(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基板保持装置は、前記基板の研磨中に該基板から前記リテーナリングに加わる横方向の力を受ける支持機構をさらに有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の研磨装置。
前記局所荷重付与機構は、前記局所荷重を前記リテーナリングの一部に与えるためのエアシリンダを備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の研磨装置。
前記磁石は電磁石であり、該電磁石は下向きの局所荷重および上向きの局所荷重を選択的に前記リテーナリングの一部に与えることを特徴とする請求項6に記載の研磨装置。
前記複数の荷重発生装置のうち前記接続部材に近い荷重付与機構は相対的に大きな荷重を発生し、前記接続部材から遠い荷重発生装置は相対的に小さい荷重を発生することを特徴とする請求項25に記載の研磨装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、半導体デバイスの種類が飛躍的に増大しており、デバイス毎やCMP工程毎(酸化膜研磨や金属膜研磨など)にウェハエッジ部の研磨プロファイルを調整する必要性が高くなってきている。この理由の1つには、各CMP工程の前に行われる成膜工程が膜の種類によって異なるためにウェハの初期膜厚分布が異なることが挙げられる。通常CMP後にウェハ全面で均一な膜厚分布とすることが必要とされるため、異なる初期膜厚分布ごとに必要となる研磨プロファイルが異なってくる。
【0009】
他の理由としては、コストなどの観点から研磨装置で使用される研磨パッドや研磨液などの種類が非常に増加していることも挙げられる。研磨パッドや研磨液などの消耗材が異なると、特にウェハエッジ部での研磨プロファイルは大きく異なってくる。半導体デバイス製造においては、ウェハエッジ部の研磨プロファイルは製品の歩留まりに大きく影響するために、ウェハエッジ部の研磨プロファイルを精密に調整することは非常に重要である。
【0010】
上述したように、従来から、ウェハエッジ部の縁だれを防止するために、ウェハの外周縁側に位置する研磨パッドの研磨面を押圧するリテーナリングを備えた基板保持装置が用いられている。このリテーナリング圧力の調整によってウェハエッジ部の研磨レートを調整することは可能である。しかしながら、リテーナリング圧力を変更すると、ウェハエッジ部のみならず、その他の領域を含む比較的広い範囲で研磨レートが変化してしまう。したがって、この方法は、ウェハエッジ部での研磨プロファイルを精密に制御したい場合には適さないものであった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、種々の実験を行った結果、ウェハのエッジ部を保持するリテーナリングに局所的に力を与えることにより、研磨プロファイルを調整でき、特にウェハエッジ部での研磨プロファイルを精密に制御できることを発見した。
【0012】
したがって、本発明は、ウェハなどの基板の研磨プロファイル、特にエッジ部での研磨プロファイルを精密に制御できる研磨装置および研磨方法を提供することを目的とする。
【0013】
本発明の一態様は、基板を研磨面に摺接させて該基板を研磨する研磨装置であって、前記基板を前記研磨面に対して押圧する基板保持面、および前記基板を囲むように配置され、前記研磨面に接触するリテーナリングを有する基板保持装置と、前記基板保持装置をその軸心を中心として回転させる回転機構と、
を備え、前記リテーナリングは、前記基板保持面とは独立して傾動可能であり、前記研磨装置は、前記リテーナリングの一部に前記研磨面に対して垂直方向に局所荷重を与える
ことによって前記リテーナリングを前記基板保持面に対して傾ける少なくとも1つの局所荷重付与機構とを備え、前記局所荷重付与機構は、前記基板保持装置とは一体に回転しないことを特徴とする。
【0014】
本発明の好ましい態様は、前記基板保持装置は、
前記リテーナリングの上面の全体に均一な下向きの荷重を与えることで前記リテーナリング
の下面を前記研磨面に対して押圧するリテーナリング押圧機構をさらに有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記基板保持面および前記リテーナリングは、互いに相対的に上下動可能であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記基板保持装置は、前記基板の研磨中に該基板から前記リテーナリングに加わる横方向の力を受ける支持機構をさらに有することを特徴とする。
【0015】
本発明の好ましい態様は、前記局所荷重付与機構は、前記局所荷重を前記リテーナリングの一部に与えるためのエアシリンダを備えることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記局所荷重付与機構は、前記局所荷重を前記リテーナリングの一部に与えるための磁石を備えることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記磁石は電磁石であり、該電磁石は下向きの局所荷重および上向きの局所荷重を選択的に前記リテーナリングの一部に与えることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記局所荷重に従って変化する力を計測するロードセルをさらに備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい態様は、前記局所荷重付与機構の設置位置は変更可能であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨装置は、前記研磨面を前記基板保持装置に対して相対的に水平方向に移動させる研磨面移動機構をさらに備えており、前記局所荷重付与機構は、前記研磨面の移動方向に関して前記基板の下流側に位置することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記少なくとも1つの局所荷重付与機構は、複数の局所荷重付与機構であることを特徴とする。
【0017】
本発明の他の態様は、基板を研磨面に摺接させて該基板を研磨する研磨装置であって、
前記基板を前記研磨面に対して押圧する基板保持面、および前記基板を囲むように配置され、前記研磨面に接触するリテーナリングを有する基板保持装置
を備え、前記リテーナリングは、前記基板保持面とは独立して傾動可能であり、前記研磨装置は、前記リテーナリングの一部に前記研磨面に対して垂直方向に局所荷重を与える
ことによって前記リテーナリングを前記基板保持面に対して傾ける局所荷重付与機構
をさらに備え、前記局所荷重付与機構の設置位置は変更可能に構成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の好ましい態様は、前記研磨装置は、前記リテーナリングの
鉛直方向の変位を測定するリテーナリング高さセンサをさらに備えたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨装置は、前記リテーナリングの
鉛直方向の変位の測定結果に基づいて前記局所荷重の大きさおよび位置のいずれか一方、または両方を変更することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨装置は、
前記基板の研磨中に前記基板の表面を横切りながら該基板の複数の領域において前記基板の膜厚を示す膜厚信号を取得する膜厚センサをさらに備え、前記取得された膜厚信号に基づいて前記局所荷重の大きさおよび位置のいずれか一方、または両方を変更することを特徴とする。
【0019】
本発明の他の態様は、基板を研磨面に摺接させて該基板を研磨する研磨方法であって、前記基板を回転させながら該基板を前記研磨面に押圧し、前記基板を囲むように配置されたリテーナリングを回転させながら該リテーナリングを前記研磨面に接触させ、前記基板を前記研磨面に押圧しているときに、前記リテーナリングとは一体に回転しない局所荷重付与機構から前記リテーナリングの一部に前記研磨面に対して垂直方向に局所荷重を与える
ことによって前記リテーナリングを前記基板に対して傾けることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記基板の研磨結果に基づいて前記局所荷重の位置を変更することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、リテーナリング高さセンサで前記リテーナリングの
鉛直方向の変位を測定し、前記リテーナリングの
鉛直方向の変位の測定結果に基づいて前記局所荷重の大きさおよび位置のいずれか一方、または両方を変更することを特徴とする。
前記基板の研磨中に膜厚センサが前記基板の表面を横切りながら、該基板の複数の領域において前記基板の膜厚を示す膜厚信号を
前記膜厚センサにより取得し、前記取得された膜厚信号に基づいて前記局所荷重の大きさおよび位置のいずれか一方、または両方を変更することを特徴とする。
【0020】
本発明のさらに他の態様は、第1の基板を回転させながら該第1の基板を研磨面に押圧し、前記第1の基板を囲むように配置されたリテーナリングを回転させながら該リテーナリングを前記研磨面に接触させ、前記第1の基板を前記研磨面に押圧しているときに、所定の第1の位置に静止する局所荷重付与機構から前記リテーナリングの一部に前記研磨面に対して垂直方向に局所荷重を与え
ることによって前記リテーナリングを前記第1の基板に対して傾け、前記第1の基板の研磨後、第2の基板を回転させながら該第2の基板を前記研磨面に押圧し、前記リテーナリングを回転させながら該リテーナリングを前記研磨面に接触させ、前記第2の基板を前記研磨面に押圧しているときに、前記所定の第1の位置とは異なる所定の第2の位置に静止する前記局所荷重付与機構から前記リテーナリングの一部に前記研磨面に対して垂直方向に局所荷重を与え
ることによって前記リテーナリングを前記第2の基板に対して傾け、前記第1の基板および前記第2の基板の研磨結果を取得し、前記研磨結果に基づいて、前記局所荷重付与機構の位置を決定することを特徴とする研磨方法である。
本発明の好ましい態様は、前記第2の基板の研磨での前記局所荷重は、前記第1の基板の研磨での前記局所荷重と異なることを特徴とする。
【0021】
本発明のさらに他の態様は、基板を研磨面に摺接させて該基板を研磨する研磨装置であって、前記基板を前記研磨面に対して押圧する基板保持面、および前記基板を囲むように配置され、前記研磨面に接触するリテーナリングを有する基板保持装置と、前記基板保持装置をその軸心を中心として回転させる回転機構と、局所荷重を発生させる局所荷重付与機構と、前記局所荷重付与機構と前記リテーナリングとの間に配置された押圧リングとを備え、前記リテーナリングは、前記基板保持面とは独立して傾動可能であり、前記局所荷重付与機構は、前記押圧リングの一部に前記研磨面に対して垂直な方向に局所荷重を与え、前記押圧リングは、前記局所荷重付与機構から受けた前記局所荷重を前記リテーナリングの一部に伝達する
ことで前記リテーナリングを前記基板保持面に対して傾ける荷重伝達要素を有し、前記局所荷重付与機構および前記押圧リングは、前記基板保持装置とは一体に回転しないことを特徴とする。
【0022】
本発明の好ましい態様は、前記荷重伝達要素の位置は、前記リテーナリングの周方向に沿って変更可能に構成されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記荷重伝達要素は転動部から構成されることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記基板保持装置は、
前記リテーナリングの上面の全体に均一な下向きの荷重を与えることで前記リテーナリング
の下面を前記研磨面に対して押圧するリテーナリング押圧機構をさらに有することを特徴とする。
【0023】
本発明の好ましい態様は、前記局所荷重付与機構は、複数の荷重発生装置と、前記複数の荷重発生装置が発生した荷重を受けるブリッジと、前記ブリッジが受けた荷重を前記押圧リングに伝える接続部材とを有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記複数の荷重発生装置のうち前記接続部材に近い荷重付与機構は相対的に大きな荷重を発生し、前記接続部材から遠い荷重発生装置は相対的に小さい荷重を発生することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記複数の荷重発生装置が発生した荷重の重心が前記接続部材の位置に一致するように、前記複数の荷重発生装置はそれぞれ荷重を発生することを特徴とする。
【0024】
本発明の好ましい態様は、前記押圧リングは、前記局所荷重に従って変化する力を計測するロードセルを有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記押圧リングと真空原とを接続する吸引ラインをさらに備えたことを特徴とする。
【0025】
本発明のさらに他の態様は、基板を研磨面に摺接させて該基板を研磨する研磨装置であって、前記基板を前記研磨面に対して押圧する基板保持面、および前記基板を囲むように配置され、前記研磨面に接触するリテーナリングを有する基板保持装置と、前記基板保持装置をその軸心を中心として回転させる回転機構と、局所荷重を発生させる複数の局所荷重付与機構と、前記複数の局所荷重付与機構と前記リテーナリングとの間に配置された押圧リングとを備え、前記リテーナリングは、前記基板保持面とは独立して傾動可能であり、前記複数の局所荷重付与機構は、それぞれ前記押圧リングの一部に前記研磨面に対して垂直な方向に局所荷重を与え、前記押圧リングは、前記複数の局所荷重付与機構から受けた前記局所荷重をそれぞれ前記リテーナリングに伝達する
ことで前記リテーナリングを前記基板保持面に対して傾ける複数の荷重伝達要素を有し、前記複数の局所荷重付与機構および前記押圧リングは、前記基板保持装置とは一体に回転しないことを特徴とする。
【0026】
前記複数の荷重伝達要素は複数の転動部から構成されることを特徴とする。
前記基板保持装置は、
前記リテーナリングの上面の全体に均一な下向きの荷重を与えることで前記リテーナリング
の下面を前記研磨面に対して押圧するリテーナリング押圧機構をさらに有することを特徴とする。
前記複数の局所荷重付与機構は、前記押圧リングに与える前記局所荷重の重心を変更可能に構成されていることを特徴とする。
前記押圧リングは、前記局所荷重に従って変化する力を計測するロードセルを有することを特徴とする。
【0027】
本発明のさらに他の態様は、基板を研磨面に摺接させて該基板を研磨する研磨装置であって、前記基板を囲むように配置され、前記研磨面に接触するリテーナリング、前記リテーナリングの一部に前記研磨面に対して垂直方向に局所荷重を付与する押圧部材、および前記局所荷重を発生させる荷重発生装置を有する基板保持装置と、前記基板保持装置をその軸心を中心として回転させる回転機構と、前記押圧部材が前記基板保持装置とは一体に回転しないように前記押圧部材の位置を保持する位置保持機構とを備え、前記基板保持装置は、前記基板を前記研磨面に対して押圧する基板保持面を有し、前記リテーナリングは、前記基板保持面とは独立して傾動可能であり、
