(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5978082
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】立体画像撮影装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
G03B 35/08 20060101AFI20160817BHJP
G03B 35/24 20060101ALI20160817BHJP
G03B 15/00 20060101ALI20160817BHJP
G03B 35/00 20060101ALI20160817BHJP
H04N 13/02 20060101ALI20160817BHJP
G02B 27/22 20060101ALN20160817BHJP
【FI】
G03B35/08
G03B35/24
G03B15/00 B
G03B35/00 A
H04N13/02
!G02B27/22
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-205728(P2012-205728)
(22)【出願日】2012年9月19日
(65)【公開番号】特開2014-59509(P2014-59509A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年8月3日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、総務省、戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)委託研究「複合撮像面による空間情報取得システムの研究開発」、産業技術力強化法第19条の規定の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】洗井 淳
(72)【発明者】
【氏名】三浦 雅人
(72)【発明者】
【氏名】日浦 人誌
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 久幸
(72)【発明者】
【氏名】三科 智之
【審査官】
井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−177727(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0190024(US,A1)
【文献】
特開2012−142918(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0154651(US,A1)
【文献】
特開2011−043581(JP,A)
【文献】
特開2000−249905(JP,A)
【文献】
特開平05−088073(JP,A)
【文献】
特表2012−525028(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02244484(EP,A1)
【文献】
特開2009−020403(JP,A)
【文献】
特開2009−69704(JP,A)
【文献】
特開2009−244662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 35/08
G03B 15/00
G03B 35/00
G03B 35/24
H04N 13/02
G02B 27/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インテグラルフォトグラフィ方式により、被写体の要素画像群を撮影する立体画像撮影装置であって、
複数の光学素子が二次元状に配置された光学素子アレイと、
前記被写体と前記光学素子アレイとの間に配置された対物光学系と、
前記対物光学系及び前記光学素子アレイを通過した被写体からの光を、前記要素画像群として撮影する撮影手段と、を備え、
前記対物光学系は、有効口径Ωが、
前記要素画像の範囲w
cと、予め設定された前記光学素子のピッチp
cと、前記対物光学系から前記光学素子アレイまでの距離z
2と、予め設定された前記光学素子アレイから前記撮影手段までの距離d
cとが含まれる式(1)及び式(2)で表されることを特徴とする立体画像撮影装置。
【数1】
【数2】
【請求項2】
前記対物光学系の開口が前記有効口径Ωに等しくなるように、当該対物光学系を遮蔽する絞り機構、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の立体画像撮影装置。
【請求項3】
