層の上に、本発明のシールドフィルムの導電性接着剤層が接するように配置し、プリント配線板とシールドフィルムとを互いに接近する方向に加圧することによりシールドフィルムの導電性接着剤層を流動させてプリント配線板のグランド層と接続することにより、本発明のシールドプリント配線板を製造することができる。前記プリント配線板と前記シールドフィルムを加圧して、導電性接着剤層を流動させてプリント配線板のグランド層と接合する際には加熱することもでき、前記導電性接着剤が熱硬化可能な樹脂を含有するものである場合、その樹脂の硬化条件に応じて加熱条件を調整することができる。加熱する場合の温度は、通常50〜250℃の範囲が好ましい。
【0107】
なお、本発明のシールドプリント配線板は、プリント配線板の片面にシールドフィルムを貼り付けた構成や、両面にシールドフィルムを貼り付けた構成でもよい。
【実施例】
【0108】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0109】
[導電性インク(1)の調製]
エチレングリコール35質量部と、イオン交換水65質量部との混合溶媒に、分散剤としてポリエチレンイミンにポリオキシエチレンが付加した化合物を用いて平均粒径20nmの銀粒子を分散させることによって、金属ナノ粒子と、反応性官能基として塩基性窒素原子含有基を有する高分子分散剤とを含有する金属ナノ粒子分散液を調製した。次いで、得られた金属ナノ粒子分散液に、イオン交換水及び界面活性剤を添加して、その粘度を11mPa・sに調整することによって、インクジェット印刷用の導電性インク(1)を調製した。
【0110】
[第二絶縁保護層用樹脂の製造]
温度計、窒素ガス導入管及び攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリエステルポリオール100質量部(1,4−シクロヘキサンジメタノールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られたポリエステルポリオール、水酸基当量1,000g/当量)と2,2―ジメチロールプロピオン酸17.4質量部と1,4−シクロヘキサンジメタノール21.7質量部とジシクロヘキシルメタンジイソシアネート106.2質量部とを、メチルエチルケトン178質量部中で混合し反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0111】
次いで、上記で得られたウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液に、トリエチルアミンを13.3質量部加えることで前記ウレタン樹脂が有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水277質量部を加え十分に攪拌することにより、カルボキシル基を有するウレタン樹脂の水分散液を得た。
【0112】
上記で得られたウレタン樹脂の水分散液に、25質量%のエチレンジアミン水溶液を8質量部加え、攪拌することによって、ウレタン樹脂を鎖伸長させ、次いでエージング・脱溶剤することによって、固形分30質量%のウレタン樹脂の水分散液を得た。次いで、得られたウレタン樹脂の水分散液333質量部に、ソルビトールポリグリシジルエーテル(エポキシ当量170)30質量部を加えて混合し、第二絶縁保護層用樹脂溶液を得た。
【0113】
[高分子層(B−1)用樹脂の製造]
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、単量体混合物滴下用滴下漏斗及び重合触媒滴下用滴下漏斗を備えた反応容器に、酢酸エチル180質量部を入れ、窒素を吹き込みながら80℃まで昇温した。80℃まで昇温した反応容器内に、攪拌下、メタクリル酸メチル60質量部、アクリル酸n−ブチル10質量部及びメタクリル酸グリシジル30質量部を含有するビニル単量体混合物と、アゾイソブチロニトリル1質量部及び酢酸エチル20質量部を含有する重合開始剤溶液を、各々別の滴下漏斗から反応容器内温度を80±1℃に保ちながら240分間かけて滴下し重合した。滴下終了後、同温度にて120分間攪拌した後、前記反応容器内の温度を30℃に冷却し、次いで、不揮発分が10質量%になるように酢酸エチルを加えて、反応性官能基としてエポキシ基を含有する高分子層(B−1)用樹脂を得た。
【0114】
[高分子層(B−2)用樹脂の製造]
