(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、白金族金属系触媒と、反応抑制剤と、前記反応抑制剤の沸点よりも高い沸点を有する溶媒とを含有する硬化性樹脂組成物を支持基板上に塗布して、前記支持基板上に未硬化の硬化性樹脂組成物層を形成する組成物層形成工程と、
前記硬化性樹脂組成物層から前記反応抑制剤を除去する第1の除去工程と、
前記第1の除去工程の後、前記硬化性樹脂組成物層から前記溶媒を除去して、樹脂層付き支持基板を得る第2の除去工程と、
前記樹脂層上にガラス基板を剥離可能に積層して、ガラス基板を有するガラス積層体を得る積層工程と、を備えるガラス積層体の製造方法。
前記組成物層形成工程が、前記支持基板の厚みよりも小さい幅を有する吸引溝および/または前記支持基板の厚みよりも小さい直径を有する吸引孔が表面に設けられた吸引ステージ上に前記支持基板を配置し、前記吸引溝および/または吸引孔を通じて吸引して前記支持基板を前記吸引ステージ上に吸引固定する吸引固定工程と、
前記硬化性樹脂組成物を吐出する吐出ノズルから前記硬化性樹脂組成物を前記支持基板に向けて吐出させつつ、前記支持基板が吸引固定された吸引ステージおよび吐出ノズルの少なくとも一方を相対的に移動させることにより、前記支持基板上に前記未硬化の硬化性樹脂組成物層を形成する吐出工程とを備える、請求項1に記載のガラス積層体の製造方法。
前記第1の除去工程および/または前記第2の除去工程において、複数の支持ピンの頂部に載置されたセッター上に、前記未硬化の硬化性樹脂組成物層を表面に備える前記支持基板を配置して、前記反応抑制剤の除去および/または前記溶媒の除去を行う、請求項1または2に記載のガラス積層体の製造方法。
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法より製造されるガラス積層体の前記ガラス基板の表面上に電子デバイス用部材を形成し、電子デバイス用部材付き積層体を得る部材形成工程と、
前記電子デバイス用部材付き積層体から前記樹脂層付き支持基板を除去し、前記ガラス基板と前記電子デバイス用部材とを有する電子デバイスを得る分離工程と、を備える電子デバイスの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適実施態様について図面を参照して説明するが、本発明は、以下の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、以下の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
なお、本発明において、支持基板の層と樹脂層の界面の剥離強度が樹脂層とガラス基板の層の界面の剥離強度よりも高いことを、以下、樹脂層とガラス基板とは剥離可能に密着し、支持基板と樹脂層とは固定されているという。
【0019】
本発明者は、従来技術(特許文献1および2の発明)で使用されるガラス積層体中の樹脂層の表面に凹凸が生じる原因として、主に硬化性樹脂組成物の硬化処理段階において樹脂層の凹凸が生じることを見出した。具体的には、従来の方法においては、硬化性樹脂組成物中に含まれる反応抑制剤と溶媒とが同時に揮発、または、溶媒が先に揮発していたため、樹脂層表面が荒れた状態で硬化が進行し、表面の凹凸が大きくなっていた。
そこで、本発明者は、硬化性樹脂組成物層中に含まれる反応抑制剤を除去する第1の除去段階と、硬化性樹脂組成物層中に残存する溶媒を除去する第2の除去段階とを段階的に行うことにより、上記課題が解決できることを見出している。硬化性樹脂組成物層中の反応抑制剤と溶媒との除去をそれぞれ上記2つの段階に分けることにより、まず、第1の除去段階において反応抑制剤が除去され、硬化性樹脂組成物層中で硬化反応が進行し始める。結果として、樹脂の架橋構造が形成され、その後溶媒が除去される際にも層の形状の変化がより抑制され、表面凹凸の少ない樹脂層を得ることができる。
以下に、ガラス積層体および電子デバイスの製造方法について、各工程順に説明する。
【0020】
<第1の実施態様>
図1は、本発明の電子デバイスの製造方法の第1の実施態様における製造工程を示すフローチャートである。
図1に示すように、電子デバイスの製造方法は、組成物層形成工程S102、第1の除去工程S104、第2の除去工程S106、積層工程S108、部材形成工程S110、および分離工程S112を備える。なお、本発明のガラス積層体の製造方法は、上記組成物層形成工程S102、第1の除去工程S104、第2の除去工程S106、および積層工程S108を備える。
以下に、各工程で使用される材料およびその手順について詳述する。まず、組成物層形成工程S102について詳述する。
【0021】
<組成物層形成工程>