前記対物光学系に設けられた、当該対物光学系の焦点距離を計測するエンコーダと、
前記対物光学系から前記被写体までの距離を計測する距離計測手段と、
前記エンコーダで計測された焦点距離及び前記距離計測手段で計測された距離に基づいて、前記対物光学系から前記光学素子アレイまでの距離z2を算出すると共に、前記式(1)及び前記式(2)により前記有効口径Ωを算出し、算出した前記有効口径Ωに前記対物光学系の開口が等しくなるように前記絞り機構を制御する絞り制御手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の立体画像撮影装置。
【請求項4】
請求項3に記載の立体画像撮影装置における立体画像撮影方法であって、
絞り制御手段が、前記光学素子アレイから前記撮影手段までの距離dcと、前記光学素子のピッチpcとが予め設定される設定ステップと、
前記絞り制御手段が、前記被写体から前記対物光学系までの距離と、前記対物光学系の焦点距離とが入力される入力ステップと、
前記絞り制御手段が、前記焦点距離及び前記対物光学系から前記被写体までの距離に基づいて、前記対物光学系から前記光学素子アレイまでの距離z2を算出すると共に、式(1)で表される前記要素画像の範囲wcを算出する距離・範囲算出ステップと、
前記絞り制御手段が、前記距離・範囲算出ステップで算出された距離z2及び要素画像の範囲wcに基づいて、式(2)で表される前記有効口径Ωを算出する有効口径算出ステップと、
前記絞り制御手段が、前記有効口径算出ステップで算出された有効口径Ωに前記対物光学系の開口が等しくなるように絞り機構を制御する絞り制御ステップと、
撮影手段が、前記対物光学系及び前記光学素子アレイを通過した被写体からの光を、要素画像群として撮影する撮影ステップと、
を順に備えることを特徴とする立体画像撮影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インテグラルフォトグラフィ方式により、被写体の要素画像群を撮影する立体画像撮影装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
任意の視点から自由に立体映像を視聴することが可能な立体画像表示方式の一つとして、平面状に配列された凸レンズ群あるいはピンホール群を利用したインテグラルフォトグラフィ(Integral Photography:以下IP)方式が知られている。従来から、IP方式の立体画像撮影装置において、光の漏れ込みを防止するため、遮蔽板が広く利用されている(例えば、特許文献1,2)。
【0003】
図7を参照して、従来の立体画像撮影装置110について、説明する。
図7に示すように、立体画像撮影装置110は、IP方式で撮影を行うものであり、光学素子アレイ111と、撮像素子112と、遮蔽板113とを備える。
また、
図7には、角柱状の被写体114Aと、円柱状の被写体114Bとを図示した。
【0004】
光学素子アレイ111は、凸レンズ等の光学素子111aを同一平面上に配列したものである。
撮像素子112は、CCD(Charge Coupled Device)等の動画像を撮像可能な素子である。また、撮像素子112の代わりに、通常の写真フィルムを用いることもできる。
遮蔽板113は、光学素子アレイ111を構成する光学素子111aの間で、光の漏れ込みを防止するものである。
【0005】
この立体画像撮影装置110は、光学素子アレイ111を通して被写体114A,114Bを撮影する。撮影方向116から見て、上側に位置する被写体114Aからの光は、遮蔽板113で遮蔽され、撮像素子112の下側には到達しない。これと同様、下側に位置する被写体114Bからの光は、遮蔽板113で遮蔽され、撮像素子112の上側には到達しない。従って、撮像素子112の上側では被写体114Aの像が撮影され、撮像素子112の下側では被写体114Bの像が撮影されることになる。このように、撮像素子112では、光学素子アレイ111を構成する光学素子111aと同じ数の要素画像115a(つまり、要素画像群115)が撮影される。そして、立体画像撮影装置110は、遮蔽板113が光の漏れ込みを防止できるため、立体画像の高画質化を実現できる。
【0006】
なお、
図7では、遮蔽板113で遮蔽された被写体114A、114Bからの光を破線で図示した。また、遮蔽板113で遮蔽されず、被写体114A、114Bから撮像素子112に到達した光を実線で図示した。
【0007】
図8を参照して、従来の立体画像表示装置120について、説明する(適宜
図7参照)。
図8に示すように、立体画像表示装置120は、IP方式で表示を行うものであり、光学素子アレイ121と、表示素子122と、遮蔽板123とを備える。
