特許第5978204号(P5978204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5978204癌関連糖ペプチドエピトープ、抗体および使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5978204
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】癌関連糖ペプチドエピトープ、抗体および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20160817BHJP
   C12N 15/02 20060101ALN20160817BHJP
   A61K 39/00 20060101ALN20160817BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20160817BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20160817BHJP
   G01N 33/53 20060101ALN20160817BHJP
   G01N 33/577 20060101ALN20160817BHJP
   G01N 33/574 20060101ALN20160817BHJP
   G01N 33/564 20060101ALN20160817BHJP
   C07K 7/06 20060101ALN20160817BHJP
   C07K 5/103 20060101ALN20160817BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20160817BHJP
【FI】
   C07K7/08ZNA
   !C12N15/00 C
   !A61K39/00 H
   !A61K39/395 T
   !A61P35/00
   !G01N33/53 V
   !G01N33/53 N
   !G01N33/577 B
   !G01N33/574 Z
   !G01N33/564 Z
   !C07K7/06
   !C07K5/103
   !C12P21/08
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-506197(P2013-506197)
(86)(22)【出願日】2011年4月15日
(65)【公表番号】特表2013-532120(P2013-532120A)
(43)【公表日】2013年8月15日
(86)【国際出願番号】US2011032716
(87)【国際公開番号】WO2011133429
(87)【国際公開日】20111027
【審査請求日】2014年4月7日
(31)【優先権主張番号】61/325,480
(32)【優先日】2010年4月19日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(72)【発明者】
【氏名】西村 紳一郎
(72)【発明者】
【氏名】松下 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】三浦 嘉晃
【審査官】 濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−505775(JP,A)
【文献】 J. Am. Chem. Soc., (2009), Vol. 131, No. 47, p. 17102-17109
【文献】 Glycoconjugate Journal, (1998), Vol. 15, p. 37-49
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/00
A61K 39/395
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS(STN)
WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血清中の抗体を検出するかまたは定量するためのin vitro方法であって、前記抗体が内因性自己抗体または外因的に投与される抗体であり、以下の:
a)列番号1または配列番号2のT3において、2,3シアリルT抗原(23ST)のグリコシル化がされた、配列番号3または配列番号4からなる糖ペプチドを提供すること;
b)血清中の抗体と糖ペプチドとを結合させるのに十分な条件下で、ステップ(a)の糖ペプチドを血清試料と接触させること;ならびに
c)糖ペプチドとの血清試料中の抗体の結合を検出するかまたは定量すること
を包含し、前記内因性自己抗体または外因的投与抗体が糖ペプチドの2,3シアリルT抗原(23ST)グリコシル化により限定される組合せエピトープと特異的に結合し、前記自己抗体は健常固体の血清中に存在し、かつ前記自己抗体が正常健常固体と比較して乳癌、結腸癌又は腎臓癌の癌患者で低減されるかまたは存在しないことを特徴とする、方法。
【請求項2】
ヒトにおける癌の検出方法であって、以下の:
a)タンパク質配列番号1または配列番号2のT3において、2,3シアリルT抗原(23ST)のグリコシル化がされた、配列番号3または配列番号4からなる糖ペプチドを提供すること;
b)血清中の自己抗体と糖タンパク質とを結合させるのに十分な条件下で、ステップ(a)の糖ペプチドをヒト血清試料と接触させること;
c)血清試料中の自己抗体のレベルを確定すること;ならびに
d)乳癌、結腸癌又は腎臓癌の存在の指標として自己抗体レベルを正常自己抗体レベルと比較すること
を包含する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖ペプチドに関する。特に、本発明は、ムチン1(MUC1)に由来する糖ペプチドエピトープ、糖ペプチドエピトープを標的にする抗体、ならびに治療および診断方法におけるエピトープおよび抗体の使用を包含する。
(配列表の参照)
【0002】
「EZS0008-00P1 Sequence Listing_ST25.txt」(2010年4月13日作成;1,248バイト)として同定されるテキストファイル中に含有される記載内容は、参照により本明細書中に組入れられる。
【背景技術】
【0003】
ムチン1(MUC1)は、上皮、内皮および他の正常細胞型上に正常に発現される高O−グリコシル化タンパク質である。MUC1およびムチンファミリーの他の成員は、細胞表面の潤滑を提供し、細胞上の物理学的および生物学的攻撃に対するバリアとして役立つ。しかしながら、ヒト腫瘍においては、ムチンは、しばしば異所的に発現される。これは、腫瘍細胞の表面特性を変更することにより腫瘍進行の一因になると考えられる。MUC1は、ムチンの最良に特性化されたものの1つである。それは、細胞接着において一役を有し、細胞増殖に関与する種々のシグナル伝達タンパク質と相互作用することが示されている。
