(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記目標稼働時間補正部は、前記1つのサイクルが終了したときにおける積算稼働時間が最も長いヒータ要素の次のサイクルにおける目標稼働時間を補正せずにそのまま維持し、前記積算稼働時間が最も長いヒータ要素よりも積算稼働時間が短いヒータ要素の次のサイクルにおける目標稼働時間を、前記積算稼働時間が最も長いヒータ要素に対する積算稼働時間の差分に応じて延長する、請求項2記載の流体加熱装置。
前記目標稼働時間補正部は、前記1つのサイクルが終了したときにおける積算稼働時間が最も短いヒータ要素の次のサイクルにおける目標稼働時間を補正せずにそのまま維持し、前記積算稼働時間が最も短いヒータ要素よりも積算稼働時間が長いヒータ要素の次のサイクルにおける目標稼働時間を、前記積算稼働時間が最も短いヒータ要素に対する積算稼働時間の差分に応じて短縮する、請求項2記載の流体加熱装置。
流体が流れる内部空間を持つ容器と、前記容器に設けられ、前記容器の内部区間を流れる前記流体を加熱する複数のヒータ要素と、を備えた流体加熱装置の運転制御方法において、
複数のフェーズにより構成されたサイクルを繰り返すように前記複数のヒータ要素を稼働させることであって、1つのサイクルを構成する複数のフェーズの各々において前記複数のヒータ要素のうちの少なくとも1つを稼働状態として少なくとも他の1つを休止状態としつつ、稼働状態にあるヒータ要素がフェーズの移行とともに順次変更され、かつ、稼働状態に移行した各ヒータ要素が予め設定された目標稼働時間の経過の後に休止状態に移行し、かつ、1つのサイクルを構成する複数のフェーズの各々において、同じ数のヒータ要素が稼働状態にあるとともに同じ数のヒータ要素が休止状態にあり、かつ、互いに異なるフェーズにおいて稼働するヒータ要素の少なくとも1つが互いに異なり、かつ、各ヒータ要素が1つのサイクルを構成する複数のフェーズのうちの少なくとも1つのフェーズで休止状態となるように、前記複数のヒータ要素を稼働させることと、
前記各ヒータ要素の実際稼働時間の和である積算稼働時間をカウントすることと、
カウントした積算稼働時間に基づいて、前記複数のヒータ要素間の積算稼働時間の差が小さくなるように、所定のタイミングで、前記各ヒータ要素のその後の目標稼働時間を補正することと、
を備えた運転制御方法。
前記目標稼働時間を補正することは、前記1つのサイクルが終了したときにおける積算稼働時間が最も長いヒータ要素の次のサイクルにおける目標稼働時間を補正せずにそのまま維持し、前記積算稼働時間が最も長いヒータ要素よりも積算稼働時間が短いヒータ要素の次のサイクルにおける目標稼働時間を、前記積算稼働時間が最も長いヒータ要素に対する積算稼働時間の差分に応じて延長することを含む、請求項8記載の運転制御方法。
前記目標稼働時間を補正することは、前記1つのサイクルが終了したときにおける積算稼働時間が最も短いヒータ要素の次のサイクルにおける目標稼働時間を補正せずにそのまま維持し、前記積算稼働時間が最も短いヒータ要素よりも積算稼働時間が長いヒータ要素の次のサイクルにおける目標稼働時間を、前記積算稼働時間が最も短いヒータ要素に対する積算稼働時間の差分に応じて短縮することを含む、請求項8記載の運転制御方法。
前記流体加熱装置は、前記流体を貯留するタンクと、前記容器および前記タンクを含む、前記流体が流れる循環路と、前記循環路内を循環する流体の温度を検出する温度センサと、を更に備えており、
前記目標稼働時間が経過したこと、並びに、前記温度センサにより検出された温度が所定時間続けて所定範囲内にあること、という条件を満たしたときに、1つのフェーズから次のフェーズへの切替えが許可され、前記条件を満たさない場合には、前記条件が満たされるまで前記予定されていた切替えが延期される、請求項8〜10のいずれか一項に記載の運転制御方法。
