(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のモードでの描画速度の効率と第2のモードでの描画速度の効率との中から描画速度の効率がより良いモードを判定する判定部をさらに備えたことを特徴とする請求項3記載のマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
前記第1のモードは、前記アパーチャ部材の複数の開口部が形成された面と平行な第1の方向に向かって前記複数の開口部を分割することによって前記第2の領域を設定する第3のモードと、前記アパーチャ部材の複数の開口部が形成された面と平行であって、前記第1の方向と直交する第2の方向に向かって前記複数の開口部を分割することによって前記第2の領域を設定する第4のモードと、を有し、
前記第1の効率算出部は、
前記第3のモードで描画した場合の描画速度の効率を算出する第3の効率算出部と、
前記第4のモードで描画した場合の描画速度の効率を算出する第4の効率算出部と、
を有し、
前記判定部は、前記第1のモードでの描画速度の効率として、前記第3のモードでの描画速度の効率と前記第4のモードでの描画速度の効率とを判定対象とすることを特徴とする請求項4記載のマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
前記第2の効率算出部は、多重描画を行う多重度値を、前記多重度値+1の値で割ることによって、前記第2のモードで描画した場合の描画速度の効率を算出することを特徴とする請求項3記載のマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
前記第3の効率算出部は、前記第2の領域に含まれる第1の方向の開口部を通過するビーム本数を、前記アパーチャ部材の複数の開口部のうちの第1の方向の全開口部を通過するビーム本数で割ることによって、前記第3のモードで描画した場合の描画速度の効率を算出することを特徴とする請求項5記載のマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
前記第4の効率算出部は、前記第2の領域に含まれる第2の方向の開口部を通過するビーム本数を、前記アパーチャ部材の複数の開口部のうちの第2の方向の全開口部を通過するビーム本数で割ることによって、前記第4のモードで描画した場合の描画速度の効率を算出することを特徴とする請求項7記載のマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
前記アパーチャ部材の複数の開口部のうち、前記第2の領域から外れた開口部を通過するマルチビームをビームOFFの状態になるように対応するブランカーを制御するブランカー制御部をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
荷電粒子ビームの照射を受けてマルチビームを形成する複数の開口部を有するアパーチャ部材の複数の開口部を通過したマルチビームのうち、不良ビームを検出する工程と、
前記アパーチャ部材の複数の開口部のうち、前記不良ビームを通過させる開口部を除く残りの開口部のうち、より多くの開口部が含まれるように領域を設定する工程と、
前記領域内の開口部を通過したマルチビームを用いて試料にパターンを描画する第1のモードと、前記不良ビームがビームOFFに制御された状態で残りのマルチビームのうちの少なくとも1つを用いて、位置をずらしながら多重描画を行い、さらに、前記多重描画において位置をずらすことにより生じた前記不良ビームによって描画されるはずであった複数の位置について、前記多重描画において位置をずらすことで描画された照射量では不足する残りの照射量分を1回の追加描画で同時に描画する第2のモードと、を選択する工程と、
選択されたモードで、試料にパターンを描画する工程と、
を備え、
前記第1と第2のモードにおいて、共に、1度に照射されるマルチビームによるショットパターン間の領域が複数の小領域に分割され、隣り合うショットパターン間の複数の小領域が、異なる複数のビームを用いて照射されるように描画処理が制御されることを特徴とするマルチ荷電粒子ビーム描画方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題点を克服し、マルチビーム方式の描画において、ビームON制御ができず、常時ビームOFFとなる不良ビーム或いは所定の照射時間でビーム制御を行っても照射量が所望する精度に制御できない不良ビームが発生した場合でも高精度を維持しながら効率的に描画することが可能な描画装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のマルチ荷電粒子ビーム描画装置は、
試料を載置する、連続移動可能なステージと、
荷電粒子ビームを放出する放出部と、
複数の開口部を有し、複数の開口部全体が含まれる第1の領域に荷電粒子ビームの照射を受け、複数の開口部を荷電粒子ビームの一部がそれぞれ通過することにより、マルチビームを形成するアパーチャ部材と、
アパーチャ部材の複数の開口部を通過したマルチビームのうち、それぞれ対応するビームのブランキング偏向を行う複数のブランカーと、
複数のブランカーによってビームOFFの状態になるように偏向された各ビームを遮蔽するブランキングアパーチャ部材と、
アパーチャ部材の複数の開口部を通過したマルチビームのうち、不良ビームを検出する検出部と、
アパーチャ部材の複数の開口部のうち、不良ビームを通過させる開口部を除く残りの開口部のうち、より多くの開口部が含まれるように第2の領域を設定する設定部と、
第2の領域内の開口部を通過したことによって形成されたマルチビームを用いて、試料にパターンを描画するように描画処理を制御する描画処理制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の他の態様のマルチ荷電粒子ビーム描画装置は、
試料を載置する、連続移動可能なステージと、
荷電粒子ビームを放出する放出部と、
複数の開口部を有し、複数の開口部全体が含まれる領域に荷電粒子ビームの照射を受け、複数の開口部を荷電粒子ビームの一部がそれぞれ通過することにより、マルチビームを形成するアパーチャ部材と、
アパーチャ部材の複数の開口部を通過したマルチビームのうち、それぞれ対応するビームのブランキング偏向を行う複数のブランカーと、
複数のブランカーによってビームOFFの状態になるように偏向された各ビームを遮蔽するブランキングアパーチャ部材と、
アパーチャ部材の複数の開口部を通過したマルチビームのうち、不良ビームを検出する検出部と、
不良ビームがビームOFFに制御された状態で、残りのマルチビームのうちの少なくとも1つを用いて、位置をずらしながら多重描画を行い、さらに、不良ビームによって描画されるはずであった位置について、追加描画を行うように描画処理を制御する描画処理制御部と、
を備え、
1度に照射されるマルチビームによるショットパターン間の領域が複数の小領域に分割され、隣り合うショットパターン間の複数の小領域が、異なる複数のビームを用いて照射されるように描画処理が制御されることを特徴とする。
また、本発明の他の態様のマルチ荷電粒子ビーム描画方法は、
荷電粒子ビームの照射を受けて個別にONまたはOFFに制御可能なマルチビームを形成する工程と、
前記マルチビームのうち、不良ビームを検出する工程と、
前記不良ビームがビームOFFに制御された状態で残りのマルチビームのうちの少なくとも1つを用いて、多重回数が2以上となるように位置をずらしながら多重描画を行い、さらに、
前記多重描画において位置をずらすことにより生じた前記不良ビームによって描画されるはずであった
複数の位置について、
前記多重描画において位置をずらすことで描画された照射量では不足する残りの照射量分を1回の追加描画
で同時に描画する工程と、
を具備し、
