特許第5977113号(P5977113)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成エレクトロニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5977113-タッチセンサの静電容量検出回路 図000013
  • 特許5977113-タッチセンサの静電容量検出回路 図000014
  • 特許5977113-タッチセンサの静電容量検出回路 図000015
  • 特許5977113-タッチセンサの静電容量検出回路 図000016
  • 特許5977113-タッチセンサの静電容量検出回路 図000017
  • 特許5977113-タッチセンサの静電容量検出回路 図000018
  • 特許5977113-タッチセンサの静電容量検出回路 図000019
  • 特許5977113-タッチセンサの静電容量検出回路 図000020
  • 特許5977113-タッチセンサの静電容量検出回路 図000021
  • 特許5977113-タッチセンサの静電容量検出回路 図000022
  • 特許5977113-タッチセンサの静電容量検出回路 図000023
  • 特許5977113-タッチセンサの静電容量検出回路 図000024
  • 特許5977113-タッチセンサの静電容量検出回路 図000025
  • 特許5977113-タッチセンサの静電容量検出回路 図000026
  • 特許5977113-タッチセンサの静電容量検出回路 図000027
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977113
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】タッチセンサの静電容量検出回路
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20160817BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   G06F3/041 512
   G06F3/041 522
   G06F3/044 126
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-176974(P2012-176974)
(22)【出願日】2012年8月9日
(65)【公開番号】特開2014-35671(P2014-35671A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】島高 直人
【審査官】 若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−282539(JP,A)
【文献】 特表平11−505641(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/046513(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1のラインと、該複数の第1のラインと絶縁層を介して交差するように配置される複数の第2のラインとを備えているタッチパネルを含むタッチセンサの静電容量検出回路において、
前記タッチパネルの前記複数の第1のラインに接続されている第1の選択回路と、前記タッチパネルの前記複数の第2のラインに接続されている第2の選択回路と、前記第1の選択回路と前記第2の選択回路に接続されている検出回路と、該検出回路に接続されている演算回路と、前記第1の選択回路と前記第2の選択回路に接続されている駆動回路とを備え、
前記演算回路が、前記複数の第1ラインと前記複数の第2ラインの間に構成される複数の静電容量において、前記第1の選択回路と前記第2の選択回路により順次出力される出力信号を演算することにより、前記タッチパネルの前記複数の第1のラインと前記複数の第2のラインで構成される隣接する前記複数の静電容量の差を算出し、
前記駆動回路は、第1の駆動端子及び第2の駆動端子とを有し、
前記検出回路は、第1の検出端子及び第2の検出端子と、前記第1の検出端子と前記第2の検出端子の差を出力する出力端子とを有し、
前記第1の選択回路が、前記タッチパネルの前記複数の第1のラインを前記第1の駆動端子及び第2の駆動端子又は前記第1の検出端子及び前記第2の検出端子に接続し、
前記第2の選択回路が、前記タッチパネルの前記複数の第2のラインを前記第1の検出端子及び第2の検出端子又は前記第1の駆動端子及び前記第2の駆動端子に接続し、
前記演算回路が、前記検出回路の前記出力端子に接続され、
前記第1のラインと前記第2のラインとで前記タッチパネル上に形成されている前記第1の駆動端子と前記第1の検出端子の間に接続されている第1の静電容量と、
前記第1のラインと前記第2のラインとで前記タッチパネル上に形成されている前記第2の駆動端子と前記第1の検出端子の間に接続されている第2の静電容量と、
前記第1のラインと前記第2のラインとで前記タッチパネル上に形成されている前記第1の駆動端子と前記第2の検出端子の間に接続されている第3の静電容量と、
前記第1のラインと前記第2のラインとで前記タッチパネル上に形成されている前記第2の駆動端子と前記第2の検出端子の間に接続されている第4の静電容量と、
前記駆動回路と前記検出回路との間に接続されている第5及び第6の静電容量とを備え、
前記第5の静電容量と第5のスイッチを直列に接続し、前記第5の静電容量と前記第5のスイッチとから構成される直列回路を前記第3の静電容量と並列に接続し、
前記第6の静電容量と第6のスイッチを直列に接続し、前記第6の静電容量と前記第6のスイッチとから構成される直列回路を前記第4の静電容量と並列に接続し、
前記第5のスイッチをオフ、かつ前記第6のスイッチをオフとした時の、前記第1の静電容量と前記第2の静電容量と前記第3の静電容量と前記第4の静電容量の変化量を前記検出回路の前記出力端子に第1の出力信号として出力し、
前記第5のスイッチをオン、かつ前記第6のスイッチをオンとした時の、前記第1の静電容量と前記第2の静電容量と前記第3の静電容量と前記第4の静電容量の変化量を前記検出回路の前記出力端子に第2の出力信号として出力することを特徴とするタッチセンサの静電容量検出回路。
【請求項2】
前記第5の静電容量の値は、前記第3の静電容量の変化量が前記第2の検出端子に観測されないように前記第3の静電容量の変化量よりも十分に大きな容量値とし、
前記第6の静電容量の値は、前記第4の静電容量の変化量が前記第2の検出端子に観測されないように前記第4の静電容量の変化量よりも十分に大きな容量値とすることを特徴とする請求項に記載のタッチセンサの静電容量検出回路。
【請求項3】
前記第5の静電容量と前記第6の静電容量は、集積回路に実装することを特徴とする請求項1又は2に記載のタッチセンサの静電容量検出回路。
【請求項4】
前記第1の駆動端子と前記第2の駆動端子は、振幅が等しく、かつ位相が180度異なる交流の駆動波形を出力することを特徴とする請求項1,2又は3に記載のタッチセンサの静電容量検出回路。
