特許第5975239号(P5975239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5975239重合体、その製造方法、これを含む組成物及び膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5975239
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】重合体、その製造方法、これを含む組成物及び膜
(51)【国際特許分類】
   C08F 259/08 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   C08F259/08
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-514930(P2015-514930)
(86)(22)【出願日】2013年6月3日
(65)【公表番号】特表2015-518081(P2015-518081A)
(43)【公表日】2015年6月25日
(86)【国際出願番号】KR2013004886
(87)【国際公開番号】WO2013180553
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2015年1月21日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0059124
(32)【優先日】2012年6月1日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0063479
(32)【優先日】2013年6月3日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン、ジョン アエ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ノ マ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ス ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、イン ホ
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−226728(JP,A)
【文献】 特表2007−527463(JP,A)
【文献】 特開昭63−072732(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0244262(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 259/08
C08F 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式2で表示される重合体であって:
[化学式2]
【化2】
前記化学式2で、
及びRは、それぞれ独立に、−Fまたは−CFを示し、
aは、〜95の整数を満足し、bは、1〜5の整数を満足し、
は、炭素数1〜2のアルキル基を示し、
Xは、水素またはハロゲンを示し、
Yは、水素、炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基、ヒドロキシ基またはSO(Rは、水素または炭素数1〜12のアルキル)で置換されるかまたは置換されない、フェニル基、ハロゲン、炭素数1〜12のアルコキシ基、アルコール基、COZ(Zは、ヘテロ元素またはハロゲンで置換されるかまたは置換されない炭素数1〜12のアルキル)及びCONR(R、Rは、独立に水素または炭素数1〜12のアルキル)よりなる群から選択される1つ以上であり、
前記重合体は、分子量分布値が1.01〜1.6であり、
nは、10〜50000の整数を満足し、
前記重合体内のクロロトリフルオロエチレンの含量が0.005〜30重量%であり、
b/(a+b)が0.05〜0.4である、
重合体。
【請求項2】
前記aは、〜8の整数を満足し、前記bは、1または2である、請求項1に記載の化学式1で表示される重合体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の重合体を含む組成物。
【請求項4】
前記重合体の含量が前記組成物全体に対して1重量%〜100重量%である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物100重量部に対して0.1〜10重量部の界面活性剤をさらに含む、請求項3または請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
請求項3から請求項5の何れか一項に記載の組成物によって形成された膜。
【請求項7】
撥水コーティング膜または汚染防止膜として使用される、請求項6に記載の膜。
【請求項8】
非活性触媒、クロロトリフルオロエチレンオリゴマー及びビニル系単量体を混合し、混合物を形成する段階と;
前記混合物に触媒還元剤を投入して前記非活性触媒を活性化させ、前記クロロトリフルオロエチレンオリゴマーと前記ビニル系単量体を反応させて重合体を形成する段階と;を含み、
前記重合体は、前記ビニル系単量体100重量部に対して前記クロロトリフルオロエチレンオリゴマーが0.005〜20重量部の含量で重合された重合単位を含む重合体の製造方法。
【請求項9】
前記非活性触媒は、陽イオン化された金属/リガンド錯化合物である、請求項8に記載の重合体の製造方法。
【請求項10】
前記陽イオン化された金属は、Cu2+、Fe3+、Ru4+及びOs4+よりなる群から選択された1つである、請求項9に記載の重合体の製造方法。
【請求項11】
前記触媒還元剤の含量は、前記非活性触媒10重量部に対して3〜300重量部である、請求項8から請求項10の何れか一項に記載の重合体の製造方法。
