特許第5976947号(P5976947)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5976947多孔質層、多孔質層を積層してなるセパレータ、および多孔質層またはセパレータを含む非水電解液二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976947
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】多孔質層、多孔質層を積層してなるセパレータ、および多孔質層またはセパレータを含む非水電解液二次電池
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/28 20060101AFI20160817BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20160817BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20160817BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20160817BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   C08J9/28 102
   C08J9/28CEP
   B32B27/32 Z
   B32B5/24 101
   H01M10/0566
   H01M2/16 P
   H01M2/16 L
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-539903(P2015-539903)
(86)(22)【出願日】2015年7月31日
(86)【国際出願番号】JP2015071849
(87)【国際公開番号】WO2016031492
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2015年8月7日
(31)【優先権主張番号】特願2014-175487(P2014-175487)
(32)【優先日】2014年8月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127498
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100146329
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 力
(72)【発明者】
【氏名】倉金 孝輔
(72)【発明者】
【氏名】原 秀作
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−218982(JP,A)
【文献】 特開2014−037136(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/073113(WO,A1)
【文献】 特許第4253853(JP,B2)
【文献】 特許第4570271(JP,B2)
【文献】 特開2011−102216(JP,A)
【文献】 特開2004−300172(JP,A)
【文献】 特開2004−098414(JP,A)
【文献】 特開2009−268836(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/146811(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
B32B 1/00−43/00
H01M 2/16、10/0566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1区画が縦2.3μm、横2.3μm、厚さが多孔質層そのものの厚さの直方体に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときに、32区画間の空隙率の変動率が16.0%以下であり、
ポリオレフィン、含フッ素樹脂、含フッ素ゴム、芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド(アラミド樹脂)、ゴム類、融点やガラス転移温度が180℃以上の樹脂および水溶性ポリマーからなる群から1種以上選択される樹脂、およびフィラーを含有し、
上記樹脂およびフィラーを含む多孔質層におけるフィラーの含有量が60質量%以上、99質量%以下であり、
前記フィラーの体積基準の平均粒子径は、D10が0.005〜0.4μm、D50が0.01〜1.0μm、D90が0.5〜5.0μmであり、かつ、D10とD90との差が2μm以下である、非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層。
【請求項2】
1区画が縦2.3μm、横2.3μm、厚さが多孔質層そのものの厚さの直方体に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときに、32区画間の空隙率の変動率が16.0%以下であり、
ポリオレフィンおよび含フッ素樹脂からなる群から1種以上選択される樹脂を含み、
フィラーを含まない非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層。
【請求項3】
1区画が縦2.3μm、横2.3μm、厚さが上記多孔質層そのものの厚さの直方体に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときに、32区画間の空隙率の変動率が7.0%以下である、請求項に記載の非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層。
【請求項4】
1区画が縦2.3μm、横2.3μm、厚さが上記多孔質層そのものの厚さの直方体に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときに、32区画間の空隙率の変動率が7.0%以下である、請求項に記載の非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層。
【請求項5】
フィブリル状または粒状の樹脂を含む樹脂層である、請求項2または4に記載の非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層。
【請求項6】
ポリオレフィンを主成分とする多孔質フィルムの片面または両面に、請求項1〜5の何れか1項に記載の非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層を積層してなる、非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【請求項7】
正極、請求項に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ、および負極がこの順で配置されてなる、非水電解液二次電池用部材。
【請求項8】
請求項1〜5の何れか1項に記載の非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層、または請求項に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータを含む、非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池用部材として好適な多孔質層、多孔質層を積層してなるセパレータ、および多孔質層またはセパレータを含む非水電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池は、エネルギー密度が高く、それゆえ、現在、パーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末等の機器に用いる電池として広く使用されている。
【0003】
そして、非水電解液二次電池においては、安全性等の性能の向上を目的として、正極と負極との間に配置されるセパレータの改良が種々試みられている。特に、ポリオレフィンからなる多孔質フィルムは電気絶縁性に優れると共に良好なイオン透過性を示すことから、非水電解液二次電池のセパレータとして広く利用されており、当該セパレータに関する種々の提案がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポリオレフィン樹脂多孔膜の少なくとも片面に、無機フィラーまたは融点および/またはガラス転移温度が180℃以上の樹脂を含有する厚さ0.2μm以上、100μm以下の多孔質層を備え、透気度が1〜650秒/100ccである多層多孔膜を用いた非水電解液電池用セパレータが提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、ポリオレフィン層と、このポリオレフィン層の片面または両面に形成され、耐熱性樹脂および耐酸化性セラミック粒子を含有する耐熱絶縁層とを備え、上記耐熱絶縁層が、上記耐酸化性セラミック粒子を60〜90%の割合で含有する耐熱絶縁層付きセパレータを用いた非水電解液電池用セパレータが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国公開特許公報「特開2007−273443号(2007年10月18日公開)」
【特許文献2】日本国公開特許公報「特開2009−87889号(2009年4月23日公開)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記非水電解液二次電池には、繰り返し使用することができるように、充放電サイクルを繰り返した後においても初期の放電容量を維持すること、即ち、充分なサイクル特性が求められている。
【0008】
