特許第5975914号(P5975914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5975914複合ポリエステルアミド組成物及び潤滑剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5975914
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】複合ポリエステルアミド組成物及び潤滑剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/12 20060101AFI20160809BHJP
   C10M 159/12 20060101ALI20160809BHJP
   C10M 129/08 20060101ALI20160809BHJP
   C10M 129/42 20060101ALI20160809BHJP
   C10M 129/52 20060101ALI20160809BHJP
   C10M 133/16 20060101ALI20160809BHJP
   C10M 105/68 20060101ALI20160809BHJP
   C07C 231/02 20060101ALI20160809BHJP
   C07C 233/05 20060101ALI20160809BHJP
   C07C 233/18 20060101ALI20160809BHJP
   C07C 233/14 20060101ALI20160809BHJP
   C07C 233/58 20060101ALI20160809BHJP
   C07C 233/60 20060101ALI20160809BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20160809BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20160809BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20160809BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20160809BHJP
   C10N 40/06 20060101ALN20160809BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20160809BHJP
   C10N 40/12 20060101ALN20160809BHJP
   C10N 40/20 20060101ALN20160809BHJP
   C10N 40/24 20060101ALN20160809BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20160809BHJP
   C10N 40/30 20060101ALN20160809BHJP
   C10N 40/36 20060101ALN20160809BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20160809BHJP
【FI】
   C08L77/12
   C10M159/12
   C10M129/08
   C10M129/42
   C10M129/52
   C10M133/16
   C10M105/68
   C07C231/02
   C07C233/05
   C07C233/18
   C07C233/14
   C07C233/58
   C07C233/60
   C10N30:00 C
   C10N30:06
   C10N40:02
   C10N40:04
   C10N40:06
   C10N40:08
   C10N40:12
   C10N40:20
   C10N40:24
   C10N40:25
   C10N40:30
   C10N40:36
   C10N50:10
【請求項の数】20
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-56027(P2013-56027)
(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公開番号】特開2014-181271(P2014-181271A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】寺田 祐二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 博幸
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−002793(JP,A)
【文献】 特開2002−241777(JP,A)
【文献】 特開2004−256515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G69、C08L77、C10M、C10N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのヒドロキシル基を含む多価アルコールと、少なくとも2つのカルボキシル基を含む炭素数26〜68の多価カルボン酸と、モノアミンとを縮合させることにより得られるポリエステルアミドを含むことを特徴とする複合ポリエステルアミド組成物。
【請求項2】
前記多価アルコールは、3つ以上のヒドロキシル基を含むことを特徴とする請求項1に記載の複合ポリエステルアミド組成物。
【請求項3】
前記多価アルコールは、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、グリセリンまたはジペンタエリスリトールであることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合ポリエステルアミド組成物。
【請求項4】
前記多価カルボン酸は、ダイマー酸、ダイマー酸の水添体またはトリマー酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合ポリエステルアミド組成物。
【請求項5】
前記ポリエステルアミドの少なくとも1種は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1に記載の複合ポリエステルアミド組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Rはn価の原子団を表し、R1は(m+1)価の原子団であって、前記多価カルボン酸の残基を表す。R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す。なお、R2とR3は互いに結合して環状構造を形成してもよい。また、nは2〜4の整数を表し、mは1〜3の整数を表す。)
【請求項6】
前記一般式(1)において、nは3または4の整数であることを特徴とする請求項に記載の複合ポリエステルアミド組成物。
【請求項7】
前記一般式(1)において、mは1または2の整数であることを特徴とする請求項又はに記載の複合ポリエステルアミド組成物。
【請求項8】
前記一般式(1)において、R1の炭素数は、24〜66であることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の複合ポリエステルアミド組成物。
【請求項9】
前記一般式(1)において、R1は、ダイマー酸残基またはトリマー酸残基であることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の複合ポリエステルアミド組成物。
【請求項10】