【請求項12】
前記触媒還元剤は、ベンゾイルペルオキシド、1、1−ビス(ターシャリ−ブチルペルオキシ)−3、3、5−トリエチルシクロヘキサン、ターシャリブチルペルオキシアセテート、ターシャリブチルペルオキシベンゾエート、ターシャリブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ターシャリブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルペルオキシジカーボネート、ジ−3、3、5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ジ−ターシャリ−ブチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ダイクミルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ブチルヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、2、2'−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)、1、1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、錫ジオクトエート、ヒドラジン及びアスコルビン酸よりなる群から選択された1種以上である、請求項8から請求項11の何れか一項に記載の重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体、その製造方法、これを含む組成物及び膜に関する。
【背景技術】
【0002】
疎水性膜は、多様な分野で利用される。例えば、太陽電池の基板などの汚染を防止するための表面は、疎水性表面を有する高分子膜でコーティングされ、湯気防止メガネ、または自動車ガラスなどの撥水コーティングなどにも疎水性膜が利用される。
【0003】
例えば、上記膜が疎水性を帯びるようにするためには、高分子膜にフッ素プラズマ処理を行うか、またはフッ素系界面活性剤を高分子溶液に添加した後、コーティングを行う方法が一般的に使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、重合体、その製造方法、これを含む組成物及び膜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、重合体に関する。例示的な上記重合体は、末端に疎水性を有するフッ素系化合物を含み、これにより、上記重合体を含む組成物を利用して膜を形成する場合、形成された膜の表面は、別途の表面処理なしに疎水性を帯びる。また、上記重合体は、組成物内の高分子溶液との相溶性が優れているので、上記組成物内で相分離現象が発生しない特性がある。
【0006】
1つの例示で、上記重合体は、下記化学式1で表示される重合体である。
【0007】
[化学式1]
【化1】
【0008】
上記化学式1で、R及びRは、それぞれ独立に、−Fまたは−CFを示し、Pは、その末端が炭素原子と連結されている高分子であり、aは、1〜95の整数を満足し、bは、1〜5の整数を満足する。
【0009】
1つの例示で、上記重合体は、上記化学式1で表示される化合物のように、クロロトリフルオロエチレン(Chlorotrifluoroethylene、以下、CTFEという)オリゴマー内の一部のCTFE単量体が高分子Pに結合された状態である。上記CTFEオリゴマーは、フッ素系化合物であって、高分子表面に疎水性を付与するための化合物である。また、後述するように、CTFEオリゴマーが高分子Pの末端に位置するので、上記重合体を含む組成物を利用して膜を形成する場合、別途の表面処理なしに疎水性を帯びる表面を有する高分子膜を製造することができる。ひいては、上記CTFEオリゴマーは、上記重合体の製造時に、多官能性マクロ開始剤として作用する。
【0010】
本明細書で使用される用語「末端」は、高分子主鎖の末端または主鎖にグラフトされた分岐鎖を意味する、上記末端は、高分子の最外郭部分を意味するか、または実質的に高分子の外郭部分に含まれる領域、すなわち、実質的末端を意味することができる。
【0011】
上記化学式1で高分子Pは、上記CTFEオリゴマー内のCl元素のうち一部が触媒によって活性化された後、活性化された位置にビニル系単量体が結合された後、上記ビニル系単量体の連続的な重合によって形成され、これによって、上記Pは、ビニル系単量体の重合単位を含む。また、上記化学式1の化合物は、上記ビニル系単量体がCTFE単量体のClの位置に結合された繰り返し単位bと上記ビニル系単量体が結合されないCTFEの繰り返し単位aとに区分される。
【0012】
上記重合体の形態は、特に制限されるものではなく、例えば、ブロック共重合体(block copolymer)、交互共重合体(alternating copolymer)またはランダム共重合体(random copolymer)である。
【0013】
上記で、CTFEオリゴマーの塩素原子(Cl)が置換された繰り返し単位bは、1〜5の整数、例えば、1〜3、2〜4、1〜4、1〜2、2〜3の整数であり、好ましくは、1〜2の整数である。上記bの値が1以上の場合、高分子Pによって形成された膜の疎水性改質効果が現われるが、5を超過する場合、CTFE繰り返し単位aが高分子Pの末端に位置しないので、上記重合体を含む組成物によって形成された膜表面の疎水性改質効果が顕著に低くなる問題があり得る。
【0014】
上記ビニル系単量体が結合されないCTFE繰り返し単位aの値は、1〜95の整数であり、例えば、1〜50の整数、1〜25の整数であり、好ましくは、1〜8の整数である。上記のように、CTFE繰り返し単位aが上記繰り返し単位bに比べて非常に大きい値を有するので、たとえ、上記繰り返し単位bが上記繰り返し単位aの間に存在しても、CTFEオリゴマーが高分子Pの末端に存在するものと同様の効果を発揮することができる。
