【実施例1】
【0016】
図1は、本発明に係るタッチセンサの静電容量検出回路の実施例1を説明するための回路ブロック図である。図中符号1は複数の第1のライン、2は複数の第2のライン、3はタッチパネル、4は駆動回路、4aは第1の駆動端子、4bは第2の駆動端子、5は第1の選択回路、6は第2の選択回路、7は検出回路、7aは第1の検出端子、7bは第2の検出端子、7cは出力端子、8は演算回路、8aは入力端子、8bは出力端子を示している。
【0017】
本発明のタッチセンサの静電容量検出回路は、複数の第1のライン1と、この複数の第1のライン1と絶縁層を介して交差するように配置される複数の第2のライン2とを備えているタッチパネル3を含むタッチセンサの静電容量検出回路である。
本実施例1が適用される静電容量検出回路は、
図1に示すように、タッチパネル3と第1の選択回路5と第2の選択回路6と駆動回路4とキャパシタ5とキャパシタ6とスイッチ(SW)5とスイッチ(SW)6と検出回路7と演算回路8とを備えている。
【0018】
タッチパネル3は、ガラスなどからなる基板(図示せず)で形成され、その基板上に、例えば、m本の電極ライン(L11〜L1m)1が所定の間隔で配置される。また、電極ライン1と絶縁層を介して交差するように、例えば、n本の電極ライン(L21〜L2n)2が所定の間隔で配置される。このため、電極ライン(L11〜L1m)1と電極ライン(L21〜L2n)2とは絶縁層を介して互いに絶縁され、かつ容量結合している。
【0019】
また、第1の選択回路5が、タッチパネル3の複数の第1のライン1を第1の駆動端子4a及び第2の駆動端子4b又は第1の検出端子7a及び第2の検出端子7bに接続しており、第2の選択回路6が、タッチパネル3の複数の第2のライン2を第1の検出端子7a及び第2の検出端子7b又は第1の駆動端子4a及び第2の駆動端子4bに接続している。
【0020】
第1の選択回路5は、後述するスイッチ制御により、タッチパネルの電極ライン(L11〜L1m)1のうちの2本以上の偶数本を選択し、選択された電極ラインの半数を駆動回路の第1の駆動端子4aに接続し、その残りを第2の駆動端子4bに接続する。または、スイッチ制御により、選択された電極ラインの半数を第1の検出端子7aに接続し、その残りを第2の検出端子7bに接続している。
【0021】
また、第2の選択回路6は、後述するスイッチ制御により、タッチパネルの電極ライン(L21〜L2n)2のうちの2本以上の偶数本を選択し、選択された電極ラインの半数を検出回路の第1の検出端子7aに接続し、その残りを第2の検出端子7bに接続する。または、スイッチ制御により選択された電極ラインの半数を第1の駆動端子4aに接続し、その残りを第2の駆動端子4bに接続している。
【0022】
つまり、第1の選択回路5は、複数の第1のライン1から偶数本のラインを駆動ラインとして選択し、駆動ラインの半数を第1の駆動端子4aに順次接続し、残りの半数を第2の駆動端子4bに順次接続し、第2の選択回路6は、複数の第2のライン2から偶数本のラインを検出ラインとして選択し、検出ラインの半数を、第1の検出端子7aに順次接続し、残りの半数を第2の検出端子7bに順次接続する第1の制御状態と、第1の選択回路5は、複数の第1のライン1から偶数本のラインを検出ラインとして選択し、検出ラインの半数を第1の検出端子7aに順次接続し、残りの半数を第2の検出端子7bに順次接続し、第2の選択回路6は、複数の第2のライン2から偶数本のラインを駆動ラインとして選択し、駆動ラインの半数を第1の駆動端子4aに順次接続し、残りの半数を第2の駆動端子4bに順次接続する第2の制御状態とに制御される。
【0023】
また、駆動回路4は、第1の選択回路5と第2の選択回路6に接続され、第1の駆動端子4a及び第2の駆動端子4bとを備え、後述のように電圧値(振幅)が変化する交流信号電圧を生成し、この生成した駆動信号を駆動回路4の第1の駆動端子4aに出力し、この第1の駆動端子4aに出力される信号に対し、位相が180度回転した駆動信号を第2の駆動端子4bに出力するものである。
【0024】