しかしながら、特許文献1,2に記載された非水電解液電池用セパレータを用いた非水電解液二次電池は、充放電サイクルを繰り返すと、初期の放電容量を維持することができなくなる傾向にあり、サイクル特性が充分であるとは言えない。従って、サイクル特性に優れた非水電解液二次電池が求められている。
【0009】
本発明は上記課題を考慮してなされたものであり、その主たる目的は、充放電サイクルを繰り返した後においても初期の放電容量を概ね維持することができる、サイクル特性に優れた非水電解液二次電池、非水電解液二次電池用部材として好適な多孔質層、多孔質層を積層してなるセパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、ポリオレフィンを主成分とする多孔質フィルムの片面または両面に積層される多孔質層の空隙率に着目し、当該空隙率の変動率を或る一定の範囲内に抑えることにより、上記多孔質フィルムの片面または両面に、上記多孔質層を積層してなる積層体をセパレータとして含む非水電解液二次電池がサイクル特性に優れることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る多孔質層は、1区画が縦2.3μm、横2.3μm、厚さが多孔質層そのものの厚さの直方体に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときに、32区画間の空隙率の変動率が16.0%以下であることを特徴としている。
【0012】
本発明に係る多孔質層は、1区画が縦2.3μm、横2.3μm、厚さが多孔質層そのものの厚さの直方体に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときに、32区画間の空隙率の変動率が7.0%以下であることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る多孔質層は、フィブリル状または粒状の樹脂を含む樹脂層であることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る多孔質層は、上記多孔質層が、フィラーおよびバインダー樹脂を含んでいることがより好ましい。
【0015】
本発明に係る多孔質層は、体積基準の平均粒子径が、D10が0.005〜0.4μm、D50が0.01〜1.0μm、およびD90が0.5〜5.0μmであり、かつ、D10とD90との差が2μm以下であるフィラーを含有することが好ましい。
【0016】
また、本発明に係るセパレータは、ポリオレフィンを主成分とする多孔質フィルムの片面または両面に、上記多孔質層を積層してなることを特徴としている。
【0017】
また、本発明に係る非水電解液二次電池用部材は、正極、上記多孔質層、および負極がこの順で配置されてなることを特徴としている。
【0018】
また、本発明に係る非水電解液二次電池用部材は、正極、上記セパレータ、および負極がこの順で配置されてなることを特徴としている。
【0019】
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、上記多孔質層または上記セパレータを含むことを特徴としている。
【0020】
また、本発明は、ポリオレフィンを主成分とする多孔質フィルムの片面または両面に積層されているか、或いは、正極または負極の少なくとも一方の表面上に積層されている多孔質層であって、
上記多孔質層が、フィブリル状または粒状の樹脂を含む樹脂層であり、
上記多孔質層を1区画が縦2.3μm、横2.3μm、厚さが多孔質層の厚さの直方体に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときに、32区画間の空隙率の変動率が16.0%以下である、多孔質層を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、充放電サイクルを繰り返した後においても初期の放電容量を概ね維持することができる、サイクル特性に優れた非水電解液二次電池、非水電解液二次電池用部材として好適な多孔質層、多孔質層を積層してなるセパレータを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る多孔質層を形成する塗工装置の構成の一例を示す、概略の側面図である。
図2】上記塗工装置の概略の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施の形態について、詳細に説明する。尚、本出願において、「A〜B」とは、A以上、B以下であることを示している。
【0024】
本発明に係る多孔質層は、1区画が縦2.3μm、横2.3μm、厚さが多孔質層そのものの厚さの直方体に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときに、32区画間の空隙率の変動率が16.0%以下である。
【0025】
また、本発明に係る多孔質層は、例えば、ポリオレフィンを主成分とする多孔質フィルムの片面または両面に積層されるか、或いは、正極または負極の少なくとも一方の表面上に形成され得る。
【0026】
<多孔質フィルム>
本発明の多孔質層がその片面または両面に積層され得る多孔質フィルムは、セパレータの基材であり、ポリオレフィンを主成分とし、その内部に連結した細孔を多数有しており、一方の面から他方の面に気体や液体を通過させることが可能となっている。
【0027】
多孔質フィルムに占めるポリオレフィンの割合は、多孔質フィルム全体の50体積%以上であり、90体積%以上であることがより好ましく、95体積%以上であることがさらに好ましい。また、上記ポリオレフィンには、重量平均分子量が5×10〜15×10の高分子量成分が含まれていることがより好ましい。特に、ポリオレフィンに重量平均分子量が100万以上の高分子量成分が含まれていると、多孔質フィルム、および多孔質フィルムを含む積層体(セパレータ)の強度が向上するのでより好ましい。
【0028】
熱可塑性樹脂である上記ポリオレフィンとしては、具体的には、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン等の単量体を(共)重合してなる単独重合体(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン)または共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体)が挙げられる。このうち、過大電流が流れることをより低温で阻止(シャットダウン)することができるため、ポリエチレンがより好ましい。当該ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン−α−オレフィン共重合体)、重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレン等が挙げられ、このうち、重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンがさらに好ましい。
【0029】
多孔質フィルムの膜厚は、積層体(セパレータ)の膜厚を考慮して適宜決定すればよいものの、多孔質フィルムを基材として用い、多孔質フィルムの片面または両面に多孔質層を積層して積層体(セパレータ)を形成する場合においては、4〜40μmであることが好ましく、7〜30μmであることがより好ましい。
【0030】
多孔質フィルムの単位面積当たりの目付は、積層体(セパレータ)の強度、膜厚、重量、およびハンドリング性を考慮して適宜決定すればよいものの、積層体を非水電解液二次電池のセパレータとして用いた場合の当該電池の重量エネルギー密度や体積エネルギー密度を高くすることができるように、通常、4〜20g/mであることが好ましく、5〜12g/mであることがより好ましい。
【0031】
多孔質フィルムの透気度は、ガーレ値で30〜500 sec/100mLであることが好ましく、50〜300 sec/100mLであることがより好ましい。多孔質フィルムが上記透気度を有することにより、積層体をセパレータとして用いたときに、充分なイオン透過性を得ることができる。
【0032】
多孔質フィルムの空隙率は、電解液の保持量を高めると共に、過大電流が流れることをより低温で確実に阻止(シャットダウン)する機能を得ることができるように、20〜80体積%であることが好ましく、30〜75体積%であることがより好ましい。また、多孔質フィルムが有する細孔の孔径は、積層体をセパレータとして用いたときに、充分なイオン透過性を得ることができ、かつ、正極や負極への粒子の入り込みを防止することができるように、3μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。
【0033】
多孔質フィルムの製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、ポリオレフィン等の樹脂に可塑剤を加えてフィルムに成形した後、可塑剤を適当な溶媒で除去する方法が挙げられる。
【0034】
具体的には、例えば、超高分子量ポリエチレンと、重量平均分子量が1万以下の低分子量ポリオレフィンとを含むポリオレフィン樹脂を用いて多孔質フィルムを製造する場合には、製造コストの観点から、以下に示す方法によって当該多孔質フィルムを製造することが好ましい。
(1)超高分子量ポリエチレン100重量部と、重量平均分子量が1万以下の低分子量ポリオレフィン5〜200重量部と、炭酸カルシウム等の無機充填剤100〜400重量部とを混練してポリオレフィン樹脂組成物を得る工程、
(2)上記ポリオレフィン樹脂組成物を用いてシートを成形する工程、
次いで、
(3)工程(2)で得られたシートから無機充填剤を除去する工程、
(4)工程(3)で無機充填剤を除去したシートを延伸して多孔質フィルムを得る工程。
或いは、
(3’)工程(2)で得られたシートを延伸する工程、
(4’)工程(3’)で延伸したシートから無機充填剤を除去して多孔質フィルムを得る工程。
【0035】
尚、多孔質フィルムは、上述した物性を有する市販品を用いることもできる。