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、ポリカーボネートポリオール(1,4−シクロヘキサンジメタノールと炭酸エステルとを反応させて得られる酸基当量1000g/当量のポリカーボネートジオール)を100質量部、2,2―ジメチロールプロピオン酸9.7質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール5.5質量部、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート51.4質量部を、メチルエチルケトン111質量部の混合溶剤中で反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0115】
次いで、前記ウレタン樹脂の有機溶剤溶液にトリエチルアミンを7.3質量部加えることで、前記ウレタン樹脂が有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水355質量部を加え十分に攪拌することにより、ウレタン樹脂の水性分散液を得た。
【0116】
次いで、前記水性分散液に、25質量%のエチレンジアミン水溶液を4.3質量部加え、攪拌することによって、粒子状のポリウレタン樹脂を鎖伸長させ、次いでエージング・脱溶剤することによって、固形分濃度30質量%のウレタン樹脂の水性分散液を得た。
【0117】
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、単量体混合物滴下用滴下漏斗、重合触媒滴下用滴下漏斗を備えた反応容器に脱イオン水140質量部、前記で得たウレタン樹脂の水分散液100質量部を入れ、窒素を吹き込みながら80℃まで昇温した。80℃まで昇温した反応容器内に、攪拌下、メタクリル酸メチル60質量部、アクリル酸n−ブチル30質量部、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド10質量部を含有する単量体混合物と、過硫酸アンモニウム水溶液(濃度:0.5質量%)20質量部を別々の滴下漏斗から、反応容器内温度を80±2℃に保ちながら120分間かけて滴下し重合した。
【0118】
滴下終了後、同温度にて60分間攪拌し、その後、前記反応容器内の温度を40℃に冷却し、ついで、不揮発分が20質量%になるように脱イオン水を添加した後、200メッシュ濾布で濾過することによって、反応性官能基としてカルボキシル基とN−n−ブトキシメチルアクリルアミド基を含有する高分子層(B−2)用樹脂を得た。
【0119】
[導電性接着剤用樹脂の製造]
温度計、窒素ガス導入管及び攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリエステルポリオール100質量部(1,4−シクロヘキサンジメタノールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られたポリエステルポリオール、水酸基当量1000g/当量)と2,2―ジメチロールプロピオン酸17.4質量部と1,4−シクロヘキサンジメタノール21.7質量部とジシクロヘキシルメタンジイソシアネート106.2質量部とを、メチルエチルケトン178質量部中で混合し反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタン樹脂を得た。次いで、得られたウレタン樹脂にメチルエチルケトンを加え、固形分50質量%のウレタン樹脂の有機溶剤溶液を得た。
【0120】
[導電性接着剤の調製]
上記で得られたウレタン樹脂の有機溶剤溶液200質量部に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180)20質量部を加えて混合し、さらに、銀フィラー(大研化学工業株式会社製「S−201」)80質量部を加えて混合し、導電性接着剤を調製した。
【0121】
(実施例1)
プリント配線基板として、ポリイミド製のベースフィルムに、銅厚12μm、線幅500μmのグランド用銅配線パターンと、銅厚12μm、線幅150μmの信号用銅配線パターンとからなる配線が形成され、信号配線とグランド配線の線間をそれぞれ100μm、回路長100mmとし、さらに膜厚15μmの接着剤層と、膜厚12.5μmのポリイミド製フィルム層で膜厚27.5μmの第一絶縁保護層が形成され、グランド配線部に400μm角の開口部が設けられたプリント配線板を用いた。
【0122】