流体加熱装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、当該記憶媒体に記憶されたプログラムをコンピュータからなる前記流体加熱装置のコントローラで実行することにより、前記コントローラが前記流体加熱装置を制御して請求項7〜11のいずれか一項に記載された運転制御方法を実行する、記憶媒体。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、発明の実施形態について説明する。まず、
図1を参照して基板処理システムの全体構成について説明する。基板処理システムは、処理液を貯留するタンク1と、タンク1に接続された第1循環管路10および第2循環管路20とを有している。タンク1内には、熱電対等の温度センサ2が設けられている。
【0014】
第1循環管路10にはポンプ11が介設されており、ポンプ11を駆動することにより、タンク1内に貯留された処理液が、排液口1Aから流出し、第1循環管路10を通ってタンク1内に再び戻される。第1循環管路10から、複数(図面には3つだけ示す)の分岐管路12が分岐しており、各分岐管路が、基板処理ユニット13に処理液を供給する。具体的には、各分岐管路12には開閉弁および流量調整弁等からなる流れ制御機構14が介設されている。各分岐管路12の終端にはノズル15が設けられている。各ノズル15は、スピンチャック16により保持されて回転する半導体ウエハ等の基板Wに向けて処理液を吐出し、これにより基板Wに所定の処理が施される。基板Wに向けて吐出された後、基板から飛散する処理液は、スピンチャック16の周囲に設けられたカップ体17により回収される。カップ体17に回収された処理液は、図示しない廃液管路を介して工場廃液系に排出することができる。これに代えて、処理の種類によっては、カップ体17に回収された処理液を、図示しない戻し配管を介して、タンク1に戻すこともできる。第1循環管路10から処理液の供給を受ける基板処理ユニット13の台数及び形式については図示例に限定されるものではなく、例えば第1循環管路10から唯一つのバッチ式の基板処理ユニット(処理槽内で複数の基板を同時に処理するもの)に処理液を供給してもよい。基板Wは半導体ウエハに限らず、他の種類の基板、例えばガラス基板、セラミック基板であってもよい。
【0015】
第2循環管路20にはポンプ21及び流体加熱ユニット(流体加熱装置)30が介設されており、ポンプ21を駆動することにより、タンク1内に貯留された処理液が、排液口1Bから流出し、第2循環管路20を通ってタンク1内に再び戻される。処理液は、流体加熱ユニット30を通過する際に加熱される。このように処理液を循環させながら加熱することにより、タンク内にある処理液の温度を目標温度に安定して維持することができる。
【0016】
流体加熱ユニット30は、大径の円筒形の容器31と、当該容器31に設けられた複数のランプ収容管32とを有している。容器31及びランプ収容管32は、例えば石英から構成されている。各ランプ収容管32の内部空間は、容器31の内部空間から分離されている。各ランプ収容管32内にはそれぞれ、1本のハロゲンランプヒータ33が収容されている。容器31には、流入口31A及び流出口31Bが設けられており、これら流入口31A及び流出口31Bは第2循環管路20に接続されている。ポンプ21を動作させると、流入口31Aから容器31の内部に処理液が流入し、この処理液は、容器31の内部を螺旋状に流出口31Bに向かって流れ、流出口31Bから流出する。ハロゲンランプヒータ33のランプ光は、ランプ収容管32を透過して、容器31の内部を流れる処理液に照射され、当該処理液に吸収される。これにより、処理液が加熱される。ハロゲンランプヒータ33は、石英等からなる耐熱性を有するガラスからなる発光管内に、ハロゲン元素またはその化合物を封入するとともにタングステンのフィラメントを配置することにより構成されたランプヒータである。
【0017】
ハロゲンランプヒータ33には、電源34から電力が供給される。電源34は、コントローラ(制御部)35により制御される。コントローラ35は、基板処理システムの全体の動作を制御するシステムコントローラの一部として、あるいはこのようなシステムコントローラの指令を受けて動作する別個の下位コントローラとして構成することができる。