【請求項5】
前記第1の選択回路と前記第2の選択回路が、前記第1のラインと前記第2のラインを順次選択する各期間において、前記第1の駆動端子と前記第2の駆動端子は、出力する前記交流の駆動波形の周期が1周期以上であることを特徴とする請求項に記載のタッチセンサの静電容量検出回路。
【請求項6】
前記演算回路は、前記複数の第1ラインと前記複数の第2ラインの間に構成される複数の静電容量において、前記第1の選択回路と前記第2の選択回路により順次出力される、前記第1の出力信号と前記第2の出力信号を演算することで、前記タッチパネルの前記第1のラインと前記第2のラインで構成される全ての隣接する静電容量の差を算出し、静電容量の変化量に関連付けられたタッチセンサへのタッチ情報を算出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のタッチセンサの静電容量検出回路。
【請求項7】
前記第1の選択回路は、前記複数の第1のラインから偶数本のラインを駆動ラインとして選択し、前記駆動ラインの半数を前記第1の駆動端子に順次接続し、残りの半数を前記第2の駆動端子に順次接続し、
前記第2の選択回路は、前記複数の第2のラインから偶数本のラインを検出ラインとして選択し、前記検出ラインの半数を、前記第1の検出端子に順次接続し、残りの半数を前記第2の検出端子に順次接続する第1の制御状態と、
前記第1の選択回路は、前記複数の第1のラインから偶数本のラインを検出ラインとして選択し、前記検出ラインの半数を前記第1の検出端子に順次接続し、残りの半数を前記第2の検出端子に順次接続し、
前記第2の選択回路は、前記複数の第2のラインから偶数本のラインを駆動ラインとして選択し、前記駆動ラインの半数を前記第1の駆動端子に順次接続し、残りの半数を前記第2の駆動端子に順次接続する第2の制御状態と
に制御されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のタッチセンサの静電容量検出回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチセンサの静電容量検出回路に関し、より詳細には、静電容量型のタッチパネルを含むタッチセンサの静電容量検出回路などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から携帯電話,携帯音響機器,携帯ゲーム機器,テレビジョン,パーソナルコンピュータなどの各種電子機器の入力装置として、タッチセンサが知られている。この種のタッチパネルを含むタッチセンサに関するものとしては、例えば、特許文献1に記載されているものがある。
この特許文献1に記載のものは、タッチパネル上の2つ以上の位置を同時にタッチする場合においてタッチ位置を確実に検出するもので、タッチパネル上のタッチ位置を検出するタッチセンサ用の信号処理回路に関し、駆動回路とマルチプレクサと2つの基準容量と電荷増幅器とを備えている。
【0003】
この駆動回路は、基板上の一方向に延びた複数の駆動ラインの中から1本の駆動ラインを選択し、選択された駆動ラインに交流駆動電圧を供給する。また、マルチプレクサは、複数の駆動ラインと交差するように延びた基板上の複数のセンスラインの中から2本のセンスラインを選択するものである。
さらに、電荷増幅器は、差動増幅器が使用され、マルチプレクサによって選択された1つの駆動ラインと2つのセンスラインの間の容量値A1,A2において、容量値A1と基準容量の差及び容量値A2と基準容量との差に応じた電圧を出力するもので、この電荷増幅器から出力された出力電圧に基づいてタッチ位置を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−282539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載のものは、駆動ラインとセンスラインの間の容量値と基準容量値との差を出力するため、微小な静電容量の変化を検出することはできるが、微小な静電容量の高精度な検出のためには、基準容量はタッチパネルで発生する容量の微小変化と同程度の分解能で高精度に等しい必要があり、パネルで構成される容量の構成要素と集積回路に実装する基準容量の構成要素は組成が異なるため、種々のタッチパネルに最適な高精度の基準容量のを実装することが本質的にできないという問題点がある。
【0006】
このような状況下において、タッチセンサの静電容量検出回路に関して新たな検出手法を採用するようにしたタッチセンサの静電容量検出回路の出現が望まれている。
さらに、タッチセンサの静電容量検出回路の新たな出現に際しては、タッチパネルに指を触れるときに発生するノイズを軽減することができる上に、S/Nの向上を図ることが望まれている。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、種々のタッチパネルの寄生容量の影響を受けないように、差動検出によってタッチパネルに指を触れるときに発生するノイズを軽減することができ、かつS/Nの向上を図り、正確なタッチ情報の検出を行えるようにしたタッチセンサの静電容量検出回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、複数の第1のライン(1)と、該複数の第1のライン(1)と絶縁層を介して交差するように配置される複数の第2のライン(2)とを備えているタッチパネル(3)を含むタッチセンサの静電容量検出回路において、前記タッチパネルの前記複数の第1のライン(1)に接続されている第1の選択回路(5)と、前記タッチパネルの前記複数の第2のライン(2)に接続されている第2の選択回路(6)と、前記第1の選択回路(5)と前記第2の選択回路(6)に接続されている検出回路(7)と、該検出回路(7)に接続されている演算回路(8)と、前記第1の選択回路(5)と前記第2の選択回路(6)に接続されている駆動回路(4)とを備え、前記演算回路(8)が、前記複数の第1ライン(1)と前記複数の第2ライン(2)の間に構成される複数の静電容量において、前記第1の選択回路(5)と前記第2の選択回路(6)により順次出力される出力信号を演算することにより、前記タッチパネル(3)の前記複数の第1のライン(1)と前記複数の第2のライン(2)で構成される隣接する前記複数の静電容量の差を算出し、前記駆動回路(4)は、第1の駆動端子(4a)及び第2の駆動端子(4b)とを有し、前記検出回路(7)は、第1の検出端子(7a)及び第2の検出端子(7b)と、前記第1の検出端子(7a)と前記第2の検出端子(7b)の差を出力する出力端子(7c)とを有し、前記第1の選択回路(5)が、前記タッチパネルの前記複数の第1のライン(1)を前記第1の駆動端子(4a)及び第2の駆動端子(4b)又は前記第1の検出端子(7a)及び前記第2の検出端子(7b)に接続し、前記第2の選択回路(6)が、前記タッチパネルの前記複数の第2のライン(2)を前記第1の検出端子(7a)及び第2の検出端子(7b)又は前記第1の駆動端子(4a)及び前記第2の駆動端子(4b)に接続し、前記演算回路(8)が、前記検出回路(7)の前記