特許第5977071号(P5977071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中部電力株式会社の特許一覧 ▶ トーヨーカネツ株式会社の特許一覧 ▶ 千代田化工建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5977071-液化ガスタンクのリード管の先端構造 図000002
  • 特許5977071-液化ガスタンクのリード管の先端構造 図000003
  • 特許5977071-液化ガスタンクのリード管の先端構造 図000004
  • 特許5977071-液化ガスタンクのリード管の先端構造 図000005
  • 特許5977071-液化ガスタンクのリード管の先端構造 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977071
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】液化ガスタンクのリード管の先端構造
(51)【国際特許分類】
   F17C 6/00 20060101AFI20160817BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   F17C6/00
   F17C13/00 302A
   F17C13/00 302D
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-95636(P2012-95636)
(22)【出願日】2012年4月19日
(65)【公開番号】特開2013-221612(P2013-221612A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110011
【氏名又は名称】トーヨーカネツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003285
【氏名又は名称】千代田化工建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】桑原 直弘
(72)【発明者】
【氏名】中田 元晴
(72)【発明者】
【氏名】大江 知也
(72)【発明者】
【氏名】前川 宗則
(72)【発明者】
【氏名】入倉 基樹
【審査官】 西 秀隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−240895(JP,A)
【文献】 特開平08−207989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 6/00
F17C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスタンク(100)内において液化ガスを受け入れる液化ガスタンクのリード管の先端構造であって、
前記リード管における上下方向に延びる主管(2)の下端部に設けられ、前記主管(2)が延びる方向と交差する方向へ、受け入れた前記液化ガスを吐出するノズル管(4)、を備え、
前記ノズル管(4)の先端側には、流動抵抗を高める抵抗部(7,8)が形成され、
前記抵抗部(7,8)は、前記ノズル管(4)の前記先端側を先細りとすることによって構成されていることを特徴とする液化ガスタンクのリード管の先端構造。
【請求項2】
液化ガスタンク(100)内において液化ガスを受け入れる液化ガスタンクのリード管の先端構造であって、
前記リード管における上下方向に延びる主管(2)の下端部に設けられ、前記主管(2)が延びる方向と交差する方向へ、受け入れた前記液化ガスを吐出するノズル管(24)、を備え、
前記ノズル管(24)の先端側には、流動抵抗を高める抵抗部(27)が形成され、
前記抵抗部(27)は、前記ノズル管(24)内における前記液化ガスの流れに沿って延びる抵抗部材(25)を前記ノズル管(24)内に配置することによって構成されていることを特徴とする液化ガスタンクのリード管の先端構造。
【請求項3】
液化ガスタンク(100)内において液化ガスを受け入れる液化ガスタンクのリード管の先端構造であって、
前記リード管における上下方向に延びる主管(2)の下端部に設けられ、前記主管(2)が延びる方向と交差する方向へ、受け入れた前記液化ガスを吐出するノズル管(34,44,54)、を備え、