前記押圧部材は、前記荷重発生装置によって発生された前記局所荷重を前記リテーナリングの一部に伝達することで前記リテーナリングを前記基板保持面に対して傾けるように構成され、前記位置保持機構は、前記基板保持装置とは一体に回転しないことを特徴とする。
前記位置保持機構は、磁力により前記押圧部材の位置を保持することを特徴とする。
本発明のさらに他の態様は、上記研磨装置を用いて基板を研磨することを特徴とする研磨方法である。
【0028】
本発明のさらに他の態様は、基板を研磨面に摺接させて該基板を研磨する研磨方法であって、前記基板を回転させながら該基板を前記研磨面に押圧し、前記基板を囲むように配置されたリテーナリングを回転させながら該リテーナリングを前記研磨面に接触させ、前記基板を前記研磨面に押圧しているときに、前記リテーナリングとは一体に回転しない複数の局所荷重付与機構から、それぞれ前記リテーナリングの一部に前記研磨面に対して垂直方向に局所荷重を与える
ことによって前記リテーナリングを前記基板に対して傾けることを特徴とする。
前記複数の局所荷重付与機構がそれぞれ発生する前記局所荷重を変えることにより、前記局所荷重の重心を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、リテーナリングの一部に局所荷重を加えることにより、リテーナリングの面圧分布、研磨面の変形状態、リテーナリングの変形状態などを積極的に制御することができる。結果として、リテーナリングに隣接するウェハエッジ部での研磨レートを精密に制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態における研磨装置を示す模式図である。
図1に示すように、研磨装置は、ウェハ(基板)Wを保持し回転させるトップリング(基板保持装置)1と、研磨パッド2を支持する研磨テーブル3と、研磨パッド2に研磨液(スラリー)を供給する研磨液供給機構5と、ウェハWの膜厚に従って変化する膜厚信号を取得する膜厚センサ7とを備えている。膜厚センサ7は、研磨テーブル3内に設置されており、研磨テーブル3が1回転するたびに、ウェハWの中心部を含む複数の領域での膜厚信号を取得する。膜厚センサ7の例としては、光学式センサや渦電流センサが挙げられる。
【0032】
トップリング1は、その下面に真空吸着によりウェハWを保持できるように構成されている。トップリング1および研磨テーブル3は、矢印で示すように同じ方向に回転し、この状態でトップリング1は、ウェハWを研磨パッド2の研磨面2aに押し付ける。研磨液供給機構5からは研磨液が研磨パッド2上に供給され、ウェハWは、研磨液の存在下で研磨パッド2との摺接により研磨される。ウェハWの研磨中、膜厚センサ7は研磨テーブル3と共に回転し、記号Aに示すようにウェハWの表面を横切りながら膜厚信号を取得する。この膜厚信号は、膜厚を直接または間接に示す指標値であり、ウェハWの膜厚の減少に従って変化する。膜厚センサ7は研磨制御部9に接続されており、膜厚信号は研磨制御部9に送られるようになっている。研磨制御部9は、膜厚信号によって示されるウェハWの膜厚が所定の目標値に達したときに、ウェハWの研磨を終了させる。
【0033】
図2は、研磨装置の詳細な構成を示す図である。研磨テーブル3は、テーブル軸3aを介してその下方に配置されるモータ13に連結されており、そのテーブル軸3a周りに回転可能になっている。研磨テーブル3の上面には研磨パッド2が貼付されており、研磨パッド2の上面がウェハWを研磨する研磨面2aを構成している。モータ13により研磨テーブル3を回転させることにより、研磨面2aはトップリング1に対して相対的に移動する。したがって、モータ13は、研磨面2aを水平方向に移動させる研磨面移動機構を構成する。
【0034】
トップリング1は、トップリングシャフト11に接続されており、このトップリングシャフト11は、上下動機構27によりトップリングヘッド16に対して上下動するようになっている。このトップリングシャフト11の上下動により、トップリングヘッド16に対してトップリング1の全体を昇降させ位置決めするようになっている。トップリングシャフト11の上端にはロータリージョイント25が取り付けられている。
【0035】
トップリングシャフト11およびトップリング1を上下動させる上下動機構27は、軸受26を介してトップリングシャフト11を回転可能に支持するブリッジ28と、ブリッジ28に取り付けられたボールねじ32と、支柱30により支持された支持台29と、支持台29上に設けられたサーボモータ38とを備えている。サーボモータ38を支持する支持台29は、支柱30を介してトップリングヘッド16に固定されている。
【0036】
ボールねじ32は、サーボモータ38に連結されたねじ軸32aと、このねじ軸32aが螺合するナット32bとを備えている。トップリングシャフト11は、ブリッジ28と一体となって上下動するようになっている。したがって、サーボモータ38を駆動すると、ボールねじ32を介してブリッジ28が上下動し、これによりトップリングシャフト11およびトップリング1が上下動する。トップリングヘッド16には、ブリッジ28に対向するトップリング高さセンサ39が設けられている。このトップリング高さセンサ39は、トップリング1と一体に上下動するブリッジ28の位置からトップリング1の高さを測定する。
【0037】
また、トップリングシャフト11はキー(図示せず)を介して回転筒12に連結されている。この回転筒12はその外周部にタイミングプーリ14を備えている。トップリングヘッド16にはトップリング用モータ18が固定されており、上記タイミングプーリ14は、タイミングベルト19を介してトップリング用モータ18に設けられたタイミングプーリ20に接続されている。したがって、トップリング用モータ18を回転駆動することによってタイミングプーリ20、タイミングベルト19、およびタイミングプーリ14を介して回転筒12およびトップリングシャフト11が一体に回転し、トップリング1がその軸心を中心として回転する。トップリング用モータ18,タイミングプーリ20、タイミングベルト19、およびタイミングプーリ14は、トップリング1をその軸心を中心として回転させる回転機構を構成する。トップリングヘッド16は、フレーム(図示せず)に回転可能に支持されたトップリングヘッドシャフト21によって支持されている。
【0038】
トップリング1は、その下面にウェハWなどの基板を保持できるようになっている。トップリングヘッド16はトップリングシャフト21を中心として旋回可能に構成されており、下面にウェハWを保持したトップリング1は、トップリングヘッド16の旋回によりウェハWの受取位置から研磨テーブル3の上方に移動される。そして、トップリング1を下降させてウェハWを研磨パッド2の研磨面2aに押圧する。このとき、トップリング1および研磨テーブル3をそれぞれ回転させ、研磨テーブル3の上方に設けられた研磨液供給機構5から研磨パッド2上に研磨液を供給する。このように、ウェハWを研磨パッド2の研磨面2aに摺接させてウェハWの表面を研磨する。
【0039】
次に、基板保持装置を構成するトップリング1について説明する。
図3は、トップリング1の断面図である。
図3に示すように、トップリング1は、ウェハWを研磨面2aに対して押圧するトップリング本体10と、ウェハWを囲むように配置されたリテーナリング40とを備えている。トップリング本体10およびリテーナリング40は、トップリングシャフト11の回転により一体に回転するように構成されている。リテーナリング40は、トップリング本体10とは独立して上下動可能に構成されている。
【0040】
トップリング本体10は、円形のフランジ41と、フランジ41の下面に取り付けられたスペーサ42と、スペーサ42の下面に取り付けられたキャリア43とを備えている。フランジ41は、トップリングシャフト11に連結されている。キャリア43は、スペーサ42を介してフランジ41に連結されており、フランジ41、スペーサ42、およびキャリア43は、一体に回転し、かつ上下動する。フランジ41、スペーサ42、およびキャリア43から構成されるトップリング本体10は、エンジニアリングプラスティック(例えば、PEEK)などの樹脂により形成されている。なお、フランジ41をSUS、アルミニウムなどの金属で形成してもよい。
【0041】
キャリア43の下面には、ウェハWの裏面に当接する弾性膜45が取り付けられている。弾性膜45の下面が基板保持面45aを構成する。弾性膜45は環状の隔壁45bを有しており、これらの隔壁45bにより、弾性膜45とトップリング本体10との間に4つの圧力室、すなわち、センター室50、リプル室51、アウター室52、およびエッジ室53が形成されている。これらの圧力室50〜53はロータリージョイント25を経由して圧力調整装置65に接続されており、圧力調整装置65から加圧流体が供給されるようになっている。圧力調整装置65は、これら4つの圧力室50〜53内の圧力を独立に調整できるようになっている。さらに、圧力調整装置65は、圧力室50〜53内に負圧を形成することも可能となっている。弾性膜45は、リプル室51またはアウター室52に対応する位置に通孔(図示せず)を有しており、この通孔に負圧を形成することによりトップリング1はその基板保持面45a上にウェハWを保持できるようになっている。弾性膜45は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム等の強度および耐久性に優れたゴム材によって形成されている。センター室50、リプル室51、アウター室52、およびエッジ室53は大気開放機構(図示せず)にも接続されており、センター室50、リプル室51、アウター室52、およびエッジ室53を大気開放することも可能である。
【0042】
リテーナリング40は、トップリング本体10のキャリア43および弾性膜45を囲むように配置されている。このリテーナリング40は、研磨パッド2の研磨面2aに接触するリング部材40aと、このリング部材40aの上部に固定されたドライブリング40bとを有している。リング部材40aは、図示しない複数のボルトによってドライブリング40bに結合されている。リング部材40aは、ウェハWの外周縁を囲むように配置されており、ウェハWの研磨中にウェハWがトップリング1から飛び出さないようにウェハWを保持している。
【0043】
リテーナリング40の上部は、環状のリテーナリング押圧機構60に連結されており、このリテーナリング押圧機構60は、リテーナリング40の上面(より具体的には、ドライブリング40bの上面)の全体に均一な下向きの荷重を与え、これによりリテーナリング40の下面(すなわち、リング部材40aの下面)を研磨パッド2の研磨面2aに対して押圧する。
【0044】
リテーナリング押圧機構60は、ドライブリング40bの上部に固定された環状のピストン61と、ピストン61の上面に接続された環状のローリングダイヤフラム62とを備えている。ローリングダイヤフラム62の内部にはリテーナリング圧力室63が形成されている。このリテーナリング圧力室63はロータリージョイント25を経由して圧力調整装置65に接続されている。この圧力調整装置65からリテーナリング圧力室63に加圧流体(例えば、加圧空気)を供給すると、ローリングダイヤフラム62がピストン61を下方に押し下げ、さらに、ピストン61はリテーナリング40の全体を下方に押し下げる。このようにして、リテーナリング押圧機構60は、リテーナリング40の下面を研磨パッド2の研磨面2aに対して押圧する。さらに、圧力調整装置65によりリテーナリング圧力室63内に負圧を形成することにより、リテーナリング40の全体を上昇させることができる。リテーナリング圧力室63は大気開放機構(図示せず)にも接続されており、リテーナリング圧力室63を大気開放することも可能である。
【0045】
リテーナリング40は、リテーナリング押圧機構60に着脱可能に連結されている。より具体的には、ピストン61は金属などの磁性材から形成されており、ドライブリング40bの上部には複数の磁石70が配置されている。これら磁石70がピストン61を引き付けることにより、リテーナリング40がピストン61に磁力により固定される。ピストン61の磁性材としては、例えば、耐蝕性の磁性ステンレスが使用される。なお、ドライブリング40bを磁性材で形成し、ピストン61に磁石を配置してもよい。
【0046】
リテーナリング40は、連結部材75を介して球面軸受85に連結されている。この球面軸受85は、リテーナリング40の半径方向内側に配置されている。
図4は、リテーナリング40および連結部材75を示す平面図である。
図4に示すように、連結部材75は、トップリング本体10の中心部に配置された軸部76と、この軸部76に固定されたハブ77と、このハブ77からから放射状に延びる複数のスポーク78とを備えている。スポーク78の一方の端部は、ハブ77に固定されており、スポーク78の他方の端部は、リテーナリング40のドライブリング40bに固定されている。ハブ77と、スポーク78と、ドライブリング40bとは一体に形成されている。キャリア43には、複数対の駆動ピン80,80が固定されている。各対の駆動ピン80,80は各スポーク78の両側に配置されており、キャリア43の回転は、駆動ピン80,80を介してリテーナリング40に伝達され、これによりトップリング本体10とリテーナリング40とは一体に回転する。
【0047】
図3に示すように、軸部76は球面軸受85内を縦方向に延びている。
図4に示すように、キャリア43には、スポーク78が収容される複数の放射状の溝43aが形成されており、各スポーク78は各溝43a内で縦方向に移動自在となっている。連結部材75の軸部76は、トップリング本体10の中央部に配置された球面軸受85に縦方向に移動自在に支持されている。このような構成により、連結部材75およびこれに固定されたリテーナリング40は、トップリング本体10に対して縦方向に移動可能となっている。さらに、リテーナリング40は、球面軸受85により傾動可能に支持されている。
【0048】
以下、球面軸受85についてより詳細に説明する。
図5は、球面軸受85および連結部材75の一部の拡大断面図である。
図5に示すように、軸部76は、複数のねじ79によりハブ77に固定されている。軸部76には縦方向に延びる貫通穴88が形成されている。この貫通穴88は軸部76が球面軸受85に対して縦方向に移動する際の空気抜き穴として作用し、これによりリテーナリング40はトップリング本体10に対して縦方向にスムーズに移動可能となっている。
【0049】
球面軸受85は、連結部材75を介してリテーナリング40に連結された中間輪91と、中間輪91を上から摺動自在に支持する外輪92と、中間輪91を下から摺動自在に支持する内輪93とを備えている。中間輪91は、球殻の上半分よりも小さい部分球殻形状を有し、外輪92と内輪93との間に挟まれている。
【0050】