組成物層形成工程S102は、アルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンと、ケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、白金族金属系触媒と、反応抑制剤と、反応抑制剤の沸点よりも高い沸点を有する溶媒とを含有する硬化性樹脂組成物を支持基板上に塗布して、支持基板上に未硬化の硬化性樹脂組成物層を形成する工程である。該工程S102を実施することにより、
図2(A)に示すように、支持基板10上に硬化性樹脂組成物層12が形成される。
【0022】
以下で、まず、本工程S102で使用される材料(支持基板、硬化性樹脂組成物)について詳述し、その後該工程S102の手順について詳述する。
【0023】
[支持基板]
支持基板10は、後述する樹脂層14と協働して、後述するガラス基板18を支持して補強し、後述する部材形成工程S110(電子デバイス用部材の製造工程)において電子デバイス用部材の製造の際にガラス基板18の変形、傷付き、破損などを防止する。また、従来よりも厚さが薄いガラス基板を使用する場合、従来のガラス基板と同じ厚さのガラス積層体とすることにより、部材形成工程S110において、従来の厚さのガラス基板に適合した製造技術や製造設備を使用可能にすることも、支持基板10を使用する目的の1つである。
【0024】
支持基板10としては、例えば、ガラス板、プラスチック板、SUS板、セラミック板などの金属板などが用いられる。支持基板10は、部材形成工程S110が熱処理を伴う場合、ガラス基板18との線膨張係数の差の小さい材料で形成されることが好ましく、ガラス基板18と同一材料で形成されることがより好ましく、支持基板10はガラス板であることが好ましい。特に、支持基板10は、ガラス基板18と同じガラス材料からなるガラス板であることが好ましい。
【0025】
支持基板10の厚さは、ガラス基板18よりも厚くてもよいし、薄くてもよい。好ましくは、ガラス基板18の厚さ、樹脂層14の厚さ、およびガラス積層体の厚さに基づいて、支持基板10の厚さが選択される。例えば、現行の部材形成工程が厚さ0.5mmの基板を処理するように設計されたものであって、ガラス基板18の厚さと樹脂層14の厚さとの和が0.1mmの場合、支持基板10の厚さを0.4mmとする。支持基板10の厚さは、通常の場合、0.2〜5.0mmであることが好ましい。
【0026】
支持基板10がガラス板の場合、ガラス板の厚さは、扱いやすく、割れにくいなどの理由から、0.08mm以上であることが好ましい。また、ガラス板の厚さは、電子デバイス用部材形成後に剥離する際に、割れずに適度に撓むような剛性が望まれる理由から、1.0mm以下であることが好ましい。
【0027】
支持基板10とガラス基板18との25〜300℃における平均線膨張係数(以下、単に「平均線膨張係数」という)の差は、好ましくは500×10
-7/℃以下であり、より好ましくは300×10
-7/℃以下であり、さらに好ましくは200×10
-7/℃以下である。差が大き過ぎると、部材形成工程S110における加熱冷却時に、ガラス積層体が激しく反ったり、ガラス基板18と後述する樹脂層付き支持基板16とが剥離したりする可能性がある。ガラス基板18の材料と支持基板10の材料が同じ場合、このような問題が生じるのを抑制することができる。
【0028】
[硬化性樹脂組成物]
硬化性樹脂組成物は、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、白金族金属系触媒と、反応抑制剤と、反応抑制剤の沸点よりも高い沸点を有する溶媒とを含有する。該硬化性樹脂組成物は、後述する第1の除去工程S104および第2の除去工程S106を経て硬化して、硬化シリコーン樹脂となる。
以下に、該組成物中に含まれる材料について詳述する。
【0029】
(オルガノポリシロキサン)
該組成物中には、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン(以後、ポリシロキサン(a)とも称する)と、ケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサン(以後、ポリシロキサン(b)とも称する)とが含まれる。該組成物は、いわゆる付加反応型シリコーン樹脂組成物に該当し、後述する白金族金属系触媒の存在下、アルケニル基とヒドロシリル基とが反応して、架橋反応が進行し、シリコーン樹脂を含む樹脂層14が形成される。該樹脂層14(シリコーン樹脂層)は、耐熱性や剥離性に優れる。つまり、樹脂層14は、ガラス基板18表面に密着するとともに、その自由表面は優れた易剥離性を有する。
【0030】
