(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5978045
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】減圧システム
(51)【国際特許分類】
F25B 9/00 20060101AFI20160817BHJP
【FI】
F25B9/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-165512(P2012-165512)
(22)【出願日】2012年7月26日
(65)【公開番号】特開2014-25625(P2014-25625A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】藤井 佳詞
【審査官】
安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−121192(JP,A)
【文献】
特開2004−003792(JP,A)
【文献】
特開2012−067633(JP,A)
【文献】
特表2007−502928(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/038416(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/007652(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/00
F04B 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電動機により駆動部を作動させ、第1の電動機の回転数に対応して冷却部を所定温度に冷却してこの冷却部にて冷媒を膨張させて気体を捕捉する複数の減圧手段と、第2の電動機により圧縮部を作動させてこの圧縮部で圧縮した冷媒を第2の電動機の回転速度に応じた流量で各減圧手段に夫々供給する単一の圧縮手段と、各減圧手段の冷却部の温度を夫々測定する測定手段とを備える減圧システムであって、
第1の閾値と、この第1の閾値より低い第2の閾値との間に冷却部の温度が保持されるように第1及び第2の両電動機の作動を夫々制御する制御手段を備えるものにおいて、
制御手段は、第1及び第2の両電動機を作動させて各減圧手段の冷却部の温度が第1の閾値から第2の閾値に達するまでの間で、各減圧手段の冷却部のうち最も降温速度が遅い一の減圧手段を選択し、残りの減圧手段の第1の電動機の回転数を夫々下げ、各減圧手段の冷却部が第2の閾値に夫々達すると、全ての減圧手段の第1の電動機を夫々作動停止させることを特徴とする減圧システム。
【請求項2】
圧縮した冷媒を貯蔵するアキュムレータを更に備え、
前記制御手段は、全ての第1電動機が作動停止された後、このアキュムレータに所定体積の冷媒が貯蔵されると、第2の電動機の回転数を低下させ、この状態で各減圧手段の冷却部が昇温したとき、各減圧手段の冷却部のうち昇温速度が比較的早い減圧手段を少なくとも1つ選択し、この選択された減圧手段の第1の電動機の回転数を上げると共に、アキュムレータに貯蔵されている冷媒を供給し、当該減圧手段の冷却部のみを選択的に冷却することを特徴とする請求項1記載の減圧システム。
【請求項3】
前記制御手段は、各減圧手段の冷却部における単位時間当たり温度上昇速度を算出し、第2の電動機の作動を再開させ、第1の閾値に到達する時間の早いものから順次第1の電動機の作動を再開することを特徴とする請求項1または請求項2記載の減圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の電動機により駆動部を作動させ、第1の電動機の回転数に対応して冷却部を所定温度に冷却してこの冷却部にて冷媒を膨張させて気体を捕捉する複数の減圧手段と、第2の電動機により圧縮部を作動させてこの圧縮部で圧縮した冷媒を第2の電動機の回転速度に応じた流量で各減圧手段に夫々供給する単一の圧縮手段と、各減圧手段の冷却部の温度を夫々測定する測定手段とを備える減圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高真空領域の圧力まで真空排気する真空ポンプの一つにクライオポンプユニットがあり、このようなクライオポンプユニットは例えば特許文献1で知られている。
