特許第5978042号(P5978042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5978042ハニカム成形体の切断方法及び切断装置、並びにハニカム構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5978042
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】ハニカム成形体の切断方法及び切断装置、並びにハニカム構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 11/12 20060101AFI20160817BHJP
   B28B 11/14 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   B28B11/12
   B28B11/14
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-163915(P2012-163915)
(22)【出願日】2012年7月24日
(65)【公開番号】特開2013-147012(P2013-147012A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2015年6月15日
(31)【優先権主張番号】特願2011-278544(P2011-278544)
(32)【優先日】2011年12月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】森 正春
(72)【発明者】
【氏名】キョウ エイ
【審査官】 宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−256517(JP,A)
【文献】 特開2007−320312(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/035674(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102241060(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102267174(CN,A)
【文献】 特開2012−206412(JP,A)
【文献】 特開2012−051366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 11/00〜11/24
B23D 45/00〜65/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸線に沿って延在する複数のセルを有するハニカム成形体を、前記軸線に交差する第1面及び第2面で切断するハニカム成形体の切断装置であって、
前記軸線と交差する移動方向に前記ハニカム成形体を移動させる搬送装置と、
前記移動方向から見て前記軸線と交差するように延在する線状の第1刃部を有する第1切断部材によって前記ハニカム成形体を前記第1面で切断する第1切断ユニットと、
前記移動方向から見て前記軸線と交差するように延在する線状の第2刃部を有する第2切断部材によって前記ハニカム成形体を前記第2面で切断する第2切断ユニットと、を備え、
前記搬送装置は、
前記軸線と交差する配置方向に沿って並ぶように配置され、2個の前記ハニカム成形体をそれぞれ支持して前記移動方向に移動する2個の移動台部と、
前記2個の前記移動台部同士の間で前記軸線及び前記配置方向に略垂直な方向に突出する柱状体と、前記柱状体に取り付けられ、前記柱状体から前記配置方向の両側に延在し、前記2個の前記移動台部にそれぞれ支持される2個の前記ハニカム成形体に当接するアーム部材と、を有し、前記第1面と前記第2面との間で前記ハニカム成形体を前記移動台部に固定する保持部と、を有するハニカム成形体の切断装置。
【請求項2】
前記移動方向は、前記軸線に略垂直な方向であり、前記第1刃部及び前記第2刃部は、前記軸線及び前記移動方向に略垂直な方向に延在する、請求項記載のハニカム成形体の切断装置。
【請求項3】
前記第1切断部材及び前記第2切断部材は帯鋸である、請求項又は記載のハニカム成形体の切断装置。
【請求項4】
前記第1刃部及び前記第2刃部は、互いに略平行であり、
前記第1切断ユニット及び前記第2切断ユニットは、前記第1刃部及び前記第2刃部をそれぞれの延在方向において同じ向きに駆動する、請求項記載のハニカム成形体の切断装置。
【請求項5】
前記搬送装置は、前記第1刃部及び前記第2刃部の駆動による切断負荷によって、前記ハニカム成形体が押し付けられる方向から当該ハニカム成形体を支持する、請求項記載のハニカム成形体の切断装置。
【請求項6】
前記移動方向に直交する方向における前記第1切断ユニットと前記第2切断ユニットとの間隔を調節する間隔調節機構を更に備える、請求項のいずれか一項記載のハニカム成形体の切断装置。
【請求項7】
前記第1切断ユニットと前記第2切断ユニットとは、前記移動方向において、略同じ位置に配置されている、請求項のいずれか一項記載のハニカム成形体の切断装置。
【請求項8】
前記第1切断ユニットと前記第2切断ユニットとは、前記移動方向において、異なる位置に配置されている、請求項のいずれか一項記載のハニカム成形体の切断装置。
【請求項9】
前記搬送装置は、前記第1面よりも外側及び前記第2面よりも外側で前記ハニカム成形体を支持して前記移動台部と共に移動する補助移動台部を更に有する、請求項のいずれか一項記載のハニカム成形体の切断装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項記載の切断装置を用い、
前記軸線と交差する移動方向に前記ハニカム成形体を移動させながら、前記移動方向から見て前記軸線と交差するように延在する線状の第1刃部を有する第1切断部材によって、前記ハニカム成形体を前記第1面で切断し、前記移動方向から見て前記軸線と交差するように延在する線状の第2刃部を有する第2切断部材によって、前記ハニカム成形体を前記第2面で切断する、ハニカム成形体の切断方法。