ポリシロキサン(a)は、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有し、その結合位置は特に制限されず、分子末端または側鎖が挙げられる。
アルケニル基の種類は特に制限されないが、通常、炭素原子数が2〜8のものが好ましく、2〜4のものがより好ましい。例えば、ビニル基(エテニル基)、アリル基(2−プロペニル基)、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキシニル基、ヘプテニル基などが挙げられ、中でも耐熱性に優れる点から、ビニル基が好ましい。
ポリシロキサン(a)中に含まれるアルケニル基の数は特に制限されないが、樹脂層14の耐熱性がより優れる点で、一分子内にアルケニル基を少なくとも2つ有することが好ましく、2〜20つ有することがより好ましい。
ポリシロキサン(a)中に含まれるアルケニル基の含有量は特に制限されないが、樹脂層14の耐熱性がより優れる点で、ポリシロキサン(a)中の全ケイ素原子結合有機基に対して、0.001〜10モル%が好ましく、0.01〜5モル%がより好ましい。
【0031】
ポリシロキサン(a)は、アルケニル基以外のケイ素原子に結合した有機基(以下、「ケイ素原子結合有機基」ともいう)を有していてもよく、脂肪族不飽和結合を有しないものであれば特に限定されず、例えば、非置換または置換の一価炭化水素基(炭素原子数が1〜12が好ましく、1〜10がより好ましい)が挙げられる。この非置換または置換の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部が塩素原子、フッ素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換された、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基である。
【0032】
ポリシロキサン(b)は、ケイ素原子に結合した水素原子を有し、その結合位置は特に制限されず、分子末端または側鎖が挙げられる。
ポリシロキサン(b)中に含まれる水素原子の数は特に制限されないが、樹脂層14の耐熱性がより優れる点で、1分子中に少なくとも2つ有することが好ましく、少なくとも3つ有することがより好ましい。上限は特に制限されないが、通常、500つ以下が好ましく、200つ以下がより好ましい。
【0033】
ポリシロキサン(b)は、水素原子以外のケイ素原子に結合した有機基を有していてもよく、上述したケイ素原子結合有機基などが例示される。
ポリシロキサン(b)中におけるケイ素原子に結合した水素原子の含有量は特に制限されないが、樹脂層14の耐熱性がより優れる点で、ポリシロキサン(b)中の全ケイ素原子結合有機基と全ケイ素原子結合水素原子との合計に対して、0.1〜60モル%が好ましく、1〜50モル%がより好ましい。
【0034】
ポリシロキサン(a)およびポリシロキサン(b)の分子構造は特に限定されず、例えば、直鎖状、環状、分岐鎖状などが挙げられる。
【0035】
ポリシロキサン(a)およびポリシロキサン(b)の粘度は特に制限されず、硬化性樹脂組成物層12の成膜性がより優れる点から、25℃における粘度が0.1〜5,000cP(センチポアズ)であることが好ましく、0.5〜1,000cPであることがより好ましく、5〜500cPがさらに好ましい。
【0036】
組成物中におけるポリシロキサン(a)とポリシロキサン(b)との含有比率は特に限定されないが、ポリシロキサン(b)中のケイ素原子に結合した水素原子と、ポリシロキサン(a)中の全アルケニル基のモル比(水素原子/アルケニル基)が0.7〜1.05となるように調整することが好ましい。なかでも、0.8〜1.0となるように含有比率を調整することが好ましい。上記範囲内であれば、長時間放置の剥離力の上昇が抑制されると共に、耐薬品性により優れる。
【0037】
ポリシロキサン(a)および(b)としては、例えば、ビニルシリコーン「8500」(荒川化学工業社製)とメチルハイドロジェンポリシロキサン「12031」(荒川化学工業社製)との組み合わせ、ビニルシリコーン「11364」(荒川化学工業社製)とメチルハイドロジェンポリシロキサン「12031」(荒川化学工業社製)との組み合わせ、ビニルシリコーン「11365」(荒川化学工業社製)とメチルハイドロジェンポリシロキサン「12031」(荒川化学工業社製)との組み合わせなどが挙げられる。
【0038】
(白金族金属系触媒)
白金族金属系触媒(ヒドロシリル化用白金族金属触媒)は、上記ポリシロキサン(a)中のアルケニル基と、上記ポリシロキサン(b)中の水素原子とのヒドロシリル化反応を、進行・促進させるための触媒である。