図5(a)及び(b)を参照して、クライオポンプユニットは、真空チャンバ等の減圧対象物WにゲートバルブGVを介して装着される筒型のポンプケース1に内蔵される機械式冷凍機Cp(減圧手段)と、減圧対象物W外に設けられて機械式冷凍機Cpのヘリウム出入口21i,21oを介して冷媒としてのヘリウムガスを循環する、図示省略の第2に電動機を有する圧縮機Cm(圧縮手段)とで構成されている。機械式冷凍機Cpは、冷却部としてのコールドヘッド1段22とコールドヘッド2段23とを備え、コールドヘッド1段22にはポンプケース1の内側に沿った筒型のシールド22aが取り付けられると共に、コールドヘッド2段23にはクライオパネル23aが取り付けられ、シールド22aの開口部にはコールドヘッド1段22と同温度に冷却されるバッフル22bが設けられている。
【0003】
コールドヘッド1段22及びコールドヘッド2段23の内部には、
図5(b)に示す如く、1段蓄冷器24と1段膨張室25、及び、2段蓄冷器26と2段膨張室27を備える、駆動部としてのディスプレーサー28がモータ等の第1の電動機3により往復動自在に設けられる。そして、高圧バルブ41を開いて圧縮されたヘリウムガスを圧縮機Cmからディスプレーサー28へ送り込んだ後、各膨張室25,27を膨張させるように移動させると、各蓄冷器24,26で冷却されながら高圧ガスが各膨張室25,27に流入する。次に、高圧バルブ41を閉じて低圧バルブ42を開き、各膨張室25,27を縮小するようにディスプレーサー28を移動させると、膨張室25,27のヘリウムガスは膨張で蓄冷器24,26を冷却しながら圧縮機Cmへと戻る。これにより、減圧対象物W内に存在するガス分子のうち、凝縮温度の高いH
2Oなどは80Kのバッフル22bやシールド22aに凝縮し、凝縮温度の低いAr、N
2などは12〜13Kのクライオパネル23aに凝縮して排気される。
【0004】
コールドヘッド1段22及びコールドヘッド2段23には温度センサTCが夫々設けられ、温度センサTCの検出温度に応じて第1及び第2の両電動機の作動が制御される。そして、例えばクラスターツールのような真空処理装置では、処理や搬送に利用される真空処理室や真空搬送室の数だけ減圧手段が必要となることから、真空処理装置の省スペース化等のため、真空処理室や真空搬送室に装着された複数台の機械式冷凍機に対して単一の圧縮機によりヘリウムガスを供給する減圧システムとして構築することが一般である。
【0005】
ところで、近年では、上述の真空処理装置に対しても省エネルギ化が強く求められ、この省エネルギ化には減圧システム自体の省エネルギ化が不可欠となる。然し、上記従来例の減圧システムでは、単一の圧縮手段により同等の流量で各減圧手段に冷媒を供給すると共に、各減圧手段の駆動部を一律に連続作動させていたため、減圧システム自体の省エネルギ化を図るのに妨げとなっていた。つまり、減圧手段が装着されている真空処理室毎に、内部で行われる処理(加熱処理、プラズマ処理や冷却処理)や内部環境(減圧手段への入熱等)に応じて、求められる排気性能(冷却部の冷却性能を含む)が異なるにもかかわらず、一律に冷媒を供給する等のため、減圧手段によっては必要以上の冷媒が供給されたり、または、冷媒供給が不足し、全ての減圧手段が求められる排気性能を発揮させるための運転時間が長くなり、その結果、消費電力が多くなって省エネルギ化を図るのに妨げとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−298966