【0018】
コントローラ35は、稼働スケジュール記憶部35Aと、稼働時間カウント部35Bと、目標稼働時間補正部35Cと、通電制御部35Dと、切替制御部35Eとを有している。これらの各部35A〜35Eは、HDD、メモリ等のコンピュータの技術分野で公知の任意の記憶装置(記憶媒体)及びMPU等の演算装置等を備えたコンピュータハードウエア、並びに当該ハードウエアにより実行しうるプログラム(ソフトウエア)により実現することができる。このようなプログラムは、前記記憶媒体に記憶させておくことができる。
【0019】
稼働スケジュール記憶部35Aは、各ハロゲンランプヒータ33(以下、「ヒータ」と呼ぶ)に対して予め定められた稼働スケジュールを記憶する。稼働スケジュールとしては様々なものが考えられるが、そのうちの2つを
図2に例示する。ここでは、流体加熱ユニット30が4本のヒータ33を有しているものとし、各ヒータ33のID符号を33A,33B,33C,33Dと表示している。以下、本明細書において、符号33A,33B,33C,33Dは各ヒータを区別する必要がある場合に用い、各ヒータを区別する必要がない場合には、単に「ヒータ33」とも表示する。
図2に示された線図(タイムチャート)は、各ヒータ33に供給される電力の経時変化を示しており、パルス状に高くなっている部分はヒータ33に電力が供給されてヒータ33が稼働していることを示している。
【0020】
図2(a)に示す稼働スケジュールにおいては、下記のフェーズ1〜4を1サイクルとして当該サイクルが繰り返される。
・ヒータ33Aを所定の目標稼働時間(例えば10時間)だけ稼働(ヒータ33B、33C,33Dは休止)(フェーズ1)
・ヒータ33Bを所定の目標稼働時間だけ稼働(ヒータ33A、33C,33Dは休止)(フェーズ2)
・ヒータ33Cを所定の目標稼働時間だけ稼働(ヒータ33A、33B,33Dは休止)(フェーズ3)
・ヒータ33Dを所定の目標稼働時間だけ稼働(ヒータ33A、33B,33Cは休止)(フェーズ4)。
【0021】
図2(b)に示す稼働スケジュールにおいては、下記のフェーズ1〜4を1サイクルとして当該サイクルが繰り返される。
・ヒータ33A、ヒータ33Bを所定の目標稼働時間(例えば10時間)だけ稼働(ヒータ33C、33Dは休止)(フェーズ1)
・ヒータ33B、ヒータ33Cを所定の目標稼働時間だけ稼働(ヒータ33A、33Dは休止)(フェーズ2)
・ヒータ33C、ヒータ33Dを所定の目標稼働時間だけ稼働(ヒータ33A、33Bは休止)(フェーズ3)
・ヒータ33D、ヒータ33Aを所定の目標稼働時間だけ稼働(ヒータ33B、33Cは休止)(フェーズ4)。
【0022】
図2(a)及び(b)の両方の場合において、あるフェーズから次のフェーズに移行する際には、1つのヒータが稼働状態(通電状態)から休止状態(非通電状態)に移行し、他の1つのヒータが休止状態(非通電状態)から稼働状態(通電状態)に移行する。各フェーズにおける「所定の目標稼働時間」は互いに等しい。言い換えれば、1サイクル中における各ヒータ33の合計稼働時間が等しくなるように稼働スケジュールが設定されている。なお、
図2(b)の場合においては、あるフェーズ及び次のフェーズにおいてともに稼働状態とされるヒータ33に対しては、フェーズ移行の際にも継続的に通電される。要するに、稼働スケジュールは、(1)各フェーズにおいて少なくとも1つのヒータ33が稼働状態であり、少なくとも他の1つのヒータ33が休止状態となるように、かつ、(2)あるフェーズから次のフェーズに移行する際に、少なくとも1つのヒータ33が稼働状態から休止状態に移行し、それと入れ替わりに少なくとも1つの他のヒータ33が休止状態から稼働状態に移行するように、決定されている。
【0023】
なお、稼働スケジュールは、基板処理システムの稼働開始後、すなわち流体加熱装置30の稼働開始後、温度センサ2により検出されたタンク1内の処理液の温度が目標温度(目標温度範囲内)にある場合に適用されるものであり、冷えた処理液を目標温度近くまで加熱するときには、稼働スケジュールにおいて1フェーズ中に稼働するヒータより多い数のヒータを稼働させてもよい。
