特許第5978314号(P5978314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5978314
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】リチウム二次電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20160817BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20160817BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20160817BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20160817BHJP
【FI】
   H01M2/16 L
   H01M2/16 P
   H01M10/0566
   H01M4/139
   H01M10/052
   H01M2/16 M
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-550019(P2014-550019)
(86)(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公表番号】特表2015-506550(P2015-506550A)
(43)【公表日】2015年3月2日
(86)【国際出願番号】KR2012011622
(87)【国際公開番号】WO2013100653
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2014年6月26日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0143839
(32)【優先日】2011年12月27日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0154703
(32)【優先日】2012年12月27日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109841
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 健史
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(72)【発明者】
【氏名】リー、チョル−ヘン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ドゥ、キョン
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/019187(WO,A1)
【文献】 特開2010−027553(JP,A)
【文献】 特開2001−185219(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0202891(US,A1)
【文献】 特開2010−086728(JP,A)
【文献】 特開2003−272707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/16、10/0566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム二次電池であって、
正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に介在されたセパレータを備えた電極組立体と、及び、前記電極組立体に含浸させる非水電解液とを備えてなり、
前記セパレータが、前記正極及び前記負極と接触する少なくとも一面に、複数の破壊されたカプセル が分散された層を備えてなり、
前記破壊されたカプセルの被膜が、バインダー高分子、及び前記バインダー高分子に分散された無機物粒子を備えてなり、
前記カプセルは、非水電解液を貯蔵し、加熱及び加圧の際に前記非水電解液を放出するものであり、
前記カプセルの被膜部分のみが、前記分散された層であることを特徴とする、リチウム二次電池。
【請求項2】
前記無機物粒子が、誘電率が5以上の無機物粒子、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子、及びこれらの混合物からなる群より選択された無機物粒子であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記誘電率が5以上の無機物粒子が、BaTiO3、Pb(Zr、Ti)O3(PZT)、Pb1-xLaxZr1-yTiy3(PLZT、0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3‐PbTiO3(PMN‐PT)、ハフニア(HfO2)、SrTiO3、SnO2、CeO2、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO2、SiO2、Y23、Al23、SiC、及びTiO2からなる群より選択された何れか一種又は二種以上の混合物であることを特徴とする、請求項2に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子が、リチウムホスフェート(Li3PO4)、リチウムチタンホスフェート(LixTiy(PO43、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LixAlyTiz(PO43、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、(LiAlTiP)xy系列ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LixLayTiO3、0<x<2、0<y<3)、リチウムゲルマニウムチオホスフェート(LixGeyzw、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、リチウムナイトライド(Lixy、0<x<4、0<y<2)、SiS2(LixSiyz、0<x<3、0<y<2、0<z<4)系列ガラス、及びP25(Lixyz、0<x<3、0<y<3、0<z<7)系列ガラスからなる群より選択された何れか一種又は二種以上の混合物であることを特徴とする、請求項2又は3に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記バインダー高分子が、1.0ないし100(測定周波数=1kHz)の誘電率を有することを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