出力端子(7c)に接続され、前記第1のライン(1)と前記第2のライン(2)とで前記タッチパネル(3)上に形成されている前記第1の駆動端子(4a)と前記第1の検出端子(7a)の間に接続されている第1の静電容量(C11)と、前記第1のライン(1)と前記第2のライン(2)とで前記タッチパネル(3)上に形成されている前記第2の駆動端子(4b)と前記第1の検出端子(7a)の間に接続されている第2の静電容量(C21)と、前記第1のライン(1)と前記第2のライン(2)とで前記タッチパネル(3)上に形成されている前記第1の駆動端子(4a)と前記第2の検出端子(7b)の間に接続されている第3の静電容量(C12)と、前記第1のライン(1)と前記第2のライン(2)とで前記タッチパネル(3)上に形成されている前記第2の駆動端子(4b)と前記第2の検出端子(7b)の間に接続されている第4の静電容量(C22)と、前記駆動回路(4)と前記検出回路(7)との間に接続されている第5及び第6の静電容量(C5,C6)とを備え、前記第5の静電容量(C5)と第5のスイッチ(SW5)を直列に接続し、前記第5の静電容量(C5)と前記第5のスイッチ(SW5)とから構成される直列回路を前記第3の静電容量(C12)と並列に接続し、前記第6の静電容量(C6)と第6のスイッチ(SW6)を直列に接続し、前記第6の静電容量(C6)と前記第6のスイッチ(SW6)とから構成される直列回路を前記第4の静電容量(C22)と並列に接続し、前記第5のスイッチ(SW5)をオフ、かつ前記第6のスイッチ(SW6)をオフとした時の、前記第1の静電容量(C11)と前記第2の静電容量(C21)と前記第3の静電容量(C12)と前記第4の静電容量(C22)の変化量を前記検出回路(7)の前記出力端子(7c)に第1の出力信号として出力し、前記第5のスイッチ(SW5)をオン、かつ前記第6のスイッチ(SW6)をオンとした時の、前記第1の静電容量(C11)と前記第2の静電容量(C21)と前記第3の静電容量(C12)と前記第4の静電容量(C22)の変化量を前記検出回路(7)の前記出力端子(7c)に第2の出力信号として出力することを特徴とする
【0010】
また、請求項に記載の発明は、請求項に記載の発明において、前記第5の静電容量(C5)の値は、前記第3の静電容量(C12)の変化量が前記第2の検出端子(7b)に観測されないように前記第3の静電容量(C12)の変化量よりも十分に大きな容量値とし、前記第6の静電容量(C6)の値は、前記第4の静電容量(C22)の変化量が前記第2の検出端子(7b)に観測されないように前記第4の静電容量(C22)の変化量よりも十分に大きな容量値とすることを特徴とする。
また、請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記第5の静電容量(C5)と前記第6の静電容量(C6)は、集積回路に実装することを特徴とする。
また、請求項に記載の発明は、請求項1,2又は3に記載の発明において、前記第1の駆動端子(4a)と前記第2の駆動端子(4b)は、振幅が等しく、かつ位相が180度異なる交流の駆動波形を出力することを特徴とする。
【0011】
また、請求項に記載の発明は、請求項に記載の発明において、前記第1の選択回路(5)と前記第2の選択回路(6)が、前記第1のライン(1)と前記第2のライン(2)を順次選択する各期間において、前記第1の駆動端子(4a)と前記第2の駆動端子(4b)は、出力する前記交流の駆動波形の周期が1周期以上であることを特徴とする。
また、請求項に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明において、前記演算回路(8)は、前記複数の第1ライン(1)と前記複数の第2ライン(2)の間に構成される複数の静電容量において、前記第1の選択回路(5)と前記第2の選択回路(6)により順次出力される、前記第1の出力信号と前記第2の出力信号を演算することで、前記タッチパネル(3)の前記第1のライン(1)と前記第2のライン(2)で構成される全ての隣接する静電容量の差を算出し、静電容量の変化量に関連付けられたタッチセンサ(3)へのタッチ情報を算出することを特徴とする。
【0012】
また、請求項に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、前記第1の選択回路(5)は、前記複数の第1のライン(1)から偶数本のラインを駆動ラインとして選択し、前記駆動ラインの半数を前記第1の駆動端子(4a)に順次接続し、残りの半数を前記第2の駆動端子(4b)に順次接続し、前記第2の選択回路(6)は、前記複数の第2のライン(2)から偶数本のラインを検出ラインとして選択し、前記検出ラインの半数を、前記第1の検出端子(7a)に順次接続し、残りの半数を前記第2の検出端子(7b)に順次接続する第1の制御状態と、前記第1の選択回路(5)は、前記複数の第1のライン(1)から偶数本のラインを検出ラインとして選択し、前記検出ラインの半数を前記第1の検出端子(7a)に順次接続し、残りの半数を前記第2の検出端子(7b)に順次接続し、前記第2の選択回路(6)は、前記複数の第2のライン(2)から偶数本のラインを駆動ラインとして選択し、前記駆動ラインの半数を前記第1の駆動端子(4a)に順次接続し、残りの半数を前記第2の駆動端子(4b)に順次接続する第2の制御状態とに制御されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、新たな検出手法を採用するようにしたため、タッチパネルに形成される静電容量と集積回路に実装するキャパシタにおいて、組成や特性の違いに影響されず、正確なタッチセンサの静電容量検出が可能なタッチセンサの静電容量検出回路を実現することができる。また、タッチパネルに指を触れるときに発生するノイズを軽減することができる上に、S/Nの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るタッチセンサの静電容量検出回路の実施例1を説明するための回路ブロック図である。
図2図1に示す第1の選択回路の具体的な回路構成図である。
図3図1に示す第2の選択回路の具体的な回路構成図である。
図4】(a),(b)は、図1に示す第1の選択回路の具体的な動作について説明するための制御タイミングを示す図である。
図5】(a),(b)は、図1に示す第2の選択回路の具体的な動作について説明するための制御タイミングを示す図である。
図6】(a)乃至(d)は、図1に示す駆動回路について説明するための図である。
図7】タッチパネルと駆動回路と検出回路の接続状態を示す図である。
図8】タッチパネルと駆動回路と検出回路の接続状態を示す図である。
図9図1に示した検出回路の具体的な回路構成図である。
図10】(a),(b)は、図9に示した検波回路のスイッチ制御タイミングを示す図である。
図11】VAで規格化した演算結果のタッチパネルに対応したマトリクスを示す図である。
図12】本発明に係るタッチセンサの静電容量検出回路の実施例2を説明するためのタッチパネルと駆動回路と検出回路の接続状態を示す図である。