シールドフィルムとして、離型処理されたポリエステルフィルム上に、上記で製造した第二絶縁保護層用樹脂を乾燥後の膜厚が5μmとなるように塗工し、乾燥して第二絶縁保護層を形成した。次いで、上記で製造した高分子層(B−1)用樹脂を乾燥後の膜厚が0.2μmとなるように塗工し、乾燥して高分子層(B−1)を形成した。
【0123】
次に、上記方法で形成した高分子層(B−1)が積層された第二絶縁保護層の上に、上記で得られた導電性インク(1)をインクジェットプリンター(コニカミノルタ株式会社製インクジェット試験機「EB100」、評価用プリンタヘッドKM512L、吐出量14pL)を用い、シールドプリント配線板の特性インピーダンスが80Ωとなるように、線幅90μm、開口率82%の格子パターンと、その開口内部に開口部の面積に対して68%の面積の四角形の非開口部を、格子パターン部と接触しないように印刷した。印刷したパターンの平面図を
図5に示す。次いで、120℃で20分間焼成することによって、開口率82%の格子パターンと、その開口内部に四角形の非開口部を有する導電性インク(1)からなる層(膜厚0.2μm)を形成した。
【0124】
次に、上記で得られた導電性インク(1)からなる層の格子パターン部を陰極に設定し、含リン銅を陽極に設定し、硫酸銅を含有する電解めっき液を用いて電流密度2A/dm
2で10分間電解銅めっきを行うことによって、導電性インクからなる層の表面に、厚さ5μmの銅めっき層を格子パターン部のみに積層した。前記銅電解めっき液としては、硫酸銅70g/リットル、硫酸200g/リットル、塩素イオン50mg/リットル、添加剤(奥野製薬工業株式会社製「トップルチナSF−M」)5ml/リットルを使用した。電解銅めっき後の格子パターン部の線幅は100μm、開口率は80%であり、開口内部の導電性インクからなる層(開口内部パターン)の面積は、開口面積の71%であった。
【0125】
次に、上記で得られた第二絶縁保護層の上に形成された開口率80%の格子パターンの銅めっき層及び開口内部の非開口部の導電性インクパターンを含む全面の上に、上記で製造した導電性接着剤を乾燥後の膜厚5μmとなるように塗工し、乾燥してシールドフィルムを作製した。
【0126】
次に、上記で得られたグランド配線部に開口部が設けられたプリント配線板と上記で得られたシールドフィルムを、プリント配線板の絶縁保護層の上に、シールドフィルムの導電性接着剤層が接するように配置し、プリント配線板とシールドフィルムとを互いに接近する方向に加圧(圧力:1.96MPa、加熱温度:150℃、処理時間:30分間)して圧着し、シールドフィルムの導電性接着剤層を流動させてプリント配線板のグランド層と接続し、シールドプリント配線板を作製した。
【0127】
(実施例2〜4)
実施例1で用いたプリント配線板に代えて、表1に示した信号用銅配線のパターン幅のものとした。また、実施例1で用いたシールドフィルムに代えて、表1に示した高分子層(B)用樹脂を用い、さらにシールドプリント配線板の特性インピーダンスが80Ωとなるように表1に示した銅めっき層の開口率とし、銅めっき層の開口面積に対する開口内部の導電性インク層(開口内部パターン)の面積比率とした以外は、実施例1と同様にシールドプリント配線板を作製した。
【0128】
(実施例5)
実施例1で用いたプリント配線板に代えて、表1に示した信号用銅配線のパターン幅のものとした。シールドフィルムとして、離型処理されたポリエステルフィルム上に、上記で製造した第二絶縁保護層用樹脂を乾燥後の膜厚が5μmとなるように塗工し、乾燥して第二絶縁保護層を形成した。次に、上記方法で形成した第二絶縁保護層の上に、導電性インク(1)を実施例1と同様の装置を用い、シールドプリント配線板の特性インピーダンスが80Ωとなるように、線幅90μm、開口率58%の格子パターンと、その開口内部に開口部の面積に対して40%の面積の四角形の非開口部を、格子パターン部と接触しないように印刷した。次いで、120℃で20分間焼成することによって、開口率58%の格子パターンと、その開口内部に四角形の非開口部を有する導電性インク(1)からなる層(膜厚0.2μm)を形成した。
【0129】
次に、上記で得られた導電性インク(1)からなる層の格子パターン部を陰極に設定し、含リン銅を陽極に設定し、実施例1と同様にして導電性インクからなる層の表面に、厚さ5μmの銅めっき層を格子パターン部のみに積層した。電解銅めっき後の格子パターン部の線幅は100μm、開口率は56%であり、開口内部の導電性インクからなる層(開口内部パターン)の面積は、開口面積の43%であった。