【0024】
通電制御部35Dは、稼働スケジュール記憶部35Aに記憶された稼働スケジュールに基づいて電源34を制御して、各ヒータ33に通電を行わせる。通電制御部35Dは、タンク1内に設けられた温度センサ2により検出された処理液の温度が目標温度(目標温度範囲内)に維持されるように、供給電力の微調整を行うこともできる。但し、ハロゲンランプヒータにハロゲンサイクル不調が生じない範囲の調整のみである。
【0025】
稼働時間カウント部35Bは、通電制御部35Dからの出力信号に基づいて、各ヒータ33への積算通電時間、すなわち各ヒータ33の積算稼働時間を個別にカウントして記憶する。
【0026】
切替制御部35Eは、稼働スケジュールにより予定されている前述したサイクルを繰り返すにあたって、あるフェーズから次のフェーズへの移行(すなわち稼働させるヒータ33の切替え)への2つの切替条件が満足されているか否かを判断する。第1の切替条件は、そのヒータ33が稼働を開始してから所定の目標稼働時間(例えば10時間)が経過していることである。なお、目標稼働時間が、後述する目標稼働時間補正部35Cにより補正されている場合には、第1の切替条件は、この補正された目標稼働時間が経過していることである。
【0027】
第2の切替条件は、処理液の実際温度が所定範囲内にあること、具体的には、例えば、タンク1内処理液の目標温度「T
T」とし、温度センサ2により検出されたタンク内処理液の実際温度を「T
A」としたときに、T
A=T
T±Cの関係が満たされている状態がD秒間継続していることである。「C」は例えば2℃、「D」は例えば600秒とすることができるが、これらの数値に限定されるものではない。なお、切替条件2を満足しなくなる状況は、例えば、タンク1内の処理液の補充または部分的交換を行ってから所定期間内に生じうる。なお、切替条件2を設けた理由は、ヒータ33の切替え時には若干の温度変動が生じるため、温度が不安定なときにヒータ33の切替えを行うことは、温度の不安定さを拡大するおそれがあり好ましくないからである。
【0028】
切替制御部35Eは、第1の切替条件が満足されていても第2の切替条件が満足されていない場合には、第2の切替条件が満足されるまで、あるフェーズから次のフェーズへの移行(すなわち稼働させるヒータ33の切替え)を先延ばしにし(稼働スケジュールに基づく通電制御部35Dによるヒータ33の切替を禁止する)、第2の切替条件が満足された時に初めて、フェーズの移行を許容する。このため、ヒータ33の実際稼働時間が目標稼働時間より長くなることがある。サイクルを重ねてゆくと、各ヒータ33の実際稼働時間の差が積み重なって、各ヒータ33の積算稼働時間に大きな差が生じることもありうる。このことは、全てのヒータ33に同時に寿命を全うさせたいという要望に反する。
【0029】
この問題を解決するため、目標稼働時間補正部35Cは、稼働時間カウント部35Bにてカウントされた各ヒータ33の積算稼働時間に基づき、稼働スケジュール記憶部35Aに記憶された稼働スケジュールにより定義されている各フェーズにおける各ヒータの目標稼働時間を補正し、その補正後の目標稼働時間を稼働スケジュール記憶部35Aに記憶させる。従って、通電制御部35Dは、補正後の目標稼働時間に基づいて各ヒータ33への通電を行う。また、補正後の目標稼働時間は、切替制御部35Eによる第1の切替条件の判定にも用いられる。
【0030】
以下に、稼働スケジュール記憶部35Aに記憶された稼働スケジュールが
図2(a)で示すようなものであった場合を例にとって、目標稼働時間補正部35Cの作用について説明する。
【0032】