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、消費電力を削減して省エネルギ化を図ることができる減圧システムを提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第1の電動機により駆動部を作動させ、第1の電動機の回転数に対応して冷却部を所定温度に冷却してこの冷却部にて冷媒を膨張させて気体を捕捉する複数の減圧手段と、第2の電動機により圧縮部を作動させてこの圧縮部で圧縮した冷媒を第2の電動機の回転速度に応じた流量で各減圧手段に夫々供給する単一の圧縮手段と、各減圧手段の冷却部の温度を夫々測定する測定手段とを備える本発明の減圧システムは、第1の閾値と、この第1の閾値より低い第2の閾値との間に冷却部の温度が保持されるように第1及び第2の両電動機の作動を夫々制御する制御手段を備え、制御手段は、第1及び第2の両電動機を作動させて各減圧手段の冷却部の温度が第1の閾値から第2の閾値に達するまでの間で、各減圧手段の冷却部のうち最も降温速度が遅い一の減圧手段を選択し、残りの減圧手段の第1の電動機の回転数を夫々下げ、各減圧手段の冷却部が第2の閾値に夫々達すると、全ての減圧手段の第1の電動機を夫々作動停止させることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、減圧手段のいずれかが第1の閾値より高い温度になってその冷却部の冷却が必要になると、圧縮手段の第2の電動機が作動して各減圧手段の冷却部への冷媒供給が再開されると共に、各減圧手段の第1の電動機が夫々作動する。ここで、減圧手段が夫々装着されている真空処理室毎に、内部で行われる処理や内部環境により各減圧手段の冷却部の降温速度が異なる。そこで、各減圧手段の冷却部のうち最も降温速度が遅い一の減圧手段を選択し、残りの減圧手段の第1の電動機の回転数を夫々下げることで、降温速度が最も遅いものには、優先的に冷媒を供給し、比較的降温速度が速いものに供給される冷媒の供給量が少なくなることで、各減圧手段の冷却部での降温速度が平均化される。このとき、第1の電動機の回転数を下げる分だけ、消費電力が削減され、しかも、降温速度が最も遅いものを早期に第2の閾値まで降温できるため、全体の運転時間も短くなり、その分だけ更に消費電力が削減される。なお、本発明において、「電動機の回転数を下げる」には、回転数がゼロとなる電動機の作動停止を含む。
【0010】
ところで、各減圧手段が夫々装着される真空処理室では、通常、一定の処理が繰り返し行われることから、その減圧装置では、第1の閾値から第2の閾値までどのように温度降下し、更に、第1及び第2の両電動機を停止した後、第1の閾値まで温度上昇するかが判る。このため、減圧手段毎に、単位時間当たりの温度下降速度及び温度上昇速度を予め測定して制御手段に記憶させておき、これに応じて、各減圧手段の第1の電動機の作動を制御するようにすれば、例えば、各第1の電動機をオンオフ制御して、各減圧手段の冷却部での降温速度を平均化させることも可能となり、消費電力の更なる削減が可能となる。この場合、第1の電動機をACモータとし、インバータを設けて回転数制御するものと比較してコスト面でも有利となる。
【0011】
本発明においては、圧縮した冷媒を貯蔵するアキュムレータを更に備え、前記制御手段は、全ての第1電動機が作動停止された後、このアキュムレータに所定体積の冷媒が貯蔵されると、第2の電動機の回転数を低下させ、この状態で各減圧手段の冷却部が昇温したとき、各減圧手段の冷却部のうち昇温速度が比較的早い減圧手段を少なくとも1つ選択し、この選択された減圧手段の第1の電動機の回転数を上げると共に、アキュムレータに貯蔵されている冷媒を供給し、当該減圧手段の冷却部のみを選択的に冷却することが好ましい。これによれば、選択されていない減圧手段の第1の電動機の作動開始を遅らせることができると共に、第2の電動機の作動をも遅らせることができ、更なる消費電力の削減が可能となる。なお、貯蔵されている冷媒がなくなると、例えば、当該減圧手段の第1の電動機の回転数を再度下げ、各減圧手段の冷却部の第2の閾値より高くなると、第1及び第2の両電動機を再度作動させればよい。
