特許第5976278号(P5976278)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5976278タール製造用熱分解装置およびタール製造システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976278
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】タール製造用熱分解装置およびタール製造システム
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/72 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   C10J3/72 F
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-47651(P2011-47651)
(22)【出願日】2011年3月4日
(65)【公開番号】特開2012-184308(P2012-184308A)
(43)【公開日】2012年9月27日
【審査請求日】2013年3月21日
【審判番号】不服2014-18161(P2014-18161/J1)
【審判請求日】2014年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】三井造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】富田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】塚田 俊美
(72)【発明者】
【氏名】石川 厚史
【合議体】
【審判長】 豊永 茂弘
【審判官】 國島 明弘
【審判官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−307793(JP,A)
【文献】 特開2004−27879(JP,A)
【文献】 特開平4−342790(JP,A)
【文献】 特開2010−248061(JP,A)
【文献】 特開2010−77410(JP,A)
【文献】 特開2006−205135(JP,A)
【文献】 特開平10−176818(JP,A)
【文献】 特開平10−19218(JP,A)
【文献】 特開2003−227349(JP,A)
【文献】 特開2001−247873(JP,A)
【文献】 特開平6−33063(JP,A)
【文献】 特開2006−321886(JP,A)
【文献】 特公昭52−10451(JP,B2)
【文献】 特開平9−310073(JP,A)
【文献】 特開2006−213824(JP,A)
【文献】 特開2010−144094(JP,A)
【文献】 特開2007−23084(JP,A)
【文献】 特表平9−501394(JP,A)
【文献】 特開平10−73216(JP,A)
【文献】 特開2001−73216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B47/30,53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口から出口に向かって送られる被処理原料を熱媒体によって熱分解処理する回転式熱分解炉と、
前記回転式熱分解炉に設けられ、前記出口側に熱媒体用の入口が位置し、前記入口側に熱媒体用の出口が位置する前記熱媒体が流れる熱媒体流路と、
前記熱媒体流路に供給する熱媒体の流量および/または熱媒体の温度を調整可能な調整部と、
前記熱媒体の入口および出口にそれぞれ設けられ、該熱媒体の前記熱媒体流路への供給量の制御のための温度情報を検出する温度センサーと、
制御部とを備えたタール製造用熱分解装置であって、
前記回転式熱分解炉は設置勾配角度を有しており、
当該タール製造用熱分解装置の動作を制御する制御部は、
前記回転式熱分解炉の回転速度を0.5〜4rpmの範囲とし、
前記被処理原料の回転式熱分解炉内における熱分解時の滞留時間を2〜6時間の範囲とし、
前記回転式熱分解炉内における前記熱分解処理の温度を200℃〜500℃の範囲とし、且つ該回転式熱分解炉内において前記被処理原料の出口側の処理温度が高温、入口側の処理温度が低温になる温度勾配を当該回転式熱分解炉内に形成し、
更に前記熱分解処理によって生成するガスに含まれる化合物が、水の凝縮温度より高く且つ120℃近傍の温度で冷却した場合に、凝縮しない分子量の化合物にまでは分解されないように、前記回転式熱分解炉の前記設置勾配角度と前記回転式熱分解炉内に入れられた前記被処理原料の種類及び量と前記温度情報に応じて前記滞留時間、前記熱分解処理の温度、前記温度勾配を調節して熱分解処理を行うように構成されていることを特徴とするタール製造用熱分解装置。
【請求項2】
被処理原料を熱媒体によって熱分解処理し、生成ガスを発生させる熱分解装置と、
前記熱分解装置で発生した生成ガスを冷却して液体燃料であるタールを回収するタール回収部と、を有するタール製造システムであって、
前記熱分解装置が請求項1に記載されたタール製造用熱分解装置であることを特徴とするタール製造システム。
