特許第5977556号(P5977556)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977556
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】硬さ試験機
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/42 20060101AFI20160817BHJP
【FI】
   G01N3/42 C
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-70581(P2012-70581)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-205018(P2013-205018A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】竹村 文宏
(72)【発明者】
【氏名】輿水 文比古
【審査官】 渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−286541(JP,A)
【文献】 実開昭63−057562(JP,U)
【文献】 特開平05−133865(JP,A)
【文献】 特開2011−220790(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0210777(US,A1)
【文献】 特開平03−040356(JP,A)
【文献】 特開平08−313217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N3/00−3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料台に載置された試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機において、
前記試料台を水平方向に移動させる試料台水平移動手段と、
対物レンズを介して前記試料の表面を撮像する撮像手段と、
前記圧子又は前記対物レンズを、前記試料に対向する所定の位置に選択的に配置可能な切替手段と、
前記所定の位置に配置された前記圧子の中心位置と、前記所定の位置に配置された前記対物レンズの中心位置と、の水平方向におけるずれ量を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されているずれ量に基づいて、前記切替手段により前記所定の位置に配置された前記圧子又は前記対物レンズの中心位置と対応する位置に、前記試料台水平移動手段を移動させる試料台移動制御手段と、
を備え
前記対物レンズは、第1の対物レンズと、前記第1の対物レンズよりも倍率の低い第2の対物レンズと、を備え、
前記第1の対物レンズを介して前記撮像手段により撮像された前記試料の表面の画像を解析し、当該画像中に前記圧子により形成されたくぼみが存在するか否かを判定するくぼみ判定手段と、
前記くぼみ判定手段により前記くぼみが存在しないと判定された場合に、現在位置を中心として水平方向に一回の撮像により撮像可能な範囲分ずつ前記試料台水平移動手段を移動させながら前記撮像手段により任意の枚数の画像を撮像させ、当該撮像された任意の枚数の画像を1枚の画像に合成する画像合成手段と、
を備えることを特徴とする硬さ試験機。
【請求項2】
前記圧子は、第1の圧子と、第2の圧子と、を備え、
前記記憶手段は、前記所定の位置に配置された前記第1の圧子の中心位置と、前記所定の位置に配置された前記第2の圧子の中心位置と、の水平方向におけるずれ量を記憶し、
前記試料台移動制御手段は、前記記憶手段に記憶されているずれ量に基づいて、前記切替手段により前記所定の位置に配置された前記第1の圧子、前記第2の圧子、又は前記対物レンズの中心位置と対応する位置に、前記試料台水平移動手段を移動させることを特徴とする請求項に記載の硬さ試験機。
【請求項3】
前記試料台を上下方向に昇降させる試料台昇降手段を備え、
前記記憶手段は、前記所定の位置に配置された前記圧子によりくぼみ付けが行われるときの前記試料台の位置と、前記所定の位置に配置された前記対物レンズの焦点が合っているときの前記試料台の位置と、の上下方向におけるずれ量を記憶し、
前記試料台移動制御手段は、前記記憶手段に記憶されているずれ量に基づいて、前記切替手段により前記所定の位置に配置された前記対物レンズの焦点が合っているときの位置に前記試料台が位置するように、前記試料台昇降手段を昇降させることを特徴とする請求項又はに記載の硬さ試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬さ試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビッカース硬さ試験法、ヌープ硬さ試験法など、平面形状が多角形の圧子を試料の表面に押し付け、試料表面に生じる多角形のくぼみの対角線長さより硬度を測定する押し込み式の硬さ試験法はよく知られており、これは金属材料の機械的性質の評価に多く用いられている。
【0003】
周知のように、ビッカース硬さ試験法は、ダイヤモンド正四角錘による圧子を使用し、試料表面に生じる正四角錘形状のくぼみの二つの対角線長さの平均値と圧子の試料に対する押し付け荷重との関係において硬度を示すものであり、ヌープ硬さ試験法は、ダイヤモンド長四角錘による圧子を使用し、試料表面に生じる長四角錘形状のくぼみの長い方の対角線長さと圧子の試料に対する押し付け荷重との関係において硬度を示すものである。
【0004】
通常、ビッカース硬さ試験機やヌープ硬さ試験機で硬さ試験を行う場合、試料を対物レンズで観察して試験位置を設定し、ターレットを回転させて対物レンズを圧子に切り替えてくぼみ付け動作を行い、再び対物レンズに切り替えて試料の表面に形成されたくぼみを観察する。このとき、設定した試験位置に正しくくぼみを形成するためには、くぼみ付けをする圧子の中心位置と観察をする対物レンズの中心位置の位置決めが、正確になされている必要がある。従来の硬さ試験機では、試料に対向する所定の位置に配置された圧子の中心位置に合わせて対物レンズを機械的に調芯する機構を用いて調整が行われていた。
【0005】
しかしながら、圧子は消耗品であるため、消耗時に交換する必要があるが、圧子を交換した場合、圧子の中心位置と対物レンズの中心位置とがずれてしまうことがあるため、対物レンズの調芯作業を行う必要が生じる。対物レンズを調芯するには、まず、基準となる圧子でくぼみ付けを行い、ターレットを回転させて調芯する対物レンズに切り替える。次に、くぼみを観察しながらくぼみの中心位置が画面の中心位置となるように対物レンズを調芯する。最後に、圧子に切り替えて、再度くぼみ付けを行い、調芯した対物レンズに切り替えて、くぼみの中心位置が画面の中心位置と一致しているか否かを確認する。