【0004】
MUC1は、乳房、唾液腺および肺の正常上皮細胞の先端表面に専ら局在する。そのタンパク質主鎖は、高グリコシル化領域および非グリコシル化領域の両方を有する。そのタンパク質コアは、各々20アミノ酸長の可変数タンデム反復(VNTR)を示す。炭水化物側鎖は、N−アセチルガラクトサミンとセリンまたはトレオニンの酸素原子との間のα結合により結合される。各VNTRは、グリコシル化のための5つの潜在的部位を含有する。
【0005】
ヒトは、一般的に、ヒトMUC1タンパク質コアおよびその正常糖型に対して免疫学的に寛容である。しかしながら、MUC1は多数の悪性腫瘍において上方調節される。さらに、癌関連MUC1は、グリコシル化不全であり(低グリコシル化され)、異常数の切頭化未成熟O−グリカン側鎖を示す。癌関連MUC1の炭水化物構造中の変化は、それを、正常組織で見出されるMUC1と構造的に区別する。低グリコシル化の結果として、炭水化物により正常に被覆されるタンパク質主鎖の領域は曝露されるようになり、癌関連分子を正常上皮に見出されるMUC1と抗原的に区別する。
【0006】
MUC1は多数の癌において過剰発現されるため、それは、癌患者、特に乳癌患者における再発または予後を検出するための血清マーカーとして用いられている。正常乳房上皮細胞と関連するMUC1糖型は、GalNAc残基の6−位での分枝により特性化されるコア2糖型である。これに対比して、乳癌では、コア1糖型が優勢である。コア1糖型は、GalNAcの6−位での分枝の欠如により特性化される。乳癌細胞が正常分枝鎖糖型を産生できないのは、コア2β 6−GlcNAcトランスフェラーゼ(C2GnT1)の発現の低減のためである。抗MUC1抗体も、このような癌の診断における免疫組織化学的マーカーとして用いられてきた。VNTRを含めてMUC1の異なる領域に対して向けられる抗MUC1抗体が既知である。
【0007】
MUC1に対する細胞性免疫応答は、癌患者において広範に特性化されている。悪性疾患におけるMUC1に対する体液性免疫応答も報告されており、乳癌における改善された結果と相関している。したがって、MUC1抗原を発現する腫瘍の処置に用いるための癌患者のための免疫療法に用いるためのMUC1およびMUC1ポリペプチドを基礎にした免疫原に対する抗体を開発することは関心事である。治療効果を改善するためにMUC1の癌関連糖型に特異的に向けられる細胞性および体液性免疫応答を引き出すことも関心事である。
【0008】
ヘプタペプチド配列Pro−Asp−Thr−Arg−Pro−Ala−Pro(PDTRPAP、配列番号1)は、MUC1のVNTRに由来し、そして抗KL−6モノクローナル抗体(抗KL−6MAb)により認識されるエピトープとして同定されている(Ohyabu, N.J., et al. Am. Chem. Soc. 2009; 131(47):
17102-9)。このエピトープのトレオニン残基は、Neu5Acアルファ2,3Galベータ1,3GalNAcアルファ(2,3シアリルT抗原または「23ST」、コア1型O−グリカン)により修飾される。抗体はエピトープ構造に特異的でなく、それは種々の種類の腫瘍由来MUC1糖タンパク質、ならびに間質性肺炎と関連する糖タンパク質バイオマーカーと相互作用すると、その著者等は報告している。さらに、エピトープの外側のトレオニン/セリン残基のグリコシル化は、抗体/エピトープ相互作用に強力に影響を及ぼした。
【0009】
GalNAcα1−O−Ser/Thr(Tn)およびNeuAcα2−6GalNAcα1−O−Ser/Thr(シアリル−TnまたはSTn)O−グリコシル化を伴うテトラペプチドGSTA(配列番号2)の2つの糖型も、VNTRに見出される癌特異的免疫優勢エピトープとして報告されている(Tarp, M.A., et al. Glycobiology
2007; 17(2): 197-209)。この糖型を基礎にしたワクチンは、ヒトMUC1トランスジェニックマウスおよび誘導化体液性免疫における寛容を無効にできた(Sorensen, A.L., et al. Glycobiology
2006; 16: 96-107)。
【0010】
さらに、MUC1に向けられる自己抗体は、健常者で、そして肺癌患者で報告されているが、しかしながら肺癌患者におけるレベルは正常個体の場合より有意に低い(Hirasawa, Y., et al. Am. J. Respir.
Crit. Care Med. 2000; 161: 589-594)。これらの著者は、高濃度の自己抗体を有する患者の1年生存率は低レベルの自己抗体を有する患者よりも有意に高く、これは自己抗体の低減度が患者の予後と関連し得ることを示唆する、ということも報告した。疾患の結果の指標である乳癌患者における自己抗体は、von Mensdorff-Pouilly,
S., et al. J. Clin. Oncology 2000; 18(3): 574-583によっても報告されている。この研究では、前処理血清中の抗体の検出は、有意の予後値を有し、生存における有意の利益に関連したが、これは、MUC1由来(糖)タンパク質を有する患者のワクチン接種が疾患の結果に影響し得る、ということを示唆している。しかしながら、この研究において、抗体のレベルが、健常女性より乳癌群および良性乳房腫瘍群で有意に高い、と著者等は報告した。
【0011】
したがって、異所性O−糖ペプチドエピトープに対する自己抗体は、癌の検出のためのバイオマーカーとして注目の的である。ヒト血清中のペプチドエピトープに対するIgG自己抗体を検出するための一試験における失敗に基づいて、自己抗体バイオマーカー発見戦略は、MUC1の癌関連異所性翻訳後修飾に向けられるべきである、ということが示唆されている。このような「O−糖ペプチド組合せエピトープ」は、ペプチド種さならびに癌関連翻訳後修飾ハプテン構造の両方を包含する(Wandall, H., et al. Cancer Res 2010; 70(4): 1306-13)。MUC1の異所的グリコシル化O−糖ペプチドドームは癌関連自己抗体のための標的の供給源として大きい可能性を有するが、しかし多数の異なる異所性O−グリカン構造と併合され得る数千の異なるMUC1由来O−糖タンパク質があり、そのいずれかは、癌の自己抗体ベースの検出のための有用な標的であると立証されることもされないこともある。このような発見は、癌関連切頭化炭水化物ハプテンに対する自然抗体の血清中の存在によりさらに難しくされる。治療用癌ワクチンとして用いるための、ならびに特異的治療用抗体を生成するための、さらなるMUC1由来O−糖ペプチド組合せエピトープおよびこのようなエピトープを含有する大型等ペプチドの開発が依然として必要とされている。