また、
図8には、被写体114Aに対応する立体像124Aと、被写体114Bに対応する立体像124Bとを図示した。
【0008】
光学素子アレイ121は、凸レンズ等の光学素子121aを同一平面上に配列したものである。
表示素子122は、立体画像撮影装置110の撮像板112により撮影された要素画像群125を表示するものである。
遮蔽板123は、光学素子アレイ121を構成する光学素子121aの間で、光の漏れ込みを防止するものである。
【0009】
この結果、立体画像表示装置120は、立体像124A,124Bと表示素子122との距離が、
図7の被写体114A,114Bと撮像素子112との距離に等しくなるように、立体像124A,124Bを生成する。従って、観察方向126から見ると、立体像124A,124Bは、奥行きが反転した逆視像となる。
【0010】
そこで、前記した逆視像の問題を解決するための発明が提案されている(例えば、特許文献3)。この特許文献3に記載の発明は、
図7の立体画像撮影装置110で取得した情報に対して演算処理を行い、演算処理後の情報を
図8の立体画像表示装置120に入力し、最終的に正しい奥行きの立体像を生成するものである。
【0011】
さらに、
図9に示すように、被写体114A,114Bと光学素子アレイ111との間に、対物光学系117を備える立体画像撮影装置130も提案されている。
対物光学系117は、被写体114A,114Bの実像118A,118Bを光学素子アレイ111の付近に形成するものである。
これによって、立体画像撮影装置130は、被写体114A,114Bの撮影位置を奥行き方向で制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−300599号公報
【特許文献2】特開2006−53351号公報
【特許文献3】特開2007−114483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記したように、従来の立体画像撮影装置は、光学的な遮蔽板が必要となり、構成が複雑化するという問題がある。一方、従来の立体画像撮影装置が遮蔽板を備えない場合、光学素子間で光の漏れ込みが発生し、立体画像の高画質化を実現することができない。
【0014】
そこで、本発明は、前記した問題を解決し、構成が簡易で、高画質な立体画像を撮影できる立体画像撮影装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記した課題を解決するため、本願第1発明に係る立体画像撮影装置は、インテグラルフォトグラフィ方式により、被写体の要素画像群を撮影する立体画像撮影装置であって、複数の光学素子が二次元状に配置された光学素子アレイと、被写体と光学素子アレイとの間に配置された対物光学系と、撮影手段と、を備え、対物光学系は、有効口径Ωが、要素画像の範囲w
cと、予め設定された光学素子のピッチp
cと、対物光学系から光学素子アレイまでの距離z
2と、予め設定された光学素子アレイから撮影手段までの距離d
cとが含まれる式(1)及び式(2)で表されることを特徴とする。
【0016】
かかる構成によれば、立体画像撮影装置は、対物光学系が有効口径Ωであるため、要素画像群で隣接する要素画像を重複させず、かつ、要素画像の範囲を最大にすることができる。従って、立体画像撮影装置は、遮蔽板を備えることなく、撮影手段によって、対物光学系及び光学素子アレイを通過した被写体からの光を、光学素子間で漏れ込みを発生させずに、要素画像群として撮影することができる。
【0017】
また、本願第2発明に係る立体画像撮影装置は、対物光学系の開口が有効口径Ωに等しくなるように、対物光学系を遮蔽する絞り機構、をさらに備えることを特徴とする。
かかる構成によれば、立体画像撮影装置は、対物光学系から被写体までの距離z
1に応じて、対物光学系の有効口径Ωを手動で調整することができる。
【0018】
また、本願第3発明に係る立体画像撮影装置は、対物光学系に設けられた、対物光学系の焦点距離を計測するエンコーダと、対物光学系から被写体までの距離を計測する距離計測手段と、エンコーダで計測された焦点距離及び距離計測手段で計測された距離に基づいて、対物光学系から光学素子アレイまでの距離z
2を算出すると共に、式(1)及び式(2)により有効口径Ωを算出し、算出した有効口径Ωに対物光学系の開口が等しくなるように絞り機構を制御する絞り制御手段と、をさらに備えることを特徴とする。
かかる構成によれば、立体画像撮影装置は、対物光学系の焦点距離、及び、対物光学系から被写体までの距離に応じて、対物光学系の有効口径Ωを制御することができる。