【0036】
また、多孔質フィルムには、多孔質層を形成する前に、つまり、後述する塗工液を塗工する前に、親水化処理を施しておくことがより好ましい。多孔質フィルムに親水化処理を施しておくことにより、塗工液の塗工性がより向上し、それゆえ、より均一な多孔質層を形成することができる。この親水化処理は、塗工液に含まれる溶媒(分散媒)に占める水の割合が高い場合に有効である。上記親水化処理としては、具体的には、例えば、酸やアルカリ等による薬剤処理、コロナ処理、プラズマ処理等の公知の処理が挙げられる。上記親水化処理のうち、比較的短時間で多孔質フィルムを親水化することができる上に、親水化が多孔質フィルムの表面近傍のみに限られ、多孔質フィルムの内部を変質しないことから、コロナ処理がより好ましい。
【0037】
多孔質フィルムは、必要に応じて、本発明に係る多孔質層の他に、別の多孔質層を含んでいてもよい。当該別の多孔質層としては、耐熱層や接着層、保護層等の公知の多孔質層が挙げられる。具体的な別の多孔質層としては、後述する本発明に係る多孔質層と同じ組成の多孔質層が挙げられる。
【0038】
<多孔質層>
本発明に係る多孔質層は、通常、樹脂を含んでなる樹脂層である。本発明に係る多孔質層は、例えば、多孔質フィルムの片面または両面に積層されるか、或いは、正極または負極の少なくとも一方の表面上に積層されることによって形成され、好ましくは、多孔質フィルムの片面または両面に積層される耐熱層または接着層である。多孔質層を構成する樹脂は、電池の電解液に不溶であり、また、その電池の使用範囲において電気化学的に安定であることが好ましい。多孔質フィルムの片面に多孔質層が積層される場合には、当該多孔質層は、好ましくは、非水電解液二次電池としたときの、多孔質フィルムにおける正極と対向する面に積層され、より好ましくは、正極と接する面に積層される。
【0039】
本発明に係る多孔質層は、単独で、非水電解液二次電池に使用できるセパレータとなり得る。また、本発明に係る多孔質層は、非水電解液二次電池に使用できるセパレータ用多孔質層、すなわち上記セパレータを構成する多孔質層であり得る。
【0040】
本発明に係る多孔質層は、フィブリル状または粒状の樹脂を含んでなる樹脂層であり得る。
【0041】
当該樹脂としては、具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン;ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素樹脂;フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体やエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素ゴム;芳香族ポリアミド;全芳香族ポリアミド(アラミド樹脂);スチレン−ブタジエン共重合体およびその水素化物、メタクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリ酢酸ビニル等のゴム類;ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルアミド、ポリエステル等の融点やガラス転移温度が180℃以上の樹脂;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸等の水溶性ポリマー等が挙げられる。
【0042】
また、上記芳香族ポリアミドとしては、具体的には、例えば、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)、ポリ(パラベンズアミド)、ポリ(メタベンズアミド)、ポリ(4,4’−ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン−4,4’−ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(メタフェニレン−4,4’−ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(パラフェニレン−2,6−ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(メタフェニレン−2,6−ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(2−クロロパラフェニレンテレフタルアミド)、パラフェニレンテレフタルアミド/2,6−ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体、メタフェニレンテレフタルアミド/2,6−ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体等が挙げられる。このうち、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)がより好ましい。
【0043】
上記樹脂のうち、ポリオレフィン、含フッ素樹脂、芳香族ポリアミド、および水溶性ポリマーがより好ましい。さらに、水溶性ポリマーは、多孔質層を形成するときの溶媒として水を用いることができるため、プロセスや環境負荷の面からより好ましく、ポリビニルアルコール、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウムがさらに好ましく、セルロースエーテルが特に好ましい。
【0044】
セルロースエーテルとしては、具体的には、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、シアンエチルセルロース、オキシエチルセルロース等が挙げられ、長時間にわたる使用における劣化が少なく、化学的な安定性に優れているCMCおよびHECがより好ましく、CMCが特に好ましい。
【0045】
上記樹脂は、バインダー樹脂であり得る。バインダー樹脂としては、含フッ素樹脂、芳香族ポリアミド、および水溶性ポリマーが特に好ましい。
【0046】
フィブリル状または粒状の樹脂を含んでなる樹脂層に用いられる樹脂としては、ポリオレフィン、含フッ素樹脂、および、芳香族ポリアミドが特に好ましく、中でも、含フッ素樹脂がより好ましい。
【0047】
上記多孔質層は、フィラーを含んでいることがより好ましい。従って、多孔質層がフィラーを含む場合には、上記樹脂は、バインダー樹脂としての機能を有することとなる。
【0048】
本発明において多孔質層に含まれていてもよいフィラーとしては、有機物からなるフィラーおよび無機物からなるフィラーが挙げられる。有機物からなるフィラーとしては、具体的には、例えば、スチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル等の単量体の単独重合体或いは2種類以上の共重合体;ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン−エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸;等からなるフィラーが挙げられる。無機物からなるフィラーとしては、具体的には、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、窒化チタン、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化アルミニウム、マイカ、ゼオライト、ガラス等の無機物からなるフィラーが挙げられる。フィラーは、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
上記フィラーのうち、一般に、充填材と称される、無機物からなるフィラーが好適であり、シリカ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、マイカ、ゼオライト等の無機酸化物からなるフィラーがより好ましく、シリカ、酸化マグネシウム、酸化チタン、およびアルミナからなる群から選択される少なくとも1種のフィラーがさらに好ましく、アルミナが特に好ましい。アルミナには、α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ等の多くの結晶形が存在するが、何れも好適に使用することができる。この中でも、熱的安定性および化学的安定性が特に高いため、α−アルミナが最も好ましい。
【0050】
フィラーの形状は、原料である有機物または無機物の製造方法や、多孔質層を形成するための塗工液を作製するときのフィラーの分散条件等によって変化し、球形、長円形、短形、瓢箪形等の形状、或いは特定の形状を有さない不定形等、様々な形状が存在するものの、下記粒子径を有していれば、どのような形状であってもよい。
【0051】
無機酸化物からなるフィラーは、平均粒子径を制御するために、湿式粉砕装置を用いて湿式粉砕してもよい。つまり、粗大フィラーと適当な溶媒とを湿式粉砕装置に入れて湿式粉砕し、所望の平均粒子径を有するフィラーとしてもよい。上記溶媒は、特に限定されるものではないが、プロセスや環境負荷の観点から、水を用いることが望ましい。また、後述する塗工液の塗工性を考慮して、水に、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級アルコール;アセトン、トルエン、キシレン、ヘキサン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の有機溶媒を混合しておいてもよい。
【0052】
上記湿式粉砕装置は、撹拌型、およびボールミルやビーズミル(ダイノーミル)等のメディア型に大別されており、フィラーの種類に応じて最適な粉砕装置を用いればよい。硬度が高い無機酸化物からなるフィラーを用いる場合には、粉砕能力が高いビーズミル(ダイノーミル)を使用するのが最適である。ビーズミルの粉砕力は、ビーズ材質、ビーズ径、(ダイノーミルのベッセル容積に対する)ビーズ充填率、流量、周速等の因子に大きく影響されるので、所望の平均粒子径を有するフィラーを得るには、上記因子を考慮の上、湿式粉砕で得られるフィラーのスラリーを所望の滞留時間に従って採取すればよい。湿式粉砕で得られるスラリーにおけるフィラーの濃度は、6〜50重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましい。