前記バインダー高分子が、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリフッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン‐トリクロロエチレン、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールフォスフェートジアクリレート、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイソブチルメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリアリレート、ポリテトラヒドロフラン、ポリメタアクリル酸リチウム、ポリアクリル酸リチウム、ポリマレイン酸リチウム、ポリビニルスルホン酸リチウム、ポリビニルホスホン酸リチウム、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、及びカルボキシルメチルセルロースからなる群より選択される何れか一種又は二種以上の混合物であることを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
前記無機物粒子と前記バインダー高分子との重量比が、1:1ないし10:1であることを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
前記カプセルの破壊後に、前記無機物粒子同士の間にインタースティシャル・ボリューム(interstitialvolume)が存在し、微細気孔が形成されてなることを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項9】
リチウム二次電池の製造方法であって、
セパレータの少なくとも一面に、又は、正極及び負極の、一種以上のセパレータと接触する面に、無機物粒子が分散されたバインダー高分子から形成された被膜を備えてなり、
非水電解液を貯蔵した複数のカプセルを分散媒と共に塗布する段階と、
前記正極と前記負極との間に前記セパレータを介在させて電極組立体を製造する段階と、及び、
前記電極組立体を電池容器に収納する段階とを含んでなり、
前記電極組立体を電池容器に収納する段階の以前又は以後或いは両方ともに、電極組立体を熱圧着して前記カプセルを破壊することで、貯蔵された非水電解液を電極組立体に含浸させる段階を更に含んでなることを特徴とする、リチウム二次電池の製造方法。
【請求項10】
前記カプセルが、前記セパレータ、前記正極、及び前記負極の全てに塗布されることを特徴とする、請求項9に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池及びその製造方法に関し、より詳しくは、セパレータの機械的物性が強化され、非水電解液の注入工程が省略されることにより、簡単に製造できるリチウム二次電池及びその製造方法に関する。
【0002】
本出願は、2011年12月27日出願の韓国特許出願第10−2011−0143839号、及び2012年12月27日出願の韓国特許出願第10−2012−0154703に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
近年、エネルギー貯蔵技術に対する関心が高まりつつある。携帯電話、カムコーダー、及びノートパソコン、更には電気自動車のエネルギーまで適用分野が拡がるとともに、このような電子機器の電源として使用される電池の高エネルギー密度化に関する要求が強まっている。リチウム二次電池は、このような要求に最も応えられ得る電池であり、現在それに関する研究が活発に行われている。
【0004】
現在使用されている二次電池のうち1990年代の初めに開発されたリチウム二次電池は、リチウムイオンを吸蔵及び放出できる炭素材などからなる負極、リチウム含有酸化物などからなる正極、及び混合有機溶媒に適量のリチウム塩が溶解された非水電解液が電池ケース内に収納されて製造される。
【0005】
通常のリチウム二次電池の製造には、セパレータの両面に電極が備えられた電極組立体を電池容器に収納した後、非水電解液を前記電池容器内に注入する方法を用いる。
【0006】
しかし、このような方法で非水電解液を注入するためには、電池容器を一部切開した後、非水電解液を注入し、再び電池容器を密閉するという手間のかかる工程が必要であり、電池容器材料の損失が不可避であるという問題点があるが、未だこれを解決できる効果的な解決策が提示されていない。
【0007】
なお、リチウム二次電池が過熱して熱暴走が起きるか又はセパレータが貫通される場合には、爆発が起きる恐れが大きい。特に、リチウム二次電池のセパレータとして通常使用されるポリオレフィン系多孔性基材は、材料の特性及び延伸を含む製造工程上の特性により、100℃以上の温度で甚だしい熱収縮挙動を見せ、正極と負極との間の短絡を起こすという問題点がある。
【0008】