前記ノズル管(34,44,54)の先端側には、流動抵抗を高める抵抗部(37,47,57)が形成され、
前記抵抗部(37,47,57)は、前記ノズル管(34,44,54)内における前記液化ガスの流れを遮るように広がる抵抗部材(35,45,55)を前記ノズル管(34,44,54)の先端、又は前記ノズル管(34,44,54)内に固定することによって構成されていることを特徴とする液化ガスタンクのリード管の先端構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガスタンク内において液化ガスを受け入れる液化ガスタンクのリード管の先端構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液化ガスタンク内において液化ガスを受け入れるリード管の先端構造として、特許文献1に示すものが知られている。このような従来のリード管について、図5を用いて説明する。図5は、液化天然ガス(LNG)などの低温の液化ガスを貯蔵する液化ガスタンク100の一例を示している。図5に示す液化ガスタンク100には、従来のリード管200が適用されている。液化ガスタンク100内における底部側の領域には、受け入れ液化ガスLGが貯蔵液SLとして貯蔵されている。また、液化ガスタンク100内における上側の領域には、液化ガスが気化した状態のガス(ボイルオフガス)BOGが貯蔵されている。図5に示す液化ガスタンク100には、外部から液化ガスLGを受け入れるための受け入れ構造110が設けられている。
【0003】
この受け入れ構造110は、外部の運搬船などから受け入れ液化ガスLGを受け入れるための受け入れ管120と、従来のリード管200とを備えて構成されている。受け入れ管120は、外部から液化ガスタンク100のドーム状のタンク屋根を貫通するように延びている。リード管200は、液化ガスタンク100内の上側の領域にて受け入れ管120から液化ガスLGを受け入れ、液化ガスタンク100内の底部側の領域における貯蔵液SL内にて液化ガスLGを吐出している。リード管200は上端側において開放されている。仮に、タンク屋根を貫通する受け入れ管120がそのまま液化ガスタンク100の底部まで延ばされた場合、高低差の影響によって管内で液化ガスLGの圧力が低下して沸騰現象が起こり、ガスと液の二相流状態となって振動が発生してしまう。従って、図5のような受け入れ構造110によってリード管200で開放することで上記問題の発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−113498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5に示すように、従来のリード管200の先端構造は、上下方向に延びる主管201の下端において水平方向に延びるノズル管202を備えている。このノズル管202は、主管201と直交する水平方向の両側へ向かって同径で延びており、液化ガスLGは、当該ノズル管202の先端から液化ガスタンク100内へ吐出されている。ここで、受け入れ管120から吐出された液化ガスLGによって、タンク内のガスBOGがリード管200内に巻き込みガスBOG1として巻き込まれる。従来のリード管200にあっては、このような巻き込みガスBOG1の量が多くなってしまうことによって、液化ガスタンク100内の圧力が低下してしまうという問題があった。液化ガスタンク100内の圧力が低下してしまった場合、液化ガスタンク100内への液化ガスLGの搬入作業に支障が出てしまうなどの問題が発生する。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、巻き込みガスの巻き込み量を抑制することのできる液化ガスタンクのリード管の先端構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで、本発明者らは、鋭意研究の結果、図2に示すように、巻き込みガスBOG1と、リード管内を下降する下降ガスBOG2と、リード管内を上昇する上昇ガスBOG4との間の関係性を見出すと共に、巻き込みガスBOG1の巻き込み量を抑制することのできる方法を見出すに至った。具体的に、図2に示すように、リード管の上端側において、液化ガスタンク内のガスがリード管内に巻き込みガスBOG1として巻き込まれ、当該巻き込みガスBOG1がリード管内を落下する液化ガスに引き込まれて下降ガスBOG2として流下する。また、下降ガスBOG2の一部はノズル管からリード管の外側に流出すると共に、他の下降ガスBOG2の一部はリード管内を上昇して再び下降ガスBOG2として流下する。このように、本発明者らは、下降ガスBOG2の流量は、巻き込みガスBOG1及び上昇ガスBOG4の流量の和であることを見出し、上昇ガスBOG4の流量を増加させることによって巻き込みガスBOG1の巻き込み量を減少させることができることを見出した。そこで本発明者らは、更に研究を重ねた結果、リード管の吐出口側における流動抵抗を高めることによって、上昇ガスBOG4の流量を増加させることができることを見出した。