【0006】
現行の硬さ試験機は、搭載される対物レンズの本数が多いため、上記の調芯作業を搭載された対物レンズの本数分行う必要がある。また、現行の硬さ試験機には、圧子を2本搭載するものも存在するため、基準となる第1の圧子の中心位置に合わせて第2の圧子を調芯する必要もある。上記の一連の調芯作業をユーザが行うのは大変である。
【0007】
そこで、圧子の中心位置と対物レンズの中心位置とがずれている場合であっても、正確な硬さ試験を行うことができるようにした硬さ試験機が開示されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、特許文献1記載の発明は、表示画面(対物レンズ)の中心座標と表示画面に表示されたくぼみの中心座標との座標差を算出し、座標差がほぼゼロとなるように試料台を水平方向に移動させることにより、圧子の中心位置と対物レンズの中心位置とのずれを補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−286541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1記載の発明は、くぼみ形成後の硬さ算出の際に行われる補正処理であり、くぼみ形成時には圧子の中心位置と対物レンズの中心位置とのずれを補正することができないため、ユーザが所望する試験位置にくぼみを形成できないことがあった。
【0010】
本発明は、圧子の中心位置と対物レンズの中心位置とがずれている場合であっても、ユーザが所望する試験位置にくぼみを形成することができ、正確な硬さ試験を行うことができる硬さ試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、
試料台に載置された試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機において、
前記試料台を水平方向に移動させる試料台水平移動手段と、
対物レンズを介して前記試料の表面を撮像する撮像手段と、
前記圧子又は前記対物レンズを、前記試料に対向する所定の位置に選択的に配置可能な切替手段と、
前記所定の位置に配置された前記圧子の中心位置と、前記所定の位置に配置された前記対物レンズの中心位置と、の水平方向におけるずれ量を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されているずれ量に基づいて、前記切替手段により前記所定の位置に配置された前記圧子又は前記対物レンズの中心位置と対応する位置に、前記試料台水平移動手段を移動させる試料台移動制御手段と、
を備え
前記対物レンズは、第1の対物レンズと、前記第1の対物レンズよりも倍率の低い第2の対物レンズと、を備え、
前記第1の対物レンズを介して前記撮像手段により撮像された前記試料の表面の画像を解析し、当該画像中に前記圧子により形成されたくぼみが存在するか否かを判定するくぼみ判定手段と、
前記くぼみ判定手段により前記くぼみが存在しないと判定された場合に、現在位置を中心として水平方向に一回の撮像により撮像可能な範囲分ずつ前記試料台水平移動手段を移動させながら前記撮像手段により任意の枚数の画像を撮像させ、当該撮像された任意の枚数の画像を1枚の画像に合成する画像合成手段と、
を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の硬さ試験機において、
前記圧子は、第1の圧子と、第2の圧子と、を備え、
前記記憶手段は、前記所定の位置に配置された前記第1の圧子の中心位置と、前記所定の位置に配置された前記第2の圧子の中心位置と、の水平方向におけるずれ量を記憶し、
前記試料台移動制御手段は、前記記憶手段に記憶されているずれ量に基づいて、前記切替手段により前記所定の位置に配置された前記第1の圧子、前記第2の圧子、又は前記対物レンズの中心位置と対応する位置に、前記試料台水平移動手段を移動させることを特徴とする。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項又はに記載の硬さ試験機において、
前記試料台を上下方向に昇降させる試料台昇降手段を備え、
前記記憶手段は、前記所定の位置に配置された前記圧子によりくぼみ付けが行われるときの前記試料台の位置と、前記所定の位置に配置された前記対物レンズの焦点が合っているときの前記試料台の位置と、の上下方向におけるずれ量を記憶し、
前記試料台移動制御手段は、前記記憶手段に記憶されているずれ量に基づいて、前記切替手段により前記所定の位置に配置された前記対物レンズの焦点が合っているときの位置に前記試料台が位置するように、前記試料台昇降手段を昇降させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、圧子の中心位置と対物レンズの中心位置とがずれている場合であっても、ユーザが所望する試験位置にくぼみを形成することができ、正確な硬さ試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る硬さ試験機の全体構成を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る硬さ試験機の試験機本体を示す模式図である。
図3】第1実施形態に係る硬さ試験機の硬さ測定部を示す模式図である。
図4】第1実施形態に係る硬さ試験機の制御構造を示すブロック図である。
図5】第1実施形態に係る硬さ試験機の補正パラメータ取得処理を示すフローチャートである。
図6】補正パラメータ取得処理で試料の表面に各圧子によりくぼみが形成された様子の一例を示す図である。
図7】第1の圧子により形成されたくぼみの中心位置と、第2の圧子により形成されたくぼみの中心位置と、のXY方向のずれ量を説明する図である。
図8】第1の圧子により形成されたくぼみの中心位置と、低倍対物レンズの中心位置と、のXY方向のずれ量を説明する図である。
図9】第1実施形態に係る硬さ試験機の硬さ試験処理を示すフローチャートである。
図10】硬さ試験処理で各圧子の中心位置を示すマークがモニタに表示された様子の一例を示す図である。
図11図10の状態から、第2の圧子の中心位置を示すマークの位置が試料の試験位置と一致するように試料を移動させた様子の一例を示す図である。
図12図11の状態から、第2の圧子によりくぼみを形成させた様子の一例を示す図である。
図13】第2実施形態に係る硬さ試験機の全体構成を示す斜視図である。
図14】第2実施形態に係る硬さ試験機の試験機本体を示す模式図である。
図15】第2実施形態に係る硬さ試験機の制御構造を示すブロック図である。
