【文献】
川野達也ら著,インドロカルバゾール部位を側鎖に有するポリマーの合成と性質,高分子討論会予稿集,社団法人高分子学会,2009年9月1日,第58巻,第2号,4140頁,3Pa117
【文献】
秋本雅史ら著,インドロカルバゾール誘導体の合成と光学特性,高分子学会年次大会予稿集,社団法人高分子学会,2008年5月8日,第57巻,第1号,第1364頁,1Pe127
【文献】
秋本雅史ら著,インドロカルバゾール誘導体の合成と性質2:ポリマーの合成と光学特性,日本化学会第88春季年会−講演予稿集I,社団法人日本化学会,2008年3月12日,第597頁,4L7−43
【文献】
M.AKIMOTO et al.,Syntheses and photonic properties of indolocarbazole derivatives,Transactions of the Materials Reseach Society of Japan,Materials Research Society of Japan,2009年3月,第34巻,第1号,第141頁−第144頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般的に電界発光素子には、発光素子に無機化合物を用いる無機電界発光素子と、有機化合物を用いる有機電界発光素子があり、近年、低電圧で且つ高輝度の発光が得られるという特徴から有機電界発光素子の実用化研究が積極的に行われている。
【0003】
有機電界発光素子の構造は、インジウム-スズ酸化物(ITO)等の陽極材料の薄膜を蒸着したガラス板上に正孔注入層、更に発光層等の有機薄膜層を形成し、さらにその上に陰極材料の薄膜を形成して作られるものが基本であり、この基本構造に正孔輸送層や電子輸送層が適宜設けられた素子がある。有機電界発光素子の層構成は、例えば、陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極や、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極などである。
【0004】
近年、発光層と陽極の間に正孔注入層及び正孔輸送層等の電荷輸送層を組み込むことにより、発光層への正孔注入性が改善されること、電荷のバランスを最適化する緩衝層として作用し、素子の発光効率や寿命が大きく改善されることがわかっている。
【0005】
有機電界発光素子の正孔輸送層に用いられる正孔輸送材料には、大きく分類すると低分子系正孔輸送材料と高分子系正孔輸送材料がある。
【0006】
低分子系正孔輸送材料を用いた正孔輸送層の製膜方法としては、主に真空蒸着法が用いられており、その特徴として、異なる機能を持った種々の材料を容易に多層化でき、高性能な有機電界発光素子を形成できる反面、パネルの大画面化、高精細化に伴う膜厚の均一制御や塗り分けが難しく、さらには大掛かりな真空装置を必要とするため、製造コストが高くなるという問題がある。
【0007】
また、低分子系正孔輸送材料を用いた正孔輸送層の製膜方法として、低分子系正孔輸送材料の溶液塗布による製膜法についても実用化研究がなされているが、この手法では低分子化合物の結晶化に伴う偏析や相分離が観察され、実用化には改善が必要である。
【0008】
一方、高分子系正孔輸送材料の製膜方法としては、真空蒸着法では蒸着できない材料が殆どであるため、スピンコート法、印刷法やインクジェット法等の溶液塗布法が用いられる。この方法は、大画面化が容易であり、量産化に優れている反面、塗膜の積層化が困難で、不純物が混入し易いという問題点がある。そのため、高分子系正孔輸送材料を用いた素子は、低分子系正孔輸送材料と比較すると、素子効率や寿命等の素子性能が劣っている。そこで、優れた正孔輸送性能と良好な製膜性を併せ持つ高分子系正孔輸送材料が求められていた。
【0009】
このような要求特性を発現させるための試みとして、例えば非特許文献1には、ポリビニルカルバゾールやポリシランが、特許文献2や非特許文献2にはビニルトリフェニルアミンやトリフェニルアミンがメチレンで連結した構造を有する高分子が報告されている。しかしながら、これらを用いた有機電界発光素子では、発光効率と素子の安定性が悪く、十分な改善には至っていない。
【0010】
また、有機電界発光素子の発光効率を高める手法として、π共役高分子の主鎖にインドロカルバゾール単位が組み込まれた高分子材料及び発光素子が開示されている。すなわち、特許文献3では、インドロカルバゾールのペリフェラル位で結合した共役系高分子が、また特許文献4では、インドロカルバゾール単位がポリアリレン主鎖に導入された共役系高分子が開示されている。しかし、これらの高分子は、電荷移動性はよくなるものの、インドロカルバゾール骨格を主鎖に含有するπ共役高分子は有機溶剤に対する溶解性が極端に低く、溶液塗布法による製膜には不適である。
【0011】
さらに、特許文献5では、特定のインドール三量体部位を高分子側鎖に組み込んだ高分子材料が開示されているが、素子の安定性が悪く、十分な改善には至っていない。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明の有機電界発光素子用重合体は、一般式(1)で表されるオリゴマー又は高分子である。ここで、本発明の有機電界発光素子用重合体は単独重合体であることも、共重合体であることもできる。
【0030】
なお、一般式(12)は、一般式(1)において、mが0である場合に該当し、一般式(12)中の、R、Y及びZは一般式(1)と同意であり、pはlに対応するので、一般式(1)の説明からこれらの記号の意味が理解される。一般式(1)に係る説明は一般式(12)にも共通するので、一般式(1)に係る説明で代表する。
【0031】
一般式(1)において、Z及びWはペンダント(側鎖)であり、ZはN位で結合するインドロカルバゾール骨格を有する基であり、Wは電荷輸送性基である。Zを含む単位をUz、Wを含む単位をUwとすれば、一般式(1)は、次式(1A)のように表わすことができる。
[(Uw)
m-(Uz)
n]
l (1A)
【0032】
本発明の有機電界発光素子用重合体は、優れた電荷輸送能力、特に正孔輸送能力を付与できるインドロカルバゾール骨格を、主鎖を構成する単位中にペンダント(側鎖)として有している。ここで、主鎖を構成する単位は繰り返し単位を意味するが、この繰り返し単位は1種だけでなく、2種以上であってもよい。