1度に照射されるマルチビームによるショットパターン間の領域が複数の小領域に分割され、隣り合うショットパターン間の複数の小領域が、異なる複数のビームを用いて照射されるように描画処理が制御されることを特徴とする。
【0010】
本発明の他の態様のマルチ荷電粒子ビーム描画装置は、
試料を載置する、連続移動可能なステージと、
荷電粒子ビームを放出する放出部と、
複数の開口部を有し、複数の開口部全体が含まれる第1の領域に荷電粒子ビームの照射を受け、複数の開口部を荷電粒子ビームの一部がそれぞれ通過することにより、マルチビームを形成するアパーチャ部材と、
アパーチャ部材の複数の開口部を通過したマルチビームのうち、それぞれ対応するビームのブランキング偏向を行う複数のブランカーと、
複数のブランカーによってビームOFFの状態になるように偏向された各ビームを遮蔽するブランキングアパーチャ部材と、
アパーチャ部材の複数の開口部を通過したマルチビームのうち、不良ビームを検出する検出部と、
アパーチャ部材の複数の開口部のうち、不良ビームを通過させる開口部を除く残りの開口部のうち、より多くの開口部が含まれるように第2の領域を設定する設定部と、
第2の領域内の開口部を通過したマルチビームを用いて試料にパターンを描画する第1のモードと、不良ビームがビームOFFに制御された状態で残りのマルチビームのうちの少なくとも1つを用いて、位置をずらしながら多重描画を行い、さらに、
前記多重描画において位置をずらすことにより生じた前記不良ビームによって描画されるはずであった
複数の位置について、
前記多重描画において位置をずらすことで描画された照射量では不足する残りの照射量分を1回の追加描画
で同時に描画する第2のモードと、を選択する選択部と、
選択されたモードで描画するように描画処理を制御する描画処理制御部と、
を備え、
前記第1と第2のモードにおいて、共に、1度に照射されるマルチビームによるショットパターン間の領域が複数の小領域に分割され、隣り合うショットパターン間の複数の小領域が、異なる複数のビームを用いて照射されるように描画処理が制御されることを特徴とする。
【0011】
また、多重描画の各回の描画処理において他の回の描画処理とは描画方向と直交する方向に位置をずらしながら描画を行い、
追加描画の際、位置をずらしながら行われた多重描画において不良ビームが描画するはずであった複数の位置がすべて描画されるように追加描画で描画される描画範囲の位置を調整すると好適である。
【0012】
本発明の一態様のマルチ荷電粒子ビーム描画方法は、
荷電粒子ビームの照射を受けてマルチビームを形成する複数の開口部を有するアパーチャ部材の複数の開口部を通過したマルチビームのうち、不良ビームを検出する工程と、
アパーチャ部材の複数の開口部のうち、不良ビームを通過させる開口部を除く残りの開口部のうち、より多くの開口部が含まれるように領域を設定する工程と、
かかる領域内の開口部を通過したマルチビームを用いて試料にパターンを描画する第1のモードと、不良ビームがビームOFFに制御された状態で残りのマルチビームのうちの少なくとも1つを用いて、位置をずらしながら多重描画を行い、さらに、
前記多重描画において位置をずらすことにより生じた不良ビームによって描画されるはずであった複数の部分について、
前記多重描画において位置をずらすことで描画された照射量では不足する残りの照射量分を1回の追加描画
で同時に描画する第2のモードと、を選択する工程と、
選択されたモードで、試料にパターンを描画する工程と、
を備え、
前記第1と第2のモードにおいて、共に、1度に照射されるマルチビームによるショットパターン間の領域が複数の小領域に分割され、隣り合うショットパターン間の複数の小領域が、異なる複数のビームを用いて照射されるように描画処理が制御されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、不良ビームがあってもハードウェア上およびソフトウェア上でビーム本数を増やさずに描画精度を維持できる。また、不良ビームがあっても描画精度を落とさずに効率的に描画できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
図1において、描画装置100は、描画部150と制御部160を備えている。描画装置100は、マルチ荷電粒子ビーム描画装置の一例である。描画部150は、電子鏡筒102と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、アパーチャ部材203、ブランキングプレート204、縮小レンズ205、制限アパーチャ部材206、対物レンズ207、及び偏向器208が配置されている。描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画時には描画対象基板となるマスク等の試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造する際の露光用マスク、或いは、半導体装置が製造される半導体基板(シリコンウェハ)等が含まれる。また、試料101には、レジストが塗布された、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。XYステージ105上には、さらに、電流量測定部の一例としてのファラディーカップ106と、XYステージ105の位置測定用のミラー210とが配置される。
【0017】
制御部160は、制御計算機110、メモリ112、偏向制御回路130,132、デジタル・アナログ変換(DAC)アンプ134,136、電流検出器138、ステージ位置測定部139及び磁気ディスク装置等の記憶装置140を有している。制御計算機110、メモリ112、偏向制御回路130,132、DACアンプ134,136、電流検出器138、ステージ位置測定部139及び記憶装置140は、図示しないバスを介して互いに接続されている。記憶装置140(記憶部)には、描画データが外部から入力され、格納されている。
【0018】
制御計算機110内には、検出処理部50、設定部51、描画処理制御部52、描画データ処理部54、効率算出部60,62,64、判定部66、及びモード選択部68が配置される。検出処理部50、設定部51、描画処理制御部52、描画データ処理部54、効率算出部60,62,64、判定部66、及びモード選択部68といった各機能は、電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。検出処理部50、設定部51、描画処理制御部52、描画データ処理部54、効率算出部60,62,64、判定部66、及びモード選択部68に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される。
【0019】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0020】
図2は、実施の形態1におけるアパーチャ部材の構成を示す概念図である。
図2(a)において、アパーチャ部材203には、縦(y方向)m列×横(x方向)n列(m,n≧2)の穴(開口部)22が所定の配列ピッチでマトリクス状に形成されている。
図2(a)では、例えば、512×8列の穴22が形成される。各穴22は、共に同じ寸法形状の矩形例えば長方形或いは正方形で形成される。或いは、同じ外径の円形であっても構わない。ここでは、y方向の各列について、x方向にAからHまでの8つの穴22がそれぞれ形成される例が示されている。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチビーム20が形成されることになる。ここでは、縦横(x,y方向)が共に2列以上の穴22が配置された例を示したが、これに限るものではない。例えば、縦横(x,y方向)どちらか一方が複数列で他方は1列だけであっても構わない。また、穴22の配列の仕方は、