図13】本発明に係るタッチセンサの静電容量検出回路の実施例3を説明するための検出回路の具体的な回路構成図である。
図14】本発明に係るタッチセンサの静電容量検出回路の実施例4を説明するための検出回路の具体的な回路構成図である。
図15】本発明に係るタッチセンサの静電容量検出回路の実施例5を説明するための検出回路の具体的な回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の各実施例について説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明に係るタッチセンサの静電容量検出回路の実施例1を説明するための回路ブロック図である。図中符号1は複数の第1のライン、2は複数の第2のライン、3はタッチパネル、4は駆動回路、4aは第1の駆動端子、4bは第2の駆動端子、5は第1の選択回路、6は第2の選択回路、7は検出回路、7aは第1の検出端子、7bは第2の検出端子、7cは出力端子、8は演算回路、8aは入力端子、8bは出力端子を示している。
【0017】
本発明のタッチセンサの静電容量検出回路は、複数の第1のライン1と、この複数の第1のライン1と絶縁層を介して交差するように配置される複数の第2のライン2とを備えているタッチパネル3を含むタッチセンサの静電容量検出回路である。
本実施例1が適用される静電容量検出回路は、図1に示すように、タッチパネル3と第1の選択回路5と第2の選択回路6と駆動回路4とキャパシタ5とキャパシタ6とスイッチ(SW)5とスイッチ(SW)6と検出回路7と演算回路8とを備えている。
【0018】
タッチパネル3は、ガラスなどからなる基板(図示せず)で形成され、その基板上に、例えば、m本の電極ライン(L11〜L1m)1が所定の間隔で配置される。また、電極ライン1と絶縁層を介して交差するように、例えば、n本の電極ライン(L21〜L2n)2が所定の間隔で配置される。このため、電極ライン(L11〜L1m)1と電極ライン(L21〜L2n)2とは絶縁層を介して互いに絶縁され、かつ容量結合している。
【0019】
また、第1の選択回路5が、タッチパネル3の複数の第1のライン1を第1の駆動端子4a及び第2の駆動端子4b又は第1の検出端子7a及び第2の検出端子7bに接続しており、第2の選択回路6が、タッチパネル3の複数の第2のライン2を第1の検出端子7a及び第2の検出端子7b又は第1の駆動端子4a及び第2の駆動端子4bに接続している。
【0020】
第1の選択回路5は、後述するスイッチ制御により、タッチパネルの電極ライン(L11〜L1m)1のうちの2本以上の偶数本を選択し、選択された電極ラインの半数を駆動回路の第1の駆動端子4aに接続し、その残りを第2の駆動端子4bに接続する。または、スイッチ制御により、選択された電極ラインの半数を第1の検出端子7aに接続し、その残りを第2の検出端子7bに接続している。
【0021】
また、第2の選択回路6は、後述するスイッチ制御により、タッチパネルの電極ライン(L21〜L2n)2のうちの2本以上の偶数本を選択し、選択された電極ラインの半数を検出回路の第1の検出端子7aに接続し、その残りを第2の検出端子7bに接続する。または、スイッチ制御により選択された電極ラインの半数を第1の駆動端子4aに接続し、その残りを第2の駆動端子4bに接続している。
【0022】
つまり、第1の選択回路5は、複数の第1のライン1から偶数本のラインを駆動ラインとして選択し、駆動ラインの半数を第1の駆動端子4aに順次接続し、残りの半数を第2の駆動端子4bに順次接続し、第2の選択回路6は、複数の第2のライン2から偶数本のラインを検出ラインとして選択し、検出ラインの半数を、第1の検出端子7aに順次接続し、残りの半数を第2の検出端子7bに順次接続する第1の制御状態と、第1の選択回路5は、複数の第1のライン1から偶数本のラインを検出ラインとして選択し、検出ラインの半数を第1の検出端子7aに順次接続し、残りの半数を第2の検出端子7bに順次接続し、第2の選択回路6は、複数の第2のライン2から偶数本のラインを駆動ラインとして選択し、駆動ラインの半数を第1の駆動端子4aに順次接続し、残りの半数を第2の駆動端子4bに順次接続する第2の制御状態とに制御される。
【0023】
また、駆動回路4は、第1の選択回路5と第2の選択回路6に接続され、第1の駆動端子4a及び第2の駆動端子4bとを備え、後述のように電圧値(振幅)が変化する交流信号電圧を生成し、この生成した駆動信号を駆動回路4の第1の駆動端子4aに出力し、この第1の駆動端子4aに出力される信号に対し、位相が180度回転した駆動信号を第2の駆動端子4bに出力するものである。
【0024】
第1の選択回路5と第2の選択回路6が、第1のライン1と第2のライン2を順次選択する各期間において、第1の駆動端子4aと第2の駆動端子4bは、出力する交流の駆動波形の周期が1周期以上である。
また、検出回路7は、第1の選択回路5と第2の選択回路6に接続され、第1の検出端子7a及び第2の検出端子7bと、第1の検出端子7aと第2の検出端子7bとの差を出力する出力端子7cとを備え、後述のように第1の検出端子7aと第2の検出端子7bの差を、駆動回路4と同期して、出力端子7cに直流信号に変換して出力するものである。
【0025】
また、演算回路8は、複数の第1ライン1と複数の第2ライン2の間に構成される複数の静電容量において、第1の選択回路5と第2の選択回路6により順次出力される出力信号を演算することにより、タッチパネル3の複数の第1のライン1と複数の第2のライン2で構成される隣接する複数の静電容量の差を算出するものである。
また、演算回路8の入力端子8aが、検出回路7の出力端子7cと接続され、この演算回路8は、後述のように検出回路7の出力を元に演算を行い、タッチパネル3に発生する、タッチによる静電容量の変化に関連付けられるタッチの情報を演算回路8の出力端子8bに出力するものである。
【0026】
また、キャパシタC5とスイッチSW5は、直列に接続され、キャパシタC5とスイッチSW5で構成する直列回路は、第1の駆動端子4aと第2の検出端子7bとの間に接続されている。また、キャパシタC6とスイッチSW6は、直列に接続され、キャパシタC6とスイッチSW6で構成する直列回路は、第2の駆動端子4bと第2の検出端子7bとの間に接続されている。
【0027】
つまり、第5の静電容量C5と第5のスイッチSW5を直列に接続し、第5の静電容量C5と第5のスイッチSW5とから構成される直列回路を駆動回路4の第1の駆動端子4aと検出回路7の第2の検出端子7bの間に構成される第3の静電容量C12と並列に接続し、第6の静電容量C6と第6のスイッチSW6を直列に接続し、第6の静電容量C6と第6のスイッチSW6とから構成される直列回路を駆動回路4の第2の駆動端子4bと検出回路7の第2の検出端子7bの間に構成される第4の静電容量C22と並列に接続している。
【0028】
第5の静電容量C5の値は、第3の静電容量C12の変化量が第2の検出端子7bに観測されないように第3の静電容量C12の変化量よりも十分に大きな容量値とし、第6の静電容量C6の値は、第4の静電容量C22の変化量が第2の検出端子7bに観測されないように第4の静電容量C22の変化量よりも十分に大きな容量値とする。また、第5の静電容量C5と第6の静電容量C6は、集積回路に実装する。