従って、電池が誤作動するときにも正極と負極との間の短絡を防止できるように、多様な研究が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、非水電解液の注入が簡便であり、電池が誤作動するときにも、正極と負極との間の短絡を防止することができるリチウム二次電池及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を達成するため、本発明によるリチウム二次電池は、正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に介在されたセパレータを備えた電極組立体、並びに前記電極組立体に含浸された非水電解液を備え、前記セパレータは、正極及び負極と接触する少なくとも一面に、複数の破壊されたカプセルが分散された層を更に備え、前記カプセルの被膜は、無機物粒子が分散されたバインダー高分子から形成される。
【0011】
本発明のリチウム二次電池において、前記無機物粒子は、誘電率定数が5以上の無機物粒子、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子、及びこれらの混合物からなる群より選択された無機物粒子であることが望ましい。
【0012】
本発明のリチウム二次電池において、前記バインダー高分子は、ポリエチレン(polyethylene)、ポリスチレン(polystyrene)、ポリフッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride‐co‐hexafluoropropylene)、ポリフッ化ビニリデン‐トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride‐co‐trichloroethylene)、ポリエチレングリコールジアクリレート(polyethylene glycol diacrylate)、ポリエチレングリコールホスフェートジアクリレート(polyethylene glycol phosphate diacrylate)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリメチルメタクリレート(polymethyl methacrylate)、ポリイソブチルメチルメタクリレート(polyisobutylmethyl methacrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutyl acrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinyl acetate)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alchol)、エチレンビニルアセテート共重合体(polyethylene‐co‐vinyl acetate)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide)、ポリアリレート(polyarylate)、ポリテトラヒドロフラン(polytetrahydrofuran)、ポリメタアクリル酸リチウム(polymethacrylic acid lithium)、ポリアクリル酸リチウム(polyacrylic acid lithium)、ポリマレイン酸リチウム(polymaleic acid lithium)、ポリビニルスルホン酸リチウム(polyvinyl sulfonic acid lithium)、ポリビニルホスホン酸リチウム(polyvinyl phosphonic acid lithium)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、セルロースアセテートプロピオネート(cellulose acetate propionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethyl polyvinyl alcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethyl cellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethyl sucrose)、プルラン(pullulan)、及びカルボキシルメチルセルロース(carboxylmethyl cellulose)からなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物であり得るが、特にこれらに限定されることはない。
【0013】
本発明のリチウム二次電池において、前記無機物粒子とバインダー高分子との重量比は、1:1ないし10:1であり得る。
【0014】
本発明のリチウム二次電池において、前記カプセルは、破壊される前には非水電解液を貯蔵している。
【0015】
また、上記の課題を達成するため、本発明は、セパレータの少なくとも一面、または、正極及び負極の1種以上のセパレータと接触する面に、無機物粒子が分散されたバインダー高分子から形成された被膜を備え、非水電解液を貯蔵した複数のカプセルを分散媒と共に塗布する段階;前記正極と前記負極との間に前記セパレータを介在させて電極組立体を製造する段階;並びに前記電極組立体を電池容器に収納する段階を含み、前記電極組立体を電池容器に収納する段階の以前又は/及び以後に電極組立体を熱圧着し、前記カプセルを破壊することで、貯蔵された非水電解液を電極組立体に含浸させる段階を更に含むリチウム二次電池の製造方法を提供する。
【0016】
また、本発明のリチウム二次電池の製造方法において、前記カプセルは、セパレータ、正極及び負極の全てに塗布することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のリチウム二次電池は、非水電解液を含有したカプセルを使用して電極組立体を加熱圧着する過程により、非水電解液が自動的に電極組立体の全体面積に均一に供給されるため、電解液の電極への濡れ性(wettability)が改善され、従来の非水電解液を別途に注入する過程が不要になり、電池の製造工程を簡素化することができる。