図2(a)にように、縦横が格子状に配置される場合に限るものではない。
図2(b)に示すように、例えば、縦方向(y方向)1段目の列と、2段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法aだけずれて配置されてもよい。同様に、縦方向(y方向)2段目の列と、3段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法bだけずれて配置されてもよい。
【0021】
図3は、実施の形態1におけるブランキングプレートの構成を示す概念図である。ブランキングプレート204には、アパーチャ部材203の各穴22の配置位置に合わせて通過孔が形成され、各通過孔には、対となる2つの電極24,26の組(ブランカー)が、それぞれ配置される。各通過孔を通過する電子ビーム20は、それぞれ独立にかかる対となる2つの電極24,26に印加される電圧によって偏向される。かかる偏向によってブランキング制御される。このように、複数のブランカーが、アパーチャ部材203の複数の穴22(開口部)を通過したマルチビームのうち、それぞれ対応するビームのブランキング偏向を行う。
【0022】
電子銃201(放出部)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202によりほぼ垂直にアパーチャ部材203全体を照明する。アパーチャ部材203には、矩形例えば長方形或いは正方形の複数の穴(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴が含まれる領域を照明する。複数の穴の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかるアパーチャ部材203の複数の穴をそれぞれ通過することによって、例えば矩形形状の複数の電子ビーム(マルチビーム)20a〜eが形成される。かかるマルチビーム20a〜eは、ブランキングプレート204のそれぞれ対応するブランカー内を通過する。かかるブランカーは、それぞれ、個別に通過する電子ビーム20を偏向する(ブランキング偏向を行う)。そして、ブランキングプレート204を通過したマルチビーム20a〜eは、縮小レンズ205によって、縮小され、制限アパーチャ部材206に形成された中心の穴に向かって進む。ここで、ブランキングプレート204のブランカーによって偏向された電子ビーム20は、制限アパーチャ部材206(ブランキングアパーチャ部材)の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ部材206によって遮蔽される。一方、ブランキングプレート204のブランカーによって偏向されなかった電子ビーム20は、制限アパーチャ部材206の中心の穴を通過する。かかるブランカーのON/OFFによって、ブランキング制御が行われ、ビームのON/OFFが制御される。このように、制限アパーチャ部材206は、複数のブランカーによってビームOFFの状態になるように偏向された各ビームを遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ部材206を通過したビームにより1回分のショットのビームが形成される。制限アパーチャ部材206を通過したマルチビーム20は、対物レンズ207により焦点が合わされ、所望の縮小率のパターン像となり、偏向器208によって、制限アパーチャ部材206を通過した各ビーム(マルチビーム20全体)が同方向にまとめて偏向され、各ビームの試料101上のそれぞれの照射位置に照射される。また、例えばXYステージ105が連続移動している時、ビームの照射位置がXYステージ105の移動に追従するように偏向器208によって制御される。一度に照射されるマルチビーム20は、理想的にはアパーチャ部材203の複数の穴の配列ピッチに上述した所望の縮小率を乗じたピッチで並ぶことになる。描画装置100は、ショットビームを連続して順に照射していくラスタースキャン方式で描画動作を行い、所望のパターンを描画する際、パターンに応じて必要なビームがブランキング制御によりビームONに制御される。
【0023】
図4は、実施の形態1における描画動作を説明するための概念図である。
図4(a)に示すように、試料101の描画領域30は、例えば、y方向に向かって所定の幅で短冊状の複数のストライプ領域32に仮想分割される。かかる各ストライプ領域32は、描画単位領域となる。まず、XYステージ105を移動させて、第1番目のストライプ領域32の左端、或いはさらに左側の位置に一回のマルチビーム20の照射で照射可能な照射領域34が位置するように調整し、描画が開始される。第1番目のストライプ領域32を描画する際には、XYステージ105を例えば−x方向に移動させることにより、相対的にx方向へと描画を進めていく。XYステージ105は所定の速度で例えば連続移動させる。第1番目のストライプ領域32の描画終了後、ステージ位置を−y方向に移動させて、第2番目のストライプ領域32の右端、或いはさらに右側の位置に照射領域34が相対的にy方向に位置するように調整し、今度は、
図4(b)に示すように、XYステージ105を例えばx方向に移動させることにより、−x方向にむかって同様に描画を行う。第3番目のストライプ領域32では、x方向に向かって描画し、第4番目のストライプ領域32では、−x方向に向かって描画するといったように、交互に向きを変えながら描画することで描画時間を短縮できる。但し、かかる交互に向きを変えながら描画する場合に限らず、各ストライプ領域32を描画する際、同じ方向に向かって描画を進めるようにしても構わない。1回のショットでは、
図4(c)に示すように、アパーチャ部材203の各穴22を通過することによって形成されたマルチビームによって、各穴22と同数の複数のショットパターン36が一度に形成される。例えば、アパーチャ部材203の1つの穴Aを通過したビームは、
図4(c)で示す「A」の位置に照射され、その位置にショットパターン36を形成する。同様に、例えば、アパーチャ部材203の1つの穴Bを通過したビームは、
図4(c)で示す「B」の位置に照射され、その位置にショットパターン36を形成する。以下、C〜Hについても同様である。そして、各ストライプ32を描画する際、x方向に向かってXYステージ105が移動する中、偏向器208によってy方向或いはx,y方向に各ショットが順に移動する(スキャンする)ように偏向し、ショットビームを連続して順に照射していくラスタースキャン方式で描画する。
【0024】
図5は、実施の形態1における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図5において、実施の形態1における描画方法は、不良ビーム検出工程(S102)と、部分領域(第2の領域)設定工程(S104)と、効率算出工程(S106)と、効率判定工程(S114)と、モード選択工程(S116)と、描画工程(S118)という一連の工程を実施する。また、効率算出工程(S106)は、その内部工程として、y方向分割効率算出工程(S108)と、x方向分割効率算出工程(S110)と、追加パス描画効率算出工程(S112)という一連の工程を実施する。
【0025】