前記一般式(1)において、R2及びR3の炭素数の合計は、6以上であることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の複合ポリエステルアミド組成物。
【請求項11】
前記一般式(1)において、R2及びR3はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基であることを特徴とする請求項10のいずれか1項に記載の複合ポリエステルアミド組成物。
【請求項12】
前記一般式(1)において、Rは、置換基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素からなる原子団であることを特徴とする請求項11のいずれか1項に記載の複合ポリエステルアミド組成物。
【請求項13】
40℃における粘度が50〜1650mPasであることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の複合ポリエステルアミド組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の複合ポリエステルアミド組成物と、摩耗防止剤、粘度指数向上剤、酸化防止剤、清浄剤、分散剤、流動、硬化剤、腐食防止剤、シール適合剤、消泡剤、錆防止剤、腐食防止剤、摩擦調整剤、及び増ちょう剤から選択される1種又は2種以上の添加剤とを含有する組成物。
【請求項15】
前記請求項1〜13のいずれか1項に記載の複合ポリエステルアミド組成物、又は請求項13に記載の組成物と、鉱物油、油脂化合物、ポリオレフィン油、シリコーン油、パーフルオロポリエーテル油、芳香族エステル油、及びポリオールエステル潤滑油から選択される1種又は2種以上の媒体とを少なくとも含有することを特徴とする組成物。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の複合ポリエステルアミド組成物、又は請求項14又は15に記載の組成物を含むことを特徴とする潤滑剤。
【請求項17】
グリース用潤滑油、離型剤、内燃機関用エンジンオイル、金属加工用(切削用)オイル、軸受け用オイル、燃焼機関用燃料、車両エンジン油、ギヤ油、自動車用作動油、船舶・航空機用潤滑油、マシン油,タービン油、軸受用オイル、油圧作動油、圧縮機・真空ポンプ油、冷凍機油、金属加工用潤滑油剤、磁気記録媒体用潤滑剤、マイクロマシン用潤滑剤、人工骨用潤滑剤、ショックアブソーバ油又は圧延油として用いられることを特徴とする請求項16に記載の潤滑剤。
【請求項18】
少なくとも2つのヒドロキシル基を含む多価アルコールと、少なくとも2つのカルボキシル基を含む炭素数26〜68の多価カルボン酸と、モノアミンとを混合し混合物を得る工程と、前記混合物を脱水縮合する工程を含むことを特徴とする複合ポリエステルアミド組成物の製造方法。
【請求項19】
前記混合物を得る工程は、前記多価アルコールに対して、前記多価カルボン酸を混合する当量比が1〜3となり、前記モノアミンを混合する当量比が0.5〜3となるように混合する工程であることを特徴とする請求項18に記載の複合ポリエステルアミド組成物の製造方法。
【請求項20】
前記脱水縮合する工程は、前記混合物に対して1〜25質量%の、沸点110〜160℃の炭化水素系溶剤を添加し、水を共沸させつつ、脱水縮合を進行させる工程を含むことを特徴とする請求項18または19に記載の複合ポリエステルアミド組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合ポリエステルアミド組成物及び潤滑剤に関する。具体的には、本発明は、特定のポリエステルアミドを含む複合ポリエステルアミド組成物と、該複合ポリエステルアミド組成物を含む潤滑剤に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑剤は、一般にベースオイルと種々の添加剤を含む。ベースオイルとしては、原油から得られる鉱物油、化学合成されるエステル系油、フッ素油、ポリαオレフィン系油などがある。これらの中でも、エステル系油は、低流動点、高粘度指数、高引火点、良好な潤滑性能、生分解性などから、ジェット機、自動車エンジン油、グリースなどに好適に用いられる。
【0003】
エステル系油としては、脂肪族モノカルボン酸と一価アルコールとの反応から得られるモノエステル;脂肪族二塩基酸と一価アルコールとの反応から得られるジエステル;多価アルコールと脂肪族カルボン酸との反応から得られるエステル;及びポリオール、多塩基酸、脂肪族モノカルボン酸との反応から得られる複合エステル;等、様々なエステル類が開示されている(特許文献1〜5)。
【0004】
また、特許文献6及び7には、エステルアミド化合物が開示されており、このエステルアミド化合物を潤滑剤として用いることが記載されている。特許文献6では、エステルアミド化合物として、含フッ素アルキルエステルアミド化合物を用いており、これにより安定性に優れた潤滑剤を得ることとしている。また、特許文献7では、特定の構造を有するエステルアミド化合物を溶剤又は融合助剤と用いることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−097482号公報
【特許文献2】特開2005−154726号公報
【特許文献3】特開2005−232434号公報
【特許文献4】特開2005−213377号公報
【特許文献5】特開2005−232470号公報
【特許文献6】特開2007−070289号公報
【特許文献7】特表2011−510046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、産業分野の多様化や高度化に伴い、潤滑剤には高い潤滑性能が求められるようになってきている。このため、低摩擦性を有し、潤滑性能に優れたポリエステル組成物の開発が求められている。
しかしながら従来の特許文献に記載されたポリエステルやエステルアミド化合物を含む潤滑剤は、必要とされる潤滑性能を十分に発揮することができないということが本発明者らの検討により明らかとなった。また、従来のポリエステルを含む潤滑剤は、潤滑剤中で加水分解をするため、潤滑剤の劣化を促進するという問題があった。このように劣化した潤滑剤は、金属等を腐食させる原因となるため問題となっていた。
すなわち、従来のポリエステル系化合物を含む潤滑剤は、優れた潤滑性能と耐加水分解性を兼ね備えておらず、これら両方の性能を有する潤滑剤が求められている。
【0007】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、優れた潤滑性能を発揮し得る潤滑剤であって、かつ、優れた耐加水分解性を有する潤滑剤を提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、特定のポリエステルアミドを含む複合ポリエステルアミド組成物を得ることにより、潤滑性能を良化させ得ることを見出した。なお、特定のポリエステルアミドとは、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む多価アルコールと、少なくとも2つのカルボキシル基を含む多価カルボン酸と、モノアミンを縮合させることにより得られるポリエステルアミドである。
さらに本発明者らは、このようなポリエステルアミドを含む複合ポリエステルアミド組成物は、優れた耐加水分解性を発揮し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0009】
[1]少なくとも2つのヒドロキシル基を含む多価アルコールと、少なくとも2つのカルボキシル基を含む多価カルボン酸と、モノアミンとを縮合させることにより得られるポリエステルアミドを含むことを特徴とする複合ポリエステルアミド組成物。