また、正極の表面には抗酸化物質が含まれたカプセル、負極の表面には抗還元物質が含まれたカプセルを塗布することで、電気化学的により安定した電解質を具現でき、分離膜を使用するとき、正極の界面及び負極の界面にも選択的に塗布することで、電池駆動時に分解が最小化される電解質を具現することができる。
また、本発明のリチウム二次電池は、カプセルの被膜素材が無機物粒子が分散された高分子であるため、破壊されたカプセルがセパレータの機械的物性を強化し、電池の誤作動時に正極と負極との間の短絡を防止するため、電池の安全性を強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
図1】本発明の一実施例によるリチウム二次電池の単位電極組立体の概略的な断面図である。
図2】本発明の一実施例によるカプセルを撮影したSEM写真である。
図3】本発明の一実施例による熱圧着工程前の負極表面のSEM写真である。
図4】本発明の一実施例による熱圧着工程後の負極表面のSEM写真である。
図5】実施例1及び比較例1の電池を満充電した後、85℃で4時間貯蔵した後の厚さ変化を示したグラフである。
図6】本発明の実施例1及び比較例1によるリチウム二次電池の1C放電電圧プロファイルを示したグラフである。
図7】本発明の実施例1及び実施例2によるリチウム二次電池の10C高率放電評価の結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0020】
図1には、本発明による単位電極組立体の一実施例が概略的に示されている。しかし、本明細書に記載された実施例と図面に示された構成は、本発明の最も望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想の全てを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物と変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0021】
図1を参照すれば、正極20、負極30及びセパレータ10が備えられた本発明の電極組立体が提供される。また、前記セパレータ10は、セパレータ10と正極20とが接触する部分、セパレータ10と負極30とが接触する部分、または二つの部分の全てに、複数の破壊されたカプセル51が分散された層50を更に備える。図1は、セパレータ10と正極20及び負極30とが接触する全ての部分に、破壊されたカプセル51が分散された層50を備えた場合である。
【0022】
本発明のリチウム二次電池において、カプセル51は、破壊される前にはその内部に非水電解液を貯蔵したまま、電極と接触するセパレータの少なくとも一面に層を成している。電池の製造過程で電極組立体に熱及び圧力が加えられ、それによって非水電解液を貯蔵しているカプセル51が破壊され、貯蔵されていた非水電解液(図示せず)が正極及び負極の1種以上の電極とセパレータに含浸し、カプセルの被膜部分のみが、正極及び負極の1種以上の電極と接触するセパレータの少なくとも一面に残留して層50を形成する。
【0023】
本発明によるカプセルの被膜は、無機物粒子とバインダー高分子とから形成されるが、熱圧着によって破壊された後には、熱圧着によりカプセル被膜のバインダー高分子とセパレータとの間が結着してセパレータの機械的物性を補強し、前記無機物粒子は、破壊されたカプセル層50の物理的な形態を維持できる一種のスペーサ(spacer)の役割をすることで、電気化学素子が過熱するとき、多孔性基材が熱収縮することを抑制するか、または、熱暴走のときに両極間の短絡を防止する。
【0024】
また、無機物粒子同士の間には、インタースティシャル・ボリューム(interstitial volume)が存在して微細気孔を形成する。すなわち、破壊されたカプセル層50は、無機物粒子同士が互いに結着した状態を維持できるように、バインダー高分子がこれらを互いに付着(すなわち、バインダー高分子が無機物粒子同士の間を連結及び固定)しており、また破壊されたカプセル層50はバインダー高分子によって多孔性基材と結着した状態を維持する。破壊されたカプセル層50の無機物粒子は、実質的に互いに接触した状態で最密充填された構造で存在し、無機物粒子が接触された状態で生じるインタースティシャル・ボリュームが破壊されたカプセル層の気孔となる。
【0025】
また、破壊されたカプセルは、連続した一つの層を形成せず、複数個のカプセルが分散されて一つの層を形成するため、破壊されたカプセル51同士の間のインタースティシャル・ボリュームも破壊されたカプセル層50の気孔となり得る。
【0026】
本発明のリチウム二次電池において、カプセルの被膜を形成する無機物粒子は、電気化学的に安定さえすれば特に制限されない。すなわち、本発明で使用できる無機物粒子は、適用される電気化学素子の作動電圧範囲(例えば、Li/Li基準で0〜5V)で酸化及び/または還元反応が起きないものであれば特に制限されない。特に、無機物粒子として誘電率の高い無機物粒子を使用する場合、液体電解質内の電解質塩、例えばリチウム塩の解離度の増加に寄与して電解液のイオン伝導度を向上させることができる。
【0027】
上述した理由から、前記無機物粒子は、誘電率定数が5以上、望ましくは10以上の高誘電率無機物粒子を含むことが望ましい。誘電率定数が5以上の無機物粒子の非制限的な例としては、BaTiO、Pb(Zr、Ti)O(PZT)、Pb1−xLaZr1−yTi(PLZT、0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O‐PbTiO(PMN‐PT)、ハフニア(HfO)、SrTiO、SnO、CeO、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO、SiO、Y、Al、SiC及びTiO、またはこれらの混合体などが挙げられる。