【請求項11】
前記第1刃部が前記ハニカム成形体に接触した後、前記第1面及び前記第2面での前記ハニカム成形体の切断が完了するまで、前記ハニカム成形体を前記移動方向のみに移動させる、請求項10記載のハニカム成形体の切断方法。
【請求項12】
前記軸線に交差する配置方向に沿って並ぶように複数の前記ハニカム成形体を配置し、前記複数の前記ハニカム成形体を同時に前記移動方向に移動させる、請求項10又は11記載のハニカム成形体の切断方法。
【請求項13】
請求項1012のいずれか一項記載のハニカム成形体の切断方法の使用によって切断された前記ハニカム成形体のうち、前記第1面と前記第2面との間の部分を母材として用いて、ハニカム構造体を製造する、ハニカム構造体の製造方法。
【請求項14】
切断された前記ハニカム成形体のうち、前記第1面よりも外側の部分及び前記第2面よりも外側の部分の少なくとも一方を台座として、前記母材を焼成し、前記ハニカム構造体を製造する、請求項13記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセルを有するハニカム成形体の切断方法及び切断装置、並びにハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルパティキュレイトフィルタ等、内燃機関から排出されるガスを浄化するフィルタ用として、ハニカム構造体が広く知られている。ハニカム構造体は、一端部が封口材で封じられたセルに対し、他端部が封口材で封じられたセルが少なくとも一つ隣接するように、各セルが配列された構造を有している。
【0003】
このようなハニカム構造体は、所定の軸線に沿って延在する複数のセルを有するハニカム成形体を用いて製造される。ハニカム成形体は、ハニカム構造体として必要な長さに切断される。ハニカム成形体の切断方法として、細線をセラミックハニカム成形体に向かって移動させ、セラミックハニカム成形体に押し付ける方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4049973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の切断方法では、ハニカム成形体を一面で切断する度に細線を移動させる必要があり、ハニカム成形体を効率よく切断することができない場合があった。また、切断する面毎の細線の移動軌跡がばらつき、ハニカム成形体を精度よく切断することができない場合があった。そこで、本発明は、効率よく且つ精度よく切断することができるハニカム成形体の切断方法及び切断装置、並びにハニカム構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハニカム構造母材の切断方法は、所定の軸線に沿って延在する複数のセルを有するハニカム成形体を、軸線に交差する第1面及び第2面で切断するハニカム成形体の切断方法であって、軸線と交差する移動方向にハニカム成形体を移動させながら、移動方向から見て軸線と交差するように延在する線状の第1刃部を有する第1切断部材によって、ハニカム成形体を第1面で切断し、移動方向から見て軸線と交差するように延在する線状の第2刃部を有する第2切断部材によって、ハニカム成形体を第2面で切断する。
【0007】
この切断方法では、軸線と交差する移動方向にハニカム成形体が移動する過程で、第1切断部材によってハニカム成形体が第1面で切断され、第2切断部材によってハニカム成形体が第2面で切断される。これにより、ハニカム成形体を効率よく切断することができる。また、第1刃部及び第2刃部に対してハニカム成形体が移動するため、ハニカム成形体を基準とした第1刃部の相対的な移動軌跡と第2刃部の相対的な移動軌跡とが互いに略一致する。これにより、切断後の第1面と第2面との距離等が安定するため、ハニカム成形体を精度よく切断することができる。
【0008】
また、移動方向は、軸線に略垂直な方向であり、第1刃部及び第2刃部は、軸線及び移動方向に略垂直な方向に延在してもよい。この切断方法によれば、軸線に対する第1面及び第2面の直角度を高めることができる。
【0009】
また、第1切断部材及び第2切断部材は帯鋸であってもよい。この切断方法によれば、第1刃部及び第2刃部がそれぞれの延在方向に沿って駆動される。これにより、第1刃部及び第2刃部のそれぞれの延在方向にもハニカム成形体を切断する力が作用するため、ハニカム成形体を更に効率よく切断することができる。
【0010】
また、第1刃部及び第2刃部は、互いに略平行であり、第1刃部及び第2刃部をそれぞれの延在方向において同じ向きに駆動してもよい。この切断方法によれば、第1刃部からハニカム成形体にかかる切断負荷と、第2刃部からハニカム成形体にかかる切断負荷とは、移動方向から見て異なる位置で同じ向きに作用する。このため、移動方向から見て、ハニカム成形体が傾動しにくくなり、ハニカム成形体を更に精度よく切断することができる。
【0011】
また、第1刃部及び第2刃部を駆動する向きに対向するようにハニカム成形体を支持してもよい。この切断方法によれば、第1刃部からハニカム成形体にかかる切断負荷と、第2刃部からハニカム成形体にかかる切断負荷とによって、ハニカム成形体を支持する側にハニカム成形体が押し付けられ、移動方向から見てハニカム成形体の位置や姿勢が安定する。このためハニカム成形体を更に精度よく切断することができる。
【0012】
また、移動方向に移動するハニカム成形体に第1刃部及び第2刃部を略同時に接触させてもよい。この切断方法によれば、第1刃部による切断と、第2刃部による切断とが同時に進行するため、ハニカム成形体を更に効率よく切断することができる。
【0013】
また、移動方向に移動するハニカム成形体に、第1刃部を接触させ、その後に第2刃部を接触させてもよい。この切断方法によれば、ハニカム成形体にかかる負荷の急上昇を防止することができる。