このようなO−糖ペプチド組合せエピトープおよびそれらを標的にする抗体は、癌の存在または危険の評価のための診断および予後検定に用いためにも望ましい。本明細書中に開示される本発明は、これらの要求を満たす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、MUC1のVNTRに由来する癌関連O−糖ペプチド組合せエピトープを提供する。具体的には、これらのエピトープのグリコシル化は、単一トレオニン残基での2,3シアリル−T(23ST)に限定される。しかしながら、エピトープは、免疫原性を改善するために必要とされる場合、または他の目的のために、大型ペプチド内に含有される。エピトープは、ヒト血清中の自己抗体の標的である。本発明のエピトープに対して向けられる自己抗体は、健常個体において抗レベルで存在するが、しかしがん患者では低減されるかまたは存在しない。したがって、これらのエピトープは、健常個体での自己抗体の産生を引き出すことにより、ヒトにおける癌の発症を防止するのに重要な一役を果たす、と考えられる。組合せエピ等に向けられる血清自己抗体のレベルの低減は、多数の型の癌と関連づけられるが、しかし乳癌および結腸癌と特に関連する。
【0013】
O−糖ペプチド組合せエピトープおよびそれらを含有する大型ペプチドは、ヒト免疫応答を引き出すことにより癌を処置するための治療用組成物中で有用である。O−糖ペプチド組合せエピトープおよびそれらを含有する大型ペプチドは、癌患者の予後の指標としてヒト生物学的試料中の自己抗体のレベルを確定するために、健常個体において癌を発症する危険を評価するために、そして癌の存在または非存在の指標(すなわち、癌診断)として、診断組成物中でも有用である。さらに、これらのエピトープに対する特異的自己抗体の生成をモニタリングすることは、組合せエピトープを用いるワクチン処置の効力を評価するための方法を提供する。O−糖ペプチド組合せエピトープは、組合せエピトープに対して向けられるポリクローナル抗体、ならびに23ST−糖ペプチド組合せエピトープに特異的であるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの生成のためにも有用である。23ST−糖ペプチド組合せエピトープに対して特異的に向けられるモノクローナル抗体は、癌を処置するための治療用組成物中で、ならびに癌発症の危険を低減するための免疫予防用組成物中で有用である。このようなモノクローナル抗体組成物は、少なくとも正常レベル、好ましくは上記正常レベルに、O−糖ペプチド組合せエピトープに対して反応性である血液中の抗体のレベルを上げるために、血清自己抗体のレベルを低減して個体に投与される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】2つの組合せエピトープの構造を示す。
図2】癌の存在または非存在との配列番号3(T15−23ST)自己抗体レベルの関連を示す。
図3】癌の存在または非存在との配列番号4(T15−23ST)自己抗体レベルの関連を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のいくつかの例示的実施形態を説明する前に、本発明は、以下の説明に記述される構築または工程段階の詳細に限定されるものではない、と理解されるべきである。本発明は、他の実施形態を有し得るし、種々の方法で実施されまたは達成され得る。
【0016】
本明細書中で用いる場合、配列番号3(T15−23ST)という用語は、位置15トレオニンでの23STグリコシル化を含む配列番号3のアミノ酸配列を指す。同様に、配列番号4(T15−23ST)という用語は、位置15トレオニンでの23STグリコシル化を含む配列番号4のアミノ酸配列を指す。配列番号3(T15−23ST)および配列番号4(T15−23ST)は、図1に示されている。
【0017】
本明細書中で用いる場合、配列番号1(T3−23ST)という用語は、位置3トレオニンでの23STグリコシル化を含む配列番号1のアミノ酸配列を指す。同様に、配列番号2(T3−23ST)という用語は、位置3トレオニンでの23STグリコシル化を含む配列番号2のアミノ酸配列を指す。配列番号1(T3−23ST)および配列番号2(T3−23ST)は、図1に示されている。
【0018】
本明細書中で用いる場合、本発明の糖ペプチドに関連した「組合せエピトープ」という用語は、そのペプチド配列ならびにペプチド配列に連結されるグリカンの両方により限定される抗原性または免疫原性エピトープを指す。すなわち、組合せエピトープを特異的に結合する抗体は、エピトープのペプチドおよびグリカン部分の両方を認識する。このような抗体は、エピトープ単独のペプチド部分またはグリカン部分と実質的に結合しない。
【0019】
本明細書中で用いる場合、「血清」という用語は、凝固血液から分離される液体を指し、そして「血漿」という用語は、凝固を伴わない血液から分離される液体を指す。血清および血漿はともに、取り出される血液の細胞性成分を有するが、しかし種々のタンパク質、例えば免疫グロブリン(抗体)を含有する。したがって、「血清」および「血漿」は、本発明の方法および組成物を指す場合、互換的に用いられ、一方の用語の使用は他方を包含するよう意図される。
【0020】
本明細書中で用いる場合、「癌を処置する」ならびに「癌の処置」という語句は、癌細胞の複製を抑制し、癌の伝播を抑制し、腫瘍サイズを減少させ、身体中の癌性細胞の数を縮小または低減し、あるいは癌により引き起こされる疾患の症候を改善するかまたは緩和することを意味する。処置は、死亡率および/または罹病率の低減が認められる場合、あるいは身体の悪性細胞の数低減または腫瘍サイズ低減により明示され得るような疾患負荷の低減が認められる場合、治療的であるとみなされる。
【0021】
本明細書中で用いる場合、「免疫療法」という用語およびその等価物は、癌に対する免疫を増大するという目的のための個体の処置を指す。免疫療法は、治療用ワクチンまたは抗体置換法、あるいはその両方による処置を含み得る。
【0022】
本明細書中で用いる場合、方法および組成物に関連した「治療用ワクチン」という用語およびその等価物は、癌を有する個体の処置を指し、この場合、癌に対する免疫応答を引き出すよう意図される免疫原分子が個体に投与される。
【0023】
本明細書中で用いる場合、方法および組成物に関連した「抗体置換法」という用語およびその等価物は、癌を有する個体の処置を、あるいは癌細胞をターゲッティングする循環中の抗体の量を増大する目的のために抗体が個体に投与される癌の防止のための免疫予防法を指す。
【0024】
本明細書中で用いる場合、方法および組成物に関連した「免疫予防」、「免疫予防的」という用語およびそれらの等価物は、癌を有することは分かっていないが、しかし癌を防止する意図された目的のために癌に対する免疫を増大することが所望される個体の処置を指す。免疫予防は、免疫原性組成物の投与により、または抗体置換法により実行され得る。