【0015】
上記でa+bの値は、2〜100の整数を満足する。上記a+bの値が2〜100の整数を満足する場合、上記繰り返し単位bの値を1〜5の整数を満足させるように維持することができ、この場合、上記CTFE繰り返し単位aの値は、1〜95の整数になることができる。これによって、前述したように、上記CTFE繰り返し単位aが上記繰り返し単位bに比べて非常に大きい値を有するので、たとえ、上記繰り返し単位bが上記繰り返し単位aの間に存在しても、CTFEオリゴマーが高分子Pの末端に存在するものと同様の効果を発揮することができる。
【0016】
1つの例示で、好ましくは、上記a+bの値が1〜10の整数を満足し、この場合、上記繰り返し単位bの値を1または2となるように維持することができる。
【0017】
上記化学式1で、R及びRは、それぞれ独立に、−Fまたは−CFを示す。例えば、上記R及びRが炭素数2以上のアルキル基の場合、上記重合体内でCTFEオリゴマーが高分子Pの末端に位置しても、上記重合体を含む組成物によって製造された高分子膜の表面が疎水性を帯びにくいことがある。
【0018】
1つの例示で、上記重合体の分子量分布値は、1.01〜1.6であることができる。CTFEオリゴマーにビニル系単量体が重合された繰り返し単位bを1〜5の整数に維持するために、重合体の製造過程でbを測定することは難しいことがあるが、製造された高分子試料の分子量を測定することによって、定性的な結果を得ることができる。また、分子量分布値でリビングラジカル重合が良好に行われたかに対する定性的判断をすることができ、例えば、上記重合体の分子量分布値が1.01〜1.6の場合、上記化学式1のような構造の重合体をリビングラジカル重合で得ることができる。本明細書において、用語「分子量分布」は、特に別途定義しない限り、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)を意味する。
【0019】
上記化学式1で、高分子Pは、その末端がCTFE単量体の炭素原子と連結されており、前述したように、上記高分子Pは、ビニル系単量体が重合された重合単位を含むことができる。
【0020】
1つの例示で、上記ビニル系単量体は、ビニル基を含む不飽和化合物であって、例えば、アミン基、エポキシ基、またはイソシアネート基などの官能基を含み、例えば、メタクリル酸エステル系単量体、アクリル酸エステル系単量体、芳香族ビニル系単量体、ビニルエステル単量体、アクリロニトリル系単量体またはマレイミド系単量体、アクリルアミド系単量体などが使用される。
【0021】
1つの例示で、上記ビニル系単量体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、またはテトラデシル(メタ)アクリレート2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1、4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、末端ヒドロキシ基含有ラクトン変性(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ基含有不飽和単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有不飽和単量体;グリシジルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエテールなどのグリシジルギ含有不飽和単量体;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどの芳香族ビニル系単量体;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド系単量体、ビニルアセテート、ビニルラウレートなどのビニル系エステル単量体またはアクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのアクリロニトリル系単量体などを使用することができ、このうち一種または二種以上の混合を使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0022】
1つの例示で、上記重合体は、下記化学式2で表示される重合体である。
【0023】
[化学式2]
【化2】
【0024】
上記化学式2で、R、R、P、a及びbは、上記化学式1で定義した通りであり、Rは、水素または炭素数1〜2のアルキル基を示し、Xは、CTFEオリゴマーと高分子Pのラジカル重合時に、CTFEのC−Cl結合のClラジカルが脱落してから、ビニル系単量体が重合された後、上記Clラジカルが可逆的に付加できる部分に位置し得る元素であって、塩素原子(Cl)であることができるが、代替可能な他の元素であってもよい。上記代替可能な他の元素は、例えば、水素またはハロゲンのように、最外郭電子数が1個の元素であることができる。
【0025】
また、上記化学式2で、Yは、水素、炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基、ヒドロキシ基またはSO(Rは、水素または炭素数1〜12のアルキル)で置換されるか、または置換されない官能基であり、疎水性を帯びる高分子の用途及び特性などによって多様な官能基が適用される。例えば、上記官能基は、フェニル基、ハロゲン、炭素数1〜12のアルコキシ基、アルコール基、COZ(Zは、ヘテロ元素またはハロゲンで置換されるか、または置換されない炭素数1〜12のアルキル)またはCONR(R、Rは、独立に水素または炭素数1〜12のアルキル)などを使用することができ、このうち一種または二種以上の混合を使用することができるが、これに制限されない。