【0053】
尚、滞留時間は、パス方式、循環方式のそれぞれにおいて、次式
滞留時間(パス方式)(分)=[ベッセル容積(L)−ビーズ充填容積(L)+ビーズ間隙容積(L)]/流量(L/分)
滞留時間(循環方式)(分)=[{ベッセル容積(L)−ビーズ充填容積(L)+ビーズ間隙容積(L)}/スラリー量(L)]×循環時間(分)
から算出することができる。
【0054】
フィラーの体積基準の平均粒子径および粒度分布は、D10が0.005〜0.4μmであることが好ましく、0.01〜0.35μmであることがより好ましい;D50が0.01〜1.0μmであることが好ましく、0.1〜0.8μmであることがより好ましい;D90が0.5〜5.0μmであることが好ましく、0.8〜2.5μmであることがより好ましい。また、D10とD90との差は、2.5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましく、1.5μm以下であることがさらに好ましく、1μm以下であることが特に好ましい。このような平均粒子径および粒度分布を有するフィラーを用いることによって、多孔質層の空隙率の変動率が小さくなる傾向がある。添加量にもよるが、平均粒子径や粒度分布を上記範囲にすることにより、フィラーは最密充填構造から適度に外れた構造を構築する。このため、多孔質層の空隙率が増加し、適度なイオン透過性(通気度)を保ちつつ、単位面積当たりの目付を減少させることができる。それゆえ、結果としてイオン透過性に優れ、非水電解液二次電池のセパレータとして好適な軽量な積層体を形成することができる。平均粒子径や粒度分布が上記範囲を超えるフィラーを用いた場合には、多孔質層を形成するための塗工液を作製したときにフィラーが沈降しやすい傾向にある。また、フィラーが最密充填構造に近い構造を構築し易く、多孔質層の空隙率が減少するので、結果としてイオン透過性に劣ると共に単位面積当たりの目付を増加させる傾向にある。一方、平均粒子径や粒度分布が上記範囲未満のフィラーを用いた場合には、フィラーの粒子間の凝集力が強くなりすぎて、分散性が低下する傾向にある。
【0055】
フィラーは、粒子径や比表面積が互いに異なる2種類以上を組み合わせて用いてもよい。フィラーの平均粒子径を算出する方法としては、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)にて粒子を25個任意に抽出して、それぞれの粒子径(直径)を測定し、25個の粒子径の平均値として算出する方法や、BET比表面積を測定し、球状近似することで平均粒子径を算出する方法がある。尚、SEMによる粒子径の平均値の算出時において、フィラーの形状が球状以外の場合は、フィラーにおける最大長を示す方向の長さをその粒子径とする。
【0056】
フィラーの比表面積の測定方法としては、水蒸気吸着による測定方法と、窒素吸着による測定方法とがある。具体的な測定方法は後述する。少なくとも上記何れかの方法を行うことにより、フィラーの比表面積を測定することができる。
【0057】
多孔質層がフィラーを含んでいる場合において、フィラーの含有量は、多孔質層の1〜99体積%であることが好ましく、5〜95体積%であることがより好ましい。フィラーの含有量を上記範囲とすることにより、フィラー同士の接触によって形成される空隙が、樹脂等によって閉塞されることが少なくなり、充分なイオン透過性を得ることができると共に、単位面積当たりの目付を適切な値にすることができる。
【0058】
フィラーおよびバインダー樹脂を含む多孔質層は、フィラーがバインダー樹脂によって結着された多孔質層であることが好ましい。即ち、樹脂(バインダー樹脂)中にフィラーが分散した多孔質層は、フィラーおよびバインダー樹脂を含む多孔質層として好適ではない。フィラーおよびバインダー樹脂を含む多孔質層におけるフィラーの含有量は、多孔質層全体の質量に対して、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、最も好ましくは90質量%以上である。また、好ましくは99質量%以下である。
【0059】
本発明においては、通常、上記樹脂を溶媒に溶解させると共に、必要に応じて上記フィラーを分散させることにより、多孔質層を形成するための塗工液を作製する。ここで、上記樹脂は溶媒に分散させてもよい。上記樹脂を溶媒に分散させたエマルション、またはサスペンションを塗工液に用いることによって、粒状の樹脂を含む樹脂層を形成し得る。
【0060】
上記溶媒(分散媒)は、上記塗工液を塗布する対象(例えば、多孔質フィルム、正極、負極等)に悪影響を及ぼさず、上記樹脂を均一かつ安定に溶解し、上記フィラーを均一かつ安定に分散させることができればよく、特に限定されるものではない。上記溶媒(分散媒)としては、具体的には、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級アルコール;アセトン、トルエン、キシレン、ヘキサン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。上記溶媒(分散媒)は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
塗工液は、所望の多孔質層を得るのに必要な樹脂固形分(樹脂濃度)やフィラー量等の条件を満足することができれば、どのような方法で形成されてもよい。塗工液の形成方法としては、具体的には、例えば、機械攪拌法、超音波分散法、高圧分散法、メディア分散法等が挙げられる。また、例えば、スリーワンモーター、ホモジナイザー、メディア型分散機、圧力式分散機等の従来公知の分散機を使用してフィラーを溶媒(分散媒)に分散させてもよい。さらに、樹脂を溶解若しくは膨潤させた液、或いは樹脂の乳化液を、所望の平均粒子径を有するフィラーを得るための湿式粉砕時に、湿式粉砕装置内に供給し、フィラーの湿式粉砕と同時に塗工液を調製することもできる。つまり、フィラーの湿式粉砕と塗工液の調製とを一つの工程で同時に行ってもよい。また、上記塗工液は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記樹脂およびフィラー以外の成分として、分散剤や可塑剤、界面活性剤、pH調整剤等の添加剤を含んでいてもよい。尚、添加剤の添加量は、本発明の目的を損なわない範囲であればよい。
【0062】
塗工液の多孔質フィルムまたは正極、若しくは負極への塗布方法、つまり、必要に応じて親水化処理が施された多孔質フィルムの表面、または正極、若しくは負極の少なくとも一方の表面上への多孔質層の形成方法は、特に制限されるものではない。多孔質フィルムの両面に多孔質層を積層する場合においては、多孔質フィルムの一方の面に多孔質層を形成した後、他方の面に多孔質層を形成する逐次積層方法や、多孔質フィルムの両面に多孔質層を同時に形成する同時積層方法を行うことができる。多孔質層の形成方法としては、例えば、塗工液を多孔質フィルムの表面に直接塗布した後、溶媒(分散媒)を除去する方法;塗工液を適当な支持体に塗布し、溶媒(分散媒)を除去して多孔質層を形成した後、この多孔質層と多孔質フィルムとを圧着させ、次いで支持体を剥がす方法;塗工液を適当な支持体に塗布した後、塗布面に多孔質フィルムを圧着させ、次いで支持体を剥がした後に溶媒(分散媒)を除去する方法;塗工液中に多孔質フィルムを浸漬し、ディップコーティングを行った後に溶媒(分散媒)を除去する方法;等が挙げられる。多孔質層の厚さは、塗工後の湿潤状態(ウェット)の塗工膜の厚さ、樹脂とフィラーとの重量比、塗工液の固形分濃度(樹脂濃度とフィラー濃度との和)等を調節することによって制御することができる。尚、支持体としては、例えば、樹脂製のフィルム、金属製のベルト、ドラム等を用いることができる。
【0063】
上記塗工液を多孔質フィルム、正極、負極、または支持体に塗布する方法は、必要な目付や塗工面積を実現し得る方法であればよく、特に制限されるものではない。塗工液の塗布方法としては、従来公知の方法を採用することができ、具体的には、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクターブレードコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、バーコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法等が挙げられる。
【0064】
本発明においては、塗工液を例えば基材(多孔質フィルム)の表面、正極または負極の少なくとも一方の表面により均一に塗布することができるように、皺伸ばし機構を備えた塗工装置を用いて塗布することがより好ましい。具体的には、当該皺伸ばし機構は、湾曲ロール(例えば、弓型ロール、バナナ型ロール、曲線ロール)、フラットエキスパンダロール、ヘリカルロール、または、ピンチエキスパンダであることがより好ましい。
【0065】
粘度が高い塗工液の塗工方法としては、好ましくは、バーコーター法またはダイコーター法が挙げられる。粘度が低い塗工液の塗工方法としては、好ましくは、グラビアコーター法が挙げられる。そして、グラビアコーター法を用いる場合には、上記皺伸ばし機構として、ピンチエキスパンダを備えた塗工装置を用いることが特に好ましい。
【0066】
上記皺伸ばし機構によって基材の皺を伸ばしながら塗工液を塗布すれば、多孔質層に偏りおよび皺が発生することを、効果的に抑制することができる。つまり、塗工液の塗工ムラが無くなるので、均一に塗工することができ、多孔質層の空隙率の変動率が小さくなる傾向がある。
【0067】
塗工装置としては、特に限定されるものではなく、皺伸ばし機構を備えた塗工装置としては、例えば、特開2001−316006号公報、または、特開2002−60102号公報に記載の塗工装置を用いることができる。図1および図2に、本発明に係る多孔質層を形成する塗工装置の構成の一例(概略の側面図および平面図)を示す。