不良ビーム検出工程(S102)として、検出処理部50(検出部)は、電子ビーム200の照射を受けてマルチビーム20を形成する複数の穴22(開口部)を有するアパーチャ部材203の複数の穴22を通過したマルチビーム20のうち、不良ビームを検出する。検出の方法は、例えば、検出処理部50は、マルチビーム20の各ビームについてそれぞれ電流量を測定する。具体的には、マルチビーム20の各ビームが照射される位置にファラディーカップ106が位置するように順にXYステージ105を移動させる。そして、マルチビーム20を1本ずつ、ファラディーカップ106に照射し、ファラディーカップ106からのアナログ信号を電流検出器138で受信する。そして、電流検出器138は、ファラディーカップ106に照射された各ビームの電流量を示すデジタル信号(データ信号)を検出処理部50に出力する。このようにして、検出処理部50は、ファラディーカップ106に照射された各ビームの電流量を測定する。測定される対象ビーム以外のビームは、ブランキング制御によりビームOFFの状態にすると好適である。対象ビーム以外のビームが照射されてもファラディーカップ106で検出されない位置関係であればビームONの状態のままでも構わない。電流量が測定できない(電流が検出されない)ビームは、ビームON制御ができず、常時ビームOFFとなる不良ビームである。また、電流量が検出されても所望する電流量ではないビームは、ビームONはできても規定の照射時間でビームOFFにできず、照射量が制御できない不良ビームである。よって、検出処理部50は、電流検出器138から入力したデータ信号に基づいて、電流量が測定できない(電流が検出されない)或いは、所望する電流量ではないビームを、不良ビームとして検出する。
【0026】
部分領域(矩形領域)設定工程(S104)として、設定部51は、アパーチャ部材203の複数の穴22のうち、不良ビームを通過させる穴を除く残りの穴22のうち、より多くの穴22が含まれるように、x方向m本、y方向n本のビームを含む部分領域(矩形領域)を設定する。
【0027】
。
図6は、実施の形態1におけるy方向分割による部分領域(矩形領域)の一例を示す図である。
図6では、例えば、縦(y方向)に512個、横(x方向)に8個の穴22がマトリクス状に配置されたアパーチャ部材203の例を示している。
図6では、例えば、左端からx方向に6列目および上端から−y方向に4段目の穴23が不良ビームを形成する穴22としている。かかる場合に、y方向分割により、不良ビームを除いて部分領域(矩形領域)を設定するには、
図6に示すように、x方向に全列、そして上端から−y方向に5段目から下端までの複数の穴22が含まれる部分領域(矩形領域)40と、x方向に全列、そして上端から−y方向に3段目までの複数の穴22が含まれる部分領域(矩形領域)42と、の2つの部分領域(矩形領域)を想定できる。なお、この例ではビーム配置がxy方向に直行しているので、x方向m本、y方向n本のビームを含む部分領域(矩形領域)は、正方形或いは長方形の領域となるが、配置が直行していない場合には、その配置に応じた形状となる。部分領域(矩形領域)40と部分領域(矩形領域)42とでは、部分領域(矩形領域)40の方が、より多くの穴22が含まれるのでy方向分割による場合には、部分領域(矩形領域)40を選択する。
【0028】
図7は、実施の形態1におけるx方向分割による部分領域(矩形領域)の一例を示す図である。
図7では、
図6と同様、例えば、縦(y方向)に512個、横(x方向)に8個の穴22がマトリクス状に配置されたアパーチャ部材203の例を示している。
図7では、
図6と同様、例えば、左端からx方向に6列目および上端から−y方向に4段目の穴23が不良ビームを形成する穴22としている。かかる場合に、x方向分割により、不良ビームを除いて部分領域(矩形領域)を設定するには、
図7に示すように、y方向に全列、そして左端からx方向に5列目までの複数の穴22が含まれる部分領域(矩形領域)44と、y方向に全列、そして左端からx方向に7列目から右端までの複数の穴22が含まれる部分領域(矩形領域)46と、の2つの部分領域(矩形領域)を想定できる。部分領域(矩形領域)44と部分領域(矩形領域)46とでは、部分領域(矩形領域)44の方が、より多くの穴22が含まれるのでx方向分割による場合には、部分領域(矩形領域)44を選択する。
【0029】
実施の形態1では、上述したy方向分割により設定される部分領域(矩形領域)内のマルチビームを用いて描画を行う描画モード(1)(第1のモードの一例)と、x方向分割により設定される部分領域(矩形領域)内のマルチビームを用いて描画を行う描画モード(2)(第1のモードの一例)と、不良ビームがビームOFFに制御された状態で残りのマルチビームのうちの少なくとも1つを用いて、位置をずらしながら多重描画を行い、さらに、不良ビームによって描画されるはずであった位置について、追加パス描画を行う描画モード(3)(第2のモードの一例)とのうち、より効率の良い描画モードを選択して、描画処理を行う。そのために、まず、各描画モードでの効率を算出する。
【0030】
効率算出工程(S106)として、各描画モードで描画した際のそれぞれの効率を演算する。
【0031】
y方向分割効率算出工程(S108)として、効率算出部60は、y方向分割による描画モード(1)で描画した場合の描画速度の効率を算出する。描画速度は、使用可能なy方向のビーム本数に比例する。よって、不良ビームが無い100%のビーム本数に対して、例えば80%のビーム本数で描画した場合には、描画速度の効率は80%に低下することになる。描画速度の効率は部分領域(矩形領域)40に含まれるy方向のビーム本数を、不良ビームが無い場合のy方向の全ビーム本数で割った値となる。
図6の例では、不良ビームが無い場合のy方向の全ビーム本数が512本に対して、部分領域(矩形領域)40に含まれるy方向のビーム本数は、508本なので、描画速度の効率=508/512=0.992となり、描画速度の効率は99.2%となる。
【0032】
x方向分割効率算出工程(S110)として、効率算出部62は、x方向分割による描画モード(1)で描画した場合の描画速度の効率を算出する。描画速度は、使用可能なx方向のビーム本数に比例する。よって、不良ビームが無い100%のビーム本数に対して、例えば80%のビーム本数で描画した場合には、描画速度の効率は80%に低下することになる。描画速度の効率は部分領域(矩形領域)44に含まれるx方向のビーム本数を、不良ビームが無い場合のx方向の全ビーム本数で割った値となる。
図7の例では、不良ビームが無い場合のx方向の全ビーム本数が8本に対して、部分領域(矩形領域)44に含まれるx方向のビーム本数は、5本なので、描画速度の効率=5/8=0.625となり、描画速度の効率は62.5%となる。
【0033】
追加パス描画効率算出工程(S112)として、効率算出部64は、追加パス描画を行う描画モード(3)で描画した場合の描画速度の効率を算出する。描画速度は、例えば、本来、多重度N=2(描画回数2回)で描画する場合に、追加パス描画を1回加えることになるので、描画速度の効率は2/3=0.667となり、描画速度の効率は66.7%に低下することになる。描画速度の効率は元々の多重度を、元々の多重度+1の値で割った値となる。例えば、多重度N=4(描画回数4回)で描画する場合には、描画速度の効率は4/5=0.8となり、描画速度の効率は80.0%に低下することになる。ここでは、一例として、多重度N=2(描画回数2回)で描画する場合を想定する。
【0034】
効率判定工程(S114)として、判定部66は、算出された各描画モードの効率の中から最も効率が良いモードを判定する。上述した例では、y方向分割による描画モード(1)で描画した場合の描画速度の効率が99.2%と最も良いことがわかる。
【0035】
なお、例えば、不良ビームが、y方向に50%の位置、x方向に50%の位置に存在した場合、描画モード(1)で描画した場合の描画速度の効率は50%に低下する。同様に描画モード(2)で描画した場合の描画速度の効率も50%に低下する。一方、多重度N=2(描画回数2回)で描画する場合の描画モード(3)で描画した場合の描画速度の効率は66.7%のままである。よって、かかる場合には、描画モード(3)で描画した場合の描画速度の効率が最も良いことになる。このように、不良ビームの位置によって描画速度の効率が変化する。また、多重度の設定によっても描画速度の効率が変化する。実施の形態1では、各描画モードの効率の中から最も効率が良いモードを選択し、描画処理制御部52は、選択されたモードで描画処理を行うように各構成の動作を制御する。