【0026】
上記化学式2で、nは、高分子Pの重合程度を示し、10〜50000の整数を満足することができる。例えば、nは10〜45000、1000〜30000、5000〜40000、10000〜35000、20000〜30000などの整数である。
【0027】
1つの例示で、上記重合体内のCTFEの含量は、0.005〜30重量%であることができる。上記重合体内のCTFEの含量は、例えば、元素分析法で測定することができ、上記CTFEの含量が0.005重量%未満なら、CTFE繰り返し単位aが高分子Pの末端に位置しないので、上記重合体を含む組成物によって形成された膜表面の疎水性改質効果が顕著に低くなり、30重量%を超過する場合、マトリックス高分子との相溶性問題が発生し得る。
【0028】
また、上記重合体でb/(a+b)は、0.05〜0.4である。上記b/(a+b)は、開始効率(Mn、theo/Mn、real)を意味し、上記Mn、theoは、重合体の理論上の分子量を示し、下記式1によって計算することができる。
【0029】
[式1]
Mn、theo=ビニル系単量体が重合される前のCTFEオリゴマーの数平均分子量+[(ビニル系単量体のモル数/重合される前のCTFEオリゴマー内のClのモル数)×ビニル系単量体の転換率×ビニル系単量体の分子量)]
【0030】
上記で、Mn、realは、ポリスチレン標準物質で検量線を得て測定したゲル透過クロマトグラフィ(gel permeation chromatography、GPC)で測定した重合体の数平均分子量を示す。
【0031】
本発明の重合体のb/(a+b)は、0.05〜0.4の場合に、CTFEオリゴマーがPの末端に位置することができ、これによる効果は、前述したものと同一である。
【0032】
上記重合体は、上記化学式1のように、CTFEオリゴマーが高分子Pの末端に共有結合を通じて重合されているので、従来、高分子を疎水性に改質するために使用されたフッ素系界面活性剤と高分子溶液との間で現われた相分離現象が現われない効果を提供することができる。
【0033】
例示的な本発明は、また、前述した上記重合体を含む組成物に関する。上記組成物は、前述した上記重合体を含むことによって、上記組成物を利用して膜を形成する場合、低費用で膜表面の疎水性改質が可能であり、高分子溶液に疎水性処理のためにフッ素系界面活性剤を添加する場合、上記高分子溶液とフッ素系界面活性剤との間に発生した相分離現象が現われない長所がある。
【0034】
上記組成物で、上記重合体の含量は、上記組成物全体に対して上記重合体1重量%〜100重量%であることができる。例えば、上記組成物全体に対して上記重合体20重量%〜50重量%、40重量%〜80重量%、40重量%〜50重量%である。上記範囲内で、形成された高分子膜の疎水性改質効果が優秀に現われ、特に、1重量%未満で含まれる場合、高分子膜の疎水性改質効果が満足できないことがある。上記組成物は、上記重合体だけよりなる場合であっても、上記組成物によって形成された高分子膜表面の疎水性改質効果を得ることができる。
【0035】
上記組成物は、また、界面活性剤をさらに含むことができる。上記界面活性剤が組成物に含まれる場合、上記界面活性剤は、組成物内で界面に吸着し、上記組成物の表面張力を減少させて、膜の形成を助けることができる。
【0036】
上記界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤など技術分野で公知の界面活性剤を多様に利用可能である。例えば、せっけん、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエテール硫酸エステル塩、アルカンスルホン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン塩、スルホコハク酸ジアルキルエステル塩、リン酸エステル塩、ポリエチレングリコール、ポリオール、フッ素系化合物、シリコン系化合物またはこれらの誘導体などを使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0037】
また、上記界面活性剤の含量は、上記組成物100重量部に対して0.1〜10重量部で含まれることができる。例えば、上記組成物100重量部に1重量部〜6重量部、3重量部〜8重量部、4重量部〜5重量部であることができる。上記範囲内で、表面張力減少効果が最も優秀に現われ、特に、10重量部を超過する場合、製造費用が過多に上昇し、上記組成物で相分離現象が発生し得る。
【0038】
本発明は、また、前述した上記組成物によって形成された膜に関する。上記膜は、前述した上記重合体を含む組成物で製造されることによって、別途の表面処理なしに、膜の表面が疎水性に改質され得る。
【0039】
上記疎水性膜は、撥水コーティング膜または汚染防止膜などに使用され得るが、これに制限されるものではなく、多様な産業分野で適用が可能である。
【0040】
1つの例示で、本出願は、前述した上記重合体の製造方法に関する。
上記重合体は、例えば、重合されて高分子Pを形成する重合可能なビニル系単量体とCTFEオリゴマーを一緒に混合し重合することによって製造することができる。すなわち、CTFEオリゴマーのC−Cl結合部位でCl元素が脱落し、Cl元素が脱落した位置にビニル系単量体が結合し、上記単量体が重合され、高分子Pを形成することができる。
【0041】
また、上記製造方法では、例えば、上記ビニル系単量体がCTFEに結合される程度、または、上記CTFEオリゴマー内の塩素原子(Cl)がラジカルに転換される程度を調節することによって、高分子Pが重合されたCTFEの繰り返し単位bの値を調節し、高分子Pの末端にCTFEオリゴマーが重合された重合体を形成することができる。例えば、CTFEの繰り返し単位bが最大限少ない値を有するようにCTFEオリゴマーにビニル系単量体を重合し、高分子Pの末端にCTFEオリゴマーが結合された上記重合体を製造することができる。