第1の選択回路5と第2の選択回路6が、第1のライン1と第2のライン2を順次選択する各期間において、第1の駆動端子4aと第2の駆動端子4bは、出力する交流の駆動波形の周期が1周期以上である。
また、検出回路7は、第1の選択回路5と第2の選択回路6に接続され、第1の検出端子7a及び第2の検出端子7bと、第1の検出端子7aと第2の検出端子7bとの差を出力する出力端子7cとを備え、後述のように第1の検出端子7aと第2の検出端子7bの差を、駆動回路4と同期して、出力端子7cに直流信号に変換して出力するものである。
【0025】
また、演算回路8は、複数の第1ライン1と複数の第2ライン2の間に構成される複数の静電容量において、第1の選択回路5と第2の選択回路6により順次出力される出力信号を演算することにより、タッチパネル3の複数の第1のライン1と複数の第2のライン2で構成される隣接する複数の静電容量の差を算出するものである。
また、演算回路8の入力端子8aが、検出回路7の出力端子7cと接続され、この演算回路8は、後述のように検出回路7の出力を元に演算を行い、タッチパネル3に発生する、タッチによる静電容量の変化に関連付けられるタッチの情報を演算回路8の出力端子8bに出力するものである。
【0026】
また、キャパシタC5とスイッチSW5は、直列に接続され、キャパシタC5とスイッチSW5で構成する直列回路は、第1の駆動端子4aと第2の検出端子7bとの間に接続されている。また、キャパシタC6とスイッチSW6は、直列に接続され、キャパシタC6とスイッチSW6で構成する直列回路は、第2の駆動端子4bと第2の検出端子7bとの間に接続されている。
【0027】
つまり、第5の静電容量C5と第5のスイッチSW5を直列に接続し、第5の静電容量C5と第5のスイッチSW5とから構成される直列回路を駆動回路4の第1の駆動端子4aと検出回路7の第2の検出端子7bの間に構成される第3の静電容量C12と並列に接続し、第6の静電容量C6と第6のスイッチSW6を直列に接続し、第6の静電容量C6と第6のスイッチSW6とから構成される直列回路を駆動回路4の第2の駆動端子4bと検出回路7の第2の検出端子7bの間に構成される第4の静電容量C22と並列に接続している。
【0028】
第5の静電容量C5の値は、第3の静電容量C12の変化量が第2の検出端子7bに観測されないように第3の静電容量C12の変化量よりも十分に大きな容量値とし、第6の静電容量C6の値は、第4の静電容量C22の変化量が第2の検出端子7bに観測されないように第4の静電容量C22の変化量よりも十分に大きな容量値とする。また、第5の静電容量C5と第6の静電容量C6は、集積回路に実装する。
【0029】
次に、
図1に示す第1の選択回路5が第1の電極ライン1を第1の駆動端子4a又は第2の駆動端子4bに接続し、第2の選択回路6が第2の電極ライン2を第1の検出端子7a又は第2の検出端子7bに接続する例について説明する。
図2は、
図1に示す第1の選択回路の具体的な回路構成図である。この第1の選択回路5は、
図2に示すように、タッチパネルの電極ライン(L11〜L1m)1に接続されるスイッチSWa11〜SWa1m、SWb11〜SWb1m、SWc11〜SWc1m、SWd11〜SWd1mを備えている。スイッチは、ONすることでスイッチが接続されている電極ラインを選択し、OFFすることでスイッチが接続されている電極ラインを非選択とする。例えば、スイッチSWa11がオンすると、電極ラインL11は、第1の駆動端子(D1)4aに接続され、スイッチSWb11がオンすると、電極ラインL11は、第2の駆動端子(D2)4bに接続され、SWc11がオンすると、電極ラインL11は、第1の検出端子(S1)7aに接続され、スイッチSWd11がオンすると、電極ラインL11は、第2の検出端子(S2)7bに接続される。他のスイッチについても同様である。
【0030】
図4(a),(b)は、
図1に示す第1の選択回路の具体的な動作について説明するための制御タイミングを示す図である。
図4(a)に示す各スイッチの制御タイミングは、タッチパネルの電極ライン1の本数が4本、選択するライン数が2本の場合について、各電極ラインを順次全て選択する例を示している。スイッチの制御信号はHigh期間がスイッチON期間、Low期間がスイッチOFF期間を示している。