【0036】
モード選択工程(S116)として、モード選択部68は、各描画モードの効率の中から最も効率が良いモードを選択する。
【0037】
描画工程(S118)として、描画処理制御部52は、選択されたモードで描画処理を行うように各構成の動作を制御する。例えば、描画モード(1)を選択した場合、描画処理制御部52は、部分領域(矩形領域)40内の穴22を通過したことによって形成されたマルチビームを用いて、試料101にパターンを描画するように描画処理を制御する。具体的には、以下のように描画処理が行われる。
【0038】
図8は、実施の形態1におけるy方向分割による描画モードでの描画処理を説明するための概念図である。y方向分割による描画モード(1)で描画処理を行う場合、まず、試料101の描画領域を複数のストライプ領域に仮想分割する際、部分領域(矩形領域)40のy方向の幅寸法で分割する。具体的には、不良ビームが存在せずにすべてのマルチビームが使用できる場合のストライプ領域33に対して、y方向に制限された部分領域(矩形領域)40で描画可能なストライプ領域32にストライプ幅を縮める(小さくする)。そして、描画処理制御部52によって制御された描画データ処理部54は、かかるストライプ領域32毎に、記憶装置140から描画データを読み出し、複数段のデータ変換処理を行って、装置固有のショットデータを生成する。偏向制御回路130は、ショットデータに沿って、各回のそれぞれのブランカーが行うショットのブランキング制御用の信号を生成し、DACアンプ134で増幅の上、デジタル信号をアナログ信号に変換の上、各ブランカーに出力する。偏向制御回路130は、アパーチャ部材203の複数の穴22のうち、部分領域(矩形領域)40から外れた穴22,23を通過するマルチビームをビームOFFの状態になるように対応するブランカーを制御する。偏向制御回路130は、ブランカー制御部の一例である。このように、描画処理の際には、部分領域(矩形領域)40から外れた複数の穴22,23を通過するビームについてはブランキング制御によりビームOFFにするのが好ましい。部分領域40を通過したビームで描画を行う際に、部分領域40から外れたビームを併用して描画を行うことも可能であるが、部分領域40から外れたビームをビームOFFとすれば、そのビームを制御するための描画データ作成が不要となり、リソースを効率的に利用できることになる。
【0039】
また、偏向制御回路132は、ショット毎のx,y方向への偏向量を演算し、偏向用の信号を生成し、DACアンプ136で増幅の上、デジタル信号をアナログ信号に変換の上、偏向器208に出力する。
【0040】
描画部150は、各ストライプ領域32を部分領域(矩形領域)40内の穴22を通過したことによって形成されたマルチビームを用いて、試料101にパターンを描画する。
【0041】
図9は、実施の形態1におけるy方向分割による描画モードでのラスタースキャンの描画動作の一例を説明するための概念図である。
図9では、例えば、
図4(c)で示したようにアパーチャ部材203についてx方向に8つの穴A〜Hが形成されている場合に、一度に照射されるx方向に隣り合うショットパターン36間をステージが移動する間に、複数回のショットのビームで照射する。あるショットパターン36と、一度に照射されるx方向に隣り合うショットパターン36と、一度に照射されるy方向に隣り合うショットパターン36と、x方向に隣り合うショットパターン36と一度に照射されるy方向に隣り合うショットパターン36とによる、一度に照射される4つのショットパターン36により囲まれる領域を、例えば、所定の量子化寸法で格子状に配置した制御グリッド(AU:アドレスユニット)で分割し、nAU×mAUに設定する。そして、AUずらす毎にマルチビームをショットする。
図9では、x方向に7AU、y方向に8AUに分割した例を示している。
【0042】
図9において、ステージ移動方向を+X方向とし、それと同方向のX方向および直行するY方向にビーム全体を偏向器208により偏向することによってスキャンするように制御する。この様子を同図の右側に概念的に矢印で図示している。また、アパーチャの開口(穴)位置(四角穴)の下にスキャン開始のタイミングを、T=0を基準として、T=−6〜3で示している。
図9は、T=0の時点で、各ビームがスキャンを開始する描画位置を模式的に表している。この例では、ステージの+X方向ステージ移動に合わせてX方向およびY方向にスキャンを行うことで、ビームショットが相対的にY方向に移動しながら、全面を塗りつぶして行く。T=0で0回目のY方向スキャンが終わると、ビーム位置は1度に照射された場合の隣のビームの位置の1AU(−X方向へ)ずれた所にあり、ここから1回目(T=1)のスキャンを開始する。ステージ移動速度は、1回のYスキャンが終わった時点でビーム位置が隣のビームの1AU(−X方向へ)ずれた所になるように制御される。Y方向上下のビームについても同様に描画が行われ、AU単位で全面を塗り潰すようにビームショットができる。これらのビームショットの各々を所望のパターンに合わせてビームON/ビームOFFのブランキング制御を行うことで様々なパターンが描画されることになる。
【0043】
かかる構成により、y方向分割による描画モード(1)において、描画速度は、不良ビームが無い場合より低下するものの、描画精度を低下させずに描画処理を行うことができる。また、描画モード(1)が選択される場合には、描画速度の効率も他の方法を用いる場合より効率的に描画処理を行うことができる。
【0044】
次に、例えば、描画モード(2)を選択した場合、描画処理制御部52は、部分領域(矩形領域)44内の穴22を通過したことによって形成されたマルチビームを用いて、試料101にパターンを描画するように描画処理を制御する。具体的には、以下のように描画処理が行われる。なお、不良ビームが無い場合には、x方向に8本のビームで描画することになるが、その場合の動作は、例えば、
図9で説明した場合と同様で構わない。
【0045】
図10は、実施の形態1におけるx方向分割による描画モードでのラスタースキャンの描画動作の一例を説明するための概念図である。
図10では、例えば、x方向の8本のビームのうち、端部のビームが不良ビームである場合を示している。かかる場合の部分領域(矩形領域)44のx方向のビーム本数は7本となる。
図9と同様、あるショットパターン36と、一度に照射されるx方向に隣り合うショットパターン36と、一度に照射されるy方向に隣り合うショットパターン36と、x方向に隣り合うショットパターン36と一度に照射されるy方向に隣り合うショットパターン36とによる、一度に照射される4つのショットパターン36により囲まれる領域を、例えば、x方向に7AU、y方向に8AUに分割した例を示している。
【0046】
図10において、ステージ移動方向を+X方向とし、それと同方向のX方向および直行するY方向にビーム全体をスキャンするように制御する。この様子を同図の右側に概念的に矢印で図示している。また、アパーチャの開口(穴)位置(四角穴)の下にスキャン開始のタイミングを、T=0を基準として、T=−6〜7で示している。
図10は、T=0の時点で、各ビームがスキャンを開始する描画位置を模式的に表している。この例では、ステージの+X方向ステージ移動に合わせてX方向およびY方向にスキャンを行うことで、ビームショットが相対的にY方向に移動しながら、全面を塗りつぶして行く。T=0で0回目のY方向スキャンが終わると、ビーム位置は一度に照射された場合の隣のビームの位置にあり、すでにその位置は一度に照射された場合の隣のビームによって照射されている。そのため、この時点で偏向器208により偏向することによって1AU(−X方向へ)ずれた所にスキャンする。そして、ここから1回目(T=1)のスキャンを開始する。ステージ移動速度は、1回のYスキャンが終わった時点でビーム位置が一度に照射された場合の隣のビーム位置になるように制御される。Y方向上下のビームについても同様に描画が行われ、AU単位で全面を塗り潰すようにビームショットができる。これらのビームショットの各々を所望のパターンに合わせてビームON/ビームOFFのブランキング制御を行うことで様々なパターンが描画されることになる。