[2]前記多価アルコールは、3つ以上のヒドロキシル基を含むことを特徴とする[1]に記載の複合ポリエステルアミド組成物。
[3]前記多価アルコールは、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、グリセリンまたはジペンタエリスリトールであることを特徴とする[1]又は[2]に記載の複合ポリエステルアミド組成物。
[4]前記ポリエステルアミドの少なくとも1種は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする[1]に記載の複合ポリエステルアミド組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Rはn価の原子団を表し、R1は(m+1)価の原子団であって、前記多価カルボン酸の残基を表す。R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す。なお、R2とR3は互いに結合して環状構造を形成してもよい。また、nは2〜4の整数を表し、mは1〜3の整数を表す。)
[5]前記一般式(1)において、nは3または4の整数であることを特徴とする[4]に記載の複合ポリエステルアミド組成物。
[6]前記一般式(1)において、mは1または2の整数であることを特徴とする[4]又は[5]に記載の複合ポリエステルアミド組成物。
[7]前記一般式(1)において、R1の炭素数は、22〜66であることを特徴とする[4]〜[6]のいずれかに記載の複合ポリエステルアミド組成物。
[8]前記一般式(1)において、R1は、ダイマー酸残基またはトリマー酸残基であることを特徴とする[4]〜[7]のいずれかに記載の複合ポリエステルアミド組成物。
[9]前記一般式(1)において、R2及びR3の炭素数の合計は、6以上であることを特徴とする[4]〜[8]のいずれかに記載の複合ポリエステルアミド組成物。
[10]前記一般式(1)において、R2及びR3はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基であることを特徴とする[4]〜[9]のいずれかに記載の複合ポリエステルアミド組成物。
[11]前記一般式(1)において、Rは、置換基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素からなる原子団であることを特徴とする[4]〜[10]のいずれかに記載の複合ポリエステルアミド組成物。
[12]40℃における粘度が50〜1650mPasであることを特徴とする[1]〜[11]のいずれかに記載の複合ポリエステルアミド組成物。
[13][1]〜[12]のいずれかに記載の複合ポリエステルアミド組成物と、摩耗防止剤、粘度指数向上剤、酸化防止剤、清浄剤、分散剤、流動、硬化剤、腐食防止剤、シール適合剤、消泡剤、錆防止剤、腐食防止剤、摩擦調整剤、及び増ちょう剤から選択される1種又は2種以上の添加剤とを含有する組成物。
[14][1]〜[12]のいずれかに記載の複合ポリエステルアミド組成物、又は[13]に記載の組成物と、鉱物油、油脂化合物、ポリオレフィン油、シリコーン油、パーフルオロポリエーテル油、芳香族エステル油、及びポリオールエステル潤滑油から選択される1種又は2種以上の媒体とを少なくとも含有することを特徴とする組成物。
[15][1]〜[12]のいずれかに記載の複合ポリエステルアミド組成物、又は[13]又は[14]に記載の組成物を含むことを特徴とする潤滑剤。
[16]グリース用潤滑油、離型剤、内燃機関用エンジンオイル、金属加工用(切削用)オイル、軸受け用オイル、燃焼機関用燃料、車両エンジン油、ギヤ油、自動車用作動油、船舶・航空機用潤滑油、マシン油,タービン油、軸受用オイル、油圧作動油、圧縮機・真空ポンプ油、冷凍機油、金属加工用潤滑油剤、磁気記録媒体用潤滑剤、マイクロマシン用潤滑剤、人工骨用潤滑剤、ショックアブソーバ油又は圧延油として用いられることを特徴とする[15]に記載の潤滑剤。
[17]少なくとも2つのヒドロキシル基を含む多価アルコールと、少なくとも2つのカルボキシル基を含む多価カルボン酸と、モノアミンとを混合し混合物を得る工程と、前記混合物を脱水縮合する工程を含むことを特徴とする複合ポリエステルアミド組成物の製造方法。
[18]前記混合物を得る工程は、前記多価アルコールに対して、前記多価カルボン酸を混合する当量比が1〜3となり、前記モノアミンを混合する当量比が0.5〜3となるように混合する工程であることを特徴とする[17]に記載の複合ポリエステルアミド組成物の製造方法。
[19]前記脱水縮合する工程は、前記混合物に対して1〜25質量%の、沸点110〜160℃の炭化水素系溶剤を添加し、水を共沸させつつ、脱水縮合を進行させる工程を含むことを特徴とする[17]または[18]に記載の複合ポリエステルアミド組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い潤滑性能を発揮し得る複合ポリエステルアミド組成物を得ることができる。さらに、本発明によれば、優れた耐加水分解性を有する複合ポリエステルアミド組成物を得ることができる。このため、本発明の複合ポリエステルアミド組成物は、金属を腐食させることがなく、様々な用途において潤滑剤として好ましく用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
(1.複合ポリエステルアミド組成物)
本発明は、所定のポリエステルアミドを含む複合ポリエステルアミド組成物に関する。本発明の複合ポリエステルアミド組成物は、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む多価アルコールと、少なくとも2つのカルボキシル基を含む多価カルボン酸と、モノアミンとを縮合させることにより得られるポリエステルアミドを含む。
【0013】
ポリエステルアミドの縮合に用いる多価アルコールは、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物である。多価アルコールは、R(OH)nで表される。Rはn価の脂肪族、脂環式又は芳香環基であり、R中の炭素原子の互いに隣接しない1以上の炭素原子が酸素原子に置換されていてもよい。多価アルコール一分子中に、ヒドロキシル基は、2〜4個含まれていることが好ましく、3または4個含まれていることがより好ましい。すなわち、多価アルコールは、トリオール又はテトラオールであることが好ましい。
【0014】
本発明で用いる多価アルコールは、2〜4価の多価アルコールのいずれか1種を用いることとしてもよく、複数種を用いることとしてもよい。例えば、2価の多価アルコールと3価の多価アルコールを混合したものを用いてもよく、2価の多価アルコールと3価の多価アルコールと4価の多価アルコールを混合したものを用いてもよく、3価の多価アルコールと4価の多価アルコールを混合したものを用いてもよい。なお、2価の多価アルコールを含む場合、多価アルコールの全質量に対して、2価の多価アルコールの含有率は、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0015】
Rは、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜15、さらに好ましくは2〜10、さらにより好ましくは2〜7、特に好ましくは3〜5の炭素原子を含むn価の脂肪族基である。但し、この範囲に限定されず、用途によっては、炭素原子数はむしろ大きいほうが好ましい場合もある。
Rの好ましい例は、Cx2X+2-n(xは2〜20の数)又はCx2X+2-nm(xは2〜20の数、mはm<xを満足する数であり、1〜3が好ましい)で表される基であるのがより好ましい。
【0016】