【0130】
次に、上記で得られた第二絶縁保護層の上に形成された開口率56%の格子パターンの銅めっき層及び開口内部の非開口部の導電性インクパターンを含む全面の上に、上記で製造した導電性接着剤を乾燥後の膜厚5μmとなるように塗工し、乾燥してシールドフィルムを作製した。
【0131】
次に、グランド配線部に開口部が設けられたプリント配線板と上記で得られたシールドフィルムを、プリント配線板の絶縁保護層の上に、実施例1と同様にして圧着し、シールドフィルムの導電性接着剤層を流動させてプリント配線板のグランド層と接続し、シールドプリント配線板を作製した。
【0132】
(実施例6)
実施例1で用いたプリント配線板に代えて、表1に示した信号用銅配線のパターン幅のものとした。また、実施例1で用いたシールドフィルムに代えて、表1に示した高分子層(B)用樹脂を用いた。次に、上記方法で形成した高分子層(B−1)が積層された第二絶縁保護層の上に、導電性インク(1)を実施例1と同様の装置を用い、シールドプリント配線板の特性インピーダンスが80Ωとなるように、線幅90μm、開口率74%の格子パターンと、その開口内部に開口部の面積に対して69%の面積の四角形の非開口部を、格子パターン部と接触しないように印刷した。次いで、120℃で20分間焼成することによって、開口率74%の格子パターンと、その開口内部に四角形の非開口部を有する導電性インク(1)からなる層(膜厚0.05μm)を形成した。
【0133】
次に、上記で得られた格子パターンと、その開口内部に四角形の非開口部を有する導電性インク(1)からなる層(膜厚0.05μm)上に、無電解銅めっきを施し、厚さ0.2μmの無電解銅めっき膜を形成した。なお、無電解銅めっきは、ARGカッパー(奥野製薬工業株式会社製)を、標準推奨条件(ARGカッパー1:30ml/L、ARGカッパー2:15ml/L、ARGカッパー3:200ml/L)で建浴し、浴温45℃で保持し、これに上記の被めっき物(導電性インク層)を15分間浸漬して、銅めっき膜を析出させることにより行った。
【0134】
次に、上記で得られた導電性インク(1)からなる層上に無電解銅めっき膜を形成した格子パターン部を陰極に設定し、含リン銅を陽極に設定し、実施例1と同様にして無電解銅めっき膜からなる層の表面に、厚さ3μmの銅めっき膜を格子パターン部のみに積層した。電解銅めっき後の格子パターン部の線幅は97μm、開口率は72%であり、開口内部の無電解銅めっき膜からなる層(開口内部パターン)の面積は開口面積の70%、膜厚は0.2μmであった。
【0135】
次に、上記で得られた第二絶縁保護層の上に形成された開口率72%の格子パターンの銅めっき層及び開口内部の非開口部の無電解銅めっき膜からなる層を含む全面の上に、上記で製造した導電性接着剤を乾燥後の膜厚5μmとなるように塗工し、乾燥してシールドフィルムを作製した。
【0136】
次に、グランド配線部に開口部が設けられたプリント配線板と上記で得られたシールドフィルムを、プリント配線板の絶縁保護層の上に、実施例1と同様にして圧着し、シールドフィルムの導電性接着剤層を流動させてプリント配線板のグランド層と接続し、シールドプリント配線板を作製した。
【0137】
(比較例1)
実施例1で用いたプリント配線板の代わりに、信号用銅配線パターンの線幅を表1に記載した線幅としたプリント配線板を使用した。また、実施例1で用いたシールドフィルムの代わりに、開口率が0%となるように、膜厚5μmの圧延銅箔に上記で得られた第二絶縁保護層用樹脂を乾燥後の膜厚が5μmとなるように塗工し、乾燥して第二絶縁保護層を形成した。次いで、圧延銅箔の第二絶縁保護層を形成した面とは反対面に、上記で得られた導電性接着剤を乾燥後の膜厚5μmとなるように塗工し、乾燥して開口率0%の銅層を有するシールドフィルムを作製した。
【0138】
次に、表1に記載した信号用銅配線パターンの線幅とし、グランド配線部に400μm角の開口部が設けられたプリント配線板と、上記で得られたシールドフィルムを、プリント配線板の絶縁保護層の上に、シールドフィルムの導電性接着剤層が接するように配置し、プリント配線板とシールドフィルムとを互いに接近する方向に加圧(圧力:1.96MPa、加熱温度:150℃、処理時間:30分間)して圧着し、シールドフィルムの導電性接着剤層を流動させてプリント配線板のグランド層と接続し、シールドプリント配線板を作製した。
【0139】
(比較例2)