図16】第2実施形態に係る硬さ試験機の硬さ試験処理を示すフローチャートである。
図17】第2実施形態の変形例2に係る硬さ試験機の画像合成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、図1及び図13におけるX方向を左右方向とし、Y方向を前後方向とし、Z方向を上下方向とする。また、X−Y面を水平面とする。
【0020】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る硬さ試験機100は、手動式のXYステージ3を備えた硬さ試験機であり、図1及び図2に示すように、試験機本体10と、制御部6と、操作部7と、モニタ8等を備えている。
【0021】
試験機本体10は、試料Sの硬さ測定を行う硬さ測定部1と、試料Sを載置する試料台2と、試料台2を水平方向に移動させるXYステージ3と、試料Sの表面に焦点を合わせるために試料台2及びXYステージ3を上下方向に昇降する昇降機構部5等を備えている。
【0022】
硬さ測定部1は、図3に示すように、試料Sの表面を照明する照明装置11と、試料Sの表面を撮像するCCDカメラ12と、圧子141を備える2本の圧子軸14と2本の対物レンズ15を備え、回転することにより圧子軸14と対物レンズ15との切り替えが可能なターレット16等により構成されている。
【0023】
照明装置11は、光を照射することにより試料Sの表面を照明するものであり、照明装置11から照射される光は、レンズ1a、ハーフミラー1d、ミラー1e、対物レンズ15を介して試料Sの表面に到達する。
【0024】
CCDカメラ12は、試料Sの表面から対物レンズ15、ミラー1e、ハーフミラー1d、ミラー1g、及びレンズ1hを介して入力された反射光に基づき、当該試料Sの表面や圧子141により試料Sの表面に形成されるくぼみを撮像して画像データを取得し、複数フレームの画像データを同時に蓄積、格納可能なフレームグラバ17を介して、制御部6に出力する。
これにより、CCDカメラ12は、撮像手段として機能する。
【0025】
圧子軸14は、ターレット16の下面に複数保持されており、ターレット16の回転により試料Sの上方、即ち、試料Sに対向する所定の位置に配置されることで、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動される負荷機構部(図示省略)により、試料台2に載置された試料Sに向け移動され、先端部に備えた圧子141を試料Sの表面に所定の試験力で押し付ける。
具体的には、圧子軸14は、先端部にダイヤモンド正四角錘によるビッカース硬さ試験用の第1の圧子141Aを備える第1の圧子軸14Aと、先端部にダイヤモンド長四角錘によるヌープ硬さ試験用の第2の圧子141Bを備える第2の圧子軸14Bと、を備えて構成されている。
【0026】
対物レンズ15は、それぞれ異なる倍率からなる集光レンズであり、ターレット16の下面に複数保持されており、ターレット16の回転により試料Sに対向する所定の位置に配置されることで、照明装置11から照射される光を一様に試料Sの表面に照射させる。
具体的には、対物レンズ15は、高倍対物レンズ(第1の対物レンズ)15Aと、高倍対物レンズ15Aよりも倍率の低い低倍対物レンズ(第2の対物レンズ)15Bと、を備えて構成されている。高倍対物レンズ15Aは、倍率が20倍以上のレンズであるとより好ましい。倍率が20倍以上のレンズであれば、焦点深度が浅く、焦点深度がくぼみ付けの際の試料Sの高さの許容範囲を超えることがないため、試料Sの高さの位置決め精度を高めることができる。一方、低倍対物レンズ15Bは、倍率が5倍以下のレンズであるとより好ましい。倍率が5倍以下のレンズであれば、高視野の画像を取得することができるため、広範囲の画像を容易に取得することができる。
【0027】
ターレット16は、下面に複数の圧子軸14(第1の圧子軸14A及び第2の圧子軸14B)と複数の対物レンズ15(高倍対物レンズ15A及び低倍対物レンズ15B)を取り付け、Z軸方向を中心に回転することにより、当該複数の圧子軸14と複数の対物レンズ15の中の何れか一つを切り替えて、試料Sに対向する所定の位置に選択的に配置可能なように構成されている。つまり、圧子軸14を試料Sに対向する所定の位置に配置することで試料Sの表面にくぼみを形成し、対物レンズ15を試料Sに対向する所定の位置に配置することで、当該形成されたくぼみを観察することが可能となる。
即ち、ターレット16は、圧子軸14(圧子141)又は対物レンズ15を、試料Sに対向する所定の位置に配置可能な切替手段として機能する。
【0028】
試料台2は、上面に載置される試料Sを試料固定部2aで固定する。
XYステージ3は、ユーザにより手動で駆動され、試料台2を圧子141の移動方向(Z軸方向)に垂直な方向(X軸,Y軸方向)、即ち、水平方向に移動させる。即ち、XYステージ3は、試料台2を水平方向に移動させる試料台水平移動手段として機能する。
昇降機構部5は、ユーザにより手動で駆動され、試料台2及びXYステージ3をZ軸方向、即ち、上下方向に昇降させることで、試料台2と対物レンズ15との間の相対距離を変化させる。
【0029】
操作部7は、キーボード71、マウス72等により構成されており、硬さ試験を行う際のユーザによる入力操作を実行させる。そして、操作部7により所定の入力操作がなされると、その入力操作に応じた所定の操作信号が制御部6に出力される。
【0030】
例えば、操作部7は、ユーザに、当該硬さ試験機100による硬さ試験を実施する際の試験条件値を入力させることができる。そして、入力された試験条件値は制御部6に送信される。ここで、試験条件値とは、例えば、試料Sの材質、圧子141により試料Sに負荷される試験力(N)、対物レンズ15の倍率、等の値である。
【0031】
モニタ8は、例えば、LCDなどの表示装置により構成されており、操作部7において入力された硬さ試験の設定条件、硬さ試験の結果、CCDカメラ12が撮像した試料Sの表面や試料Sの表面に形成されるくぼみの画像等を表示する。
これにより、モニタ8は、表示手段として機能する。
【0032】
制御部6は、図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)61、RAM(Random Access Memory)62、記憶部63等を備えて構成され、記憶部63に記憶された所定のプログラムが実行されることにより、所定の硬さ試験を行うための動作制御等を行う機能を有する。
【0033】
CPU61は、記憶部63に格納された処理プログラム等を読み出して、RAM62に展開して実行することにより、硬さ試験機100全体の制御を行う。
【0034】