【0033】
一般式(1)または一般式(12)において、l及びpは繰り返し数であり、重量平均分子量によって定まるが、平均(数平均)の繰り返し数としては2〜10000、好ましくは5〜1000である。
【0034】
また、本発明の有機電界発光素子用重合体は、一般式(1)で表わされる繰り返し単位以外の単位又は末端を含んでもよいが、一般式(1)で表わされる繰り返し単位が全繰り返し単位の50モル%以上、好ましくは80モル%以上であることがよい。
【0035】
一般式(1)において、Rは水素原子、C
1〜C
20のアルキル基、C
1〜C
20のアルコキシ基、C
6〜C
30のアリール基、C
6〜C
30のアリールオキシ基、C
7〜C
36のアリールアルキル基、C
7〜C
36のアリールアルキルオキシ基、C
3〜C
30のヘテロアリール基、C
3〜C
30のヘテロアリールオキシ基、又はC
3〜C
30のシクロアルキル基であり、同一であっても異なっていてもよい。これらの基に炭化水素鎖が含まれる場合は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、Cl、F等のハロゲンが置換していても構わない。好ましくは、水素原子、C
1〜C
12のアルキル基、C
1〜C
12のアルコキシ基、C
6〜C
24のアリール基、C
6〜C
24のアリールオキシ基、C
7〜C
28のアリールアルキル基、C
7〜C
28のアリールアルキルオキシ基、C
3〜C
24のヘテロアリール基、C
3〜C
24のヘテロアリールオキシ基、又はC
3〜C
24のシクロアルキル基である。Zを含む単位Uz、及びWを含む単位Uw中には、それぞれ3個のRが存在するが、その2つ又は3つが水素原子であることが好ましく、更には3つが水素原子であることがより好ましい。
また、これらの基は置換基を有していても良く、置換基を有する場合、前記炭素数は置換基も含めて計算するものとする。その置換基としては、性能を阻害するものでなければ特に限定するものではないが、C
1〜C
4のアルキル基、フェニル基、ピリジル基、カルバゾリル基であることが好ましい。
【0036】
Yは、単結合、C
1〜C
20のアルキレン基、C
6〜C
30のアリーレン基、C
3〜C
30のヘテロアリーレン基、CO、COO、又はOであり、好ましくは単結合、C
6〜C
30のアリーレン基、C
3〜C
30のヘテロアリーレン基である。これらの基に炭化水素鎖が含まれる場合は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、Cl、F等のハロゲンが置換していても構わない。また、これらの基は置換基を有していても良く、前記Rで説明した置換基と同様である。Yは連結基が長くなるほど繰り返し単位中の電荷輸送能力が低下すると共に熱的にも不安定性になるため、単結合であることがより好ましい。
【0037】
Zは、N位で結合するインドロカルバゾリル基である。このインドロカルバゾリル基は、インドール環とカルバゾール環が縮合した5環の縮合環化合物の1つのN位に置換基を有する化合物からHを1つとって生じる基である。このインドロカルバゾリル基は、2つのNを有するが、1つのNは置換基と結合し、他の1つのNはYを介して主鎖と結合するN位置換インドロカルバゾリル基であることがよい。また、このN位で結合するインドロカルバゾリル基は、N-インドロカルバゾリル基ともいい、インドロカルバゾール環を構成する炭素に置換基を有することができる。
【0038】
このインドロカルバゾリル基は、インドール環とカルバゾール環との縮合可能な位置が複数存在するため、下記式(A)〜(F)の6種類の構造異性体の基をとり得るが、いずれの構造異性体であってもよい。また、インドロカルバゾリル基は、主鎖と結合していない他方のN位に6員環芳香族基を有することが好ましい。また、インドロカルバゾール基(前記他方のN位に置換する6員環芳香族基を含む)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、置換基を有することができる。
【0039】
(式(A)〜(F)は、インドロカルバゾール骨格と主鎖との結合位置のみ表示)
【0040】
一般式(1)中のZで表されるN-インドロカルバゾリル基としては、上記式(2)〜(7)に示す構造からなる群より選択されるいずれか1つ、もしくは2つ以上のインドロカルバゾリル基である。2つ以上である場合は、一般式(1)中のZは、2種類以上のインドロカルバゾリル基からなることになる。
【0041】
前記式(2)〜(7)において、R
1は独立に、C
1〜C
20のアルキル基、C
1〜C
20のアルコキシ基、C
6〜C
30のアリール基、C
6〜C
30のアリールオキシ基、C
7〜C
36のアリールアルキル基、C
7〜C
36のアリールアルキルオキシ基、C
3〜C
30のヘテロアリール基、C
3〜C
30のヘテロアリールオキシ基、又はC
3〜C
30のシクロアルキル基であり、好ましくはC
1〜C
20のアルキル基、C
6〜C
30のアリール基、C
7〜C
36のアリールアルキル基、C
3〜C
30のヘテロアリール基である。これらの基に炭化水素鎖が含まれる場合は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、Cl、F等のハロゲンが置換していても構わない。また、これらの基はさらに置換基を有していても良く、前記一般式(1)中のRで説明した置換基と同様である。
【0042】
前記式(2)〜(7)において、Xは、各々独立にC-H、N又はC−Lの何れかである。ここで、Lは独立にC
6〜C
30のアリール基、C
3〜C
30のヘテロアリール基、又はC
12〜C
60のジアリールアミノ基であり、C
6〜C
24のアリール基、C
3〜C
24のヘテロアリール基、又はC
12〜C
36のジアリールアミノ基であることが好ましい。
【0043】