本発明で用いることができる多価アルコールとして、例えば、以下の化合物を挙げることができる。エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ネオペンチルグリコールのようなジオール;トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、グリセリンのようなトリオール;トリメチロールプロパンのようなテトラオール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールのようなマルチオール;キシリトール、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、マルチトール、イソマルト、アルビニトール、リビトール、イジトール、ボレミトール、ペリセイトールのような糖アルコール;及びグルコースなどの糖;等が挙げられる。これらの中でも、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びキシリトールが好ましく;トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、及びジペンタエリスリトール等がさらに好ましく;トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、及びジペンタエリスリトール等がよりさらに好ましく;ペンタエリスリトール及びトリメチロールプロパンが特に好ましい。これらは、高純度品である必要はなく、いわゆる工業銘柄でも好適に用いられる。例えば、ペンタエリスリトールの工業銘柄は、約88%のモノ−、10%のジ−及び1〜2%のトリ−ペンタエリトリトールからなるとされるが、当該ペンタエリスリトール等の工業銘柄を、本発明において、多価アルコールとして用いることができる。
【0017】
下記に本発明で用いることができる多価アルコールの具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
【化2】
【0019】
ポリエステルアミドの縮合に用いる多価カルボン酸は、少なくとも2つのカルボキシル基を含む化合物である。カルボキシル基は一分子中に2〜4個含まれていることが好ましく、2または3個含まれていることがより好ましく、2個含まれていることがさらに好ましい。さらに、多価カルボン酸はダイマー酸であることが特に好ましい。
本発明で用いる多価カルボン酸は、2〜4価の多価カルボン酸のいずれか1種を用いることとしてもよく、複数種を用いることとしてもよい。例えば、2価のカルボン酸と3価のカルボン酸を混合したものを用いてもよく、2価のカルボン酸と3価のカルボン酸と4価のカルボン酸を混合したものを用いてもよく、3価のカルボン酸と4価のカルボン酸を混合したものを用いてもよい。
【0020】
分子中のカルボキシル基は、鎖状もしくは環状の2価以上の脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素で連結されている。多価カルボン酸の炭素数は、4以上であることが好ましく、10以上であることが好ましく、24以上であることがより好ましく、26以上であることがさらに好ましく、28以上であることが特に好ましい。また、多価カルボン酸の炭素数は、68以下であることが好ましく、62以下であることがより好ましく、59以下であることがさらに好ましい。なお、本発明において、多価カルボン酸の炭素数とは、カルボキシル基を構成する炭素原子も含めた炭素数を表すものとする。このように多価カルボン酸の炭素数を上記範囲内とすることにより、複合ポリエステルアミド組成物の潤滑性能をより高めることができる。
【0021】
本発明で用いることができる多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、フタル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、トリメリット酸、ダイマー酸、及びダイマー酸の水添体、トリマー酸等を挙げることができる。中でも、ダイマー酸、及びダイマー酸の水添体、トリマー酸を用いることが好ましい。
【0022】
下記に本発明で用いることができる多価カルボン酸の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
【化3】
【0024】
本発明では、多価カルボン酸の代わりとして、多価カルボン酸の無水物を用いることもできる。多価カルボン酸の無水物は、上記の多価カルボン酸の二つのCOOHが分子内あるいは分子間脱水縮合したものである。その好ましい形態は上記と同様である。その無水物の例には、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ナド酸、無水メチルナド酸、無水ヘキサヒドロフタル酸及び混合された多塩基酸の無水物が含まれる。
【0025】
本発明で用いることができるモノアミンは、一分子中に窒素原子を1つ有する化合物であり、NHR23で表されるモノアミンを用いることが好ましい。R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す。なお、R2とR3は互いに結合して環状構造を形成してもよい。中でも、R2及びR3はそれぞれ置換基を有してもよいアルキル基であることが好ましく、置換基を有するアルキル基であることが特に好ましい。
【0026】
モノアミンの炭素数は6以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましく、8以上であることがさらに好ましい。すなわち、R2及びR3の炭素数の合計が上記下限値以上であることが好ましい。また、モノアミンの炭素数は30以下であることが好ましく、24以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。モノアミンの炭素数を上記範囲内とすることにより、複合ポリエステルアミド組成物の粘度上昇を抑制でき、複合ポリエステルアミド組成物の潤滑性能をより高めることができる。また、縮合反応時のアミド化反応率を高め、酸価を低減することができる。
【0027】
モノアミンとしては、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、アラキルアミン、ベヘニルアミン、N−メチルラウリルアミン、N−メチルミリスチルアミン、N−メチルセチルアミン、N−メチルステアリルアミン、N−メチルアラキルアミン、N−メチルベヘニルアミン、N,N−ジドデシルアミン、アニリン、等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0028】
下記に本発明で用いることができるモノアミンの具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
【化4】
【0030】
本発明の複合ポリエステルアミド組成物は、上述したような少なくとも2つのヒドロキシル基を含む多価アルコールと、少なくとも2つのカルボキシル基を含む多価カルボン酸と、モノアミンを混合し、この混合物を縮合させることに得られるポリエステルアミドを含む。混合物を縮合させることに得られるポリエステルアミドの少なくとも1種は、下記一般式(1)で表されることが好ましい。
【0031】
【化5】
【0032】
ここで、一般式(1)中、Rはn価の原子団を表し、R1は(m+1)価の原子団であって、多価カルボン酸の残基を表す。R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す。なお、R2とR3は互いに結合して環状構造を形成してもよい。また、nは2〜4の整数を表し、mは1〜3の整数を表す。
【0033】