【請求項3】
請求項2に記載されたタール製造システムにおいて、
前記タール回収部の上流に、冷却媒体によって前記生成ガスを冷却するための冷却装置を備えることを特徴とするタール製造システム。
【請求項4】
請求項3に記載されたタール製造システムにおいて、
前記冷却装置では、前記タール回収部で前記生成ガスを冷却して得られたタール以外の液体成分を冷却媒体として、前記生成ガスと気液接触させるように構成されていることを特徴とするタール製造システム。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載されたタール製造システムにおいて、
前記熱分解装置下流に該熱分解装置で発生した生成ガス中の固形物を除去するための固形物除去装置を備えることを特徴とするタール製造システム。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1項に記載されたタール製造システムにおいて、
前記被処理原料を前記熱分解装置において熱分解処理した際の残渣と前記タール回収部で生成ガスを冷却して得られたタール以外の液体成分とを混合しスラリー燃料を製造できるように構成されていることを特徴とするタール製造システム。
【請求項7】
請求項5に記載されたタール製造システムにおいて、
前記固形物除去装置によって除去された固形物または前記被処理原料を前記熱分解装置において熱分解処理した際の残渣の少なくとも一以上と前記タール回収部で生成ガスを冷却して得られたタール以外の液体成分とを混合しスラリー燃料を製造できるように構成されていることを特徴とするタール製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理原料を熱分解することによって生成される生成ガスから、タールを製造するためのタール製造用熱分解装置およびタール製造システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、木質、汚泥、家庭ごみ、産業廃棄物等の被処理原料をガス化炉を有するガス化装置で熱分解・ガス化処理し、生成するガスを燃料として発電等を行うシステムが知られている。
このようなシステムでは、ガス化炉において被処理原料を高温(600℃以上)に加熱し、熱分解・ガス化処理して生成したガスを、発電設備のボイラー等に、又は改質してガスエンジン、ガスタービンに燃料として供給している。
【0003】
ここで、被処理原料が熱分解・ガス化処理されて生成した生成ガスの成分は、被処理原料の種類、被処理原料を処理する際のガス化炉内の温度・滞留時間等の処理方法により異なるが、主に低級炭化水素(メタン、エタン、ブタン等)、水素、一酸化炭素である。しかし、このような物質だけでなく、分子量の大きい高級炭化水素や他の有機化合物も含まれており、これらは低温になると、タールと呼ばれる液状物質として析出する。
【0004】
前述した発電等の設備は、前記生成ガスを燃料として使用する際に常温で使用する場合がある。この際、ガス中に含まれるタールが析出し、各設備の配管や機器の内部に付着して、配管等が閉塞状態になるという欠点があった。
【0005】
そこで、被処理原料が熱分解・ガス化処理されて生成した生成ガス中に含まれているタールを除去する必要があり、タールの除去方法としては、生成ガスを、湿式スクラバーにおいて大量の洗浄液と接触させて冷却し、生成ガス中のタールを除去する方法が知られている。
【0006】
また、特許文献1では、生成ガス(可燃性ガス)を廃熱ボイラに導いた後、廃熱ボイラにおいて顕熱回収し、熱回収された可燃性ガスを湿式スクラバーに導いて、可燃性ガスを冷却し60℃以下の温度にすると共に、ガス中に含有されているタールを除去し、次いで60℃以下に冷却された可燃性ガスを電気集塵機に導き、電気集塵機においてガス中に含有されているタールを完全に除去する技術が開示されている。
【0007】
また、一方で、タールは高級炭化水素等の高分子化合物であり、タールを含有する生成ガスを冷却し、タールを凝縮させて液状物質とすれば、液体燃料として利用できる。このような観点から、特許文献2においては、熱分解炉で発生した熱分解ガスを冷却器で冷却する際に、冷却温度を酢酸の沸点より高い温度に設定して液体燃料成分(タール)を選択的に凝縮させ、液体燃料として回収後、水を添加して所定の発熱量と流動性を有する液体燃料に転換する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−21565号公報
【特許文献2】特開2001−247873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、被処理原料が熱分解・ガス化処理されて生成した生成ガス中に含まれるタールは、特許文献1にも記載されているように、完全に除去することが望まれている。すなわち、一般的に、前記生成ガス中に含まれるタールはいわば好ましくない物質とされ、除去されるのが通常である。また、除去したタールを廃棄するためには、該タールを処理するための処理設備も必要となり、設備コストもかかることになる。
【0010】