【0008】
そこで、本発明に係る液化ガスタンクのリード管の先端構造は、液化ガスタンク内において液化ガスを受け入れるリード管の先端構造であって、上下方向に延びる主管の下端部に設けられ、主管が延びる方向と交差する方向へ、受け入れた液化ガスを吐出するノズル管と、を備え、ノズル管の先端側には、流動抵抗を高める抵抗部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る液化ガスタンクのリード管の先端構造は、上下方向に延びる主管と、当該主管の下端部に設けられたノズル管とを備えている。従って、リード管の主管の上端側から受け入れられた液化ガスは、リード管の主管内を落下し、液面より下側におけるノズル管から吐出される。ここで、ノズル管の先端側には、流動抵抗を高める抵抗部が形成されている。従って、液化ガスを吐出するノズル管において、リード管内にとどまる下降ガスBOG2が増加する。すなわち、上昇ガスBOG4の流量が増加し、この結果としてリード管内への巻き込みガスBOG1の巻き込み量が減少する。以上によって、本発明に係るリード管の先端構造によれば、巻き込みガスの巻き込み量を抑制することができる。
【0010】
また、本発明に係る液化ガスタンクのリード管の先端構造において、抵抗部は、ノズル管の先端側を先細りとすることによって構成されている。このような構成によれば、ノズル管の先端側、すなわち吐出口側に近づくにつれて徐々に管径が小さくなっているため、流動抵抗を高くすることができる。また、このような構成においては、ノズル管内における液化ガスの流れに沿って延びる抵抗部材を配置する場合に比して、流動抵抗を大きくすることができる。また、ノズル管内における液化ガスの流れを遮るように広がる抵抗部材を配置する場合に比して、抵抗部を構成する部材に対する負荷を小さくし、構造的な強度を確保することができる。すなわち、流動抵抗を高めると共に高い構造強度を確保することができる。
【0011】
また、本発明に係る液化ガスタンクのリード管の先端構造において、抵抗部は、ノズル管内における液化ガスの流れに沿って延びる抵抗部材を先端側に配置することによって構成されていることが好ましい。このような構造によれば、ノズル管内において先端側、すなわち吐出口側へ向かう液化ガスは、当該液化ガスの流れに沿って延びる抵抗部材と接触して抵抗を受けながら流れる。これによって、流動抵抗を高めることができる。また、抵抗部材は液化ガスの流れに沿って延びる構成とされているため、大きな負荷を受けず、構造的な強度を確保することができる。
【0012】
また、本発明に係る液化ガスタンクのリード管の先端構造において、抵抗部は、ノズル管内における液化ガスの流れを遮るように広がる抵抗部材を先端側に配置することによって構成されていることが好ましい。このような構造によれば、ノズル管内において先端側、すなわち吐出口側へ向かう液化ガスは、当該液化ガスの流れを遮るように広がる抵抗部材によって、流れを遮られて抵抗を受ける。これによって、流動抵抗を高めることができる。また、抵抗部材は液化ガスの流れを遮るように広がっているため、流動抵抗を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、巻き込みガスの巻き込み量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る液化ガスタンクのリード管の先端構造を示す断面図である。
図2】リード管内、及び当該リード管付近のガスの流れを模式的に示した模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る液化ガスタンクのリード管の先端構造についての解析結果を示す図である。
図4】変形例に係る液化ガスタンクのリード管の先端構造の抵抗部の構成を示す図である。