【0019】
また、前記した課題を解決するため、本願第4発明に係る立体画像撮影方法は、本願第3発明に係る立体画像撮影装置における立体画像撮影方法であって、設定ステップと、入力ステップと、距離・範囲算出ステップと、有効口径算出ステップと、絞り制御ステップと、撮影ステップとを順に備えることを特徴とする。
【0020】
かかる方法によれば、立体画像撮影方法は、設定ステップにおいて、絞り制御手段が、光学素子アレイから撮影手段までの距離d
cと、光学素子のピッチp
cとが予め設定される。また、立体画像撮影方法は、入力ステップにおいて、絞り制御手段が、対物光学系から被写体までの距離と、対物光学系の焦点距離とが入力される。そして、立体画像撮影方法は、距離・範囲算出ステップによって、絞り制御手段が、焦点距離及び対物光学系から被写体までの距離に基づいて、対物光学系から光学素子アレイまでの距離z
2を算出すると共に、式(1)で表される要素画像の範囲w
cを算出する。
【0021】
また、立体画像撮影方法は、有効口径算出ステップにおいて、絞り制御手段が、距離・範囲算出ステップで算出された距離z
2及び要素画像の範囲w
cに基づいて、式(2)で表される有効口径Ωを算出する。そして、立体画像撮影方法は、絞り制御ステップにおいて、絞り制御手段が、有効口径算出ステップで算出された有効口径Ωに対物光学系の開口が等しくなるように絞り機構を制御する。
【0022】
このとき、対物光学系が有効口径Ωであるため、要素画像群で隣接する要素画像を重複させず、かつ、要素画像の範囲を最大にすることができる。従って、立体画像撮影方法では、遮蔽板を備えることなく、撮影ステップにおいて、対物光学系及び光学素子アレイを通過した被写体からの光を、光学素子間で漏れ込みを発生させずに、要素画像群として撮影することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
本願第1,4発明によれば、対物光学系が、要素画像を重複させず、かつ、要素画像の範囲を最大にできる有効口径を有する。従って、本願第1,4発明によれば、遮蔽板を備えずとも、光学素子間で光の漏れ込みを発生させないため、構成が簡易で、高画質な立体画像を撮影することができる。
【0024】
本願第2発明によれば、対物光学系から被写体までの距離に応じて、対物光学系の有効口径を手動で調整することができる。
本願第3発明によれば、対物光学系の焦点距離、及び、対物光学系から被写体までの距離に応じて、対物光学系の有効口径を自動的に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る立体画像撮影装置の構成を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態において、対物光学系の有効口径と光の漏れ込みとの関係を説明する説明図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る立体画像撮影装置の構成を示す概略構成図である。
【
図4】本発明の第3実施形態に係る立体画像撮影装置の構成を示す概略構成図である。
【
図5】
図4の絞り制御手段の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図4の立体画像撮影装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】従来の立体画像撮影装置の第1例を示す概略構成図である。
【
図8】従来の立体画像表示装置の構成を示す概略構成図である。
【
図9】従来の立体画像撮影装置の第2例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の各実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、説明を省略した。
【0027】
(第1実施形態)
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る立体画像撮影装置1の構成について、説明する。
図1に示すように、立体画像撮影装置1は、IP方式により、被写体14(14A,14B)の要素画像群15を撮影するものであって、対物光学系11と、光学素子アレイ12と、撮像素子(撮影手段)13とを備える。
【0028】
図1には、撮影対象となる角柱状の被写体14Aと、円柱状の被写体14Bとを図示した。これら被写体14(14A,14B)は、撮影方向16から見て、同一距離に配置されている。
また、
図1では、撮影方向16から見て、(−)が奥側を示し、(+)が手前側を示す。
【0029】