表1の上段には、第1サイクルにおける各ヒータ33の実際稼働時間(これは第1サイクルのフェーズ1〜4の実際の時間と同じである)の一例が示されている。この例では、ヒータ33A、33Dが目標稼働時間の通りに稼働しているのに対して、ヒータ33B、33Cが目標稼働時間を超過して稼働している。稼働時間カウント部35Bは、各ヒータ33の積算稼働時間をカウントしている。第1サイクルの終了時点においては、各ヒータ33の積算稼働時間は、表1に示されている各ヒータ33の第1サイクルの実際稼働時間と等しい。目標稼働時間補正部35Cは、各ヒータ33の積算稼働時間が、次のサイクル(第2サイクル)終了時点で同じになるように、次のサイクルにおける各ヒータ33のデフォルト(初期値)の目標稼働時間(稼働スケジュール記憶部35Aに記憶されている予め定められた目標稼働時間である10時間)を、表1の下段に示すように補正する。
【0033】
ここでは、これまでの積算稼働時間(第1サイクルの実際稼働時間と等しい)が最も長かったヒータ33Bを基準とし、このヒータ33Bについては、第2サイクルの目標稼働時間を補正することなくデフォルトの10時間のままとする。この場合、ヒータ33Bにおいては、第2サイクル終了時点において予定される合計稼働時間(第1サイクルの実際稼働時間+第2サイクルの目標稼働時間)が21時間となる。他のヒータ33A、33C、33Dについては、第2サイクル終了時点において予定される合計稼働時間が同じく21時間となるように、ヒータ33Bの実際稼働時間に対する差分に応じて、第2サイクルの目標稼働時間が補正される。表1の下段には、このようにして補正された第2サイクルの目標稼働時間が記載されている。
【0034】
更に次のサイクルにおける各ヒータ33の目標稼働時間の補正方法について以下に説明する。上記の補正した目標稼働時間に従って実行された第2サイクルにおける各ヒータ33の実際稼働時間を下記の表2の第3段に示す。なお、切替条件1があるため、第2サイクルにおける各ヒータ33の実際稼働時間が、上記の通り補正された目標稼働時間より短くなることはないことに注意されたい。
【0036】
第2サイクルの終了時点での稼働時間カウント部35Bにおいてカウントされた各ヒータ33の積算稼働時間は、ヒータ33Aが22時間、ヒータ33Bが21時間、ヒータ33Cが21.5時間、ヒータ33Dが22時間となる。この積算稼働時間に基づいて、第2サイクルの目標稼働時間補正と同様の考え方により、第3サイクルの各ヒータ33の目標稼働時間を補正する。すなわち、これまでの積算稼働時間(表2の第4段の「第2サイクルまでの合計」)が最も長かったヒータ33A、33Dを基準とし、これらのヒータ33A、33Dについては、第3サイクルの目標稼働時間を補正することなくデフォルトの10時間のままとする。この場合、ヒータ33A、33Dにおいては、第2サイクル終了時点において予定される合計稼働時間(第1サイクルの実際稼働時間+第2サイクルの実際標稼働時間+第3サイクルの目標稼働時間)が32時間となる。他のヒータ33B、33Cについては、第3サイクル終了時点において予定される合計稼働時間が同じく32時間となるように、ヒータ33A、33Dの積算稼働時間に対する差分に応じて、第3サイクルの目標稼働時間が補正される。表2の最下段には、このようにして補正された第2サイクルの各ヒータ33の目標稼働時間が記載されている。
【0037】
第4サイクル以降の目標運転時間も、上記と同様の考え方に基づいて補正することができる。
【0038】
上記においては、それまでの積算稼働時間が最も長いヒータを基準として、次のサイクルにおける各ヒータ33の目標運転時間を補正した。しかしながら、これに限定されるものではない。例えば、下記に示す方法で補正を行うことができる。
【0040】
表3に示す方法は、表1及び表2により説明した方法とは逆に、それまでの積算稼働時間の最も短いヒータ(第1サイクル終了時点では33A、33D/第2サイクル終了時点では33B、33C)を基準として、そのヒータの次のサイクルの目標稼働時間を補正することなくデフォルトの10時間のままとする。そして他のヒータについては、次のサイクル終了時点において予定される合計稼働時間(これまで実行されたサイクルにおける実際稼働時間の合計+次のサイクルの目標稼働時間)が、次のサイクル終了時点において予定される前記の基準としたヒータの合計稼働時間と等しくなるように、前記の基準としたヒータの合計稼働時間との差分に応じて、次のサイクルの目標稼働時間を補正する。