【0031】
期間1では、スイッチSWa11とスイッチSWb12がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の駆動端子4aには電極ラインL11が選択され、第2の駆動端子4bには電極ラインL12が選択され、第1の検出端子7aと第2の検出端子7bには何も接続されていない。
期間2では、スイッチSWa12とスイッチSWb13がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の駆動端子4aには電極ラインL12が選択され、第2の駆動端子4bには電極ラインL13が選択され、第1の検出端子7aと第2の検出端子7bには何も接続されていない。
【0032】
期間3では、スイッチSWa13とスイッチSWb14がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の駆動端子4aには電極ラインL13が選択され、第2の駆動端子4bには電極ラインL14が選択され、第1の検出端子7aと第2の検出端子7bには何も接続されていない。このようにして、第1の選択回路5は、タッチパネル3の第1の電極ライン1の全てを順次選択して駆動回路4に接続する。
【0033】
図3は、
図1に示す第2の選択回路の具体的な回路構成図である。この第2の選択回路6は、
図3に示すように、タッチパネルの第2の電極ライン(L21〜L2n)2に接続されるスイッチSWa21〜SWa2n、SWb21〜SWb2n、SWc21〜SWc2n、SWd21〜SWd2nを備えている。スイッチは、ONすることでスイッチが接続されている電極ラインを選択し、OFFすることでスイッチが接続されている電極ラインを非選択とする。例えば、スイッチSWa21がオンすると、電極ラインL21は、第1の駆動端子(D1)4aに接続され、スイッチSWb21がオンすると、電極ラインL21は、第2の駆動端子(D2)4bに接続され、SWc21がオンすると、電極ラインL21は検出端子1(S1)7aに接続され、スイッチSWd21がオンすると、電極ラインL21は検出端子2(S2)7bに接続される。他のスイッチについても同様である。
【0034】
図5(a),(b)は、
図1に示す第2の選択回路の具体的な動作について説明するための制御タイミングを示す図である。
図5(a)に示す各スイッチの制御タイミングは、タッチパネル3の第2の電極ライン2の本数が4本、選択するライン数が2本の場合について、各電極ラインを順次全て選択する例を示している。スイッチの制御信号は、High期間がスイッチON期間、Low期間がスイッチOFF期間を示している。
【0035】
期間1では、スイッチSWc21とスイッチSWd22がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の検出端子7aには電極ラインL21が選択され、第2の検出端子7bには電極ラインL22が選択され、第1の駆動端子4aと第2の駆動端子4bには何も接続されていない。
期間2では、スイッチSWc22とスイッチSWd23がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の検出端子7aには電極ラインL22が選択され、第2の検出端子7bには電極ラインL23が選択され、第1の駆動端子4aと第2の駆動端子4bには何も接続されていない。
【0036】
期間3では、スイッチSWc23とスイッチSWd24がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の検出端子7aには電極ラインL23が選択され、第2の検出端子7bには電極ラインL24が選択され、第1の駆動端子4aと第2の駆動端子4bには何も接続されていない。このようにして、第2の選択回路6は、タッチパネル3の第2の電極ライン2の全てを順次選択して検出回路7に接続する。
【0037】
次に、