【0014】
また、第1刃部がハニカム成形体に接触した後、第1面及び第2面でのハニカム成形体の切断が完了するまで、ハニカム成形体を移動方向のみに移動させてもよい。この切断方法によれば、ハニカム成形体を一方向に移動させるのみで、第1面及び第2面の両方でハニカム成形体が切断されるため、ハニカム成形体を更に効率よく切断することができる。また、第1面及び第2面でのハニカム成形体の切断中に、ハニカム成形体が上記一方向の逆方向に移動することがないことから、切断済みの部分を第1刃部又は第2刃部が再び通過することがない。このため、切断後の第1面及び第2面が余計に削られることを防止し、切断面の平滑性や平面度を向上させ、ハニカム成形体を更に精度よく切断することができる。
【0015】
また、軸線に交差する配置方向に沿って並ぶように複数のハニカム成形体を配置し、複数のハニカム成形体を同時に移動方向に移動させてもよい。この切断方法によれば、ハニカム成形体を配置する工程と、ハニカム成形体を切断する工程とを、複数のハニカム成形体ごとにまとめて行うことができ、ハニカム成形体を更に効率よく切断することができる。
【0016】
本発明のハニカム構造体の製造方法は、上記ハニカム成形体の切断方法の使用によって切断されたハニカム成形体のうち、第1面と第2面との間の部分を母材として用いて、ハニカム構造体を製造する。この製造方法によれば、上記ハニカム成形体の切断方法を使用するので、効率よく且つ精度よくハニカム構造体を製造することができる。
【0017】
また、切断されたハニカム成形体のうち、第1面よりも外側の部分及び第2面よりも外側の部分の少なくとも一方を台座として、母材に所定の処理を施し、ハニカム構造体を製造してもよい。この製造方法によれば、ハニカム成形体のうち母材として用いない余剰部分を、ハニカム構造体の製造に有効活用することができる。
【0018】
本発明のハニカム成形体の切断装置は、所定の軸線に沿って延在する複数のセルを有するハニカム成形体を、軸線に交差する第1面及び第2面で切断するハニカム成形体の切断装置であって、軸線と交差する移動方向にハニカム成形体を移動させる搬送装置と、移動方向から見て軸線と交差するように延在する線状の第1刃部を有する第1切断部材によってハニカム成形体を第1面で切断する第1切断ユニットと、移動方向から見て軸線と交差するように延在する線状の第2刃部を有する第2切断部材によってハニカム成形体を第2面で切断する第2切断ユニットと、を備える。
【0019】
この切断装置では、前記搬送装置によって軸線と交差する移動方向にハニカム成形体を移動させる過程で、第1切断ユニットの第1切断部材によってハニカム成形体が第1面で切断され、第2切断ユニットの第2切断部材によってハニカム成形体が第2面で切断される。これにより、ハニカム成形体を効率よく且つ精度よく切断することができる。
【0020】
また、移動方向は、軸線に略垂直な方向であり、第1刃部及び第2刃部は、軸線及び移動方向に略垂直な方向に延在してもよい。この切断装置によれば、軸線に対する第1面及び第2面の直角度を高めることができる。
【0021】
また、第1切断部材及び第2切断部材は帯鋸であってもよい。この切断装置によれば、第1刃部及び第2刃部がそれぞれの延在方向に沿って駆動される。これにより、第1刃部及び第2刃部のそれぞれの延在方向にもハニカム成形体を切断する力が作用するため、ハニカム成形体を更に効率よく切断することができる。
【0022】
第1刃部及び第2刃部は、互いに略平行であり、第1切断ユニット及び第2切断ユニットは、第1刃部及び第2刃部をそれぞれの延在方向において同じ向きに駆動してもよい。この切断装置によれば、第1刃部からハニカム成形体にかかる切断負荷と、第2刃部からハニカム成形体にかかる切断負荷とは、移動方向から見て異なる位置で同じ向きに作用する。このため、移動方向から見て、ハニカム成形体が傾動しにくくなり、ハニカム成形体を更に精度よく切断することができる。
【0023】
また搬送装置は、搬送装置は、第1刃部及び第2刃部が駆動される向きに対向するようにハニカム成形体を支持してもよい。この切断装置によれば、第1刃部からハニカム成形体にかかる切断負荷と、第2刃部からハニカム成形体にかかる切断負荷とによって、ハニカム成形体を支持する側にハニカム成形体が押し付けられ、移動方向から見てハニカム成形体の位置や姿勢が安定する。このためハニカム成形体を更に精度よく切断することができる。
【0024】
移動方向に直交する方向における第1切断ユニットと第2切断ユニットとの間隔を調節する間隔調節機構を更に備えてもよい。この切断装置によれば、製造すべきハニカム構造体の長さに応じて、第1面と第2面との間隔を変更することができる。
【0025】
また、第1切断ユニットと第2切断ユニットとは、移動方向において、略同じ位置に配置されていてもよい。この切断装置によれば、移動方向に移動するハニカム成形体に対し、第1刃部及び第2刃部を略同時に接触させることができる。これにより、第1刃部による切断と、第2刃部による切断とが同時に進行するため、ハニカム成形体を更に効率よく切断することができる。
【0026】
また、第1切断ユニットと第2切断ユニットとは、移動方向において、異なる位置に配置されていてもよい。この切断装置によれば、移動方向に移動するハニカム成形体に、第1刃部を接触させ、その後に第2刃部を接触させることができる。これにより、ハニカム成形体にかかる負荷の急上昇を防止することができる。更に、移動方向と直交する方向において、第1切断ユニットと第2切断ユニットとが干渉し難くなる。このため、移動方向と直交する方向において、第1刃部と第2刃部とを近付け易くなり、第1面と第2面との間隔の設定可能範囲が広くなる。
【0027】
また、搬送装置は、ハニカム成形体を支持して移動方向に移動する移動台部と、第1面と第2面との間でハニカム成形体を移動台部に固定する保持部と、を有してもよい。この切断装置によれば、ハニカム成形体のうち、第1面と第2面との間の部分の位置や姿勢が安定するため、ハニカム成形体を更に精度よく切断することができる。