上記一般式(1)において、Rはn価の原子団を表し、nは2〜4であり、nは3または4であることが好ましい。すなわち、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む多価アルコールは、3つ以上のヒドロキシル基を含む化合物であることが好ましい。
【0034】
なお、Rが3価の原子団である場合のポリエステルアミドの構造を一般式(2)で表し、Rが4価の原子団である場合のポリエステルアミドの構造を一般式(3)で表すことができる。
【0035】
【化6】
【0036】
ここで、一般式(2)中、Rは3価の原子団を表し、R1は(m+1)価の原子団であって、多価カルボン酸の残基を表す。R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す。なお、R2とR3は互いに結合して環状構造を形成してもよい。また、mは1〜3の整数を表す。
また、一般式(3)中、Rは4価の原子団を表し、R1は(m+1)価の原子団であって、多価カルボン酸の残基を表す。R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す。なお、R2とR3は互いに結合して環状構造を形成してもよい。また、mは1〜3の整数を表す。
【0037】
原子団Rを構成する原子は、炭素、水素、酸素原子であることが好ましい。Rは、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素原子団であるか、置換基を有してもよい芳香族炭化水素原子団であることが好ましい。中でも、Rは、置換基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素からなる原子団であることが特に好ましい。Rを上記構成とすることにより、潤滑性能に優れた複合ポリエステルアミド組成物を得ることができる。
【0038】
上記の一般式(1)〜(3)において、Rの炭素数は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。また、Rの炭素数は、20以下であり、15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
【0039】
1は、(m+1)価の原子団であって、多価カルボン酸の残基を表す。ここで、多価カルボン酸の残基とは、多価カルボン酸からカルボキシル基を除いた部分を構成する基のことをいう。ここで、mは1〜3である。mは1または2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0040】
1の炭素数は、2〜66であることが好ましい。R1の炭素数は、2以上であればよく、4以上であることが好ましく、8以上であることが好ましく、22以上であることがより好ましく、24以上であることがさらに好ましく、26以上であることがよりさらに好ましい。また、R1の炭素数は、66以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、57以下であることがさらに好ましい。このようにR1の炭素数を上記範囲内とすることにより、複合ポリエステルアミド組成物の潤滑性能をより高めることができる。
【0041】
2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す。なお、R2及びR3が有し得る各基の置換基は特に制限されることはない。中でも、R2及びR3はそれぞれ置換基を有してもよいアルキル基であることが好ましく、置換基を有するアルキル基であることが特に好ましい。
【0042】
2及びR3の炭素数の合計は、6以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましく、8以上であることがさらに好ましい。R2及びR3の炭素数の合計は、6〜30であることが好ましく、7〜24であることがより好ましく、8〜16であることがさらに好ましい。
【0043】
2及びR3で表される置換基を有してもよいアリール基またはヘテロアリール基のアリール基部分の炭素数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがより好ましい。なお、R2及びR3は互いに結合して、アリール基を形成してもよい。R2及びR3が表すアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などを挙げることができ、その中でもフェニル基が特に好ましい。また、R2及びR3が表すヘテロアリール基としては、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、チエニル基、ベンズオキサゾリル基、インドリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、カルバゾリル基、アゼピニル基を例示することができる。ヘテロアリール基に含まれるヘテロ原子は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子であることが好ましく、中でも、酸素原子であることが好ましい。
【0044】
上述した中でも、R2及びR3は、分岐アルキル基、又は鎖中にエーテル結合を含むアルキル基であることが好ましい。R2及びR3をこのような置換基とすることにより、複合ポリエステルアミド組成物の潤滑性能をさらに高めることができる。
【0045】
多価アルコール、多価カルボン酸及びモノアミンの化合物を混合する際には、多価アルコールに対して、多価カルボン酸を混合する当量比が1〜3であり、多価アルコールに対して、モノアミンを混合する当量比が0.5〜3であることが好ましい。すなわち、混合比率は、多価アルコール:多価カルボン酸:モノアミン=1:1〜3:0.5〜3となることが好ましい。これらの混合比率は、1:1.2〜2.8:0.7〜2.8であることがより好ましく、1:1.5〜2.5:1〜2.5であることがより好ましい。特に、ポリエステルアミドの側鎖の末端連結基をカルボニルアミド基とし、エンドキャップすることが好ましいことから、多価カルボン酸の当量より、多価アルコールとモノアミンの合計の当量が、同じか大きいことが好ましい。
【0046】
本発明の複合ポリエステルアミド組成物の40℃における粘度は、50〜1650mPasであることが好ましい。複合ポリエステルアミド組成物の40℃における粘度は、50mPas以上であることが好ましく、70mPas以上であることがより好ましく、100mPas以上であることがさらに好ましい。また、複合ポリエステルアミド組成物の40℃における粘度は、1650mPas以下であることが好ましく、1200mPas以下であることがより好ましく、1000mPas以下であることがさらに好ましい。複合ポリエステルアミド組成物の粘度を上記範囲内とすることにより、複合ポリエステルアミド組成物の摩擦係数を低く抑えることができ、これにより潤滑性能を高めることができる。
【0047】
本発明の潤滑剤は、摩擦係数の上昇が小さいという優れた特徴を有する。このような優れた効果は、本発明で得られるポリエステルアミドが放射状に側鎖を配する立体構造を有することにより得られるものと考えられる。本発明で得られるポリエステルアミドは、放射状に側鎖を配することが可能な多価アルコールと、それに接続し放射状に伸びる多価カルボン酸と、多価カルボン酸の末端連結基となるモノアミンから構成される化合物である。本発明では、多価アルコールを中心原子団とし側鎖を有することで、その立体構造により大きな自由体積を確保することができる。これにより、優れた潤滑性能を発揮することができる。また、高圧力下でも粘度及び摩擦係数の上昇を抑えることができる。
さらに、本発明の潤滑剤は、耐加水分解性に優れているという特徴を有する。このような効果は、末端連結基をカルボニルアミド基とすることにより得られるものと考えられる。このように耐加水分解性に優れた潤滑剤は、金属を腐食することがないため、本発明の複合ポリエステルアミド組成物は、潤滑剤として金属等の様々な材質に適用することができる。