図5】液化ガスタンクの構成、及び従来のリード管の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る液化ガスタンクのリード管1の先端構造を示す断面図である。本発明の先端構造を有するリード管1は、図5で示す従来のリード管と同じく、液化ガスタンク100内において液化ガスを受け入れるためのものである。なお、本実施形態に係る先端構造10を有するリード管1が適用される液化ガスタンク100及び受け入れ管120の構成は、図5に示すものと同様である。本実施形態に係る先端構造10を有するリード管1において扱うことのできる液化ガスLGは、例えば、液化天然ガス(LNG)や液化石油ガス(LPG)などが挙げられる。図1に示すように、リード管1は、タンク内において上下方向に延びる主管2と、主管2の上端部に設けられた受け入れ部3と、先端構造10と、を備えて構成されている。本実施形態に係る先端構造10は、主管2の下端部に設けられるノズル管4を備えて構成されている。このリード管1は、液化ガスタンク内の上側における領域において受け入れ管120の吐出口付近を受け入れ部3で取り囲むと共に、ノズル管4が液化ガスタンク内の底部側における領域の貯蔵液SL内に浸漬されるように配置されている。
【0017】
主管2は、上下方向に真っ直ぐに延びる直管である。主管2の外径及び内径は、上下方向において一定となる。貯蔵液SLの液面LF(すなわち、主管2内における液面)の位置は、主管2の上下方向におけるいずれかの位置となる。なお、液面LFの高さは特に限定されず、図1図5に示される位置よりも高くてもよく、低くてもよい。受け入れ管120から吐出された受け入れ液化ガスLGは、主管2の内壁面2aと接触しないように主管2内を落下する。これによって、主管2の内壁面2aと液化ガスLGとの間に空間(図1においてSPで示される)が形成される。この空間SP内においては、後述で詳細に説明する上昇ガスBOG4が上昇している(図2参照)。主管2の内径は、少なくとも空間SPを形成できる大きさであれば特に限定されず、従来のリード管と同等の寸法を採用することができ、例えば400〜3000mmとなり、長さは18〜40mとなる。なお、主管2の内径は上下方向において一定であるため、空間SPの大きさも液面LFの位置によらず一定とすることができる。すなわち、液面LFの高さによらず、上昇ガスBOG4のための十分なスペースを確保することができる。
【0018】
受け入れ部3は、主管2の上端部分における内径及び外径を大きくすることによって構成されている。また、受け入れ部3の上端には上壁などが設けられておらず、開口部3aが形成されており、これによってリード管1が開放されている。この開口部3aから巻き込みガスBOG1がリード管1に流入する。
【0019】
ノズル管4は、主管2の下端において当該主管2が延びる方向と交差する方向へ延びることによって、液化ガスLGを当該方向へ吐出するものである。本実施形態では、ノズル管4は、上下方向と直交するように水平方向へ延びており、図1に示される水平方向である方向D1及び方向D2へ向かって受け入れた液化ガスLGを吐出する。方向D1と方向D2は、互いに反対方向となっている。このノズル管4は、吐出側である先端側が先細りとされたレデューサ構造とされることによって、従来のノズル管に比して流動抵抗が高められた構成となっている。
【0020】
具体的に、ノズル管4は、主管2の下端に接続される直管部6と、当該直管部6の一方の先端側に形成された抵抗部7と、直管部6の他方の先端側に形成された抵抗部8と、を備えている。直管部6は、主管2の下端から方向D1及び方向D2へ向かって真っ直ぐに延びる直管によって構成されている。これによって、液化ガスLGは、液面LF側から下方へ向かうと共にノズル管4の直管部6において方向D1及び方向D2へ分岐する。なお、直管部6の長さは特に限定されず、図1に示す長さより長くしても短くしてもよい。また、直管部6の内径や外径は、図1においては主管2と同径に設定されているが、特に限定されない。すなわち、直管部6の内径は、少なくともリード管1内で液面LFが上昇して溢れない大きさであれば特に限定されず、従来のノズル管(例えば図5のノズル管202)と同等の寸法を採用することができ、例えば400〜3000mmとなる。
【0021】