【0028】
また、搬送装置は、軸線と交差する配置方向に沿って並ぶように配置された複数の移動台部を有し、移動台部ごとにハニカム成形体を支持してもよい。この切断装置によれば、搬送装置にハニカム成形体を設置する工程と、ハニカム成形体を切断する工程とを、複数のハニカム成形体ごとにまとめて行うことができ、ハニカム成形体を更に効率よく切断することができる。
【0029】
また、搬送装置は、2個の移動台部を有し、保持部は、2個の移動台部同士の間で軸線及び配置方向に略垂直な方向に突出する柱状体と、柱状体に取り付けられ、柱状体から配置方向の両側に延在し、2個の移動台部にそれぞれ支持される2個のハニカム成形体に当接するアーム部材と、を有してもよい。この切断装置によれば、1本の柱状体に取り付けられた1本のアーム部材により、2個のハニカム成形体を固定することができるため、各移動台部にハニカム成形体を固定する作業の効率化を図ることができる。また、アーム部材は、柱状体を挟む両側でハニカム成形体に当接するため、柱状体が1本であってもアーム部材の姿勢が安定し、ハニカム成形体をしっかりと各移動台部に固定することができる。
【0030】
また、搬送装置は、移動台部と共に移動し、第1面よりも外側及び第2面よりも外側でハニカム成形体を支持する補助移動台部を更に有してもよい。この切断装置によれば、切断されたハニカム成形体のうち、第1面及び第2面よりも外側の部分の脱落を防止して、これらの部分をハニカム構造体の製造に有効活用することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、効率よく且つ精度よく切断することができるハニカム成形体の切断方法及び切断装置、並びにハニカム構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】ハニカム構造体の斜視図である。
図2図1中のII−II線に沿う断面図である。
図3】本発明に係る切断装置の第1実施形態の正面図である。
図4図3中の切断装置の平面図である。
図5図3中の移動台の側面図である。
図6図3中の帯鋸の側面図である。
図7】保持部の変形例を示す平面図である。
図8図7中の保持部の側面図である。
図9図8中のローレットナットを締め付けた状態を示す側面図である。
図10図7中のアーム部材を回動させた状態を示す平面図である。
図11】本発明に係る切断装置の第2実施形態の正面図である。
図12図11中の搬送装置の平面図である。
図13図11中の搬送装置の側面図である。
図14】移動台を着脱可能とした場合を示す側面図である。
図15】切断ユニット同士を前後にずらした場合を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0034】
まず、ハニカム構造体について説明する。図1は、ハニカム構造体の斜視図である。図2は、図1中のII−II線に沿う断面図である。図1及び2に示されるハニカム構造体100は、多孔質(例えば、平均細孔直径20μm以下)のセラミクス材料等からなる円柱状部材であり、複数のセル110を有している。セル110のそれぞれは、ハニカム構造体100の端面100aから端面100bにかけて、ハニカム構造体100の軸線方向に沿って形成された孔である。セル110同士の間には、多孔質の隔壁112が形成されている。図2に示されるように、端面100a側では、複数のセル110のうち所定のセル110aが封口材114によって封口されている。端面100b側では、セル110のうちセル110a以外のセル110bが封口材114によって封口されている。
【0035】
ハニカム構造体100は、内燃機関から排出されるガスGを浄化するフィルタとして用いられる。具体的には、端面100aから端面100bにガスGが通される。ガスGは、端面100aでセル110b内に導入され、隔壁112を透過してセル110aに進入し、端面100bでセル110aから排出される。この過程で、ガスGに含まれていた粒子(すす等)が隔壁112によって捕捉されるため、ガスGが浄化される。
【0036】
ハニカム構造体100は、ハニカム成形体Pを焼成することで製造される。ハニカム成形体Pは、セラミクス原料からなる円柱状の成形体である。ハニカム成形体Pには、その軸線L1に沿って複数のセル110が形成されている。ハニカム成形体Pは、軸線L1と交差する面M1,M2で切断された後に焼成され、面M1がハニカム構造体100の端面100aとなり、面M2がハニカム構造体100の端面100bとなる。
【0037】
続いて、ハニカム成形体Pの切断装置について説明する。切断装置の説明において、「前後左右」とは、切断時のセラミック成形体Pの移動方向を前方向とした場合の方向を示すものとする。
[第1実施形態]
【0038】
図3は、本発明に係る切断装置の第1実施形態の正面図である。図4は、図3中の切断装置の平面図、図5は、図3中の移動台の側面図、図6は、図3中の帯鋸の側面図である。図3に示されるように、切断装置1は、搬送装置2と、切断ユニット3,4と、を備えている。
【0039】
搬送装置2は、テーブル5と、テーブル5を下方から支持すると共に、前後方向に沿って移動させるテーブル駆動装置6と、を有している。テーブル駆動装置6の上部には、前後方向に沿って延在する一対のレール7,7が設けられている。各レール7には、滑動部10が設置されている。滑動部10は、レール7に沿って滑動可能となっている。レール7,7の間には、前後方向に沿って延在するボールネジ8が設けられている。テーブル駆動装置6の上部の後側には、ボールネジ8を回転させるモータ等の動力源9が設けられており、ボールネジ8の後端部が動力源9に接続されている。
【0040】
テーブル5は、滑動部10,10の上に取り付けられており、滑動部10,10と共に前後方向に沿って移動可能となっている。テーブル5の下部には、ボールネジ8と螺合した移動ナット11が設けられている。移動ナット11は、ボールネジ8の回転に伴って前後に移動する。このため、ボールネジ8を回転させることで、移動ナット11と共にテーブル5を前後方向に沿って移動させることが可能となっている。