【0042】
1つの例示で、上記製造方法は、非活性触媒、クロロトリフルオロエチレンオリゴマー及びビニル系単量体を混合し、混合物を形成する段階と;上記クロロトリフルオロエチレンオリゴマーとビニル系単量体を反応させて重合体を形成する段階と;を含む。
【0043】
本発明の製造方法では、混合物を形成する段階で活性触媒の代わりに非活性触媒を投入することによって、活性触媒が酸素との接触によって非活性化されることを防止するための手段である酸素を除去する段階を反応初期から一緒に行う必要がないので、製造が容易であるという長所がある。ひいては、活性触媒を反応初期から投入して重合を行う場合、過度に多い量の触媒がCTFEオリゴマーの塩素原子(Cl)が結合されたサイトと反応し、ラジカルを形成することによって、CTFEオリゴマー分子間に起きるカップリング及びこれによるゲル化(Gelation)現象が発生する問題及び上記触媒を完全に除去しにくい問題が存在し得るが、本発明の製造方法では、最初に、混合物には少ない量の非活性触媒を投入して初期反応を抑制し、以後に、重合体の形成時に触媒還元剤を適正量で投入し、触媒を漸進的に活性化することによって、一度に多い量の触媒がCTFEオリゴマーの塩素原子(Cl)が結合されたサイトと反応し、同時に開始反応を起こす現象を最小化することができ、ゲル化を抑制することができる。
【0044】
例示的な上記混合物を形成する段階では、上記重合体の原料となるCTFEオリゴマー、ビニル系単量体、非活性触媒を混合して混合物を形成することができる。
【0045】
上記CTFEオリゴマーは、前述したように、クロロトリフルオロエチレン単量体の繰り返し単位を有するオリゴマーを意味し、フッ素系化合物なので、上記重合体によって製造された高分子膜の表面が疎水性を帯びるようにするために、本発明の製造方法に適用され得る。
【0046】
上記ビニル系単量体は、前述したように、ビニル基を有する単量体の技術分野で公知のビニル系単量体を制限なく使用可能である。
【0047】
また、上記混合物内で、CTFEオリゴマーの含量は、上記ビニル系単量体100重量部に対して0.005重量部〜20重量部、好ましくは、1〜5重量部であることができる。これによって、上記重合体は、上記ビニル系単量体100重量部に対して上記クロロトリフルオロエチレンオリゴマーが0.005〜20重量部の含量で重合された重合単位を含むことができる。上記範囲で、CTFEオリゴマーが高分子Pの末端に位置可能であり、特に、20重量部を超過する場合、上記高分子Pを製造しにくいことがある。
【0048】
また、上記非活性触媒は、陽イオン化された金属/リガンド錯化合物を利用することができる。
【0049】
上記錯化合物において、陽イオン化された金属は、例えば、これ以上電子を受けることができない状態で酸化数が最も高い状態の金属である。例えば、Cuの場合、0価、1価または2価の酸化数を有することができ、上記非活性触媒は、そのうち酸化数が最も高い2価のCuとリガンドの錯化合物、すなわち、(Cu2+)/リガンド錯化合物である。上記陽イオン化された金属は、Cu2+、Fe3+、Ru4+またはOs4+などであるが、これに制限されるものではない。
【0050】
また、上記リガンドは、技術分野で公知の多様なリガンドを使用することができ、例えば、2、2'−ビピリジン、トリフェニルホスフィン、4、4−ジノニル−2、2'−ビピリジン、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミン、N、N、N'、N"、N"−ペンタメチルジエチレントリアミン、1、1、4、7、10、10−ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン、トリス[(2−ピリジル)メチル]アミンまたはテトラメチルエチレンジアミンなどを使用することができるが、特に制限されるものではない。
【0051】
1つの例示で、上記混合物は、必要に応じて溶媒を一緒に混合して製造することができる。
【0052】
上記溶媒は、技術分野で公知の多様な溶媒を使用することができ、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ガンマ−ブチロラクトン(GBL)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチルアセテート(EA)またはテトラヒドロフラン(THF)などを使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0053】
1つの例示で、上記重合体を形成する段階は、上記混合物を形成する段階で形成された混合物を重合反応させる段階である。上記CTFEオリゴマーとビニル系単量体を反応させて重合体を形成する段階では、上記混合物を形成する段階で形成された上記混合物に触媒還元剤を投入して非活性触媒を活性化させ、上記活性化された触媒がCTFEオリゴマーの塩素原子(Cl)が結合されたサイトと部分的に反応することによって、重合反応を開始することができる。前述したように、活性触媒を反応初期から投入して重合を行う場合、過度に多い量の触媒がCTFEオリゴマーの塩素原子(Cl)が結合されたサイトと反応し、ラジカルを形成することによって、CTFEオリゴマー分子間に起きるカップリング及びこれによるゲル化(Gelation)現象が発生する問題が存在することができるが、本発明の製造方法では、最初混合物には、非活性触媒を非常に少ない量で投入して初期反応を抑制し、以後に重合体の形成時に触媒還元剤を適正量で投入し、非活性触媒を漸進的に活性化することによって、一度に多い量の触媒がCTFEオリゴマーの塩素原子(Cl)が結合されたサイトと反応し、同時に開始反応を起こす現象を最小化することができる。
【0054】