また、特許文献2においては、熱分解炉で原料を300〜800℃で熱分解した際に発生する熱分解ガスを冷却し凝縮させて、液体燃料(タール)を製造する技術が開示されているが、液体燃料であるタールを熱分解ガスに多く含ませるために(タールの収率を上げるために)どのような熱分解炉を使用するかは記載されていない。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、被処理原料をじっくりと熱分解処理できるように条件を設定可能にして、急激に温度を上昇させて熱分解を行う場合に比べ、分子構造が細かく切れた分子量の小さい物質の発生を抑制し、ある程度分子が繋がった構造をした分子量の大きな物質を生成ガス中に多く含ませることができ、結果、燃料用タールの収率を上げることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明に係る第1の態様であるタール製造用熱分解装置は、入口から出口に向かって送られる被処理原料を熱媒体によって熱分解処理する回転式熱分解炉と、前記回転式熱分解炉に設けられ、前記出口側に熱媒体用の入口が位置し、前記入口側に熱媒体用の出口が位置する前記熱媒体が流れる熱媒体流路と、前記熱媒体流路に供給する熱媒体の流量および/または温度を調整可能な調整部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る第2の態様であるタール製造用熱分解装置は、第1の態様において、前記被処理原料の炉内の滞留時間を調整可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
熱分解ガスを冷却し凝縮させて液体燃料(タール)を製造する場合、分子量が大きい成分ほど回収しやすい。しかし、被処理原料を熱分解処理する際に、高温で行ったり(約600℃以上)、急激に温度を上昇させて行ったり、さらにガス化を行ったりすると、分子構造が細かく切れて分子量が小さい物質が多くなり、それらは熱分解ガスを冷却した際にガス側に揮散してしまい、結局、冷却して凝縮した液体燃料としてのタールの量が少なくなり、収率が悪くなる。
【0015】
第1、第2の態様によれば、例えば、回転式熱分解炉の入口側の温度を検知し、その温度に基づいて熱媒体の供給量を調整部で調整して、該熱分解炉の出口側から入口側に向かって熱媒体を熱媒体流路に供給することにより、炉内に温度勾配を形成することが可能となる。
【0016】
そのため、被ガス化原料をじっくりと熱分解処理できるように条件を設定できるので、急激に温度を上昇させて熱分解を行う場合やさらにガス化を行う場合に比べ、分子構造が細かく切れた分子量の小さい物質の発生を抑制し、比較的分子が繋がった構造をした分子量の大きな物質を生成ガス中に多く含ませることができ、結果、燃料用タールの収率を上げることができる。
さらに、回転式であるため回転数によって被ガス化原料の炉内での滞留時間も制御できるので、より一層、被ガス化原料をじっくりと熱分解処理することが可能となる。
【0017】
本発明に係る第3の態様であるタール製造用システムは、被処理原料を熱媒体によって熱分解処理し、生成ガスを発生させる熱分解装置と、前記熱分解装置で発生した生成ガスを冷却して液体燃料であるタールを回収するタール回収部と、を有するタール製造システムであって、前記熱分解装置が第1または第2の態様のタール製造用熱分解装置であることを特徴とするものである。
【0018】
本態様によれば、第1または第2の態様のタール製造用熱分解装置を用いて熱分解された生成ガス中には液体燃料として価値のあるタールを多く含ませることができるので、前記生成ガスをタール回収部で冷却して凝縮させることにより、液体燃料用のタールを多く製造することができる。
【0019】
本発明に係る第4の態様であるタール製造用システムは、第3の態様において、前記タール回収部は、前記生成ガスを冷却する際に、冷却温度を水の凝縮温度以下または水の凝縮温度より高くすることにより、回収されるタールに含まれる水分量を調整可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
本態様によれば、タール回収部において、生成ガスの冷却温度を水の凝縮温度以下に設定することにより、凝縮液中の水分を多くすることができ、低濃度のタールを得ることが出来るため、結果として発熱量の低い液体燃料が得られる。
一方、タール回収部において、生成ガスの冷却温度を水の凝縮温度より高く設定することにより、凝縮液中の水分を少なくすることができ、高濃度のタールを得ることができるため、結果として発熱量の高い液体燃料が得られる。
【0021】
このように、本態様では、タール回収部において生成ガスの冷却温度を水の凝縮温度以下または水の凝縮温度より高くすることで、凝縮液中の水分量を調整することにより、液体燃料用のタールとして発熱量の高い液体燃料と低い液体燃料を目的に合わせて製造することが出来る。
【0022】
本発明に係る第5の態様であるタール製造用システムは、第3または第4の態様において、前記タール回収部の上流に、冷却媒体によって前記生成ガスを冷却するための冷却装置を備えることを特徴とするものである。