【0047】
図11は、実施の形態1におけるx方向分割による描画モードでのラスタースキャンの描画動作の他の一例を説明するための概念図である。
図11では、例えば、x方向の8本のビームのうち、端部のビームから1本内側のビームが不良ビームである場合を示している。かかる場合の部分領域(矩形領域)44のx方向のビーム本数は6本となる。
図9と同様、あるショットパターン36と、一度に照射されるx方向に隣り合うショットパターン36と、一度に照射されるy方向に隣り合うショットパターン36と、x方向に隣り合うショットパターン36と一度に照射されるy方向に隣り合うショットパターン36とによる、一度に照射される4つのショットパターン36により囲まれる領域を、例えば、x方向に7AU、y方向に8AUに分割した例を示している。
【0048】
図11において、ステージ移動方向を+X方向とし、それと同方向のX方向および直行するY方向にビーム全体をスキャンするように制御する。この様子を同図の右側に概念的に矢印で図示している。また、アパーチャの開口(穴)位置(四角穴)の下にスキャン開始のタイミングを、T=0を基準として、T=−5〜6で示している。
図11は、T=0の時点で、各ビームがスキャンを開始する描画位置を模式的に表している。この例では、ステージの+X方向ステージ移動に合わせてX方向およびY方向のスキャンを行うことで、ビームショットが相対的にY方向に移動しながら、全面を塗りつぶして行く。T=0で0回目のY方向スキャンが終わると、ビーム位置は一度に照射された場合の隣のビームの位置の1AU(+x方向)にずれた位置にある。そして、ここから1回目(T=1)のスキャンを開始する。ステージ移動速度は、1回のYスキャンが終わった時点でビーム位置が一度に照射された場合の隣のビーム位置の1AU(+x方向)にずれた位置になるように制御される。Y方向上下のビームについても同様に描画が行われ、AU単位で全面を塗り潰すようにビームショットができる。これらのビームショットの各々を所望のパターンに合わせてビームON/ビームOFFのブランキング制御を行うことで様々なパターンが描画されることになる。
【0049】
図12は、実施の形態1におけるx方向分割による描画モードでのラスタースキャンの描画動作の他の一例を説明するための概念図である。
図12では、例えば、x方向の8本のビームのうち、端部のビームから2本内側のビームが不良ビームである場合を示している。かかる場合の部分領域(矩形領域)44のx方向のビーム本数は5本となる。
図9と同様、あるショットパターン36と、一度に照射されるx方向に隣り合うショットパターン36と、一度に照射されるy方向に隣り合うショットパターン36と、x方向に隣り合うショットパターン36と一度に照射されるy方向に隣り合うショットパターン36とによる、一度に照射される4つのショットパターン36により囲まれる領域を、例えば、x方向に7AU、y方向に8AUに分割した例を示している。
【0050】
図12において、ステージ移動方向を+X方向とし、それと同方向のX方向および直行するY方向にビーム全体をスキャンするように制御する。この様子を同図の右側に概念的に矢印で図示している。また、アパーチャの開口(穴)位置(四角穴)の下にスキャン開始のタイミングを、T=0を基準として、T=−5〜5で示している。
図12は、T=0の時点で、各ビームがスキャンを開始する描画位置を模式的に表している。この例では、ステージの+X方向ステージ移動に合わせてX方向およびY方向にスキャンを行うことで、ビームショットが相対的にY方向に移動しながら、全面を塗りつぶして行く。T=0で0回目のY方向スキャンが終わると、ビーム位置は一度に照射された場合の隣のビームの位置の2AU(+x方向)にずれた位置にあり、すでにその位置は他のビームによって照射されている。そのため、この時点で偏向器208により偏向することによって1AU(−X方向へ)ずれた所にスキャンする。そして、ここから1回目(T=1)のスキャンを開始する。ステージ移動速度は、1回のYスキャンが終わった時点でビーム位置が一度に照射された場合の隣のビーム位置の2AU(+x方向)にずれた位置になるように制御される。Y方向上下のビームについても同様に描画が行われ、AU単位で全面を塗り潰すようにビームショットができる。これらのビームショットの各々を所望のパターンに合わせてビームON/ビームOFFのブランキング制御を行うことで様々なパターンが描画されることになる。
【0051】
図13は、実施の形態1におけるx方向分割による描画モードでのラスタースキャンの描画動作の他の一例を説明するための概念図である。
図13では、例えば、x方向の8本のビームのうち、端部のビームから3本内側のビームが不良ビームである場合を示している。かかる場合の部分領域(矩形領域)44のx方向のビーム本数は4本となる。
図9と同様、あるショットパターン36と、一度に照射されるx方向に隣り合うショットパターン36と、一度に照射されるy方向に隣り合うショットパターン36と、x方向に隣り合うショットパターン36と一度に照射されるy方向に隣り合うショットパターン36とによる、一度に照射される4つのショットパターン36により囲まれる領域を、例えば、x方向に7AU、y方向に8AUに分割した例を示している。
【0052】
図13において、ステージ移動方向を+X方向とし、それと同方向のX方向および直行するY方向にビーム全体をスキャンするように制御する。この様子を同図の右側に概念的に矢印で図示している。また、アパーチャの開口(穴)位置(四角穴)の下にスキャン開始のタイミングを、T=0を基準として、T=−5〜7で示している。
図13は、T=0の時点で、各ビームがスキャンを開始する描画位置を模式的に表している。この例では、ステージの+X方向ステージ移動に合わせてX方向およびY方向のスキャンを行うことで、ビームショットが相対的にY方向に移動しながら、全面を塗りつぶして行く。T=0で0回目のY方向スキャンが終わると、ビーム位置は一度に照射された場合の隣のビームの位置の3AU(+x方向)にずれた位置にある。そして、ここから1回目(T=1)のスキャンを開始する。ステージ移動速度は、1回のYスキャンが終わった時点でビーム位置が一度に照射された場合の隣のビーム位置の3AU(+x方向)にずれた位置になるように制御される。Y方向上下のビームについても同様に描画が行われ、AU単位で全面を塗り潰すようにビームショットができる。これらのビームショットの各々を所望のパターンに合わせてビームON/ビームOFFのブランキング制御を行うことで様々なパターンが描画されることになる。
【0053】
以上のように、x方向分割による描画モード(2)において、描画速度は、不良ビームが無い場合より低下するものの、描画精度を低下させずに描画処理を行うことができる。また、描画モード(2)が選択される場合には、描画速度の効率も他の方法を用いる場合より効率的に描画処理を行うことができる。
【0054】
次に、例えば、描画モード(3)を選択した場合、描画処理制御部52は、不良ビームがビームOFFに制御された状態で、残りのマルチビームのうちの少なくとも1つを用いて、位置をずらしながら多重描画を行い、さらに、不良ビームによって描画されるはずであった位置について、追加描画を行うように描画処理を制御する。
【0055】
図14は、実施の形態1における追加パス描画による描画モードで描画動作を行う場合の一例を説明するための概念図である。
図14では、多重度N=2の場合を一例として示している。多重描画における1回目の描画処理と、2回目の描画処理とでは、x方向、y方向、或いはx,y両方向に位置をずらしたストライプ領域を描画する。