白金族金属系触媒としては、白金系、パラジウム系、ロジウム系などの触媒が挙げられ、特に白金系触媒として用いることが経済性、反応性の点から好ましい。白金系触媒としては、公知のものを用いることができる。具体的には、白金微粉末、白金黒、塩化第一白金酸、塩化第二白金酸などの塩化白金酸、四塩化白金、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物、あるいは白金のオレフィン錯体、アルケニルシロキサン錯体、カルボニル錯体などがあげられる。
組成物中における白金族金属触媒の含有量は特に制限されないが、ポリシロキサン(a)とポリシロキサン(b)との合計質量に対する質量比で、2〜400ppmが好ましく、5〜300ppmがより好ましく、8〜200ppmが特に好ましい。
【0039】
(反応抑制剤)
反応抑制剤(ヒドロシリル化用反応抑制剤)は、上記白金族金属系触媒の常温での触媒活性を抑制して、本発明の組成物の可使時間を長くする所謂ポットライフ延長剤(遅延剤とも呼ばれる)である。
反応抑制剤としては、例えば、各種有機窒素化合物、有機リン化合物、アセチレン系化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物などが挙げられる。特に、アセチレン系化合物(例えば、アセチレンアルコール類およびアセチレンアルコールのシリル化物)が好適である。
反応抑制剤として、より具体的には、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、2−エチニルイソプロパノール、2−エチニルブタン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレン系アルコール類;トリメチル(3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オキシ)シラン、メチルビニルビス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シラン、((1,1−ジメチル−2−プロピニル)オキシ)トリメチルシラン等のシリル化アセチレン系アルコール類;ジアリルマレート、ジメチルマレート、ジエチルフマレート、ジアリルフマレート、ビス(メトキシイソプロピル)マレート等の不飽和カルボン酸エステル類;2−イソブチル−1−ブテン−3−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3−メチル−3−ヘキセン−1−イン、1−エチニルシクロヘキセン、3−エチル−3−ブテン−1−イン、3−フェニル−3−ブテン−1−イン等の共役ene−yne類;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシクロテトラシロキサン類などが例示される。
【0040】
反応抑制剤の沸点は特に制限されないが、除去が容易であり、加熱により該反応抑制剤を除去する場合に樹脂層14の劣化をより防止できる点より、250℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、組成物の貯蔵安定性がより優れる点から、50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。
【0041】
組成物中における反応抑制剤の含有量は特に制限されないが、上記ポリシロキサン(a)とポリシロキサン(b)の合計100質量部に対して0.00001〜5質量部の範囲内であることが好ましい。
【0042】
なお、組成物中に反応抑制剤は2種以上含まれていてもよいが、この場合、反応抑制剤の中で最も沸点の高い反応抑制剤の沸点よりも、後述する溶媒の沸点が高いことが必要である。
【0043】
(溶媒)
溶媒は、後述する第1の除去工程S104および第2の除去工程S106で除去されるまで組成物中に含有され、組成物の取扱い性(成膜性など)を向上させる。
組成物中に含まれる溶媒の沸点は、上記反応抑制剤の沸点より高い。溶媒の沸点が反応抑制剤の沸点より高い場合、第1の除去工程S104において反応抑制剤を優先的に除去することができる。それにより、溶媒が残存した状態の硬化性樹脂組成物層中で硬化反応を進行させることができ、溶媒の揮発を行う際に、該組成物層の表面などで溶媒の揮発に起因した凹凸の発生などを抑制することができる。溶媒の沸点が、反応抑制剤の沸点以下の場合は、第1の除去工程S104において反応抑制剤と同時に、または、溶媒が先に揮発してしまい、結果として表面凹凸の大きい樹脂層が形成されてしまう。
【0044】
溶媒の沸点は特に制限されないが、除去が容易であり、加熱により該溶媒を除去する場合に樹脂層14の劣化をより防止できる点より、270℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、230℃以下がさらに好ましい。下限は特に制限されないが、組成物の貯蔵安定性がより優れる点から、50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。