【0023】
本態様によれば、タール回収部の上流に冷却装置を備えることにより、冷却装置で生成ガスの温度をいったん下げてから、タール回収部に供給するため、タール回収部の装置の大型化を防止することができる。
また、生成ガスを冷却装置で冷却するときは、冷却する際の生成ガスの温度が、タール回収部で冷却する際の生成ガスの温度よりも高いため、タール回収部で回収される液体燃料用タールより、凝縮温度が高く、また性状の異なる凝縮物を回収することができる。さらにこの凝縮物も燃料として使用することができる
【0024】
本発明に係る第6の態様であるタール製造用システムは、第5の態様において、前記冷却装置では、前記タール回収部で前記生成ガスを冷却して得られたタール以外の液体成分を冷却媒体として、前記生成ガスと気液接触させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0025】
冷却装置における冷却媒体として、例えば水を使用する場合、水はシステムの外部から供給されているのが現状である。
本態様によれば、タール以外の液体成分を生成ガスを冷却するための冷却媒体として使用することで、冷却装置で用いる冷却媒体(例えば水)の量を減らすこともでき、システム全体のコストダウンを図ることができる。
【0026】
本発明に係る第7の態様であるタール製造用システムは、第3から第6のいずれか1つの態様において、前記熱分解装置下流に該熱分解装置で発生した生成ガス中の固形物を除去するための固形物除去装置を備えることを特徴とするものである。
【0027】
熱分解装置で被処理原料を熱分解させて発生する生成ガス中には、固形物である炭素化合物(チャー等)が含まれている。本態様によれば、熱分解装置の下流に前記固形物を除去する固形物除去装置を備えることにより、固形物の混入が少ない液体燃料であるタールを製造することができる。
【0028】
本発明に係る第8の態様であるタール製造用システムは、第3から第7のいずれか1つの態様において、前記被処理原料を前記熱分解装置において熱分解処理した際の残渣と前記タール回収部で生成ガスを冷却して得られたタール以外の液体成分とを混合しスラリー燃料を製造できるように構成されていることを特徴とするものである。
【0029】
本発明に係る第9の態様であるタール製造用システムは、第7の態様において、前記固形物除去装置によって除去された固形物または前記被処理原料を前記熱分解装置において熱分解処理した際の残渣の少なくとも一以上と前記タール回収部で生成ガスを冷却して得られたタール以外の液体成分とを混合しスラリー燃料を製造できるように構成されていることを特徴とするものである。
【0030】
固形物除去装置によって除去された固形物および被処理原料を前記熱分解装置において熱分解処理した際の残渣は、燃料として使用することが可能である。
【0031】
第8及び第9の態様によれば、性状が液体である前記タール回収部で生成ガスを冷却して得られた凝縮液中のタール以外の液体成分を、固形物除去装置によって除去された固形物、被処理原料を前記熱分解装置において熱分解した際の残渣のうち少なくとも一以上のものと混合することにより、スラリー状としたスラリー燃料を製造することができる。
また、スラリー状とすることで、固形燃料に比べハンドリング性が向上し燃料としての輸送効率も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明に係るタール製造用装置の概略の縦断面図。
図2】本発明に係るタール製造システムの第1の実施形態の概略構成図。
図3】本発明に係るタール製造システムの第2の実施形態の概略構成図。
図4】本発明に係るタール製造システムの第3の実施形態の概略構成図。
図5】本発明に係るタール製造システムの第4の実施形態の概略構成図。
図6】タール凝縮装置の一態様である熱交換器の概略図。
図7】実験に使用した電気炉の概要図。
図8】実験に使用した実験装置の概略フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るタール製造用熱分解装置およびタール製造システムの実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
また、本発明に係るタール製造システムによって製造されるタールは、被処理原料を熱分解して生成した生成ガス中に含まれるタール成分を液体燃料として回収することから、熱分解燃料油と称することがある。
【0034】
[タール製造用熱分解装置の実施態様]
図1に、タール製造用熱分解装置の一例として、ロータリーキルンで構成されたタール製造用熱分解装置の概略の縦断面図を示す。
【0035】
タール製造用熱分解装置2は、被処理原料供給装置F、被処理原料Mに対して熱分解処理を行うロータリーキルン式熱分解炉(回転式熱分解炉)である熱分解ドラム23、加熱処理によって生じた熱分解ガス及び熱分解残渣を排出する排出装置21および後述する調整部20等から構成されている。