【0028】
また、無機物粒子としては、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子、すなわちリチウム元素を含むものの、リチウムを貯蔵せずリチウムイオンを移動させる機能を有する無機物粒子を使用することができる。リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子の非制限的な例としては、リチウムホスフェート(LiPO)、リチウムチタンホスフェート(LiTi(PO、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LiAlTi(PO、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、14LiO‐9Al‐38TiO‐39Pなどのような(LiAlTiP)系列ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LiLaTiO、0<x<2、0<y<3)、Li3.25Ge0.250.75などのようなリチウムゲルマニウムチオホスフェート(LiGe、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、LiNなどのようなリチウムナイトライド(Li、0<x<4、0<y<2)、LiPO‐LiS‐SiSなどのようなSiS系列ガラス(LiSi、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、LiI‐LiS‐PなどのようなP系列ガラス(Li、0<x<3、0<y<3、0<z<7)、またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0029】
また、本発明によるカプセルのバインダー高分子は、ガラス転移温度(glass transition temperature、T)が−200ないし200℃である高分子を使用することが望ましいが、これは最終的に形成されるコーティング層の柔軟性及び弾性などのような機械的物性を向上できるためである。
【0030】
また、バインダー高分子は必ずしもイオン伝導能力を有する必要はないが、イオン伝導能力を有する高分子を使用する場合、電気化学素子の性能を一層向上させることができる。従って、バインダー高分子はなるべく誘電率定数が高いものが望ましい。実際に、電解液における塩の解離度は電解液溶媒の誘電率定数に依存するため、バインダー高分子の誘電率定数が高いほど電解質における塩の解離度を向上させることができる。このようなバインダー高分子の誘電率定数は、1.0ないし100(測定周波数=1kHz)範囲が使用可能であり、特に10以上であることが望ましい。
【0031】
このようなバインダー高分子の非制限的な例としては、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリフッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン‐トリクロロエチレン、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールホスフェートジアクリレート(ポリエチレングリコールジアクリレートとビス[2‐アクリロイルオキシエチル(acryloyloxyethyl)]ホスフェートとの共重合体)、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイソブチルメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリアリレート、ポリテトラヒドロフラン、ポリメタアクリル酸リチウム、ポリアクリル酸リチウム、ポリマレイン酸リチウム、ポリビニルスルホン酸リチウム、ポリビニルホスホン酸リチウム、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、及びカルボキシルメチルセルロース、及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0032】
前記無機物粒子とバインダー高分子との重量比は、1:1ないし10:1、または1.2:1ないし9:1であり得る。前記無機物粒子とバインダー高分子との重量比がこのような範囲を満足する場合、非水電解液を貯蔵するカプセル内の無機物粒子の分散性が維持されるため、カプセル被膜の機械的強度が改善され得る。
【0033】
本発明によってカプセルに貯蔵される非水電解液としては、当分野の非水電解液を制限なく使用することができる。
【0034】
本発明で使用される非水電解液において、電解質として含まれ得るリチウム塩としては、リチウム二次電池用電解液に通常使用されるものなどを制限なく使用でき、例えば前記リチウム塩の陰イオンは、F、Cl、Br、I、NO、N(CN)、BF、ClO、PF、(CFPF、(CFPF、(CFPF、(CFPF、(CF、CFSO、CFCFSO、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO、CFCO、CHCO、SCN、及び(CFCFSOからなる群より選択されたいずれか一つであり得る。
【0035】
本発明で使用される非水電解液において、電解液に含まれる有機溶媒としては、リチウム二次電池用電解液に通常使用されるものなどを制限なく使用でき、代表的にはプロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ビニレンカーボネート、スルホラン、γ‐ブチロラクトン、プロピレンスルファイド、及びテトラヒドロフランからなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物などを使用することができる。特に、前記カーボネート系有機溶媒のうち環状カーボネートであるエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートは、高粘度の有機溶媒であって、誘電率が高く、電解質内のリチウム塩をよく解離するため、望ましく使用することができる。このような環状カーボネートにジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートのような底粘度かつ低誘電率の線状カーボネートを適当な比率で混合して使用すれば、高い電気伝導率を有する電解液を製造できるため、更に望ましく使用することができる。