【0041】
なお、表3に示す方法においては、あるヒータ33の稼働中に切替条件2が長時間にわたって満足できないことにより相当に長い実際運転時間が生じた場合、当該ヒータの次のサイクルの目標稼働時間を相当に短くしなければならない場合が生じうる。しかし、短時間でON−OFF操作をするとハロゲンランプヒータの寿命短縮につながるため好ましくない。この場合に取り得る措置について下記の表4を参照して説明する。
【0043】
表4では、第1サイクルにおいてヒータ33Cの実際稼働時間が目標稼働時間の10時間よりも大幅に長い18時間となっている(表4の第1段を参照)。この場合、表3に示す方法によりヒータ33Cの第2サイクルの目標稼働時間を決めると、2時間になり(表4の第2段を参照)、前述した通り好ましくない。従って、この場合は、ヒータ33Cの第2サイクルの稼働をスキップする。すなわち、第2サイクルにおけるヒータ33Cの目標稼働時間は0時間とする(表4の第3段を参照)。ここで、第2サイクルにおける各ヒータ33の実際稼働時間が表4の第4段に示した通りであったとする(なお、稼働を「スキップ」するということは、切替条件2が満たされないことを原因として実際稼働時間が目標稼働時間より長くなることはない。)。この場合、第3サイクルの目標稼働時間を比較的長い時間に設定することができる。スキップ操作の発動条件は、補正後の目標稼働時間が所定時間(例えば3時間)未満となった場合、とすることができる。
【0044】
なお、表1〜表4で示した例においては、目標稼働時間の修正は、1つのサイクルが終了する毎に行っているが、これに限定されるものではない。例えば、表1及び表2により説明した方法を以下のように改変することができる。
【0046】
表5に示すように、第1サイクルの実行中に、例えばヒータ33Aが目標稼働時間の通りに10時間稼働し、その後にヒータ33Bが12時間稼働した後にヒータ33Cに切り替えられたものとする。このとき、直ちにヒータ33Cの目標稼働時間を、これまでに稼働したヒータ(33A、33B)の実際稼働時間の最大値である12時間に変更する。なお、これまでに稼働したヒータ(33A、33B)の実際稼働時間の平均値(この場合11時間)にヒータ33Cの目標稼働時間を変更してもよい。また、ヒータ33Dへの切替後においても同様に、ヒータ33Dの目標稼働時間を、これまでに稼働したヒータ(33A、33B、33C)の実際稼働時間の最大値と一致するように切り替える。なお、第2サイクル以降において、当該サイクルにおいてすでに稼働済みの各ヒータの実際稼働時間の積算値の最大値が、現在稼働している(切替直後の)ヒータの当該サイクルにおける目標稼働時間と当該サイクルの前のサイクルまでの実際稼働時間の積算値との和に等しくなるように、現在稼働している当該サイクルにおける目標稼働時間を変更してもよい。なお、表5に示す方法を採用する場合においても、各サイクルの終了時に、表1及び表2で説明した方法に従って、次のサイクルの各ヒータの目標稼働時間を補正することが好ましい。
【0047】
また、表1〜表4に示した例では、ある1つのサイクルの終了時における実際稼働時間のばらつきが次の1つのサイクルの終了時までに解消されるように、次の1つのサイクルの目標稼働時間を決定していたが、これに限定されるものではない。ある1つのサイクルの終了時における実際稼働時間のばらつきが次の2つ(3つ以上でもよい)のサイクルの終了時までに解消されるように、次の2つのサイクルの目標稼働時間を決定してもよい。そのような例について下記の表6を参照して説明する。
【0049】
第1サイクルの各ヒータ33の実際稼働時間が表6の最上段に示した値である場合、表1及び表2に示した手法に従うと、第2サイクルの目標稼働時間が、ヒータ33Aで18時間、ヒータ33Bで16時間、そしてヒータ33Dで18時間となる。これに対してこの例では、第1サイクルの実際稼働時間のばらつきを2サイクルの間に解消しようとしているので、1サイクル当たりの補正量は1/2となっている。なお、この例の場合も、第2サイクルの終了時点において、第3サイクル(およびそれ以降のサイクル)の目標稼働時間を再度補正してもよい。なお、実際稼働時間のばらつきを2サイクル(あるいはそれ以上のサイクル)の間に解消する上記の手法は、あるサイクルの終了時間における積算稼働時間のばらつき(最大値−最小値)が所定値以上(例えば8時間以上)の場合のみ適用するものとしてもよい。