【0012】
また、本発明においては、前記制御手段は、各減圧手段の冷却部における単位時間当たり温度上昇速度を算出し、第2の電動機の作動を再開させ、第1の閾値に到達する時間の早いものから順次第1の電動機の作動を再開することが好ましい。これによれば、第2の閾値から第1の閾値まで温度上昇する際、各減圧手段の第1の電動機の作動開始を個別に遅らせることができ、更なる消費電力の削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の減圧システムの構成を模式的に示す図。
【
図2】従来例に相当する減圧システムの作動手順を説明する図。
【
図3】本発明での減圧システムの作動手順を説明する図。
【
図4】本発明の変形例に係る減圧システムの作動手順の一部を説明する図。
【
図5】(a)は、減圧手段としてのクライオポンプユニットの構成を説明する図。(b)は、その要部の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、減圧手段を機械式冷凍機とし、機械式冷凍機の複数台に単一の圧縮手段としての圧縮機を用いてヘリウムを供給するように構成した減圧システムを例に本発明の実施形態を説明する。以下においては、上記従来例のものと同一の部材、要素については同一の符号を用いるものとする。
【0015】
図1を参照して、PSは、本実施形態の減圧システムであり、減圧システムPSは、複数台の機械式冷凍機Cpと、各機械式冷凍機Cpにヘリウムガス(冷媒)を供給する圧縮機Cmと、圧縮機Cmと各機械式冷凍機Cpのガス流入口21iとの間に介設されて、圧縮されたヘリウムガスを一旦貯蔵する高圧側アキュムレータ5と、各機械式冷凍機Cpのガス流出口21oからのヘリウムガスが合流する低圧側アキュムレータ6と、各機械式冷凍機Cpに夫々備えられた温度センサTCと、各機械式冷凍機Cp及び圧縮機Cmの作動を統括制御する制御手段Cuとを備える。
【0016】
なお、本実施形態において、機械式冷凍機Cpのうち、コールドヘッド1段22とコールドヘッド2段23とで構成されるものが冷却部、モータ等の第1の電動機3により往復動自在に設けられるディスプレーサー28が駆動部を構成する。第1の電動機3としては、DCモータやACモータ等公知のものが利用でき、ACモータを用いる場合には、図示省略のインバータ回路を設けてインバータ回路によりACモータへの出力周波数を変化させてその回転数を変えるようにしてもよい。そして、第1の電動機3によりディスプレーサー28を作動し、第1の電動機3の回転数に対応してコールドヘッド1段22とコールドヘッド2段23とが所定温度に夫々冷却され、冷媒たるヘリウムガスを膨張させて減圧対象物W内に存する気体が捕捉される。
【0017】
圧縮機Cmとしては公知のものが利用でき、第2の電動機71により圧縮部72を作動させてこの圧縮部72で圧縮したヘリウムガスを第2の電動機71の回転速度に応じた流量で高圧側アキュムレータ5に圧縮されたヘリウムガスを供給する。第2の電動機71としては、DCモータやACモータ等公知のものが利用でき、上記同様、ACモータを用いる場合には、図示省略のインバータ回路を設けてインバータ回路によりACモータへの出力周波数を変化させてその回転数を変えるようにしてもよい。高圧側アキュムレータ5は、後述するように、特定の第1の電動機3のみを作動させるとき、その冷却部22,23に供給するのに必要な量のヘリウムを貯蔵できる容積を有する。制御手段Cuは、マイクロコンピュータ、シーケンサ、メモリ等を備えた公知のものであり、第1及び第2の各電動機3,71の作動等を統括制御したり、温度センサTCからの出力が入力されたりするようになっている。以下に、
図2及び
図3を参照して、減圧システムPSの作動手順を具体的に説明する。
【0018】