抵抗部7は、方向D1へ向かって流れる液化ガスLG及び当該液化ガスに含まれるガスの流れに対する流動抵抗を高める部分である。抵抗部7は、ノズル管4の一方の先端側を先細りとすることによって構成されている。すなわち、抵抗部7は、直管部6の一方の端部から方向D1へ向かって外径及び内径が減少する円錐台状の壁部9によって構成されている。当該壁部9の先端には、開口部が形成されることによって吐出口7aが形成されており、液化ガスLGは、当該吐出口7aから貯蔵液SLへ吐出される。抵抗部7によって、図5に示すような直管のみで構成される従来のノズル管に比して、流動抵抗を増加させることができる。なお、抵抗部7の方向D1における長さ、及び吐出口7aの径は特に限定されない。図1において角度αで示されている壁部9の傾き角度は、20°以上とすることが好ましい。壁部9の角度αを20°以上とすることによって抵抗部7は、流動抵抗を増加させる機能を十分に発揮することができる。壁部9の角度αは、少なくとも90°未満であればよい。後述の図4(c)に示す構成(角度α=90°の場合に該当する)に比して、抵抗部7を構成する部材に対する負荷を小さくし、構造的な強度の確保を優先する場合は、角度αを80°以下とすることが好ましく、角度αを60°以下とすることがより好ましい。構造的な強度の確保と流動抵抗の増加機能の確保とのバランスを考慮する場合、角度αを45°以下とすることが好ましい。製造時においては、壁部9の角度を設定した後、当該角度に応じて吐出口7aの内径を設定する。吐出口7aの内径は、少なくともリード管1内で液面LFが上昇して溢れない大きさに設定される。この内径は、受け入れ管120からの液化ガスLGの流量や受け入れ管120の高さなどの条件によって変動するものであるため、本実施形態に係る先端構造10が適用される液化ガスタンクやリード管に係る条件に合わせて設定される。吐出口7aの内径は、リード管1内で液面LFが上昇して溢れない範囲内であれば吐出口7aの内径はどのように設定してもよいが、流動抵抗を十分に増加させるために範囲内における下限付近にすることが好ましい。特に、吐出口7aの内径が直管6の内径と略同等で、壁部9の長さが極めて小さい場合は、十分に流動抵抗を増加できず本実施形態に係る先端構造10の作用・効果を奏しないため、壁部9を設けないノズル管と比較して上昇ガスBOG4を増加できる程度に吐出口7aの内径を小さくすることが好ましい。例えば、従来のノズル管の先端に、内周側へ向かって突出する(例えば、強度確保や先端部分の形状安定を目的として設けられている)僅かな肉盛部が形成されているものは、十分に流動抵抗を増加させることはできない。
【0022】
抵抗部8は、方向D2へ向かって流れる液化ガスLG及び当該液化ガスに含まれるガスの流れに対する流動抵抗を高める部分である。抵抗部8は、ノズル管4の他方の先端側を先細りとすることによって構成されている。すなわち、抵抗部8は、直管部6の他方の端部から方向D2へ向かって外径及び内径が減少する円錐台状の壁部11によって構成されている。当該壁部11の先端には、開口部が形成されることによって吐出口8aが形成されており、液化ガスLGは、当該吐出口8aから貯蔵液SLへ吐出される。抵抗部8によって、図5に示すような直管のみで構成される従来のノズル管に比して、流動抵抗を増加させることができる。なお、抵抗部8の方向D2における長さ、及び吐出口8aの径は特に限定されない。図1において角度βで示されている壁部11の傾き角度は、20°以上とすることが好ましい。壁部11の角度βを20°以上とすることによって抵抗部8は、流動抵抗を増加させる機能を十分に発揮することができる。壁部11の角度βは、少なくとも90°未満であればよい。後述の図4(c)に示す構成(角度β=90°の場合に該当する)に比して、抵抗部8を構成する部材に対する負荷を小さくし、構造的な強度の確保を優先する場合は、角度βを80°以下とすることが好ましく、角度βを60°以下とすることがより好ましい。構造的な強度の確保と流動抵抗の増加機能の確保とのバランスを考慮する場合、角度βを45°以下とすることが好ましい。製造時においては、壁部11の角度を設定した後、当該角度に応じて吐出口8aの内径を設定する。吐出口8aの内径は、少なくともリード管1内で液面LFが上昇して溢れない大きさに設定される。この内径は、受け入れ管120からの液化ガスLGの流量や受け入れ管120の高さなどの条件によって変動するものであるため、本実施形態に係る先端構造10が適用される液化ガスタンクやリード管に係る条件に合わせて設定される。吐出口8aの内径は、リード管1内で液面LFが上昇して溢れない範囲内であれば吐出口8aの内径はどのように設定してもよいが、流動抵抗を十分に増加させるために範囲内における下限付近にすることが好ましい。