上記触媒還元剤は、非活性触媒を活性化し、活性触媒がCTFEの塩素原子(Cl)が結合されたサイトと反応してラジカルを形成することによって、重合反応が開始されるようにするために、上記重合体を形成する段階に投入され得る。
【0055】
上記触媒還元剤は、例えば、ベンゾイルペルオキシド、1、1−ビス(ターシャリ−ブチルペルオキシ)−3、3、5−トリエチルシクロヘキサン、ターシャリブチルペルオキシアセテート、ターシャリブチルペルオキシベンゾエート、ターシャリブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ターシャリブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルペルオキシジカーボネート、ジ−3、3、5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ジ−ターシャリ−ブチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシドなどの有機過酸化物;ブチルヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシドなどのヒドロ過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル(azobisisobutyronnitrile、以下、AIBN)、2、2'−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)、1、1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)などのようなアゾ化合物、錫ジオクトエートなどの錫化合物、ヒドラジンなどの電子供与体(electoron donor)化合物、アスコルビン酸などの抗酸化化合物などが例示されるが、これに制限されるものではない。
【0056】
上記触媒還元剤は、上記非活性触媒10重量部に対して、3〜300重量部の含量に投入され得る。上記触媒還元剤が3重量部未満に投入される場合、活性触媒の含量が低くて、重合開始が効率的に起きにくいし、300重量部を超過して投入される場合、触媒の活性が過度に高くなって、CTFEオリゴマー分子間に起きるカップリング及びこれによるゲル化、またはグラフト重合体ではない線形重合体が生成される問題が発生し得る。また、上記触媒還元剤を除去するための追加的な工程が必要なので、工程が非経済的に進行される問題が発生し得る。
【0057】
上記重合体を形成する段階は、例えば、変形された原子伝達ラジカル重合法(Atom Transfer Radical Polimerization、以下、ATRPという)、例えば、非活性触媒を、アゾ系熱重合開始剤を利用して活性化するICAR−ATRP方法や還元剤を使用するARGET−ATRP方法などを通じて行われる。
【0058】
例えば、上記陽イオン化された金属/リガンド錯化合物触媒を使用するATRP方法によって上記重合体を製造する場合、上記CTFEオリゴマーのC−F結合より結合エネルギーが低いC−Cl結合を活性化させて、CTFEオリゴマーにビニル系単量体を重合することが容易なので、効率的に重合することができる。また、ATRP法を通じて高分子の重合程度であるnを調節しやすく、全体高分子内のCTFEの重量比を所望に調節することができる。
【0059】
しかし、相対的に低い酸化数の陽イオン化された金属/リガンド錯化合物触媒、例えばCu1+/リガンド錯化合物を使用する一般的なATRP技法を使用してCTFEオリゴマーをグラフト重合する場合、CTFEオリゴマー分子間に起きるカップリング及びこれによるゲル化、CTFEオリゴマー内の全体のATRP開始サイト(Cl)の同時活性化によるラジカル濃度増加、これによる非活性触媒の累積による反応の停止及び数千ppmの触媒使用による触媒の完全除去が不可能な点などの問題が発生し得る。本発明の製造方法では、上記のような混合物を形成する段階及び重合体を形成する段階を経ることによって、非常に少ない量の非活性触媒を使用し、触媒還元剤を利用した非活性触媒の持続的な活性化が可能であり、ラジカル濃度の微量制御が可能なので、これによって、前述した問題点を解決することができる。
【0060】
上記重合体を形成する段階は、上記重合体を製造するために高い酸化数の金属/リガンド錯化合物、例えば、Cu2+/リガンド錯化合物を徐々に、例えば、Cu1+/リガンド錯化合物のように低い酸化数の金属/リガンド錯化合物であるATRP活性体に転換する段階を含むことができる。すなわち、高い酸化数の金属/リガンド錯化合物を非常に少ない量(ビニル系単量体のモル数に対して500ppm以下)で使用する代わりに、還元剤をさらに投入することによって、前述したATRP法を使用して重合するとき、CTFEオリゴマー分子間に起きるカップリング及びこれによるゲル化現象が起きる問題を解決することができ、ひいては、低い転換率で反応が終了し、高い分子量の高分子製造が不可能な問題を解決することができる。
【0061】
上記還元剤は、例えば、錫ジオクトエート(tin(II) dioctoate)、ヒドラジン(hydrazine)、アスコルビン酸(ascorbic acid)など一般的に知られた化学還元剤またはラジカル熱重合開始剤などを使用することができるが、これに制限されるものではなく、例えば、上記ラジカル熱重合開始剤または前述した触媒還元剤を好ましく使用することができる。
【0062】
1つの例示で、上記重合体を形成する段階は、25〜150℃の温度で0.1〜100時間行われる。
【0063】
1つの例示で、本発明の製造方法は、また、上記混合物を形成する段階と重合体を形成する段階との間に、酸素を除去する段階をさらに含む。非活性触媒が触媒還元剤によって活性化される場合、活性触媒は、酸素に敏感に反応して非活性化されやすいので、上記酸素を除去する段階をさらに実施することによって、重合効率を高めることができる。また、上記酸素を除去すると同時に、反応温度を昇温させることによって、重合体を形成するための反応条件を適切に制御することができる。