減圧対象物W内に存在するガス分子のうち、凝縮温度の高いH
2Oなどをバッフル22bやシールド22aに凝縮させる場合を例に説明すると、制御手段Cuのメモリ(図示せず)には、バッフル22bやシールド22aの冷却の温度(80K)を基準とし、この温度より高い所定温度を第1の閾値T1と、この温度より高い所定温度を第2の閾値T2とが予め設定されている。そして、第1の電動機3と第2の電動機71とを作動し、各機械式冷凍機Cpの冷却部22,23の冷却を行う。次に、温度センサTCの検出温度が第1の閾値T1から降温して第2の閾値T2より低くなると、第1の電動機3と第2の電動機71とが夫々作動停止される。そして、温度センサTCの検出温度が第1の閾値T1より再び高くなると、第1の電動機3と第2の電動機71との作動が夫々再開される。
【0019】
ここで、
図2に示すように、単一の圧縮機Cmにより略同等の流量で各機械的冷凍機Cpにヘリウムを供給する場合、冷却部22,23を第1の閾値T1から第2の閾値T2まで冷却するまでの間、各機械的冷凍機Cpが夫々装着されている減圧対象物Wの内部で行われる処理や内部環境によっては、冷却速度(
図2中、線a、b、cで示すもの)が互いに異なる。具体的には、減圧対象物W内で加熱処理が行われ、その内部が比較的高い温度(例えば、415℃)となっている場合には、線aの如く、その冷却速度が遅い一方で、その内部が比較的低い温度(例えば、室温)となっている場合には、線cの如く、その冷却速度が速く、早期に第2の閾値T2に達することになる。この場合、全ての機械的冷凍機Cpにてその温度センサTCの検出温度が第2の閾値T2より低くならないと、第1の電動機3と第2の電動機71とを作動停止しないのでは、省エネルギ化を図ることができない。
【0020】
そこで、本実施形態では、制御手段Cuのメモリに、減圧対象物Wの所定環境下にて第1の電動機3と第2の電動機71とを作動させて第1の閾値T1から第2の閾値T2まで冷却部22,23を冷却する場合の単位時間当たりの降温速度を機械的冷凍機Cp毎に夫々測定して予めデータとして記憶させておく。なお、「予め」とは、例えば事前の検証によって得られた結果を用いてもよいし、または、第1の閾値T1から第2の閾値T2に到達するまでの降温速度を参照して判断してもよい。いずれかの機械的冷凍機Cpが第1の閾値T1を超えた温度になった後、第1の電動機3と第2の電動機71とを作動させて機械的冷凍機Cpの冷却部22,23を更に冷却する場合、制御手段Cuは、上記データから最も降温速度が遅い一の機械的冷凍機Cp(例えば、
図2中、線aのもの)を選択する。そして、残りの機械的冷凍機Cp(
図2中、線b及びcのもの)の第1の電動機を夫々断続的にオンオフ制御する。
【0021】
残りの機械的冷凍機Cpの各第1の電動機3を夫々オンオフ制御する時間は、予め取得したデータと、最も降温速度が遅い一の機械的冷凍機Cpの降温速度とから予め算出してプログラムしておくことができ、また、最も降温速度が遅い一の機械的冷凍機Cpの冷却部22,23の温度センサTCの出力に応じて、残りの機械的冷凍機Cpの各第1の電動機3をオンオフ制御することができる。これにより、
図3に示すように、降温速度が最も遅いものには、優先的に冷媒が供給されるため、当該機械的冷凍機Cpの冷却部22,23は早期に降温し(
図3中、線a’で示すもの)、残りの機械的冷凍機Cpの冷却部22,23が階段状に降温していき((
図3中、線b’及び線c’で示すもの)、その結果、各機械的冷凍機Cpの冷却部22,23での降温速度が平均化される。
【0022】
次に、全ての機械的冷凍機Cpにてその温度センサTCの検出温度が第2の閾値T2より低くなると、全ての第1の電動機3が作動停止された後、高圧側アキュムレータ5に所定体積の圧縮されたヘリウムが貯蔵されると、第2の電動機71が作動停止される。この状態で放置すると、各機械的冷凍機Cpへの入熱等により冷却部22,23が昇温していく。ここで、
