(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976517
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】連続蒸気殺菌装置
(51)【国際特許分類】
A23L 3/18 20060101AFI20160809BHJP
A23L 3/08 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
A23L3/18
A23L3/08
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-271932(P2012-271932)
(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公開番号】特開2014-117164(P2014-117164A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】新村 知大
(72)【発明者】
【氏名】坂本 典子
(72)【発明者】
【氏名】埜村 将人
(72)【発明者】
【氏名】樋口 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】千葉 仁司
(72)【発明者】
【氏名】木本 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】上野 洋平
【審査官】
福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−333655(JP,A)
【文献】
特開2012−105600(JP,A)
【文献】
特開平11−332521(JP,A)
【文献】
特開2000−060511(JP,A)
【文献】
特開2002−199986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/00−54
A47J 27/14−18
A47J 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を殺菌する殺菌室(但し、前記殺菌室内にマイクロ波を照射するものを除く。)と、
前記殺菌室を貫通するように配置され、前記食品を載置する網状のコンベアベルトを有するコンベアと、
前記殺菌室内において前記コンベアベルトの配置位置よりも底面側に配置され、前記殺菌室の底面側に向けて水蒸気を噴出する噴出口を有する噴出部と、
前記殺菌室内に熱風を放出する放出部と、
前記コンベアにより前記食品が前記殺菌室に搬入される搬入口、及び前記コンベアにより前記食品が前記殺菌室から搬出される搬出口を遮蔽する遮蔽板と
を備えることを特徴とする連続蒸気殺菌装置。
【請求項2】
前記噴出口における水蒸気の温度は、120〜130℃の間の所定の温度であることを特徴とする請求項1記載の連続蒸気殺菌装置。
【請求項3】
前記放出部の放出口における熱風の温度は、100℃〜110℃の間の所定の温度であることを特徴とする請求項1または2記載の連続蒸気殺菌装置。
【請求項4】
前記食品は、調理済みの惣菜であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の連続蒸気殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気で満たされた殺菌室内にベルトコンベアで食品を搬送して殺菌処理を行う連続蒸気殺菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ベルトコンベアによって搬送された米を加熱しながら水蒸気で蒸して糊化させるスチーマーが知られている(例えば、特許文献1)。このスチーマーによれば、蒸気凝縮によって熱の伝達を行うため、高い加熱能力で効率的に米を加熱することができる。
【0003】
また、焼きまたは乾燥により食品を加工調理する際に、熱風と共に水蒸気を噴出させることにより食品の焦げや過乾燥を防止するスチームオーブンが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−181842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のスチーマーにおいては、蒸気水によって食品の品質が大きく変化するため、食品を殺菌するのには適さなかった。
【0006】
また、上述のスチームオーブンにおいては、庫内からの水蒸気の漏れにより庫内の水蒸気量が少なくなるため加熱能力に不足が生じ、食品を的確に殺菌することができなかった。
【0007】
本発明の目的は、食品の品質を変化させずに的確に殺菌処理を行うことができる連続蒸気殺菌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の連続蒸気殺菌装置は、食品を殺菌する殺菌室