【0041】
図4に示されるように、テーブル5は、前後方向に長い長方形の平面形状を呈し、テーブル5の前側部分はテーブル駆動装置6よりも前側に張り出している。テーブル5には、前後方向に沿って上下に開口する2箇所の開口5a,5bが形成されている。開口5a,5bには、後述の刃部B1,B2が通される。
【0042】
テーブル5の上部うち、開口5a,5bの間の部分には、テーブル5と共に前後に移動する2個の移動台12,12が設けられている。すなわち、搬送装置2は、前後方向に沿って移動する移動台12,12を有している。2個の移動台12,12は、前後方向に沿って並ぶように配置されている。各移動台12の上部には、V字状の溝12aが左右方向に沿って形成されている。各移動台12の上には、軸線L1を左右方向に沿わせた状態でハニカム成形体Pが設置される。すなわち、テーブル5は、移動台12ごとにハニカム成形体Pを支持する。ハニカム成形体Pの下側は溝12a内に落ち込み、ハニカム成形体Pの外周面が溝12aの内面に接する。これにより、ハニカム成形体Pが移動台12に対して位置決めされる(図5参照)。
【0043】
移動台12には、左右方向に沿って並び、ハニカム成形体Pを移動台に固定する2個の保持部A1が設けられている。すなわち、搬送装置2は、ハニカム成形体Pを移動台12に固定する保持部A1を有している。各保持部A1は、溝12aの前後の部分で移動台12から上方に突出する一対の柱13,13と、一対の柱13,13の間に架け渡された保持板14と、を有している。図5に示されるように、保持板14は、移動台12上に設置されたハニカム成形体Pを上方から押さえる。これにより、ハニカム成形体Pが移動台12に固定される。
【0044】
図4に示されるように、テーブル5の上部のうち、各移動台12の左右の部分には、補助移動台30,31が設けられている。すなわち、搬送装置2は、補助移動台30,31を有している。補助移動台30,31と移動台12との間には、後述の刃部B1,B2との接触を避けるための隙間が形成されている。補助移動台30,31のそれぞれの上部には、溝12aと対応するように、V字状の溝30a,31aが左右方向に沿って形成されている。補助移動台30,31の上には、移動台12の上に設置されたハニカム成形体Pの両端部が設置される。ハニカム成形体Pの両端部の下側は、溝30a,31a内に落ち込む。
【0045】
切断ユニット3,4は、テーブル駆動装置6の前方において、テーブル5の左右に配置されている。また、切断ユニット3,4は、前後方向において同じ位置に配置されている。図3に示されるように、切断ユニット3は、テーブル5の左側に立設された支柱部15と、支柱部15の上部から右側に膨出した上側膨出部16と、支柱部15の下部から右側に膨出した下側膨出部17と、を有している。上側膨出部16は、テーブル5の開口5aの上方にかかり、下側膨出部17は、テーブル5の開口5aの下方にかかっている。
【0046】
上側膨出部16には、前後方向に沿って延びる軸線回りに回転可能なプーリ18が内蔵され、下側膨出部17には、前後方向に沿って延びる軸線回りに回転可能なプーリ19が内蔵されている。プーリ18の外周とプーリ19の外周とには、帯線からなる環状の帯鋸20が架け渡されている。帯鋸20の帯線の後側の縁には、鋸刃20aが形成されている(図6参照)。鋸刃20aは、鋸刃形状の刃に限られず、帯線の後側の縁にダイヤモンド砥粒を電着して形成された砥石状の刃であってもよい。帯鋸20には、プーリ18とプーリ19とを互いに遠ざけるようにして張力がかけられている。これにより、帯鋸20のうち、プーリ18とプーリ19との間に位置する一対の帯線部20b,20cは、上下方向に沿って直線状に延在している。右側の帯線部20bは、上側膨出部16と下側膨出部17との間に露出し、テーブル5の開口5aに通されている。
【0047】
切断ユニット3には、モータ等の動力源21が内蔵されている。動力源21は、プーリ18又はプーリ19を、前側から見て反時計回りに回転させる。動力源21がプーリ18又はプーリ19を回転させると、帯鋸20の帯線は反時計回りに駆動され、帯線部20bは連続的に下方に駆動される。このように、プーリ18,19及び動力源21は、帯鋸20を駆動する駆動装置E1を構成している。すなわち、切断ユニット3は、直線状の帯線部20b,20cを有する帯鋸20と、帯鋸20の駆動装置E1とを有している。
【0048】
切断ユニット4は、テーブル5の右側に立設された支柱部22と、支柱部22の上部から左側に膨出した上側膨出部23と、支柱部22の下部から左側に膨出した下側膨出部24と、を有している。上側膨出部23は、テーブル5の開口5bの上方にかかり、下側膨出部24は、テーブル5の開口5bの下方にかかっている。
【0049】
上側膨出部23には、前後方向に沿って延びる軸線回りに回転可能なプーリ25が内蔵され、下側膨出部24には、前後方向に沿って延びる軸線回りに回転可能なプーリ26が内蔵されている。プーリ25とプーリ26とには、帯線からなる環状の帯鋸27が架けられている。帯鋸27の帯線の後側の縁には、鋸刃27aが形成されている(図6参照)。鋸刃27aも、鋸刃形状の刃に限られず、帯線の後側の縁にダイヤモンド砥粒を電着して形成された砥石状の刃であってもよい。帯鋸27には、プーリ25とプーリ26とを互いに遠ざけるようにして張力がかけられている。これにより、帯鋸27のうち、プーリ25とプーリ26との間に位置する一対の帯線部27b,27cは、上下に直線状に延在している。左側の帯線部27bは、上側膨出部23と下側膨出部24との間に露出し、テーブル5の開口5bに通されている。
【0050】
切断ユニット4には、モータ等の動力源28が内蔵されている。動力源28は、プーリ25又はプーリ26を、前側から見て時計回りに回転させる。動力源28がプーリ25又はプーリ26を回転させると、帯鋸27の帯線は時計回りに駆動され、帯線部27bは連続的に下方に駆動される。このように、プーリ25,26及び動力源28は、帯鋸27を駆動する駆動装置E2を構成している。すなわち、切断ユニット4は、直線状の帯線部27b,27cを有する帯鋸27と、帯鋸27の駆動装置E2とを有している。