【0036】
非水電解液を貯蔵するカプセルを製造する方法は、当分野で周知の多様な方法を制限なく用いることができる。例えば、溶媒蒸発法(solvent evaporation)、相分離法(coacervation)、界面縮重合法(interfacial polycondensation)、イン‐サイチュー重合法(in‐situ polymerization)、マイクロ反応法(micro‐reaction process)、圧電プロセス(piezoelectric process)、噴霧乾燥法などで製造することができる。
【0037】
具体的に、カプセルを製造する一方法としては、セルロース系化合物をケトン類またはエステル類の溶媒に溶かして乳相溶液を製造した後、前記乳相溶液に電解液を添加し、分散させて混合溶液を製造し、該混合溶液とポリビニルアルコールのような水溶性高分子溶液とを混合し、高速回転させて乳相溶液を拡散させてエマルションを製造し、該エマルションを利用してマイクロカプセルを製造する方法が挙げられる。
【0038】
他の方法としては、セルロース系化合物、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリフッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレンなどのように電解液を含有できる高分子溶液と電解液とを混ぜて均一に分布させた後、電解液が分布した高分子溶液を噴射法(spray)で噴射し、反応容器内の圧力と温度を適当に維持させてマイクロビーズ(microbead)形態のカプセルを製造する方法が挙げられる。
【0039】
その他、親水性と非親水性の性質を有するミセル(micelle)やコロイド(colloid)を分散することで気泡(bubble)形状を作れる物質を利用することで、マイクロカプセルを製造することができる。または、薬物伝達体系(drug delivery system)で使用するカプセル化技術を応用することもできる。
【0040】
上記のカプセルの製造方法は、例示に過ぎず、本発明のカプセルの製造方法がこれらに限定されることはない。また、本発明のカプセルは無機物粒子を含むが、無機物粒子は上記の製造方法においてカプセル被膜用高分子溶液に添加混合されてカプセルとして製造される。
【0041】
製造されるカプセルの大きさは、一般に数μmないし数十μm程度であって、マイクロオーダーの大きさを有し得るが、貯蔵される非水電解液の量またはカプセル被膜材の種類によって多様な大きさを有し得る。また、所望の具体的な用途と製造工程によって大きさと形態が変わる。
【0042】
以下、本発明による前記カプセルを利用したリチウム二次電池の製造方法の一実施例を説明する。しかし、下記の製造方法は例示に過ぎないため、これらによって本発明の範囲が制限されることはない。
【0043】
本発明による非水電解液を含有したカプセルが用意されれば、それを適当な分散媒に分散させた後、セパレータの少なくとも一面または電極とセパレータとが接触する面に塗布する。この場合、セパレータと電極の両方に塗布することもできる。
【0044】
本発明で使用されるセパレータとしては、当分野でセパレータとして通常使用される高分子多孔性基材を制限なく使用することができる。例えば、ポリオレフィン系多孔性基材;またはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエチレンナフタレンからなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物から形成された多孔性基材であることが望ましい。前記ポリオレフィン系多孔性基材は、通常使用されるポリオレフィン系多孔性基材であればすべて使用可能である。より具体的には、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリぺンテンなどのポリオレフィン系高分子をそれぞれ単独でまたはこれらを混合した高分子から形成された膜(membrane)や不織布が挙げられる。
【0045】
また、本発明による正極及び負極としては、リチウム二次電池の製造に通常使用されるものなどをすべて使用することができる。
【0046】
本発明のリチウム二次電池において、正極活物質としてはリチウム含有転移金属酸化物(oxide)を望ましく使用でき、例えば、LiCoO(0.5<x<1.3)、LiNiO(0.5<x<1.3)、LiMnO(0.5<x<1.3)、LiMn(0.5<x<1.3)、Li(NiCoMn)O(0.5<x<1.3、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi1−yCo(0.5<x<1.3、0<y<1)、LiCo1−yMn(0.5<x<1.3、0≦y<1)、LiNi1−yMn(0.5<x<1.3、0≦y<1)、Li(NiCoMn)O(0.5<x<1.3、0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn2−zNi(0.5<x<1.3、0<z<2)、LiMn2−zCo(0.5<x<1.3、0<z<2)、LiCoPO(0.5<x<1.3)、及びLiFePO(0.5<x<1.3)からなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物を使用でき、前記リチウム含有転移金属酸化物は、アルミニウム(Al)などの金属や金属酸化物でコーティングすることもできる。また、前記リチウム含有転移金属酸化物の外に硫化物(sulfide)、セレン化物(selenide)、及びハロゲン化物(halide)などを使用することもできる。
