(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977867
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】新規シリコーン系重合体及び該重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 77/52 20060101AFI20160817BHJP
C08G 77/14 20060101ALI20160817BHJP
C08G 77/06 20060101ALI20160817BHJP
C08G 77/44 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
C08G77/52
C08G77/14
C08G77/06
C08G77/44
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-141166(P2015-141166)
(22)【出願日】2015年7月15日
(62)【分割の表示】特願2013-62248(P2013-62248)の分割
【原出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-180756(P2015-180756A)
(43)【公開日】2015年10月15日
【審査請求日】2015年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】菅生 道博
(72)【発明者】
【氏名】上野 方也
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 秀好
【審査官】
小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−188650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/52
C08G 77/06
C08G 77/14
C08G 77/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるものであることを特徴とする重量平均分子量が3000から500000のシリコーン系重合体。
【化1】
[式中、R
1〜R
4は同一でも異なっていてもよい炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示す。また、mは1〜300の整数、nは2または3であり、Aは正数、Bは0又は正数である。XおよびYは下記一般式(2)または(3)で示される2価の有機基であり、一般式(1)中に少なくとも下記一般式(2)の骨格を有する。
【化2】
(式中、Zは
【化3】
のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。また、R
5は炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、R
6は水素原子またはメチル基、エチル基を表し、相互に同一でも異なっていてもよい。hは0、1、2のいずれかである。)]
【化4】
【請求項2】
前記一般式(1)において、Bが正数であることを特徴とする請求項1に記載のシリコーン系重合体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシリコーン系重合体の製造方法であって、下記一般式(5)及び下記一般式(6)で表される化合物を用いて、又は、下記一般式(5)及び下記一般式(6)で表される化合物と、下記一般式(4)及び下記一般式(7)で表される化合物から選択される化合物とを用いて金属触媒存在下、付加重合することを特徴とするシリコーン系重合体の製造方法。
【化5】
【化6】
(式中、R
1〜R
4は同一でも異なっていてもよい炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示し、mは1〜300の整数である)
【化7】
(式中、Zは
【化8】
のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。また、R
5は炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、R
6は水素原子またはメチル基、エチル基を表し、相互に同一でも異なっていてもよい。hは0、1、2のいずれかである。)
【化9】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規シリコーン系重合体、それを用いた硬化性組成物および該重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体のウエハサイズは大口径化、薄型化が進んでおり、また電子部品の小型化、精密化により高度な機能を有する樹脂材料が求められている。シリコーン系材料は絶縁性、可とう性、耐熱性、及び透明性に優れるため、半導体装置や電子部品の為の樹脂材料として積極的に使用されている。
【0003】
特許文献1には、シロキサン構造及びビスフェノール構造を有する高分子化合物及び該化合物を含有する光硬化性樹脂組成物が開示されている。特許文献1は、該高分子化合物は幅広い波長の光で露光でき、高弾性で透明性に優れた微細なパターンを形成することが可能であり、該高分子化合物を含有する樹脂組成物の硬化皮膜は、基板との密着性、耐熱性、電気絶縁性、及び強度に優れることを記載している。
【0004】
また、特許文献2には、下記式で示される繰り返し単位を有するシルフェニレン骨格含有高分子化合物及び該化合物を含有する光硬化性樹脂組成物が開示されている。
【化1】
[式中、R
1’〜R
4’は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜8の1価炭化水素基を示す。また、m’は1〜100の整数であり、a’は正数、b’は0又は正数であり、0.5≦a’/(a’+b’)≦1.0である。更に、X’は下記一般式で示される2価の有機基である。]
【化2】
【0005】
特許文献2は、上記高分子化合物を含有する光硬化性樹脂組成物が、各種フィルム特性や保護膜としての信頼性に優れた皮膜を形成することを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3944734号公報
【特許文献2】特開2008−184571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、例えば半導体装置及び電子部品のための樹脂材料として好適に使用することができる新規な重合体を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、
下記一般式(1)で表されるものであることを特徴とする重量平均分子量が3000から500000のシリコーン系重合体を提供する。
【化3】
[式中、R
1〜R