【0051】
切断ユニット4は、間隔調節機構29の上に設置されている。間隔調節機構29は、左右方向における切断ユニット4の位置を変更可能とすることで、切断ユニット3と切断ユニット4との左右方向での間隔を変更可能とする。左右方向における切断ユニット4の位置を変更すると、帯線部27bの位置も変わる。これに対応するために、テーブル5の開口5bの幅は、開口5aの幅よりも大きくなっている。
【0052】
切断ユニット3,4を前側から見ると、切断ユニット3の帯線部20bと切断ユニット4の帯線部27bとは、移動台12に設置されたハニカム成形体Pと交差するように、上下方向に沿ってに直線状に延在する。すなわち、帯線部20b,27bは、ハニカム成形体Pの移動方向から見て、軸線L1と交差するように延在する刃部B1,B2に相当する。また、帯鋸20,27は、刃部B1,B2を有する切断部材に相当する。帯鋸20,27の駆動装置E1,E2は、刃部B1,B2よりも外側に配置されている。このため、刃部B1と刃部B2とを近づけ易く、刃部B1と刃部B2との間隔の設定可能範囲が広い。なお、図4に示されるように、切断ユニット3,4は前後方向において同じ位置に配置されていることから、刃部B1,B2も前後方向において同じ位置に配置されている。
【0053】
続いて、切断装置1を用いたハニカム成形体Pの切断方法について説明する。まず、軸線L1を左右方向に沿わせた状態で、ハニカム成形体Pを各移動台12の溝12aの上に設置し、保持部A1によってハニカム成形体Pを移動台12に固定する。また、駆動装置E1,E2を起動することで、帯鋸20,27を駆動し、刃部B1,B2を連続的に下方に駆動する。
【0054】
次に、動力源9によってボールネジ8を回転させ、テーブル5を前方に移動させる。すると、2個の移動台12,12が同時に移動し、各ハニカム成形体Pが各移動台12と共に前方に移動する。すなわち、各ハニカム成形体Pが軸線L1に垂直な移動方向Fに移動する。テーブル5の開口5a,5bは前後方向に沿って形成されていることから、テーブル5が移動しても、刃部B1,B2は開口5a,5bの内面に接触しない。また、移動台12と補助移動台30,31との間には隙間が形成されていることから、テーブル5が移動しても、刃部B1,B2は移動台12又は補助移動台30,31に接触しない。
【0055】
テーブル5が移動すると、ハニカム成形体Pが刃部B1,B2に近づき、刃部B1,B2の鋸刃20a,27aがハニカム成形体Pの外周面に接触する。なお、刃部B1,B2は、前後方向において同じ位置に配置されているため、刃部B1,B2の鋸刃20a,27aはハニカム成形体Pの外周面に同時に接触する。
【0056】
テーブル5が更に移動すると、刃部B1によってハニカム成形体Pが面M1で切断され、刃部B2によってハニカム成形体Pが面M2で切断される。このように、移動方向Fにハニカム成形体Pが移動する過程で、帯鋸20によってハニカム成形体Pが面M1で切断され、帯鋸27によってハニカム成形体Pが面M2で切断される。これにより、ハニカム成形体Pを効率よく切断することができる。特に、面M1,M2でのハニカム成形体Pの切断が完了するまで、ハニカム成形体Pは移動方向Fのみに移動する。すなわち、ハニカム成形体Pを一方向のみに移動させることで、面M1,M2の両方でハニカム成形体Pが切断されるため、ハニカム成形体Pを更に効率よく切断することができる。
【0057】
また、刃部B1,B2に対してハニカム成形体Pが移動するため、ハニカム成形体Pを基準とした刃部B1の相対的な移動軌跡と刃部B2の相対的な移動軌跡とが互いに略一致する。これにより、切断後の面M1と面M2との距離等が安定するため、ハニカム成形体Pを精度よく切断することができる。特に、面M1,M2でのハニカム成形体Pの切断が完了するまでハニカム成形体Pは移動方向Fのみに移動し、移動方向Fの逆方向に移動することがないことから、切断済みの部分を刃部B1,B2が再び通過することがない。このため、切断後の面M1,M2が余計に削られることを防止し、切断面の平滑性や平面度を向上させ、ハニカム成形体Pを更に精度よく切断することができる。
【0058】
また、上述したように、刃部B1,B2の鋸刃20a,27aはハニカム成形体Pの外周面に同時に接触するので、刃部B1による切断と、刃部B2による切断とは同時に進行する。このため、ハニカム成形体Pを更に効率よく切断することができる。
【0059】
なお、切断されたハニカム成形体Pの面M1と面M2との間隔は、刃部B1と刃部B2との間隔によって定まる。このため、左右方向におけるハニカム成形体Pの設置位置がずれたとしても、切断後の面M1と面M2との間隔を維持し、ハニカム成形体Pの切断の精度を維持することができる。また、移動方向Fは、軸線L1に垂直な方向であり、刃部B1及び刃部B2は、軸線L1及び移動方向Fに垂直な方向に延在しているため、軸線L1に対する面M1,M2の直角度を高めることができる。
【0060】
刃部B1,B2は連続的に下方に駆動されているため、下方にもハニカム成形体Pを切断する力が作用し、ハニカム成形体Pを更に効率よく切断することができる。特に、刃部B1,B2は互いに平行であり、いずれも同じ向きに駆動されている。これにより、刃部B1からハニカム成形体Pにかかる切断負荷と、刃部B2からハニカム成形体Pにかかる切断負荷とは、移動方向Fから見て異なる位置で同じ向きに作用する。このため、移動方向Fから見て、ハニカム成形体Pが傾動しにくく、ハニカム成形体Pを更に精度よく切断することができる。
【0061】
また、ハニカム成形体Pは、移動台12によって下方から支持されている。すなわち、ハニカム成形体Pは、刃部B1,B2が駆動されている向きに対向するように支持されている。これにより、刃部B1,B2からハニカム成形体Pにかかる切断負荷によって、移動台12側にハニカム成形体Pが押し付けられ、移動方向Fから見てハニカム成形体Pの位置や姿勢が安定する。このため、ハニカム成形体Pを更に精度よく切断することができる。