図1に示す第1の選択回路5が第1の電極ライン1を第1の検出端子7a又は第2の検出端子7bに接続し、第2の選択回路6が第2の電極ライン2を第1の駆動端子4a又は第2の駆動端子4bに接続する例について説明する。
図4(b)に示す各スイッチの制御タイミングは、タッチパネル3の第1の電極ライン1の本数が4本、選択するライン数が2本の場合について、各電極ラインを順次全て選択する例を示している。スイッチの制御信号は、High期間がスイッチON期間、Low期間がスイッチOFF期間を示している。
【0038】
期間1ではスイッチSWc11とスイッチSWd12がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の検出端子7aには電極ラインL11が選択され、第2の検出端子7bには電極ラインL12が選択され、第1の駆動端子4aと第2の駆動端子4bには何も接続されていない。
期間2では、スイッチSWc12とスイッチSWd13がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の検出端子7aには電極ラインL12が選択され、第2の検出端子7bには電極ラインL13が選択され、第1の駆動端子4aと第2の駆動端子4bには何も接続されていない。
【0039】
期間3では、スイッチSWc13とスイッチSWd14がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の検出端子7aには電極ラインL13が選択され、第2の検出端子7bには電極ラインL14が選択され、第1の駆動端子4aと第2の駆動端子4bには何も接続されていない。このようにして、第1の選択回路5は、タッチパネル3の第1の電極ライン1の全てを順次選択して検出回路7に接続する。
【0040】
次に、
図1に示す第2の選択回路6の具体的な動作について説明する。
図5(b)に示す各スイッチの制御タイミングは、タッチパネル3の第2の電極ライン2の本数が4本、選択するライン数が2本の場合について、各電極ラインを順次全て選択する例について示している。スイッチの制御信号は、High期間がスイッチON期間、Low期間がスイッチOFF期間を示している。
【0041】
期間1ではスイッチSWa21とスイッチSWb22がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の駆動端子4aには電極ラインL21が選択され、第2の駆動端子4bには電極ラインL22が選択され、第1の検出端子7aと第2の検出端子7bには何も接続されていない。
期間2では、スイッチSWa22とスイッチSWb23がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の駆動端子4aには電極ラインL22が選択され、第2の駆動端子4bには電極ラインL23が選択され、第1の検出端子7aと第2の検出端子7bには何も接続されていない。
【0042】
期間3では、スイッチSWa23とスイッチSWb24がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の駆動端子4aには電極ラインL23が選択され、第2の駆動端子4bには電極ラインL24が選択され、第1の検出端子7aと第2の検出端子7bには何も接続されていない。このようにして、第2の選択回路6は、タッチパネル3の第2の電極ライン2の全てを順次選択して駆動回路4に接続する。
【0043】
図6(a)乃至(d)は、
図1に示す駆動回路について説明するための図である。
図6(a)は、駆動回路のブロック図を示したものである。交流信号発生器14を備えており、この交流信号発生器14の出力は第1の駆動端子4aに接続されている。駆動回路4は、位相を180度回転させる機能を備え、その出力は第2の駆動端子4bに接続されている。位相180度回転機能は交流信号発生器14に内包されていてもよく、第1の駆動端子4aと第2の駆動端子4bの位相を180度回転させることを目的としている。
【0044】
図6(b)は、駆動波形が矩形波の場合の一例を示しており、矩形波発生器15と、位相を180度回転させるインバータとを備えている。
図6(c)は、
図4及び