ここで、好ましいアリール基、ヘテロアリール基、又はジアリールアミノ基のアリール基としては、ベンゼン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、オクタレン、インダセン、アセナフチレン、フェナレン、フェナンスレン、アントラセン、トリンデン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、テトラフェン、テトラセン、プレイアデン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、コラントリレン、ヘリセン、ヘキサフェン、ルビセン、コロネン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ピラントレン、オバレン、コラヌレン、フルミネン、アンタントレン、ゼトレン、テリレン、ナフタセノナフタセン、トルキセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、キサンテン、オキサトレン、ジベンゾフラン、ペリキサンテノキサンテン、チオフェン、チオキサンテン、チアントレン、フェノキサチイン、チオナフテン、イソチアナフテン、チオフテン、チオファントレン、ジベンゾチオフェン、ピロール、ピラゾール、テルラゾール、セレナゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、フラザン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、インドリジン、インドール、イソインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、カルバゾール、インドロカルバゾール、イミダゾール、ナフチリジン、フタラジン、キナゾリン、ベンゾジアゼピン、キノキサリン、シンノリン、キノリン、プテリジン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、カルボリン、フェノテルラジン、フェノセレナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、アンチリジン、テベニジン、キンドリン、キニンドリン、アクリンドリン、フタロペリン、トリフェノジチアジン、トリフェノジオキサジン、フェナントラジン、アントラジン、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾイソチアゾール又はこれら芳香環が複数連結された芳香族化合物から水素を除いて生じる基、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等が挙げられる。より好ましくはベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、インドール、カルバゾール又はこれら芳香環が複数連結された芳香族化合物から水素を除いて生じる基、ジフェニルアミノ基が挙げられる。なお、芳香環が複数連結された芳香族化合物から生じる基である場合、連結される数は2〜10が好ましく、より好ましくは2〜5であり、連結される芳香環は同一であっても異なっていても良い。
【0044】
また、前記アリール基、ヘテロアリール基、又はジアリールアミノ基のアリール基は、置換基を有していてもよく、置換基を有する場合、置換基の総数は1〜10、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4である。なお、芳香環が複数連結された芳香族化合物から生じる基も同様に置換基を有することができる。置換基は限定されるものではないが、好ましい置換基としては炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数12〜24のジアリールアミノ基等が挙げられる。より好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、フェニル基、ピリジル基、ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基があげられる。置換基を2つ以上有する場合は、同一であっても異なっていても良い。
【0045】
また、一般式(1)において、m及びnは存在モル比を表わし、全繰り返し単位を100モル%としたとき、mは5〜95モル%、nは5〜95モル%である。mは、好ましくは10〜90モル%、より好ましくは50〜80モル%である。nは、好ましくは10〜90モル%、より好ましくは20〜50モル%である。lは繰り返し数を表わし、重量平均分子量によって定まるが、平均(数平均)の繰り返し数としては2〜10000、好ましくは5〜1000である。
【0046】
前記一般式(1)中のWは、電荷輸送性基である。この電荷輸送性基には、正孔輸送性基と電子輸送性基がある。正孔輸送性基は、主として正孔の輸送を担うため、正孔に対する安定性すなわち酸化安定性が求められ、一方、電子輸送性基は電子の輸送を担うため、電子に対する安定性すなわち還元安定性が求められる。また、それぞれの電荷に対する移動度、すなわち正孔輸送性基の場合は正孔移動度が、電子輸送性基の場合は電子移動度が高い方が、正孔注入層等の隣接した層から移動してきた電荷を効率よく発光層へ取り込むことができ、素子の駆動電圧を下げることが可能となるため、より好ましい。
【0047】
正孔輸送性基としては、カルバゾールやフェニルアミン等の単位を含む基が、電子輸送性基としては、オキサジアゾール単位、トリアジン単位、トリアゾール単位等を含む基が使用できる。しかし、一般式(1)において、WはZと同じであることはないので、WはN位置換のインドロカルバゾリル基であることはない。
【0048】
電荷輸送性基としては、前記式(8)〜(9)、式(10)〜(11)で表わされるいずれかの電荷輸送性基が好ましく挙げられる。
【0049】
式(8)〜(9)中、X
2は各々独立にC-H、N、O,S又はC−Lの何れかであり、Lは独立にC
6〜C
30のアリール基、C
3〜C
30のヘテロアリール基、又はC
12〜C
60のジアリールアミノ基であり、X
2を含む環と結合して縮合環を形成してもよい。また、これらの基はさらに置換基を有していても良く、前記一般式(2)〜(7)のXで説明した置換基と同様である。
【0050】
式(10)〜(11)中、R
2は水素原子、C
1〜C
20のアルキル基、C
1〜C
20のアルコキシ基、C
6〜C