【0064】
上記酸素を除去する段階で、酸素を除去する方法は、例えば、真空法、バブリング法など酸素を効率的に除去することができれば、技術分野で公知の多様な方法を使用可能であり、これに制限されるものではないが、例えば、バブリング法を使用することができる。上記で「真空法」は、溶液を氷らせた後、真空状態に作って酸素気体を除去する方法を意味し、上記「バブリング法」は、非反応性の気体である窒素を溶液の中に継続的に注入し、酸素の溶解度を低めて、酸素を除去する方法を意味する。
【0065】
1つの例示で、上記製造方法は、上記重合体を形成する段階後に、反応終了段階をさらに含む。上記反応終了段階では、上記重合体を形成する段階後に、上記混合物を酸素に露出または酸素と接触させることによって、反応を終了させることができる。
【発明の効果】
【0066】
本発明による重合体は、末端に疎水性を有する化合物を含んで別途の表面処理なしにも、膜形成と同時に疎水性を帯びる表面を形成する膜を提供することができる。また、本発明による重合体を含む組成物を利用して膜を形成する場合、低費用で永久的に膜表面の疎水性改質が可能なだけでなく、高分子溶液状態で相分離現象が起きない組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、実施例及び比較例を通じて上記装置及び方法を詳しく説明するが、上記装置及び方法の範囲が下記実施例によって制限されるものではない。
【0068】
製造例1.重合体が含まれた組成物(A1)の製造
数平均分子量(Mn)500〜600のCTFEオリゴマー0.219g、ビニル系単量体メチルメタクリレート(MMA)18.8g、非活性触媒である塩化銅触媒(CuCl)2.5mg、リガンドN、N、N'、N''、N''−ペンタメチルジエチレントリアミン(N、N、N'、N''、N''−pentamethyldiethylenetriamine、以下PMDETA)3.9mg、溶媒N、N−ジメチルホルムアマイド(N、N−dimethylformamide、以下DMF)19gで混合した混合物を100mL丸底フラスコに入れ、フラスコをシールした後、溶液内の酸素除去のために窒素を30分間バブリングした後、60℃のオイル浴に置いた。その後、触媒還元剤であるアゾ系化合物アゾビスイソブチロニトリル(azobisisobutyronitrile、以下AIBN)15.4mgを5%DMF溶媒と混合した混合溶液を上記フラスコに投入し、反応を開始した。上記オイル浴で上記フラスコを60℃で20時間加熱した後、フラスコをオプーンし、酸素に露出した後、反応を終了し、単量体の転換率が51%、重量平均分子量(Mw)27000、分子量分布(Mw/Mn)が1.5、CTFEの含量が3%である重合体を製造した。上記重合体をメタノールに沈澱させ、精製し、上記重合体が50%の濃度で含まれた膜形成用組成物を製造した。
【0069】
製造例2.重合体が含まれた組成物(A2)の製造
上記製造例1で混合物で数平均分子量(Mn)500〜600のCTFEオリゴマー0.219g、ビニル系単量体MMA 18.8g、非活性触媒である塩化銅触媒(CuCl)2.5mg、リガンドPMDETA 3.9mgで混合した混合物を使用し、触媒還元剤AIBN 30.8mを溶媒DMF 19gと混合した混合溶液をフラスコに投入したこと以外には、上記実施例1と同一の方法で単量体の転換率が80%、重量平均分子量(Mw)33800、分子量分布(Mw/Mn)が1.48、CTFEの含量が2.4%である重合体を製造した。上記重合体をメタノールに沈澱させ、精製し、上記重合体が50%の濃度で含まれた膜形成用組成物を製造した。
【0070】
製造例3.重合体が含まれた組成物(A3)の製造
上記製造例1で混合物としてCTFEオリゴマーとしてポリサイエンス社のHalocarbonTM 200 oil 0.218g、ビニル系単量体MMA 18.8g、非活性触媒である塩化銅触媒(CuCl) 1.3mg、リガンドPMDETA 1.9mgで混合した混合物を使用し、触媒還元剤AIBN 15.4mgを溶媒DMF19gと混合した混合溶液をフラスコに投入し、オイル浴で37時間加熱したこと以外には、上記製造例1と同一の方法で単量体の転換率が84%、重量平均分子量(Mw)54000、分子量分布(Mw/Mn)が1.43、CTFEの含量が1.4%である重合体を製造した。上記重合体をメタノールに沈澱させ、精製し、上記重合体が50%の濃度で含まれた膜形成用組成物を製造した。
【0071】
製造例4.重合体が含まれた組成物(A4)の製造
上記製造例3で混合物としてCTFEオリゴマーとしてポリサイエンス社のHalocarbonTM 1000N oil 0.218g、ビニル系単量体MMA 18.8g、非活性触媒である塩化銅触媒(CuCl)1.3mg、リガンドPMDETA 1.9mgで混合した混合物を使用し、触媒還元剤AIBN 15.4mgを溶媒DMF19gと混合した混合溶液をフラスコに投入したこと以外には、上記製造例3と同一の方法で単量体の転換率が84%、重量平均分子量(Mw)55000、分子量分布(Mw/Mn)が1.44、CTFEの含量が1.4%である重合体を製造した。上記重合体をメタノールに沈澱させ、精製し、上記重合体が50%の濃度で含まれた膜形成用組成物を製造した。
【0072】
製造例5.重合体の製造