図5に示す各期間において1周期の交流信号を出力している例の図であり、
図6(d)は、各期間において2周期の交流信号を出力している例の図である。各期間の駆動波形の周期は1周期以上であればよいので、
図6(c)及び
図6(d)に示した以外にも3周期や10周期などでもよい。
【0045】
図7は、タッチパネルと駆動回路と検出回路の接続状態を示す図で、
図4(a),5(a),6(c)に示される期間1で、かつ
図1に示すスイッチ5,6がOFFの場合の、タッチパネルと駆動回路と検出回路の接続状態を示した図である。
図1に示すキャパシタC5,C6は、スイッチSW5,6をOFFとしており回路動作に関与しないため、
図7には図示していない。
【0046】
電極ライン(L11〜L14)1と電極ライン(L21〜L24)2は、絶縁層を介して容量結合しており、
図7に示すように、キャパシタC11〜C44を形成している。
また、タッチパネル3には、第1のライン1と第2のライン2とでタッチパネル3上に形成されている第1の駆動端子4aと第1の検出端子7aの間に接続されている第1の静電容量C11と、第1のライン1と第2のライン2とでタッチパネル3上に形成されている第2の駆動端子4bと第1の検出端子7aの間に接続されている第2の静電容量C21と、第1のライン1と第2のライン2とでタッチパネル3上に形成されている第1の駆動端子4aと第2の検出端子7bの間に接続されている第3の静電容量C12と、第1のライン1と第2のライン2とでタッチパネル3上に形成されている第2の駆動端子4bと第2の検出端子7bの間に接続されている第4の静電容量C22とを有している。
【0047】
第5のスイッチSW5をオフ、かつ第6のスイッチSW6をオフとした時の、第1の静電容量C11と第2の静電容量C21と第3の静電容量C12と第4の静電容量C22の変化量を検出回路7の出力端子7cに第1の出力信号として出力し、第5のスイッチSW5をオン、かつ第6のスイッチSW6をオンとした時の、第1の静電容量C11と第2の静電容量C21と第3の静電容量C12と第4の静電容量C22の変化量を検出回路7の出力端子7cに第2の出力信号として出力する。
【0048】
図7では、第1の駆動端子4aに電極ラインL11が選択され、第2の駆動端子4bに電極ラインL12が選択され、第1の検出端子7aに電極ラインL21が選択され、第2の検出端子7bに電極ラインL22が選択されている。このとき、第1の駆動端子4a及び第2の駆動端子4bの駆動波形の振幅をVA,第1の検出端子7aの電圧をV1、第2の検出端子7bの電圧をV2とすると、V1,V2は、次式のようにあらわされる。
【0049】
【数1】
【0050】
【数2】
【0051】
検出回路7の出力端子7cには、第1の検出端子7aと第2の検出端子7bの差が出力されるため、
図7に示す接続の検出回路7の出力電圧をVO1とすると、次式のようにあらわされる。
【0052】
【数3】
【0053】
通常、タッチ位置の検出において良好な線形性を得るために、タッチパネルの電極ラインの形状及び間隔は均一に形成する。このため、キャパシタC11〜C44は等しい値となるため、タッチしていない時は、
【0054】
【数4】
【0055】
となる。ここで、タッチによりキャパシタC11〜C44がそれぞれΔC11〜ΔC44だけ変化すると、出力電圧VO1は、次式のようになる。
【0056】
【数5】
【0057】
さらに、通常用いられるタッチパネルのように、キャパシタC11〜C44に対してΔC11〜ΔC44が十分小さい場合は、ΔC11〜ΔC44は、第1の検出端子7a、第2の検出端子7bに高い線形性を持って出力されるため、次式で表すことができる。
【0058】
【数6】
【0059】
【数7】
【0060】
【数8】
【0061】
例えば、C11=5pF、ΔC11=0.1pFの場合、線形性誤差は0.1%程度であるため、出力端子7cのVO1は、式(6)〜式(8)に示すように表され、タッチによる容量変化を線形、かつ正確に反映することができる。
【0062】
図8は、タッチパネルと駆動回路と検出回路の接続状態を示す図で、
図4(a),5(a),6(c)に示される期間1であり、かつ、