30のアリール基、C
6〜C
30のアリールオキシ基、C
7〜C
36のアリールアルキル基、C
7〜C
36のアリールアルキルオキシ基、C
3〜C
30のヘテロアリール基、C
3〜C
30のヘテロアリールオキシ基、又はC
3〜C
30のシクロアルキル基であり、同一であっても異なっていてもよい。これらの基に炭化水素鎖が含まれる場合は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。また、これらの基はさらに置換基を有していても良く、前記一般式(1)のRで説明した置換基と同様である。
【0051】
一般式(1)及び(12)において、主鎖を形成する繰り返し単位は、特に限定するものではないが、重合の容易さ、素子性能向上の観点から、インドロカルバゾリル基または電荷輸送性基が置換したビニル化合物を重合または共重合してなるエチレン鎖やスチレン鎖を繰り返し単位とする重合体であることが好ましい。
【0052】
次に、一般式(1)又は式(1A)において、N-インドロカルバゾリル基を有する単位又はUzを与えるビニル化合物を以下に例示する。このビニル化合物は必要に応じて1種又は2種以上を混合して使用してもよい。また、例示された化合物に限定されない。
【0056】
次に、一般式(1)又は式(1A)において、電荷輸送性基を有する単位又はUwを与えるビニル化合物を以下に例示する。ここで、電荷輸送性基が置換したビニル化合物には、正孔輸送性基が置換したビニル化合物と電子輸送性基が置換したビニル化合物、または両方の輸送性基が置換したビニル化合物がある。このビニル化合物は必要に応じて1種又は2種以上を混合して使用してもよい。また、例示された化合物に限定されない
【0058】
本発明のインドロカルバゾール系有機電界発光素子用重合体は公知の方法でモノマーを重合して容易に製造することができる。例えば、以下の反応式により製造することができる。重合方法は、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、付加重合のいずれでもよいが、汎用的観点からラジカル重合が望ましい。
【0060】
上記は、単独のモノマーを重合して得られる重合体の製造例であるが、複数のモノマーを共重合して得られる重合体の製造例は、上記と同様にして電荷輸送性基を有するモノマーを製造し、これを上記モノマーと共重合する例が示される。
【0061】
本発明のインドロカルバゾール系重合体の重量平均分子量Mwは、1,000〜1,000,000であり、好ましくは5,000〜300,000である。Mwが1,000未満であると均一な膜を形成することが困難となり、1,000,000より大きくなると有機溶剤に対する溶解性が極端に悪くなり溶液塗布が困難となる。
【0062】
以下に、本発明のインドロカルバゾール骨格を有する重合体の一例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0065】
なお、本発明の有機電界発光素子用重合体は、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の繰り返し単位を少量存在させてもよい。例えば、メタアクリル酸エステルやスチレンから生じる単位を少量存在させてもよい。また、有機電界発光素子用重合体が共重合体である場合は、重合形式はランダムであっても、ブロックであっても差し支えない。なお、式p-11〜p-12の共重合体は交互に重合した形式となっているが、ランダムであっても、ブロックであっても差し支えない。
【0066】
本発明の有機電界発光素子用重合体は、有機EL素子の有機層に含有させることにより、優れた有機電界発光素子を与える。好ましくは、発光層、正孔輸送層、電子輸送層及び正孔阻止素子層から選ばれる少なくとも一つの有機層に含有させることがよい。更に好ましくは、正孔輸送層の材料として含有させることがよい。
【0067】
次いで、本発明の有機電界発光素子用重合体を用いた有機電界発光素子について説明する。以下、本発明の有機電界発光素子用重合体を本発明の重合体ともいう。
【0068】
本発明の重合体を用いた有機電界発光素子は、一対の陽極と陰極の間に複数の有機層を持ち、特に正孔輸送層/発光層兼電子輸送層、正孔輸送層兼発光層/電子輸送層、または正孔輸送層/発光層/電子輸送層からなることが好ましい。特に好ましくは、正孔輸送層/発光層/電子輸送層の層構造である。また、本発明の有機電界発光素子は、また各有機層を形成した後、それぞれに保護層を設けることもできる。更に、素子全体を水分や酸素から保護するために保護膜を設けてもよい。
【0069】
発光層は、発光材料を含有する層であり、蛍光であっても燐光であっても構わない。また、発光材料をドーパントとして用い、ホスト材料を併用しても構わない。
発光層における発光材料は、蛍光発光材料としては以下に示すような化合物が使用可能である。
【0071】
一方、燐光発光材料としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金から選ばれる少なくとも一つの金属を含む有機金属錯体を含有するものがよい。かかる有機金属錯体は、前記特許文献等で公知であり、これらが選択されて使用可能である。
【0072】
高い発光効率を得るための燐光発光材料としては、Ir等の貴金属元素を中心金属として有するIr(ppy)
3等の錯体類、Ir(bt)
2・acac
3等の錯体類、PtOEt
3等の錯体類が挙げられる。以下に、燐光発光材料を具体的に例示するが、これらに限定されるものではない。
【0074】
発光材料の種類を変えることによって様々な発光波長を持つ有機電界発光素子とすることができる。
【0075】
前記発光材料をドーパントとして使用する場合、発光層中に含有される量は、1〜50重量%の範囲にあることが好ましい。より好ましくは5〜30重量%である。
【0076】
発光層におけるホスト材料としては、公知のホスト材料が使用可能で有り、本発明の重合体をホスト材料として用いることもできる。また、本発明の重合体と他のホスト材料を併用してもよい。
【0077】
使用できる公知のホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する化合物であることが好ましい。
【0078】