【0068】
本実施の形態に係る塗工装置は、巻き出し機15を備えており、巻き出し機15から捲き出された基材10は、ガイドロール16を介して、グラビアロール18に送られる。そして、グラビアロール18によって、基材10の片面に、多孔質層を形成するための塗工液11が塗工される。そして、塗工液11が塗工された基材10は、ガイドロール17を介して、次の工程へ送られる。
【0069】
ガイドロール16とグラビアロール18との間、および、グラビアロール18とガイドロール17との間には、基材10の両縁部をそれぞれ挟持する左右複数対の押付ローラ20(ピンチエキスパンダ)が設けられている。そして、当該押付ローラ20によって、幅方向の外側へ向かって基材10に張力が加えられ、これによって、基材10に縦皺が形成されることを防ぐことができる。
【0070】
尚、グラビアロール18とガイドロール17との間に、塗工液11を乾燥させるための乾燥装置を設けることも可能であるし、ガイドロール17の下流に、塗工液11を乾燥させるための乾燥装置を設けることも可能である。また、押付ローラをさらに備えた乾燥装置を設けることも可能であるし、押付ローラを備えていない乾燥装置を設けることも可能である。尚、乾燥装置の具体的な例については、後述する。
【0071】
図2に示すように、基材10を幅方向に挟むように対をなしている押付ローラ20は、それらの軸心を基材10の搬送方向側で交差させるように、基材10の搬送方向に対して傾斜して配置されている。尚、傾斜角度は、所望の角度に調節することができる。上記構成によれば、基材10に縦皺が形成されることを、より効果的に防止することができる。
【0072】
基材10を幅方向に挟むように対をなしている押付ローラ20は、基材10の両縁部をそれぞれ挟持したときに、基材10の幅方向における基材10と押付ローラ20との接触長さDaおよびDbの合計が、基材10の幅寸法Dの25%以下、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下となるように構成されている。上記構成によれば、押付ローラ20による基材10のダメージを少なくすることができる。
【0073】
基材10の変形や破損を防止する観点からは、押付ローラ20の外周面の形状は、平面状または湾曲面状とし、局所的な応力集中が基材10に掛からないようにすることが好ましい。このとき、基材10を厚さ方向に挟むように対をなしている押付ローラ20は、外周面を同じ形状にしてもよいし、一方の外周面を平面状とすると共に、他方の外周面を湾曲面状としてもよい。
【0074】
また、押付ローラ20の外周面に、ゴムリングを装着してもよい。上記構成であれば、押付ローラ20と基材10との動摩擦係数が大きくなるので、押付ローラ20の幅を小さくすることができる(換言すれば、接触長さDaおよびDbの合計を短くすることができる)。その結果、基材10の両縁部において製品として使えないロス部分を減らすことができると共に、押付ローラ20が基材10に当たることによって生じる基材10の変形や破損を防止することができる。
【0075】
溶媒(分散媒)の除去方法は、乾燥による方法が一般的である。乾燥方法としては、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等が挙げられるが、溶媒(分散媒)を充分に除去することができるのであれば如何なる方法でもよい。また、塗工液に含まれる溶媒(分散媒)を他の溶媒に置換してから乾燥を行ってもよい。溶媒(分散媒)を他の溶媒に置換してから除去する方法としては、例えば、塗工液に含まれる溶媒(分散媒)に溶解し、かつ、塗工液に含まれる樹脂を溶解しない他の溶媒(以下、溶媒X)を使用し、塗工液が塗布されて塗膜が形成された多孔質フィルムまたは支持体を上記溶媒Xに浸漬し、多孔質フィルム上または支持体上の塗膜中の溶媒(分散媒)を溶媒Xで置換した後に、溶媒Xを蒸発させる方法が挙げられる。このような方法によれば、フィブリル状の樹脂を含む樹脂層を形成し得る。また、このような方法によれば、塗工液から溶媒(分散媒)を効率よく除去することができる。尚、多孔質フィルムまたは支持体に形成された塗工液の塗膜から溶媒(分散媒)或いは溶媒Xを除去するときに加熱を行う場合には、多孔質フィルムの細孔が収縮して透気度が低下することを回避するために、多孔質フィルムの透気度が低下しない温度、具体的には、10〜120℃、より好ましくは20〜80℃で行うことが望ましい。
【0076】
本実施の形態では、溶媒(分散媒)の除去方法として、特に、塗工液を基材に塗布した後、当該塗工液を乾燥させることによって多孔質層を形成することが好ましい。上記構成によれば、多孔質層の空隙率の変動率がより小さく、また、皺の少ない多孔質層を実現することができる。
【0077】
上記乾燥には、通常の乾燥装置を用いることができる。
【0078】
上述した方法により形成される本発明に係る多孔質層の膜厚は、積層体(セパレータ)の膜厚を考慮して適宜決定すればよいものの、多孔質フィルムを基材として用い、多孔質フィルムの片面または両面に多孔質層を積層して積層体(セパレータ)を形成する場合においては、0.1〜20μm(両面の場合は合計値)であることが好ましく、2〜15μmであることがより好ましい。多孔質層の膜厚が上記範囲を超える場合には、積層体をセパレータとして用いたときに、非水電解液二次電池の負荷特性が低下するおそれがある。多孔質層の膜厚が上記範囲未満の場合には、事故等によって当該電池に発熱が生じたときに、多孔質層が多孔質フィルムの熱収縮に抗しきれずに破損してセパレータが収縮するおそれがある。
【0079】
多孔質層の物性に関する下記説明においては、多孔質フィルムの両面に多孔質層が積層される場合には、非水電解液二次電池としたときの、多孔質フィルムにおける正極と対向する面に積層された多孔質層の物性を少なくとも指す。
【0080】
多孔質層の単位面積当たりの目付は、積層体(セパレータ)の強度、膜厚、重量、およびハンドリング性を考慮して適宜決定すればよいものの、積層体を非水電解液二次電池のセパレータとして用いた場合の当該電池の重量エネルギー密度や体積エネルギー密度を高くすることができるように、通常、1〜20g/mであることが好ましく、4〜10g/mであることがより好ましい。多孔質層の目付が上記範囲を超える場合には、積層体をセパレータとして用いたときに、非水電解液二次電池が重くなる。
【0081】
多孔質層の空隙率は、充分なイオン透過性を得ることができるように、10〜90体積%であることが好ましく、30〜70体積%であることがより好ましい。また、多孔質層が有する細孔の孔径は、積層体をセパレータとして用いたときに、充分なイオン透過性を得ることができるように、3μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。
【0082】
本発明における多孔質層の「空隙率の変動率」とは、下記方法によって測定される数値である。
【0083】
先ず、積層体(セパレータ)の多孔質層にエポキシ樹脂を含浸させ、多孔質層の空隙部を埋めた後、エポキシ樹脂を硬化させて試料を作製する。硬化後、FIB−SEM(FEI製;HELIOS600)を用いて、多孔質層表面から深さ方向(試料の内部に向かう方向)にFIB加工することにより、加工面を作製する。そのとき、FIB加工は、下記32分割された各区画の全ての区画において、当該各区画である直方体の上面(多孔質層の表面に近い面)に多孔質な構造が観察されるまで行う。即ち、当該各区画の全ての区画において、多孔質な構造が観察される面であって、極力多孔質表面に近い深さの面を加工面(即ち、下記32分割された直方体における上面)とする。得られた加工面に対して、加速電圧;2.1kVでSEM観察(反射電子像)を行う。上記SEM観察後、試料の奥行き方向(多孔質層の厚さ(膜厚)方向)に20nmの厚さでFIB加工して新たな加工面を作製し、その新たな加工面に対してSEM観察(反射電子像)を行う。同様に、当該新たな加工面から20nmの厚さでFIB加工してさらに新たな加工面を作製し、そのさらに新たな加工面に対してSEM観察(反射電子像)を行う。このように、厚さ20nm間隔でFIB加工、加工面のSEM観察を繰り返して行うことにより多孔質層の厚さ方向の全域にわたる連続スライス像を取得する。そして、画像解析ソフト(Visualization Sciences Group製;Avizo ver.6.0)を用いて位置補正を行い、補正後の連続スライス像を得る。スケールはX,Y軸19.2nm/pix、Z軸20nm/pixとする。
【0084】
得られた連続スライス像を、1区画が縦2.3μm、横2.3μm、厚さが多孔質層そのものの厚さの直方体に32分割し、トリミングして、各区画の多孔質層に関して3次元定量解析を行い、空隙率をそれぞれ測定する。3次元定量解析には、定量解析ソフトTRI/3D−BON(ラトックシステムエンジニアリング製)を用いる。
【0085】
具体的には、上記ソフトを開き、Auto−LWで画像の2階調化を行い、一つの区画における多孔質層を構成する樹脂部と空隙部とを識別する。樹脂部に含まれるフィラー等の微小粒子の凝集体が中間コントラストを示す場合には、画像演算機能を用いて中間コントラスト部分のみを抽出し、樹脂部と重ね合わせる処理を行う。この処理により、微小粒子の凝集体も樹脂部として画像の2階調化を行うことができる。これら処理を行うことによって計測された空隙部の体積を、解析領域の総体積(樹脂部と空隙部とを合わせた体積)で除した値を、空隙率として算出する。
【0086】
以上の観察および解析を、同一試料の32区画に関して実施し、それぞれの区画の空隙率を算出する。そして、32区画から得られた空隙率の標準偏差を空隙率の平均値で除した値を、多孔質層における32区画間の空隙率の変動率として算出する。多孔質層は、変動率が小さい方ほど、表面全体により均一に空隙部が形成されていることを示す。本発明に係る多孔質層は、32区画間の空隙率の変動率が16.0%以下であり、好ましくは7.0%以下であり、より好ましくは4.0%以下である。また、上記空隙率の変動率は、好ましくは0.01%以上であり、より好ましくは0.5%以上である。