図14の例では、例えば、y方向に1/2ストライプ幅だけずらして多重描画する場合を示している。言い換えれば、多重描画の各回の描画処理において他の回の描画処理とは描画方向(x方向)と直交する方向(y方向)に位置をずらしながら描画を行う。1回目の描画処理では、不良ビームについてビームOFFになるようにブランキング制御を行い、残りのマルチビームを使って、ストライプ領域32aについて1回目の描画処理を行う。ラスタースキャンの描画動作は、例えば
図9で説明した内容と同様で構わない。かかる場合に、穴23aを通過した不良ビームが描画するはずであった位置には、ビームが照射されていない。
【0056】
次に、1回目の描画処理の対象となるストライプ領域32aをy方向に1/2ストライプ幅だけずらしたストライプ領域32bについて1回目の描画処理を行う。ラスタースキャンの描画動作は、例えば
図9で説明した内容と同様で構わない。かかる場合に、穴23bを通過した不良ビームが描画するはずであった位置には、ビームが照射されていない。
【0057】
このままでは、穴23aを通過した不良ビームが描画するはずであった位置と穴23bを通過した不良ビームが描画するはずであった位置では、所望の照射量の1/2ずつしか電子ビームの照射を受けていないことになる。
【0058】
そこで、追加パス描画(追加描画)として、不良ビームによって描画されるはずであった位置(穴23aを通過した不良ビームが描画するはずであった位置、及び穴23bを通過した不良ビームが描画するはずであった位置)について、追加描画を行う。その際、位置をずらしながら行われた1回目と2回目の描画処理による多重描画において、不良ビームが描画するはずであった複数の位置がすべて描画されるように追加描画で描画される描画範囲の位置を調整する。
図14において、描画処理制御部52は、穴23aを通過した不良ビームが描画するはずであった位置、及び穴23bを通過した不良ビームが描画するはずであった位置と、が含まれるようにストライプ領域32cを設定する。そして、追加パス描画において、穴23aを通過した不良ビームが描画するはずであった位置、及び穴23bを通過した不良ビームが描画するはずであった位置に、不良ビーム以外の他のビームを使って照射する。
ここで、追加のパスで描画する際には、不良ビームが描画するはずであった部分以外にも併せて描画を行うことにしてもパターン形成はできるが、不良ビームが描画するはずであった位置についてだけ描画行うことにするのが好ましい。不良ビームが描画するはずであった位置についてだけ描画行うことにすれば、その他のビームについての描画データ作成が不要となり、データ作成リソースの有効利用ができるというメリットがある。
【0059】
以上により、どの位置においても所定の照射量にすることができる。
図14では、多重描画において、多重描画における各回の描画位置をy方向にずらした場合を説明したが、x方向にずらしてもよい。
【0060】
図15は、実施の形態1における追加パス描画による描画モードで描画動作を行う場合の他の一例を説明するための概念図である。
図15では、多重度N=2の場合を一例として示している。
図15の例では、例えば、x方向に2AU分ずつずらして多重描画する場合を示している。1回目の描画処理では、不良ビーム(例えば、「1」で示す穴Aを通過するビーム)についてビームOFFになるようにブランキング制御を行い、残りのマルチビーム(例えば、「2」〜「8」で示す穴B〜Hを通過するビーム)を使って、
図15(a)に示すように、1回目の描画処理を行う。ラスタースキャンの描画動作は、例えば
図9で説明した内容と同様で構わない。かかる場合に、「1」で示す穴Aを通過する不良ビームが描画するはずであった位置には、ビームが照射されていない。
【0061】
次に、1回目の描画処理とは、
図15(b)に示すように、2AUだけx方向にずらした位置から2回目の描画処理を行う。描画動作の内容は、1回目の描画処理と同様でよい。
【0062】
このままでは、「1」で示す穴Aを通過した不良ビームが描画するはずであった位置では、所望の照射量の1/2ずつしか電子ビームの照射を受けていないことになる。
【0063】
そこで、追加パス描画(追加描画)として、
図15(c)に示すように、2AUだけx方向にずらした位置から3回目の描画処理(追加パス描画)を行う。その際、不良ビームによって描画されるはずであった位置ついて、不良ビーム以外の他のビームを使って照射する。1回目と2回目と3回目の描画処理において、「1」で示す穴Aを通過する不良ビームが描画するはずであった位置がいずれも重ならないように制御することで、どの位置においても所定の照射量にすることができる。
【0064】
以上のように、追加パス描画による描画モード(3)において、描画速度は、不良ビームが無い場合より低下するものの、描画精度を低下させずに描画処理を行うことができる。また、描画モード(3)が選択される場合には、描画速度の効率も他の方法を用いる場合より効率的に描画処理を行うことができる。
【0065】
以上のように、実施の形態1では、複数の描画モードを用意し、描画速度の効率により描画モードを選択して、より効率の良い描画モードで描画処理を行うことができる。
【0066】
実施の形態2.
実施の形態1では、設定される部分領域が矩形である場合について説明したが、これに限るものではない。実施の形態2では、他の形状である場合について説明する。また、実施の形態2において、以下、特に説明する点以外は、実施の形態1と同様である。
【0067】
図16は、実施の形態2におけるy方向分割による部分領域(平行四辺形領域:第2の領域)の一例を示す図である。
図16では、例えば、縦(y方向)に512個、横(x方向)に8個の穴22が、縦方向(y方向)に1段ずれるごとに横方向(x方向)に例えば寸法aだけずれて配置されたアパーチャ部材203の例を示している。例えば、縦方向(y方向)1段目の列と、2段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法aだけずれて配置される。また、縦方向(y方向)2段目の列と、3段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法bだけずれて配置されるように各段によってずれ幅を変更させてもよい。このように、アパーチャ部材203の穴22全体を含む領域が平行四辺形になっている。
図16の例では、アパーチャ部材203自体の形状が平行四辺形で示されているが、矩形であっても構わない。
図16では、例えば、左端からx方向に6列目および上端から−y方向に4段目の穴23が不良ビームを形成する穴22としている。かかる場合に、y方向分割により、不良ビームを除いて部分領域(平行四辺形領域)を設定するには、
図16に示すように、x方向に全列、そして上端から−y方向に5段目から下端までの複数の穴22が含まれる部分領域(平行四辺形領域)41と、x方向に全列、そして上端から−y方向に3段目までの複数の穴22が含まれる部分領域(平行四辺形領域)43と、の2つの部分領域(平行四辺形)を想定できる。部分領域(平行四辺形領域)41と部分領域(平行四辺形領域)43とでは、部分領域(平行四辺形領域)41の方が、より多くの穴22が含まれるのでy方向分割による場合には、部分領域(平行四辺形領域)41を選択する。
【0068】
図17は、実施の形態2におけるx方向分割による部分領域(平行四辺形領域:第2の領域)の一例を示す図である。
図17では、
図16と同様、例えば、縦(y方向)に512個、横(x方向)に8個の穴22が、縦方向(y方向)に1段ずれるごとに横方向(x方向)に例えば寸法aだけずれて配置されたアパーチャ部材203の例を示している。
図17では、
図16と同様、例えば、左端からx方向に6列目および上端から−y方向に4段目の穴23が不良ビームを形成する穴22としている。かかる場合に、x方向分割により、不良ビームを除いて部分領域(平行四辺形領域)を設定するには、