特に、吐出口8aの内径が直管6の内径と略同等で、壁部11の長さが極めて小さい場合は、十分に流動抵抗を増加できず本実施形態に係る先端構造10の作用・効果を奏しないため、壁部11を設けないノズル管と比較して上昇ガスBOG4を増加できる程度に吐出口8aの内径を小さくすることが好ましい。例えば、従来のノズル管の先端に、内周側へ向かって突出する(例えば、強度確保や先端部分の形状安定を目的として設けられている)僅かな肉盛部が形成されているものは、十分に流動抵抗を増加させることはできない。なお、抵抗部8における角度βや吐出口8aの内径は、抵抗部7と同一とすることが好ましい。
【0023】
次に、本実施形態に係るリード管1の作用・効果について説明する。
【0024】
まず、図2を参照して、ガスBOGの巻き込みについて説明する。図2は、リード管1内、及び当該リード管1付近のガスBOGの流れを模式的に示した模式図である。図2においてはリード管1の一部分のみが模式的に示されている。図2に示すように、液化ガスタンク内におけるガスBOGは、リード管1の上端側から巻き込みガスBOG1としてリード管1内に巻き込まれる。当該巻き込みガスBOG1は、リード管1内に受け入れられて落下する液化ガスLGに引き込まれることによって、下降ガスBOG2としてリード管1内を下降する。下降ガスBOG2は、リード管1内を落下する液化ガスLGの気液界面BFと接触した状態にて、当該液化ガスLGの落下と共に下降する(ただし、流れを明確にするために、図2において下降ガスBOG2の矢印は、気液界面BFから離れて示されている)。
【0025】
下降ガスBOG2の一部は、液面LFより下側においてリード管1内に溜まっている液化ガスLG内を通過した後、ノズル管4を介し、流出ガスBOG3としてリード管1の外側へ吐出される。一方、リード管1の外側へ流出しなかった下降ガスBOG2の一部は、リード管1における液面LFより下側において溜まっている液化ガスLG内にとどまり、上昇ガスBOG4として浮力等によってリード管1内を上昇する。上昇ガスBOG4は、リード管1内に溜まっている液化ガスLG中を上昇した後、液面LFからリード管1における空間SP内を上昇し、リード管1内を落下する液化ガスLG内に下降ガスBOG2として引き込まれる。
【0026】
以上のようなガスBOGの流れより、巻き込みガスBOG1と、下降ガスBOG2と、上昇ガスBOG4との間には、式(1)に示すような関係が成り立つ。更に、式(1)を変形することによって式(2)が成り立つ。式(2)より、上昇ガスBOG4の流量を増加させることによって、巻き込みガスBOG1の流量を減少できることが理解される。上昇ガスBOG4の流量は、リード管1における吐出口側における流動抵抗を高めることによって増加させることができる。
【0027】
下降ガスBOG2の流量 = 巻き込みガスBOG1の流量 + 上昇ガスBOG4の流量 …式(1)
巻き込みガスBOG1の流量 = 下降ガスBOG2の流量 − 上昇ガスBOG4の流量 …式(2)
【0028】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るリード管1は、上下方向に延びる主管2と、当該主管2の下端部に設けられたノズル管4とを備えている。従って、リード管1の主管2の上端側から受け入れられた液化ガスLGは、リード管1の主管2内を落下し、液面LFより下側におけるノズル管4より吐出される。ここで、ノズル管4の先端側には、流動抵抗を高める抵抗部7及び抵抗部8が形成されている。従って、液化ガスLGを吐出するノズル管4において、リード管1内にとどまる下降ガスBOG2が増加する。すなわち、上昇ガスBOG4の流量が増加し、この結果としてリード管1内に巻き込まれる巻き込みガスBOG1の巻き込み量が減少する。以上によって、本実施形態に係るリード管1によれば、巻き込みガスBOG1の巻き込み量を抑制することができる。
【0029】
また、本実施形態に係るリード管1の先端構造10において、抵抗部7及び抵抗部8は、ノズル管4の先端側を先細りとすることによって構成されている。このような構成によれば、ノズル管4の先端側、すなわち吐出口7a,8a側に近づくにつれて徐々に管径が小さくなっているため、流動抵抗を高くすることができる。また、このような構成においては、ノズル管4内における液化ガスLGの流れに沿って延びる抵抗部材を配置する場合(例えば、後述の図4(a)に示すような構成)に比して、流動抵抗を大きくすることができる。また、ノズル管4内における液化ガスLGの流れを遮るように垂直に広がる抵抗部材を配置する場合(例えば、後述の図4(b),(c),(d)に示すような構成)に比して、抵抗部を構成する部材に対する負荷を小さくし、構造的な強度を確保することができる。すなわち、流動抵抗を高めると共に高い構造強度を確保することができる。