【0087】
空隙率の変動率が16.0%以下であることにより、つまり、空隙率が概ね均一であることにより、積層体をセパレータとして用いたときに、セパレータ全域に亘ってリチウムイオンがほぼ均一に通過することができるので、セパレータ全域に亘るリチウムイオンの電流密度がほぼ均一となる。従って、非水電解液二次電池において、正極に向かうリチウムイオンの通過密度(電流密度)を均一にすることができ、正極活物質の不均一な(局所的な)膨張および収縮を抑制することができるので、正極が局所的に劣化することを抑制することができ、サイクル特性を向上させることができる。空隙率の変動率が16.0%を超えると、セパレータ全域におけるリチウムイオンの電流密度に大きなムラが生じるので、正極が局所的に劣化する。即ち、セパレータ全域に亘って空隙部が均一に形成されていないため、リチウムイオンの通過密度(電流密度)が不均一となり、電解液に掛かる負荷が不均一となるため、サイクルを繰り返すと正極が劣化し、サイクル特性が低下する。一方、空隙率の変動率が0.01%未満の場合、セパレータの厚み方向に多数の垂直な貫通孔が存在するため、電極表面での金属Li等析出時や、電極合材層からの活物質脱落時に、正負極間の短絡発熱が起こり易くなる。
【0088】
<セパレータ>
上述した方法によって多孔質フィルムの片面または両面に多孔質層を積層することにより、本発明に係るセパレータが形成される。即ち、本発明に係るセパレータは、多孔質フィルムの片面または両面に上記多孔質層が積層されて構成されている。
【0089】
セパレータの透気度は、ガーレ値で30〜1000 sec/100mLであることが好ましく、50〜800 sec/100mLであることがより好ましい。セパレータが上記透気度を有することにより、上記セパレータを非水電解液二次電池用の部材として使用した場合に、充分なイオン透過性を得ることができる。透気度が上記範囲を超える場合には、セパレータの空隙率が高いためにセパレータの積層構造が粗になっていることを意味し、結果としてセパレータの強度が低下して、特に高温での形状安定性が不充分になるおそれがある。一方、透気度が上記範囲未満の場合には、上記セパレータを非水電解液二次電池用の部材として使用した場合に、充分なイオン透過性を得ることができず、非水電解液二次電池の電池特性を低下させることがある。
【0090】
尚、本発明に係るセパレータは、上記多孔質フィルムおよび多孔質層の他に、必要に応じて、耐熱層や接着層、保護層等の公知の多孔膜を、本発明の目的を損なわない範囲で含んでいてもよい。
【0091】
<非水電解液二次電池>
本発明に係る非水電解液二次電池は、上記多孔質層または上記セパレータを含んでいる。より具体的には、本発明に係る非水電解液二次電池は、正極、上記多孔質層または上記セパレータ、および負極がこの順で配置されてなる非水電解液二次電池用部材を含んでいる。なお、正極、上記多孔質層、および負極がこの順で配置されてなる非水電解液二次電池用部材は、正極と負極との間に、ポリオレフィンを主成分とする多孔質フィルム、または上記多孔質層を含む他の多孔質層等をさらに含んでいてもよい。以下、非水電解液二次電池として、リチウムイオン二次電池を例に挙げて説明する。尚、多孔質層およびセパレータ以外の非水電解液二次電池の構成要素は、下記説明の構成要素に限定されるものではない。
【0092】
本発明に係る非水電解液二次電池においては、例えばリチウム塩を有機溶媒に溶解してなる非水電解液を用いることができる。リチウム塩としては、例えば、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、Li10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlCl等が挙げられる。上記リチウム塩は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。上記リチウム塩のうち、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、およびLiC(CFSOからなる群から選択される少なくとも1種のフッ素含有リチウム塩がより好ましい。
【0093】
非水電解液を構成する有機溶媒としては、具体的には、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタン等のカーボネート類;1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;3−メチル−2−オキサゾリドン等のカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンサルトン等の含硫黄化合物;並びに、上記有機溶媒にフッ素基が導入されてなる含フッ素有機溶媒;等が挙げられる。上記有機溶媒は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。上記有機溶媒のうち、カーボネート類がより好ましく、環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒、または、環状カーボネートとエーテル類との混合溶媒がさらに好ましい。環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒としては、作動温度範囲が広く、かつ、負極活物質として天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛材料を用いた場合においても難分解性を示すことから、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートを含む混合溶媒がさらに好ましい。
【0094】
正極としては、通常、正極活物質、導電材および結着剤を含む正極合剤を正極集電体上に担持したシート状の正極を用いる。
【0095】
上記正極活物質としては、例えば、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料が挙げられる。当該材料としては、具体的には、例えば、V、Mn、Fe、Co、Ni等の遷移金属を少なくとも1種類含んでいるリチウム複合酸化物が挙げられる。上記リチウム複合酸化物のうち、平均放電電位が高いことから、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム等のα−NaFeO型構造を有するリチウム複合酸化物、リチウムマンガンスピネル等のスピネル型構造を有するリチウム複合酸化物がより好ましい。当該リチウム複合酸化物は、種々の金属元素を含んでいてもよく、複合ニッケル酸リチウムがさらに好ましい。さらに、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Ag、Mg、Al、Ga、InおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素のモル数とニッケル酸リチウム中のNiのモル数との和に対して、上記少なくとも1種の金属元素の割合が0.1〜20モル%となるように当該金属元素を含む複合ニッケル酸リチウムを用いると、高容量での使用におけるサイクル特性に優れるので特に好ましい。
【0096】
上記導電材としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維、有機高分子化合物焼成体等の炭素質材料等が挙げられる。上記導電材は、1種類のみを用いてもよく、例えば人造黒鉛とカーボンブラックとを混合して用いる等、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
上記結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレンの共重合体、熱可塑性ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。尚、結着剤は、増粘剤としての機能も有している。
【0098】
正極合剤を得る方法としては、例えば、正極活物質、導電材および結着剤を正極集電体上で加圧して正極合剤を得る方法;適当な有機溶剤を用いて正極活物質、導電材および結着剤をペースト状にして正極合剤を得る方法;等が挙げられる。
【0099】
上記正極集電体としては、例えば、Al、Ni、ステンレス等の導電体が挙げられ、薄膜に加工し易く、安価であることから、Alがより好ましい。
【0100】
シート状の正極の製造方法、即ち、正極集電体に正極合剤を担持させる方法としては、例えば、正極合剤となる正極活物質、導電材および結着剤を正極集電体上で加圧成型する方法;適当な有機溶剤を用いて正極活物質、導電材および結着剤をペースト状にして正極合剤を得た後、当該正極合剤を正極集電体に塗工し、乾燥して得られたシート状の正極合剤を加圧して正極集電体に固着する方法;等が挙げられる。
【0101】
負極としては、通常、負極活物質を含む負極合剤を負極集電体上に担持したシート状の負極を用いる。
【0102】
上記負極活物質としては、例えば、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料、リチウム金属またはリチウム合金等が挙げられる。当該材料としては、具体的には、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維、有機高分子化合物焼成体等の炭素質材料;正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープ・脱ドープを行う酸化物、硫化物等のカルコゲン化合物;が挙げられる。上記負極活物質のうち、電位平坦性が高く、また平均放電電位が低いために正極と組み合わせた場合に大きなエネルギー密度が得られることから、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛材料を主成分とする炭素質材料がより好ましい。