【0062】
また、ハニカム成形体Pのうち、面M1と面M2との間の部分は、保持部A1によって移動台12に固定されている。これにより、ハニカム成形体Pのうち、面M1と面M2との間の部分の位置や姿勢が安定するため、ハニカム成形体Pを更に精度よく切断することができる。
【0063】
また、この切断方法では、切断ユニット3,4を移動させずにハニカム成形体Pを移動させている。ハニカム成形体Pを移動させる場合、切断ユニット3,4の大きさや重量はハニカム成形体Pの位置決め精度に影響しない。このため、切断ユニット3,4を移動させるのに比べ、ハニカム成形体Pと刃部B1,B2との相対的な位置決め精度が向上する。特に、複数の切断ユニット3,4を備えた切断装置1では、切断ユニット3,4全体での大きさや重量が大きいため、位置決め精度の向上がより顕著となる。従って、ハニカム成形体Pを更に精度よく切断することができる。
【0064】
なお、切断装置1では、間隔調節機構29によって、切断ユニット3と切断ユニット4との間隔を変更することが可能である。これにより、製造すべきハニカム構造体100の長さに応じて、刃部B1と刃部B2との間隔を変更し、面M1と面M2との間隔を変更することができる。
【0065】
切断されたハニカム成形体Pのうち、面M1,M2よりも外側の部分は、保持部A1によって固定されている部分から切り離されるが、補助移動台30,31によって支持されるため脱落しない。このため、これらの部分をハニカム構造体100の製造に有効活用することができる。
【0066】
テーブル5が更に移動すると、後続の移動台12に設置されたハニカム成形体Pが切断される。全てのハニカム成形体Pの切断を完了すると、テーブル5を停止し、切断されたハニカム成形体Pを回収する。全てのハニカム成形体Pの回収を完了すると、ボールネジ8を逆回転させてテーブル5を後退させ、元の位置に戻す。以後、同じ手順でハニカム成形体Pの切断を繰り返す。このように、ハニカム成形体Pを配置する工程と、ハニカム成形体Pを切断する工程とを、2個のハニカム成形体Pごとにまとめて行うことができ、ハニカム成形体を更に効率よく切断することができる。
【0067】
切断されたハニカム成形体Pのうち、面M1と面M2との間の部分は、ハニカム構造体100の母材として用いられる。切断されたハニカム成形体Pのうち、面M1よりも外側の部分及び面M2よりも外側の部分の少なくとも一方は、母材に所定の処理を行う際の台座として用いられる。具体的には、例えば、母材を焼成する際の台座として用いられる。これにより、ハニカム成形体Pの余剰部分を、ハニカム構造体100の製造に有効活用することができる。
【0068】
以上説明した切断装置1には、様々な変形が可能である。例えば、移動台12の数は2個に限られず、1個又は3個以上であってもよい。複数の移動台12が並ぶ方向は前後方向に限られず、例えば上下方向等、ハニカム成形体Pの軸線L1に交差する方向であればよい。
【0069】
また、切断装置1に適用可能な保持部は上述した保持部A1に限られず、他に様々な形態の保持部が挙げられる。例えば、図7〜10に示される保持部A2は、移動台12上で移動台12同士の間に架け渡された連結プレート41と、連結プレート41の中央部から上方に突出する柱状体42と、柱状体42の上端部42aに取り付けられる棒状のアーム部材43とを有している。図7〜10は、左右方向に沿って並ぶ2個の保持部A2が設けられている例を示している。
【0070】
図7及び8に示されるように、アーム部材43は、移動台12,12の配置方向の両側、すなわち前方及び後方に延在しており、アーム部材43の前後方向の中間部には、柱状体42の上端部42aが挿通されている。柱状体42の中間部には、フランジ部42bが設けられている。フランジ部42bとアーム部材43との間には、柱状体42を螺旋状に囲むコイルバネ44が配置されており、アーム部材43はコイルバネ44を介してフランジ部42bに支持されている。柱状体42の上端部42aの周面には雄ねじが形成されている。雄ねじが形成された上端部42aには、ローレットナット45が装着されており、ローレットナット45はアーム部材43に当接している。
【0071】
ローレットナット45を締め込むと、アーム部材43はコイルバネ44を圧縮しながら下方に移動し、図9に示されるように各ハニカム成形体Pに当接する。更にローレットナット45を締め込むと、アーム部材43が各ハニカム成形体Pを移動台12側に押圧する。これにより、各ハニカム成形体Pが移動台12にしっかりと固定される。ローレットナット45を緩めると、アーム部材43はコイルバネ44の反力により持ち上げられ、各ハニカム成形体Pから離間する(図8参照)。
【0072】
このような保持部A2によれば、1本の柱状体42に取り付けられた1本のアーム部材43により、2個のハニカム成形体Pを固定することができるため、各移動台12にハニカム成形体Pを固定する作業の効率化を図ることができる。また、アーム部材43は、柱状体42を挟む両側でハニカム成形体Pに当接するため、柱状体42が1本であってもアーム部材43の姿勢が安定し、各ハニカム成形体Pをしっかりと移動台部12に固定することができる。更に、図10に示されるように、柱状体42の軸心を中心にアーム部材43を回動させ、各移動台12の上方からアーム部材43を退避させることができる。このため、アーム部材43を柱状体42から取り外すことなく、ハニカム成形体Pの設置及び除去を行うことができ、各ハニカム成形体Pを各移動台12に固定する作業の効率化を更に図ることができる。
[第2実施形態]
【0073】
図11は、本発明に係る切断装置の第2実施形態の正面図である。図12は、図11中の搬送装置の平面図、図13は、図11中の搬送装置の側面図である。図11〜9に示される切断装置1Aは、切断装置1におけるテーブル5の代わりに、環状のチェーンによって移動台12を移動させるものである。