比較例1で用いたプリント配線板に代えて、信号用銅配線パターンの線幅を表1に記載した線幅とした以外は、前記比較例1と同様にして、開口率0%の比較用シールドプリント配線板を作製した。
【0140】
[比較用の導電性インク(R1)用樹脂の製造]
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、及び窒素導入管を備えた反応容器に、アジピン酸、テレフタル酸、及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られる数平均分子量が1006であるジオール414質量部、ジメチロールブタン酸8質量部、イソホロンジイソシアネート145質量部、及びトルエン40質量部を仕込み、窒素雰囲気下90℃で3時間反応させた。次いで、この反応溶液に、さらにトルエン300質量部を加えて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液を得た。
【0141】
次に、イソホロンジアミン27質量部、ジ−n−ブチルアミン3質量部、2−プロパノール342質量部及びトルエン576質量部を混合した混合物に、上記で得られたウレタンプレポリマーの溶液816質量部を添加し、70℃で3時間反応させてポリウレタンポリウレア樹脂の溶液を得た。これに、トルエン144質量部、及び2−プロパノール72質量部を加えて、ポリウレタンポリウレア樹脂の固形分30質量%である比較用の導電性インク(R1)用樹脂溶液を得た。
【0142】
[比較用の導電性インク(R1)の調製]
上記で得られた比較用の導電性インク用樹脂溶液333質量部、及びビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製「JER828」)20質量部を攪拌混合し、樹脂組成物溶液を得た。この樹脂組成物溶液353質量部に、導電フィラー(福田金属箔粉工業株式会社製「AgXF−301」)180質量部を加えて攪拌混合し、ポリウレタンポリウレア樹脂とエポキシ樹脂との合計100質量部に対して、導電フィラー300質量部を含有する比較用の導電性インク(R1)を得た。
【0143】
[接合層用樹脂の製造]
上記の導電性インク(R1)用樹脂と同様にして製造したポリウレタンポリウレア樹脂溶液333質量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂20質量部を加えて、接合層用樹脂を得た。
【0144】
(比較例3)
シールドフィルムの作製として、離型処理されたポリエステルフィルム上に、上記で得られた比較用の導電性インク(R1)を、線幅100μm、開口率65%、乾燥後の膜厚が5μmの格子パターンになるようにスクリーン印刷し、乾燥して導電層を形成した。次いで、離型処理されたポリエステルフィルム上に、上記で得られた接合層用樹脂を乾燥後の膜厚が15μmとなるように塗工し、乾燥した。次いで、離型性フィルム上に形成した導電層と、離型性フィルム上に形成した接合層とを貼り合わせてシールドフィルムを作製した。
【0145】
次に、実施例1で用いたプリント配線板の代わりに、信号用銅配線パターンの線幅を100μmとし、そのグランド配線部に400μm角の開口部が設けられたプリント配線板と、上記で得られたシールドフィルムを、プリント配線板の絶縁保護層の上に、シールドフィルムの導電層が接するように配置し、プリント配線板とシールドフィルムとを互いに接近する方向に加圧(圧力:1.96MPa、加熱温度:150℃、処理時間:30分間)して圧着し、シールドフィルムの接合層を流動させてプリント配線板のグランド層と接続し、導電性接着剤層が無い比較用シールドプリント配線板を作製した。
【0146】
[電磁波シールド性(透過減衰率)の測定]
上記の実施例、比較例で得られたシールドプリント配線板について、ASTM D4935に準拠し、キーコム社の同軸管タイプのシールド効果測定システムを用いて、100MHz〜6GHz条件で電磁波の照射を行い、電磁波がシールドフィルムで減衰する減衰量を測定し、以下の基準に従って電磁波シールド性を評価した。なお、減衰量の測定値は、デシベル(単位dB)で表記する。なお、一般に電磁波シールド性は、40dB(電磁波を99%以上遮断する)以上であれば良好である。
A:マイクロ波領域の6GHzの電磁波を照射したときに、45dB以上を示す。
B:6GHzの電磁波を照射したときに、40dB以上45dB未満を示す。
C:6GHzの電磁波を照射したときに、35dB以上40dB未満を示す。
D:6GHzの電磁波を照射したときに、35dB未満を示す。