【0025】
MUC1の第一の癌関連組合せエピトープは、T残基上に23ST O−グリコシル化を有する配列番号1(PDTRPAP)を含む。第一組合せエピトープは、特に治療用ワクチンとして、あるいは免疫予防のために用いられる場合、ならびに組合せエピトープ配列の外側に付加的グリコシル化が好ましくは存在しない場合に、大型ペプチド配列中に含有され得る。例えば第一組合せエピトープは、以下のアミノ酸配列を有するペプチド中に存在し得る:
STAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTA(配列番号3)
【0026】
MUC1の第二癌関連組合せエピトープは、T残基上に23ST O−グリコシル化を有する配列番号2(GSTA)を含む。第二組合せエピトープは、特に治療用ワクチンとして、あるいは免疫予防のために用いられる場合、ならびに組合せエピトープ配列の外側に付加的グリコシル化が好ましくは存在しない場合に、大型ペプチド配列中に含有され得る。例えば第二組合せエピトープは、以下のアミノ酸配列を有するペプチド中に存在し得る:
GVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVT(配列番号4)
【0027】
上記の第一および第二組合せエピトープは、種々の炭水化物構造を有するMUC1糖ペプチド誘導体の合成組合せライブラリー中で発見された。ライブラリーは、Matsushita, T., et al.(Biochemistry 2009; 48: 11117-11133)の化学酵素的合成方法を用いて、北海道大学で作製された。
【0028】
ヒト血清に対するスクリーニングに用いるために、マイクロアレイスライドをMUC1糖ペプチドライブラリーでプリントした。血清を健常個体から、ならびに癌患者(結腸癌、乳癌および腎臓癌を示す)から得て、マイクロアレイ分析で用いるために、25から800倍まで連続希釈した。
【0029】
以下のように、糖ペプチドアレイを調製し、分析した:
【0030】
試薬: 反応緩衝液(50mMトリス−HCl、pH7.4(100mM NaCl、1mM CaCl、1mM MnCl、1mM MgCl、0.05%トゥイーン20を含有));洗浄緩衝液(トゥイーン20の代わりに0.05%トリトンX−100を含有する反応緩衝液);二次抗体(Cy5共役AffinipureF(ab’)2断片、IgG+IgM(H+L)ヤギ抗ヒト(Jackson Immunoresearch, #109−176−127))。
【0031】
使用前に、二次抗体を0.75mlのMilli−Q水で再水和し、反応緩衝液で1:100希釈した。
【0032】
マイクロアレイ読取機は、GenePix Pro 7ソフトウェアを用いるAxon GenePix 4300A(MDS Analytical Technologies)であった。
【0033】
方法:
1. 25倍から800倍まで連続希釈する。
2. SIMprexガスケット(Gentel Biosciences、#4−1026)を有するSIMprex64マルチアレイデバイス(Gentel Biosciences、 #4−1029)にマイクロアレイスライドを載せる。
3. 100μlの希釈血清をデバイスのウェルに適用する。
4. SIMprexウェルシール(Gentel Biosciences、 #4−1027)で被覆する。
5. 室温で2時間インキュベートする。
6. 静かにピペッティングすることにより、デバイスから液体を除去する。
7. 1分間、各ウェルに洗浄緩衝液100μlを適用する。
8. 静かにピペッティングすることにより、デバイスから液体を除去する。
9. さらに1分間、7)および8)を繰り返す。
10. ウェルに希釈二次抗体100μlを適用する。
11. ウェルシールで被覆する。
12. 室温で1時間インキュベートする。
13. デバイスから液体を除去する。
14. デバイスからスライドを取り出し、洗浄緩衝液でスライドを洗浄する。
15. Milli−Q水でスライドを洗浄する。
16. 遠心分離によりスライドを乾燥する。
17. GenePix 4300Aを用いてスライドを走査する。
【0034】
これらの方法を用いて、配列番号3(T15−23ST)および配列番号4(T15−23ST)を、正常血清との反応では陽性として、そして癌患者からの血清との反応性は陰性または反応性低減を示すとして、糖ペプチドライブラリーにおいて同定した。血清中の自己抗体と、種々のO−グリコシル化パターンを有する配列番号3または配列番号4アミノ酸配列との結合を、上記と同様の実験プロトコールを用いて評価した。試験した糖型ならびに結果を、以下の表に示す:
【表1】
【表2】
【0035】
健常個体の血清中の自己抗体は、T−15に23ST以外のO−グリコシル化パターンを有する配列番号3または配列番号4アミノ酸配列と結合しなかった。配列番号4のT−8は配列番号1と同一であるアミノ酸配列中に含有されるという事実にもかかわらず、自己抗体結合は配列番号4のT−8での23STに関して陰性である、ということが観察された。しかしながら、糖ペプチドは、N末端で5−オキソ結合を介してマイクロアレイプレートに連結された。配列番号4中の配列番号1の位置はこの連結に近く、そこで、この立体配置はエピトープへの抗体接近を防止した、と思われる。これに対比して、配列番号3中の配列番号1の位置は、連結点から離れており、したがって、自己抗体結合に関して接近可能であった。したがって、自己抗体は、T−15アミノ酸残基での23STグリコシル化のみを有する配列番号3および配列番号4ペプチドに特異的であると確定された。
【0036】
さらに、自己抗体は、がん患者よりも正常健常個体において抗レベルで存在することが判明した。具体的には、自己抗体は、正常健常個体と比較して、癌患者では低減されるかまたは存在しなかった。配列番号3(T15−23ST)および配列番号4(T15−23ST)の各々に関して200倍血清希釈液対400倍血清希釈液として吸光度データをプロットして、自己抗体レベルと疾患との関連度を評価した。両等ペプチドに関して、プロットは実質的に線状であり、癌患者と比較して、正常健常個体ではより高い値(すなわち、より高い自己抗体レベル)に向かう傾向を明示した(図2および図3)。概して、健常個体に関する吸光度値は約100万吸光度単位(AU)異常であったが、一方、乳癌および結腸癌患者に関する吸光度値は約100万AU以下であった。腎臓癌患者に関する結果は実質的により可変性で、2名の患者は十分に正常範囲内に入った。腎臓癌に関する値は、約60万〜1億7500万AUの範囲であった。
【0037】