【0048】
本発明では、所定のポリエステルアミドに加えて、軽質分をさらに含んでもよい。ここで、軽質分とは、低分子量の成分をいい、多価カルボン酸の全てのカルボキシル基がモノアミンと反応した酸アミドと、これより分子量が小さいものをいう。軽質分のようにさらに粘性の低い液体を共存させることで複合ポリエステルアミド組成物の粘性をさらに低くすることができる。これにより、より高い潤滑性能を発揮することができる。
【0049】
本発明の複合ポリエステルアミド組成物において、所定のポリエステルアミドと、軽質分との比率については特に制限はない。潤滑剤の用途に利用する態様では、軽質分の含有率は、所定のポリエステルアミドに対して50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。なお、下限値については特に制限はないが、15質量%以上であることが好ましい。
所定のポリエステルアミドと、軽質分との比率は、後述する製法において、3つの原料の仕込み比率でコントロールすることで達成することができる。また軽質分を蒸留等で分離し、残存したポリエステルアミドと任意の比率で混合することで好ましい範囲に調整することもできる。
なお、所定のポリエステルアミドと、多価カルボン酸を含む軽質分との組成比率は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を測定することで算出することができる。軽質分は、GPC分析のピークがシャープに出現し、その強度が大きいことから、判別しやすい。
【0050】
本発明では、複合ポリエステルアミド組成物中に含まれるポリエステルアミドの側鎖には、ダイマージオール中の未反応のOHが残存していてもよく、また、多価カルボン酸中の未反応COOHが存在していてもよいが、OH及びCOOHが残存すると、水酸基価と酸価が上がり、用途によっては(例えば、潤滑剤の用途等)、好ましくない場合もある。このような場合、別途アシル化、及び/又はエステル化処理により、ポリエステルアミド中のOH及びCOOHを消失させ、水酸基価と酸価を低減することもできる。
【0051】
ポリエステルアミド中のOHを消失させるためには、側鎖にOHが残存するポリエステルアミドを一旦得た後、その少なくとも一部をアシル化する処理を行うことができる。アシル化処理は、一塩基酸(R1COOH)又は一塩基酸無水物(R1CO)2O)を、OHが残存するポリエステルアミドに添加し、加熱することで、残存のOHをOCOR1に変換させる処理である。アシル化処理により、水酸基価を低減すると、他の油性媒体と混合する場合、混合しやすくなるなどの点で好ましい。
また、ポリエステルアミド中のCOOHを消失させる処理を行ってもよい。例えば、ジアゾメタンなどで処理してエステル化することができる。
【0052】
ポリエステルアミド中の未反応のOHの割合は、13C−NMRを測定することで判明する。潤滑剤の用途では、ポリエステルアミドのOHの残存率は0〜40%であることが好ましく、0〜35%であることがより好ましく、0〜30%であることがさらに好ましい。また、同用途では、ポリエステルアミドの酸価(サンプル1gを中和するのに要するKOHのmg数)は、0〜50であることが好ましく、0〜40であることがより好ましく、0〜30であることがさらに好ましい。但し、この範囲に制限されるものではない。
【0053】
(2.複合ポリエステルアミド組成物の製造方法)
本発明の複合ポリエステルアミド組成物は、上述した多価アルコール、多価カルボン酸及びモノアミンの少なくとも3つの原料を仕込んで、脱水縮合させることにより得ることができる。すなわち、本発明の複合ポリエステルアミド組成物の製造方法は、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む多価アルコールと、少なくとも2つのカルボキシル基を含む多価カルボン酸と、モノアミンとを混合し混合物を得る工程と、混合物を脱水縮合する工程を含む。なお、製造工程では、2つの原料(例えば、多価アルコールと多価カルボン酸、または多価カルボン酸とモノアミン)を先に反応させた後に、残りの原料を反応させることとしてもよい。
【0054】
多価アルコール、多価カルボン酸及びモノアミンの仕込み比率(混合比率)は、当量で決められる。ここでいう当量とは反応におけるCOOH、OHもしくはNHの化学当量をいう。多価アルコール1分子中のOH数をn、モル数をM1とすると、多価アルコールの当量はn×M1で定義される。同様に、多価カルボン酸分子中のCOOH数をm、モル数をM2とすると、多価カルボン酸の当量はm×M2で定義される。モノアミンは1分子中にNHが1個なので、モル数をM3とすると、M3で定義される。上記の比率は、これらのn×M1、2×M2、M3の比である。
【0055】
本発明では、混合比率は、多価アルコール:多価カルボン酸:モノアミン=1:1〜3:0.5〜3となることが好ましい。これらの混合比率は、1:1.2〜2.8:0.7〜2.8であることがより好ましく、1:1.5〜2.5:1〜2.5であることがより好ましい。特に、ポリエステルアミドの側鎖の末端連結基をカルボニルアミド基とし、エンドキャップすることが好ましいことから、多価カルボン酸の当量より、多価アルコールとモノアミンの合計の当量が、同じか大きいことが好ましい。
【0056】
上記のようにして仕込んだ混合物を、触媒存在下もしくは無触媒で、脱水縮合反応をすることで、本発明の複合ポリエステルアミド組成物が得られる。
【0057】
脱水縮合の際は、加熱するか、水と共沸する溶媒を適量存在させることが望ましい。これにより生成物が着色することなく、脱水もスムーズに進行する。この溶媒は沸点100〜200℃の炭化水素系溶媒が好ましく、100〜170℃の炭化水素系溶媒がさらに好ましく、110〜160℃の炭化水素系溶媒が最も好ましい。これらの溶媒として、例えばトルエン、キシレン、メシチレンなどがあげられる。添加する量は、多すぎると液温がその溶媒付近となり、脱水縮合が進行しにくくなる。一方、少なすぎると、共沸がスムーズに行かない。したがって、添加量は、多価アルコール、多価カルボン酸及びモノアミンの全量に対し、1〜25質量%が好ましく、2〜20質量%がさらに好ましく、3〜15質量%が特に好ましく、5〜12質量%も好ましい。
【0058】
触媒を用いることで、反応が加速されるが、触媒除去の後処理が煩雑であり、生成物の着色の原因となることから、用いないことが望ましい。しかし、用いる場合は、通常の触媒で通常の条件と操作が使用される。これに関しては、特表2001−501989号公報、特表2001−500549号公報、特表2001−507334号公報、及び特表2002−509563号公報中の参考文献を参照することができる。
【0059】
仕込み終了後、液温120〜250℃、好ましくは130〜230℃、さらに好ましくは130〜200℃、特に好ましくは140〜200℃で反応させる。これにより水を含む溶媒が共沸され、ディーンシュタークのごとき冷却部位で冷却され、液体となることで水と溶媒が分離される。この水は除去されればよい。
【0060】
反応時間は、仕込みのモル数より理論発生水量が計算されるので、この水量が得られる時点まで反応を行うことが好ましいが、完全に反応を完結させることは困難である。理論水発生量が60〜90%の時点で反応を終了しても複合ポリエステルアミド組成物の潤滑性は良好である。反応時間は1〜24時間であり、好ましくは3〜18時間、さらに好ましくは5〜18時間、最も好ましくは6〜15時間である。
【0061】