【0047】
望ましくは、LiCoO(0.5<x<1.3)とLi(NiCoMn)O(0.5<x<1.3、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)との混合物、またはアルミニウムでコーティングされたLiCoO(0.5<x<1.3)を正極活物質として使用することができる。特に、Li(NiCoMn)O(0.5<x<1.3、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)は、高電圧条件下で高い出力特性を発揮できる点で望ましい。
【0048】
負極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出できる炭素材、リチウム金属、ケイ素、またはスズなどを使用でき、リチウムに対する電位が2V未満であるTiO、SnOのような金属酸化物も使用可能である。望ましくは、炭素材を使用できるが、該炭素材としては、低結晶性炭素及び高結晶性炭素などを使用することができる。低結晶性性炭素としては、軟質炭素(soft carbon)及び硬質炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、天然黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソカーボンマイクロビーズ(meso‐carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)、及び石油または石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0049】
正極及び/または負極は、結着剤を含み得、該結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン(PVDF‐co‐HFP)、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートなど、多様な種類のバインダー高分子を使用することができる。
【0050】
カプセルの塗布が完了すれば、正極と負極との間にセパレータを介在させて電極組立体を製造し、該電極組立体を電池容器に収納する。
【0051】
このとき、前記カプセルを破壊して貯蔵された非水電解液を電極組立体に含浸させる段階を更に含が、このようなカプセルの破壊及び電極組立体への含浸段階は、カプセルを破壊する熱圧着工程が電極組立体を電気容器に収納する段階の以前、以後、または両方ともに行われるかによって、3つの方法に分けられ得る。
【0052】
第一は、製造された電極組立体を電気容器に収納する段階の以前に電極組立体を熱圧着して前記カプセルを破壊することで、貯蔵された非水電解液を電極組立体に含浸させる段階である。
【0053】
非水電解液を含有したカプセルの破壊は、通常の電極組立体の熱圧着条件下で行うことができ、具体的なカプセルの被膜形成用材料の種類によって多様な範囲で行うこともできる。
【0054】
カプセルが破壊されれば、貯蔵された非水電解液が流出してセパレータと電極に含浸するため、別途の非水電解液の注入工程は不要となる。
【0055】
このように熱圧着工程が終了すれば、前記電極組立体を電池容器に収納して電池を製造する。本発明のリチウム二次電池の外形は、特に制限されないが、缶を用いた円筒型、角形、パウチ型またはコイン型などであり得る。
【0056】
第二は、前記電極組立体を電気容器に収納した後、該電気容器を熱圧着して前記カプセルを破壊することで、貯蔵された非水電解液を電極組立体に含浸させる段階である。
【0057】
このとき、前記容器を熱圧着する工程は、80℃、10kgf/cmの条件下で行えるが、使用される物質のガラス転移温度と沸点によって適宜変更することができる。この際にも、電極組立体を圧着する場合と同様にカプセルが破壊されれば、貯蔵された非水電解液が流出してセパレータと電極に含浸するようになるため、別途の非水電解液の注入工程は不要となる。
【0058】
また、第三は、カプセルを破壊する熱圧着工程が、電極組立体を電気容器に収納する段階の以前と以後ともに行われる段階である。この場合は、電極組立体を電気容器に収納する段階の前に電極組立体を熱圧着して電極組立体内に備えられたカプセルの一部を破壊し、その後、熱圧着された電極組立体を電池容器に収納した後、前記電気容器を更に熱圧着して破壊されていない残りのカプセルを全て破壊することで、カプセルに貯蔵された非水電解液を電極組立体に含浸させる。
【0059】
電極組立体を直接熱圧着する場合、理論上、電極内の電解液の含浸度が優れるが、圧着後に気化する電解液の溶媒成分を定量化し難いため、電池容器に電極組立体を収納して密封した後、熱圧着することが工程の均一性維持に有利である。また、複数の電極組立体を積層(stacking)する場合、バイセル(bicell)の形態で電極組立体を予め熱圧着した状態で電極組立体全体を積層し、該全体電極組立体を電池容器に入れ、更に熱圧着する方法がより効率的である。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0061】
実施例1
(電解液を貯蔵しているカプセル及びそれを含むコーティング液の製造)
相分離法とUV硬化を通じたコーティング液の製造方法を利用した。まず、電解液から構成された第1相(phase1)では、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート(体積比5:5)とから構成され、LiPFが1mol/Lの濃度で溶けている溶液に、バインダー高分子としてPEGDA_700(polyethylene glycol diacrylate、Mn:700)を重量比1:1で溶解させた。その後、非水電解液を貯蔵するカプセルの被膜の機械的強度を高めるため、無機物粒子であるAlとバインダー高分子とを重量比1.2:1(Al:バインダー高分子)になるように前記第1相に添加した後、撹拌して分散させた。