【0103】
負極合剤を得る方法としては、例えば、負極活物質を負極集電体上で加圧して負極合剤を得る方法;適当な有機溶剤を用いて負極活物質をペースト状にして負極合剤を得る方法;等が挙げられる。
【0104】
上記負極集電体としては、例えば、Cu、Ni、ステンレス等が挙げられ、特にリチウムイオン二次電池においてはリチウムと合金を作り難く、かつ薄膜に加工し易いことから、Cuがより好ましい。
【0105】
シート状の負極の製造方法、即ち、負極集電体に負極合剤を担持させる方法としては、例えば、負極合剤となる負極活物質を負極集電体上で加圧成型する方法;適当な有機溶剤を用いて負極活物質をペースト状にして負極合剤を得た後、当該負極合剤を負極集電体に塗工し、乾燥して得られたシート状の負極合剤を加圧して負極集電体に固着する方法;等が挙げられる。
【0106】
上記正極、多孔質層またはセパレータ、および負極をこの順で配置して非水電解液二次電池用部材を形成した後、非水電解液二次電池の筐体となる容器に当該非水電解液二次電池用部材を入れ、次いで、当該容器内を非水電解液で満たした後、減圧しつつ密閉することにより、本発明に係る非水電解液二次電池を製造することができる。非水電解液二次電池の形状は、特に限定されるものではなく、薄板(ペーパー)型、円盤型、円筒型、直方体等の角柱型等のどのような形状であってもよい。尚、非水電解液二次電池の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の製造方法を採用することができる。
【0107】
本発明に係る非水電解液二次電池は、空隙率の変動率が16.0%以下である多孔質層、またはポリオレフィンを主成分とする多孔質フィルムの片面または両面に上記多孔質層が積層されてなるセパレータを含んでいるので、充放電サイクルを繰り返した後においても初期の放電容量を概ね維持することができ、サイクル特性に優れている。
【0108】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【実施例】
【0109】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0110】
実施例および比較例における積層多孔質フィルム(積層体(セパレータ))、A層(多孔質フィルム)、およびB層(多孔質層)の物性等は、以下の方法で測定した。
【0111】
(1)膜厚(単位:μm):
積層多孔質フィルムの膜厚(即ち、全体の膜厚)、A層の膜厚、およびB層の膜厚は、株式会社ミツトヨ製の高精度デジタル測長機を用いて測定した。
【0112】
(2)目付(単位:g/m):
積層多孔質フィルムから、一辺の長さ8cmの正方形をサンプルとして切り取り、当該サンプルの重量W(g)を測定した。そして、次式
目付(g/m)=W/(0.08×0.08)
に従い、積層多孔質フィルムの目付(即ち、全体の目付)を算出した。同様にして、A層の目付を算出した。B層の目付は、全体の目付からA層の目付を差し引いて算出した。
【0113】
(3)透気度(単位: sec/100mL):
積層多孔質フィルムの透気度は、JIS P8117 に準拠して、株式会社東洋精機製作所製のデジタルタイマー式ガーレ式デンソメータを用いて測定した。
【0114】
(4)平均粒子径、粒度分布(D10,D50,D90(体積基準))(単位:μm):
フィラーの粒子径を、日揮装株式会社製のMICROTRAC(MODEL:MT-3300EXII)を用いて測定した。
【0115】
(5)空隙率の変動率(単位:%):
積層多孔質フィルムの空隙率の変動率は、上述した方法によって測定した。
【0116】
〔実施例1〕
下記A層(多孔質フィルム)、およびB層(多孔質層)を用いて、積層多孔質フィルム(積層体(セパレータ))を形成した。
【0117】
<A層>
ポリオレフィンであるポリエチレンを用いて基材である多孔質フィルムを作製した。
【0118】
即ち、超高分子量ポリエチレン粉末(340M、三井化学株式会社製)70重量部と、重量平均分子量1000のポリエチレンワックス(FNP−0115、日本精鑞株式会社製)30重量部とを混合して混合ポリエチレンを得た。得られた混合ポリエチレン100重量部に対して、酸化防止剤(Irg1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)0.4重量部、酸化防止剤(P168、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)0.1重量部、およびステアリン酸ナトリウム1.3重量部を加え、さらに、全体積に占める割合が38体積%となるように、平均粒子径0.1μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社製)を加えた。この組成物を粉末のまま、ヘンシェルミキサーで混合した後、二軸混練機で溶融混練することにより、ポリエチレン樹脂組成物を得た。次いで、このポリエチレン樹脂組成物を、表面温度が150℃に設定された一対のロールにて圧延することにより、シートを作製した。このシートを塩酸水溶液(塩酸4mol/L、非イオン系界面活性剤0.5重量%を配合)に浸漬させることで炭酸カルシウムを溶解して除去した。続いて、当該シートを105℃で6倍に延伸することにより、ポリエチレン製の多孔質フィルム(A層)を作製した。
【0119】
<B層>
バインダー樹脂として、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)(株式会社ダイセル製;CMC1110)を用いた。フィラーとして、α−アルミナ(D10:0.22μm,D50:0.44μm,D90:1.03μm)を用いた。
【0120】
上記α−アルミナ、CMC、および溶媒(水およびイソプロピルアルコールの混合溶媒)を、下記割合となるように混合した。即ち、上記α−アルミナ100重量部に対してCMCを3重量部混合すると共に、得られる混合液における固形分濃度(アルミナ+CMC)が27.7重量%とし、かつ、溶媒組成が水95重量%およびイソプロピルアルコール5重量%となるように溶媒を混合した。これにより、アルミナの分散液を得た。そして、得られた分散液を、高圧分散装置(株式会社スギノマシン製;スターバースト)を用いて高圧分散(高圧分散条件;100MPa×3パス)することにより、塗工液1を作製した。
【0121】
<積層多孔質フィルム>
上記A層の片面に、20W/(m/分)でコロナ処理を施した。次いで、コロナ処理を施したA層の面に、グラビアコーターを用いて、上記塗工液1を塗工した。このとき、A層に塗工液1を均一に塗工することができるように、塗工位置の前後をピンチロールで挟んでA層に張力を与えた。その後、塗膜を乾燥することでB層を形成した。これにより、A層の片面にB層が積層された積層多孔質フィルム1を得た。なお、ここで得られたB層は、フィラーおよびバインダー樹脂を含む多孔質層である。
【0122】
<物性評価>
得られた積層多孔質フィルム1の物性等を、上述した方法で測定した。その測定結果を以下の表1に示す。
【0123】
<非水電解液二次電池の作製>
(正極の作製)
正極活物質であるLiNi1/3Mn1/3Co1/390重量部に、アセチレンブラック6重量部、およびポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製)4重量部を加えて混合して得た混合物を、N−メチル−2−ピロリドンに分散させてスラリーを作製した。得られたスラリーを、正極集電体であるアルミニウム箔の一部に均一に塗布して乾燥させた後、プレス機により厚さ80μmに圧延した。次いで、正極活物質層が形成された部分の大きさが40mm×35mmであり、かつその外周に幅13mmで正極活物質層が形成されていない部分が残るように、圧延したアルミニウム箔を切り取って正極とした。正極活物質層の密度は2.50g/cmであった。
【0124】
(負極の作製)
負極活物質である黒鉛粉末98重量部に、増粘剤および結着剤であるカルボキシメチルセルロースの水溶液100重量部(カルボキシメチルセルロースの濃度;1重量%)、およびスチレン・ブタジエンゴムの水性エマルジョン1重量部を加えて混合して、スラリーを作製した。得られたスラリーを、負極集電体である厚さ20μmの圧延銅箔の一部に塗布して乾燥させた後、プレス機により厚さ80μmに圧延した。次いで、負極活物質層が形成された部分の大きさが50mm×40mmであり、かつその外周に幅13mmで負極活物質層が形成されていない部分が残るように、圧延した圧延銅箔を切り取って負極とした。負極活物質層の密度は1.40g/cmであった。
【0125】
(非水電解液二次電池の作製)
ラミネートパウチ内で、積層多孔質フィルム1のB層と正極の正極活物質層とが接するようにして、かつ、積層多孔質フィルム1のA層と負極の負極活物質層とが接するようにして、上記正極、積層多孔質フィルム1、および負極をこの順で積層(配置)することにより、非水電解液二次電池用部材を得た。このとき、正極の正極活物質層における主面の全部が、負極の負極活物質層における主面の範囲に含まれる(主面に重なる)ように、正極および負極を配置した。
【0126】
続いて、上記非水電解液二次電池用部材を、アルミニウム層とヒートシール層とが積層されてなる袋に入れ、さらにこの袋に非水電解液を0.25mL入れた。上記非水電解液は、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートを3:5:2(体積比)で混合してなる混合溶媒に、LiPFを1mol/Lとなるように溶解して調製した。そして、袋内を減圧しつつ、当該袋をヒートシールすることにより、非水電解液二次電池を作製した。
【0127】
<サイクル試験>
充放電サイクルを経ていない新たな非水電解液二次電池に対して、25℃で電圧範囲;4.1〜2.7V、電流値;0.2C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする、以下も同様)を1サイクルとして、4サイクルの初期充放電を行った。