図1に示すスイッチ5,6がONの場合のタッチパネルと駆動回路と検出回路の接続状態を示した図である。キャパシタC5は、キャパシタC12と並列に接続され、キャパシタC6は、キャパシタC22と並列に接続されており、キャパシタC5,C6の容量は、ΔC12,ΔC22より十分大きな容量値と設定するため、ΔC12,ΔC22の変化量は、第2の検出端子7bから検出されない。一方、キャパシタC5,C6は、ΔC11,ΔC21には影響を与えないため、第1の検出端子7aからはΔC11,ΔC21が観測される。
検出回路7の出力電圧を、上述した高い線形性を考慮してVO2とすると、次式のようになる。
【0063】
【数9】
【0064】
【数10】
【0065】
【数11】
【0066】
一般に、タッチパネルのタッチによる容量変化ΔC12,ΔC22等は0.1pF以下で非常に小さい値である。キャパシタC5,C6の容量値は、ΔC12,ΔC22等よりも十分大きければよいので、本発明によれば、キャパシタC5,C6を集積回路に実装するにあたっては、チップサイズの拡大を伴わない容量値を設定できる特徴がある。
【0067】
また、本発明によれば、キャパシタC5,C6は、タッチによる容量変化(ΔC12,ΔC22など)より十分大きければよいので、キャパシタC5,C6の容量の絶対値精度は、高精度である必要がない。つまり、タッチパネルに形成されるキャパシタの変化量と集積回路に実装されるキャパシタとの組成や特性が異なっていても、検出特性への影響が無く、正確にタッチパネルのキャパシタの変化量を検出することが可能である。
【0068】
また、本発明によれば、タッチパネル上の電極ラインで形成される容量の変化の差を検出する構成をとるため、タッチパネルに指を触れるときに、第1の検出端子7aと第2の検出端子7bにはノイズがコモンモードとして重畳するため、VO1とVO2出力においてはノイズを常にキャンセルすることができ、ノイズを軽減することができる上に、S/Nの向上を図ることができる。
【0069】
図9は、
図1に示した検出回路の具体的な回路構成図で、図中符号71は検波回路、72は減算回路、73はアンチエイリアスフィルタ、74はA/Dコンバータを示している。
第1の検出端子7aと第2の検出端子7bには、式(6),式(7)又は式(9),式(10)の電圧が出力され、VAは交流信号であるため、V1,V2も交流信号である。
図9に示す検波回路71は、交流信号を直流信号に復調するための回路である。
【0070】
図10(a),(b)は、
図9に示した検波回路のスイッチ制御タイミングを示す図である。
検波回路71のスイッチSWe1〜SWe4の制御においては、検波回路71の制御タイミングと駆動回路の制御タイミングとは同期していることが重要であり、例えば、駆動回路4の制御タイミングが
図6(c)の場合は、
図10(a)の制御タイミングで検波回路71のスイッチを制御する。また、駆動回路4の制御タイミングが
図6(d)の場合は、
図10(b)の制御タイミングで復調回路のスイッチを制御する。この検波回路71の制御タイミングにより、交流信号であるV1,V2を検波し、直流信号へ復調することができる。
【0071】
図9に示す減算回路72は、検波復調された信号の差を出力し、式(8)と式(11)を得るためのものである。ここで、抵抗R1,R2,R3,R4は、R1=R2,R3=R4と設定する。また、R3>R1とすることでゲインを持たせてもよい。また、
図10に示す減算回路72は、オペアンプの基準電圧とオペアンプの負帰還動作によって、第1の検出端子7aと第2の検出端子7bに交流信号に対する直流バイアスを与える働きもしている。
【0072】
本発明によれば、タッチパネル上の電極ラインで形成される容量の変化の差を検出する構成をとるため、タッチパネルに指を触れるときに発生するノイズを常にキャンセルすることで、ノイズを軽減することができる上に、S/Nの向上を図ることができる。
図9に示すアンチエイリアスフィルタ73は、次段のA/Dコンバータ74で実行されるサンプリング時に発生するエイリアスノイズを除去するためのものである。