キャリア43の中央部には凹部43bが形成されており、外輪92は凹部43b内に配置されている。外輪92は、その外周部につば92aを有しており、このつば92aを凹部43bの段部にボルト(図示せず)により固定することにより、外輪92がキャリア43に固定されるとともに、中間輪91および内輪93に圧力を掛けることが可能となっている。内輪93は凹部43bの底面上に配置されており、中間輪91の下面と凹部43bの底面との間に隙間が形成されるように、中間輪91を下から支えている。
【0051】
外輪92の内面92b、中間輪91の外面91aおよび内面91b、および内輪93の外面93aは、支点Oを中心とした略半球面から構成されている。中間輪91の外面91aは、外輪92の内面92bに摺動自在に接触し、中間輪91の内面91bは、内輪93の外面93aに摺動自在に接触している。外輪92の内面92b(摺接面)、中間輪91の外面91aおよび内面91b(摺接面)、および内輪93の外面93a(摺接面)は、球面の上半分よりも小さい部分球面形状を有している。このような構成により、中間輪91は、外輪92および内輪93に対して全方向(360°)に傾動可能であり、かつ傾動中心である支点Oは球面軸受85よりも下方に位置する。
【0052】
外輪92、中間輪91、および内輪93には、軸部76が挿入される貫通孔92c,91c,93bがそれぞれ形成されている。外輪92の貫通孔92cと軸部76との間には隙間が形成されており、同様に、内輪93の貫通孔93bと軸部76との間には隙間が形成されている。中間輪91の貫通孔91cは、外輪92および内輪93の貫通孔92c,93bよりも小さな直径を有しており、軸部76は中間輪91に対して縦方向にのみ移動可能となっている。したがって、軸部76に連結されたリテーナリング40は、横方向に移動することは実質的に許容されず、リテーナリング40の横方向(水平方向)の位置は球面軸受85によって固定される。
【0053】
図6(a)は、連結部材75が球面軸受85に対して上下動している様子を示し、
図6(b)および
図6(c)は、連結部材75が中間輪91と共に傾動している様子を示している。
図6(a)乃至
図6(c)に示すように、連結部材75に連結されたリテーナリング40は、中間輪91と一体に支点Oを中心として傾動可能であり、かつ中間輪91に対して上下に移動可能となっている。傾動の中心である支点Oは、リテーナリング40の中心軸線上にある。
【0054】
球面軸受85は、リテーナリング40の上下移動および傾動を許容する一方で、リテーナリング40の横方向の移動(水平方向の移動)を制限する。ウェハの研磨中は、リテーナリング40はウェハと研磨パッド2との摩擦に起因した横方向の力(ウェハの半径方向外側に向かう力)をウェハから受ける。この横方向の力は球面軸受85によって受けられる。このように、球面軸受85は、ウェハの研磨中に、ウェハと研磨パッド2との摩擦に起因してリテーナリング40がウェハから受ける横方向の力(ウェハの半径方向外側に向かう力)を受けつつ、リテーナリング40の横方向の移動を制限する(すなわちリテーナリング40の水平方向の位置を固定する)支持機構として機能する。
【0055】
球面軸受85は、トップリング本体10の内部に設けられ、かつキャリア43の凹部43bに収容されているため、球面軸受85の摺接面からの摩耗粉は、トップリング本体10内に封じ込められ、研磨面2aへ落下することがない。
【0056】
図7は、球面軸受の他の構成例を示す図である。
図5に示す部材と同一のものには同一の番号を付す。
図7に示す球面軸受100は、環状の内輪101と、内輪101の外周面を摺動自在に支持する外輪102とを備えている。内輪101は、連結部材75を介してリテーナリング40に連結されている。外輪102は支持部材103に固定されており、この支持部材103はキャリア43に固定されている。支持部材103はキャリア43の凹部43b内に配置されている。
【0057】
内輪101の外周面は、上部および下部を切り欠いた球面形状を有しており、その球面形状の中心点(支点)O’は、内輪101の中心に位置している。外輪102の内周面は、内輪101の外周面に沿った凹面から構成されており、外輪102は内輪101を摺動自在に支持している。したがって、内輪101は、外輪102に対して全方向(360°)に傾動可能となっている。
【0058】
内輪101の内周面は、軸部76が挿入される貫通孔101aを構成している。軸部76は内輪101に対して縦方向にのみ移動可能となっている。したがって、軸部76に連結されたリテーナリング40は、横方向に移動することは実質的に許容されず、リテーナリング40の横方向(水平方向)の位置は球面軸受100によって固定される。球面軸受85と同様に、球面軸受100は、ウェハの研磨中に、ウェハと研磨パッド2との摩擦に起因してリテーナリング40がウェハから受ける横方向の力(ウェハの半径方向外側に向かう力)を受けつつ、リテーナリング40の横方向の移動を制限する(すなわちリテーナリング40の水平方向の位置を固定する)支持機構として機能する。
【0059】
図8(a)は、連結部材75が球面軸受100に対して上下動している様子を示し、
図8(b)および
図8(c)は、連結部材75が内輪101と共に傾動している様子を示している。連結部材75に連結されたリテーナリング40は、内輪101と一体に支点O’を中心として傾動可能であり、かつ内輪101に対して上下に移動可能となっている。
【0060】
図7に示す球面軸受100は、
図5に示す球面軸受85と同様の機能を有するが、球面軸受100の傾動中心である支点O’は、球面軸受85の支点Oよりも高い位置にある。より具体的には、支点O’は、球面軸受100の内部に位置している。この構成でも、球面軸受100は、ウェハと研磨パッド2との摩擦力を受けたリテーナリング40をスムーズかつ積極的に傾動させることが可能である。球面軸受100は、球面軸受85よりも支点の高さが高いために、ウェハと研磨パッド2との摩擦力によってリテーナリング40を支点周りに傾けるモーメントが大きくなり、研磨中のリテーナリング40を大きく傾かせることができる。したがって、球面軸受100を採用することにより、リテーナリング40の傾きの制御幅を広くすることができ、様々な研磨プロファイルへ調整が可能となる場合がある。
【0061】
図3に示すように、リテーナリング40は、トップリング本体10から半径方向外側に張り出した上面を有している。このリテーナリング40の上方には、リテーナリング40の一部に局所荷重を加える局所荷重付与機構110が配置されている。
図3は局所荷重付与機構110の1つの実施形態を示している。この局所荷重付与機構110は、トップリングヘッド16に固定されている。すなわち、研磨中のリテーナリング40はその軸心回りに回転するが、局所荷重付与機構110はリテーナリング40とは一体に回転せず、その位置は固定である。
【0062】
リテーナリング40の外周部上面には、荷重伝達部材111が固定されている。この荷重伝達部材111の上部には、ガイドリング112が固定されている。局所荷重付与機構110は、ガイドリング112および荷重伝達部材111を介してリテーナリング40の一部に下向きの荷重を与える。荷重伝達部材111はリング形状でもよいし、ドライブリング40bの円周方向に沿って設置された複数の円柱でもよい。局所荷重付与機構110の下向きの荷重は、ガイドリング112から荷重伝達部材111を通じてリテーナリング40に伝達される。局所荷重付与機構110の動作は、
図1に示す研磨制御部9によって制御される。なお、荷重伝達部材111およびガイドリング112を設けずに、局所荷重付与機構110がリテーナリング40に直接下向きの局所荷重を与えてもよい。
【0063】
トップリング1は自身の軸心を中心として回転するが、局所荷重付与機構110はトップリングヘッド16に固定されるためトップリング1と共には回転しない。すなわち、ウェハWの研磨中、トップリング1およびウェハWは回転している一方、局所荷重付与機構110は所定の位置に静止している。
図3では1つの局所荷重付与機構110が示されているが、トップリング1の周方向に沿って複数の局所荷重付与機構110が設置されてもよい。複数の局所荷重付与機構110とトップリング1の軸心との半径方向の距離は互いに同じであってもよいし、異なってもよい。トップリング1の周方向における局所荷重付与機構110の設置位置は可変であってもよい。
【0064】
図3に示される実施形態では、局所荷重付与機構110は、エアシリンダ114と、エアシリンダ114のピストン114aに連結された車輪115とから基本的に構成されている。このエアシリンダ114は、トップリングヘッド16に固定されている。車輪115はピストン114aの先端に取り付けられており、エアシリンダ114によって車輪115を下降させたときに車輪115がガイドリング112に荷重を与えるように構成されている。
【0065】
車輪115はエアシリンダ114により上下動可能に構成されている。エアシリンダ114は、トップリング1が下降しリテーナリング40が研磨面2aに当接している際には、車輪115を下降させてリテーナリング40の一部に下向きの力を局所的に与え、トップリング1が上昇する前に車輪115を上昇させてガイドリング112から離間させる。エアシリンダ114に供給する気体の圧力を変更することにより、車輪115がリテーナリング40へ与える荷重を任意に変更することができる。車輪115はその中心に配置された回転しない車輪軸116に回転自在に支持されており、車輪軸116周りに滑らかに回転可能である。車輪115は低摩擦材料で形成され、車輪軸116と車輪115との間にはボールベアリングなどの軸受を配置することも可能である。
【0066】
ウェハWの研磨中、ガイドリング112はトップリング1の回転軸周りに回転するが、局所荷重付与機構110は回転しない。このために、ガイドリング112は局所荷重付与機構110に対して相対的に水平方向に移動する。ガイドリング112に車輪115を押し付けることによりリテーナリング40には研磨面2aに対して垂直方向に下向きの局所荷重(力)を与えることが可能である。車輪115は低摩擦材料で形成されているためにガイドリング112との間に働く摩擦力を極めて小さくすることができる。これにより摩擦力に起因するリテーナリング40の姿勢変化への影響を極めて小さく抑えることが可能となる。低摩擦材料には、ナイロン、PTFE(四フッ化エチレン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、またPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の樹脂材料を用いてもよい。あるいは、炭素繊維などの繊維および固体潤滑材を添加した樹脂材料を用いてもよい。
【0067】
図9に示すように、リテーナリング40に円筒状の回転カバー120を設置し、この回転カバー120を囲むように円筒状の静止カバー121を設置することが好ましい。回転カバー120はリテーナリング40の外周面に固定され、静止カバー121はトップリングヘッド16に固定されている。回転カバー120と静止カバー121との間にはシール材122が配置されており、トップリング1の上方の空間と研磨面2aがある研磨空間との間を隔離している。これらのカバー120,121およびシール材122により、研磨液などの飛沫が車輪115などの摺動部に付着することや、車輪115などからの発塵が研磨面2aなどへ落下することを防ぐことができる。シール材122を用いる代わりに、カバー120,121が半径方向に重なり合ったラビリンス構造を採用することで、異物の研磨面2aへの落下や飛沫の研磨空間への浸入を防いでもよい。
【0068】
リテーナリング40はトップリング1の回転軸線上に設置された球面軸受85(または100)により滑らかに傾動可能、かつトップリング本体10と独立して上下動可能に支持される。研磨中にウェハWの摩擦力を受けるリテーナリング40は、その傾動支点を中心に傾いた状態となっている。すなわち、研磨面2a上のリテーナリング40は、ウェハWの上流側(研磨面の流入側)では研磨パッド2に沈み込み、ウェハWの下流側(研磨面の流出側)では浮き上がる方向に傾いた状態となっている。このように傾いた状態のリテーナリング40に対し、局所荷重付与機構110により局所的な荷重を与えることによりリテーナリング40の傾きを制御することが可能となる。例えば、ウェハWの下流側にあるリテーナリング40の部位に局所的な荷重を加えると、研磨中のリテーナリング40の傾きを小さくすることが可能である。
【0069】
このようにリテーナリング40の傾きを制御することにより、リテーナリング40の面圧分布、研磨パッド2の変形状態、摩擦力によりリテーナリング40に押し付けられるウェハWの変形状態、摩擦力を受けるリテーナリング40の変形状態などが変化し、ウェハエッジ部の研磨プロファイルを変化させることが可能となる。ここで、ウェハWのエッジ部とは、ウェハWの最外周端に位置する幅3mm〜10mmの領域である。
【0070】
また、リテーナリング40の傾きが制御されることにより、リテーナリング40と研磨面2aとの間からウェハWの下面に供給される研磨液の分布も変えられる。これにより、ウェハW全面の研磨速度や研磨プロファイルが調整可能となる。リテーナリング40の押圧は局所荷重付与機構110のみで行ってもよいし、リテーナリング押圧機構60によりリテーナリング40を均一に押圧し、更に局所荷重付与機構110により付加的な局所荷重をリテーナリング40に加えてもよい。
【0071】
局所荷重付与機構110を使用した研磨プロファイルの調整の一例について説明する。以下の例では、ウェハは次の第1の研磨条件および第2の研磨条件で研磨される。第1の研磨条件は、局所荷重付与機構110を使用しないで、リテーナリング押圧機構60のみでリテーナリング40を面圧P1で研磨パッド2に対して押し付けるというものである。第2の研磨条件は、リテーナリング押圧機構60でリテーナリング40を面圧P1で研磨パッド2に対して押し付け、さらに局所荷重付与機構110でリテーナリング40を面圧P2で研磨パッド2に対して押し付けるというものである。
【0072】
第2の研磨条件下では局所荷重がリテーナリング40に与えられるので、第1の研磨条件下での研磨に比べて、リテーナリング40の姿勢が変更され、特にウェハエッジ部の研磨プロファイルが変更される。第2の研磨条件下では、研磨面2aに作用するリテーナリング40の総面圧はP1+P2であり、第1の研磨条件での面圧P1よりも大きい。第2の研磨条件において、リテーナリング押圧機構60による面圧をP1からP1−P2に変更すると、研磨面2aに作用するリテーナリング40の総面圧はP1となる。この総面圧は、第1の研磨条件におけるリテーナリング40の面圧P1と同じである。したがって、この場合は、第1の研磨条件と同じリテーナリング40の面圧を維持しつつ、リテーナリング40の姿勢を変えた条件下で研磨プロファイルを得ることができる。通常、ウェハのエッジ部の研磨プロファイルを調整する場合には、第2の研磨条件のリテーナリング押圧機構60による面圧はP1−2.5×P2〜P1−0.5×P2の範囲であることが好ましく、より好ましくはP1−1.8×P2〜P1−1.2×P2の範囲である。
【0073】