このような他のホスト材料は、多数の特許文献等により知られているので、それらから選択することができる。ホスト材料の具体例としては、特に限定されるものではないが、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ポルフィリン系化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8―キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体、ポリシラン系化合物、ポリ(N-ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。
【0079】
正孔輸送層を形成する正孔輸送性化合物としては、本発明の有機電界発光素子用重合体有利に使用される。必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、第3級アミンのトリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導体などが例示される。低分子正孔輸送性化合物などを添加剤として1種又は2種以上配合し、組成物として用いてもよい。以下に、正孔輸送性化合物を具体的に例示するが、これらに限定されるものではない。
【0081】
電子輸送層を形成する電子輸送性化合物としては、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリアゾール誘導体などが例示される。必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、低分子電子輸送性化合物などを添加剤として1種又は2種以上配合し、組成物として用いてもよい。以下に、電子輸送性化合物を具体的に例示するが、これらに限定されるものではない。
【0083】
また、陽極からの正孔注入効率を向上させるために陽極と正孔輸送層又は発光層の間に正孔注入層を入れてもよい。正孔注入層形成する正孔注入材料としては、ポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体などの導電性高分子が使用できる。中でも、ポリチオフェン誘導体のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)が正孔注入効率の点から好ましい。正孔注入層を使用する場合、その厚さは好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下である。
【0084】
陽極は、正孔注入層、正孔輸送層または発光層などに正孔を供給するものであり、一般的にガラス基板上に形成される。本発明に用いられる陽極材料は特に限定されないが、具体的にはインジウム-スズ酸化物(ITO)、スズ酸化物などの導電性金属酸化物や金、銀、白金などの金属が挙げられる。また、市販のITO付ガラスを使用することもできる。市販のITO付ガラスは、通常、洗浄剤水溶液、溶剤洗浄後、UVオゾン照射装置又はプラズマ照射装置により清浄して使用される。
【0085】
陰極は、電子輸送層または発光層に電子を供給するものであり、本発明に用いられる陽極材料は特に限定されないが、具体的にはLi、Mg、Ca、Alなどの金属やそれらの合金、例えばMg−Ag合金、Mg−Al合金などが挙げられる。
【0086】
陰極及び陽極は公知の方法、つまり真空蒸着法やスパッタリング法によって形成できる。陰極の厚さは、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下であり、一方、陽極の厚さは、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下である。
【0087】
高分子発光材料、正孔輸送層用高分子材料又は電子輸送層用高分子材料などの高分子層の製膜法としては、一般的にスピンコート法が用いられており、その他にも大面積の有機高分子層を製膜する手法として、インクジェット法、印刷法、スプレーコート法、ディスペンサー法などが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0088】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0089】
実施例で合成した化合物は、
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム)、FD−MS、GPC、TGA、DSC、UV及びIR分析から選ばれる1種類以上の分析法により同定した。
【0090】
実施例1
スキーム(13)に従い化合物(A−1)から化合物(A−2)を合成し、次いで重合体(P−1)を合成する。
【0091】
【0092】
窒素雰囲気下、100mlナスフラスコに、化合物(A−1)を2.00g(6.02mmol)に1,2−ジクロロエタン30.0gを加え、バス温50℃にて攪拌した。臭化テトラブチルアンモニウム0.76g(2.36mmol)と水酸化カリウム17.56g(314mmol)、炭酸カリウム15.8g(114mmol)を4回に分けて投入しながら、バス温50℃で101時間攪拌した。室温まで降温後、固形分をろ別し、ろ液を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して白色粉末の化合物(B−1)を1.93g(収率81%)得た。
【0093】
次いで、窒素雰囲気下、ジムロートを具備した300mlナスフラスコに、化合物(B−1)を2.59g(6.56mmol)、イソプロピルアルコール125.0g、テトラヒドロフラン(THF)50.0g、ヒドロキノン36mg(0.33mmol)、水酸化カリウム12.5g(223mmol)を投入し、23時間、バス温90℃にて加熱還流した。室温まで降温後、蒸留水200gを装入し、イソプロピルアルコールおよびTHFを減圧留去した。この溶液を、ジクロロメタン250gで4回抽出し、抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。固形物を吸引ろ過後、溶剤を減圧留去し、粗生成物5.48gを得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製後、ジクロロメタン/イソプロピルアルコールにて2回再結晶を行い、化合物(A−2)を2.10g(収率89%)得た。