対物光学系11は、例えば、被写体14の実像(不図示)を光学素子アレイ12の付近に形成するものである。この対物光学系11は、対物光学系11から被写体14までの距離がz
1となるように、被写体14と光学素子アレイ12との間に配置されている。
【0030】
例えば、対物光学系11は、一枚の凸レンズであり、焦点距離fが一定となる。このため、対物光学系11から光学素子アレイ12までの距離z
2が一定となる。この対物光学系11は、後記するように、要素画像群15で隣接する要素画像15aが重複せず、かつ、要素画像の範囲w
cが最大になるような有効口径を有する。本実施形態では、対物光学系11は、有効口径がレンズ直径と等しいこととする。
【0031】
光学素子アレイ12は、光学素子12aを所定のピッチp
cで二次元状に配列したものである。また、光学素子アレイ12は、対物光学系11と撮像素子13との間に、それぞれに対向するように配置される。
光学素子12aは、例えば、凸レンズであり、対物光学系11を介して入射した被写体14の像(要素画像)15aを生成する。光学素子12aのピッチp
cは、任意の値を取り得る。また、光学素子12aは、ピッチp
cが微細な程、対物光学系11によって生成される被写体14の実像を細かくサンプリングすることができる。
【0032】
図1では、光学素子12aで生成された要素画像の範囲をw
cと図示した。実際には、光学素子12aで生成される要素画像の範囲w
cは、対物光学系11の開口の像の大きさと等価である。
【0033】
撮像素子13は、対物光学系11及び光学素子アレイ12を通過した被写体14からの光を、要素画像群15として撮影するものである。つまり、撮像素子13は、各光学素子12aが生成した被写体14の像(要素画像)15aを、要素画像群15として撮影する。
この撮像素子13は、光学素子アレイ12から撮像素子13までの距離がd
cとなるように、光学素子アレイ12に対向するように配置される。この距離d
cは、例えば、光学素子12aの焦点距離と等しい。
【0034】
この撮像素子13で撮影された要素画像群15は、
図8の立体画像表示装置120で表示することができる。また、要素画像群15は、遮蔽板を備えていない、一般的な立体画像表示装置で表示することもできる。
【0035】
<対物光学系の有効口径と光の漏れ込みとの関係>
図2を参照して、対物光学系11の有効口径と光の漏れ込みとの関係について、説明する。
図2では、光の漏れ込みを説明するため、有効口径Ωを有する対物光学系11(実線)と、有効口径ΩAを有する対物光学系11A(破線)と、有効口径ΩBを有する対物光学系11B(一点鎖線)とを図示した。
【0036】
図2に示すように、光学素子12aが生成する要素画像の範囲w
cは、下記の式(1)で表される。つまり、要素画像の範囲w
cは、対物光学系11から撮像素子13までの距離(距離z
2+距離d
c)と距離z
2との比にピッチp
cを乗じた値である。
【0038】
ここで、対物光学系11では、有効口径Ωが適切なため、実線で示す光線が、要素画像の範囲w
cと等価になる。従って、対物光学系11では、要素画像15aが重複しない範囲で、要素画像の範囲w
cを最大にすることができる。言い換えるなら、対物光学系11では、立体画像の高画質化を実現するのに、十分な大きさの要素画像15aを生成することができる。
なお、
図2において、要素画像の範囲w
cは、対物光学系11の有効口径がΩのときのものである。
【0039】
一方、対物光学系11Aでは、有効口径ΩAが大きいために、破線で示す光線が光学素子12a
0に入射し、要素画像の範囲w
cを超えることになる。また、光学素子12a
0に隣接する光学素子12aについても、同様のことが言える。つまり、対物光学系11Aでは、要素画像15aが重複し、立体画像の画質が劣化する。
【0040】
さらに、対物光学系11Bでは、有効口径ΩBが小さいために、一点鎖線で示す光線が光学素子12a
0に入射し、要素画像の範囲w
cより狭くなる。また、光学素子12a
0に隣接する光学素子12aについても、同様のことが言える。つまり、対物光学系11Bでは、要素画像15aが小さくなり、立体画像の画質が劣化する。
【0041】
ここで、対物光学系11の有効口径Ωは、下記の式(2)で表すことができる。つまり、有効口径Ωは、要素画像の範囲w
cと距離d
cとの比に距離z
2を乗じた値である。
【0043】
例えば、IP方式では、対物光学系11による被写体14の実像を、光学素子アレイ12付近に生成することが多い。従って、距離z
2は、距離z
1及び対物光学系11の焦点距離fに応じて定まる。具体的には、距離z
2は、下記の式(3)のように、距離z