リテーナリング40は基板保持面45aおよびこれに保持されたウェハWに対して相対的に傾動可能および上下動可能であり、かつウェハWとは独立して研磨パッド2を押圧可能となっている。したがって、局所荷重付与機構110によりリテーナリング40の一部を下方に押圧しても、ウェハWは傾かず、かつ基板保持面45aからウェハWへ加わる圧力は変化しない。したがって、局所荷重付与機構110は、リテーナリング40の姿勢を、ウェハWの姿勢およびウェハWに作用する圧力とは独立に制御することができる。すなわち、基板保持面45aからウェハWに加えられる圧力は一定に保ったまま、リテーナリング40の姿勢制御により研磨プロファイルの調整を行うことが可能となる。
【0074】
リテーナリング40は、トップリング1に保持されたウェハWとともに一体に回転しながら、研磨パッド2に押圧される。このように研磨中はリテーナリング40およびウェハWが回転しているので、研磨パッド2の研磨面2aがリテーナリング40およびウェハWに接触する領域は、研磨テーブル3が回転するたびに少しずつ変わる。これにより、研磨パッド2上の特定の領域がウェハWの特定の領域にのみ接触することが回避され、結果としてウェハWの表面を均一に研磨することができる。同様の理由から、リテーナリング40の偏摩耗を防止することができる。
【0075】
リテーナリング40の内径はウェハWの外径よりも大きく形成される。このためトップリング1の回転に伴い、遊星運動によりリテーナリング40とウェハWとの周方向の相対位置は少しずつ変化する。これによりリテーナリング40の平面度の影響をウェハWの特定の周方向位置に与えることなく平均化することができ、結果としてウェハWの表面、特に周方向にわたって均一に研磨することが出来る。
【0076】
図10は局所荷重付与機構110の他の実施形態を示している。特に説明しない本実施形態の構成は、
図3に示す実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、局所荷重付与機構110はリテーナリング40の一部に上向きの局所荷重(力)を研磨面2aに対して垂直方向に与えるように構成されている。
図10に示すように、荷重伝達部材111に支持されているガイドリング112は、トップリング1の半径方向内側に張り出した環状突出部112aを有している。局所荷重付与機構110は、環状突出部112aの下面に接触する車輪115と、この車輪115を上昇させるエアシリンダ114とを有している。
【0077】
車輪115は車輪軸116に回転自在に支持され、車輪軸116はエアシリンダ114のピストン114aに取り付けられている。車輪115は、車輪軸116を介してエアシリンダ114に連結されている。エアシリンダ114は、車輪115を上昇させて環状突出部112aを下から押し上げることにより、研磨面2aに対して垂直な上向きの局所荷重をリテーナリング40の一部に付与する。この実施形態に係る局所荷重付与機構110でも、
図3に示す局所荷重付与機構110と同等の効果を発揮することができる。
【0078】
図10に示される局所荷重付与機構110を使用した研磨プロファイルの調整の一例について説明する。以下の例では、ウェハは次の第1の研磨条件および第2の研磨条件で研磨される。第1の研磨条件は、局所荷重付与機構110を使用しないで、リテーナリング押圧機構60のみでリテーナリング40を面圧P1で研磨パッド2に対して押し付けるというものである。第2の研磨条件は、リテーナリング押圧機構60でリテーナリング40を面圧P1で研磨パッド2に対して押し付け、さらに局所荷重付与機構110でリテーナリング40の研磨パッドに対する面圧がP2だけ減少するように上向きの局所荷重を与えるというものである。
【0079】
第2の研磨条件下では局所荷重がリテーナリング40に与えられるので、第1の研磨条件下での研磨に比べて、リテーナリング40の姿勢が変更され、特にウェハエッジ部の研磨プロファイルが変更される。第2の研磨条件下では、研磨面2aに作用するリテーナリング40の総面圧はP1−P2であり、第1の研磨条件での面圧P1よりも小さい。第2の研磨条件において、リテーナリング押圧機構60による面圧をP1からP1+P2に変更すると、研磨面2aに作用するリテーナリング40の総面圧はP1となる。この総面圧は、第1の研磨条件におけるリテーナリング40の面圧P1と同じである。したがって、この場合は、第1の研磨条件と同じリテーナリング40の面圧を維持しつつ、リテーナリング40の姿勢を変えた条件下で研磨プロファイルを得ることができる。通常、ウェハのエッジ部の研磨プロファイルを調整する場合には、第2の研磨条件のリテーナリング押圧機構60による面圧はP1+0.5×P2〜P1+2.5×P2の範囲であることが好ましく、より好ましくはP1+1.2×P2〜P1+1.8×P2の範囲である。
【0080】
図11は局所荷重付与機構110の他の実施形態を示している。
図11に示すトップリング1の構成は、
図3に示すトップリング1の構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、
図3に示されるガイドリング112の代わりに永久磁石130が設けられ、車輪115の代わりに電磁石131が設けられている。永久磁石130は、リテーナリング40に固定された荷重伝達部材111に支持されている。電磁石131は、リテーナリング40の上方に設置された永久磁石130に対向するように配置される。局所荷重付与機構110は、これらの電磁石131と永久磁石130との間に作用する磁力によりリテーナリング40の一部に上下方向の局所荷重を与えることが可能となっている。
【0081】
永久磁石130と同じ磁極の磁力を電磁石131に発生させた場合にはリテーナリング40に対し下向きの局所的な荷重(反発力)を与えることができ、永久磁石130と逆の磁極の磁力を電磁石131に発生させた場合にはリテーナリング40に対し上向きの局所的な荷重(引力)を与えることが可能である。このように、電磁石131は、下向きの荷重および上向きの荷重を選択的にリテーナリング40の一部に与えることができる。リテーナリング40に加えられる力を調整することによりリテーナリング40の姿勢を変更することが可能であり、ウェハWの研磨プロファイル、特にウェハエッジ部の研磨プロファイルを調整することが可能となる。なお、本実施形態ではリテーナリング40の上方に永久磁石130を設置したが、永久磁石130の代わりに磁性体を設置し、電磁石131により磁性体を引き付けることによりリテーナリング40へ上向きの局所的な荷重(力)を与えることも可能である。
【0082】
電磁石131はトップリングヘッド16に連結された昇降機構133に支持されている。昇降機構133にはエアシリンダ、またはボールねじとサーボモータを用いた機構などが使用される。以下説明するように電磁石131の下降位置を精密に制御する場合には、ボールねじとサーボモータを用いた機構を用いるのが好ましい。
【0083】
リテーナリング40が研磨面2aに当接している状態で、昇降機構133により電磁石131を永久磁石130に近接した位置まで下降させ、電磁石131を起動しリテーナリング40の一部に対して局所的な力を与える。リテーナリング40に加える力は、電磁石131に発生させる磁力、および/または永久磁石130と電磁石131との距離を変えることにより変更することが可能である。永久磁石130と電磁石131との距離と、電磁石131に入力される電流と、入力電流および距離に対応する磁力との関係を予め取得しておくことにより、電磁石131により発生させる磁力の大きさを、電磁石131への入力電流と、永久磁石130と電磁石131との距離から決定することができる。
【0084】
本実施形態のように局所荷重付与機構110に磁力を用いる場合、磁気が他の場所に影響を及ぼすのを避けるために、トップリング本体10などトップリング1の各部位に磁気シールド材を使用したり、トップリング1の各部位を磁気シールド材でコーティングしたりしてもよい。磁気が及ぼす影響としては、ウェハの微細な電気配線に大きな誘導電流が流れ、半導体デバイスが破壊されてしまうこと、研磨面側から金属膜の膜厚信号を取得している渦電流センサの精度に影響を及ぼすことなどが挙げられる。
【0085】
通常、ウェハWを研磨するごとにダイヤモンド粒子などを使用したドレッサで研磨パッド2の研磨面2aのコンディショニングが行われる。したがってウェハWを研磨するごとに研磨パッド2が減耗していき、電磁石131と永久磁石130との距離は徐々に大きくなっていく。リテーナリング40も、ウェハWの研磨中に研磨パッド2に摺接されるため、リテーナリング40のパッド接触面は徐々に摩耗していく。この場合にも電磁石131と永久磁石130との距離は徐々に大きくなっていく。リテーナリング40に加えられる局所荷重は、永久磁石130と電磁石131との隙間に大きく依存するため、消耗品である研磨パッド2およびリテーナリング40の高さ変化にかかわらずこの隙間を一定に保つことは非常に重要である。例えば、研磨パッド2の高さがΔHだけ低くなった場合は、昇降機構133により電磁石131の位置はΔHだけ下げられる。特開2006−128582号公報および特開2006−255851公報に開示される研磨パッドやリテーナリングの減耗量測定手法を用いて、永久磁石130と電磁石131との隙間の変化を求めてもよい。
【0086】
研磨パッド2が摩耗するに従って、ウェハWの研磨時のトップリング1の高さ(以下、研磨位置という)を変更する必要がある。このトップリング1の研磨位置は、上下動機構27によって調整することが可能である。トップリング1の研磨位置の変更に応じて電磁石131の下降位置が調整される。
【0087】
本実施形態では、トップリングヘッド16と昇降機構133との間にロードセル135が設置されている。このロードセル135は、リテーナリング40に加えられる局所荷重に従って変化する力を計測可能となっている。局所荷重に従って変化する力とは、磁石130,131間の反発力からロードセル135に吊り下げられた昇降機構133や電磁石131などの機器の重力を引いた力である。機器の重さは予め計測される。ロードセル135によって測定される力は、リテーナリング40に加えられる局所荷重と同じ変化率で変化する。ロードセル135の計測値に機器の重さを加算することにより、研磨中実際に局所荷重付与機構110からリテーナリング40に加えられている荷重を決定することができる。
【0088】
計測結果が所望の荷重と異なる場合には、電磁石131に入力する電流を制御して磁力を調整することが可能である。永久磁石130の磁力は経時変化する場合も考えられる。磁力変化を補正するために、研磨を行っていない間に電磁石131を作動させ、その時のリテーナリング40への荷重を算出し、設定された初期荷重と現在の荷重との差をなくすための電磁石131への入力電流を補正し、それ以降のウェハWの研磨時に補正した電流値を使用することも可能である。
図3にはロードセルは示されていないが、
図3でも同様にトップリングヘッド16とエアシリンダ114との間にロードセルを設置し、実際の荷重を算出し、荷重の初期値からの変化量に基づいてエアシリンダ114の押圧力を補正することも可能である。
【0089】
図11に示す実施形態では、局所荷重付与機構110は、非接触でリテーナリング40に力を与えることが可能であるため、
図3のガイドリング112と車輪115のような摺動要素が存在しない。したがって、
図9に示すようなトップリング1を覆うカバー120,121が不要となり、トップリング1の消耗品交換などのメンテナンスが非常に容易となる。永久磁石130にはネオジム磁石などが用いられる。永久磁石130として、一体で形成されたリング状の永久磁石でもよいし、分割された複数の永久磁石を整列してリング状に形成してもよいし、リング状の部材に複数の永久磁石を埋設してもよい。永久磁石130の表面はコーティングやめっきなどにより防食されていることが好ましい。コーティングやめっきの代わりに磁性ステンレスなどの耐食性の磁性体で永久磁石130を覆ってもよい。
【0090】
図12は
図11の電磁石131の代わりに永久磁石140を設置した実施形態を示している。永久磁石130,140の間に反発力が発生するように、永久磁石140は、荷重伝達部材111に支持された永久磁石130に対向して配置される。この実施形態では、昇降機構133にエアシリンダが用いられている。エアシリンダ133は、2つの永久磁石130,140の隙間が極小となったときの最大反発力よりも小さい力で永久磁石140を下降させる。これは、上側の永久磁石140が下側の永久磁石130に接触してしまうのを避けるためである。
【0091】
2つの永久磁石130,140間の隙間が大きい場合には、永久磁石間の反発力よりもエアシリンダ133の下向きの力が大きいために上側の永久磁石140は下降する。2つの永久磁石130,140間の隙間が小さくなり、その反発力がエアシリンダ133の下向きの力と釣り合ったときに永久磁石140の下降が停止する。このとき、エアシリンダ133の下向きの力に相当する荷重がリテーナリング40に加えられることとなる。したがって、エアシリンダ133に入力する気体の圧力を変更することによりリテーナリング40へ加える荷重を調整することが可能となる。
【0092】
図11および
図12では磁力を使用した局所荷重付与機構110の実施形態を示したが、局所荷重付与機構110は上述の例に限られるものではなく、例えばリテーナリング40の上面側に電磁石を設置することや、電磁石とエアシリンダの組み合わせで局所荷重付与機構110を構成することも可能である。
【0093】
図13はトップリング1の他の実施形態を示している。局所荷重付与機構110として、
図3に示すエアシリンダ114と車輪115が使用されている。これに代えて、
図11および
図12に示す磁力を使用した局所荷重付与機構110を用いることも可能である。本実施形態の特に説明しない構成は、
図3に示す構成と同様である。
【0094】
トップリング本体10は、トップリングベース150と、弾性膜45を保持するキャリア43とから基本的に構成されている。弾性膜45の下面は、ウェハWを保持する基板保持面45aを構成する。球面軸受155は、トップリングベース150と駆動フランジ158との間に設けられており、トップリングベース150は駆動フランジ158に対して自由に傾動可能となっている。球面軸受155は、セラミックなどの硬質のボールから構成されている。
【0095】
リテーナリング40はトップリングベース150に固定されており、リテーナリング40はトップリングベース150と一体に傾動可能となっている。駆動フランジ158はトップリングシャフト11の下端に固定されており、トップリングシャフト11とともに駆動フランジ158が回転するようになっている。駆動フランジ158の回転は、トップリングベース150に固定された複数のトルク伝達ピン(図示せず)を介してトップリングベース150に伝達される。
【0096】
キャリア43は、トップリングベース150から分離しており、弾性膜160を介してトップリングベース150に連結されている。キャリア43は、トップリングベース150に対して上下動可能であり、かつ傾動可能となっている。キャリア43、トップリングベース150、および弾性膜160によって圧力室161が形成されており、この圧力室161に圧力調整装置65(
図3参照)から加圧流体を供給することによって、キャリア43、弾性膜45、およびウェハWを下降させることができ、さらに圧力調整装置65により圧力室161に負圧を形成することによって、キャリア43、弾性膜45、およびウェハWを上昇させることができる。