【0094】
化合物(A−2)の
1H−NMR及びFD-MSスペクトルを以下に示す。
1H−NMR(400MHz、CDCl
3):δ(ppm);8.725(1H、d、8Hz)、8.083(1H、br d、8Hz)、8.066(1H、d、8Hz)、7.861(1H、dd、10、16Hz)、7.832(1H、br d、8Hz)、7.657(2H、t、8Hz)、7.598(2H、d、8Hz)、7.542(1H、t、8Hz)、7.448(1H、t、8Hz)、7.398(2H、m)、7.315(3H、m)、5.671(1H、d、16Hz)、5.664(1H、d、10Hz)
FD−MSスペクトル:358(M+、base)
【0095】
得られた化合物(A−2)を重合させて重合体(P−1)を合成した。具体的には、化合物(A−2)0.5g(0.17mmol)をベンゼン25mlに溶解し、触媒としてAIBN0.27gを添加し、窒素置換後70℃、17時間反応させた。反応液を希釈後、アセトニトリルを用いて再沈殿精製させた。精製したポリマー分を回収し、これを再度アセトニトリルに投入して繰り返しリスラリーすることにより、重合体(P−1)を0.10gを得た。得られたポリマーは、GPC、TGA及びDSCで同定した。Mwは、GPC(THF)のポリスチレン換算で6,000、分子量分布2.0であった。また、DSCより求めたTgは、221℃であった。
【0096】
実施例2
実施例1で得た重合体(P−1)の素子評価を行った。まず、溶媒洗浄、UVオゾン処理した膜厚150nmからなるITO付ガラス基板に、正孔注入層としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS):(エイチ・シー・シュタルク株式会社製、商品名:クレビオスPCH8000)を膜厚25nmで製膜した。次に、合成した重合体(P−1)をTHFに溶解して0.4wt%溶液に調製し、スピンコート法により正孔輸送層として20nmを製膜した。次に、真空蒸着装置を用いて、発光層ドーパントとしてトリス(2−(p−トリル)ピリジン)イリジウム(III)を、発光層ホストとして4,4’−ビス(9H−カルバゾル−9−イル)ビフェニルを用い、ドーパント濃度が0.6wt%となるように共蒸着し、40nm発光層を製膜した。その後、真空蒸着装置を用いて、トリス(8−ヒドロキシキノリネート)アルミニウム(Alq
3)を35nm、陰極としてLiF/Alを膜厚170nmで製膜し、この素子をグローブボックス内で封止することにより有機電界発光素子を作製した。
【0097】
こうして得られた有機電界発光素子に外部電源を接続し、0〜10Vの直流電圧を印加した時に、電流密度20mA/cm
2で表1のような発光特性を有することが確認された。なお、素子発光スペクトルの極大波長は550nmであり、イリジウム錯体由来の緑色発光が観測された。
【0098】
実施例3
化合物(A−2)を重合させる際、開始剤であるAIBN量を0.12g、溶媒のベンゼン量を15mlに変更した以外は、実施例1と同様にして重合体(P−2)を得た。このポリマーのMwは20,000、分子量分布2.2であった。また、ポリマーのTgは214℃であった。素子評価は、実施例2と同様に行った。
【0099】
実施例4
スキーム(14)に従い化合物(A−1)から化合物(A−3)を合成し、次いで重合体(P−3)を合成する。
【0100】
【0101】
窒素雰囲気下、100mlナスフラスコに、化合物(A−1)を2.00g(6.02mmol)、ジメチルホルムアミド30.0g、4−クロロメチルスチレン1.01g(6.63mmol)を投入し、室温で攪拌した。62.3wt%水素化ナトリウム0.46g(12.05mmol)を数回に分けて投入し、投入終了後、3時間攪拌した。少量の蒸留水で過剰な水素化ナトリウムをクエンチした後、反応混液に蒸留水100gを追加装入し、固形物をろ過した。この固形物をTHFで再結晶し、化合物(A−3)を2.38g(収率88%)得た。
【0102】
化合物(A−3)の
1H−NMR及びFD-MSスペクトルを以下に示す。
1H−NMR(400MHz、CDCl
3):δ(ppm);8.141(1H、d、8Hz)、8.121(1H、br d、8Hz)、8.066(1H、br d、8Hz)、7.655(2H、m)、7.588(2H、d、8Hz)、7.542(1H、t、8Hz)、7.449(4H、m)、7.24−7.37(6H、m)、7.072(1H、ddd、2、7、8Hz)、6.729(1H、dd、11、18Hz)、6.136(2H、s)、5.754(1H、dd、1、18Hz)、5.250(1H、dd、1、11Hz)
FD−MSスペクトル:448(M+、base)
【0103】
得られた化合物(A−3)0.30g、溶媒を脱水THF30ml、触媒としてAIBNを5.6mgを投入し、60℃で48時間重合した。重合液をアセトンを用いて再沈澱精製させ、重合体(P−3)0.11gを得た。このポリマーのMwは17,000、分子量分布2.6であった。また、ポリマーのTgは217℃であった。素子評価は、実施例2と同様に行った。
【0104】
実施例5
スキーム(15)に従い化合物(A−4)を合成し、次いで重合体(P−4)を合成する。
【0105】
【0106】
窒素雰囲気下、500mlナスフラスコに、化合物(A−1)を18.2g(54.7mmol)に1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン180.0gを入れ、バス温190℃にて攪拌した。3−ヨードベンズアルデヒド25.4g(109.3mmol)と酸化第一銅1.96g(13.6mmol)、炭酸カリウム11.3g(82mmol)を投入して20時間攪拌した。室温まで降温後、固形分をろ別し、ろ液にトルエン及び水を加えて油水分離した。有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水し、減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで2回精製して白色粉末の化合物(B−2)を14.4g(収率60%)得た。