熱分解ドラム23の入口26側から被処理原料供給装置Fによって投入された被処理原料Mは、該熱分解ドラム23の回転に伴ってゆっくりと出口27側に移動しながら加熱されることにより乾燥・熱分解される。なお、回転数を変えることにより、被処理原料Mの移動速度を変えることができ、処理温度を考慮しながら、被処理原料Mの炉内の滞留時間を調節することが出来るようになっている。
【0036】
熱分解ドラム23は、その内壁面24に沿って多数の熱媒体流路である伝熱管25を有している。この伝熱管25には、高温の熱媒体(本態様では、燃焼ガス)Aが被処理原料Mの移動方向に対して対向流で流れるように構成されている。すなわち、熱媒体Aは、熱分解ドラム23の出口27側が熱媒体Aの入口28となり、該熱分解ドラム23の入口26側が熱媒体Aの出口29となっている。この対向流で高温の熱媒体Aが伝熱管25内を通ることにより、内部の被処理原料Mは間接的に加熱され、乾燥・熱分解されるようになっている。なお、熱分解ドラム23の両側には、伝熱管25に通ずる高温の熱媒体Aが通過するための空気室22、22’が設けられている。
【0037】
調整部20は、熱媒体Aの入口28のガス温度と熱媒体Aの出口29のガス温度を、熱媒体Aの入口28および熱媒体Aの出口29にそれぞれ設けられた温度センサーSで検出し、検出された温度に基づいて、熱媒体供給装置10から熱分解ドラム23への熱媒体Aの供給量を制御する装置である。
【0038】
本発明のタール製造用熱分解装置2の特徴は、熱分解ドラム23の入口26側および出口27側の熱媒体温度を検知することにより、その温度に基づいて熱媒体の供給量を調整して、熱分解ドラム23の出口側から入口側に向かって熱媒体を熱媒体流路体である伝熱管25に供給することにより、被処理原料の種類に応じ、液体燃料となるタールが生成ガス中に多く含まれるように熱分解ドラム23内の温度勾配を形成することが可能な点にある。
【0039】
熱分解ガスを冷却し凝縮させて液体燃料(タール)を製造する場合、分子量が大きい成分ほど回収しやすい。しかし、熱分解処理において急激に温度を上昇させて熱分解を行ったり、さらにガス化を行うと、分子構造が細かく切れて分子量が小さい物質が多くなりそれらは生成ガスを冷却した際凝縮せず(凝縮温度が低いため)、ガス側に揮散してしまい、結局、液体燃料であるタールの収率が悪くなる。
【0040】
そこで、上述したタール製造用熱分解装置2は、熱分解ドラム23の入口26側および出口27側の熱媒体温度を検知し、その温度に基づいて熱媒体を供給し、熱分解ドラム23内に温度勾配を形成することができるように構成することで、例えば、被処理原料Mをじっくりと熱分解するように温度勾配を設定し、分子構造が細かく切れず、ある程度の大きさを持った物質、すなわち、分子量の大きい物質をガス中に多く含ませるようにして、液体燃料であるタールの収率を上げることができる。
【0041】
[タール製造システムの第1の実施形態]
図2には、本発明に係るタール製造システムの第1の実施形態の概略構成図が記載されている。
本態様のタール製造システムは、被処理原料Mを所定の大きさに破砕する破砕機1、破砕された被処理原料Mを熱分解するための熱分解装置2、熱分解装置2で熱分解によって生成された生成ガスG1中の固形物を除去するための固形物除去装置3、固形物除去装置3によって生成ガスG1中の固形物が除去された生成ガスG2を冷却するとともに、生成ガスG2中に含まれる有機化合物を凝縮させて(以下、凝縮したものを「凝縮物」という)除去するための冷却装置4、冷却装置4によって生成ガスG2中から凝縮物が除去された生成ガスG3を冷却して、生成ガスG3中から熱分解燃料油である液体燃料用のタール(以下「タール」という)を含む凝縮液を製造するためのタール凝縮装置5、タール凝縮装置5によって製造された凝縮液中から、分子量の大きなタール(重質タール)と他の物質(他の液体成分)とを分離するための分離槽6、および分離槽6によって分離されたタール(重質タール)を取り出して貯留しておくタール貯留タンク7で構成されている。なお、タール凝縮装置5、分離槽6およびタール貯留タンク7はタール回収部Xを構成している。
【0042】
また、熱分解装置2に熱媒体を供給するための熱媒体供給装置10、熱分解装置2で被処理原料Mを熱分解した際に生じた熱分解カーボンや不燃物(以下「熱分解カーボン等」という)を冷却するための固形物冷却装置8、固形物冷却装置8で冷却された熱分解カーボン等や固形物除去装置3で生成ガスG1中から除去された固形物を燃料として貯めておくためのカーボンバンカ9、冷却装置4で生成ガスG2中から有機化合物を凝縮させた凝縮物を燃料として貯めておくための凝縮物貯留タンク4’が設けられている。
【0043】
さらに、本態様では、生成ガスG3中からタールが製造(回収)された生成ガスG4を、熱媒体供給装置10における熱媒体を作るための燃料として、あるいは発電設備のボイラータービンジェネレイター(以下「BTG」という)11のガス燃料として使用できる態様となっている。なお、BTG11の燃料や熱源として、前述したカーボンバンカ9に貯めておいた物質または被処理原料Mを熱分解装置2で熱分解した際に熱媒体として使用した燃焼排ガスも使用できる態様となっている。なお、凝縮物貯留タンク4’に貯めておいた凝縮物も燃料として使用しても良い。
【0044】