【0045】
また、溶媒の沸点と反応抑制剤の沸点との差は特に制限されないが、樹脂層14表面の凹凸をより抑制できる点で、50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、加熱により溶媒を除去する場合に加熱温度をより低くできる点で、150℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。
【0046】
溶媒の種類は反応抑制剤の沸点と所定の関係を満たしていれば特に制限されないが、例えば、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、n−ドデシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物;n−デカン、i−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカン、n−テトラデカン、シクロオクタン等の鎖状または環状の脂肪族炭化水素化合物またはこれらの二種以上の混合物からなるパラフィン系混合溶媒やイソパラフィン系混合溶媒;安息香酸エチル、フタル酸ジエチル等のエステル化合物;ジブチルエーテル、アニソール、フェネトール等のエーテル化合物、およびこれらの有機溶媒の二種以上の混合物が例示される。
【0047】
なお、組成物中において溶媒が2種以上含まれていてもよいが、この場合、溶媒の中で沸点が最も低い溶媒の沸点が、含有される反応抑制剤の沸点よりも高いことが必要である。
【0048】
組成物中における溶媒と反応抑制剤との含有量比は特に制限されないが、樹脂層14の凹凸をより抑制できる点で、質量比(溶媒の質量/反応抑制剤の質量)は、40〜400が好ましく、60〜150が好ましい。
【0049】
組成物中における溶媒の含有量は特に制限さないが、硬化性樹脂組成物層の成膜性がより優れる点で、組成物全量に対して、20〜70質量%が好ましく、30〜60質量%がより好ましい。
【0050】
(その他の添加剤)
本組成物には、必要に応じて、他の任意成分が含まれていてもよい。任意の成分としては、乾式シリカ、湿式シリカ、焼成シリカ、結晶性シリカ、酸化チタン、アルミナ、炭酸カルシウム、カーボンブラック等の無機充填剤;エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の有機樹脂微粉末;銀、銅等の導電性金属粉末;その他、染料、顔料が例示される。
【0051】
上記成分を含有する組成物の粘度は特に制限されず、硬化性樹脂組成物層12の成膜性がより優れる点から、25℃における粘度が0.5〜100cP(センチポアズ)であることが好ましく、5〜50cPであることがより好ましい。
【0052】
[工程S102の手順]
支持基板10の表面上に上記硬化性樹脂組成物12を塗布する方法は特に制限されず、公知の方法を採用し得る。例えば、塗布方法としては、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、グラビアコート法などが挙げられる。このような方法の中から、硬化性樹脂組成物の種類に応じて適宜選択することができる。
【0053】
また、硬化性樹脂組成物の塗布量は特に制限されないが、樹脂層14の好適な厚みが得られる点から、1〜100g/m
2であることが好ましく、5〜20g/m
2であることがより好ましい。
【0054】
なお、支持基板10表面上に樹脂層14となる硬化性樹脂組成物層12を形成した後で、後述する第1の除去工程S104の実施前に、硬化性樹脂組成物層12を備える支持基板10を静置することが好ましい。所定時間静置することにより、硬化性樹脂組成物層12の表面の平坦性が向上し、硬化の際に樹脂層14の表面が荒れることをより抑制することができる。
静置する際の温度は特に制限されず、反応抑制剤の沸点の温度よりも低い温度で静置すればよく、0〜100℃であることが好ましく、0〜室温(25℃程度)がより好ましい。
静置時間は特に制限されず、樹脂層14の平坦性および生産性の両者のバランスがより優れる点で、30秒〜1時間が好ましく、1分〜10分がより好ましい。
【0055】
<第1の除去工程>
第1の除去工程S104は、上記組成物層形成工程S102の後、硬化性樹脂組成物層12から反応抑制剤を除去する工程である。該工程S104を実施することにより、硬化性樹脂組成物層12中から反応抑制剤が除去され、硬化性樹脂組成物層12中でポリシロキサン(a)とポリシロキサン(b)との間の付加反応がより進行し始め、該組成物層12が半硬化状態となる。