4は同一でも異なっていてもよい炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示す。また、mは1〜300の整数、nは2または3であり、Aは正数、Bは0又は正数である。XおよびYは下記一般式(2)または(3)で示される2価の有機基である。
【化4】
(式中、Zは
【化5】
のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。また、R
5は炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、R
6は水素原子またはメチル基、エチル基を表し、相互に同一でも異なっていてもよい。hは0、1、2のいずれかである。)]
【化6】
【0009】
このようなシリコーン系重合体であれば、接着性及びPGMEA耐性に優れた、例えば半導体装置及び電子部品のための樹脂材料として好適に用いることができる。
【0010】
また、前記一般式(1)のXにおいて、前記一般式(3)の割合が10モル%から50モル%であることが好ましい。
【0011】
このようなシリコーン系重合体であれば、接着性及びPGMEA耐性に特に優れた、例えば半導体装置及び電子部品のための樹脂材料としてさらに好適に用いることができる。
【0012】
また、前記シリコーン系重合体100質量部に対して、架橋剤として、1分子中に平均して2個以上のフェノール基を有するフェノール化合物及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれるいずれか1種以上を0.1〜50質量部含有する硬化性組成物を提供する。
【0013】
このような硬化性組成物であれば、接着性及びPGMEA耐性に優れた、例えば接着剤やコート剤等として好適な組成物とすることができる。
【0014】
また、本発明は、
シリコーン系重合体の製造方法であって、下記一般式(4)、下記一般式(5)、下記一般式(6)及び下記一般式(7)で表される化合物から選択される化合物を用いて金属触媒存在下、付加重合することを特徴とするシリコーン系重合体の製造方法を提供する。
【化7】
【化8】
(式中、R
1〜R
4は同一でも異なっていてもよい炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示し、mは1〜300の整数である)
【化9】
(式中、Zは
【化10】
のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。また、R
5は炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、R
6は水素原子またはメチル基、エチル基を表し、相互に同一でも異なっていてもよい。hは0、1、2のいずれかである。)
【化11】
【0015】
このようなシリコーン系重合体の製造方法であれば、接着性及びPGMEA耐性に優れた、前記発明のシリコーン系重合体を効率よく製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のシリコーン系重合体であれば、接着性及びPGMEA耐性に優れた、例えば半導体装置及び電子部品のための樹脂材料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
<シリコーン系重合体>
下記一般式(1)で表されるものであることを特徴とする重量平均分子量が3000から500000のシリコーン系重合体。
【化12】
[式中、R
1〜R
4は同一でも異なっていてもよい炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示す。また、mは1〜300の整数、nは2または3であり、Aは正数、Bは0又は正数である。XおよびYは下記一般式(2)または(3)で示される2価の有機基である。
【化13】
(式中、Zは
【化14】
のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。また、R
5は炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、R
6は水素原子またはメチル基、エチル基を表し、相互に同一でも異なっていてもよい。hは0、1、2のいずれかである。)]
【化15】
【0018】
本発明のシリコーン系重合体は、上記式(1)で表される繰返し単位を含有し、テトラヒドロフランを溶出溶媒としてGPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が3,000から500,000、好ましくは5,000から200,000である重合体である。3000より小さいと機械的特性が悪くなり、500,000を超えると溶剤に対する溶解性が悪くなる。Aは正数、Bは0又は正数であり、0<A/(A+B)≦1を満たし、好ましくは、0.1≦A/(A+B)≦0.6を満たす。各単位はランダムに結合していても、ブロック重合体として結合していてもよい。
【0019】
上記式(1)において、mは1〜300の整数、nは2または3である。また、XおよびYは上記式(2)または(3)で示される2価の有機基である。R
1からR
4は、互いに独立に、炭素数1〜8、好ましくは1〜6の1価炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、及びフェニル基などが挙げられる。中でもメチル基及びフェニル基が原料の入手の容易さから好ましい。
【0020】
上記式(2)において、R
5は、互いに独立に、炭素数1〜4、好ましくは1〜2のアルキル基又はアルコキシ基であり、メチル、エチル基、プロピル基、tert−ブチル基、メトキシ基、及びエトキシ基などが挙げられる。hは0、1または2であり、好ましくは0である。
【0021】
上記式(2)において、Zは、下記に示す基のいずれかより選ばれる2価の基である。pは0又は1である。
【化16】
上記式(3)において、R
6は水素原子、メチル基およびエチル基であり、好ましくは水素原子である。
【0022】
また、上記式(1)のXにおいて、前記一般式(3)の割合が10モル%から50モル%であることが好ましい。
【0023】
本発明のシリコーン系重合体は、半導体装置及び電子部品のための樹脂材料として好適に用いることができる。本発明の重合体を用いて樹脂材料(硬化性組成物)を調製する方法は特に制限されるものではなく、従来公知の方法に従えばよい。樹脂材料としての使用態様は、例えば、半導体装置の製造に使用される封止剤あるいは接着剤;ダイオード、トランジスタ、IC、及びLSI等の電子部品表面の保護膜材料、例えば、半導体素子表面のジャンクションコート膜、パッシベーション膜及びバッファーコート膜;LSI等のα線遮蔽膜;多層配線の層間絶縁膜;プリントサーキットボードのコンフォーマルコート;イオン注入マスク;太陽電池の表面保護膜などが挙げられる。
【0024】
<硬化性組成物>