【0050】
上記の説明においては、各ヒータ33が「順調に」、すなわち切替条件2を満たすか否か以外の理由により目標稼働時間に対して実際稼働時間が変更されることはない場合について説明した。しかしながら、実際には、基板処理システムのメンテナンス、或いは基板処理システムのインターロック作動による非常停止等の理由にともない、各フェーズの途中にランプが消灯される場合もある。この場合の対処について、下記の表7を参照して説明する。
【0052】
表7は、第2サイクルにおいてヒータ33Bが目標稼働時間に到達する前に基板処理システムが停止し、これに伴いヒータ33Bも休止(停止)した場合を示している。なお。表7に示す例では、通常作動時には表2で説明した方法に基づいてヒータの稼働管理がなされている。ヒータ33Bが停止した後に、基板処理システム及び流体加熱ユニット30を再稼働させる場合には、ヒータ33Bを再稼働させて残り3時間の稼働を行うのではなく、次のヒータ33Cを稼働させる。これは、前述したように好ましくないハロゲンランプヒータの短時間でのON−OFF操作を避けるためである。但し、ヒータが停止した時点における残稼働時間(目標稼働時間−実際稼働時間)が所定値以上(例えば8時間以上)の場合には、停止したヒータを再稼働させてもよい。
【0053】
また、再稼働時には、それまでの積算稼働時間が最も短いヒータ(表7の場合はヒータ33Cになる)から稼働を開始してもよい。あるいは、再稼働時には常に同じヒータ(例えば33A)から稼働を開始してもよい。これらの場合には、制御プログラムを単純化するとともにメモリの負担を低減することができるという利点がある。これらの場合にも、再稼働時に実行されるサイクルにおいて、あるいはその後のサイクルにおいて、ヒータ間の積算稼働時間がそろうように目標稼働時間を補正することができる。
【0054】
なお、上記の各例においては、4つのヒータ33A〜33Dが、固定された順序でローテーションして用いられているが、これには限定されない。例えば、第1サイクルABCD、第2サイクルDCBA、第3サイクルACBD、第4サイクルDABC、第5サイクルCDAB、第6サイクルBDCA、第7サイクルABCD・・・(A、B、C、Dはそれぞれヒータ33の参照符号の末尾のアルファベットを示す)のようにローテーション順序を変更してもよい。言い換えれば、各サイクルにおけるフェーズの順序を変更してもよい。なお、上記のように、各サイクルにおける最後に稼働するヒータ33と、その次のサイクルにおいて最初に稼働するヒータ33を一致させることにより、1つのヒータ33が長時間連続運転される機会が増えるため、ヒータ33の寿命が縮むリスクを減らすことができる。なお、この場合、サイクルとサイクルの間でヒータ33の切替えが行われなくなるので、次のサイクルの目標稼働時間の補正は下記のようにして行う。例えば第2サイクルにおいて最後のヒータ33Aが第2サイクルにおける目標稼働時間(例えば10時間)の運転を終了した時点において、第2サイクルが終了したものと見なして、そして次の第3サイクルにおける各ヒータの目標稼働時間の補正を行う。それ以降に継続的に行われるヒータ33Aの稼働は、第3サイクルにおける稼働と見なされ、上記の通り補正された第3サイクルの目標稼働時間に従ってヒータ33Aが稼働する。
【0055】
なお、上記の各例においては、ヒータ33の総数が4本であったが、これには限定されない。複数であれば4本より多くても少なくてもよい。
【0056】
また、上記の各例では、任意の時点において全ヒータ33A〜33Dのうちの1本だけが稼働していたがこれに限定されない。任意の時点において全ヒータのうちの少なくとも1本が休止していればよい。例えば