【0097】
トップリングベース150およびリテーナリング40は、球面軸受155により駆動フランジ158に対して全方向(360°)に傾動可能となっている。この球面軸受155の傾動中心は、リテーナリング40の中心軸線上にある。駆動フランジ158およびトップリングベース150は、ステンレス鋼やアルミニウムなどの金属またはセラミックなどの比較的剛性の高い材料で形成されていることが望ましい。
【0098】
トップリングシャフト11の下向きの荷重およびトルクは、駆動フランジ158を通じてトップリングベース150に伝達される。すなわち、トップリングシャフト11の下向きの荷重は、駆動フランジ158および球面軸受155を介してトップリングベース150に伝達され、トップリングシャフト11のトルクは、駆動フランジ158およびトルク伝達ピン(図示せず)を介してトップリングベース150に伝達される。本実施形態では、
図3に示すリテーナリング押圧機構60は設けられていない。したがって、リテーナリング40は、トップリングベース150と一体に傾動し、回転し、かつ上下動する。
【0099】
局所荷重付与機構110は、リテーナリング40およびトップリングベース150の上方に配置されている。局所荷重付与機構110は、トップリングベース150を介してリテーナリング40の一部に下向きの局所荷重を与える。リテーナリング40は、弾性膜45の基板保持面45aに保持されたウェハWと一体に回転するが、基板保持面45aとは独立して傾動することが可能である。したがって、局所荷重付与機構110によりリテーナリング40の一部を下方に押圧しても、基板保持面45aに保持されたウェハWの姿勢は変化しない。
【0100】
ウェハWの研磨中、弾性膜45とキャリア43との間に形成される圧力室、すなわち、センター室50、リプル室51、アウター室52、およびエッジ室53には、加圧流体が供給される。したがって、トップリング本体10は、これら圧力室50〜53から上向きの反力を受ける。リテーナリング40が研磨パッド2に与える荷重は、駆動フランジ158を通じてトップリングベース150に加えられる下向きの荷重からこの上向きの反力を引いた荷重となる。上述した上下動機構27(
図2参照)からトップリングシャフト11に与えられる下向きの荷重を変更することにより、リテーナリング40の研磨パッド2に対する荷重を変更することが可能である。この実施形態では、上下動機構27として、ボールねじとサーボモータの組み合わせに代えて、エアシリンダを用いてもよい。
【0101】
図13に示すトップリング1と、
図11または
図12に示す磁力を用いた局所荷重付与機構110とを組み合わせた場合では、研磨パッド2および/またはリテーナリング40の摩耗に起因する永久磁石130と電磁石131との隙間の変化は、トップリング1の高さの測定値から求めることができる。具体的には、トップリング1の高さの初期の測定値と現在の測定値との差分から、永久磁石130と電磁石131との隙間の変化を決定することができる。
図1に示すように、トップリングヘッド16には、トップリング高さセンサ39が設けられている。このトップリング高さセンサ39は、トップリング1と一体に上下動するブリッジ28の位置からトップリング1の高さを測定する。
【0102】
先述の実施形態と同様に、研磨中にリテーナリング40にかかる横方向の力(ウェハWと研磨パッド2との摩擦力)は、球面軸受155により受けられる。球面軸受155を用いた本実施形態によれば、研磨面2aに対するトップリングシャフト11の垂直度にわずかなずれがあった場合でも、トップリングベース150は球面軸受155により傾動して研磨面2aに追従する。さらに、研磨時に生じるウェハWと研磨面2aとの摩擦力を受けて、トップリングベース150およびリテーナリング40はスムーズに傾く。トップリングベース150は金属やセラミックなどの比較的剛性の高い材料で形成されるので、トップリングベース150の変形の影響を小さく抑え、球面軸受155によりトップリングベース150をスムーズに傾動させることが可能である。
【0103】
キャリア43は、トップリングベース150から分離しており、弾性膜160を介してトップリングベース150に連結されている、いわゆるフローティングされた状態となっている。上述のように構成されたトップリング1によれば、リテーナリング40は基板保持面45aおよびこれに保持されたウェハWと独立して傾動可能であり、かつ独立して研磨パッド2を押圧可能となっている。したがって、局所荷重付与機構110によりリテーナリング40の一部を下方に押圧しても、ウェハWは傾かず、かつ弾性膜45の基板保持面45aからウェハWへ加わる圧力は変化しない。したがって、局所荷重付与機構110は、リテーナリング40の姿勢を、ウェハWの姿勢およびウェハWに作用する圧力とは独立に制御することができる。すなわち、基板保持面45aからウェハWに加えられる圧力は一定に保ったまま、リテーナリング40の姿勢制御により研磨プロファイルの調整を行うことが可能となる。
【0104】
リテーナリング40は、トップリング1に保持されたウェハWとともに一体に回転しながら、研磨パッド2に押圧される。このように研磨中はリテーナリング40およびウェハWが回転しているので、研磨パッド2の研磨面2aがリテーナリング40およびウェハWに接触する領域は、研磨テーブル3が回転するたびに少しずつ変わる。これにより、研磨パッド2上の特定の領域がウェハWの特定の領域にのみ接触することが回避され、結果としてウェハWの表面を均一に研磨することができる。同様の理由から、リテーナリング40の偏摩耗を防止することができる。
【0105】
リテーナリング40の内径はウェハWの外径よりも大きく形成される。このためトップリング1の回転に伴い、遊星運動によりリテーナリング40とウェハWとの周方向の相対位置は少しずつ変化する。これによりリテーナリング40の平面度の影響をウェハWの特定の周方向位置に与えることなく平均化することができ、結果としてウェハWの表面、特に周方向にわたって均一に研磨することが出来る。
【0106】
図14は、研磨面2aの上方から見た位置関係を示した図である。ウェハWの中心と研磨面2aの中心を結んだ線を仮想線VLと定義すると、研磨面2aは、その回転方向に関して仮想線VLの上流側と、仮想線VLの下流側とに分けることができる。仮想線VLの上流側および仮想線VLの下流側は、言い換えれば、研磨面2aの移動方向に関してウェハWの上流側および下流側である。
図14では、回転方式の研磨面について説明しているが、ベルト方式などのウェハW面内で研磨面の速度が一定となるような研磨装置ではより容易に上流側および下流側を定義可能である。
【0107】
図14に示す円Sは、ウェハWの中心を通る研磨面2aの回転軌跡を表している。円Sのウェハ中心での接線Tとウェハ円との2つの交点のうち、上流側の交点を角度0度とし、下流側の交点を角度180度とする。仮想線VLとウェハ円との2つの交点のうち研磨面中心側の交点を角度270度、研磨面外周側の交点を角度90度とする。ここで、ウェハ円とは、ウェハWの外周縁である。
【0108】
研磨中、ウェハWの摩擦力を受けるリテーナリング40は、下流側、すなわち角度180度付近で浮き上がった状態となっている。逆に、上流側、すなわち角度0度付近ではリテーナリング40は研磨パッド2に沈み込んだ状態となっている。したがって、リテーナリング40の下流側部分に局所荷重付与機構110から下向きの局所的な荷重を加えた場合にリテーナリング40の姿勢を変える効果が大きく、研磨プロファイルを効果的に制御することが可能である。また、研磨中は、ウェハWは研磨面2aとの摩擦力を受けてリテーナリング40の内周面に押し付けられた状態となっているので、下流側においてリテーナリング40とウェハWとの隙間が最も小さくなっている。したがって、局所荷重付与機構110は、下流側でリテーナリング40への下向きの局所荷重を増加させることにより、パッドリバウンドの影響を顕著にウェハWに与えられる。これとは逆に、局所荷重付与機構110から上向きの局所荷重をリテーナリング40に与える場合には、上流側部分で上向きの局所荷重を与えるとリテーナリング40の姿勢を変える効果が大きく、研磨プロファイルを効果的に制御することが可能である。
【0109】
ウェハWと研磨面2aとの摩擦力が大きいプロセス条件においては、下流側でのリテーナリング40の浮き上がりが大きくなり、ウェハWがトップリング1から滑り出てしまうことがある。このような問題も、リテーナリング40の下流側部分に局所的な下向き荷重を加えることにより、下流側でのリテーナリング40の浮き上がりを減少させることで解決することができる。したがって、安全にウェハWを研磨することが可能となる。さらに、従来は適用が困難であったウェハWへ高荷重を加える条件や、研磨パッド2、研磨液、ウェハWなどの組み合わせにより高摩擦となるような条件でも安全に研磨可能となる。
【0110】
研磨液は研磨面2aの回転に伴い、上流側からトップリング1内へ流入する。したがって、リテーナリング40の下流側部分を押圧して上流側部分の研磨パッド2への沈み込み量を減少させると、研磨液のトップリング1内への流入が容易になり、効果的に研磨液を使用して研磨することが可能となる。これにより研磨レートが上昇し、研磨液の使用量を削減することが可能となり、さらには研磨温度の上昇を抑えることが可能となる。しかも、研磨液がより豊富な状態でウェハWが研磨されるのでスクラッチなどの研磨後ウェハWの欠陥を減らすことが可能となり、さらには研磨後ウェハWの表面段差を減少させることが可能となる。したがって、多くの場合には下向きの局所荷重を与える局所荷重付与機構110は下流側に設置するのが好ましく、より好ましくは180度±60度の範囲に設置する。
【0111】
しかし、上述したように、近年では半導体デバイスの種類、消耗材の種類が飛躍的に増加しており、製品の歩留まり向上のために様々な形状の研磨プロファイルの制御性が必要となっている。リテーナリング40への局所荷重の位置を変更すると、研磨プロファイルの変化の仕方が変わる。したがって、研磨プロファイルは、局所荷重付与機構110の設置位置により様々に変えることが可能である。特定のプロセスでは270度±60度や90度±60度、または0度±60度がより好ましい設置位置に選択されることもある。
【0112】
このような様々な研磨プロファイルに対する要求に対応するために、局所荷重付与機構110を移動可能に設置してもよい。
図15に示す実施形態では、トップリングヘッド16に設置された環状の移動機構170により、局所荷重付与機構110はトップリング1の回転中心周りに360度移動可能となっている。したがって、移動機構170により、局所荷重付与機構110の位置を所望の場所に変更することが可能である。移動機構170としては、例えば曲線運動が可能なモーションガイド機構、および局所荷重付与機構110を駆動するサーボモータなどを使用して構成されることが可能である。ウェハの研磨レシピにしたがって局所荷重付与機構110の位置を設定し、変更することも可能である。
【0113】
図15に示す移動機構170に代えて、ねじなどの締結具によりトップリングヘッド16上の所定の複数の箇所から選択された所望の箇所に局所荷重付与機構110を取り付けてもよい。この構成では、局所荷重付与機構110は、締結具によりトップリングヘッド16に着脱可能に取り付けられる。移動機構170および締結具を用いた設置位置を変更可能とする構成は、
図11乃至
図13に示す実施形態にも適用可能である。
【0114】
複数の局所荷重付与機構110をトップリング1の周方向に沿って設置することも可能である。例えば、局所荷重付与機構110を下流側(角度180度)および研磨面中心側(角度270度)の2箇所に設置してもよい。この場合、研磨面2aに平行な互いに直交する2軸周りにリテーナリング40の姿勢制御が可能となる。したがって、局所荷重付与機構110が1つの場合に比べて、研磨プロファイル制御の適用可能範囲が飛躍的に広がる。
【0115】
磁力の反発力および引力の組み合わせを使用した局所荷重付与機構110は、研磨プロファイル制御の適用可能範囲が広いという利点がある。エアシリンダによる下向き荷重や、磁石の反発力のみを使用する場合には、少なくとも3つの局所荷重付与機構110を設置するのが好ましい。エアシリンダを使用した局所荷重付与機構110を下流側(角度180度)および研磨面中心側(角度270度)の2箇所に設置した場合、研磨面中心側の局所荷重付与機構110によりリテーナリング40が研磨パッド2の中心側領域に沈み込むようにリテーナリング40の姿勢を変更可能であるが、研磨パッド2の外周側領域に沈み込むようにリテーナリング40に局所荷重を与えることは出来ない。この様な場合には、下流側(角度180度)および研磨面中心側(角度270度)の2箇所に加えて、研磨面外周側(角度90度)にも局所荷重付与機構110を設置することが好ましい。また、局所荷重付与機構110を120度ピッチで3箇所に設置してもよい。複数の局所荷重付与機構110を
図15の移動機構170と組み合わせて設置位置を変更可能とすることも可能である。
【0116】
局所荷重付与機構110の設置位置およびリテーナリング40に対する局所荷重を調整することにより、様々な研磨プロファイルを実現することが可能となり、非常に多くの種類の半導体デバイスの歩留まりを向上させることが可能となる。
【0117】
図16に示される実施形態においては、局所荷重付与機構110に加えて、リテーナリング高さセンサ175がトップリングヘッド16に固定されている。このリテーナリング高さセンサ175によりリテーナリング40の鉛直方向の変位(すなわち、リテーナリング40の高さ)が計測可能となっている。
図16には図示されていないが、局所荷重付与機構110は、上述したエアシリンダを用いるタイプ、電磁石と永久磁石との組み合わせを用いるタイプ、永久磁石同士の組み合わせを用いるタイプ、およびこれら以外のタイプのいずれでもよい。
【0118】
ガイドリング112のセンサターゲット面は、局所荷重付与機構110が局所荷重を与える箇所と共通でもよいし、別の箇所でもよい。センサターゲット面は通常は平坦に形成しておく。リテーナリング高さセンサ175としては接触式の変位計が使用可能ではあるが、レーザ変位計など非接触でリテーナリング40の高さを計測する非接触式変位センサを使用することが望ましい。これは、接触式変位計を使用した場合、センサ測定子とガイドリング112との接触部からの発塵が研磨面2aに落下し、研磨ウェハの欠陥につながる可能性があること、およびセンサ測定子がガイドリング112に接触し、リテーナリング40に下向きの荷重を与えることによりリテーナリング40の姿勢が変化してしまう可能性があるためである。
【0119】
上述した
図11および
図12に示す実施形態では、研磨パッド2および/またはリテーナリング40の減耗量は特開2006−128582号公報および特開2006−255851号公報に開示される研磨パッドやリテーナリングの減耗量測定手法を用いて測定される。研磨中のリテーナリング40の高さの変化量は、測定された各減耗量から研磨制御部9によって算出される。研磨制御部9は、リテーナリング40の高さの変化量を局所荷重付与機構110の昇降機構133へフィードバックして、磁石間の隙間を一定に保つようにしている。