1及び焦点距離fの積と、焦点距離f及び距離z
1を加算した値との比である。
【0045】
以上のように、本発明の第1実施形態に係る立体画像撮影装置1は、対物光学系11が式(1)〜式(3)で表される有効口径Ωを有する。これによって、立体画像撮影装置1は、遮蔽板を備えずとも、光学素子12aの間で光の漏れ込みを発生させず、構成が簡易で、高画質な立体画像を撮影することができる。
【0046】
(第2実施形態)
図3を参照して、本発明の第2実施形態に係る立体画像撮影装置1Bについて、第1実施形態と異なる点を説明する。
図3に示すように、立体画像撮影装置1Bは、対物光学系11の有効口径を手動で調整できる点が、第1実施形態と異なる。
【0047】
絞り機構20は、対物光学系11の開口が有効口径Ωに等しくなるように、対物光学系11を遮蔽するものであり、絞り羽21を備える。
絞り羽21は、対物光学系11の手前側レンズ面を遮蔽する複数の板である。つまり、絞り羽21が対物光学系11の光軸側に突出することで、対物光学系11の有効口径が小さくなる。一方、絞り羽21が対物光学系11の周縁側に引っ込むことで、対物光学系11の有効口径が大きくなる。
なお、
図3では、絞り機構20を上下2箇所に図示したが、これら絞り機構20は、対物光学系11の周縁に配置された同一機構である。
【0048】
本実施形態では、対物光学系11の有効口径は、手動で調整される。
例えば、立体画像撮影装置1Bは、対物光学系11及び絞り機構20を保持する鏡筒(不図示)を備える。また、前記した式(1)〜式(3)を用いて、距離z
1毎の有効口径を予め算出しておくと共に、この距離z
1を、鏡筒の絞りリング(不図示)に刻んでおく。そして、立体画像撮影装置1Bでは、撮影者が、実際の撮影対象となる被写体14Aから対物光学系11までの距離に合わせて絞りリングを回転させることで、対物光学系11の有効口径Ωとなるように、絞り羽21が駆動する。
【0049】
以上のように、本発明の第2実施形態に係る立体画像撮影装置1Bは、被写体14から対物光学系11までの距離z
1に応じて、対物光学系11の有効口径Ωを調整することができる。従って、立体画像撮影装置1Bは、第1実施形態と同様の効果に加えて、被写体14の位置が変化する場合でも、容易に撮影を行うことができる。
【0050】
(第3実施形態)
[立体画像撮影装置の構成]
図4を参照して、本発明の第3実施形態に係る立体画像撮影装置1Cについて、第2実施形態と異なる点を説明する。
立体画像撮影装置1Cは、対物光学系11の有効口径を自動的に制御できる点が、第2実施形態と異なる。
【0051】
図4に示すように、立体画像撮影装置1Cは、光学素子アレイ12と、撮像素子13と、対物光学系17とを備える。
対物光学系17は、ズームレンズのように焦点距離fが可変の光学系である。また、対物光学系17は、焦点距離fを計測するエンコーダ17A(
図5)を備え、エンコーダ17Aで計測された焦点距離fを絞り制御手段40に出力する。
【0052】
ここで、対物光学系17が複数のレンズで構成されるため、対物光学系17の光学主点が、距離z
1,距離z
2の基準となる。
また、ズームレンズには、レンズの種類及び枚数に様々な組み合わせが存在する。様々なズームレンズのうち、有効口径が式(1)〜式(3)を満たすものであれば、立体画像撮影装置1Cに適用可能である。
【0053】
絞り機構20は、絞り羽21と、絞り駆動手段22とを備える。
絞り駆動手段22は、絞り制御手段40から入力される制御信号に基づいて、絞り羽21を駆動するものである。例えば、絞り駆動手段22は、絞り羽21を対物光学系11の光軸側に突出させ又は周縁側に引っ込めるように、絞り羽21を駆動するモータである。
【0054】
距離計測手段30は、被写体14から対物光学系17までの距離z
1を計測するものである。例えば、距離計測手段30は、レーザや赤外線を用いた距離センサ、又は、ステレオカメラによる距離計測装置である。そして、距離計測手段30は、計測した距離z
1を絞り制御手段40に出力する。
【0055】
絞り制御手段40は、絞り機構20を制御するものであり、
図5に示すように、パラメータ設定手段41と、距離入力手段42と、レンズ情報入力手段43と、有効口径算出手段44と、制御信号出力手段45とを備える。
【0056】
パラメータ設定手段41は、撮影者が、距離d
c、ピッチp
c等のパラメータを設定するものである。
距離入力手段42は、距離計測手段30で計測された距離z
1が入力されるものである。
レンズ情報入力手段43は、レンズ情報として、エンコーダ17Aから焦点距離fが入力されるものである。
【0057】
有効口径算出手段44は、パラメータ(距離d