RAM62は、CPU61により実行された処理プログラム等を、RAM62内のプログラム格納領域に展開するとともに、入力データや上記処理プログラムが実行される際に生じる処理結果等をデータ格納領域に格納する。
【0035】
記憶部63は、例えば、プログラムやデータ等を記憶する記録媒体(図示省略)を有しており、この記録媒体は、半導体メモリ等で構成されている。また、記憶部63は、CPU61が硬さ試験機100全体を制御する機能を実現させるための各種データ、各種処理プログラム、これらプログラムの実行により処理されたデータ等を記憶する。
また、記憶部63は、試料Sに対向する所定の位置に配置された第1の圧子141Aの中心位置と、当該所定の位置に配置された第2の圧子141Bの中心位置と、の水平方向におけるずれ量、試料Sに対向する所定の位置に配置された第1の圧子141Aの中心位置と、当該所定の位置に配置された低倍対物レンズ15Bの中心位置と、の水平方向におけるずれ量、及び試料Sに対向する所定の位置に配置された第1の圧子141Aの中心位置と、当該所定の位置に配置された高倍対物レンズ15Aの中心位置と、の水平方向におけるずれ量等の補正パラメータを記憶する。
これにより、記憶部63は、記憶手段として機能する。
【0036】
次に、第1実施形態に係る硬さ試験機100の動作について説明する。
まず、第1実施形態に係る硬さ試験機100の硬さ試験を行う前段階で行われる補正パラメータ取得処理について、図5のフローチャートを参照して説明する。
【0037】
まず、第1の圧子141Aにより試料Sの表面にくぼみを形成する(ステップS11)。具体的には、ユーザは、試料台2に硬さ試験の対象となる試料Sを載置して試料固定部2aで固定し、ターレット16を回転させて第1の圧子141Aを試料Sに対向する所定の位置に配置させ、操作部7を操作してくぼみ付けの指示を入力する。CPU61は、上記入力操作に応じた操作信号を操作部7から受け付けると、負荷機構部(図示省略)を駆動することにより、第1の圧子141Aを下降させ、試料Sの表面にくぼみX1を形成させる(図6参照)。
【0038】
次に、第2の圧子141Bにより試料Sの表面にくぼみを形成する(ステップS12)。具体的には、ユーザは、ターレット16を回転させて第2の圧子141Bを試料Sに対向する所定の位置に配置させ、操作部7を操作してくぼみ付けの指示を入力する。CPU61は、上記入力操作に応じた操作信号を操作部7から受け付けると、負荷機構部(図示省略)を駆動することにより、第2の圧子141Bを下降させ、試料Sの表面にくぼみX2を形成させる(図6参照)。
【0039】
次に、低倍対物レンズ15Bにより試料Sの表面の画像データを取得する(ステップS13)。具体的には、ユーザは、ターレット16を回転させて、低倍対物レンズ15Bを試料Sに対向する所定の位置に配置させる。CCDカメラ12は、低倍対物レンズ15Bを介して試料Sの表面を撮像して画像データを取得し、制御部6に出力する。
【0040】
次に、第1の圧子141Aにより形成されたくぼみX1の中心位置と、第2の圧子141Bにより形成されたくぼみX2の中心位置と、の水平方向のずれ量を算出する(ステップS14)。具体的には、CPU61は、CCDカメラ12から出力された試料Sの表面の画像データを解析し、第1の圧子141Aにより形成されたくぼみX1の中心位置と、第2の圧子141Bにより形成されたくぼみX2の中心位置と、のX方向のずれ量A1及びY方向のずれ量A2(図7参照)を算出し、補正パラメータとして記憶部63に記憶させる。この補正パラメータは、試料Sに対向する所定の位置に配置された第1の圧子141Aの中心位置と、当該所定の位置に配置された第2の圧子141Bの中心位置と、の水平方向におけるずれ量となる。
【0041】
次に、第1の圧子141Aにより形成されたくぼみX1の中心位置と、低倍対物レンズ15Bの中心位置と、の水平方向のずれ量を算出する(ステップS15)。具体的には、CPU61は、CCDカメラ12から出力された試料Sの表面の画像データを解析し、第1の圧子141Aにより形成されたくぼみX1の中心位置と、低倍対物レンズ15Bの中心位置と、のX方向のずれ量B1及びY方向のずれ量B2(図8参照)を算出し、補正パラメータとして記憶部63に記憶させる。この補正パラメータは、試料Sに対向する所定の位置に配置された第1の圧子141Aの中心位置と、当該所定の位置に配置された低倍対物レンズ15Bの中心位置と、の水平方向におけるずれ量となる。
【0042】
次に、高倍対物レンズ15Aにより試料Sの表面の画像データを取得する(ステップS16)。具体的には、ユーザは、ターレット16を回転させて、高倍対物レンズ15Aを試料Sに対向する所定の位置に配置させる。CCDカメラ12は、高倍対物レンズ15Aを介して試料Sの表面を撮像して画像データを取得し、制御部6に出力する。
【0043】
次に、第1の圧子141Aにより形成されたくぼみX1の中心位置と、高倍対物レンズ15Aの中心位置と、の水平方向のずれ量を算出する(ステップS17)。具体的には、CPU61は、CCDカメラ12から出力された試料Sの表面の画像データを解析し、第1の圧子141Aにより形成されたくぼみX1の中心位置と、高倍対物レンズ15Aの中心位置と、のX方向のずれ量及びY方向のずれ量(図示省略)を算出し、補正パラメータとして記憶部63に記憶させる。この補正パラメータは、試料Sに対向する所定の位置に配置された第1の圧子141Aの中心位置と、当該所定の位置に配置された高倍対物レンズ15Aの中心位置と、の水平方向におけるずれ量となる。
【0044】
なお、上記第1実施形態では、第1の圧子141Aの中心位置を基準として、第2の圧子141Bの中心位置との水平方向におけるずれ量(ステップS14)、低倍対物レンズ15Bの中心位置との水平方向におけるずれ量(ステップS15)、及び高倍対物レンズ15Aの中心位置との水平方向におけるずれ量(ステップS17)、の順にずれ量を算出するようにしているが、ずれ量を算出する順序に特に制限はなく、いかなる順序で算出してもよい。
また、第2の圧子141Bの中心位置を基準として、第1の圧子141Aの中心位置との水平方向におけるずれ量、低倍対物レンズ15Bの中心位置との水平方向におけるずれ量、及び高倍対物レンズ15Aの中心位置との水平方向におけるずれ量を算出して記憶部63に記憶させるようにしてもよい。
【0045】
次に、第1実施形態に係る硬さ試験機100の硬さ試験処理について、図9のフローチャートを参照して説明する。なお、ここでは、第2の圧子141Bを用いて硬さ試験を行う場合を例示して説明する。
【0046】
まず、低倍対物レンズ15Bにより試料Sの表面の画像データを取得する(ステップS21)。具体的には、ユーザは、ターレット16を回転させて、低倍対物レンズ15Bを試料Sに対向する所定の位置に配置させる。なお、ここでは、試料Sに対向する所定の位置に低倍対物レンズ15Bを配置させるようにしているが、高倍対物レンズ15Aを配置させるようにしてもよい。CCDカメラ12は、低倍対物レンズ15Bを介して試料Sの表面を撮像して画像データを取得し、制御部6に出力する。