(但し、前記殺菌室内にマイクロ波を照射するものを除く。)と、前記殺菌室を貫通するように配置され、前記食品を載置する網状のコンベアベルトを有するコンベアと、前記殺菌室内において前記コンベアベルトの配置位置よりも底面側に配置され、前記殺菌室の底面側に向けて水蒸気を噴出する噴出口を有する噴出部と、前記殺菌室内に熱風を放出する放出部と、前記コンベアにより前記食品が前記殺菌室に搬入される搬入口、及び前記コンベアにより前記食品が前記殺菌室から搬出される搬出口を遮蔽する
遮蔽板とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の連続蒸気殺菌装置は、前記噴出口における水蒸気の温度が、120〜130℃の間の所定の温度であることを特徴とする。
【0010】
本発明の連続蒸気殺菌装置は、前記放出部の放出口における熱風の温度が、100℃〜110℃の間の所定の温度であることを特徴とする。
【0011】
本発明の連続蒸気殺菌装置は、前記食品が、調理済みの惣菜であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の連続蒸気殺菌装置によれば、食品の品質を変化させずに的確に殺菌処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係るスチームオーブンの外観を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態に係るスチームオーブンの内部構成を示す断面図である。
【
図3】従来のスチームオーブンの内部構成を示す断面図である。
【
図4】実施の形態に係るスチームオーブン及び従来のスチームオーブン等の昇温能力に関する実験結果を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係る連続蒸気殺菌装置について、食品工場等で調理済みの食品を大量に殺菌する際に使用するスチームオーブンを例に説明する。なお、以下の説明においてはXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照して説明する。XYZ直交座標系は、
図1に示すように、X軸がコンベアによる食品の搬送方向と平行に、Y軸が水平面においてX軸と直交する方向に、Z軸が鉛直上方向に設定される。
【0015】
図1は、実施の形態に係るスチームオーブンの外観を示す斜視図である。スチームオーブン2は、内部に殺菌室20(
図2参照)を有しX軸方向に延びる直方体状のチャンバ4、チャンバ4内をX軸方向に貫通するコンベア6、コンベア6により食品を殺菌室20内に搬入する搬入口8、コンベア6により食品を殺菌室20内から搬出する搬出口10、開口面積が小さくなるように搬入口8、搬出口10を遮蔽する遮蔽板12、スチームオーブン2を制御する制御部14、熱風を生成するガスバーナー15及び台座部16を備えている。
【0016】
ここで、コンベア6は、殺菌する食品を載置する網状に形成されたコンベアベルト18を備えている。また、遮蔽板12は、開口部の上部を遮蔽し、Y軸方向に所定の幅を有する上部遮蔽板12aの他、開口部の下部を遮蔽する下部遮蔽板12b等(
図2参照)の複数の遮蔽板を備えている。
【0017】
図2は、実施の形態に係るスチームオーブン2の内部構成を示す断面図である。スチームオーブン2は、調理済みの食品を殺菌する殺菌室20をチャンバ4の内部に備えている。また、殺菌室20の内部において、コンベアベルト18の下側(−Z方向側)には、殺菌室20内に水蒸気を噴出する水蒸気管22が配置され、コンベアベルト18の上側(+Z方向側)には、殺菌室20内にガスバーナー15で生成された熱風を放出する放出部24が配置されている。
【0018】
ここで、水蒸気管22は、Y軸方向に延びる配管であり、コンベアベルト18の下側に所定の間隔で複数配置されている。また、水蒸気管22の下側(−Z方向側)には、殺菌室20の底板20aに向けて水蒸気を噴射する複数の噴射口(不図示)が設けられている。なお、水蒸気管22に送り込まれる水蒸気は、図示しない水蒸気生成装置において生成される。
【0019】
次に、本発明の実施の形態に係るスチームオーブン2を用いた殺菌処理について、調理済みの惣菜を殺菌する場合を例に説明する。まず、作業者により、殺菌処理の開始を指示する操作が行われると、制御部14は、図示しない駆動部により水蒸気生成装置を起動させると共に、図示しない点火装置によりガスバーナー15を点火する。
【0020】
水蒸気生成装置において生成された水蒸気は水蒸気管22に送り込まれた後、
図2の矢印Aに示すように、水蒸気管22の下側の噴射口を介して殺菌室20の底板20aに向けて噴射される。ここで、噴射口から噴射される水蒸気の温度は、120℃〜130℃の間の所定の温度である。
【0021】