したがって、配列番号3(T15−23ST)および配列番号4(T15−23ST)に向けられる自己抗体に関する正常値の範囲は、典型的には約100万 AUより大きく、例えば約1,000,000AU〜約270万 AU、約1,000,100AU〜約150万 AU、または約125万 AU〜約150万 AUである。疾患状態を示す値の範囲は、典型的には約100万 AU以下、例えば約50万 AU〜約100万 AU、約5万 AU〜約50万 AU、または約25万 AU〜約90万 AUである。自己抗体は、疾患状態においては、この検定では本質的に非検出可能でもある。これらのデータは、自己抗体の低減が腎臓癌より乳癌および結腸癌に関して確実に予測的であり得るということを示唆しているが、しかし腎臓癌患者におけるより大きな変異性は、この試験における試料サイズが小さいためでもあり得る。
【0038】
本明細書中に開示される組合せエピトープは、癌を有する患者において低減されるかまたは存在しない自己抗体により特異的に認識される。このようなものとして、自己抗体レベルの変化は、疾患の早期指標であると考えられる。したがって、本発明の一態様は、癌の検出のための診断検定および方法における組合せエピトープの使用に関する。例えばそれらは、上記のものと同様の診断ELISA検定における標的として、(単独で、または配列番号3(T15−23ST)および配列番号4(T15−23ST)により例示されるような大型ペプチド配列内で)用いられ得る。吸光度読取りは、上記のような個体の血清中に存在する自己抗体のレベルを示し、そして癌の存在または非存在を示す。血清中の抗体レベルを確定するのに適した他の既知の検定方法に本発明を適合することは、当該技術分野における通常技量内である。例えば、自己抗体力価は、Engvall, E., et
al. (Immunochemistry 1971; 9(8): 871-4. ”Enzyme-linked immunosorbent
assay (ELISA). Quantitative assay of immunoglobulin G”)により記載されたように決定され得る。代替的には、臨床的使用に適した他の既知の抗体定量法を用いて、本明細書中に記載される自己抗体のレベルを確定し得る(例えば、”Antibodies: A Laboratory Manual by Ed Harlow and David Lane”に記載)。正常血清中の自己抗体力価の範囲、ならびに癌患者の血清中の自己抗体力価の範囲を確定することにより、癌の存在を示す自己抗体力価の範囲が統計学的に決定され得る。ELISA検定に関して上記したように、正常力価と比較して低減される自己抗体力価は、特にMUC1 23STエピトープが血清または組織中に存在する場合、患者における癌の存在を示す。
【0039】
本明細書中に開示される組合せエピトープを用いる上記の検定は、癌患者の予後を決定するためにも有用である。この場合、自己抗体の正常以下範囲は、相対的に不十分な予後を示し、低い正常以下結果は、高正常以下結果より悪い予後を示す。これに対比して、正常レベルの自己抗体を有する癌患者は、一般的に、良好な予後を有すると評価される。
【0040】
本明細書中に開示される組合せエピトープを用いる上記の検定は、癌を発症する危険(癌再発の危険を含む)の個体のレベルを確定するための、ならびに経時的癌危険性の変化をモニタリングするための検定においても有用である。本明細書中に記載される自己抗体は、MUC1発現癌細胞に対する免疫監視機構の一助となる、と考えられる。すなわち、正常または高レベルの循環自己抗体は防御性であるが、しかし低減レベルの循環自己抗体はそれらが生じた時に悪性細胞を認識し、除去するのに不適切であり得る。この場合、正常以下範囲の自己抗体は相対的に高い癌危険性を示し、低い正常以下結果は高い正常以下結果より大きな危険性を示す。正常範囲での自己抗体レベルを有する個体は、一般的に、癌を発症する通常の危険性を有し、そして高正常範囲での自己抗体レベルを有する個体は、癌を発症することに対して特に高い耐性を有すると評価される。経時的に個体の抗癌免疫監視機構の活性のレベルの変化をモニタリングするために、自己抗体に関する基線力価が個体に関して確立される。その後の試験は、基線力価に比して増大または低減を検出するが、この場合、漸増値は癌危険低減を示し、そして漸減値は癌危険増大を示す。
【0041】
さらに別の実施形態では、上記の検定を用いて、癌両方の効力をモニタリングし得る。
【0042】
組合せエピトープに対して向けられる自己抗体は低減され、癌を有する患者においては実質的に存在しないことさえある、ということが判明しているため、一態様では、本発明は、組合せエピトープに向けて癌特異的免疫応答を誘導する免疫療法であって、本明細書中に記載される組合せエピトープを含む免疫原性糖ペプチドでヒト癌患者を免疫化することを包含する方法に関する。このような治療的免疫化またはワクチン接種は、配列番号1(T3−23ST)または配列番号2(T3−23ST)組合せエピトープを有するMUC1を発現する任意の癌に対して有効であるが、一方、好ましい一実施形態では、免疫治療法は、乳癌、結腸癌または腎臓癌の処置のためである。一具体例では、治療的ワクチン接種は、それを必要とする個体への、配列番号3(T15−23ST)または配列番号4(T15−23ST)の投与により成し遂げられ得る。望ましくは、特異的免疫応答は、健常個体に見出される自己抗体を模倣する体液性応答である。組合せエピトープのどちらかまたは両方(各々単独で、または大型ペプチド配列内で)への患者の曝露は、体液性免疫応答を引き出し、自己抗体のレベルを増大し、それにより癌に関連した異常糖ペプチドに対する患者の天然免疫を増大する。理想的には、本明細書中に開示されるような組合せエピトープによる処置は、自己抗体のレベルを、少なくとも最小正常レベル(例えばELISAにおいて100万AUまたはそれ以上)に、またはほぼ正常レベル(80〜99%、例えばELISAにおいて80万AU〜99.9万AU)に増大する。好ましくは、本明細書中に開示されるような組合せエピトープによる処置は、自己抗体のレベルを、最小正常レベルの少なくとも60%(例えばELISAにおいて60万AUまたはそれ以上)、または最小正常レベルの60〜80%(ELISAにおいて60万AU〜80万AU)に増大する。しかしながら、治療用ワクチンの使用は、さらに好ましくは、自己抗体のレベルを、最小正常レベルの少なくとも110%(例えば、ELISAにおいて少なくとも110万AU)、最小正常レベルの110〜125%(例えば、ELISAにおいて110万AU〜125万AU)、最小正常レベルの125〜150%(例えば、ELISAにおいて125万AU〜150万AU)または最小正常レベルの150〜250%(例えば、ELISAにおいて150万AU〜250万AU)に増大する。
【0043】