図2に示すように、減圧対象物Wの内部が比較的高い温度(例えば、415℃)である場合、線aの如く、その昇温速度も速く、早期に第1の閾値T1まで冷却部22,23が温度上昇し、これでは、第1の電動機3と第2の電動機71とを作動停止させている時間が短くなってしまう。
【0023】
そこで、減圧対象物Wの所定環境下にて第2の閾値T2から第1の閾値T1まで冷却部22,23を昇温する場合の単位時間当たりの昇温速度を機械的冷凍機Cp毎に夫々測定して予めデータとして記憶されておく。そして、各機械的冷凍機Cpの冷却部22,23が昇温したとき、制御手段Cuは、各機械的冷凍機Cpの冷却部のうち昇温速度が比較的早いもの(
図2中、線aのもの)を選択し、この選択された機械的冷凍機Cpの第1の電動機3のみの作動を再開すると共に、高圧側アキュムレータ5に貯蔵されているヘリウムを供給し、当該機械的冷凍機Cpの冷却部22,23のみを選択的に一旦冷却するようにした。これにより、
図3中、線a’で示すように、第1の閾値T1に到達するまでの時間を長くすることができる。なお、作動再開する第1の電動機3の数は、高圧側アキュムレータ5に貯蔵されているヘリウム量等を考慮して適宜設定することができる。そして、各機械的冷凍機Cpの冷却部22,23が更に昇温したとき、制御手段Cuは、温度センサTCの測定温度から、各機械的冷凍機Cpの冷却部22,23における単位時間当たり温度上昇速度を算出し、第1の閾値に到達する時間の早いものから、当該第1の閾値に到達する前に順次第1の電動機3の作動を再開する。以降、減圧システムPSの運転中、上記操作を繰り返して、第1の閾値T1と、この第1の閾値より低い第2の閾値T2との間に各機械的冷凍機Cpの冷却部22,23の温度が夫々保持されるように第1の電動機3と第2の電動機71との作動が夫々制御される。なお、各機械的冷凍機Cpの冷却部22,23は、その経時変化によりその排気能力が劣化していくのが一般である。このため、例えば冷却部22,23の作動時間に応じて、第1の電動機3をオンオフ制御する時間を変えるようにしてもよい。
【0024】
以上によれば、各機械的冷凍機Cpのいずれかが第1の閾値T1より高い温度になってその冷却部22,23の冷却が必要になると、圧縮機Cmの第2の電動機71が作動して各機械的冷凍機Cpの冷却部22,23にヘリウムが夫々供給されると共に、各機械的冷凍機Cpの第1の電動機3が夫々作動される。そして、各機械的冷凍機Cpの冷却部22,23のうち最も降温速度が遅い一の機械的冷凍機Cpを選択し、残りの機械的冷凍機Cpの第1の電動機3をオンオフ制御することで、降温速度が最も遅いものには、優先的に冷媒を供給されて、各冷却部22,23での降温速度が平均化される。このとき、第1の電動機3を作動停止している分だけ、消費電力が削減され、しかも、降温速度が最も遅いものを早期に第2の閾値まで降温できるため、全体の運転時間も短くなり、その分だけ更に消費電力が削減される。また、第1の電動機3を断続的にオンオフ制御するものであるため、インバータを設けて回転数制御するものと比較してコスト面でも有利となる。
【0025】
更に、第1及び第2の両電動機3,71が停止された後、各機械的冷凍機Cpが昇温する際、各機械的冷凍機Cpの冷却部のうち降温速度が比較的早い減圧手段を少なくとも1つ選択し、この選択された機械的冷凍機Cpの第1の電動機3のみを一旦オンし、高圧側アキュムレータ5に貯蔵されているヘリウムにより一時的に当該機械的冷凍機Cpの冷却部22,23のみを選択的に冷却するため、選択されていない各機械的冷凍機Cpの第1の電動機3の作動開始を遅らせることができると共に、第2の電動機71の作動をも遅らせることができ、更なる消費電力の削減が可能となる。なお、貯蔵されているヘリウムがなくなると、例えば、当該機械的冷凍機Cpの第1の電動機3をオフし、各機械的冷凍機Cpの冷却部22,23の第2の閾値H