【0030】
また、ノズル管4の先端側を先細りとするだけでよく、例えば、主管2内に部材を組み込むような場合、主管2の形状を工夫するような場合、あるいは受け入れ部3の構造を工夫する場合に比して、リード管1を大幅に簡単な構成にて、十分に巻き込みガスBOG1の巻き込み量を減少させることができる。また、主管2の内径を下方へ向けて徐々に細くすることによって流動抵抗を高める場合、液面LFの高さによっては(例えば、主管において内径が細くなった下端側の位置が液面LFとなる場合など)、上昇ガスBOG4が上昇するための空間SPを十分に確保できない場合がある。また、液面LFの高さによって流動抵抗が変化してしまう場合がある。一方、本実施形態によれば、液面LFより下側に配置されるノズル管4の先端側に抵抗部7,8を設けているため、液面LFの高さに関わらず、安定した性能を発揮することができる。また、受け入れ管120から吐出された液化ガスLGが飛散されたり主管2内において広がるように落下する構成とされた場合、液化ガスLGの気液界面積が大きくなり、ガスBOGと液化ガスLGとの接触面積が大きくなることによって下降ガスBOG2が増加してしまい巻き込みガスBOG1が増加してしまう。しかし、本実施形態では、受け入れ管120は、吐出された液化ガスLGが、飛散されたり広がることなく、真っ直ぐに落下するように構成されている。従って、気液界面積を最小限に抑えることができ、巻き込みガスBOG1の巻き込みを抑制することができる。更に、主管2内で液化ガスLGが飛散したり広がった場合は上昇ガスBOG4が上昇するための空間SPを確保することができず上昇ガスBOG4を増加させることができないが、本実施形態によれば、確実に空間SPを確保することで、上昇ガスBOG4を増加させることができる。
【0031】
次に、本実施形態に係るリード管1の先端構造10の効果を検証するための試験を行ったので、以下、その試験結果について説明する。なお、以下に示した寸法は一例に過ぎず、本発明は以下の寸法に限定されるものではない。
【0032】
本試験は、リード管の使用時の解析モデルを構築し、当該解析モデルを用いたシュミレーションによる試験を行った。当該解析は流体解析ソフトウェアのFLUENT(ANSYS社)を用いた。実施例に係るリード管1の試験においては、受け入れ管120の内径(落下する液化ガスLGの気液界面積に影響する)をφ889mmとし、主管2の内径をφ1900mm、主管2の上端部分と液面LFとの間の長さを31000mmに設定し、液面LFとノズル管4の中心軸線との間の長さを3150mmに設定した。また、ノズル管4の直管部6の内径をφ1900mm、長さを2500mmに設定し、抵抗部7,8の長さをそれぞれ1000mm、吐出口7a,8aの内径をφ900mmに設定した。一方、比較例に係るリード管として、実施例に係るリード管1のノズル管4から、抵抗部7,8を除くことによって直管部6のみで構成されるものを用いた(形状としては図5に示す従来のリード管200のようになる)。
【0033】
上述のような実施例及び比較例についての、巻き込みガスBOG1の巻き込み量の解析結果を図3に示す。当該結果より、レデューサ構造を有している実施例を採用した場合、比較例に係る従来構造に比して巻き込みガスBOG1の巻き込み量を減少できることが理解される。更に、下降ガスBOG2及び上昇ガスBOG4の流量の比較を行った。図3に示すように、比較例と実施例との間では下降ガスBOG2の流量がほぼ同程度であるのに対し、比較例に対して実施例の上昇ガスBOG4の流量が大幅に増加している。以上の試験結果より、本実施形態に係るリード管1の先端構造10においては、上昇ガスBOG4の流量を増加させることができ、これによって巻き込みガスBOG1の巻き込み量を抑制できることが理解される。
【0034】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0035】