【0107】
次いで、窒素雰囲気下、500mlナスフラスコに、化合物(B−2)を14.2g(32.6mmol)、臭化メチルトリフェニルホスホニウム12.2g(34.2mmol)及び脱水テトラヒドロフラン380mlを加えて室温にて攪拌した。これにtert-ブトキシド4.0g(35.8mmol)の脱水THF溶液30mlを20分間かけて滴下しさらに室温で2時間反応させた。これを2Lナスフラスコに移して水400mlを投入した。THFを留去した後、ジクロロメタンを入れて油水分離し有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水して減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで2回精製して白色粉末の化合物(A−4)を7.2g(収率51%)得た。
【0108】
化合物(A−4)の
1H−NMR及びFD-MSスペクトルを以下に示す。
1H−NMR(400MHz、CDCl
3):δ(ppm);8.171(1H、d、8Hz)、8.152(1H、dd、8、1Hz)、7.54−7.72(6H、m)、7.51−7.54(2H、m)、7.16−7.35(1H、7H、m)、6.807(1H、dd、17、11)、6.803(1H、dt、1、8Hz)、6.056(1H、d、8Hz)、5.811(1H、d、17Hz)、5.329(1H、d、11Hz)
FD−MSスペクトル:434(M+、base)
【0109】
化合物(A−4)2.5g、脱水トルエン10ml、触媒としてAIBNを34.1mg、重合時間を20時間に変更した以外は、実施例1と同様に重合及び後処理して重合体(P−4)1.21gを得た。このポリマーのMwは13,000、分子量分布2.1であった。また、ポリマーのTgは262℃であった。素子評価は、実施例2と同様に行った。
【0110】
実施例6
スキーム(16)に従い化合物(A−5)を合成し、次いで重合体(P−5)を合成する。
【0111】
【0112】
化合物(A−1)6.4g(19.3mmol)に4−ヨードベンズアルデヒド8.8g(38.3mmol)を用いる以外は、実施例5と同様に反応、後処理を行うことにより、白色粉末の化合物(A−5)を3.2g(収率71%)得た。
【0113】
化合物(A−2)の
1H−NMR及びFD-MSスペクトルを以下に示す。
1H−NMR(400MHz、CDCl
3)、δ(ppm);8.165(1H、d、8Hz)、8.148(1H、dt、7、1Hz)、7.702(2H、br d、8Hz)、7.58−7.67(6H、m)、7.529(1H、tt、7、2Hz)、7.28−7.36(5H、m)、7.225(1H、ddd、8、7、1Hz)、6.930(1H、dd、18、11Hz)、6.817(1H、ddd、8、7、1Hz)、6.126(
1H、br d、8Hz)、5.931(1H、dd、18、1Hz)、5.434(1H、dd、11、1Hz)
FD−MSスペクトル:434(M+、base)
【0114】
化合物(A−5)2.0g、脱水トルエン20ml、触媒としてAIBNを25.6mgを投入し、重合時間を28時間に変更した以外は、実施例1と同様に重合及び後処理して重合体(P−5)1.13gを得た。このポリマーのMwは11,000、分子量分布1.9であった。また、ポリマーのTgは275℃であった。素子評価は、実施例2と同様に行った。
【0115】
実施例7
スキーム(17)に従い化合物(A−7)を合成し、次いで重合体(P−6)を合成する。
【0116】
【0117】
化合物(A−6)27.8g(108mmol)と3−ヨードベンズアルデヒド25.0g(108mmol)を用いて化合物(B−4)をまず合成し、次いでヨードベンゼン48.7g(239mmol)を反応させる以外は、実施例5と同様に反応、後処理を行うことにより、白色粉末の化合物(A−7)を7.3g(収率64%)を得た。
【0118】
化合物(A−7)の
1H−NMR及びFD-MSスペクトルを以下に示す。
1H−NMR(400MHz、CDCl
3)、δ(ppm);8.171(1H、d、9Hz)、8.149(1H、dd、8、2 Hz)、7.55−7.66(8H、m)、7.469(1H、dt、8、2Hz)、7.28−7.38(5H、m)、7.222(1H、ddd、8、7、1Hz)、6.808(1H、dd、11,18Hz)、6.789(ddd、8、7、1Hz)5.940(1H、dd、8、1Hz)、5.831(1H、dd、18、1Hz)、5.355(1H、d、11Hz)
FD−MSスペクトル:434(M+、base)
【0119】
25mlナス型フラスコに、化合物(A−7)1.2g、エチルベンゼン1mlを入れた混合液を脱揮、窒素置換を繰り返した後、バス温125℃で65時間重合した。重合液を希釈後、メタノールを用いて再沈殿精製させた。精製したポリマー分を回収し、これを再度メタノールに投入して繰り返しリスラリーすることにより、重合体(P−6)0.54gを得た。このポリマーのMwは300,000、分子量分布2.3であった。また、ポリマーのTgは280℃であった。素子評価は、実施例2と同様に行った。
【0120】
比較例1
スキーム(18)に従い4−(ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒドから化合物(B−6)をを合成し、次いで重合体(EP−1)を合成する。
【0121】
【0122】
窒素雰囲気下、4−(ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド10.00g、臭化メチルトリフェニルホスホニウム13.71g、脱水THF250mlを入れた混合液中に、カリウムt−ブトキシド4.52gの脱水THF溶液を滴下し、室温で5時間攪拌した。反応混液に蒸留水200gを添加した後、THFを減圧下で留去した。この溶液を、ジエチルエーテル200gで2回抽出し、抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。固形物を吸引ろ過後、溶剤を減圧留去し、粗生成物12.8gを得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製後、ヘキサンにて再結晶を行い、化合物(B−6)を6.26g(収率63%)得た。