本発明で使用される被処理原料Mは、木質系のバイオマス、例えば、製材所の残材、間伐材(杉、松、檜、ラワン、ブナ、ゴム、イチジク等)、街路樹剪定材、建築廃材、廃電柱、バーク、ダム流木等が挙げられる。また、有機性バイオマス、例えば、稲わら、麦わら、籾殻、竹、笹、パーム椰子空果房、パーム椰子の幹、バガス等サトウキビ由来の廃材等の草本系バイオマス、畜産系残渣の一例である鶏糞や牛・豚等の糞尿の畜産由来のバイオマスや発酵残渣、生ごみ、食品残渣、黒液、海藻等が挙げられる。さらに、プラスチック等の廃棄物も挙げられる。
【0045】
例えば、木質系バイオマスを被ガス化原料として使用した場合は、後述するタール回収部Xの分離槽6で、消臭・殺菌効果があると言われ、また農薬的な使用が可能である木酢液を得ることが出来る。
【0046】
破砕機1は、被処理原料Mを熱分解装置2で処理しやすい大きさに破砕するものであり、公知のものが使用できる。例えば、剪断式破砕機、回転式破砕機等が使用できる。
【0047】
熱分解装置2は、被処理原料Mを熱分解するための熱分解炉を備えたものが使用できるが、特に、熱分解炉としてロータリーキルン式熱分解炉(回転式熱分解炉)を備えたものが好ましい。
そこで、本態様は熱分解装置2として、前述したロータリーキルン式熱分解炉である熱分解ドラム23を備えた、タール製造用熱分解装置を使用している。なお、ロータリーキルン式熱分解炉は前述した多種多様な被処理原料を処理することが可能である。
【0048】
ロータリーキルン式熱分解炉である熱分解ドラム23での熱分解処理の条件は、熱分解ドラム23の設置勾配角度、被処理原料Mの種類や状態にもよるが、例えば、熱分解ドラム23の設置勾配角度を0.5°とした場合、目的の液体燃料用のタールを熱分解ガスに多く含ませるには、処理温度は約200〜500℃が好ましい。また、回転速度は0.5〜4rpmが好ましく、特に0.5〜2rpmが好ましい。滞留時間は回転速度により調整できるが2〜6時間が好ましく、2〜4時間が特に好ましい。
なお、上述した数値範囲は熱分解ドラム23の設置勾配角度を0.5°とした場合であるが、熱分解ドラム23の設置勾配角度、被処理原料Mの種類や状態により適宜変更は可能であり、これら数値の範囲に限られるものではない。
【0049】
本態様の熱分解ドラム23では、炉内で被処理原料Mを熱分解処理する際の温度条件をタールがなるべく多く製造できるように、制御することが可能である。
すなわち、熱分解ドラム23の加熱媒体の入口温度と出口温度は被処理原料Mの種類や状態に応じて適宜設定可能であり、例えば、熱分解ドラム23の加熱媒体の入口温度を約500℃、出口温度を約300℃と設定することにより、炉内に温度勾配を形成させ、更に、回転速度を調整して被処理原料Mの炉内での滞留時間を変化させることで、液体燃料用タールの製造を制御できるようになっている。
【0050】
詳述すると、調整部20(図1)によって、熱分解ドラム23内の温度勾配が適切になるように、熱媒体供給装置10より炉内の熱媒体流路(伝熱管25)に適切な温度の熱媒体(燃焼ガス)を供給するように構成されている。
また、熱分解ドラム23の回転数を調整して被処理原料Mの炉内での滞留時間を、約2〜6時間の間に設定すれば、炉内の温度を急激に昇温させて処理するよりも、温度上昇が緩やかでかつ滞留時間を長くする処理を行うことができる。そのため、被処理原料Mがじっくりと熱分解され、分子間同士の結合が細かく切断されにくく、分子量の大きな物質が生成し易くなる。すなわち、タールとして適切な比較的分子量の大きな物質の状態で結合が切断される。
【0051】
以上のように、本発明では、熱分解温度、滞留時間および熱媒体の供給量等との関係を組み合わせることで、液体燃料として分子量の大きな物質を熱分解ガス中に多く生成させることができる。
【0052】
従来は、高温(例えば約600〜1000℃)で熱分解・ガス化されていたため、タールは分子構造が細かく切断され分子量の小さい物質になってしまい、液体燃料として利用できる適当な分子量を有する物質(タール)を得ることができにくいという欠点があった。しかし、上述したように本発明のタール製造用熱分解装置を用いれば、低温(約400〜500℃)で行う熱分解であっても、比較的分子量の大きな物質(タール)を得ることができ、従来の欠点を解決している。
【0053】
調整部20と連動する熱媒体供給装置10は、高温の熱媒体(例えば燃焼ガス)を製造できるものであれば特に限定はされないが、本態様では、タール回収部Xで生成ガスG3からタールが回収された生成ガスG4の一部を、熱媒体供給装置10の一態様である燃焼炉で燃焼させて、高温の熱媒体である燃焼ガスを製造している。
また、例えば焼却炉も被焼却物を焼却する際、高温加熱空気を発生させている。該高温加熱空気も熱媒体として利用できるので、焼却炉も熱媒体供給装置10として使用できる。
【0054】
なお、熱分解ドラム23で熱分解された被処理原料Mの残渣である熱分解カーボン等は、固形物冷却装置8で冷却された後、カーボンバンカ9に貯えられ、必要に応じてBTG11の燃料として使用可能である。
【0055】