【0147】
[特性インピーダンスの測定]
上記の実施例、比較例で得られたシールドプリント配線板について、ネットワークアナライザE5071C(アジレント・テクノロジーズ社製)を用いて特性インピーダンスの測定を行った。
【0148】
[シールドフィルムとプリント配線板のグランド配線との接続信頼性の評価]
上記の実施例、比較例で得られたシールドプリント配線板について、部品接続時のはんだリフロー工程を想定し、240℃で25秒間のリフロー炉を通過させ、その後25℃までシールドプリント配線板を冷却するリフロー操作を5回繰り返し、その前後のシールドフィルムとプリント配線板のグランド配線間の体積抵抗値を測定し、下記の数式を用いて体積抵抗値の変化率を算出し、シールドフィルムとプリント配線板のグランド配線との接続信頼性を以下の基準に従って評価した。
[評価基準]
A:体積抵抗値の変化率が20%未満である。
B:体積抵抗値の変化率が20%以上50%未満である。
C:体積抵抗値の変化率が50%以上80%未満である。
D:体積抵抗値の変化率が80%以上である。
【0149】
【数1】
【0150】
上記で評価した結果をまとめたものを表1に示す。
【0151】
【表1】
【0152】
上記の表1に示した結果から、本発明のシールドフィルムを用いた実施例1〜5のシールドプリント配線板は、プリント配線板の信号用銅配線のパターン幅を50〜150μmに変化させた場合においても、シールドフィルムの金属層(銅めっき層)の開口率を調整することで、シールドプリント配線板の特性インピーダンスを80Ωに制御することができた。また、電磁波シールド性も45dB以上を示し、電磁波の遮蔽性にも優れることが確認できた。
【0153】
また、本発明のシールドフィルムである実施例1〜6のシールドフィルム部の膜厚は、第二絶縁層、銅めっき層、及び導電性接着剤層の合計膜厚が13〜16μmと薄く、特許文献3に記載の開口金属層と非開口金属層(シールド層)の2層が必要なシールドフィルムと比較して、シールドフィルムの膜厚をさらに薄くできる特長がある。
【0154】
一方、比較例1のシールドプリント配線板は、プリント配線板の信号用銅配線のパターン幅を150μmとし、シールドフィルムの金属層(銅めっき層)の開口率を0%(全面銅めっき層)とした例である。このシールドプリント配線板の特性インピーダンスは20Ωになり、80Ωに制御することができなかった。
【0155】
比較例2のシールドプリント配線板は、比較例1と同様にシールドフィルムの金属層(銅めっき層)の開口率を0%(全面銅めっき層)とし、プリント配線板の信号用銅配線のパターン幅を20μmとした場合においても、特性インピーダンスは50Ωとなった。さらに、このシールドプリント配線板は、プリント配線板の信号用銅配線のパターン幅を20μmまで細くしたことにより、実施例のシールドプリント配線板と比較して、通信速度が速くなるに従い、伝送損失が増大する問題があった。
【0156】
上記の結果から、本発明のシールドプリント配線板は、プリント配線板の信号用銅配線のパターン幅を変化させた場合においても、シールドフィルムの金属層の開口率を調整することで、所望の特性インピーダンスに調整することが可能であり、かつ、電磁波シールド性が高いことが確認できた。
【0157】
また、比較例3のシールドプリント配線板は、本発明のシールドプリント配線板では必須の導電性接着剤層がない構成での例である。このシールドプリント配線板では、電磁波シールド性が不十分であり、さらに、シールドフィルム側の導電層と、プリント配線側のグランド配線の接続信頼性に問題があった。
本発明は、ベース絶縁基材上に信号配線とグランド配線及び第一絶縁保護層が設けられたプリント配線板用のシールドフィルムであって、前記第一絶縁保護層上の全面に積層された導電性接着剤層と、前記導電性接着剤層上に膜厚0.5〜20μm、開口率40〜95%でパターン化された銅めっき層と、前記銅めっき層上に導電性インクを用いて形成した層(A−1)と、前記導電性接着剤層上の前記銅めっき層の開口内部に、導電性インクを用いて形成した層(A−2)と、前記導電性接着剤層、前記銅めっき層、前記層(A−1)及び前記層(A−2)上に第二絶縁保護層とを有するシールドフィルム及びそれを用いたシールドプリント配線板を提供する。前記シールドフィルムは、高い電磁波シールド性を有し、薄型である。また、前記シールドプリント配線板は、プリント配線板のグランド配線との接続信頼性に優れ、インピーダンスの制御における設計の自由度が高い。