【0056】
本工程S104の手順は特に制限されず、反応抑制剤を除去できればどのような方法を実施してもよい。例えば、上記反応抑制剤の沸点以上で、かつ、上記溶媒の沸点未満の温度で硬化性樹脂組成物層12を加熱する方法(第1の加熱工程)や、硬化性樹脂組成物層12中の溶媒が揮発せず、反応抑制剤が揮発する減圧処理によって、反応抑制剤を硬化性樹脂組成物層12中から除去する方法などが挙げられる。反応抑制剤をより選択的に除去できる点から、上記第1の加熱工程が好ましい。
以下では、主に、第1の加熱工程について詳述する。
【0057】
該工程S104での加熱温度は、上記反応抑制剤の沸点以上で、かつ、上記溶媒の沸点未満の温度であることが好ましい。
なかでも、樹脂層14の表面凹凸がより抑制される点で、反応抑制剤の沸点よりも高い温度であることが好ましく、10℃以上高い温度であることがより好ましい。
また、樹脂層14の表面凹凸がより抑制される点で、溶媒の沸点よりも20℃以上低い温度であることが好ましく、10℃以上低い温度であることがより好ましい。
【0058】
加熱時間は使用される反応抑制剤および溶媒の種類によって適宜最適な条件が選択されるが、生産性が優れ、樹脂層14の表面凹凸がより抑制される点で、30秒間〜2時間が好ましく、1分間〜1時間がより好ましい。
【0059】
加熱の方法は特に制限されず、オーブンなどの公知の加熱装置を使用することができる。
【0060】
なお、本工程S104において、本発明の効果を損なわない範囲において、硬化性樹脂組成物層12中の溶媒が一部揮発してもよい。
【0061】
<第2の除去工程>
第2の除去工程S106は、上記第1の除去工程S104の後に、硬化性樹脂組成物層中に残存している溶媒を除去して、硬化性樹脂組成物層を硬化して樹脂層を得る工程である。硬化性樹脂組成物層12中の溶媒が揮発して、該組成物層12内での付加反応(硬化反応)がより進行し、
図2(B)に示すように、支持基板10上に樹脂層14が形成される。
【0062】
本工程S106の手順は特に制限されず、溶媒を除去できればどのような方法を実施してもよい。例えば、上記溶媒の沸点以上の温度で硬化性樹脂組成物層12を加熱する方法(第2の加熱工程)や、溶媒が揮発する減圧処理によって、溶媒を硬化性樹脂組成物層12中から除去する方法などが挙げられる。
なかでも、該組成物層12内での付加反応(硬化反応)がより進行する点で、上記第2の加熱工程が好ましい。
以下では、主に、第2の加熱工程について詳述する。
【0063】
該工程S106での加熱温度は、上記溶媒の沸点以上の温度であることが好ましい。なかでも、樹脂層14の表面凹凸がより抑制される点で、溶媒の沸点よりも10℃以上高い温度であることがより好ましい。
加熱時間は使用される溶媒の種類によって適宜最適な条件が選択されるが、生産性が優れ、樹脂層14の表面凹凸がより抑制される点で、5分〜2時間が好ましく、10分〜1時間がより好ましい。
【0064】
加熱の方法は特に制限されず、オーブンなどの公知の加熱装置を使用することができる。
【0065】
[樹脂層]
上記工程S106を経て形成される樹脂層14は、支持基板10の少なくとも片面上に固定されており、また、後述するガラス基板18と剥離可能に密着する。樹脂層14は、ガラス基板18と支持基板10とを分離する操作が行われるまでガラス基板18の位置ずれを防止すると共に、分離操作によってガラス基板18から容易に剥離し、ガラス基板18などが分離操作によって破損するのを防止する。また、樹脂層14は支持基板10に固定されており、分離操作において樹脂層14と支持基板10は剥離せず、分離操作によって樹脂層付き支持基板16が得られる。なお、分離操作により、樹脂層14とガラス基板18の界面が剥離しやすいように、分離操作を始めるにあたり、その界面に剥離起点を設けて剥離を行うことが好ましい。
樹脂層14のガラス基板18と接する表面14aは、ガラス基板18の第1主面18aに剥離可能に密着する。本発明では、この樹脂層表面14aの容易に剥離できる性質を易剥離性(剥離性)という。
【0066】
本発明において、上記固定と(剥離可能な)密着は剥離強度(すなわち、剥離に要する応力)に違いがあり、固定は密着に対し剥離強度が大きいことを意味する。また、剥離可能な密着とは、剥離可能であると同時に、固定されている面の剥離を生じさせることなく剥離可能であることも意味する。具体的には、本発明のガラス積層体において、ガラス基板18と支持基板10とを分離する操作を行った場合、密着された面で剥離し、固定された面では剥離しないことを意味する。したがって、ガラス積層体をガラス基板18と支持基板10に分離する操作を行うと、ガラス積層体はガラス基板18と樹脂層付き支持基板16の2つに分離される。