例えば、抵抗部が、ノズル管内における液化ガスの流れに沿って延びる抵抗部材を先端側に配置することによって構成されていてもよい。具体的には、図4(a)に示すように、直管によって構成されたノズル管24の先端側に、直管の延びる方向に沿って(すなわち、液化ガスの流れに沿って)延びる抵抗部材25を配置することによって抵抗部27を構成してもよい。抵抗部材25は、ノズル管24の内部を周方向に四分割するような四枚の板部材によって構成されている。ただし、このような抵抗部材25は管内を二分割する一枚の板部材でもよく、更に多い枚数の板部材であってもよい。あるいは、管内を周方向に完全に分割するような板部材でなくとも、ノズル管24の壁面から管内の途中の位置まで延ばした板部材であってもよい。すなわち、液化ガスの流れに沿って延びる形状であれば、特に形状は限定されない。このような構造によれば、ノズル管24内において先端側、すなわち吐出口側へ向かう液化ガスは、当該液化ガスの流れに沿って延びる抵抗部材25と接触して抵抗を受けながら流れる。これによって、流動抵抗を高めることができる。また、抵抗部材25は液化ガスの流れに沿って延びる構成とされているため、大きな負荷を受けず、構造的な強度を確保することができる。
【0036】
また、抵抗部が、ノズル管内における液化ガスの流れを遮るように広がる抵抗部材を先端側に配置することによって構成されていてもよい。具体的には、図4(b)に示すように、ノズル管34の先端に、液化ガスの流れに対して直交することによって当該流れを遮るように広がっている、半円板状の抵抗部材35を固定することで抵抗部37を構成することができる。図4(b)に示す例では、吐出口を半分塞いでいる抵抗部材35によって、液化ガスの流れが遮られることによって流動抵抗を高めている。あるいは、図4(c)に示すように、ノズル管44の先端に、液化ガスの流れに対して直交することによって当該流れを遮るように広がっている、円環板状の抵抗部材45を固定することで抵抗部47を構成することができる。図4(c)に示す例では、吐出口を小さくするようにして塞いでいる抵抗部材45によって、液化ガスの流れが遮られることによって流動抵抗を高めている。これは、図1で示す角度α,βを90°としたものに該当する。あるいは、図4(d)に示すように、ノズル管54の先端側における管内の内壁面に、液化ガスの流れに対して直交することによって当該流れを遮るように広がっている、板状の抵抗部材55を固定することで抵抗部57を構成することができる。図4(d)に示す例では、ノズル管54の管内において流れを部分的に遮る複数の抵抗部材55によって、液化ガスの流れが遮られることによって流動抵抗を高めている。このような構造によれば、ノズル管内において先端側、すなわち吐出口側へ向かう液化ガスは、当該液化ガスの流れを遮るように広がる抵抗部材によって、流れを遮られることによって抵抗を受ける。これによって、流動抵抗を高めることができる。すなわち、抵抗部材は液化ガスの流れを遮るように広がっているため、流動抵抗を大きくすることができる。なお、抵抗部材は、液化ガスの流れに対して交差する方向へ広がるものであれば当該流れを遮ることができる。従って、液化ガスの流れ、すなわちノズル管が延びる方向に直交するように広がっておらず、傾斜しているような抵抗部材を用いてもよい。
【0037】
なお、図1に係るレデューサ構造、図4(a)に係る液化ガスの流れに沿って延びる抵抗部材を配置する構造、及び図,4(b)(c),(d)に係る液化ガスの流れを遮るように広がる抵抗部材を配置する構造を、互いに組み合わせたような抵抗部、あるいは全てを組み合わせたような抵抗部であってもよい。
【0038】
また、上述の実施形態において、ノズル管4は、主管2と直交する一方の方向D1へ延びると共に、当該方向D1と反対向きの方向D2へ延びている。しかしながら、ノズル管は、主管が延びる方向と交差する方向へ液化ガスを吐出ものであればその延びる方向や吐出口の数は特に限定されない。例えば、主管を下端側で90°屈曲させたエルボ型のノズル管を構成してもよく、あるいは、図1の紙面前後方向にも吐出可能となるような十字型のノズル管を採用してもよい。なお、振動を防止するために、上述のノズル管4や十字型のノズル管のように、互いに反対側を向くような方向へ吐出することによって、当該吐出に伴う力を相殺できるような構成とすることがより好ましい。
【符号の説明】
【0039】
1…リード管、2…主管、4,24,34,44,54…ノズル管、7,8,27,37,47,57…抵抗部、10…先端構造、25,35,45,55…抵抗部材、100…液化ガスタンク、LG…液化ガス。
図1
図2
図3
図4
図5