脱水縮合と揮発分除去後、さらに残存するOHに対して、アシル化を行ってもよい。アシル化を行う場合は、一塩基酸(R1COOH)もしくは一塩基酸無水物((R1CO)2O)、好ましくは一塩基酸無水物((R1CO)2O)を適量添加し、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上、特に150℃以上加熱することで、残存のOHの少なくとも一部、好ましくはほぼ全てを、OCOR1に変換することができる。副生する揮発分は、後述の蒸留で除去することが好ましい。なお、R1は、炭素原子数1〜10のアルキル基もしくはアリール基とされ、炭素原子数1〜6のアルキル基もしくはアリール基が好ましく、炭素原子数メチル基、エチル基、ブチル基、フェニル基がさらに好ましく、メチル基もしくはフェニル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0062】
また、脱水縮合と揮発分除去後、残存するCOOHを消失させるために、エステル化処理を行ってもよい。エステル化処理は、例えば、ジアゾメタンを添加して行うことができ、COOHの少なくとも一部、好ましくはほぼ全てを、メチルエステルに変換することができる。
【0063】
この反応により、所定のポリエステルアミドと、上記のように生成されたエステルを少なくとも含む軟質分を含む複合ポリエステルアミド組成物が得られる。脱水縮合反応後、所望によりアシル化処理及び/エステル化処理を行った後、得られた複合ポリエステルアミド組成物を、そのまま種々の用途、例えば潤滑剤として、用いることができる。また、用途に応じて、種々の処理を行ってもよい。
【0064】
反応及び反応後の処理が終了した後、ろ過を行い、ゴミなどを除去することが好ましい。なお、複合ポリエステルアミドが固体となった場合は、溶融してとりだすか、あるいは再沈殿により粉体として取り出すこともできる。
【0065】
(3.組成物)
本発明は、複合ポリエステルアミド組成物を少なくとも含有する組成物に関するものとしてもよい。例えば、組成物には、本発明の複合ポリエステルアミド組成物と各種添加剤及び/または媒体を添加することができる。
添加剤としては、例えば、摩耗防止剤、粘度指数向上剤、酸化防止剤、清浄剤、分散剤,流動、硬化剤、腐食防止剤、シール適合剤、消泡剤、錆防止剤、腐食防止剤、摩擦調整剤、及び増ちょう剤から選択される1種又は2種以上を挙げることができる。
このような添加剤を添加することにより、摩耗抑制等の潤滑剤としての好ましい機能を付与することができる。本発明において用いることができる潤滑剤については、特開2011−89106号公報の段落〔0098〕〜〔0165〕の記載を参照することができる。
【0066】
また、媒体としては、鉱物油、油脂化合物、ポリオレフィン油、シリコーン油、パーフルオロポリエーテル油、芳香族エステル油、及びポリオールエステル潤滑油から選択される1種又は2種以上を挙げることができる。
本発明において、「媒体」とは、一般的に「流動性液体」とよばれる媒体の全てを意味するものである。但し、室温又は使用される温度において、液状であることは必要とせず、液体以外にも固体及びゲル等のいずれの形態の材料も利用することができる。本発明において利用する媒体については特に制限はなく、用途に応じて種々の液体から選択することができる。本発明において用いることができる媒体については、特開2011−89106号公報の段落〔0067〕〜〔0096〕の記載を参照することができる。
【0067】
(3−2.本発明の組成物の性質)
本発明の組成物は、40℃での粘度が1650mPa・s以下であるのが好ましく、1000mPa・s以下であることがより好ましく、500mPa・s以下であることがさらに好ましい。粘性は小さいほど低燃費に寄与し、好ましいが、使用する基油の粘度、本発明の化合物の構造、添加量、共存添加剤により大きく変化し、使用環境により適正な粘性が求められるため、それに合わせることが必要である。しかし、本発明は、現行技術における粘度指数向上剤による高温や極圧条件下での基油の低粘性化の抑制を必要としないため、粘度指数向上剤の添加ゆえの低温での高粘性化は起こらないため、低粘性基油の効果が直接的に燃費に寄与することになることが特徴の一つでもある。
【0068】
本発明の組成物は、構成元素が、炭素、水素、酸素及び窒素だけからなることが好ましく、炭素、水素及び酸素のみからで構成することがさらに好ましい。また、油性媒体として用いる油も、炭素、水素及び酸素のみから構成される材料は種々ある。これらを組み合わせることにより、構成元素が、炭素、水素、酸素及び窒素だけからなる組成物を調製することができる。
なお、現行の潤滑油は、通常、リン、硫黄、重金属を含んでいる。燃料と共に潤滑油も燃焼する2ストロークエンジンに用いられる潤滑油は、環境負荷を配慮して、リンと重金属は含まれないが、硫黄は4ストロークエンジンに用いられる潤滑油の半分量程度含まれている。即ち、現行の潤滑技術では、最低でも硫黄分による境界潤滑膜の形成は必須であると推察されるが、硫黄元素を含んでいることによって、排気ガス浄化のための触媒への負荷は非常に大きい。この排気ガス浄化触媒には、プラチナやニッケルが使用されているが、リンや硫黄の被毒作用は大きな問題になっている。その点からも潤滑油の組成物を構成する元素が、炭素、水素、酸素及び窒素だけからなることのメリットは非常に大きい。さらに炭素、水素、酸素だけからなることはエンジンオイル以外の産業機械、特に食品製造関連機器の潤滑油には最適である。現行技術では、摩擦係数を犠牲にして環境に配慮した元素組成をとっている。これは、冷却のために大量の水を必要とする金属の切削・加工用潤滑油にも非常に好ましい技術である。
【0069】
(4.本発明の組成物の調製方法)
本発明の組成物は、複合ポリエステルアミド組成物を、油性媒体中もしくは水性媒体中に添加し、溶解及び/又は分散させることで調製することができる。溶解及び/又は分散は、加温下で行ってもよい。複合ポリエステルアミド組成物の添加量は、油性媒体の質量に対して、10質量%以上で添加されるのが好ましい。但し、この範囲に限定されるものではなく、上記化合物が、摩擦低減作用を示すのに充分な量であれば、上記範囲外であってもよい。
【0070】
(5.本発明の組成物の用途)
本発明の組成物は、潤滑剤として有用である。すなわち、本発明は、上述した複合ポリエステルアミド組成物又は上述した組成物を含む潤滑剤に関するものでもある。
本発明の潤滑剤は、例えば、2つの摺動面間に供給され、摩擦を低減するために用いることができる。本発明の組成物は、摺動面に皮膜を形成し得る。摺動面の材質としては、鋼鉄では、具体的には、機械構造用炭素鋼、ニッケルクロム鋼材・ニッケルクロムモリブデン鋼材・クロム鋼材・クロムモリブデン鋼材・アルミニウムクロムモリブデン鋼材などの構造機械用合金鋼、ステンレス鋼、マルチエージング鋼などが挙げられる。
【0071】
摺動面の材質としては、鋼鉄以外の各種金属、又は金属以外の無機もしくは有機材料も広く用いられる。金属以外の無機もしくは有機材料としては、各種プラスチック、セラミック、カーボン等、及びその混合体などが挙げられる。より具体的には、鋼鉄以外の金属材料としては、鋳鉄、銅・銅−鉛・アルミニウム合金、その鋳物及びホワイトメタルが挙げられる。
なお、摺動面の材質については、特開2011−89106号公報の段落〔0168〕〜〔0175〕の記載を参照することができる。
【0072】
本発明の潤滑剤は、種々の用途に利用できる。例えば、グリース用潤滑油、離型剤、内燃機関用エンジンオイル、金属加工用(切削用)オイル、軸受け用オイル、燃焼機関用燃料、車両エンジン油、ギヤ油、自動車用作動油、船舶・航空機用潤滑油、マシン油,タービン油、軸受用オイル、油圧作動油、圧縮機・真空ポンプ油、冷凍機油、金属加工用潤滑油剤、磁気記録媒体用潤滑剤、マイクロマシン用潤滑剤、人工骨用潤滑剤、ショックアブソーバ油又は圧延油として用いることができる。さらに、往復動式や回転式の密閉型圧縮機を有するエアコンや冷蔵庫、自動車用エアコンや除湿機、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷却装置などにも用いられる。