つまり、樹脂層14の支持基板10の表面に対する結合力は、樹脂層14のガラス基板18の第1主面18aに対する結合力よりも相対的に高い。このため、樹脂層14と支持基板10との間の剥離強度は、樹脂層14とガラス基板18との間の剥離強度よりも高くなっている。
【0067】
樹脂層14は、接着力や粘着力などの強い結合力で支持基板10表面に固定されていることが好ましい。通常、上記、硬化性樹脂組成物を支持基板10表面で反応硬化させることにより、樹脂層14は支持基板10表面に接着する。また、支持基板10表面と樹脂層14間に強い結合力を生じさせる処理(例えば、カップリング剤を使用した処理)を施して支持基板10表面と樹脂層14間の結合力を高めることもできる。
一方、樹脂層14はガラス基板18の第1主面に弱い結合力で結合させ、例えば固体分子間におけるファンデルワールス力に起因する結合力で結合させることが好ましい。ガラス基板18に接する前の樹脂層表面14aは、易剥離性の表面であり、この易剥離性の樹脂層表面14aとガラス基板18の第1主面18aとを接触させることにより、両表面を弱い結合力で結合させることができる。
【0068】
樹脂層14の厚さは特に限定されないが、1〜100μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましく、7〜20μmであることがさらに好ましい。樹脂層14の厚さがこのような範囲であると、樹脂層14と後述するガラス基板18との密着が十分になるからである。また、樹脂層14とガラス基板18との間に異物が介在することがあっても、ガラス基板18のゆがみ欠陥の発生をより抑制することができる。また、樹脂層14の厚さが厚すぎると、形成するのに時間および材料を要するため経済的ではない。
【0069】
樹脂層14の表面は平坦であることが好ましく、特に、表面のうねり曲線の最大断面高さ(W
t)は、0.300μm以下であることが好ましい。樹脂層14の表面うねりが上記範囲内であれば、樹脂層14とガラス基板18との間の気泡の発生がより抑制される。なかでも、うねり曲線の最大断面高さ(W
t)は0.200μm以下であることが好ましく、0.100μm以下であることがより好ましい。なお、下限は特に制限されないが、0.010μm以上である場合が多い。
「表面うねり」は、公知の触針式の表面形状測定装置を用いて、JIS B−0610(1987)に記載のうねり曲線の最大断面高さ(W
t)を測定した値である。なお、本発明において、ろ波うねり曲線のカットオフ値は0.8mmとし、測定長さは40mmとする。
【0070】
<積層工程>
積層工程S108は、上記第2の除去工程S106で得られた樹脂層付き支持基板16の樹脂層14表面(14a)上にガラス基板を剥離可能に積層する工程である。より具体的には、
図2(C)に示すように、本工程S108により、樹脂層付き支持基板16の樹脂層14表面上にガラス基板18を積層して、ガラス積層体20が得られる。
なお、剥離可能とは、後述する電子デバイス用部材付き積層体に樹脂層付き支持基板16を剥離するための外力を加えた場合、支持基板10と樹脂層14との界面および樹脂層14内部で剥離すること無く、ガラス基板18と樹脂層14との界面で剥離する性質を意味する。
【0071】
まず、本工程S108で使用されるガラス基板18について詳述し、その後本工程S108の手順について詳述する。
【0072】
[ガラス基板]
ガラス基板18は、第1主面18aが樹脂層14と密着し、樹脂層14側とは反対側の第2主面18bに後述する電子デバイス用部材が設けられる。
ガラス基板18の種類は、一般的なものであってよく、例えば、LCD、OLEDといった表示装置用のガラス基板などが挙げられる。ガラス基板18は耐薬品性、耐透湿性に優れ、且つ、熱収縮率が低い。熱収縮率の指標としては、JIS R 3102(1995年改正)に規定されている線膨張係数が用いられる。
【0073】
ガラス基板18の線膨張係数が大きいと、部材形成工程S110は加熱処理を伴うことが多いので、様々な不都合が生じやすい。例えば、ガラス基板18上にTFTを形成する場合、加熱下でTFTが形成されたガラス基板18を冷却すると、ガラス基板18の熱収縮によって、TFTの位置ずれが過大になるおそれがある。
【0074】
ガラス基板18は、ガラス原料を溶融し、溶融ガラスを板状に成形して得られる。このような成形方法は、一般的なものであってよく、例えば、フロート法、フュージョン法、スロットダウンドロー法、フルコール法、ラバース法などが用いられる。また、特に厚さが薄いガラス基板18は、いったん板状に成形したガラスを成形可能温度に加熱し、延伸などの手段で引き伸ばして薄くする方法(リドロー法)で成形して得られる。
【0075】