本発明の組合せエピトープを含む治療用ワクチン組成物も、本発明により意図される。好ましい一実施形態では、治療用ワクチン組成物は、乳癌、結腸癌、腎臓癌または配列番号1(T3−23ST)または配列番号2(T3−23ST)組合せエピトープを有するMUC1を発現する他の癌の処置のための癌ワクチンである。組成物は、組合せエピトープ(単数または複数)を含有するペプチド、および少なくとも1つの製薬上許容可能な賦形剤を含み得る。治療用ワクチンとして用いるために、組成物は、典型的には、組合せエピトープを含有するペプチドおよび液体賦形剤(例えば、生理食塩水、水、リン酸塩または炭酸塩緩衝液、プロピレングリコール、ソルビトール、スクロース等)を組入れている注射可能な組成物、例えば溶液、懸濁液または乳濁液の形態である。ワクチンの免疫原性を増大するために、組合せエピトープを含有するペプチドは、適切な担体、例えばヒト血清アルブミン(HSA)、カギアナカサガイヘモシアニン(KLH)、インフルエンザヘマグルチニン、コレラ毒素、破傷風毒素、熱ショックプロテイン65(HSP65)または当該技術分野で既知の他の担体と共役され得る。
【0044】
前記の方法および組成物に用いるための本発明の組合せエピトープを含有するペプチドは、当該技術分野で既知の化学酵素合成法、例えばペプチド合成とその後の、in vitroでの精製組換えグリコシルトランスフェラーゼおよびシアリルトランスフェラーゼを用いたペプチドのグリコシル化およびシアリル化により、産生され得る(例えば、Matsushita, T., et al. Biochemistry 2009; 48: 11117-11133 (“Functional
neoglycopeptides: Synthesis and characterization of
new class MUC1 glycoprotein models having core 2-based O-glycan and
complex-type N-glycan chains”)参照)。代替的には、所望のペプチド配列は、既知の組換えDNA技法を用いて、ペプチドを発現し、その後、精製ペプチドの酵素的グリコシル化およびシアリル化することにより、産生され得る。
【0045】
さらに、本発明の一態様は、本発明による組合せエピトープに特異的なモノクローナル抗体を意図する。このようなモノクローナル抗体は、当該技術分野で既知の方法により産生され得るし、癌関連組合せエピトープを特異的に標的にする抗体のレベルを増大することにより疾患を処置するために癌患者に投与する免疫治療薬として有用である。この治療的アプローチは、癌患者において低減されるかまたは存在しない天然自己抗体に関する抗体置換療法を提供する。理想的には、このような免疫療法は、血清中の組合せエピトープ特異的抗体レベルを、自己抗体の少なくとも最小正常レベル(例えばELISAにおいて100万AUまたはそれ以上)に、またはほぼ正常レベル(80〜99%、例えばELISAにおいて800K AU〜999K AU)に増大する。好ましくは、免疫療法は、血清抗体のレベルを、自己抗体の最小正常レベルの少なくとも60%(例えばELISAにおいて600K AUまたはそれ以上)、または最小正常レベルの60〜80%(ELISAにおいて600K AU〜800K AU)に増大する。しかしながら、免疫療法のためのモノクローナル抗体の使用は、さらに好ましくは、血清中の組合せエピトープ特異的抗体のレベルを、自己抗体の最小正常レベルの少なくとも110%(例えば、ELISAにおいて少なくとも110万AU)、最小正常レベルの110〜125%(例えば、ELISAにおいて110万AU〜125万AU)、最小正常レベルの125〜150%(例えば、ELISAにおいて125万AU〜150万AU)または最小正常レベルの150〜250%(例えば、ELISAにおいて150万AU〜250万AU)に増大する。本発明の組合せエピトープに対して向けられる循環抗体のレベルを増大することにより、癌細胞に関連した異常糖ペプチドに対する患者の天然免疫は増大され、免疫監視が治療効果改善のために増大される。同様に、本発明による組合せエピトープに特異的なモノクローナル抗体が、自己抗体レベル低減を示すがしかし検出可能な悪性疾患を有さない個体に投与される場合、循環抗体の増大は、免疫予防改善のための免疫監視増大を提供する。
【0046】
個体の循環中の自己抗体、モノクローナル抗体および工学処理抗体の定量のためのELISA法は記載されてきたため、結果は、本明細書中では、吸光度単位に換算して表されている。抗体を定量するための他の既知の方法は、ELISAに置き換えられ得る、ということは、当業者には容易に明らかになる。正常および異常自己抗体レベル、ならびにこのような代替的検定の測定値の単位で表される処置中にモニタリングされる抗体レベルの対応する範囲は、通常の技能を用いて確定され得る。本発明は、ELISAの使用に、または検出および定量のための吸光度に限定されず、しかし血液中の抗体を検出し、定量するためのすべての適切な方法を意図する。例えば、吸光度単位の代わりに、正常または異常レベルを示す抗体力価の範囲を確定し、そして当該技術分野で既知の方法を用いた処置中の抗体力価の変化をモニタリングし得る。
【0047】
配列番号4のT−15での23STグリコシル化を特異的に認識するモノクローナル抗体は、免疫原として組合せエピトープを含有する糖ペプチド、例えば配列番号4(T15−23ST)を用いて、当該技術分野で既知であるように、マウスを免疫化し、免疫化脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合し、その結果生じるハイブリドーマ細胞をELISAによりスクリーニングすることにより、調製され得る。アジュバント、例えばKLHまたは破傷風毒素は、糖ペプチドと共役されて、その免疫原性を増大し得る(例えば、antibodies: A Laboratory Manual (Ed Harlow and David Lane)に記載)。ハイブリドーマが最初に選択され、そして配列番号4(T15−23ST)のみとの反応性に関してスクリーニングされ、配列番号4(T15−23ST)を単離するために本来用いられたMUC1糖ペプチドライブラリー中に見出される他の糖ペプチドとの反応性に関してはスクリーニングされない。次に、選択ハイブリドーマは、T15−23ST組合せエピトープと特異的に反応するモノクローナル抗体の産生に関してスクリーニングされる。すなわち、選択ハイブリドーマはさらに、高特異性および親和性で配列番号2(T3−23ST)の組合せエピトープ(すなわち、糖型およびペプチドの両方)を認識するモノクローナル抗体に関して、スクリーニングされ、選択される。最も好ましいモノクローナル抗体は、配列番号4のT−15または配列番号2のT−3に連結される23STコア1炭水化物構造と強力に反応するが、しかし、それらが配列番号4のT−15または配列番号2のT−3に存在する場合、他のコア1構造(例えば、T、dST、26ST)との、TnまたはSTnとの、あるいはシアリル化または非シアリル化コア2炭水化物構造との反応性を実質的に有さない。