【0073】
塩素系化合物を含まない金属加工用潤滑油剤として、例えば鉄鋼材料やAl合金などの金属材料を熱間圧延したり、切削等の加工を行なう際に、またアルミニウムの冷間圧延油、切削油、研削油、引き抜き加工油、プレス加工油等の金属加工油や金属の塑性加工油として、特に高速、高負荷加工時の摩耗、破損、表面あれの抑止剤として、またブローチ加工,ガンドリル加工のような低速・重切削に適用可能な金属加工油組成物としても有用である。特に本発明の潤滑剤は耐加水分解性に優れるため、このような金属加工用潤滑油剤として用いた場合であっても金属を腐食することがないため好ましく用いられる。
また各種グリース用潤滑油、磁気記録媒体用潤滑剤、マイクロマシン用潤滑剤や人工骨用潤滑剤等に利用することができる。また、組成物の元素組成を炭水化物とすることができるため、例えば、乳化、分散化、可溶化剤としてケーキミックス、サラダドレッシング、ショートニングオイル、チョコレート等に広く利用されている、ポリオキシエチレンエーテルを含むソルビタン脂肪酸エステルを食用油を基油とした組成物を潤滑油とすることで、全く人体に無害の高性能潤滑油を食品製造ラインの製造機器や医療機器部材の潤滑に用いることができる。
さらに、本発明の組成物を水系に乳化して分散したり、極性溶媒中や樹脂媒体中に分散することで、切削油や圧延油として用いることができる。
【0074】
また、本発明の組成物は離型剤としても、種々の用途に利用できる。例えば、ポリカーボネート樹脂、難燃性ポリカーボネート樹脂、電子写真装置や静電記録装置などで使用される画像形成用トナーの主成分である結晶性ポリエステル樹脂、各種成形用熱可塑性樹脂組成物及び半導体封し用エポキシ樹脂組成物などの離型剤として用いられる。離型剤の一態様は、ポリカーボネート樹脂等の樹脂100質量部に対して、複合ポリエステルアミド組成物を0.01〜10質量部(好ましくは0.1〜5質量部)含有する態様である。
また、衣料などの繊維製品に予め練り込んだり、塗布することにより、該繊維製品に付着した汚れの離脱を促進して繊維製品の汚れを防止する防汚剤としても用いることができる。
【実施例】
【0075】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、以下において、実施例1、5、6、8、9及び17はそれぞれ、参考例1、5、6、8、9及び17と読み替えるものとする。
【0076】
(実施例1〜21)
<多価アルコール>
本発明の実施例で用いた多価アルコールは下記のものである。
【0077】
【化7】
【0078】
<多価カルボン酸>
本発明の実施例で用いた多価カルボン酸は下記のものである。
【0079】
【化8】
【0080】
<モノアミン>
本発明の実施例で用いたモノアミンは下記のものである。
【0081】
【化9】
【0082】
<ポリエステルアミドの合成>
表1に記載した多価アルコールと、多価カルボン酸、モノアミンを、表1に記載した質量部となるように、ディーンスターク脱水装置がついた反応容器に仕込んだ。その後、液温160〜200℃で12時間攪拌した。攪拌中に水が発生し、17gの水が除去された。室温まで放冷し、黄色透明の液状物としてポリエステルアミド組成物(PEE1〜81)を得た。
【0083】
<複合ポリエステルアミド組成物の調製>
実施例1〜21で得られた各々のポリエステルアミド組成物(PEE1〜87)と鉱油(100ニュートラル油、100℃における粘度4.4mm/s2)とを、質量比率で、25/75で混合し、金属系清浄剤としてカルシウムスルホネート2.0質量%を含有する潤滑剤を調製した。潤滑剤の摩擦係数を下記の方法により測定した。
【0084】
<評価>
摩擦係数は、振動型摩擦摩耗試験機(Optimol Instruments Prueftechnik GmbH社製、商品名:SRV 4)を用いて、振動数100Hz、振幅2.0mm、荷重30N、温度65℃、試験時間30分において測定した。なお、評価結果は下記表1に示す。
Aランク:摩擦係数<0.05
Bランク:0.05≦摩擦係数<0.06
Cランク:0.06≦摩擦係数<0.07
Dランク:摩擦係数≧0.07
【0085】
耐加水分解性、ASTM D2619に従い評価した。試験温度は93℃、試験時間は48ジ時間、触媒には銅を用いた。試験前後の各試料の酸価を測定し、試験前の酸価P(mgKOH/g)と試験後の酸価Q(mgKOH/g)の比率(Q/P)を算出した。なお、評価結果は下記表1に示す。
Aランク: Q/P<=1.2
Bランク: 1.2 < Q/P<=1.5
Cランク: 1.5 < Q/P<=5
Dランク: 5.0 < Q/P
【0086】
(比較例1)
実施例1のポリエステルアミド組成物に代えて、比較例1では特表2011−510046の実施例に記載のエステルジメチルアミド(CC−1)を用いた。特表2011−510046の実施例に記載のエステルジメチルアミドは、特表2011−510046の実施例記載の方法に従いメタノールと無水コハク酸とジメチルアミンから得られた。
上記の化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、複合ポリエステルアミド組成物をそれぞれ調製し、同様に摩擦係数を測定した。結果を表1に示す。
【0087】
【化10】
【0088】
(比較例2)
実施例1のポリエステルアミド組成物に代えて、比較例2では、特開2007−70289の実施例1に記載の化合物(CC−2)を用いた。特開2007−70289の実施例1に記載の化合物は、特開2007−70289実施例1記載の方法に従い、2−(パーフルオロオクチル)エタノールと無水コハク酸、ステアリルアルコールから得られた。
上記の化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、複合ポリエステルアミド組成物をそれぞれ調製し、同様に摩擦係数を測定した。結果を表1に示す。
【0089】
【化11】
【0090】
(比較例3)
実施例1のポリエステルアミド組成物に代えて、比較例3では、特開2007−70289の実施例6に記載の化合物(CC−32)を用いた。特開2007−70289の実施例6に記載の化合物は、特開2007−70289実施例1記載の方法に従い、2−(パーフルオロオクチル)エタノールと無水コハク酸、ステアリルアミンから得られた。
上記の化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、複合ポリエステルアミド組成物をそれぞれ調製し、同様に摩擦係数を測定した。結果を表1に示す。
【0091】
【化12】
【0092】
【表1】
【0093】
表1からわかるように、上記実施例1〜21の試料の摩擦係数は、比較例1〜3の試料よりも低い。特に、実施例2〜4、7、10〜14では、多価アルコールとして、3価以上のアルコールを用いており、かつ、多価カルボン酸として炭素数が24〜68のダイマー酸を用いているため、摩擦係数がより低くなっていることがわかる。
さらに、実施例1〜21では、優れた耐加水分解性を有することがわかる。特に、実施例2〜4、7、10〜14では、摩擦係数が低いことに加え、高い耐加水分解性を有していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、高い潤滑性能を発揮し得る複合ポリエステルアミド組成物を得ることができる。さらに、本発明によれは、優れた耐加水分解性を発揮し得る複合ポリエステルアミド組成物を得ることができる。このため、本発明の複合ポリエステルアミド組成物は、金属加工用潤滑油剤としてとして好適に用いることができ、産業上の利用可能性が高い。