図2(b)及び下記の表8に示すように、2本以上を同時に稼働させてもよい。表8において「○」は稼働させるヒータを示す。
【0058】
図2(b)及び上記の表8の場合には、フェーズ1からフェーズ2への切替えは、ヒータ33Aを稼働状態から休止状態に移行させる(ヒータOFF)とともにヒータ33Cを休止状態から稼働状態に移行させる(ヒータON)ことにより行われる。フェーズ2からフェーズ3への切替えは、ヒータ33Bを稼働状態から休止状態に移行させるとともにヒータ33Dを休止状態から稼働状態に移行させることにより行われる。フェーズ3からフェーズ4への切替えは、ヒータ33Cを稼働状態から休止状態に移行させるとともにヒータ33Aを休止状態から稼働状態に移行させることにより行われる。フェーズ4からフェーーズ1への切替えは、ヒータ33Dを稼働状態から休止状態に移行させるとともにヒータ33Bを休止状態から稼働状態に移行させることにより行われる。上記の場合にも、前述した例と同様の考え方に基づいて、下記の表9に示すように目標稼働時間を補正することができる。
【0060】
表9の例においても、1つのサイクルの終了時においての積算稼働時間が最長のヒータを基準にして、他のヒータの目標稼働時間を補正する。第1サイクルにおいては、ヒータ33Dの積算稼働時間が最長で25時間であるから、第2サイクルにおいてのヒータ33Dのフェーズ3及びフェーズ4における目標運転時間をデフォルトと同じ10時間に定める(補正無し)。フェーズ3でのヒータ33C及びフェーズ4でのヒータ33Aの目標稼働時間は、ヒータ33DのフェーズC及びフェーズDにおける目標稼働時間と当然に同じでなければならないため、これらの値は自動的に10時間(補正無し)と定まる。すると、ヒータ33Dの第2サイクル終了時において予定される積算稼働時間は45時間となるので、他のヒータにおいても、第2サイクル終了時において予定される積算稼働時間が45時間となるように目標運転時間を補正する。従って、第2サイクルのフェーズ2におけるヒータ33Cの目標稼働時間は11時間(45−24−10)となる。第2サイクルのフェーズ2におけるヒータ33Bの目標稼働時間はヒータ33Cと当然に同じでなければならないため、11時間に自動的に定まる。このような考えに従って、表9に示すように、各フェーズにおける各ヒータ33の目標稼働時間を補正することができる。
【0061】
なお、仮にある時点において、1つのヒータ33が断線(故障)した場合には、要求される加熱機能を実現することが可能であるなら、残りの健全なヒータ33だけを用いて流体加熱ユニット30の運転を継続することができる。この場合、残りの健全なヒータを用いた稼働スケジュールを組み直す機能を有する稼働スケジュール補正部(図示せず)をコントローラ35に設けることができる。例えば、
図2(a)に示す稼働スケジュールでヒータ33A〜33Dを稼働させていたときにヒータ33Bが故障した場合には、稼働スケジュール補正部は、残りの健全なヒータを用い、「ヒータ33Aを稼働(フェーズ1)→ヒータ33Cを稼働(フェーズ2)→ヒータ33Dを稼働(フェーズ3)」を1サイクルとする稼働スケジュールを組み直す。この場合も、コントローラ35の各部35A〜35Eは、上記と同様の考え方に基づいて動作させることができる。
【0062】
以上説明した実施形態によれば、積算稼働時間に応じて目標稼働時間を適宜のタイミングで補正しているので、ヒータの積算稼働時間のばらつきを抑制することができる。このため、各ヒータの寿命の終期を近づけることができ、すなわち各ヒータの交換タイミングをそろえることができ、流体加熱ユニットひいては基板処理システムのメンテナンスの頻度及び負荷を低減することができ、基板処理システムのスループットの向上に寄与することができる。
【0063】
上記の実施形態においては、流体加熱ユニット30のヒータ33が、ハロゲンランプヒータであったが、これに限定されるものではなく、他の形式のヒータ、例えばカーボンヒータなどの赤外線ヒータであってもよい。この場合も、ヒータの寿命の終期を近づけることができる。