図17に示すように、y方向に全列、そして左端からx方向に5列目までの複数の穴22が含まれる部分領域(平行四辺形領域)45と、y方向に全列、そして左端からx方向に7列目から右端までの複数の穴22が含まれる部分領域(平行四辺形領域)47と、の2つの部分領域(平行四辺形領域)を想定できる。部分領域(平行四辺形領域)45と部分領域(平行四辺形領域)47とでは、部分領域(平行四辺形領域)45の方が、より多くの穴22が含まれるのでx方向分割による場合には、部分領域(平行四辺形領域)45を選択する。
【0069】
図18は、実施の形態2におけるx方向分割による部分領域(稲妻形領域:第2の領域)の一例を示す図である。
図18では、例えば、縦(y方向)に512個、横(x方向)に8個の穴22が、縦方向(y方向)に所定の段数だけ1段ずれるごとに横方向(x方向)に例えば寸法aだけずれて配置され、所定の段数になると、次の段が、1段目と同じx方向の位置に戻り、その段から再度、所定の段数だけ1段ずれるごとに横方向(x方向)に例えば寸法aだけずれて配置されることを繰り返すようにして配置されたアパーチャ部材203の例を示している。例えば、
図18の例では、例えば、縦方向(y方向)に1〜4段目まで、各段の列と、その次の段の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法aだけずれて配置される。そして、5〜8段目まで、9〜12段目まで、といった縦方向(y方向)に4段毎に、1〜4段目までのx方向位置と同様に配置される。ここでは、x方向のずれ量が4段で隣りの穴の位置になるように配置される。
図18では、例えば、左端からx方向に6列目および上端から−y方向に4段目の穴23が不良ビームを形成する穴22としている。
【0070】
かかる場合に、x方向分割により、不良ビームを除いて部分領域を設定するには、
図18に示すように、下端からy方向に4段目まで、そして左端からx方向に5列目までの複数の穴22が含まれる小分領域(平行四辺形領域)47aと、y方向に5〜8段目まで、そして左端からx方向に5列目までの複数の穴22が含まれる小部分領域(平行四辺形領域)47bと、・・・、上端から−y方向に8〜5段目まで、そして左端からx方向に5列目までの複数の穴22が含まれる小部分領域(平行四辺形領域)47cと、上端から−y方向に4〜1段目まで、そして左端からx方向に5列目までの複数の穴22が含まれる小部分領域(平行四辺形領域)47dと、を組み合わせた部分領域(稲妻形領域)48と、下端からy方向に4段目まで、そして左端からx方向に7列目から右端までの複数の穴22が含まれる小分領域(平行四辺形領域)49aと、y方向に5〜8段目まで、そして左端からx方向に7列目から右端までの複数の穴22が含まれる小部分領域(平行四辺形領域)49bと、・・・、上端から−y方向に8〜5段目まで、そして左端からx方向に7列目から右端までの複数の穴22が含まれる小部分領域(平行四辺形領域)49cと、上端から−y方向に4〜1段目まで、そして左端からx方向に7列目から右端までの複数の穴22が含まれる小部分領域(平行四辺形領域)49dと、を組み合わせた部分領域(稲妻形領域)70と、の2つの部分領域(稲妻形領域)を想定できる。言い換えれば、x方向分割においては、不良ビーム23が存在するx方向列目を除くように、複数の小部分領域(平行四辺形領域)を構成し、複数の小部分領域(平行四辺形領域)をy方向に組み合わせることで部分領域(稲妻形領域)48,70を構成する。
【0071】
部分領域(稲妻形領域)49と部分領域(稲妻形領域)70とでは、部分領域(稲妻形領域)49の方が、より多くの穴22が含まれるのでx方向分割による場合には、部分領域(稲妻形領域)49を選択する。このように、x方向m1本×y方向n1本のビーム形成穴22が含まれるように構成される平行四辺形領域がy方向に繰り返し配置されることにより構成される多角形領域(例えば、稲妻領域)を部分領域として設定してもよい。
【0072】
以上のように、ビーム配置(アパーチャ部材203の複数の穴22の配置)がxy方向に直行していない場合には、部分領域はその配置に応じた形状とすればよい。
【0073】
実施の形態3.
実施の形態2では、ビーム配置(アパーチャ部材203の複数の穴22の配置)がxy方向に直行していない場合に、矩形以外の部分領域を設定する場合について説明したが、これに限るものではない。実施の形態3では、ビーム配置(アパーチャ部材203の複数の穴22の配置)がxy方向に直行していない場合でも、矩形の部分領域を設定する場合について説明する。実施の形態3において、以下、特に説明する点以外は、実施の形態1と同様である。
【0074】
図19は、実施の形態3におけるy方向分割による部分領域(矩形領域:第2の領域)の一例を示す図である。
図19では、
図18と同様、例えば、縦(y方向)に512個、横(x方向)に8個の穴22が、縦方向(y方向)に所定の段数だけ1段ずれるごとに横方向(x方向)に例えば寸法aだけずれて配置され、所定の段数になると、次の段が、1段目と同じx方向の位置に戻り、その段から再度、所定の段数だけ1段ずれるごとに横方向(x方向)に例えば寸法aだけずれて配置されることを繰り返すようにして配置されたアパーチャ部材203の例を示している。例えば、
図19の例では、例えば、縦方向(y方向)に1〜4段目まで、各段の列とその次の段の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法aだけずれて配置される。そして、5〜8段目まで、9〜12段目まで、といった縦方向(y方向)に4段毎に、1〜4段目までのx方向位置と同様に配置される。ここでは、x方向のずれ量が4段で隣りの穴の位置になるように配置される。
図19では、例えば、左端からx方向に6列目および上端から−y方向に4段目の穴23が不良ビームを形成する穴22としている。
【0075】
かかる場合に、y方向分割により、不良ビームを除いて部分領域(平行四辺形領域)を設定するには、
図19に示すように、x方向に全列、そして上端から−y方向に5段目から下端までの複数の穴22が含まれる部分領域(矩形領域)72と、x方向に全列、そして上端から−y方向に3段目までの複数の穴22が含まれる部分領域(矩形領域)74と、の2つの部分領域(平行四辺形)を想定できる。部分領域(矩形領域)72と部分領域(矩形領域)74とでは、部分領域(矩形領域)72の方が、より多くの穴22が含まれるのでy方向分割による場合には、部分領域(矩形領域)72を選択する。言い換えれば、y方向分割においては、不良ビーム23が存在するy方向段目を除くように、部分領域(矩形領域)72,62を構成し、その内のより多くの穴22が含まれる部分領域(矩形領域)72を選択する。
【0076】
以上のように、ビーム配置(アパーチャ部材203の複数の穴22の配置)がxy方向に直行していない場合でも、部分領域は矩形にできる。
【0077】
以上のように、上述した各実施の形態において、y方向分割においては、不良ビーム23が存在するy方向段目を除くように、x方向分割においては、不良ビーム23が存在するx方向列目を除くように、複数の部分領域を構成し、その内のより多くの穴22が含まれる部分領域を選択すればよい。
【0078】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。上述したラスタースキャン動作は一例であって、マルチビームを用いたラスタースキャン動作はその他の動作方法であってもよい。
【0079】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0080】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのマルチ荷電粒子ビーム描画装置及び方法は、本発明の範囲に包含される。