好ましくは、モノクローナル抗体の特異性は、非標的炭水化物構造との交差反応性が、免疫原糖ペプチドとの反応性(慣用的結合検定で100%と定義される)の80%以下、好ましくは50%以下、さらに好ましくは20%以下、最も好ましくは10%以下である、というものである。一実施形態では、配列番号4(T3−ST)組合せエピトープに対して向けられるモノクローナル抗体は、配列番号4のT3が、GalNAcの6位置での置換(例えば6位置でのNeuNAcまたはGlcNAc)を含む炭水化物構造と連結される組合せエピトープに関して、そしてTnおよびT組合せエピトープに関して、50%以下の結合特異性を有する。例えば、所望のモノクローナル抗体は、6−置換エピトープに対して10%以下の結合特異性(例えば、<0.1〜5%、<0.1〜1%または非検出不可能結合)を、そしてTnおよびT組合せエピトープに関しては50%以下の結合特異性(例えば、10〜20%、<0.1〜10%、<0.1〜1%または非検出可能結合)を有し得る。免疫原糖ペプチドに関する選択モノクローナル抗体の結合親和性は、好ましくはBIA CORE検定(Kd)で1500nM以下、またはELISA検定(IC50)で700nM以下である。具体的一実施形態では、結合親和性は、180nM(Kd)未満または100nM(IC50)未満である。好ましい一実施形態では、結合親和性は、約0.4nM(Kd)または約0.6nM(IC50)である。このようなモノクローナル抗体は、本明細書中に記載される防御的自己抗体の標的である組合せエピトープに高度に特異的であり、高親和性で結合する。したがって、それらは、組合せエピトープを有するMUC1を発現する癌の処置および防止のために非常に有効である。
【0048】
配列番号3のT−15での23STグリコシル化を特異的に認識するモノクローナル抗体は、同様にして調製され得るし、そして高特異性および親和性で配列番号3(T15−23ST)の組合せエピトープ(すなわち、糖型およびペプチドの両方)を同様に認識する。それらは、配列番号3のT−15または配列番号1のT−3での23ST構造を特異的に選択肢、そして強力に反応する。産生される最も好ましいモノクローナル抗体は、配列番号3のT−15または配列番号1のT−3と連結された、他のコア1炭水化物構造(例えば、T、dST、26ST)との、TnまたはSTnとの、あるいはシアリル化または非シアリル化コア2炭水化物構造との反応性を実質的に示さない。好ましくは、モノクローナル抗体の特異性は、非標的炭水化物構造との交差反応性が、免疫原組合せエピトープとの反応性(慣用的結合検定で100%と定義される)の80%以下、好ましくは50%以下、さらに好ましくは20%以下、最も好ましくは10%以下である、というものである。一実施形態では、配列番号4(T3−ST)組合せエピトープに対して向けられるモノクローナル抗体は、配列番号4のT3が、GalNAcの6位置での置換(例えば6位置でのNeuNAcまたはGlcNAc)を含む炭水化物構造と連結される組合せエピトープに関して、そしてTnおよびT組合せエピトープに関して、50%以下の結合特異性を有する。例えば、所望のモノクローナル抗体は、6−置換エピトープに対して10%以下の結合特異性(例えば、<0.1〜5%、<0.1〜1%または非検出不可能結合)を、そしてTnおよびT組合せエピトープに関しては50%以下の結合特異性(例えば、10〜20%、<0.1〜10%、<0.1〜1%または非検出可能結合)を有し得る。免疫原糖ペプチドに関する選択モノクローナル抗体の結合親和性は、好ましくはBIA CORE検定(Kd)で1500nM以下、またはELISA検定(IC50)で700nM以下である。具体的一実施形態では、結合親和性は、180nM(Kd)未満または100nM(IC50)未満である。好ましい一実施形態では、結合親和性は、約0.4nM(Kd)または約0.6nM(IC50)である。このようなモノクローナル抗体は、本明細書中に記載される防御的自己抗体の標的である組合せエピトープに高度に特異的であり、高親和性でエピトープを結合する。したがって、それらは、組合せエピトープを有するMUC1を発現する癌の処置および防止のために非常に有効である。
【0049】
代替的には、組合せエピトープ配列番号2(T3−23ST)および/または配列番号1(T3−23ST)に対して向けられる血清自己抗体を用いて、化学的または生物学的に合成される(例えば、組換えDNA法を用いて)特異的工学処理抗体治療薬を設計し得る。このような抗体治療薬としては、抗体結合断片、例えばFab、Fab、Fv、scFv、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディおよび、テトラボディが挙げられるが、これらに限定されない。工学処理抗体は、それらのサイズが小さいため、そして治療的使用のためにそれらが活性分子、例えば薬剤、毒素および放射性同位体に容易に共役されるため、慣用的mAbを上回る実質的な技術的および治療的利点を提供する。さらに、多価である工学処理抗体は、配列番号1(T3−23ST)および配列番号2(T3−23ST)の両方と反応するよう設計され得る。工学処理抗体はさらにまた、それらが本発明の組合せエピトープ(単数または複数)と特異的に反応し、配列番号4(T15−23ST)および配列番号3(T15−23ST)を単離するために本来は用いられたMUC1糖ペプチドライブラリー中に見出される他の糖ペプチドと特異的に反応しないよう、設計される。さらに具体的には、このような抗体は、23ST以外のT−15 O−グリコシル化が存在する場合、配列番号4または配列番号3との反応性をほとんどまたは全く有さない。さらに、選択抗体は、配列番号2(T3−23ST)および/または配列番号1(T3−23ST)の組合せエピトープ(すなわち、糖型およびペプチドの両方)を認識するよう設計され、そしてこれらの糖ペプチド中の23ST構造に同様に特異的である。すなわち、このように設計される好ましい抗体は、それらが配列番号4のT−15に、または配列番号2のT−3に存在する場合、および/またはそれらが配列番号3のT−15に、または配列番号1のT−3に存在する場合、シアリル化または非シアリル化コア2構造と、あるいはTn、T、dST、26STまたはSTnコア1炭水化物構造と反応しない。このような工学処理抗体免疫療法薬は、上記モノクローナル抗体のように、同一の治療的および免疫予防的方法および組成物において有用である。
【0050】