【0029】
次に、図1に示す第1の選択回路5が第1の電極ライン1を第1の駆動端子4a又は第2の駆動端子4bに接続し、第2の選択回路6が第2の電極ライン2を第1の検出端子7a又は第2の検出端子7bに接続する例について説明する。
図2は、図1に示す第1の選択回路の具体的な回路構成図である。この第1の選択回路5は、図2に示すように、タッチパネルの電極ライン(L11〜L1m)1に接続されるスイッチSWa11〜SWa1m、SWb11〜SWb1m、SWc11〜SWc1m、SWd11〜SWd1mを備えている。スイッチは、ONすることでスイッチが接続されている電極ラインを選択し、OFFすることでスイッチが接続されている電極ラインを非選択とする。例えば、スイッチSWa11がオンすると、電極ラインL11は、第1の駆動端子(D1)4aに接続され、スイッチSWb11がオンすると、電極ラインL11は、第2の駆動端子(D2)4bに接続され、SWc11がオンすると、電極ラインL11は、第1の検出端子(S1)7aに接続され、スイッチSWd11がオンすると、電極ラインL11は、第2の検出端子(S2)7bに接続される。他のスイッチについても同様である。
【0030】
図4(a),(b)は、図1に示す第1の選択回路の具体的な動作について説明するための制御タイミングを示す図である。
図4(a)に示す各スイッチの制御タイミングは、タッチパネルの電極ライン1の本数が4本、選択するライン数が2本の場合について、各電極ラインを順次全て選択する例を示している。スイッチの制御信号はHigh期間がスイッチON期間、Low期間がスイッチOFF期間を示している。
【0031】
期間1では、スイッチSWa11とスイッチSWb12がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の駆動端子4aには電極ラインL11が選択され、第2の駆動端子4bには電極ラインL12が選択され、第1の検出端子7aと第2の検出端子7bには何も接続されていない。
期間2では、スイッチSWa12とスイッチSWb13がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の駆動端子4aには電極ラインL12が選択され、第2の駆動端子4bには電極ラインL13が選択され、第1の検出端子7aと第2の検出端子7bには何も接続されていない。
【0032】
期間3では、スイッチSWa13とスイッチSWb14がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の駆動端子4aには電極ラインL13が選択され、第2の駆動端子4bには電極ラインL14が選択され、第1の検出端子7aと第2の検出端子7bには何も接続されていない。このようにして、第1の選択回路5は、タッチパネル3の第1の電極ライン1の全てを順次選択して駆動回路4に接続する。
【0033】
図3は、図1に示す第2の選択回路の具体的な回路構成図である。この第2の選択回路6は、図3に示すように、タッチパネルの第2の電極ライン(L21〜L2n)2に接続されるスイッチSWa21〜SWa2n、SWb21〜SWb2n、SWc21〜SWc2n、SWd21〜SWd2nを備えている。スイッチは、ONすることでスイッチが接続されている電極ラインを選択し、OFFすることでスイッチが接続されている電極ラインを非選択とする。例えば、スイッチSWa21がオンすると、電極ラインL21は、第1の駆動端子(D1)4aに接続され、スイッチSWb21がオンすると、電極ラインL21は、第2の駆動端子(D2)4bに接続され、SWc21がオンすると、電極ラインL21は検出端子1(S1)7aに接続され、スイッチSWd21がオンすると、電極ラインL21は検出端子2(S2)7bに接続される。他のスイッチについても同様である。
【0034】
図5(a),(b)は、図1に示す第2の選択回路の具体的な動作について説明するための制御タイミングを示す図である。
図5(a)に示す各スイッチの制御タイミングは、タッチパネル3の第2の電極ライン2の本数が4本、選択するライン数が2本の場合について、各電極ラインを順次全て選択する例を示している。スイッチの制御信号は、High期間がスイッチON期間、Low期間がスイッチOFF期間を示している。
【0035】
期間1では、スイッチSWc21とスイッチSWd22がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の検出端子7aには電極ラインL21が選択され、第2の検出端子7bには電極ラインL22が選択され、第1の駆動端子4aと第2の駆動端子4bには何も接続されていない。
期間2では、スイッチSWc22とスイッチSWd23がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の検出端子7aには電極ラインL22が選択され、第2の検出端子7bには電極ラインL23が選択され、第1の駆動端子4aと第2の駆動端子4bには何も接続されていない。
【0036】
期間3では、スイッチSWc23とスイッチSWd24がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の検出端子7aには電極ラインL23が選択され、第2の検出端子7bには電極ラインL24が選択され、第1の駆動端子4aと第2の駆動端子4bには何も接続されていない。このようにして、第2の選択回路6は、タッチパネル3の第2の電極ライン2の全てを順次選択して検出回路7に接続する。
【0037】
次に、図1に示す第1の選択回路5が第1の電極ライン1を第1の検出端子7a又は第2の検出端子7bに接続し、第2の選択回路6が第2の電極ライン2を第1の駆動端子4a又は第2の駆動端子4bに接続する例について説明する。
図4(b)に示す各スイッチの制御タイミングは、タッチパネル3の第1の電極ライン1の本数が4本、選択するライン数が2本の場合について、各電極ラインを順次全て選択する例を示している。スイッチの制御信号は、High期間がスイッチON期間、Low期間がスイッチOFF期間を示している。
【0038】
期間1ではスイッチSWc11とスイッチSWd12がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の検出端子7aには電極ラインL11が選択され、第2の検出端子7bには電極ラインL12が選択され、第1の駆動端子4aと第2の駆動端子4bには何も接続されていない。
期間2では、スイッチSWc12とスイッチSWd13がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の検出端子7aには電極ラインL12が選択され、第2の検出端子7bには電極ラインL13が選択され、第1の駆動端子4aと第2の駆動端子4bには何も接続されていない。
【0039】