固形物除去装置3は、生成ガスG1からチャー(炭化物)等の固形物を除去する装置である。固形物除去装置3としては、高温フィルター(セラミックフィルター、金属フィルター等)、サイクロン、マルチサイクロン等が使用できる。当該装置で除去されたチャー(炭化物)は、カーボンバンカ9に貯めておき、BTG11の燃料として使用可能である。
【0056】
固形物除去装置3によって生成ガスG1中から固形分が除去されたガスG2は冷却装置4に送られ、約150〜200℃に冷却され洗浄される。
冷却装置4としては、スクラバーやクエンチャーを用いることができる。両者とも外部ラインから供給される冷却媒体である洗浄液(水等)によって、生成ガスG2を冷却洗浄するとともに生成ガスG2中に含まれる有機化合物を凝縮させる装置であり、凝縮した有機化合物の凝縮物は凝縮物貯留タンク4’に貯えておき、BTG11の燃料として使用することもできる。冷却装置4での冷却温度は、後述するタール回収部Xにおけるタール凝縮装置5によって生成ガスG3が冷却される温度よりも高い温度である。
生成ガスG2を、上述した温度で冷却するように設定することで、生成ガスG2中に含まれる液体燃料用のタールよりも凝縮温度の高い有機化合物を凝縮物として除去し回収することができる。
【0057】
冷却装置4によって凝縮する凝縮物は、タール凝縮装置5によって凝縮するタールよりも凝縮温度が高く、性状も異なる物質である。前述したように凝縮物は、熱分解カーボンまたは固形物と同様、BTG11の燃料としても使用できる。
つまり、後段で回収する液体燃料用のタールとは、凝縮温度も性状も異なる凝縮物を燃料として使用することが可能となる。
【0058】
冷却装置4によって生成ガスG2中に含まれる前述の有機化合物が凝縮物として除去された生成ガスG3は、タールを製造(回収)するため、タール凝縮装置5に送られる。
図6には、タール凝縮装置5として本態様で使用する熱交換器50の概略図が記載されている。
【0059】
熱交換器50は、冷却用の熱媒体51(本態様では水を使用)を冷却管52に供給し、熱交換により生成ガスG2から前述の有機化合物が凝縮物として除去された生成ガスG3を冷却し、タールを含む凝縮液53を得る。
【0060】
ここで、熱交換器50において、冷却温度を水の凝縮温度より高く設定し(例えば120℃)、生成ガスG3を約200℃で熱交換器50に供給した場合は、凝縮液53中の水分は少なくなり(水の凝縮が少ない)、結果として発熱量の高い液体燃料が得られる。
一方、熱交換器50において、冷却温度を水の凝縮温度以下に設定し(例えば80℃)、ガスG3を約200℃で熱交換器50に供給した場合は、凝縮液53中の水分は多くなり(水の凝縮が多い)、結果として発熱量の低い液体燃料が得られる。
【0061】
このように、本発明では、タール凝縮装置5において生成ガスG3の冷却温度を水の凝縮温度以下または水の凝縮温度より高くすることで、凝縮液53中の水分量を調整することにより、液体燃料用のタールとして、発熱量の高い液体燃料と低い液体燃料を目的に合わせて製造することが出来る。
【0062】
凝縮液53は分離槽6において分離される。分離6槽では、下層に分子量の大きい液体燃料用のタールである重質タール、上層に凝縮水がそれぞれ分離する。但し、すべてが完全に分離しているわけではない。
【0063】
分離槽6としては、公知の装置が使用でき、例えば比重差分離槽が使用できる。
ここで、例えば木質系バイオマスを原料とすると、上層の凝縮液中には木酢液が含まれる。木酢液には、消臭・殺菌効果等があると言われ、また農薬的な使用が可能であるため、これら分野に利用できる。本発明では液体燃料用のタール(重質タール)だけでなく、使用する原料を選択することにより、多様な分野に利用可能な物質を生成することができる。
【0064】
分離槽6の下層に凝縮したタール(重質タール)は、分離槽6より取り出されてタール貯留タンク7に貯えられ、必要に応じて液体燃料として使用される。
【0065】
[タール製造システムの第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その説明は省略することとする。
図3には、本発明に係るタール製造システムの第2の実施形態の概略構成図が記載されている。
【0066】
本態様は、第1の態様において分離槽6で分離されたタール以外の液体成分を、第1の態様の冷却用の熱媒体(水を使用)に代えて、冷却装置4に供給して生成ガスG2と気液接触させる態様である。
分離槽6では、タールである重質タール(下層)、凝縮水(上層)に分離されるが、完全に分離されるわけではなく、下層以外にもまだ燃料として使用できる物質が含まれている。
【0067】
なお、第1の態様で説明したように、木質系バイオマスを原料として熱分解を行った際には、分離槽6で上層には木酢液が分離してくる。この場合、本態様では木酢液と生成ガスG2を気液接触させることになる。
【0068】
本態様では、前記タール以外の液体成分(例えば、木酢液)を生成ガスG2の冷却媒体として使用することで、冷却装置4で用いる外部ラインから供給する冷却媒体の量を減らすこともでき、システム全体のコストダウンを図ることができる。
【0069】
[タール製造システムの第3の実施形態]