噴射口から噴射された水蒸気は、底板20aに吹き付けられて向きを変え、矢印Bに示すように+Z方向に進行する。ここで、殺菌室20の搬入口8、搬出口10は、遮蔽板12により遮蔽されているため、水蒸気が搬入口8、搬出口10から殺菌室20の外部に漏れる量を減少させることができる。このため、殺菌室20内の水蒸気量を400〜500g/m
3の間の所定の高水蒸気量にすることができる。
【0022】
なお、
図3に示す従来のスチームオーブンのように、水蒸気管をコンベアの上側に配置し、遮蔽されていない搬入口及び搬出口に向けて水蒸気を噴射するようにした場合、搬入口及び搬出口から水蒸気が外部に漏れるため、室内の水蒸気量を350g/m
3程度にするのが限界である。
【0023】
一方、ガスバーナー15において、ガスの燃焼により発生した熱風は、図示しないファンによって図示しない供給管を介して放出部24から放出される。ここで、放出部24から放出される熱風の温度は、100℃〜110℃の間の所定の温度である。放出された熱風は送風され、殺菌室20に満遍なく行きわたる。これにより、殺菌室20内の温度が100℃程度まで上昇する。
【0024】
なお、制御部14は、殺菌室20内の温度が常に100℃前後に維持されるようにフィードバック制御を行う。具体的には、コンベアベルト18の上部に配置された図示しない温度センサにより常時殺菌室20内の温度を計測し、殺菌室20内の温度が100℃よりも所定の温度高くなった場合には、ガスバーナー15を止めて放出部24からの熱風の放出を停止する。そして、殺菌室20内の温度が100℃よりも所定の温度低くなった場合には、再びガスバーナー15によりガスを燃焼させて放出部24から熱風を放出させる。
【0025】
殺菌室20内が高温、高水蒸気量になり、殺菌の準備が整うと、制御部14は、コンベア6を駆動させ、コンベアベルト18を+X方向に移動させる。ここで、搬入口8において、作業者により、トレイに載せられた調理済みの惣菜がコンベアベルト18の上に載置されると、載置された惣菜がコンベアベルト18と共に+X方向に移動し、殺菌室20内に搬入される。搬入された惣菜は、所定の時間をかけて殺菌室20を通過する間に殺菌室20内の熱によって加熱され、例えば、盛り付け時に調理人の手袋を介して惣菜の表面に付着した菌等が殺菌される。
【0026】
なお、殺菌時には殺菌室20内が高水蒸気量の水蒸気で満たされているため、加熱によって惣菜が乾燥したり焦げたりすることが防止される。また、殺菌室20内が高水蒸気量の水蒸気で満たされ低酸素濃度の状態となるため、惣菜が酸化することが防止される。殺菌された惣菜は搬出口10から搬出され、取引先に対して出荷される。
【0027】
この実施の形態に係るスチームオーブン2によれば、殺菌室20内を高水蒸気量の水蒸気で満たすことができるため、食品の乾燥、焦げ、酸化等が防止され、食品の品質を変化させずに的確に殺菌処理を行うことができる。また、殺菌室20内を高水蒸気量の水蒸気で満たすことにより、熱を早く効率的に殺菌室20内に伝播させることができ、装置の昇温能力を高めることができる。これにより、食品を高温で加熱し的確に殺菌することができる。
【0028】
ここで、
図4は、実施の形態に係るスチームオーブン2及び従来のスチームオーブン等の昇温能力に関する実験結果を比較した図である。なお実験は、常温の水で満たされたトレイを高温、高水蒸気量の殺菌室内に搬入し、トレイ内の水を加熱することにより行われたものである。(a)〜(d)は、この実験結果であり、各スチームオーブンの殺菌室で加熱されたトレイ内の水温の昇温状態を示している。
【0029】
具体的には、(a)は、従来のスチームオーブン(
図3参照)における、トレイ内の水温の昇温状態を示している。また、(b)は、従来のスチームオーブン(
図3参照)において、搬入口と搬出口を遮蔽した場合における、トレイ内の水温の昇温状態を示している。また、(c)は、スチームオーブン2において、水蒸気管22の上側に噴射口を設け、+Z方向側に向けて水蒸気を噴射した場合における、トレイ内の水温の昇温状態を示している。また、(d)は、実施の形態に係るスチームオーブン2におけるトレイ内の水温の昇温状態を示している。
【0030】
実験結果によれば、従来のスチームオーブン等を用いた場合には、(a)、(b)、(c)に示すように、トレイ内の水温を80℃前後までしか加熱できないのに対し、実施の形態のスチームオーブン2を用いた場合、(d)に示すように、トレイ内の水温を90℃以上に加熱することができる。即ち、実施の形態に係るスチームオーブン2は、従来のスチームオーブン等よりも高い昇温能力を有している。よって、スチームオーブン2を用いて食品の殺菌を行う場合、高温で確実に殺菌することができる。
【符号の説明】
【0031】
2…スチームオーブン、4…チャンバ、6…コンベア、8…搬入口、10…搬出口、12…遮蔽板、14…制御部、16…台座部、18…コンベアベルト、20…殺菌室、22…水蒸気管、24…放出部