【0062】
ヘプタン(heptane)が主溶媒として構成された第2相(phase2)は、ヘプタン100重量部に非イオン性界面活性剤(Sorbitance monooleate、Span 80)を5.9重量部投入し、光開始剤であるMBF(benzene acetic acid)を0.8重量部投入して製造した。第1相と第2相とを重量比40:100で混合した後、1,000rpm以上、30分間撹拌した後、UVをUVA領域365nmで照射した。照射の後、ヘプタンを蒸発させてカプセルを製造した。製造されたカプセルを観察したSEM分析写真を図2に示した。
【0063】
(電池の製造)
負極は、93重量%の炭素活物質(大阪ガス社製のMCMB10‐28)と7重量%のポリフッ化ビニリデン(PVDF、ElfAtochem社のKynar 761)とを、溶媒であるN‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)に添加して混合機(Ika社のMixer)で2時間混合した後、銅ホイル集電体にコーティングし、130℃で乾燥して製造した。正極は、91重量%のLiCoO、3重量%のPVDF(Kynar761)、及び6重量%の導電性炭素(Lonza社のKS‐6)を、溶媒であるN‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)と混合して混合機(Ika社のMixer)で2時間混合した後、アルミニウムホイル集電体にコーティングし、130℃で乾燥して製造した。セパレータのベアフィルム(bear film)としては、ポリプロピレン系列の分離膜(Celgard社の2400)を使用した。
【0064】
予め製造された電解液を貯蔵したカプセルを、負極の表面にコーター(blade)を用いて一定量塗布した。その後、ヘプタンを除去するため、常温で2時間真空乾燥を行った。乾燥した負極、正極及びセパレータをアルミニウムパウチに入れてモノセルとして構成した。温度と圧力が調節される圧着機で、上板と下板との間隔が30μm程に維持される程度に、60℃で10分間1次プレスを行った。これは、まず常温でカプセルの破壊を誘導することで、カプセルに貯蔵された非水電解液が電極及びセパレータによく含浸するようにするためである。その後、20分間、80℃に昇温しながら2次プレスを行い、このとき最終温度及び圧力は80℃及び10kgf/cmに調節した。このように製造されたモノセルを用いて0.1Cで満充電活性化し、セル評価を行った。
【0065】
実施例2
バインダー高分子としてPEGDA_700とビス[2‐(アクリロイルオキシ)エチル]ホスフェートとを重量比1:1で混合し、UV重合して製造されたポリエチレングリコールホスフェートジアクリレートを使用した点を除き、実施例1と同様の方法で非水電解液を貯蔵したカプセル及びそれを利用した電池を製造した。
【0066】
比較例1
無機物粒子であるAlを使用しない点を除き、実施例1と同様な方法で非水電解液を貯蔵したカプセル及びそれを利用した電池を製造した。
【0067】
(フィルム形態の電解質の観察)
実施例1による電池において、正極と負極との間で熱圧着によって球形粒子構造の電解質がフィルム形態の電解質によく変形されるか否かを、SEM写真分析で確認した。モノセル型の電池表面に、シェル構造の球形粒子電解質溶液をコーターで均一に塗布し、80℃、10kgf/cmの条件で熱圧着する前後の負極表面の状態を、図3及び図4にてそれぞれ比較した。このとき、図3は熱圧着工程の前の負極表面のSEM写真であり、図4は熱圧着工程後の負極表面のSEM写真である。図3及び図4を参照すれば、熱圧着工程後の負極表面に均一なフィルム形態の電解質が形成されたことを確認することができる。
【0068】
(無機物粒子の効果評価)
実施例1及び比較例1の電池を満充電した後、85℃で4時間貯蔵後に厚さを観察し、それを図5に示した。図5を参照すれば、カプセルに無機物粒子であるAlが含まれた実施例1の場合には、正極と負極との間に形成された電解質層の機械的強度が増加したため、電池を高温貯蔵するとき電池の厚さ膨張を抑制する効果があることが分かる。
【0069】
また、非水電解液を担持したカプセルを熱圧着で破壊した後の1C放電電圧プロファイルを観察して図6に示した。図6から、無機物粒子の有無に構わず電池の駆動には問題がないことが分かった。
【0070】
(バインダー高分子が電池性能に及ぼす影響の評価)
多様なバインダー高分子が電池性能に及ぼす影響を観察するため、実施例2と同様に、負極表面で抵抗を減少させるホスフェート(PO)構造の官能基を有するビス[2‐アクリロイルオキシエチル]ホスフェートと、ポリエチレングリコールジアクリレートとの共重合体であるポリエチレングリコールホスフェートジアクリレートをバインダー高分子として使用することで、非水電解液が貯蔵されたカプセルを製造し、それを負極表面に均一に塗布し、熱圧着工程を経て破壊されたカプセルが分散された層を備えた電池を製造した。
【0071】
上記のように製造された実施例2と、ポリエチレングリコールジアクリレートをバインダー高分子として使用した実施例1の電池とを10C高率放電評価し、その結果を図7に示した。ホスフェート(PO)構造の官能基を有するバインダー高分子を採用した実施例2の場合、実施例1よりも高率放電特性が改善されたことが分かった。これによって、カプセルの製造時にバインダー高分子に負極(還元)または正極(酸化)に適した官能基を自由に導入することが可能であり、それを通じて電池性能を向上できることが確認できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7