【0128】
続いて、25℃で電圧範囲;4.2〜2.7V、電流値;1.0Cの定電流を1サイクルとして、100サイクルの充放電を行った。そして、次式
放電容量維持率(%)=(100サイクル目の放電容量/初期充放電後の1サイクル目の放電容量)×100
に従い、100サイクル後の放電容量維持率を算出した。その算出結果を以下の表2に示す。
【0129】
〔実施例2〕
下記A層、およびB層を用いて、積層多孔質フィルム2を形成した。
【0130】
<A層>
実施例1と同様にしてポリエチレン製の多孔質フィルム(A層)を作製した。
【0131】
<B層>
フィラーとして、α−アルミナ(D10:0.26μm,D50:0.66μm,D90:1.53μm)を用いた以外は、実施例1の操作と同様の操作を行って塗工液2を作製した。
【0132】
<積層多孔質フィルム>
上記塗工液2を用いた以外は、実施例1の操作と同様の操作を行って、A層の片面にB層が積層された積層多孔質フィルム2を得た。なお、ここで得られたB層は、フィラーおよびバインダー樹脂を含む多孔質層である。
【0133】
<物性評価>
得られた積層多孔質フィルム2の物性等を、上述した方法で測定した。結果を以下の表1に示す。
【0134】
<非水電解液二次電池の作製>
上記積層多孔質フィルム2を用いた以外は、実施例1の操作と同様の操作を行って、非水電解液二次電池を作製した。
【0135】
<サイクル試験>
実施例1の操作と同様の操作を行って、上記非水電解液二次電池の、100サイクル後の放電容量維持率を算出した。結果を以下の表2に示す。
【0136】
〔実施例3〕
多孔質層(B層)および積層多孔質フィルムの作製方法を以下の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、積層多孔質フィルム3、および積層多孔質フィルム3を含む非水電解液二次電池を作製した。また、実施例1と同様に、上述した方法を用いて、上記積層多孔質フィルムおよび上記非水電解液二次電池の物性の測定、並びに100サイクル後の放電維持率を算出した。その結果を表1,2に示す。
【0137】
<B層>
PVDF系樹脂(アルケマ社製;商品名「KYNAR2801」)を、固形分が7質量%となるように、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と称する場合もある)に、65℃、30分間の条件で撹拌し、上記PVDF系樹脂を溶解させることにより、塗工液3を作製した。
【0138】
<積層多孔質フィルム>
上記A層(厚さ17μm、空隙率36%)の片面上に、グラビアコーターを用いて塗工液3を塗工することでA層上に塗工液3の塗膜を形成した。このとき、A層に塗工液3を均一に塗工することができるように、塗工位置の前後をピンチロールで挟んでA層に張力を与えた。A層上に塗工液3の塗膜が形成された積層体を、塗膜がNMPを含んでいる状態で2−プロパノール中に5分間浸漬した。その後さらに、別の2−プロパノール中に5分間浸漬した後、65℃で5分間乾燥させることで積層多孔質フィルム3を得た。なお、ここで得られたB層は、フィブリル状の樹脂を含む樹脂層である。
【0139】
<物性評価>
得られた積層多孔質フィルム3の物性等を、上述した方法で測定した。結果を以下の表1に示す。
【0140】
<非水電解液二次電池の作製>
上記積層多孔質フィルム3を用いた以外は、実施例1の操作と同様の操作を行って、非水電解液二次電池を作製した。
【0141】
<サイクル試験>
実施例1の操作と同様の操作を行って、上記非水電解液二次電池の、100サイクル後の放電容量維持率を算出した。結果を以下の表2に示す。
【0142】
〔実施例4〕
下記A層、およびB層を用いて、積層多孔質フィルム4を形成した。
【0143】
<A層>
実施例1と同様にしてポリエチレン製の多孔質フィルム(A層)を作製した。
【0144】
<B層>
フィラーとして、α−アルミナ(D10:0.39μm,D50:0.77μm,D90:2.73μm)を用いた以外は、実施例1の操作と同様の操作を行って塗工液4を作製した。
【0145】
<積層多孔質フィルム>
上記塗工液4を用いた以外は、実施例1の操作と同様の操作を行って、A層の片面にB層が積層された積層多孔質フィルム4を得た。なお、ここで得られたB層は、フィラーおよびバインダー樹脂を含む多孔質層である。
【0146】
<物性評価>
得られた積層多孔質フィルム4の物性等を、上述した方法で測定した。その測定結果を以下の表1に示す。
【0147】
<非水電解液二次電池の作製>
上記積層多孔質フィルム4を用いた以外は、実施例1の操作と同様の操作を行って、非水電解液二次電池を作製した。
【0148】
<サイクル試験>
実施例1の操作と同様の操作を行って、上記非水電解液二次電池の、100サイクル後の放電容量維持率を算出した。その算出結果を以下の表2に示す。
【0149】
[実施例5]
多孔質層(B層)および積層多孔質フィルムの作製方法を以下の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、積層多孔質フィルム5、および積層多孔質フィルム5を含む非水電解液二次電池を作製した。また、実施例1と同様に、上述した方法を用いて、上記積層多孔質フィルムおよび上記非水電解液二次電池の物性の測定、並びに100サイクル後の放電維持率を算出した。その結果を表1,2に示す。
【0150】
<B層>
フィラーとしてヒドロキシアパタイト(D10:2.24μm,D50:9.16μm,D90:21.8μm)を用いた以外は、実施例1の操作と同様の操作を行って塗工液5を作製した。
【0151】
<積層多孔質フィルム>
上記塗工液5を用い、塗工位置の前後をピンチロールで挟まない以外は、実施例1の操作と同様の操作を行って、A層の片面にB層が積層された積層多孔質フィルム5を得た。なお、ここで得られたB層は、フィラーおよびバインダー樹脂を含む多孔質層である。
【0152】
[実施例6]
多孔質層(B層)および積層多孔質フィルムの作製方法を以下の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、積層多孔質フィルム6、および積層多孔質フィルム6を含む非水電解液二次電池を作製した。また、実施例1と同様に、上述した方法を用いて、上記積層多孔質フィルムおよび上記非水電解液二次電池の物性の測定、並びに100サイクル後の放電維持率を算出した。その結果を表1,2に示す。
【0153】
<B層>
ポリオレフィン系樹脂の固形分濃度が40質量%である、ポリオレフィン系樹脂水系エマルション(三井化学株式会社製;商品名「ケミパールS」)を塗工液6として用いた。
【0154】
<積層多孔質フィルム>
上記塗工液6を用いた以外は、実施例1の操作と同様の操作を行って、A層の片面にB層が積層された積層多孔質フィルム6を得た。なお、ここで得られたB層は、粒状の樹脂を含む樹脂層である。
【0155】
[比較例1]
多孔質層(B層)および積層多孔質フィルムの作製方法を以下の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、積層多孔質フィルム7、および積層多孔質フィルム7を含む非水電解液二次電池を作製した。また、実施例1と同様に、上述した方法を用いて、上記積層多孔質フィルムおよび上記非水電解液二次電池の物性の測定、並びに100サイクル後の放電維持率を算出した。その結果を表1,2に示す。
【0156】
<B層>
PVDF系樹脂(アルケマ社製;商品名「KYNAR2801」)を、固形分が7質量%となるように、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」とも称する)に添加し、65℃、30分間の条件下にて撹拌し、上記PVDF系樹脂を溶解させることにより、塗工液7を作製した。
【0157】
<積層多孔質フィルム>
上記塗工液7を用い、塗工位置の前後をピンチロールで挟まない以外は、実施例1の操作と同様の操作を行って、A層の片面にB層が積層された比較用の積層多孔質フィルム7を得た。なお、ここで得られたB層は、フィブリル状の樹脂を含む樹脂層である。
【0158】
【表1】
【0159】
【表2】
【0160】
表1,2の記載から、B層の内部における空隙率の変動率が7.0%以下である実施例1〜3にて得られた多孔質層を積層してなる積層体(セパレータ)を含む非水電解液二次電池は、放電容量維持率が84%(実施例1,2)および82%(実施例3)であり、充放電サイクルを繰り返した後においても初期の放電容量を概ね維持することができることが判った。B層の内部における空隙率の変動率が7.0%を超え、16.0%以下である実施例4〜6にて得られた多孔質層を積層してなる積層体(セパレータ)を含む非水電解液二次電池においては、放電容量維持率が67%(実施例4)、65%(実施例5)および75%(実施例6)であり、B層の内部における空隙率の変動率が7.0%以下である実施例1〜3には劣るものの、充放電サイクルを繰り返した後においても初期の放電容量を維持することができることが判った。一方、B層の内部における空隙率の変動率が16.0%を超える、比較例1にて得られた多孔質層を積層してなる積層体(セパレータ)を含む非水電解液二次電池においては、放電容量維持率が61%と、低下することが判った。
【0161】
[結論]
以上の結果から、その内部における空隙率の変動率が少なくとも16.0%以下である多孔質層が、サイクル特性の優れた非水電解液二次電池用部材として好適に使用することができることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明に係る多孔質層、および多孔質層を積層してなるセパレータは、非水電解液二次電池の製造分野において広範に利用することができる。
【符号の説明】
【0163】
10 基材
11 塗工液
15 巻き出し機
16・17 ガイドロール
18 グラビアロール
20 押付ローラ
図1
図2