【0047】
次に、試料Sの表面の画像を、第1の圧子141Aの中心位置を示すマーク及び第2の圧子141Bの中心位置を示すマークとともに、モニタ8に表示する(ステップS22)。具体的には、CPU61は、CCDカメラ12から出力された試料Sの表面の画像データに基づいて、試料Sの表面の画像Gをモニタ8に表示させる(図10参照)。このとき、CPU61は、記憶部63に記憶されている補正パラメータを参照して、試料Sに対向する所定の位置に配置された第1の圧子141Aの中心位置を示すマークM1、及び試料Sに対向する所定の位置に配置された第2の圧子141Bの中心位置を示すマークM2を、画像G上に表示させる。具体的には、CPU61は、第1の圧子141Aの中心位置と、低倍対物レンズ15Bの中心位置と、の水平方向におけるずれ量を参照して、マークM1の表示位置を算出して表示させるとともに、第1の圧子141Aの中心位置と、第2の圧子141Bの中心位置の中心位置と、の水平方向におけるずれ量を参照して、マークM2の表示位置を算出して表示させる。即ち、CPU61は、ターレット16により対物レンズ15が所定の位置に配置されている場合に、記憶部63に記憶されているずれ量に基づいて、モニタ8に圧子141(第1の圧子141A及び第2の圧子141B)の中心位置を示すマークM1、M2を表示させる表示制御手段として機能する。このように、各圧子141の中心位置を示すマークM1、M2を表示させることで、各圧子141によるくぼみ形成前にくぼみ形成予定位置をユーザに認識させることができる。
なお、第1実施形態では、モニタ8に圧子141(第1の圧子141A及び第2の圧子141B)の中心位置を示すマークM1、M2を表示させるようにしているが、これに加えて、モニタ8画面の任意の位置に、第1の圧子141Aの中心位置と、低倍対物レンズ15Bの中心位置と、の水平方向におけるずれ量、及び第2の圧子141Bの中心位置と、低倍対物レンズ15Bの中心位置と、の水平方向におけるずれ量を表示させることも可能である。ステップS21で高倍対物レンズ15Aが選択された場合は、各圧子141(第1の圧子141A及び第2の圧子141B)の中心位置と、高倍対物レンズ15Aの中心位置と、の水平方向におけるずれ量が表示されることとなる。
【0048】
次に、第2の圧子141Bの中心位置を示すマークM2の位置が、試料Sの試験位置と一致するように、XYステージ3を水平方向に手動で移動する(ステップS23)。具体的には、ユーザは、第2の圧子141Bの中心位置を示すマークM2の位置が、試料Sの試験位置、即ち、くぼみを形成したい位置と一致するように、XYステージ3を水平方向に手動で移動させる(図11参照)。
【0049】
次に、第2の圧子141Bにより試料Sの表面にくぼみを形成する(ステップS24)。具体的には、ユーザは、ターレット16を回転させて、第2の圧子141Bを試料Sに対向する所定の位置に配置させ、操作部7を操作してくぼみ付けの指示を入力する。CPU61は、上記入力操作に応じた操作信号を操作部7から受け付けると、負荷機構部(図示省略)を駆動することにより、第2の圧子141Bを下降させ、試料Sの表面にくぼみX3を形成させる(図12参照)。
【0050】
次に、低倍対物レンズ15Bにより試料Sの表面の画像データを取得する(ステップS25)。具体的には、ユーザは、ターレット16を回転させて、低倍対物レンズ15Bを試料Sに対向する所定の位置に配置させる。なお、ここでは、試料Sに対向する所定の位置に低倍対物レンズ15Bを配置させるようにしているが、高倍対物レンズ15Aを配置させるようにしてもよい。CCDカメラ12は、低倍対物レンズ15Bを介して試料Sの表面を撮像して画像データを取得し、制御部6に出力する。
【0051】
次に、ステップS24で第2の圧子141Bにより形成されたくぼみX3の中心位置が、低倍対物レンズ15Bの中心位置と一致するように、XYステージ3を水平方向に手動で移動する(ステップS26)。具体的には、CPU61は、CCDカメラ12から出力された試料Sの表面の画像データに基づいて、試料Sの表面の画像Gをモニタ8に表示させる(図12参照)。ユーザは、モニタ8に表示された画像Gを参照して、くぼみX3の中心位置が、低倍対物レンズ15Bの中心位置と一致するように、XYステージ3を水平方向に手動で移動させる。
【0052】
次に、試料Sの表面に形成されたくぼみX3に基づいて、試料Sの硬さ値を算出する(ステップS27)。具体的には、CPU61は、CCDカメラ12から出力された試料Sの表面の画像データを解析し、試料Sの表面に形成されたくぼみX3の対角線長さを計測し、当該計測された対角線長さに基づいて試料Sの硬さ値を算出する。
【0053】
以上のように、第1実施形態に係る硬さ試験機100によれば、試料台2を水平方向に移動させるXYステージ3と、対物レンズ15を介して試料Sの表面を撮像するCCDカメラ12と、CCDカメラ12により撮像された試料Sの表面の画像を表示するモニタ8と、圧子141又は対物レンズ15を、試料Sに対向する所定の位置に選択的に配置可能なターレット16と、所定の位置に配置された圧子141の中心位置と、所定の位置に配置された対物レンズ15の中心位置と、の水平方向におけるずれ量を記憶する記憶部63と、ターレット16により対物レンズ15が所定の位置に配置されている場合に、記憶部63に記憶されているずれ量に基づいて、モニタ8に圧子141の中心位置を示すマークM1、M2を表示させるCPU61と、を備えるので、圧子141によるくぼみ形成前にくぼみ形成予定位置を認識することができることとなって、圧子141の中心位置と対物レンズ15の中心位置とがずれている場合であっても、ユーザが所望する試験位置にくぼみを形成することができ、正確な硬さ試験を行うことができる。
【0054】
また、第1実施形態に係る硬さ試験機100によれば、圧子141は、第1の圧子141Aと、第2の圧子141Bと、を備え、記憶部63は、所定の位置に配置された第1の圧子141Aの中心位置と、所定の位置に配置された第2の圧子141Bの中心位置と、の水平方向におけるずれ量を記憶し、CPU61は、ターレット16により対物レンズ15が所定の位置に配置されている場合に、記憶部63に記憶されているずれ量に基づいて、モニタ8に第1の圧子141Aの中心位置及び第2の圧子141Bの中心位置を示すマークM1、M2を表示させるので、圧子141を2本備えている場合に圧子141同士の水平方向におけるずれや各圧子141と対物レンズ15との水平方向におけるずれを補正することができることとなって、圧子141を2本備えている場合であっても、ユーザが所望する試験位置にくぼみを形成することができ、正確な硬さ試験を行うことができる。