期間3では、スイッチSWc13とスイッチSWd14がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の検出端子7aには電極ラインL13が選択され、第2の検出端子7bには電極ラインL14が選択され、第1の駆動端子4aと第2の駆動端子4bには何も接続されていない。このようにして、第1の選択回路5は、タッチパネル3の第1の電極ライン1の全てを順次選択して検出回路7に接続する。
【0040】
次に、図1に示す第2の選択回路6の具体的な動作について説明する。図5(b)に示す各スイッチの制御タイミングは、タッチパネル3の第2の電極ライン2の本数が4本、選択するライン数が2本の場合について、各電極ラインを順次全て選択する例について示している。スイッチの制御信号は、High期間がスイッチON期間、Low期間がスイッチOFF期間を示している。
【0041】
期間1ではスイッチSWa21とスイッチSWb22がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の駆動端子4aには電極ラインL21が選択され、第2の駆動端子4bには電極ラインL22が選択され、第1の検出端子7aと第2の検出端子7bには何も接続されていない。
期間2では、スイッチSWa22とスイッチSWb23がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の駆動端子4aには電極ラインL22が選択され、第2の駆動端子4bには電極ラインL23が選択され、第1の検出端子7aと第2の検出端子7bには何も接続されていない。
【0042】
期間3では、スイッチSWa23とスイッチSWb24がONし、その他のスイッチは全てOFFしているため、第1の駆動端子4aには電極ラインL23が選択され、第2の駆動端子4bには電極ラインL24が選択され、第1の検出端子7aと第2の検出端子7bには何も接続されていない。このようにして、第2の選択回路6は、タッチパネル3の第2の電極ライン2の全てを順次選択して駆動回路4に接続する。
【0043】
図6(a)乃至(d)は、図1に示す駆動回路について説明するための図である。図6(a)は、駆動回路のブロック図を示したものである。交流信号発生器14を備えており、この交流信号発生器14の出力は第1の駆動端子4aに接続されている。駆動回路4は、位相を180度回転させる機能を備え、その出力は第2の駆動端子4bに接続されている。位相180度回転機能は交流信号発生器14に内包されていてもよく、第1の駆動端子4aと第2の駆動端子4bの位相を180度回転させることを目的としている。
【0044】
図6(b)は、駆動波形が矩形波の場合の一例を示しており、矩形波発生器15と、位相を180度回転させるインバータとを備えている。図6(c)は、図4及び図5に示す各期間において1周期の交流信号を出力している例の図であり、図6(d)は、各期間において2周期の交流信号を出力している例の図である。各期間の駆動波形の周期は1周期以上であればよいので、図6(c)及び図6(d)に示した以外にも3周期や10周期などでもよい。
【0045】
図7は、タッチパネルと駆動回路と検出回路の接続状態を示す図で、図4(a),5(a),6(c)に示される期間1で、かつ図1に示すスイッチ5,6がOFFの場合の、タッチパネルと駆動回路と検出回路の接続状態を示した図である。図1に示すキャパシタC5,C6は、スイッチSW5,6をOFFとしており回路動作に関与しないため、図7には図示していない。
【0046】
電極ライン(L11〜L14)1と電極ライン(L21〜L24)2は、絶縁層を介して容量結合しており、図7に示すように、キャパシタC11〜C44を形成している。
また、タッチパネル3には、第1のライン1と第2のライン2とでタッチパネル3上に形成されている第1の駆動端子4aと第1の検出端子7aの間に接続されている第1の静電容量C11と、第1のライン1と第2のライン2とでタッチパネル3上に形成されている第2の駆動端子4bと第1の検出端子7aの間に接続されている第2の静電容量C21と、第1のライン1と第2のライン2とでタッチパネル3上に形成されている第1の駆動端子4aと第2の検出端子7bの間に接続されている第3の静電容量C12と、第1のライン1と第2のライン2とでタッチパネル3上に形成されている第2の駆動端子4bと第2の検出端子7bの間に接続されている第4の静電容量C22とを有している。
【0047】
第5のスイッチSW5をオフ、かつ第6のスイッチSW6をオフとした時の、第1の静電容量C11と第2の静電容量C21と第3の静電容量C12と第4の静電容量C22の変化量を検出回路7の出力端子7cに第1の出力信号として出力し、第5のスイッチSW5をオン、かつ第6のスイッチSW6をオンとした時の、第1の静電容量C11と第2の静電容量C21と第3の静電容量C12と第4の静電容量C22の変化量を検出回路7の出力端子7cに第2の出力信号として出力する。
【0048】
図7では、第1の駆動端子4aに電極ラインL11が選択され、第2の駆動端子4bに電極ラインL12が選択され、第1の検出端子7aに電極ラインL21が選択され、第2の検出端子7bに電極ラインL22が選択されている。このとき、第1の駆動端子4a及び第2の駆動端子4bの駆動波形の振幅をVA,第1の検出端子7aの電圧をV1、第2の検出端子7bの電圧をV2とすると、V1,V2は、次式のようにあらわされる。
【0049】
【数1】
【0050】
【数2】
【0051】
検出回路7の出力端子7cには、第1の検出端子7aと第2の検出端子7bの差が出力されるため、図7に示す接続の検出回路7の出力電圧をVO1とすると、次式のようにあらわされる。
【0052】
【数3】
【0053】
通常、タッチ位置の検出において良好な線形性を得るために、タッチパネルの電極ラインの形状及び間隔は均一に形成する。このため、キャパシタC11〜C44は等しい値となるため、タッチしていない時は、
【0054】
【数4】
【0055】
となる。ここで、タッチによりキャパシタC11〜C44がそれぞれΔC11〜ΔC44だけ変化すると、出力電圧VO1は、次式のようになる。
【0056】
【数5】
【0057】
さらに、通常用いられるタッチパネルのように、キャパシタC11〜C44に対してΔC11〜ΔC44が十分小さい場合は、ΔC11〜ΔC44は、第1の検出端子7a、第2の検出端子7bに高い線形性を持って出力されるため、次式で表すことができる。
【0058】
【数6】
【0059】
【数7】
【0060】
【数8】
【0061】
例えば、C11=5pF、ΔC11=0.1pFの場合、線形性誤差は0.1%程度であるため、出力端子7cのVO1は、式(6)〜式(8)に示すように表され、タッチによる容量変化を線形、かつ正確に反映することができる。
【0062】
図8は、タッチパネルと駆動回路と検出回路の接続状態を示す図で、図4(a),5(a),6(c)に示される期間1であり、かつ、図1に示すスイッチ5,6がONの場合のタッチパネルと駆動回路と検出回路の接続状態を示した図である。キャパシタC5は、キャパシタC12と並列に接続され、キャパシタC6は、キャパシタC22と並列に接続されており、キャパシタC5,C6の容量は、ΔC12,ΔC22より十分大きな容量値と設定するため、ΔC12,ΔC22の変化量は、第2の検出端子7bから検出されない。一方、キャパシタC5,C6は、ΔC11,ΔC21には影響を与えないため、第1の検出端子7aからはΔC11,ΔC21が観測される。