上記式(1)のシリコーン系重合体を主成分とする本発明の熱硬化性組成物は、その熱硬化のために、前記シリコーン系重合体100質量部に対して、1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物あるいは、1分子中に平均して2個以上のフェノール基を有するフェノール化合物のいずれか1種以上を0.1〜50質量部架橋剤として含有する。
【0025】
本発明の熱硬化性(樹脂)組成物に用いられるエポキシ化合物の例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジグリシジルビスフェノールA等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジグリシジルビスフェノールF等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェニロールプロパントリグリシジルエーテル等のトリフェニルメタン型エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の環状脂肪族エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジメチルグリシジルフタレート等のグリシジルエステル系樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン系樹脂などが挙げられこれらの1種を単独でまたは2種以上併用して用いることができる。さらに必要に応じて1分子中にエポキシ基を1つ含む単官能エポキシ化合物を添加しても良い。また基材との密着性の向上を目的としてカーボンファンクショナルシランを添加しても良い。例えば、日本化薬(株)製のEOCN−1020、EOCN−102S、XD−1000、NC−2000−L、EPPN−201、GAN、NC6000や下記式のような架橋剤を含有することができる。
【0027】
またその他の架橋剤として、m、p−系クレゾールノボラック樹脂、例えば、旭有機材工業製EP−6030Gや、3官能フェノール化合物、例えば、本州化学製Tris−P−PA4官能性フェノール化合物、例えば、旭有機材工業製TEP−TPAなどが挙げられる。
【0028】
架橋剤の配合量は、上記式(1)のシリコーン系重合体100質量部に対して0.1〜50質量部、好ましくは0.1〜30質量部、更に好ましくは1〜20質量部であり、2種類又は3種類以上を混合して配合してもよい。
【0029】
上記エポキシ樹脂の反応を促進させる目的で各種硬化促進剤を使用しても良い。硬化促進剤の例としてはトリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の有機ホスフィン化合物、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエタノールアミン等のアミノ化合物、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール及び2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール化合物が挙げられる。
また、この組成物には、酸無水物のような、硬化触媒を10質量部以下含有させることが可能である。
【0030】
本発明の硬化性(樹脂)組成物は、この組成物を溶液に溶解し、塗布、具体的にはスピンコート、ロールコータ、ダイコータなどの方法によって支持体上に形成することができる。その場合、前記溶液は、例えば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル−2−n−アミルケトン等のケトン類;3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0031】
<シリコーン系重合体の製造方法>
本発明のシリコーン系重合体は、下記一般式(4)、下記一般式(5)、下記一般式(6)及び下記一般式(7)で表される化合物から選択される化合物を用いて金属触媒存在下、付加重合することにより製造することができる。
尚、上記式(1)において、B=0のときは、下記式(4)で表わされる化合物を用いることなく製造される。
【化18】
【化19】
(式中、R
1〜R
4は同一でも異なっていてもよい炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示し、mは1〜300の整数である)
【化20】
(式中、Zは
【化21】
のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。また、R
5は炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、R
6は水素原子またはメチル基、エチル基を表し、相互に同一でも異なっていてもよい。hは0、1、2のいずれかである。)
【化22】
【0032】
金属触媒は、例えば、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;H
2PtCl
4・xH
2O、H
2PtCl
6・xH
2O、NaHPtCl
6・xH
2O、KHPtCl
6・xH
2O、Na
2PtCl
6・xH
2O、K
2PtCl
4・xH
2O、PtCl
4・xH
2O、PtCl
2、Na
2HPtCl
4・xH
2O(式中、xは0〜6の整数が好ましく、特に0又は6が好ましい)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(例えば、米国特許第3,220,972号に記載のもの);塩化白金酸とオレフィンとの錯体(例えば、米国特許第3,159,601号明細書、米国特許第3,159,662号明細書、及び米国特許第3,775,452号明細書に記載のもの);白金黒やパラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム−オレフィン錯体;クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(所謂ウィルキンソン触媒);及び、塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン(特にビニル基含有環状シロキサン)との錯体を使用することができる。
【0033】
触媒の使用量は触媒量であればよく、白金族金属として、反応に供する原料化合物の総量に対して0.0001〜0.1質量%、好ましくは0.001〜0.01質量%であることが好ましい。付加反応は溶剤が存在しなくても実施可能であるが、必要に応じて溶剤を使用しても良い。溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤が好ましい。反応温度は、触媒が失活せず、かつ、短時間で重合の完結が可能である温度であればよく、例えば40〜150℃、特に60〜120℃が好ましい。反応時間は、重合物の種類及び量により適宜選択すればよく、例えば0.5〜100時間、特に0.5〜30時間が好ましい。溶剤を使用した場合には、反応終了後に減圧留去に供して溶剤を留去する。