図16に示すリテーナリング高さセンサ175を設ける場合には、研磨制御部9はセンサ175の測定値から求められるリテーナリング40の高さ変化量を昇降機構133へフィードバックしてもよい。さらに、リテーナリング40の高さの測定結果に基づいて、研磨中または次のウェハの研磨で適用されるリテーナリング40に対する局所荷重の大きさおよび/または局所荷重の位置(すなわち局所荷重付与機構110の位置)を変更してもよい。次のウェハの研磨で適用される局所荷重の位置を変更する場合には、次のウェハの研磨前に事前に局所荷重の位置を変更することが好ましい。複数の局所荷重付与機構110が設置されている場合には、動作する局所荷重付与機構110を変更することで局所荷重の位置を変更することができる。また、複数の局所荷重付与機構110を動作させ、それぞれの局所荷重付与機構110による局所荷重の大きさの比を変更することによっても、局所荷重付与機構110の位置を変更するのと同様の効果を得ることができる。
【0120】
1つのリテーナリング高さセンサ175を設置する場合には、リテーナリング高さセンサ175の測定値(すなわち、測定されたリテーナリング40の高さ)が所定のしきい値以下となるように局所荷重付与機構110を作動させてもよい。リテーナリング高さセンサ175の設置箇所によっては測定値がしきい値以上になるように作動させてもよいし、所定の範囲内に入るように作動させてもよい。
【0121】
リテーナリング高さセンサ175は、トップリング1の周方向に沿って複数設置するのが望ましい。リテーナリング高さセンサ175を2箇所に設置する場合には、通常は2つのリテーナリング高さセンサ175をトップリング1の中心軸に関して対称の位置に配置する。好ましくは、2つのリテーナリング高さセンサ175をトップリング1の中心軸に関して上流側と下流側に設置する。このようにして2箇所のリテーナリング高さセンサ175から得られた2つの測定値から、2つの位置でのリテーナリング40の高さの差を算出することができる。研磨制御部9は、この高さの差が所望の範囲内になるように局所荷重付与機構110の動作を制御する。より好ましくは、研磨制御部9がリテーナリング40の傾き平面を算出できるようにするために、少なくとも3つのリテーナリング高さセンサ175をトップリング1の周方向に沿って設置する。そして、リテーナリング40の所望の傾き面を実現するために、研磨制御部9により局所荷重付与機構110の動作を制御する。算出された傾き平面が所望の傾き平面と異なっている場合には、局所荷重付与機構110からリテーナリング40に付与する力を調整する。
【0122】
傾き面を所望の平面に制御することに代えて、傾き面から算出される他の指標を用いて制御を行ってもよい。例えば、最大傾き量、および最大傾き位置を所望の範囲に調整することを行ってもよい。ここで最大傾き量とは、傾き面内でリテーナリング40が最も高くなっている高さと最も低くなっている高さとの差であり、最大傾き位置とはリテーナリング40が最も高くなっている位置である。例えば、最大傾き量が0.05mm、最大傾き位置が角度180度と研磨制御部9により検出された場合に、所望の最大傾き量0.03mm±0.02mm、最大傾き位置角度270度±30度の範囲になるように1つまたは複数の局所荷重付与機構110を調整することなどが行われる。局所荷重付与機構110にリテーナリング高さ測定機能を付加してもよい。より具体的には、局所荷重付与機構110がリテーナリング高さセンサを備えてもよい。
【0123】
局所荷重付与機構110の望ましい設置位置(押圧位置)の決定方法について以下に記述する。
図17は局所荷重付与機構110の押圧位置決定のフローチャートを示している。ステップ1では、局所荷重付与機構110でリテーナリング40を押圧しながらウェハを研磨する。ステップ2では、局所荷重付与機構110を移動し、ステップ1とは異なる位置で局所荷重付与機構110によりリテーナリング40を押圧しながら別のウェハを研磨する。ステップ1とステップ2を必要な回数だけ繰り返す。ステップ3では、各押圧位置での研磨結果を取得する。ステップ4では、研磨結果から望ましい局所押圧位置を決定する。
【0124】
「研磨結果」の代表的な例としては、研磨レート分布の面内均一性、残膜厚分布の面内均一性、ウェハエッジでの研磨プロファイル、研磨レート、研磨温度、研磨されたウェハ上のスクラッチや異物などの欠陥、研磨されたウェハのディッシング、エロージョンなどに代表される平坦化特性、ウェハと研磨面2aとの摩擦力、この摩擦力に起因して変化する研磨テーブル回転モータ13の駆動電流などが挙げられる。このように「研磨結果」には、研磨装置内に設けられたセンサや膜厚測定器などで測定、算出可能な項目や、欠陥検査装置など研磨装置外に設けられた計測器により取得可能な項目も含まれる。
【0125】
図18は、局所荷重付与機構の押圧位置の決定方法を説明するための参考例を示す図である。この参考例では、90度、180度、270度の各押圧位置で局所荷重付与機構110を作動させた例を示している(フローチャートのステップ3に対応)。押圧位置は3箇所より少なくても多くてもよい。
図18の「研磨結果」は残膜厚分布の面内均一性を表している。
図18から分かるように、押圧位置180度で最も面内均一性が小さくなっている。一般的に面内均一性は小さい方が望ましいために、このプロセスにおいては角度180度が望ましい押圧位置として決定される(フローチャートのステップ4)。研磨結果を線形補間や曲線近似などで補間して望ましい押圧位置を決定してもよい。
図18の例では研磨結果を2次式で近似した曲線も併せて示している。この曲線を参照すると、研磨結果が最小となる押圧位置は、角度180度よりもやや大きい角度ということが分かる。この様にして望ましい押圧位置を決定してもよい。
【0126】
図19は、局所荷重付与機構の押圧位置の決定方法を説明するための参考例を示す図である。
図19に示す参考例では、研磨条件は局所荷重付与機構110がリテーナリング40に加える局所荷重であり、条件1,2,3は異なる局所荷重を表しており、研磨結果は残膜厚分布の面内均一性を表している。
【0127】
図19から分かるように、研磨条件を条件1,2,3で変更したときの研磨結果の変化量は、押圧位置180度で大きくなっている。それに対し、押圧位置90度や270度では、異なる研磨条件の下での研磨結果の変化量は小さくなっている。より具体的には、90度では全体的に研磨結果が大きく、270度では全体的に研磨結果が小さくなっている。一般的には残膜厚分布の面内均一性は小さいほうが望ましいために、小さい研磨結果で安定している押圧位置270度が選択される場合がある。
【0128】
押圧位置180度では研磨条件によって面内均一性が大きく変化している。これは研磨条件によって研磨プロファイルが大きく変化することを意味する。したがって、様々な種類の半導体デバイスを研磨する場合など、研磨プロファイルの調整可能範囲を大きく確保したい場合には、角度180度が望ましい位置として選択される場合もある。上述の補間手法などを用いて実際に研磨結果を取得した位置からずれた位置を望ましい位置として選択することもできる。
【0129】
研磨パッド2などの消耗部材の使用時間に応じて望ましい局所荷重付与機構110の押圧位置や荷重を決定してもよい。例えば、研磨パッド2の耐用期間の初期段階、中期段階、末期段階ごとに望ましい押圧位置および荷重を予め決定しておき、研磨パッド2の使用時間に応じて押圧位置や荷重を変更していくことも可能である。研磨装置の他の消耗部材としてはリテーナリング40、弾性膜45、ドレッサなどが挙げられる。
【0130】
1つの研磨装置内でウェハを2段階で研磨する場合がある。例えば、第1研磨段階で比較的高い圧力をウェハに加えてウェハの表面段差を除去し、次の第2研磨段階で圧力を下げてウェハを研磨し、ディッシングなどの局所的な過研磨を低減させることにより研磨後の表面段差を低減することが行われる。この様な場合、第1研磨段階と第2研磨段階とで局所荷重付与機構110の望ましい押圧位置や荷重を変更してもよい。例えば、第1研磨段階では第1の押圧位置でリテーナリング40に第1の局所荷重を与え、第2研磨段階では、第1の押圧位置とは異なる第2の押圧位置でリテーナリング40に第1の局所荷重とは異なる第2の局所荷重を与えることも可能である。
【0131】
通常は、研磨開始時にリテーナリング40が研磨面2aに接触した後に、局所荷重付与機構110を作動させてリテーナリング40を押圧し、研磨終了後トップリング1が上昇する前に局所荷重付与機構110の作動を停止する。トップリング1が上昇位置にあるときに局所荷重付与機構110がリテーナリング40を押圧すると、リテーナリング40が傾いた状態となってしまい、ウェハの搬送上のトラブルが発生してしまう。このようなトラブルを避けるために、リテーナリング40が研磨面2aに接触していないトップリング1が上昇位置にあるときは、局所荷重付与機構110はリテーナリング40を押圧しない。
【0132】
また、ウェハの研磨中に膜厚センサ7の測定結果に基づいて、研磨中または次のウェハの研磨で適用される局所荷重の大きさおよび/または局所荷重の位置(すなわち局所荷重付与機構110の位置)を変更してもよい。次のウェハの研磨で適用される局所荷重の位置を変更する場合には、次のウェハの研磨前に事前に局所荷重の位置を変更することが好ましい。複数の局所荷重付与機構110が設置されている場合には、動作する局所荷重付与機構110を変更することで局所荷重の位置を変更することができる。また、複数の局所荷重付与機構110を動作させ、それぞれの局所荷重付与機構110による局所荷重の大きさの比を変更することによっても、局所荷重付与機構110の位置を変更するのと同様の効果を得ることができる。さらに、測定結果から研磨制御部9にて研磨プロファイル(すなわち、ウェハの半径方向の膜厚分布)を生成し、その研磨プロファイル、特にウェハエッジ部での研磨プロファイルに基づいて局所荷重や局所押圧位置を変更してもよい。その他、研磨装置内に設置された他の膜厚測定器による測定結果に基づいて、局所荷重や局所押圧位置を変更してもよい。
【0133】
図20は局所荷重付与機構110のさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しないトップリング1の構成および動作は、
図3および
図4に示すトップリング1と同じであり、その重複する説明を省略する。
図20に示すトップリング1では、
図7および
図8(a)乃至
図8(c)に示す球面軸受100が用いられているが、これに代えて
図5および
図6(a)乃至
図6(c)に示す球面軸受85を用いてもよい。
【0134】
リテーナリング40の上部は、環状のリテーナリング押圧機構60に接触している。このリテーナリング押圧機構60は、リテーナリング40の上面(より具体的には、ドライブリング40bの上面)の全体に均一な下向きの荷重を与え、これによりリテーナリング40の下面(すなわち、リング部材40aの下面)を研磨パッド2の研磨面2aに対して押圧する。
【0135】
リテーナリング40は、リテーナリング押圧機構60には固定されずに、単にリテーナリング押圧機構60からの荷重を受けるように構成されているが、リテーナリング40はリテーナリング押圧機構60に固定されていてもよい。リテーナリング40をリテーナリング押圧機構60に固定する場合には、リテーナリング押圧機構60のピストン61を金属などの磁性材で形成し、
図3に示すように、ドライブリング40bの上部に複数の磁石が配置される。
【0136】
図21はリテーナリング40と球面軸受100とを連結するための連結部材75を示す平面図である。
図21に示す基本的な構成は
図4に示す構成を同じであるが、
図21では6本のスポーク78が設けられている点で相違する。他の構成は
図4の構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0137】
図20に示すように、リテーナリング40は、トップリング本体10から半径方向外側に張り出した上面を有している。このリテーナリング40の上方には、リテーナリング40の一部に局所荷重を与える押圧リング200が配置されている。押圧リング200の上方には局所荷重付与機構110が配置されている。局所荷重付与機構110は、局所荷重を研磨面2aに対して垂直な方向に押圧リング200の一部に加えるように構成されている。押圧リング200は、リテーナリング40の上方に配置された支持リング201と、この支持リング201の下部に固定された荷重伝達要素202を有している。押圧リング200に与えられた局所荷重は荷重伝達要素202を通じてリテーナリング40に伝達される。すなわち、局所荷重付与機構110は、基板保持面45aに対するリテーナリング40の傾きを変更するように、押圧リング200を介してリテーナリング40に局所荷重を与える。
【0138】
押圧リング200を構成する支持リング201は、エンジニアリングプラスティック(例えばPEEK、PPSなど)などの樹脂や、ステンレス鋼またはアルミニウムなどの金属により形成されている。押圧リング200の外周部には円筒状のアンダーカバー211が固定されており、さらにアンダーカバー211の外周面にはアッパーカバー212が固定されている。これらアンダーカバー211およびアッパーカバー212は押圧リング200から上方に延びており、研磨液などの液体のトップリング1への浸入を防いでいる。
【0139】
図20に示す実施形態では、支持リング201に回転自在に支持されたローラー(転動部)が荷重伝達要素202を構成する。以下、荷重伝達要素をローラーと称する。ローラー202は、ローラーシャフト203に回転自在に支持されている。ローラー202内には図示しないベアリングが配置されており、これによりローラー202はローラーシャフト203まわりに自由に回転可能となっている。
【0140】
ローラー202は、リテーナリング40の上面(より具体的には、ドライブリング40bの上面)に固定された環状プレート215に転がり接触する。押圧リング200は、局所荷重付与機構110からの局所荷重を受け、ローラー202を介してリテーナリング40の一部に局所荷重を与える。環状プレート215は、リテーナリング押圧機構60のピストン61に一体に接続されている。したがって、環状プレート215は、リテーナリング押圧機構60による均一な押圧力と局所荷重付与機構110による局所荷重との両方を受ける構成となっている。なお、環状プレート215をピストン61とは別の要素として構成してもよい。さらに、環状プレート215を省略してローラー202をリテーナリング40の上面に直接転がり接触させてもよい。
【0141】
環状プレート215はエンジニアリングプラスティック(例えばPEEK、PPSなど)などの樹脂や、ステンレス鋼またはアルミニウムなどの金属により形成されている。また、上述のようにドライブリング40b内に複数の磁石を配置する場合には磁性体の金属や磁性を有する耐食性ステンレス鋼を用いても良い。環状プレート215の上面、すなわちローラー202が転がり接触する面には、耐摩耗性を高めるために無電解ニッケルや硬質クロムなどの硬質材料をめっきにより形成したり、DLCなどの硬質材料をコーティングしても良い。
【0142】