【0123】
化合物(B−6)の
1H−NMR及びFD-MSスペクトルを以下に示す。
1H−NMR(400MHz、CDCl
3):δ(ppm);7.287(2H、d、8Hz)、7.237(2H、d、8Hz)、7.249(2H、t、8Hz)、7.090(4H、d、8Hz)、7.016(4H、t、8Hz)、6.661(1H、dd、11、18Hz)5.637(1H、dd、1、18Hz)、5.155(1H、dd、1、11Hz)
FD−MSスペクトル:271(M+、base)
【0124】
モノマーとして、化合物(B−6)を用いる以外は実施例1と同様な方法で重合、後処理を実施した。得られた重合体(EP−1)のMwは29,000、分子量分布2.3であった。また、ポリマーのTgは137℃であった。素子評価は、実施例2と同様に行った。
【0125】
比較例2
モノマーとして、4−(N−カルバジル)メチルスチレンを用いる以外は実施例1と同様な方法で重合、後処理を実施した。得られた4−(N−カルバジル)メチルスチレン重合体(重合体(EP−2))のMwは11,000、分子量分布2.0であった。また、ポリマーのTgは148℃であった。素子評価は、実施例2と同様に行った。
【0126】
素子評価に使用した重合体と評価結果を表1に示す。重合体はいずれも正孔輸送層に使用したものである。表1に示す輝度は、20mA/cm
2での値である。なお、素子発光スペクトルの極大波長は550nmであり、イリジウム錯体由来の緑色発光が観測された。
【0127】
【表1】
【0128】
実施例8
化合物(A−2)と合成例6で得た化合物(B−6)を共重合させて共重合体(CP−1)を合成した。具体的にはスキーム(19)に示すように、化合物(A−2)0.36g(1.0mmol)、化合物(B−6)0.07g(0.25mmol)をベンゼン20mlに溶解し、触媒としてAIBN4.7mgを添加し、窒素置換後70℃、16時間反応させた。反応液を希釈後、アセトニトリルを用いて再沈殿精製させた。
精製したポリマー分を回収し、これを再度アセトニトリルに投入して繰り返しリスラリーすることにより、重合体(CP−1)を0.14g得た。得られた重合体は、GPC、TGA及びDSCで同定した。Mwは、GPC(THF)のポリスチレン換算で9,000、分子量分布2.2であった。重合体(CP−1)について、化合物(A−2)及び化合物(B−6)由来の繰り返し単位の比を
1H−NMRで測定したところ、(A−2)/(B-6)=72/28(mol/mol)であった。また、DSCより求めたTgは、193℃であった。
【0129】
【0130】
実施例9
実施例8で得た重合体(CP−1)の素子評価は、まず溶媒洗浄、UVオゾン処理した膜厚150nmからなるITO付ガラス基板に、正孔注入層としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS):(エイチ・シー・シュタルク株式会社製、商品名:クレビオスPCH8000)を膜厚40nmで製膜した。次に、合成した重合体(CP−1)をテトラヒドロフランに溶解して0.4wt%溶液に調製し、スピンコート法により正孔輸送層として20nmを製膜した。次に、真空蒸着装置を用いて、発光層ドーパントとしてトリス(2−(p−トリル)ピリジン)イリジウム(III)、発光層ホストとして、4,4’−ビス(9H−カルバゾル−9−イル)ビフェニルを用い、ドーパント濃度が0.6wt%となるように共蒸着し、発光層として40nmを製膜した。その後、真空蒸着装置を用いて、Alq
3を25nm、陰極としてLiF/Alを膜厚170nmで製膜し、この素子をグローブボックス内で封止することにより有機電界発光素子を作製した。
【0131】
こうして得られた有機電界発光素子に外部電源を接続し、0〜10Vの直流電圧を印加した時に、電流密度20mA/cm
2で、表2のような発光特性を有することが確認された。なお、素子発光スペクトルの極大波長は550nmであり、イリジウム錯体由来の緑色発光が観測された。
【0132】
実施例10
開始剤であるAIBN量を2.0mgに変更した以外は、実施例8と同様にして共重合体(CP−2)を得た。このポリマーのMwは24,000、分子量分布2.3であり、(A−2)/(B−6)は72/28(mol/mol)であり、Tgは194℃であった。素子評価は、実施例9と同様に行った。
【0133】
実施例11
スキーム(20)に従い重合体(CP−3)を合成する。
【0134】
【0135】
50mlナス型フラスコに、化合物(A−3)0.45g(1.0mmol)と化合物(B−6)0.03g(0.11mmol)、脱水THF20mlを入れた混合液中に、触媒としてAIBNを5.0mgを投入し、脱揮、窒素置換を繰り返した後、60℃で24時間重合した。重合液を希釈後、アセトンを用いて再沈殿精製させた。精製したポリマー分を回収し、これを再度アセトンに投入して繰り返しリスラリーすることにより、共重合体(CP−3)0.14gを得た。このポリマーのMwは21,000、分子量分布2.3であり、Tgは204℃であり、(A−3)/(B−6)は84/16(mol/mol)であった。得られた共重合体(CP−3)の素子評価は、実施例9と同様に行った。
【0136】
比較例3
スキーム(21)に従い、重合体(EP−3)を合成する。
【0137】
【0138】
モノマーとして、スチレンと化合物(B−6)を用いる以外は実施例8と同様な方法で重合及び後処理を実施した。得られた重合体(EP−3)のMwは32,000、分子量分布2.6であり、Tgは119℃であった。スチレン(St)及び化合物(B−6)に由来する繰り返し単位の比は、(St)/(B−6)=62/38(mol/mol)であった。また、ポリマーの素子評価は、実施例9と同様に行った。
【0139】
素子評価に使用した重合体と評価結果を表2に示す。重合体はいずれも正孔輸送層に使用したものである。
【0140】
【表2】
【0141】
本発明の有機電界発光素子用重合体を用いることにより、有機電界発光素子の正孔注入性が改善され、発光効率に優れるものとなる。また、塗布成膜法等による大面積素子が容易に作製可能となる。