【0055】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る硬さ試験機200は、自動式のXYステージ3Aを備えた硬さ試験機であり、図13及び図14に示すように、試験機本体20と、制御部6と、操作部7と、モニタ8等を備えている。なお、説明の簡略化のため、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0056】
試験機本体20は、試料Sの硬さ測定を行う硬さ測定部1と、試料Sを載置する試料台2と、試料台2を移動させるXYステージ3Aと、試料Sの表面に焦点を合わせるためのAFステージ4と、試料台2(XYステージ3A、AFステージ4)を昇降する昇降機構部5A等を備えている。
【0057】
XYステージ3Aは、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動する駆動機構部(図示省略)により駆動され、試料台2を圧子141の移動方向(Z軸方向)に垂直な方向(X軸,Y軸方向)、即ち、水平方向に移動させる。即ち、XYステージ3Aは、試料台2を水平方向に移動させる試料台水平移動手段として機能する。
AFステージ4は、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動され、CCDカメラ12が撮像した画像データに基づき試料台2を微細に昇降させ、試料Sの表面に焦点を合わせる。
昇降機構部5Aは、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動され、試料台2(XYステージ3A、AFステージ4)をZ軸方向、即ち、上下方向に昇降させることで、試料台2と対物レンズ15との間の相対距離を変化させる。
即ち、AFステージ4及び昇降機構部5Aは、試料台2を上下方向に昇降させる試料台昇降手段として機能する。
【0058】
次に、第2実施形態に係る硬さ試験機200の動作について説明する。
なお、硬さ試験機200の補正パラメータ取得処理については、第1実施形態に係る硬さ試験機100と同様の処理であるので説明を省略し、硬さ試験機200の硬さ試験処理について、図16のフローチャートを参照して説明する。ここでは、硬さ試験機100の硬さ試験処理と同様、第2の圧子141Bを用いて硬さ試験を行う場合を例示して説明する。また、処理前の段階で、試料Sに対向する所定の位置には、第1の圧子141Aが配置されているものとする。
【0059】
まず、第2の圧子141Bを試料Sに対向する所定の位置に配置する(ステップS31)。具体的には、ユーザは、ターレット16を回転させて、第2の圧子141Bを試料Sに対向する所定の位置に配置させる。
【0060】
次に、補正パラメータを参照して、第1の圧子141Aにより形成されたくぼみX1の中心位置と、第2の圧子141Bにより形成されたくぼみX2の中心位置と、の水平方向のずれ量を読み出す(ステップS32)。具体的には、CPU61は、記憶部63に記憶されている補正パラメータを参照して、第1の圧子141Aにより形成されたくぼみX1の中心位置と、第2の圧子141Bにより形成されたくぼみX2の中心位置と、のX方向のずれ量A1及びY方向のずれ量A2を読み出す。即ち、ターレット16回転前に所定の位置に配置されていた第1の圧子141Aの中心位置と、ターレット16回転後に所定の位置に配置された第2の圧子141Bの中心位置と、のXY方向、即ち、水平方向のずれ量を読み出す。
【0061】
次に、XYステージ3Aを、ステップS32で読み出された水平方向のずれ量の分だけ水平方向に自動で移動する(ステップS33)。具体的には、CPU61は、XYステージ3Aを、読み出されたX方向のずれ量A1及びY方向のずれ量A2の分だけ水平方向に自動で移動させる。この動作により、第1の圧子141Aの中心位置と、第2の圧子141Bの中心位置と、の水平方向のずれが補正される。
即ち、CPU61は、記憶部63に記憶されているずれ量に基づいて、ターレット16により所定の位置に配置された第2の圧子141Bの中心位置と対応する位置に、XYステージ3Aを移動させる試料台移動制御手段として機能する。
【0062】
次に、第2の圧子141Bにより試料Sの表面にくぼみを形成する(ステップS34)。具体的には、ユーザは、操作部7を操作してくぼみ付けの指示を入力する。CPU61は、上記入力操作に応じた操作信号を操作部7から受け付けると、負荷機構部(図示省略)を駆動することにより、第2の圧子141Bを下降させ、試料Sの表面にくぼみを形成させる。
【0063】
次に、低倍対物レンズ15Bを試料Sに対向する所定の位置に配置する(ステップS35)。具体的には、ユーザは、ターレット16を回転させて、低倍対物レンズ15Bを試料Sに対向する所定の位置に配置させる。なお、ここでは、試料Sに対向する所定の位置に低倍対物レンズ15Bを配置させるようにしているが、高倍対物レンズ15Aを配置させるようにしてもよい。
【0064】
次に、補正パラメータを参照して、第2の圧子141Bにより形成されたくぼみX2の中心位置と、低倍対物レンズ15Bの中心位置と、の水平方向のずれ量を算出する(ステップS36)。具体的には、CPU61は、記憶部63に記憶されている補正パラメータを参照して、第1の圧子141Aにより形成されたくぼみX1の中心位置と、低倍対物レンズ15Bの中心位置と、のX方向のずれ量B1及びY方向のずれ量B2を読み出す。そして、ステップS32で先に読み出された第1の圧子141Aにより形成されたくぼみX1の中心位置と、第2の圧子141Bにより形成されたくぼみX2の中心位置と、のX方向のずれ量A1及びY方向のずれ量A2を合わせて参照することで、ターレット16回転前に所定の位置に配置されていた第2の圧子141Bの中心位置と、ターレット16回転後に所定の位置に配置された低倍対物レンズ15Bの中心位置と、のXY方向、即ち、水平方向のずれ量を、第1の圧子141Aの中心位置を介して算出する。
【0065】
次に、XYステージ3Aを、ステップS36で算出された水平方向のずれ量の分だけ水平方向に自動で移動する(ステップS37)。具体的には、CPU61は、XYステージ3Aを、第2の圧子141Bの中心位置と、低倍対物レンズ15Bの中心位置と、の水平方向のずれ量の分だけ水平方向に自動で移動させる。この動作により、第2の圧子141Bの中心位置と、低倍対物レンズ15Bの中心位置と、の水平方向のずれが補正される。
即ち、CPU61は、記憶部63に記憶されているずれ量に基づいて、ターレット16により所定の位置に配置された対物レンズ15(低倍対物レンズ15B)の中心位置と対応する位置に、XYステージ3Aを移動させる試料台移動制御手段として機能する。
【0066】