検出回路7の出力電圧を、上述した高い線形性を考慮してVO2とすると、次式のようになる。
【0063】
【数9】
【0064】
【数10】
【0065】
【数11】
【0066】
一般に、タッチパネルのタッチによる容量変化ΔC12,ΔC22等は0.1pF以下で非常に小さい値である。キャパシタC5,C6の容量値は、ΔC12,ΔC22等よりも十分大きければよいので、本発明によれば、キャパシタC5,C6を集積回路に実装するにあたっては、チップサイズの拡大を伴わない容量値を設定できる特徴がある。
【0067】
また、本発明によれば、キャパシタC5,C6は、タッチによる容量変化(ΔC12,ΔC22など)より十分大きければよいので、キャパシタC5,C6の容量の絶対値精度は、高精度である必要がない。つまり、タッチパネルに形成されるキャパシタの変化量と集積回路に実装されるキャパシタとの組成や特性が異なっていても、検出特性への影響が無く、正確にタッチパネルのキャパシタの変化量を検出することが可能である。
【0068】
また、本発明によれば、タッチパネル上の電極ラインで形成される容量の変化の差を検出する構成をとるため、タッチパネルに指を触れるときに、第1の検出端子7aと第2の検出端子7bにはノイズがコモンモードとして重畳するため、VO1とVO2出力においてはノイズを常にキャンセルすることができ、ノイズを軽減することができる上に、S/Nの向上を図ることができる。
【0069】
図9は、図1に示した検出回路の具体的な回路構成図で、図中符号71は検波回路、72は減算回路、73はアンチエイリアスフィルタ、74はA/Dコンバータを示している。
第1の検出端子7aと第2の検出端子7bには、式(6),式(7)又は式(9),式(10)の電圧が出力され、VAは交流信号であるため、V1,V2も交流信号である。図9に示す検波回路71は、交流信号を直流信号に復調するための回路である。
【0070】
図10(a),(b)は、図9に示した検波回路のスイッチ制御タイミングを示す図である。
検波回路71のスイッチSWe1〜SWe4の制御においては、検波回路71の制御タイミングと駆動回路の制御タイミングとは同期していることが重要であり、例えば、駆動回路4の制御タイミングが図6(c)の場合は、図10(a)の制御タイミングで検波回路71のスイッチを制御する。また、駆動回路4の制御タイミングが図6(d)の場合は、図10(b)の制御タイミングで復調回路のスイッチを制御する。この検波回路71の制御タイミングにより、交流信号であるV1,V2を検波し、直流信号へ復調することができる。
【0071】
図9に示す減算回路72は、検波復調された信号の差を出力し、式(8)と式(11)を得るためのものである。ここで、抵抗R1,R2,R3,R4は、R1=R2,R3=R4と設定する。また、R3>R1とすることでゲインを持たせてもよい。また、図10に示す減算回路72は、オペアンプの基準電圧とオペアンプの負帰還動作によって、第1の検出端子7aと第2の検出端子7bに交流信号に対する直流バイアスを与える働きもしている。
【0072】
本発明によれば、タッチパネル上の電極ラインで形成される容量の変化の差を検出する構成をとるため、タッチパネルに指を触れるときに発生するノイズを常にキャンセルすることで、ノイズを軽減することができる上に、S/Nの向上を図ることができる。
図9に示すアンチエイリアスフィルタ73は、次段のA/Dコンバータ74で実行されるサンプリング時に発生するエイリアスノイズを除去するためのものである。図9では1次のRCローパスフィルタを示しているが、2次以上のフィルタであってもよい。また、減算回路72を構成する際に、この減算回路72にローパスフィルタ特性を内包する構成をとってもよい。例えば、図9に示す減算回路72のR3と並列にキャパシタを接続することでアンチエイリアス効果のある減算回路を実現できる。
【0073】
図9に示すA/Dコンバータ74は、減算回路72の出力をデジタル値に変換し、検出回路7の出力端子7cに出力する回路である。
次に、図1に示す演算回路の詳細について説明する。
演算回路8は、複数の第1ライン1と複数の第2ライン2の間に構成される複数の静電容量において、第1の選択回路5と第2の選択回路6により順次出力される、第1の出力信号と第2の出力信号を演算することで、タッチパネル3の第1のライン1と第2のライン2で構成される全ての隣接する静電容量の差を算出し、静電容量の変化量に関連付けられたタッチセンサ3へのタッチ情報を算出する。
【0074】
また、演算回路8は、入力端子8aと出力端子8bとを備えている。入力端子8aは検出回路7の出力端子7cと接続され、出力端子8bには演算結果が出力される。この演算回路8は、第1の電極ライン1と第2の電極ライン2の間に構成される複数の静電容量において、図1に示すスイッチ5とスイッチ6がOFFの時に、第1の選択回路5と第2の選択回路6により順次出力される、検出回路7の出力端子7cの信号VO1と、スイッチ5とスイッチ6がONの時に、第1の選択回路5と第2の選択回路6により順次出力される、検出回路7の出力端子7cの信号VO2を演算することで、タッチパネル上の全ての隣接する静電容量の差を算出し、静電容量の変化に関連付けられたタッチセンサへのタッチ情報を検出することを目的としている。
【0075】
例えば、図7で示す接続において、図4(a),図5(a)の駆動と検出を、順次全ての電極ラインの組み合わせに対して行うと、図4(a)による駆動パターンは、期間1,2,3の3パターンあり、図5(a)による検出パターンは、期間1,2,3の3パターンあるため、3×3=9パターンの出力信号を得る。検出回路7の出力端子7cには、次の様な出力を得る。
VO11=((ΔC11―ΔC21)―(ΔC12―ΔC22))VA
・・・(101)
VO12=((ΔC12―ΔC22)―(ΔC13―ΔC23))VA
・・・(102)
VO13=((ΔC13―ΔC23)―(ΔC14―ΔC24))VA
・・・(103)
VO14=((ΔC21―ΔC31)―(ΔC22―ΔC32))VA
・・・(104)
VO15=((ΔC22―ΔC32)―(ΔC23―ΔC33))VA
・・・(105)
VO16=((ΔC23―ΔC33)―(ΔC24―ΔC34))VA
・・・(106)
VO17=((ΔC31―ΔC41)―(ΔC32―ΔC42))VA
・・・(107)
VO18=((ΔC32―ΔC42)―(ΔC33―ΔC43))VA
・・・(108)
VO19=((ΔC33―ΔC43)―(ΔC34―ΔC44))VA
・・・(109)
【0076】
また、図8で示す接続において、図4(a),図5(a)に示す駆動、検出を行い、検出回路7の出力端子7cに次の様な出力を得る。
VO11b=(ΔC11―ΔC21)VA ・・・(110)
VO14b=(ΔC21―ΔC31)VA ・・・(111)
VO17b=(ΔC31―ΔC41)VA ・・・(112)
【0077】