2より高くなると、第1及び第2の両電動機3,71を再度作動させればよい。また、第1の閾値T1に到達する時間の早いものから順次第1の電動機3の作動を再開するため、第2の閾値T2から第1の閾値T1まで温度上昇する際、各機械的冷凍機Cpの第1の電動機3の作動開始を個別に遅らせることができ、更なる消費電力の削減が可能となる。
【0026】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記のもの限定されるものではない。本発明では、第1及び第2の両電動機3,71をオンオフ制御するものを例に説明したが、両電動機をACモータとし、インバータを設けて回転数を変化させて消費電力を削減するような場合にも当然に本発明は適用することができる。また、上記実施形態では、減圧手段としてクライオンポンプたる機械式冷凍機を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、真空チャンバに設けるクライオパネル等にも本発明を適用することができる。
【0027】
更に、上記実施形態では、制御手段Cuのメモリに予めデータとして記憶させたものに基づき第1の電動機3と第2の電動機71との作動を夫々制御するものを例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、減圧対象物Wの所定環境下にて第1の電動機3と第2の電動機71とを作動させて第1の閾値T1から第2の閾値T2まで各機械的冷凍機Cpの冷却部22,23を冷却する場合、各機械的冷凍機Cpの冷却部22,23毎の温度をリアルタイムに測定し、この測定値に応じて第1の電動機3と第2の電動機71との作動を適宜制御するようにしてもよい。
図4を参照して、2個の機械的冷凍機Cpの作動を制御する場合を例に説明すると、制御手段Cuは、冷却開始当初の所定時間において、各機械的冷凍機Cpのうち、上記測定値から定まる降温速度が最も遅い一の機械的冷凍機Cp(例えば、
図4中、線dのもの)を選択する。そして、他の機械的冷凍機Cp(
図4中、線eのもの)の第1の電動機3を断続的にオンオフ制御し、各冷却部22,23での降温速度を平均化する。
【0028】
ここで、上記のように各機械的冷凍機Cpの第1の電動機3をオンオフ制御する間に、他の機械的冷凍機Cpの冷却が行われないことで、その測定値が、一の機械的冷凍機Cpの測定温度を超え、最も降温速度が遅い機械的冷凍機Cpの選択が切り替わってしまう不具合が生じる虞がある。この場合、本来最も降温速度が遅い一の機械的冷凍機Cpに冷媒が供給されなくなり、不適である。そこで、上記他の機械的冷凍機Cpの測定温度が、制御手段Cuにより最初に決定された最も降温速度が遅い一の機械的冷凍機Cpの測定を超えないようにオンオフ制御されることが好ましい(
図4参照)。
【0029】
具体的には、オンオフ制御は、機器の応答速度を適宜考慮して、例えば、一の機械的冷凍機Cpの測定温度と他の機械的冷凍機Cpの測定温度との差が−5℃になると、第1の電動機3をオフし、一の機械的冷凍機Cpの測定温度と他の機械的冷凍機Cpの測定温度との差が−1℃になると、第1の電動機3をオンすればよい。これにより、降温速度が最も遅いものには、優先的に冷媒が供給されるため、当該一の機械的冷凍機Cpの冷却部22,23は早期に降温し(
図4中、線dで示すもの)、他の機械的冷凍機Cpの冷却部22,23は、一の機械的冷凍機Cpの冷却部22,23より高い温度になることなく、階段状に降温していき((
図4中、線eで示すもの)、その結果、各機械的冷凍機Cpの冷却部22,23での降温速度が確実に平均化される。
【符号の説明】
【0030】
PS…減圧システム、Cp…機械式冷凍機(減圧手段)、Cm…圧縮機(圧縮手段)、22…コールドヘッド1段(冷却部)、23…コールドヘッド2段(冷却部)、28…ディスプレーサー(駆動部)、3…第1の電動機、5…高圧側アキュムレータ(アキュムレータ)、第1の電動機、71…第2の電動機、72…圧縮部、TC…温度センサ(測定手段)。Cu…制御手段、T1…第1の閾値、T2…第2の閾値。