局所荷重付与機構110はトップリングヘッド16に固定されており、その位置は固定されている。押圧リング200はトップリング1とともに回転しないように局所荷重付与機構110により保持されている。すなわち、ウェハWの研磨中、リテーナリング40はその軸心まわりに回転するが、局所荷重付与機構110および押圧リング200はリテーナリング40とは一体に回転せず、その位置は固定である。
【0143】
図22はトップリング1、押圧リング200、および局所荷重付与機構110の斜視図を示している。なお、
図22では、説明のために、一部の構成要素が省略されている。押圧リング200はトップリング1上に配置されており、リテーナリング40と同心形状を有している。押圧リング200とリテーナリング40の直径はほぼ同じである。押圧リング200には局所荷重付与機構110が接続されており、局所荷重付与機構110は押圧リング200の一部に局所的な荷重を加えるように構成されている。
【0144】
局所荷重付与機構110は、押圧ロッド221、ブリッジ222、複数のエアシリンダ(荷重発生装置)231,232,233、複数のリニアガイド224、およびユニットベース225から主に構成されている。ユニットベース225はトップリングヘッド16に固定され、ユニットベース225には複数の(図示の例では3つの)エアシリンダ231〜233および複数の(図示の例では4つの)リニアガイド224が取り付けられている。エアシリンダ231〜233のピストンロッド231a〜233aおよび複数のガイドロッド226は、共通のブリッジ222に接続されている。複数のガイドロッド226はリニアガイド224により低摩擦で上下動自在に支持されている。これらのリニアガイド224により、ブリッジ222は傾くことなく滑らかに上下動可能となっている。
【0145】
それぞれのエアシリンダ231〜233が発生した荷重は共通のブリッジ222に伝えられる。ブリッジ222は押圧ロッド(接続部材)221により押圧リング200に接続されており、押圧ロッド221はブリッジ222に加えられたエアシリンダ231〜233の荷重を押圧リング200に伝達する。押圧リング200の押圧ロッド221との接続位置の下方には、上述した荷重伝達要素としてのローラー(転動部)202が配置されており、押圧ロッド221から押圧リング200に加えられた局所荷重はローラー202を介してリテーナリング40に伝達される。
図22に示される例では、2本の押圧ロッド221間の中間点の下方にローラーシャフト203が配置されている。複数のエアシリンダ231〜233はそれぞれ独立の圧力調整装置、上下動制御装置、および大気開放機構(図示せず)に接続されており、互いに独立して荷重を発生できるように構成されている。
【0146】
図23(a)は、局所荷重付与機構110からリテーナリング40に与えられる局所荷重を測定するロードセル135を示す図であり、
図23(b)は
図23(a)に示す押圧リング200をB−B線から見た図である。押圧リング200は、その内部にロードセル135を備えている。より詳しくは、押圧リング200の支持リング201の上面には凹部201aが形成されており、この凹部201aにロードセル135が設置されている。ロードセル135は、ローラー202の上方に位置している。ロードセル135上には荷重プレート204が配置されている。2本の押圧ロッド221の下端は荷重プレート204に接続されている。局所荷重付与機構110によって生成された局所荷重は、2本の押圧ロッド221および荷重プレート204を通じてロードセル135に伝達され、ロードセル135はこの局所荷重を計測する。
【0147】
押圧リング200の姿勢を安定させるために、押圧リング200は少なくとも3つのローラーを備えていることが好ましい。本実施形態では、押圧リング200は、ローラー202(以下、適宜第1ローラー202という)に加えて、図示しない第2ローラーおよび第3ローラーを備えている。これら第2ローラーおよび第3ローラーは、第1ローラー202の位置から±150度の位置にそれぞれ配置されている。第1ローラー202は押圧ロッド221の下方に配置されているので、局所荷重付与機構110からの荷重は第1ローラー202からリテーナリング40に局所的に加えられ、第2ローラーおよび第3ローラーは局所荷重付与機構110からの荷重をリテーナリング40には実質的に伝えない。押圧ロッド221は第1ローラー202よりも半径方向内側に配置されている。これは、押圧ロッド221が押圧リング200を押圧したときに押圧リング200が傾いてしまうことを防止するためである。
【0148】
図24はブリッジ222の上面図である。
図24に示すように、ブリッジ222は略円弧形状を有しており、押圧ロッド221の設置位置を変えられるように、ブリッジ222の周方向に沿って配列する複数の開孔222aを有している。これらの開孔222aは押圧リング200の周方向に沿って配列されている。2本の押圧ロッド221は、これら複数の開孔222aのうちのいずれか2つに着脱可能に挿入されている。押圧ロッド221は1本でもよい。このようなブリッジ222によれば、押圧ロッド221の押圧リング200への接続位置はそのままに維持しつつ、ブリッジ222と押圧ロッド221との接続位置を変更することにより、リテーナリング40への局所荷重の位置をその周方向に沿って変更することが可能となる。
【0149】
トップリング1への液体の浸入を防ぐために、押圧リング200とリテーナリング40とは離間させない状態でトップリング1を動作させるのが望ましい。トップリング1が上昇しているときは、エアシリンダ231〜233に供給される圧力は大気圧または弱い圧力とされる。研磨開始時などトップリング1が下降する際には、トップリング1の下降と同時にエアシリンダ231〜233に圧力を供給して3つのエアシリンダ231〜233のピストンロッド231a〜233aを下降させる。3本のピストンロッド231a〜233aの下降速度をそろえるために、通常はそれぞれのエアシリンダ231〜233への供給圧力は同じにする。トップリング1が下降位置に達するとそれぞれのエアシリンダ231〜233への供給圧力を変更し、後述する制御方法でエアシリンダ231〜233の荷重が制御される。研磨終了後などトップリング1が上昇する際にはエアシリンダ231〜233内を大気開放するか、または弱い圧力にし、上昇するトップリング1によって押圧リング200を一緒に上昇させる。
【0150】
次に、各エアシリンダ231〜233が発生する荷重の制御方法について
図25を参照して説明する。
図25は各エアシリンダ231〜233および局所荷重点(ローラー202)の位置関係を示した上面図である。前述したように押圧ロッド221のブリッジ222への取り付け位置を変更することにより、リテーナリング40への局所荷重点Qの位置を変更することが可能である。エアシリンダ231〜233の荷重は、押圧ロッド221の取り付け位置に基づいて制御される。具体的には、局所荷重点Qまわりのモーメントが釣り合うようにエアシリンダ231〜233の荷重バランスが決定される。局所荷重点Qまわりのモーメントが釣り合わない状態で各エアシリンダ231〜233がブリッジ222を押圧すると、ブリッジ222が傾き、それによりピストンロッド231a〜233aやリニアガイド224の摺動抵抗が増加し、結果としてリテーナリング40への局所荷重が不安定となる。
【0151】
図25に示されるように、エアシリンダ231,232,233から局所荷重点QまでのX方向の距離をそれぞれx1,x2,x3とし、X方向に直交するY方向の距離をそれぞれy1,y2,y3とし、エアシリンダ231,232,233が発生する荷重をそれぞれF1,F2,F3とし、目標とする局所荷重をFとすると、以下の関係が成り立つ。
F1*x1+F2*x2−F3*x3=0
F1*y1−F2*y2−F3*y3=0
F1+F2+F3=F
【0152】
x1,x2,x3,y1,y2,y3の値は局所荷重点Qの位置から決まるので、上式よりF1,F2,F3のFに対する割合が算出される。複数のエアシリンダ231〜233のうちに押圧ロッド(接続部材)221に近いエアシリンダは相対的に大きな荷重を発生し、押圧ロッド221から遠いエアシリンダは相対的に小さい荷重を発生する。複数のエアシリンダ231〜233が発生した荷重の重心が押圧ロッド221の位置(局所荷重点Qの位置)に一致するように、複数のエアシリンダ231〜233はそれぞれ荷重を発生することが好ましい。このようにして算出された荷重バランスに基づいて各エアシリンダ231〜233の荷重が制御される。
【0153】
前述のロードセル135により測定された局所荷重が所望の局所荷重Fと異なる場合には警報を発報したり、エアシリンダが発生する荷重F1,F2,F3を変更してもよい。測定された局所荷重が所望の局所荷重Fよりも小さい場合には、荷重F1,F2,F3をそれぞれ増加させ、測定された局所荷重が所望の局所荷重Fよりも大きい場合には、荷重F1,F2,F3をそれぞれ減少させる。その場合、上式より算出されたF1:F2:F3の比を保ったまま荷重F1,F2,F3を変更することが望ましい。
【0154】
局所荷重点Qの位置、すなわちローラー202の位置は任意に選択可能ではあるが、上述した荷重安定性の観点からは3つのエアシリンダ231,232,233を結んだ三角形(太線で示す)内にローラー202を設置するのが望ましい。3つのエアシリンダ231,232,233を結んだ三角形内にローラー202を設置することにより、ローラー202は局所荷重点Qまわりのモーメントが釣り合った状態でリテーナリング40を局所押圧することが可能となる。
【0155】
次に、トップリング1から液体および塵を吸引するための吸引機構240について説明する。
図22に示すように、吸引機構240は、真空源(例えば真空ポンプ)239に接続された第1吸引ライン241および第2吸引ライン242と、これら2本の吸引ライン241,242を保持する吸引ライン保持部244とを備えている。2本の吸引ライン241,242の先端は、押圧リング200に接続されている。
【0156】
図26(a)は第1吸引ライン241と押圧リング200との接続部を示す拡大図であり、
図26(b)は第2吸引ライン242と押圧リング200との接続部を示す拡大図である。第1吸引ライン241は、押圧リング200の上面に形成された環状凹部248に連通している。この環状凹部248には、下方に延びる環状凸部249が緩やかに挿入されている。環状凸部249はトップリング本体10の外周面に固定されている。これらの環状凸部249と環状凹部248とによってラビリンス構造が形成されており、このラビリンス構造によって押圧リング200とトップリング1との隙間に液体が入り込まないようになっている。第1吸引ライン241は環状凹部248に溜まった液体を吸引するようになっている。
【0157】
図26(b)に示すように、第2吸引ライン242の先端は、押圧リング200に形成された縦孔247に接続されている。この縦孔247は押圧リング200を貫通して延びており、押圧リング200とリテーナリング40との間の隙間に連通している。第2吸引ライン242は、荷重伝達要素であるローラー202の転がり接触に起因して発生しうる粉塵(例えば、ローラー202の摩耗粉)を吸引する。
【0158】
図22に示すように、吸引ライン保持部244には、押圧リング200の上面まで延びる磁性体250が固定されている。
図27は、磁性体250および押圧リング200を示す拡大図である。
図27に示すように、押圧リング200内には上側永久磁石251および複数の下側永久磁石252が埋設されている。上側永久磁石251は、磁性体250の位置に対応する位置に配置されており、磁性体250の下端と上側永久磁石251との間には互いに引き合う磁力が発生する。2本の吸引ライン241,242はこの磁力によって押圧リング200に着脱可能に固定される。このような構成により、メンテナンスの際には磁性体250および吸引ライン241,242を容易に押圧リング200から取り外すことが可能となる。複数の下側永久磁石252は、押圧リング200の周方向に沿って配列されている。下側永久磁石252と磁性材で形成された環状プレート215との間には引き合う磁力が発生し、この磁力によって押圧リング200の位置を安定させることができる。
【0159】
図22に示すように、吸引機構240は取付リング255に着脱可能に取り付けられている。取付リング255はユニットベース225に固定されている。
図28は、取付リング255を示す平面図である。
図28に示すように、取付リング255は円弧状の形状を有しており、その周方向に沿って複数の取付孔255aが形成されている。吸引ライン保持部244は、これらの取付孔255aのうちの少なくとも1つに挿入されるねじ(図示せず)によって取付リング255に着脱可能に固定される。したがって、取付リング255に設置される吸引機構240の位置は変更可能である。
【0160】
上述したように、局所荷重点の位置の変更は、押圧ロッド221のブリッジ222への取り付け位置を変更することによって実施される。押圧ロッド221のブリッジ222への取り付け位置を変えるとき、吸引ライン241,242を押圧リング200とともに押圧リング200の周方向に沿って移動させる必要がある。したがって、押圧ロッド221の取り付け位置の変更に伴って、吸引機構240の設置位置も変更される。
【0161】
図29は局所荷重付与機構のさらに他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、
図20に示す実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。この実施形態では、複数の局所荷重付与機構110がトップリングヘッド16に固定されている。各局所荷重付与機構110としては、エアシリンダが使用されている。これら複数の局所荷重付与機構110は押圧リング200に連結されている。局所荷重付与機構110は、それぞれ押圧リング200の一部に研磨面2aに対して垂直な方向に局所荷重を与えるように構成される。
【0162】
押圧リング200は、複数の局所荷重付与機構110からの局所荷重を受け、さらにこれらの局所荷重をリテーナリング40に伝える荷重伝達要素としての複数のローラー(転動部)202を有している。これらのローラー202は複数の局所荷重付与機構110の真下にそれぞれ配置されている。荷重伝達要素202は、ローラー202に代えて、リテーナリング40と摺動する凸形状などの摺動部分であってもよい。
【0163】
図示しないが、複数のロードセルが押圧リング202内に配置されている。これらロードセルは、ローラー202と局所荷重付与機構110との間にそれぞれ設置されている。各ロードセルの配置は、
図23(a)および
図23(b)に示すロードセル135と同様である。
図29に示される実施形態においては、複数のロードセルが複数のローラーの上方にそれぞれ設置されている。これらのロードセルにより測定された荷重が所望の値と異なる場合には、警報を発報したり、それぞれ対応する局所荷重付与機構110によって発生される荷重を変更することが望ましい。
【0164】
複数の局所荷重付与機構(本実施例ではエアシリンダ)110の荷重バランスにより、リテーナリング40への局所荷重の重心、すなわちリテーナリング40の周方向における圧力分布を制御することが可能となる。