【0034】
反応方法は特に制限されるものではないが、例えば、式(4)で表わされる化合物と、式(5)で表わされる化合物と、式(6)で表わされる化合物と、式(7)で表わされる化合物とを反応させる場合、先ず、式(6)及び式(7)で表わされる化合物を混合して加温した後、前記混合液に金属触媒を添加し、次いで式(4)および式(5)で表される化合物を0.1〜5時間かけて滴下するのが良い。
【0035】
各化合物の配合比は、上記式(4)および式(5)で表される化合物が有するヒドロシリル基のモル数の合計と、上記式(6)および式(7)で表される化合物が有するアルケニル基のモル数の合計が、アルケニル基の合計モル数に対するヒドロシリル基の合計モル数が0.67〜1.67、好ましくは0.83〜1.25となるように配合するのがよい。重合体の重量平均分子量はo−アリルフェノールのようなモノアリル化合物、又は、トリエチルヒドロシランのようなモノヒドロシランやモノヒドロシロキサンを分子量調整剤として使用することにより制御することが可能である。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
実施例において、各重合体の重量平均分子量は、GPCカラム TSKgel Super HZM−H(東ソー社製)を用い、流量0.6ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0037】
実施例において使用した化合物を以下に示す。
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【0038】
[合成例1]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に、上記式(S−1)で示される化合物210g(0.35モル)および上記式(S−2)で示される化合物27.9g(0.15モル)、を加えた後、トルエン2000gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5wt%)1.0gを投入し、上記式(S−3)で示される化合物77.8g(0.4モル)および上記式(S−4)で示される化合物(x=40)309.4g(0.1モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=1/1)。滴下終了後、100℃まで加温し6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去して得られた生成物のGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は36,000であった。得られた樹脂は下記式に示したもので、これを樹脂(1)とし、実施例に供した。
【化27】
【0039】
[合成例2]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に、上記式(S−1)で示される化合物300g(0.5モル)を加えた後、トルエン2100gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5wt%)1.0gを投入し、上記式(S−3)で示される化合物77.8g(0.4モル)および上記式(S−4)で示される化合物(x=100)753.4g(0.1モル)を2時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=1/1)。滴下終了後、100℃まで加温し6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去して得られた生成物のGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は52,000であった。得られた樹脂は下記式に示したもので、これを樹脂(2)とし、実施例に供した。
【化28】
【0040】
[合成例3]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に、上記式(S−1)で示される化合物150g(0.25モル)および上記式(S−2)で示される化合物46.5g(0.25モル)、を加えた後、トルエン1000gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5wt%)0.5gを投入し、上記式(S−3)で示される化合物48.6g(0.25モル)および上記式(S−4)で示される化合物(x=8)181.5g(0.25モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=1/1)。滴下終了後、100℃まで加温し6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去して得られた生成物のGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は27000であった。得られた樹脂は下記式に示したもので、これを樹脂(3)とし、実施例に供した。
【化29】
【0041】
[実施例1〜3]
硬化性(接着剤)組成物の調製
各例において、シリコーン系樹脂、架橋剤、触媒及び溶剤を下記表1に示す種別及び割合で混合し、熱硬化性組成物を調製した。なお、数値は質量部を表す。
【0042】
【化30】
【化31】
【化32】
【0043】
【表1】
【0044】
各例で得られた硬化性組成物溶液を、それぞれシリコン基板上にスピンコートし、ホットプレートを用いて130℃の温度で2分、さらに190℃の温度で1時間加熱し、硬化皮膜を作製した。
上記で得られた硬化皮膜を常温でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)15分間浸漬した後、皮膜の表面を観察した。その結果を表2に示す。
【0045】
また、各例で得られた(熱)硬化性(樹脂)組成物溶液のそれぞれを、シリコン基板および銅蒸着したシリコン基板上に塗布し、130℃の温度で2分、さらに190℃の温度で1時間加熱し、硬化皮膜を形成した。ついで、2.1気圧の飽和水蒸気中に24時間放置した後、碁盤目剥離テスト(JIS K5400)を行い、高湿条件下の接着性を評価した。その結果を表2に示す。なお、表中の数値(分子/分母)は、分画数100(分母)当たり、剥離した分画数(分子)を表す。すなわち、100/100の場合は全く剥離せず、0/100の場合はすべて剥離したことを示す。
【0046】
【表2】
【0047】
以上より、本発明の新規なシリコーン系重合体を用いて調製した硬化性組成物から得られる硬化皮膜は、PGMEAに対する耐性及び接着性ともに極めて優れていることが明らかとなった。
【0048】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。