数平均分子量(Mn)500〜600のCTFEオリゴマー0.219g、ビニル系単量体メチルメタクリレート(MMA)18.8g、溶媒DMF 19gで混合した混合物を100mL丸底フラスコに入れ、フラスコをシールした後、溶液内の酸素除去のために窒素を30分間バブリングした後、60℃のオイル浴に置いた。上記オイル浴に別に窒素の存在下で製造された活性塩化銅触媒(CuCl)56mg、反応速度及び反応コントロールを調節するための非活性塩化銅触媒(CuCl)12mg、リガンドPMDETA 130mgを4gのDMFにとかした触媒溶液を上記フラスコに投入し、反応を開始した。上記オイル浴で上記フラスコを60℃で20時間加熱した後、フラスコをオプーンし、酸素に露出した後、反応を終了し、重合体を製造した。
【0073】
製造例6.重合体が含まれた組成物(B3)の製造
製造例5の場合、反応速度の調節のために非活性触媒を活性触媒量の14%程度混合して使用したにもかかわらず、H−NMRで測定された転換率は、0%であって、重合体が形成されず、これによって、製造例6では、反応活性をさらに低減するために、ビニル系単量体をスチレンに変更した、
【0074】
ビニル系単量体としてスチレン19gを、反応温度を120℃に調節したこと以外には、上記比較例1と同一に重合反応を進行し、20時間経過後、反応を終了し、重合体を製造した。単量体の転換率が83%、重量平均分子量(Mw)63000、分子量分布(Mw/Mn)が2.73、CTFEの含量が1.4%である重合体を製造した。上記重合体をメタノールに沈澱させ、精製し、上記重合体が50%の濃度で含まれた膜形成用組成物を製造した。
【0075】
実施例1
膜の製造
上記組成物をアルミニウムディッシュにそれぞれ3mLずつ塗布し、150℃の温度に加熱されたオーブンで乾燥し、均一な表面を有する膜試験片を製造した。
【0076】
実施例2
上記製造例2で製造された組成物(A2)を使用した点を除いて、実施例1と同一の方法で均一な表面を有する膜試験片を製造した。
【0077】
実施例3
上記製造例3で製造された組成物(A3)を使用した点を除いて、実施例1と同一の方法で均一な表面を有する膜試験片を製造した。
【0078】
実施例4
上記製造例4で製造された組成物(A4)を使用した点を除いて、実施例1と同一の方法で均一な表面を有する膜試験片を製造した。
【0079】
比較例1
数平均分子量(Mn)500〜600のCTFEオリゴマー0.3g、ポリメチルメタクリレート(PMMA)9.7gが混合した50%の組成物(B1)を製造し、実施例1と同一の方法で均一な表面を有する膜試験片を製造した。
【0080】
比較例2
CTFEオリゴマーとしてポリサイエンス社のHalocarbonTM 1000N oil 0.3g、ポリメチルメタクリレート(PMMA)9.7gが混合した50%の組成物(B2)を製造し、実施例1と同一の方法で均一な表面を有する膜試験片を製造した。
【0081】
比較例3
上記製造例6で製造された組成物(B3)を使用した点を除いて、実施例1と同一の方法で均一な表面を有する膜試験片を製造した。
【0082】
試験例
実施例及び比較例で製造された組成物または膜に対して下記方式でその物性を評価した。
【0083】
測定方法1.数平均分子量及び重量平均分子量の測定
組成物の数平均分子量及び重量平均分子量は、GPCを使用して、以下の条件で測定した。検量線の製作には、Agilent systemの標準ポリスチレンを使用して、測定結果を換算した。
〈重量平均分子量測定条件〉
測定器:Agilent GPC(Agilent 1200 series、米国)
コラム:PL Mixed B 2個連結
コラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/min
濃度:〜1mg/mL(50μL injection)
【0084】
測定方法2.表面エネルギーの測定
各膜試験片の表面エネルギーを測定するために、以下の条件で接触角を測定した。
〈表面エネルギー測定条件〉
温度:25℃の恒温
湿度:40%の恒湿
極性溶媒:蒸留水
非極性溶媒:ジヨードメタン(diiodomethane)
【0085】
測定方法3.重合体内のCTFE含量の測定
重合体内のCTFE含量は、[投入したCFFEオリゴマーの量/(CTFEオリゴマー投入量+単量体投入量×単量体転換率)]で計算することができ、未知の試料の場合、元素分析法を通じてフッ素(F)元素の含量を利用して測定した。すなわちCTFE一単位当たりフッ素の質量比は、49%なので、F含量の2.04倍をCTFE含量で定義して測定した。
【0086】
測定方法4.相分離現象の測定
膜の製造後、試験片を目視で観察したとき、透明及び不透明で判別した。この際、不透明な試験片を相分離発生と判断した。
【0087】
上記方式に従った実施例1〜5及び比較例1〜6の高分子膜の表面エネルギー及び相分離現象発生有無を比較すれば、下記表1の通りである。
【0088】
【表1】
【0089】
上記表1から明らかなように、本発明による重合体を含む組成物(A1)〜組成物(A4)によって形成された膜試験片の実施例1〜4の場合、たとえ、CTFE化合物の含量が1.5〜3重量%に過ぎないが、比較例に比べて低い表面エネルギー値を示す。したがって、製造された高分子膜表面の疎水性改質効果に優れていることが分かる。
【0090】
一方、CTFEオリゴマーをブレンディング状態の単純混合物として導入した比較例1及び比較例2の場合には、表面エネルギー値が高く測定され、製造された高分子膜表面の疎水性改質効果は現われなかった。
【0091】
また、実施例1〜4の場合、CTFE化合物が単純に混合されず、高分子の末端に共有結合を通じて導入されたところ、高分子溶液の相分離現象が起きなかった。
【0092】
一方、本発明の製造方法によらずに製造され、分子量分布が1.6を超過するように製造された比較例3の組成物で製造された試験片を試験してみた結果、表面改質効果が現われないものと観測された。これは、上記のように、重合体が広い分子量分布を有する場合、高分子間のカップリング反応が活発に進行され、枝状高分子(branched polymer)が形成され、したがって、フッ素系オリゴマーが上記枝状高分子の中心に位置し、疎水性を良好に示さないからである。