次に、低倍対物レンズ15Bにより試料Sの表面の画像データを取得する(ステップS38)。具体的には、CCDカメラ12は、低倍対物レンズ15Bを介して試料Sの表面を撮像して画像データを取得し、制御部6に出力する。
【0067】
次に、ステップS34で試料Sの表面に形成されたくぼみに基づいて、試料Sの硬さ値を算出する。(ステップS39)。具体的には、CPU61は、CCDカメラ12から出力された試料Sの表面の画像データを解析し、試料Sの表面に形成されたくぼみの対角線長さを計測し、当該計測された対角線長さに基づいて試料Sの硬さ値を算出する。
【0068】
以上のように、第2実施形態に係る硬さ試験機200によれば、試料台2を水平方向に移動させるXYステージ3Aと、対物レンズ15を介して試料Sの表面を撮像するCCDカメラ12と、圧子141又は対物レンズ15を、試料Sに対向する所定の位置に選択的に配置可能なターレット16と、所定の位置に配置された圧子141の中心位置と、所定の位置に配置された対物レンズ15の中心位置と、の水平方向におけるずれ量を記憶する記憶部63と、記憶部63に記憶されているずれ量に基づいて、ターレット16により所定の位置に配置された圧子141又は対物レンズ15の中心位置と対応する位置に、XYステージ3Aを移動させるCPU61と、を備えるので、圧子141によるくぼみ形成時に自動的に当該圧子141の中心位置と対応する位置にXYステージ3Aが移動することとなって、圧子141の中心位置と対物レンズ15の中心位置とがずれている場合であっても、ユーザが所望する試験位置にくぼみを形成することができ、正確な硬さ試験を行うことができる。
【0069】
また、第2実施形態に係る硬さ試験機200によれば、圧子141は、第1の圧子141Aと、第2の圧子141Bと、を備え、記憶部63は、所定の位置に配置された第1の圧子141Aの中心位置と、所定の位置に配置された第2の圧子141Bの中心位置と、の水平方向におけるずれ量を記憶し、CPU61は、記憶部63に記憶されているずれ量に基づいて、ターレット16により所定の位置に配置された第1の圧子141A、第2の圧子141B、又は対物レンズ15の中心位置と対応する位置に、XYステージ3Aを移動させるので、圧子141を2本備えている場合に圧子141同士の水平方向におけるずれや各圧子141と対物レンズ15との水平方向におけるずれを補正することができることとなって、圧子141を2本備えている場合であっても、ユーザが所望する試験位置にくぼみを形成することができ、正確な硬さ試験を行うことができる。
【0070】
(変形例1)
上記第2実施形態に係る硬さ試験機200では、ターレット16回転前に所定の位置に配置されていた圧子141又は対物レンズ15の中心位置と、ターレット16回転後に所定の位置に配置された圧子141又は対物レンズ15の中心位置と、のXY方向、即ち、水平方向のずれのみを補正するようにしているが、Z方向、即ち、上下方向のずれを補正することも可能である。
【0071】
即ち、変形例1に係る硬さ試験機200では、補正パラメータ取得処理において、第1の圧子141A又は第2の圧子141Bによりくぼみ付けが行われるときの試料台2の位置(高さ)を基準位置として、各対物レンズ15の焦点が合っているときの試料台2の位置(高さ)との上下方向のずれ量を算出し、硬さ試験処理において、当該上下方向のずれ量に基づいて試料台2の位置を昇降させることで、上下方向のずれを補正することができる。
【0072】
具体的には、まず、補正パラメータ取得処理の前に、第1の圧子141A又は第2の圧子141Bによりくぼみ付けが行われるときの試料台2の位置を、基準位置として予め記憶部63に記憶させておく。
【0073】
そして、補正パラメータ取得処理のステップS13(図5参照)において、ユーザにより低倍対物レンズ15Bが試料Sに対向する所定の位置に配置されたときに、CPU61は、CCDカメラ12によって得られる試料Sの表面の画像データに基づいて、AFステージ4を昇降させ、試料Sの表面に対する自動合焦を行う。
次に、CPU61は、自動合焦機能により焦点が合わせられたときの試料台2の位置を算出し、記憶部63に記憶されている基準位置との上下方向のずれ量を算出して、補正パラメータとして記憶部63に記憶させる。この補正パラメータは、試料Sに対向する所定の位置に配置された第1の圧子141A又は第2の圧子141Bによりくぼみ付けが行われるときの試料台2の位置と、当該所定の位置に配置された低倍対物レンズ15Bの焦点が合っているときの試料台2の位置と、の上下方向におけるずれ量となる。
なお、上記の自動合焦及び上下方向におけるずれ量の取得は、補正パラメータ取得処理のステップS13の処理が行われてからステップS16に移行する前までの間であれば、いずれのタイミングで行われてもよい。
【0074】
次に、補正パラメータ取得処理のステップS16において、ユーザにより高倍対物レンズ15Aが試料Sに対向する所定の位置に配置されたときに、CPU61は、CCDカメラ12によって得られる試料Sの表面の画像データに基づいて、AFステージ4を昇降させ、試料Sの表面に対する自動合焦を行う。
次に、CPU61は、自動合焦機能により焦点が合わせられたときの試料台2の位置を算出し、記憶部63に記憶されている基準位置との上下方向のずれ量を算出して、補正パラメータとして記憶部63に記憶させる。この補正パラメータは、試料Sに対向する所定の位置に配置された第1の圧子141A又は第2の圧子141Bによりくぼみ付けが行われるときの試料台2の位置と、当該所定の位置に配置された高倍対物レンズ15Aの焦点が合っているときの試料台2の位置と、の上下方向におけるずれ量となる。
なお、上記の自動合焦及び上下方向におけるずれ量の取得は、補正パラメータ取得処理のステップS16の処理が行われてから当該補正パラメータ取得処理が終了する前までの間であれば、いずれのタイミングで行われてもよい。
【0075】
なお、上記変形例1では、補正パラメータ取得処理の順序に合わせて、低倍対物レンズ15Bの焦点が合っているときの試料台2の位置との上下方向におけるずれ量、高倍対物レンズ15Aの焦点が合っているときの試料台2の位置との上下方向におけるずれ量、の順にずれ量が算出されるようになっているが、補正パラメータ取得処理において、高倍対物レンズ15A、低倍対物レンズ15Bの順に水平方向のずれ量が算出される場合は、上下方向におけるずれ量も高倍対物レンズ15A、低倍対物レンズ15Bの順に算出されることとなる。
【0076】
そして、硬さ試験処理のステップS36(図16参照)において、CPU61は、記憶部63に記憶されている補正パラメータを参照して、ターレット16回転前に所定の位置に配置されていた第2の圧子141Bによりくぼみ付けが行われるときの試料台2の位置と、ターレット16回転後に所定の位置に配置された低倍対物レンズ15Bの焦点が合っているときの試料台2の位置と、のZ方向、即ち、上下方向のずれを読み出す。