また、図8で示す接続において、図4(b),図5(b)に示す駆動、検出を行い、検出回路7の出力端子7cに次の様な出力を得る。
VO21b=(ΔC11―ΔC12)VA ・・・(113)
VO22b=(ΔC12―ΔC13)VA ・・・(114)
VO23b=(ΔC13―ΔC14)VA ・・・(115)
式(110)〜式(115)を演算することでタッチパネル上の全ての隣接する静電容量の差を算出することができる。
図11は、VAで規格化した演算結果のタッチパネルに対応したマトリクスを示す図である。
以上のことから、本発明によれば、全ての電極ラインの差分情報を差動検出で取得できるので、タッチパネルに指を触れるときに発生するノイズを軽減することができる上に、S/Nの向上を図ることができる。
【実施例2】
【0078】
図12は、本発明に係るタッチセンサの静電容量検出回路の実施例2を説明するためのタッチパネルと駆動回路と検出回路の接続状態を示す図である。
本実施例2は、上述した実施例1の説明に示したタッチパネルの電極ライン数と、選択するライン数の変形例であり、6本の第1の電極ライン1と4本の第2の電極ライン2とで構成されるタッチパネルの場合の例である。
【0079】
本実施例2では、第1の電極ライン1と第2の電極ライン2からそれぞれ偶数本を選択し、それぞれ駆動ラインと検出ラインとし、駆動ラインの半数を第1の駆動端子4aに接続し、その残りを第2の駆動端子4bに接続し、検出ラインの半数を第1の検出端子7aに接続し、その残りを第2の検出端子7bに接続する。
図12は、第1の電極ライン1から4本を駆動ラインとして選択し、第1の駆動端子4aにL11とL12を選択し、第2の駆動端子4bにL14とL15を選択し、第1の検出端子7aにL21を選択し、第2の検出端子7bにL22を選択した場合の図である。
【0080】
図12の接続により、第1の検出端子7aの検出信号V1と第2の検出端子7bの検出信号V2は、以下の式であらわされる。
V1=[{(ΔC11+ΔC21)−(ΔC41+ΔC51)}]VA
V2=[{(ΔC12+ΔC22)−(ΔC42+ΔC52)}]VA
VO1=V1−V2=[{(ΔC11+ΔC21)−(ΔC41+ΔC51)}―{(ΔC12+ΔC22)−(ΔC42+ΔC52)}]VA
図12に、キャパシタC5,C6を接続する場合も第1の実施形態で示したものと同様に、キャパシタC5を第1の駆動端子4aと第2の検出端子7bに接続し、キャパシタC6を第2の駆動端子4bと第2の検出端子7bに接続すれば、同様の効果が得られ、
V1=[{(ΔC11+ΔC21)−(ΔC41+ΔC51)}]VA
V2=0
VO2=V1−V2=[{(ΔC11+ΔC21)−(ΔC41+ΔC51)}]VA
を得ることができる。
【0081】
このように、図12に示す例においても、タッチパネルに形成されるキャパシタの変化量と集積回路に実装されるキャパシタとの組成や特性が異なっていても、検出特性への影響が無く、正確にタッチパネルのキャパシタの変化量を検出することが可能である。
また、タッチパネル上の電極ラインで形成される容量の変化の差を検出する構成をとるため、タッチパネルに指を触れるときに、第1の検出端子7aと第2の検出端子7bにはノイズがコモンモードとして重畳するため、VO1とVO2出力においてはノイズを常にキャンセルすることができ、ノイズを軽減することができる上に、S/Nの向上を図ることができる。
【実施例3】
【0082】
図13は、本発明に係るタッチセンサの静電容量検出回路の実施例3を説明するための検出回路の具体的な回路構成図である。なお、図9と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付してある。
本実施例3は、上述した実施例1の説明に示した検出回路において、タッチパネルにタッチする際に発生する低周波数帯域のノイズを除去する特徴がある。図13においては、図9の検波回路71に直列にキャパシタC10,C11を追加したものである。低周波数帯域のノイズとしては、商用電源の50Hzや60Hzといったものが知られている。これらのノイズを除去できるよう、キャパシタC10,C11及び抵抗R1,R2で構成されるハイパスフィルタのカットオフ周波数を設定する。
【実施例4】
【0083】
図14は、本発明に係るタッチセンサの静電容量検出回路の実施例4を説明するための検出回路の具体的な回路構成図で、図中符号72aは減算回路を示している。なお、図9と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付してある。
本実施例4は、上述した実施例1の説明に示した検出回路7における、減算回路72の変形例であり、減算回路72aで設定するゲインと、ハイパスフィルタのカットオフ周波数を個別に設定できるようにしたものである。
【0084】
図14は、減算回路72aを計装アンプの構成としたものである。計装アンプの直流動作点は、抵抗R10,R11,R12,R13で設定する。また、ハイパスフィルタのカットオフ周波数は、キャパシタC10と抵抗R10//R11、キャパシタC11と抵抗R12//R13で設定する。
【実施例5】
【0085】
図15は、本発明に係るタッチセンサの静電容量検出回路の実施例5を説明するための検出回路の具体的な回路構成図で、図中符号72bは減算回路を示している。なお、図9と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付してある。
本実施例5は、上述した実施例1の説明に示した検出回路7における、減算回路72の変形例であり、減算回路72bで設定するゲインと、ハイパスフィルタのカットオフ周波数を個別に設定できるようにし、さらに、計装アンプを構成するオペアンプ1A,オペアンプ1Bが持つオフセットを除去できるようにしたものである。ハイパスフィルタのカットオフ周波数は、キャパシタC10と抵抗R10//R11、キャパシタC11と抵抗R12//R13で設定する。オペアンプ1A,オペアンプ1Bが持つオフセットは、検波回路71の検波周波数に変調される。一方、検出端子1及び検出端子2に入力される、静電容量の変化量を示す交流信号は、検波回路71により直流に復調される。次段のアンチエイリアスフィルタ73のカットオフ周波数を検波周波数より低く設定することで、検波周波数に変調されたオペアンプのオフセットを除去しつつ、直流に復調された静電容量の変化量を効率的に検出することが可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 複数の第1のライン
2 複数の第2のライン
3 タッチパネル
4 駆動回路
4a 第1の駆動端子
4b 第2の駆動端子
5 第1の選択回路
6 第2の選択回路
7 検出回路
7a 第1の検出端子
7b 第2の検出端子
7c 出力端子
8 演算回路
8a 入力端子
8b 出力端子
14 交流信号発生器
15 矩形波発生器
71 検波回路
72,72a,72b 減算回路
73 アンチエイリアスフィルタ
74 A/Dコンバータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15