図22に示される実施形態では、ブリッジ222に対する押圧ロッド221の相対位置を変更することにより局所荷重点の位置を変更可能であるが、
図29に示す実施形態は、複数の局所荷重付与機構110の荷重バランスを変更することにより、より簡便にリテーナリング40への局所荷重点の位置を変更することが可能である。
図20に示すトップリング1では、リテーナリング押圧機構60によりリテーナリング40全体に均一な荷重を与え、押圧リング200によりリテーナリング40に局所的な荷重を与えるようにされているが、本実施形態ではリテーナリング押圧機構60を用いずに複数の局所荷重付与機構110によりリテーナリング40へ均一荷重および局所荷重の両方をかけるようにしてもよい。
【0165】
次に、
図29で示した局所荷重の制御方法について
図30(a)乃至
図30(c)を参照して説明する。
図30(a)乃至
図30(c)はエアシリンダおよび押圧リング200を示した平面図である。
図30(a)乃至
図30(c)に示す角度θは、
図14で説明した角度に相当する。
図30(a)は2つのエアシリンダから押圧リング200に局所荷重を与える例を示し、
図30(b)は3つのエアシリンダから押圧リング200に局所荷重を与える例を示し、
図30(c)は4つのエアシリンダから押圧リング200に局所荷重を与える例を示している。いずれの例でも、複数のエアシリンダが発生する局所荷重の重心は、リテーナリング40の中心から離れている。図示しないが、5つ以上のエアシリンダを設ける場合にも、同様にして本発明を適用することが可能である。
【0166】
図30(a)では、2つのエアシリンダ110A,110Bは角度180°(θで表す)の線に対して軸対称に配置されている。2つのエアシリンダ110A,110Bでリテーナリング40に局所荷重を加える場合には、2つの局所荷重の重心は2つのエアシリンダ110A,110Bを結んだ線分内に設定することが可能である。例えば、角度180°の線上の位置に局所荷重を与える場合には、2つのエアシリンダ110A,110Bの荷重は同じとされる。
【0167】
図30(b)では、3つのエアシリンダ110A,110B,110Cはリテーナリング40の中心(押圧リング200の中心)まわりに等間隔で配置されている。この例では、3つの局所荷重の重心は3つのエアシリンダ110A,110B,110Cを結んだ正三角形内に設定することが可能となる。例えば、角度180°の線上の位置に局所荷重を与える場合には、下流側のエアシリンダ110Cの荷重を最も強くし、上流側の2つのエアシリンダ110A,110Bの荷重を同じとする。さらに、上流側の2つのエアシリンダ110A,110Bの総荷重を下流側のエアシリンダ110Cの荷重よりも小さくする。この場合、上流側の2つのエアシリンダ110A,110Bの荷重を0としたときに、リテーナリング40の傾きを与える効果が最も大きくなる。
【0168】
図30(c)では、4つのエアシリンダ110A,110B,110C,110Dはリテーナリング40の中心(押圧リング200の中心)まわりに等間隔で配置されている。この例では、4つの局所荷重の重心は4つのエアシリンダ110A,110B,110C,110Dを結んだ正四角形内に設定することが可能となる。例えば、角度180°の線上の位置に局所荷重を与える場合には、下流側の2つエアシリンダ110C,110Dの荷重を互いに同じとし、上流側の2つのエアシリンダ110A,110Bの荷重を互いに同じする。さらに上流側の2つのエアシリンダ110A,110Bの総荷重を下流側の2つエアシリンダ110C,110Dの総荷重よりも小さくする。この場合も、上流側の2つのエアシリンダ110A,110Bの荷重を0としたときに、リテーナリング40の傾きを与える効果が最も大きくなる。
【0169】
図30(c)に示す4点荷重の構成は、
図30(b)に示す3点荷重の構成よりも、より広い領域で荷重重心をリテーナリング40に近づけることができる。したがって、4点荷重の構成は、3点荷重の構成よりもより広い領域においてリテーナリング40を大きく傾けることができる。例えば、3点荷重の構成を用いて角度135°の線上の位置を押圧する場合、エアシリンダ110Aおよびエアシリンダ110Cは同じ荷重Lでリテーナリング40を押圧し、エアシリンダ110Bの荷重は0とする。リテーナリング40の中心から各エアシリンダまでの距離をRとすると、リテーナリング40の傾きを変えるように作用するモーメントは、L*Rである。4点荷重の構成では、エアシリンダ110Cのみが荷重2Lでリテーナリング40を押圧する。荷重2Lは荷重Lの2倍を意味している。この場合、リテーナリング40の傾きを変えるように作用するモーメントは、2L*Rとなる。いずれの場合もリテーナリング40に作用するトータルの局所荷重は2Lであるが、3点荷重の構成よりも4点荷重の構成の方がリテーナリング40の傾きを変えるためのより大きなモーメントを発生させることが可能である。
【0170】
図31はトップリング1の他の実施形態を示す断面図である。本実施形態ではトップリング1は、リテーナリング40の一部を研磨面2aに対して垂直方向に押圧する押圧部材260と、リテーナリング40を研磨面2aに押圧するための押圧力を押圧部材260に与える荷重発生装置261とを有している。本実施形態では、荷重発生装置261と押圧部材260とにより、リテーナリング40の一部に研磨面2aに対して垂直方向の局所荷重を付与する局所荷重付与機構が構成される。押圧部材260は、荷重発生装置261とリテーナリング40との間に配置された支持リング262に固定されている。更に研磨装置には、押圧部材260がトップリング1と一体に回転しないように押圧部材260の位置を保持する位置保持機構270が設置されている。
【0171】
荷重発生装置261は、トップリング本体10のフランジ41内に設置されている。この荷重発生装置261は、リテーナリング押圧機構60と同様に、ピストン263およびローリングダイヤフラム264を有している。荷重発生装置261は、ローリングダイヤフラム264によって形成される圧力室265に供給する加圧流体の圧力を変更することにより押圧部材260へ与える押圧力を変更可能である。
【0172】
図32(a)は押圧部材260および位置保持機構270を示す平面図であり、
図32(b)は押圧部材260の側面図である。押圧部材260は、荷重発生装置261から荷重を受ける上側ローラー260a,260bと、この荷重をリテーナリング40の一部に伝える下側ローラー260c,260dと、これらローラー260a〜260dを保持するローラー保持部260eとを備えている。ローラー保持部260eは支持リング262に固定されている。
【0173】
トップリング本体10とリテーナリング40との間の隙間は、シールリング272およびシールシート273によってシールされており、トップリング1内への研磨液等の飛沫の浸入やトップリング1から研磨面2aへの異物の落下が防止されている。シールリング272は、断面L字形状を有しており、その下面はリテーナリング40に固定されている。シールリング272はリテーナリング40と一体に回転し、リテーナリング40と一体に傾動可能となっている。上述した下側ローラー260c,260dは、シールリング272の上面に転がり接触する。したがって、下側ローラー260c,260dはシールリング272を介して荷重発生装置261の荷重をリテーナリング40の一部に伝達し、リテーナリング40を基板保持面45aに対して傾ける。なお、下側ローラー260c,260dをリテーナリング40の上面に直接接触させ、下側ローラー260c,260dがリテーナリング40の一部に直接荷重を伝達してもよい。
【0174】
位置保持機構270は、支持リング262に取り付けられた保持ターゲット275と、保持ターゲット275を保持するターゲット保持部276を有している。支持リング262には、その全周に亘って複数の取付用孔262aが形成されている。保持ターゲット275は、これら複数の取付用孔262aのいずれか1つに着脱可能に取り付けられる。したがって、保持ターゲット275の取り付け位置を変更することにより、押圧部材260の位置をリテーナリング40の周方向に沿って変えること、すなわちリテーナリング40に与えられる局所荷重の位置を変えることができる。
【0175】
ターゲット保持部276は、保持ターゲット275に近接して配置されている。ターゲット保持部276の位置は固定されている。ターゲット保持部276は保持ターゲット275の位置を磁力によって非接触で保持している。より詳しくは、ターゲット保持部276および保持ターゲット275のうちの一方は永久磁石から構成され、他方は磁性材から構成されている。永久磁石の代わりに電磁石を用いてもよい。ターゲット保持部276と保持ターゲット275との間には引き付け合う磁力が発生し、保持ターゲット275はターゲット保持部276によって磁力を介して非接触に保持される。したがって、保持ターゲット275が固定されている支持リング262は磁力によってその位置が固定され、トップリング1とは一体に回転しない。
【0176】
ターゲット保持部276と保持ターゲット275とは離間しているので、
図31に示すように、ターゲット保持部276と保持ターゲット275との間にシールリング272および/またはシールシート273を配置することが可能となる。この実施形態に代えて、ターゲット保持部276を保持ターゲット275に直接連結し、接触状態で保持ターゲット275を保持してもよい。
【0177】
図32(a)に示すように、支持リング262にセンサターゲット281を設け、このセンサターゲット281を感知できる近接センサ282を配置することが好ましい。近接センサ282は、トップリング1の外側に配置されており、トップリング1とは一体に回転しない。このような配置とすることで、近接センサ282は、支持リング262の位置が位置保持機構270により保持されているかどうか、すなわち支持リング262および押圧部材260がトップリング1と一体に回転していないかどうかを検知することが可能である。センサターゲット281は、支持リング262の取付用孔262aに着脱可能に取り付けられており、その設置位置は変更可能となっている。
図32(a)に示す例では、センサターゲット281は保持ターゲット275に隣接して配置されているが、センサターゲット281を保持ターゲット275から離間して配置してもよい。センサターゲット281と近接センサ282の組合せの例としては、センサターゲット281を非磁性材の金属で形成し、近接センサ282として渦電流センサを用いる組合せが挙げられる。
【0178】
ターゲット保持部276は、支持リング262の位置を磁力により保持するためにトップリング1と同期して上下動するか、トップリング1の上下動距離よりも長い縦方向の寸法を有することが望ましい。
図31および
図32(a)に示す例では、ターゲット保持部276および近接センサ282は、上下動機構285に連結されており、この上下動機構285によってトップリング1と同期して上下動可能となっている。上下動機構285としては、例えば、サーボモータとボールねじとの組み合わせが使用される。
【0179】
ターゲット保持部276の位置は固定であるのに対して、保持ターゲット275の支持リング262への設置位置は変更可能である。したがって、支持リング262上の押圧部材260と保持ターゲット275との相対位置を変更することにより、リテーナリング40に対する局所荷重点を変更することが可能となる。例えば、保持ターゲット275から180度の位置に押圧部材260がある場合には、押圧部材260は保持ターゲット275から180度の位置に局所荷重を与えることが可能である。保持ターゲット275から90度の位置に押圧部材260がある場合には、押圧部材260は保持ターゲット275から90度の位置に局所荷重を与えることが可能である。保持ターゲット275の設置位置を可変とする代わりに押圧部材260の設置位置を可変としてもよい。
【0180】
図33は、球面軸受100に支持された軸部76の変形例を示す断面図である。
図33に示すように、軸部76はフランジ部76Aとシャフト部76Bとに分割され、これらが接着層76Cで接着された構造とされている。フランジ部76Aにはアルミニウムやステンレス鋼などの金属を用い、シャフト部76Bにアルミナ、SiC、またはジルコニアなどの剛性が高く耐摩耗性に優れたセラミックを用いることが好ましい。このような軸部76の構成は、研磨テーブル3内に埋設された膜厚センサ7として渦電流センサが用いられる場合に好適である。すなわち、トップリング1の基板保持面45aの近傍に金属が存在すると、渦電流センサの測定値に影響を与えるおそれがある。そこで、このような悪影響を回避するために、シャフト部76Bをセラミックで形成することが好ましい。
図33に示す変形例は、
図5に示す球面軸受85に支持された軸部76にも同様に適用することが可能である。
【0181】
図34は、トップリング1のさらに他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、
図20に示す実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
図34に示すように、フランジ41はトップリングシャフト11に接続されている。トップリングシャフト11およびトップリング本体10内には複数の流路290が形成されており、これらの流路290はそれぞれ圧力室50〜53、およびリテーナリング圧力室63に接続されている。なお、
図34には、複数の流路290のうちの一部のみが図示されている。これら複数の流路290はチューブなどの配管部材から構成されているのではなく、トップリングシャフト11およびトップリング本体10に削孔により形成されたものである。
【0182】
図35は、トップリング1のさらに他の実施形態を示す部分断面図である。ドライブリング40bには、半径方向内側に延びる複数のストッパピン295が取り付けられている。これらのストッパピン295はキャリア43の外周面に形成された複数の凹部43cにそれぞれ挿入されている。このような構成により、メンテナンスのためにキャリア43、ドライブリング40b、およびリテーナリング40を取り外した際に、キャリア43とドライブリング40bとが離れてしまわないようになっている。
【0183】
リテーナリング40内には補強リング297が埋設されている。この補強リング297は、ドライブリング40bとリング部材40aとの間に配置されており、リテーナリング40と同心に配置されている。補強リング297は、研磨中ウェハと研磨パッド2との摩擦力を受けるリテーナリング40の変形を防止するためのものである。ドライブリング40bの外周面にはカバーリング298が設置されている。カバーリング298とドライブリング40bとの間にはO−リング301が配置され、およびカバーリング298とリング部材40aとの間にはO−リング302が配置されている。これらのO−リング301,302によりトップリング1への研磨液などの液体の浸入が防止されている。
【0184】
上述した研磨装置および研磨方法の実施形態は適宜組み合わせることができる。
【0185】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。