図9では1次のRCローパスフィルタを示しているが、2次以上のフィルタであってもよい。また、減算回路72を構成する際に、この減算回路72にローパスフィルタ特性を内包する構成をとってもよい。例えば、
図9に示す減算回路72のR3と並列にキャパシタを接続することでアンチエイリアス効果のある減算回路を実現できる。
【0073】
図9に示すA/Dコンバータ74は、減算回路72の出力をデジタル値に変換し、検出回路7の出力端子7cに出力する回路である。
次に、
図1に示す演算回路の詳細について説明する。
演算回路8は、複数の第1ライン1と複数の第2ライン2の間に構成される複数の静電容量において、第1の選択回路5と第2の選択回路6により順次出力される、第1の出力信号と第2の出力信号を演算することで、タッチパネル3の第1のライン1と第2のライン2で構成される全ての隣接する静電容量の差を算出し、静電容量の変化量に関連付けられたタッチセンサ3へのタッチ情報を算出する。
【0074】
また、演算回路8は、入力端子8aと出力端子8bとを備えている。入力端子8aは検出回路7の出力端子7cと接続され、出力端子8bには演算結果が出力される。この演算回路8は、第1の電極ライン1と第2の電極ライン2の間に構成される複数の静電容量において、
図1に示すスイッチ5とスイッチ6がOFFの時に、第1の選択回路5と第2の選択回路6により順次出力される、検出回路7の出力端子7cの信号VO1と、スイッチ5とスイッチ6がONの時に、第1の選択回路5と第2の選択回路6により順次出力される、検出回路7の出力端子7cの信号VO2を演算することで、タッチパネル上の全ての隣接する静電容量の差を算出し、静電容量の変化に関連付けられたタッチセンサへのタッチ情報を検出することを目的としている。
【0075】
例えば、
図7で示す接続において、
図4(a),
図5(a)の駆動と検出を、順次全ての電極ラインの組み合わせに対して行うと、
図4(a)による駆動パターンは、期間1,2,3の3パターンあり、
図5(a)による検出パターンは、期間1,2,3の3パターンあるため、3×3=9パターンの出力信号を得る。検出回路7の出力端子7cには、次の様な出力を得る。
VO11=((ΔC11―ΔC21)―(ΔC12―ΔC22))VA
・・・(101)
VO12=((ΔC12―ΔC22)―(ΔC13―ΔC23))VA
・・・(102)
VO13=((ΔC13―ΔC23)―(ΔC14―ΔC24))VA
・・・(103)
VO14=((ΔC21―ΔC31)―(ΔC22―ΔC32))VA
・・・(104)
VO15=((ΔC22―ΔC32)―(ΔC23―ΔC33))VA
・・・(105)
VO16=((ΔC23―ΔC33)―(ΔC24―ΔC34))VA
・・・(106)
VO17=((ΔC31―ΔC41)―(ΔC32―ΔC42))VA
・・・(107)
VO18=((ΔC32―ΔC42)―(ΔC33―ΔC43))VA
・・・(108)
VO19=((ΔC33―ΔC43)―(ΔC34―ΔC44))VA
・・・(109)
【0076】
また、
図8で示す接続において、
図4(a),
図5(a)に示す駆動、検出を行い、検出回路7の出力端子7cに次の様な出力を得る。
VO11b=(ΔC11―ΔC21)VA ・・・(110)
VO14b=(ΔC21―ΔC31)VA ・・・(111)
VO17b=(ΔC31―ΔC41)VA ・・・(112)
【0077】
また、
図8で示す接続において、
図4(b),
図5(b)に示す駆動、検出を行い、検出回路7の出力端子7cに次の様な出力を得る。
VO21b=(ΔC11―ΔC12)VA ・・・(113)
VO22b=(ΔC12―ΔC13)VA ・・・(114)
VO23b=(ΔC13―ΔC14)VA ・・・(115)
式(110)〜式(115)を演算することでタッチパネル上の全ての隣接する静電容量の差を算出することができる。
図11は、VAで規格化した演算結果のタッチパネルに対応したマトリクスを示す図である。
以上のことから、本発明によれば、全ての電極ラインの差分情報を差動検出で取得できるので、タッチパネルに指を触れるときに発生するノイズを軽減することができる上に、S/Nの向上を図ることができる。