【0077】
次に、硬さ試験処理のステップS37において、CPU61は、AFステージ4及び昇降機構部5を、第2の圧子141Bによりくぼみ付けが行われるときの試料台2の位置と、低倍対物レンズ15Bの焦点が合っているときの試料台2の位置と、の上下方向のずれ量の分だけ上下方向に昇降させる。この動作により、第2の圧子141Bによりくぼみ付けが行われるときの試料台2の位置と、低倍対物レンズ15Bの焦点が合っているときの試料台2の位置と、の上下方向のずれが補正される。
即ち、CPU61は、記憶部63に記憶されているずれ量に基づいて、ターレット16により所定の位置に配置された対物レンズ15(低倍対物レンズ15B)の焦点が合っているときの位置に試料台2が位置するように、AFステージ4及び昇降機構部5を昇降させる試料台移動制御手段として機能する。
【0078】
以上のように、第2実施形態の変形例1に係る硬さ試験機200によれば、試料台2を上下方向に昇降させるAFステージ4及び昇降機構部5を備え、記憶部63は、所定の位置に配置された圧子141によりくぼみ付けが行われるときの試料台2の位置と、所定の位置に配置された対物レンズ15の焦点が合っているときの試料台2の位置と、の上下方向におけるずれ量を記憶し、CPU61は、記憶部63に記憶されているずれ量に基づいて、ターレット16により所定の位置に配置された対物レンズ15の焦点が合っているときの位置に試料台2が位置するように、AFステージ4及び昇降機構部5を昇降させるので、圧子や対物レンズを交換したときなどに生じた機差による上下方向のずれを補正することができることとなって、ユーザによる調整作業の負担を軽減することができる。
【0079】
(変形例2)
上記第2実施形態に係る硬さ試験機200では、補正パラメータ取得処理の際に、対物レンズ15を所定の位置に配置して第1の圧子141A及び第2の圧子141Bにより形成されたくぼみを観察し、補正パラメータを算出するようにしているが、特に、高倍対物レンズ15Aを所定の位置に配置してくぼみを観察する場合に、低倍対物レンズ15Bと比べて視野が狭いことから、取得された画像中にくぼみを見つけることができないことがある。
変形例2に係る硬さ試験機200は、上記のような場合でも、簡単に補正パラメータを取得できるものである。
【0080】
具体的には、変形例2に係る硬さ試験機200では、補正パラメータ取得処理のステップS17(図5参照)において、CPU61は、高倍対物レンズ15Aを介してCCDカメラ12により撮像された試料Sの表面の画像(図17のE5)を解析し、当該画像E5中に第1の圧子141Aにより形成されたくぼみが存在するか否かを判定する。即ち、CPU61は、くぼみ判定手段として機能する。
【0081】
上記判定の結果、画像E5中にくぼみが存在しないと判定した場合、CPU61は、現在位置を中心としてXY方向、即ち、水平方向に一回の撮像により撮像可能な範囲分ずつXYステージ3Aを移動させながらCCDカメラ12により計9枚の画像E1〜E9を撮像させ、当該撮像された9枚の画像を1枚の画像に合成する(図17参照)。即ち、CPU61は、画像合成手段として機能する。なお、合成する画像数は9枚に限定されるものではなく、任意の枚数の画像を合成することができる。
【0082】
なお、具体的な画像の合成方法については、従来公知の技術や、本出願人による特開平8−313217において提案されている技術を用いることができるため、詳細な説明は省略する。
【0083】
次に、CPU61は、合成された画像を解析し、第1の圧子141Aにより形成されたくぼみX1の中心位置と、高倍対物レンズ15Aの中心位置と、のX方向のずれ量C1及びY方向のずれ量C2(図17参照)を算出し、補正パラメータとして記憶部63に記憶させる。なお、第2の圧子141Bにより形成されたくぼみX2の中心位置と、高倍対物レンズ15Aの中心位置と、のX方向のずれ量及びY方向のずれ量を算出するようにしてもよい。
【0084】
以上のように、第2実施形態の変形例2に係る硬さ試験機200によれば、対物レンズ15は、高倍対物レンズ15Aと、高倍対物レンズ15Aよりも倍率の低い低倍対物レンズ15Bと、を備え、高倍対物レンズ15Aを介してCCDカメラ12により撮像された試料Sの表面の画像を解析し、当該画像中に圧子141により形成されたくぼみが存在するか否かを判定するくぼみ判定手段(CPU61)と、くぼみ判定手段によりくぼみが存在しないと判定された場合に、現在位置を中心として水平方向に一回の撮像により撮像可能な範囲分ずつXYステージ3を移動させながらCCDカメラ12により任意の枚数の画像を撮像させ、当該撮像された任意の枚数の画像を1枚の画像に合成する画像合成手段(CPU61)と、を備えるので、くぼみが形成された位置が視野外であっても容易に補正パラメータを取得することができることとなって、補正パラメータ取得処理を効率的に行うことができる。
なお、変形例2については、変形例1と組み合わせることも可能である。
【0085】
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0086】
例えば、上記実施形態では、圧子軸14(圧子141)及び対物レンズ15を2本ずつ備える構成を例示して説明しているが、これに限定されるものではなく、少なくとも圧子軸14(圧子141)及び対物レンズ15を1本ずつ備える構成であれば、いかなる本数であってもよい。例えば、圧子軸14(圧子141)を1本、対物レンズ15を3本備える構成であってもよい。
【0087】
その他、硬さ試験機100、200を構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0088】
100、200 硬さ試験機
10、20 試験機本体
1 硬さ測定部
11 照明装置
12 CCDカメラ(撮像手段)
14 圧子軸
14A 第1の圧子軸
14B 第2の圧子軸
141 圧子
141A 第1の圧子
141B 第2の圧子
15 対物レンズ
15A 高倍対物レンズ(第1の対物レンズ)
15B 低倍対物レンズ(第2の対物レンズ)
16 ターレット(切替手段)
17 フレームグラバ
2 試料台
3、3A XYステージ(試料台水平移動手段)
4 AFステージ(試料台昇降手段)
5、5A 昇降機構部(試料台昇降手段)
6 制御部
61 CPU(表示制御手段、試料台移動制御手段、くぼみ判定手段、画像合成手段)
62 RAM
63 記憶部(記憶手段)
7 操作部
8 モニタ(表示手段)
S 試料
X1〜X3 くぼみ
M1、M2 マーク
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