【0074】
切断装置1Aは、搬送装置2の代わりに搬送装置2Aを備えている。搬送装置2Aは、テーブル5及びテーブル駆動装置6の代わりに、4本の環状のチェーン32a,32b,32c,32dと、チェーン駆動装置33と、を有している。チェーン駆動装置33は、前後方向に並び、左右方向に沿って延びる一対の軸34,35と、軸34,35をそれぞれ回転自在に支持する支持部36,37と、を有している。支持部36には、軸34を回転させるモータ等の動力源38が内蔵されている。動力源38は、支持部37に内蔵されていてもよい。
【0075】
軸34には、左から右に並ぶ4枚のスプロケット39a,39b,39c,39dが設けられている。スプロケット39a,39b,39c,39dのそれぞれは、軸34と直交する円板状の部材であり、軸34と共に回転する。軸35には、左から右に並ぶ4枚のスプロケット40a,40b,40c,40dが設けられている。スプロケット39aとスプロケット40aとには、チェーン32aが架けられている。スプロケット39bとスプロケット40bとには、チェーン32bが架けられている。スプロケット39cとスプロケット40cとには、チェーン32cが架けられている。スプロケット39dとスプロケット40dとには、チェーン32dが架けられている。
【0076】
チェーン32a,32b,32c,32dには、軸34と軸35とを互いに遠ざけるようにして張力がかけられている。これにより、チェーン32a,32b,32c,32dのうち、スプロケット39a,39b,39c,39dとスプロケット40a,40b,40c,40dとの間に位置する鎖線部は、前後方向に沿って直線状に延在している。このようにして、チェーン32a,32b,32c,32dが左から右に並んでいる。
【0077】
動力源38が軸34を回転させると、スプロケット39a,39b,39c,39dは軸34と共に回転する。チェーン32a,32b,32c,32dは、スプロケット39a,39b,39c,39d及びスプロケット40a,40b,40c,40dと連動して循環する。チェーン32a,32b,32c,32dの上側の鎖線部は前方に移動し、下側の鎖線部は後方に移動する。
【0078】
チェーン32b,32cには、複数の移動台12,12が設けられ、各移動台12には保持部A1が設けられている。複数の移動台12,12は、チェーン32b,32cの鎖線に沿って等間隔に配置されている。各移動台12は、チェーン32bとチェーン32cとに架け渡され、チェーン32b,32cと共に循環する。各移動台12は、チェーン32b,32cの上に位置するときに、溝12aが左右方向に沿い且つ上方に向くように配置されている。
【0079】
チェーン32aの外周には、移動台12と対応するように複数の補助移動台30が設けられている。チェーン32dの外周には、移動台12と対応するように複数の補助移動台31が設けられている。各補助移動台30,31は、チェーン32a,32dの上方に位置するときに、溝30a,31aが左右方向に沿い且つ上方に向くように配置されている。
【0080】
切断ユニット3,4は、軸34と軸35との間において、チェーン32a,32b,32c,32dの左右に配置される。切断ユニット3の刃部B1は、チェーン32aとチェーン32bとの間に通される。切断ユニット4の刃部B2は、チェーン32cとチェーン32dとの間に通される。
【0081】
切断装置1Aでは、チェーン32a,32b,32c,32dの上に位置する移動台12及び補助移動台30,31は、チェーン32a,32b,32c,32dの鎖線部と共に前方に移動する。前方に移動する移動台12及び補助移動台30,31にハニカム成形体Pを設置することによって、切断装置1を用いるのと同様にハニカム成形体Pを切断することができる。各移動台12及び補助移動台30,31は、後続の移動台12及び補助移動台30,31が前方に進んでいる間に、チェーン32a,32b,32c,32dの下を通って後方に戻る。後方に戻った移動台12及び補助移動台30,31は、再度チェーン32a,32b,32c,32dの上に移動し、前方に移動する。これにより、移動台12及び補助移動台30,31を刃部B1,B2に向かって連続的に移動させることができ、ハニカム成形体Pを更に効率よく切断することができる。
【0082】
なお、図14に示すように、移動台12を着脱可能としてもよい。この場合、搬送装置2Aから移動台12を取り外した状態で、移動台12上にハニカム成形体Pを設置することができる。
【0083】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、図15に示されるように、切断ユニット3と切断ユニット4とは、前後方向において、異なる位置に配置されていてもよい。この場合、ハニカム成形体Pに対し、刃部B1及び刃部B2の一方を接触させ、その後に刃部B1及び刃部B2の他方を接触させることができる。これにより、ハニカム成形体Pにかかる負荷の急上昇を防止することができる。更に、左右方向において、切断ユニット3と切断ユニット4とが干渉し難くなる。このため、左右方向において、刃部B1と刃部B2とを近付け易くなり、面M1と面M2との間隔の設定可能範囲が広くなる。
【0084】
また、切断ユニット3,4を3台以上に増やし、ハニカム成形体Pを一方向に移動させる過程で3か所以上を切断してもよい。また、刃部B1,B2を適宜傾斜させることで面M1,M2を傾斜させ、端面100a,100bが傾斜したハニカム構造体100を製造してもよい。また、切断部材は帯鋸に限られず、例えば細線であってもよい。
【符号の説明】
【0085】
1,1A…切断装置、2,2A…搬送装置、3,4…切断ユニット、12…移動台、20,27…帯鋸、29…間隔調節機構、30,31…補助移動台、100…ハニカム構造体、110…セル、A1…保持部、B1,B2…刃部、F…移動方向、P…ハニカム成形体、L1…軸線、M1,M2…面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15