次に、第3の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その説明は省略することとする。
図4には、本発明に係るタール製造システムの第3の実施形態の概略構成図が記載されている。
【0070】
本態様は、第1の態様において分離槽6で上層に分離されたタール以外の液体成分または下層に分離されたタール(重質タール)の一部を、カーボンバンカ9に貯えられた熱分解された被処理原料Mの残渣である熱分解カーボンや固形物除去装置3で除去された固形物と混合装置12で混合し、スラリー燃料を製造する態様である。
【0071】
例えば、上述した熱分解カーボン等や固形物の性状は固体である。そこで、性状が液体である分離槽6で分離されたタール以外の液体成分と混合しスラリー状としスラリー燃料を製造することができる。
そして、スラリー状とすることで、固形燃料に比べハンドリング性が向上し燃料としての輸送効率も向上する。
【0072】
なお、前記タール以外の液体成分または前記重質タールの一部と混合する場合は、前記熱分解カーボン等、前記固形物の中からそれぞれ少なくとも1以上の物質と混合すればスラリー燃料を製造できる。
混合装置12としては公知の装置、例えばミキサー等を使用することができる。
【0073】
また、第1の態様で説明したように、木質系バイオマスを原料として熱分解を行った際には、分離槽6で上層には木酢液が分離してくる。この場合、本態様では木酢液を前記熱分解カーボンまたは前記固形物の少なくとも一以上と混合することによりスラリー燃料を製造することができる。
【0074】
なお、本態様では、冷却装置4において外部のラインより冷却媒体(水等)を供給する態様となっているが、第2の態様のように、分離槽6で分離されたタール以外の液体成分を冷却媒体として使用する態様としても良い。また、第3の実施形態は第2の実施形態にも適用可能である。
【0075】
[タール製造システムの第4の実施形態]
次に、第4の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その説明は省略することとする。
図5には、本発明に係るタール製造システムの第4の実施形態の概略構成図が記載されている。
【0076】
本態様は、第1の態様において生成ガスG2を冷却装置4で冷却した際に凝縮した凝縮物を、タール凝縮装置5で凝縮させた凝縮液53と一緒に分離槽6へ供給する態様である。
【0077】
このような構成とすることにより、前記凝縮物を無駄にすることなく、液体燃料用タールとともに燃料として利用することが可能となる。
なお、第4の実施形態は第2、第3の実施形態等にも適用可能である。
【0078】
次に、本発明の効果を確認する実験を行ったので、その結果を以下に示す。
[実験例1]
熱分解による生成物の物質収支を把握するため、要素実験を行った。
図7は、本実験に使用した電気炉の概略図である。
反応管の内部には試料が円筒ろ紙内に置かれ(吊り下げ固定)、電気炉で反応管を加熱することで、試料が熱分解されるようになっている。また、キャリアガスとして窒素を使用した。
なお、試料として粒径が500μ以下の木質原料(木材チップ)をほぼ絶乾状態(約2g)にしたものを用いた。
【0079】
昇温速度を約0.06℃/秒として電気炉内の温度を約450℃まで上げて、試料の熱分解実験を行った。
なお、タールの回収方法は、図8に示したように、氷冷トラップ2段方式によってタール(水分を含む)を凝縮させた。
氷冷トラップ2段方式は、電気炉内で生成した揮発成分を密閉容器内に送り込み、該密閉容器を−5℃で塩水氷冷して容器内の前記揮発成分を冷却しタールを凝縮させ、最初の密閉容器内を通過したガスを次の密閉容器内で、最初の密閉容器の場合と同様に冷却してタールを凝縮させる方法である。凝縮しないガス成分は、ガス捕集装置で捕集される。
【0080】
実験結果は、ガス(主に水素、一酸化炭素、低級炭化水素)が26.9%、水が19.4%、チャーが26.4%、タールが27.4%であった。
タールが27.4%と多いのは、昇温速度が約0.06℃/秒とゆっくりで急激な温度変化がなく、約200〜500℃と低温でじっくりと熱分解されたため、タールの分子構造が細かく切断されずに、タールとして適切な分子量の大きな物質が熱分解ガス中に存在していたためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、被ガス化原料をロータリーキルン等で構成された熱分解装置で約400〜500℃において熱分解し、タール成分を揮発成分に含ませて、その後冷却することにより液体燃料に適したタールを製造することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 破砕機 2 タール製造用熱分解装置 3 固形物除去装置 4 冷却装置4’ 凝縮物貯留タンク 5 タール凝縮装置 6 分離槽 7 タール貯留タンク 8 固形物冷却装置 9 カーボンバンカ 10 熱媒体供給装置
11 ボイラータービンジェネレイター(BTG)
12 混合装置 20 調整部 X タール回収部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8