c及びピッチp
c)と、距離z
1と、レンズ情報(焦点距離f)とに基づいて、式(1)〜式(3)により有効口径Ωを算出するものである。
【0058】
まず、有効口径算出手段44は、距離入力手段42に入力された距離z
1と、レンズ情報入力手段43に入力された焦点距離fとを式(3)に代入して、距離z
2を算出する。次に、有効口径算出手段44は、式(3)の距離z
2と、パラメータ設定手段41に設定された距離d
c及びピッチp
cとを式(1)に代入して、要素画像の範囲w
cを算出する。さらに、有効口径算出手段44は、式(1)の要素画像の範囲w
cと、式(3)の距離z
2と、パラメータ設定手段41に設定された距離d
cとを式(2)に代入して、有効口径Ωを算出する。
【0059】
制御信号出力手段45は、対物光学系11の開口が有効口径Ωに等しくなるように絞り羽21を駆動する制御信号を生成するものである。そして、制御信号出力手段45は、生成した制御信号を絞り駆動手段22に出力する。
【0060】
[立体画像撮影装置の動作]
図6を参照して、立体画像撮影装置1Cの動作について、説明する(適宜
図4,
図5参照)。
立体画像撮影装置1Cは、絞り制御手段40のパラメータ設定手段41に、ピッチp
c及び距離d
cを設定する(ステップS1:設定ステップ)。
【0061】
立体画像撮影装置1Cは、絞り制御手段40の距離入力手段42によって、距離z
1が入力される。また、立体画像撮影装置1Cは、絞り制御手段40のレンズ情報入力手段43によって、エンコーダ17Aから焦点距離fが入力される(ステップS2:入力ステップ)。
【0062】
立体画像撮影装置1Cは、絞り制御手段40の有効口径算出手段44によって、式(3)で距離z
2を算出し、式(1)で要素画像の範囲w
cを算出する(ステップS3:距離・範囲算出ステップ)。
立体画像撮影装置1Cは、絞り制御手段40の有効口径算出手段44によって、式(2)で有効口径Ωを算出する(ステップS4:有効口径算出ステップ)。
【0063】
立体画像撮影装置1Cは、絞り制御手段40の制御信号出力手段45によって、制御信号を生成して、絞り駆動手段22に出力する。また、立体画像撮影装置1Cは、絞り駆動手段22によって、制御信号に基づいて、有効口径Ωに対物光学系17の開口が等しくなるように、絞り羽21を駆動する(ステップS5:絞り制御ステップ)。
立体画像撮影装置1Cは、撮像素子13によって、対物光学系17及び光学素子アレイ12を通過した被写体14からの光を、要素画像群15として撮影する(ステップS6:撮影ステップ)。
【0064】
指摘
以上のように、立体画像撮影装置1Cは、焦点距離f及び距離z
1に応じて、対物光学系17の有効口径Ωを自動的に制御できるため、容易に撮影を行うことができる。
【0065】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。
図1では、対物光学系11の有効口径がレンズ直径と等しいこととして説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、対物光学系11のレンズ直径が式(1)〜式(3)で表される有効口径よりも大きい場合、対物光学系11の周縁部を枠で遮蔽して、有効口径を調整してもよい。
また、対物光学系11が凸レンズであることとして説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、対物光学系11は、凹レンズ、屈折率分布レンズ、回折格子、又は、これらの組み合わせであってもよい。
また、光学素子12aが凸レンズであることとして説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、光学素子アレイ12は、微小開口からなる要素ピンホールを二次元状に配列した要素ピンホール群であってもよい。
また、撮像素子13が、映像信号を生成するCCDであることとして説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、立体画像撮影装置1Cは、撮像素子13の代わりに、撮影手段としての写真フィルムを備えてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1,1B,1C 立体画像撮影装置
11,17 対物光学系
17A エンコーダ
12 光学素子アレイ
12a 光学素子
13 撮像素子(撮影手段)
20 絞り機構
21 絞り羽
22 絞り駆動手段
30 距離計測手段
40 絞り制御手段
41 パラメータ設定手段
42 距離入力手段
43 レンズ情報入力手段
44 有効口径算出手段
45 制御信号出力手段