モノクローナル抗体または工学処理抗体を含む免疫治療用および免疫予防用組成物も、本発明により意図される。好ましい一実施形態では、免疫治療用または免疫予防用抗体組成物は、配列番号1(T3−23ST)、配列番号2(T3−23ST)、配列番号3(T15−23ST)または配列番号4(T15−23ST)の組合せエピトープを発現する癌の、それぞれ処置または防止のための組成物である。具体的一態様では、免疫治療用抗体組成物は、乳癌、結腸癌または腎臓癌の処置のための組成物である。組成物は、上記のようなモノクローナルまたは工学処理抗体、ならびに少なくとも1つの製薬上許容可能な賦形剤を含み得る。癌を処置するかまたは防止するのに用いるために、組成物は、典型的には、モノクローナルまたは工学処理抗体、および液体賦形剤(例えば、生理食塩水、水、リン酸塩または炭酸塩緩衝液、プロピレングリコール、ソルビトール、スクロース等)を組入れている注射可能な組成物、例えば溶液、懸濁液または乳濁液の形態である。
【0051】
組合せエピトープ、組合せエピトープを含有するペプチド、ならびに免疫応答を引き出すために、そして癌の免疫療法のために組合せエピトープに向けられるモノクローナルまたは工学処理抗体の治療的有用性は、MUC1に対する免疫応答および免疫寛容の評価のために、そしてMUC1を発現する動物の状況内でin vivoでの抗MUC1ワクチン処方物の評価のために、当該技術分野で許容されたネズミMUC1モデルで確証される(Rowse, G.J., et
al. Cancer Res. 1998; 58: 315-321参照)。このマウス系統(MUC1.Tg)は、ヒトMUC1に関してトランスジェニックであり、増殖するMUC1発現腫瘍の能力により立証されるようにMUC1による刺激に対して免疫寛容である。したがって、それは、抗MUC1免疫療法処方物を評価するための適切な前臨床モデルである。
【0052】
本発明の組合せエピトープに対するin vivo免疫応答の確証のために、配列番号1(T3−23ST)または配列番号2(T3−23ST)エピトープを含有する糖ペプチドは、アジュバントペプチド、例えばKLHと共役され、そしてフロイントアジュバントを有する溶液(例えば、総容積200μL中10〜15μgの糖ペプチド)中でMUC1.Tgマウスに皮下注射される。多重免疫化(例えば、14日間隔で4回注射)が施され、免疫感作スケジュール完了後に、血液試料が採取される。
【0053】
免疫化後応答は、血清抗体の捕獲のための免疫性糖ペプチドを用いて、その後、結合抗体を標識化抗マウス免疫グロブリン(例えば、ペルオキシダーゼ共役ウサギ抗マウス免疫グロブリン)で検出することにより、Sorensen, A.L., et al. Glycobiology 2006;
16(2): 96-107に記載されるように一般的にELISAにより評価される。アイソタイプ分けのため、ペルオキシダーゼ共役アイソタイプ特異的抗体(例えば、ヤギ抗マウスIgM、IgG1、IgG2、IgG2bまたはIgG3)が検出抗体として用いられる。MUC1発現癌細胞との誘導抗体の反応性は、適切な細胞株(例えば、T47D(これは少なくともいくつかのST O−グルカンを発現することが報告されている))を、連続希釈液中の免疫化マウス血清とともにインキュベートし、その後、標識化抗マウス免疫グロブリン(例えば、FITC共役ウサギ抗マウス免疫グロブリン)とともにインキュベートすることにより評価される。標識化細胞は、スライドに載せられて、蛍光顕微鏡下で検査されて、免疫血清と、細胞表面のMUC1 STグリカンエピトープとの反応の程度を確定する。
【0054】
本発明の組合せエピトープは、単独でまたは上記のような大型ペプチド中に含有されて、MUC1 Tgマウスにおける寛容を克服し、上記のELISAおよび免疫細胞化学的検定における強力な反応性を生じるのに十分な強度の特異的体液性免疫応答を引き出す。これらの結果は、組合せエピトープ配列番号1(T3−23ST)および/または配列番号2(T3−23ST)を含有するペプチドが、ヒトにおけるMUC1発現癌、特に乳癌、結腸癌および腎臓癌の処置のための治療用ワクチンとしての有用性を有する、ということを強く示す。
【0055】
組合せエピトープ配列番号1(T3−23ST)および/または配列番号2(T3−23ST)を含有するペプチドの治療的有用性のさらなる証拠として、MUC1. Tgネズミモデルにおける抗腫瘍応答が、一般的に、Mukherjee, P., et al. Vaccine. 2007; 25(9): 1607-1618に記載されているように評価される。宿主は、MUC1発現癌細胞(例えば、MUC1をトランスフェクトされたMC28結腸癌細胞、あるいは同様の乳癌細胞株)を、典型的には脇腹に皮下注射され、そして腫瘍は、ある期間、例えば約7日間、増殖させられた後、免疫化される。アジュバント(例えば、不完全フロイントアジュバント)を有する組成物中の組合せエピトープ含有ペプチドは、腫瘍注射部位から離れた部位に皮下投与される。免疫化スケジュールは、典型的には、7日毎に21日間であり、この時点で、動物は屠殺される。腫瘍サイズは、免疫化終期中毎日、カリパスで測定され、腫瘍重量(グラムで)が、腫瘍の長さおよび幅に基づいて算定される。腫瘍増殖に及ぼす免疫化の作用は、非免疫化動物と比較した場合、免疫化マウスにおけるより遅い速度の腫瘍増殖により立証される。理想的には、腫瘍増殖は、免疫化動物では実質的に完全に防止され、すなわち、腫瘍増殖は免疫化プロトコールの完了時に触診により検出可能でない。
【0056】
本発明による高免疫療法用ペプチドは、腫瘍負荷を、少なくとも50%(アジュバントの付加を伴うかまたは伴わない)、好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも90%低減する。いくつかの場合、MUC1.Tgマウスにおける腫瘍増殖の完全防止は、本発明の組合せエピトープを含有するペプチドを用いて免疫療法により達成され得る。
【0057】
組合せエピトープに特異的なポリクローナル抗体も、当該技術分野で既知の方法を用いて生成され得る。組合せエピトープは強癌関連性であるため、このようなポリクローナル抗体は、疾患の存在または非存在、癌患者の予後、ならびに個体の癌発症危険レベルを確定するためのin vitro検定に有用である。上記のモノクローナル抗体および工学処理合成抗体も、同様の目的のために同様の検定で用いられ得る。
【0058】
本発明を、本明細書中で、特定の実施形態を参照しながら説明してきたが、これらの実施形態は本発明の原理および用途の単なる例証である、と理解されるべきである。本発明の精神および範囲を逸脱しない限り、種々の修正および変更が本発明の方法および装置に対してなされ得る、ということは当業者には明らかである。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内である修正および変更を包含するよう意図される。
図1
図2
図3
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]