ガラス基板18のガラスは、特に限定されないが、無アルカリホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、高シリカガラス、その他の酸化ケイ素を主な成分とする酸化物系ガラスが好ましい。酸化物系ガラスとしては、酸化物換算による酸化ケイ素の含有量が40〜90質量%のガラスが好ましい。
【0076】
ガラス基板18のガラスとしては、電子デバイス用部材の種類やその製造工程に適したガラスが採用される。例えば、液晶パネル用のガラス基板は、アルカリ金属成分の溶出が液晶に影響を与えやすいことから、アルカリ金属成分を実質的に含まないガラス(無アルカリガラス)からなる(ただし、通常アルカリ土類金属成分は含まれる)。このように、ガラス基板のガラスは、適用されるデバイスの種類およびその製造工程に基づいて適宜選択される。
【0077】
ガラス基板18の厚さは、ガラス基板18の薄型化および/または軽量化の観点から、0.3mm以下であり、さらに好ましくは0.15mm以下である。0.3mm超の場合、ガラス基板18の薄型化および/または軽量化の要求を満たせない。0.3mm以下の場合、ガラス基板18に良好なフレキシブル性を与えることが可能である。0.15mm以下の場合、ガラス基板18をロール状に巻き取ることが可能である。
また、ガラス基板18の厚さは、ガラス基板18の製造が容易であること、ガラス基板18の取り扱いが容易であることなどの理由から、0.03mm以上であることが好ましい。
【0078】
なお、ガラス基板18は2層以上からなっていてもよく、この場合、各々の層を形成する材料は同種材料であってもよいし、異種材料であってもよい。また、この場合、「ガラス基板18の厚さ」は全ての層の合計の厚さを意味するものとする。
【0079】
[工程S108の手順]
本工程S108では、上述した樹脂層付き支持基板16とガラス基板18とを用意し、上記樹脂層付き支持基板16の樹脂層表面14aとガラス基板18の第1主面18aとを積層面として両者を密着積層する。樹脂層14の積層面14aが層を構成する材料であるシリコーン樹脂の性質に基づいて易剥離性を有しており、通常の重ね合わせと加圧により、容易に剥離可能に密着させることができる。
【0080】
ガラス基板18を樹脂層14上に積層する方法は特に制限されず、公知の方法を採用することができる。
例えば、常圧環境下で易剥離性の樹脂層14の表面14aにガラス基板18を重ねた後、ロールやプレスを用いて樹脂層14とガラス基板18とを圧着させる方法が挙げられる。ロールやプレスで圧着することにより樹脂層14とガラス基板18とがより密着するので好ましい。また、ロールまたはプレスによる圧着により、樹脂層14とガラス基板18との間に混入している気泡が比較的容易に除去されるので好ましい。
【0081】
真空ラミネート法や真空プレス法により圧着すると、気泡の混入の抑制や良好な密着の確保が行われるのでより好ましい。真空下で圧着することにより、微小な気泡が残存した場合でも、加熱により気泡が成長することがなく、ガラス基板18のゆがみ欠陥につながりにくいという利点もある。
【0082】
樹脂層14をガラス基板18の第1主面18aに剥離可能に密着させる際には、樹脂層14およびガラス基板18の互いに接触する側の面を十分に洗浄し、クリーン度の高い環境で積層することが好ましい。樹脂層14とガラス基板18との間に異物が混入しても、樹脂層14が変形するのでガラス基板18の表面の平坦性に影響を与えることはないが、クリーン度が高いほどその平坦性は良好となるので好ましい。
【0083】
[ガラス積層体]
本発明のガラス積層体20は、種々の用途に使用することができ、例えば、後述する表示装置用パネル、PV、薄膜2次電池、表面に回路が形成された半導体ウェハ等の電子部品を製造する用途などが挙げられる。なお、該用途では、ガラス積層体20が高温条件(例えば、300℃以上)で曝される(例えば、1時間以上)場合が多い。
ここで、表示装置用パネルとは、LCD、OLED、電子ペーパー、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションパネル、量子ドットLEDパネル、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)シャッターパネル等が含まれる。
【0084】
<部材形成工程>
部材形成工程S110は、上記積層工程S108において得られたガラス積層体中のガラス基板の表面上に電子デバイス用部材を形成する工程である。
より具体的には、
図2(D)に示すように、本工程S110により、ガラス基板18の第2主面18b上に電子デバイス用部材22を形成し、電子デバイス用部材付き積層体24を得る。
【0085】
まず、本工程S110で使用される電子デバイス用部材22について詳述し、その後工程S110の手順について詳述する。
【0086】
(電子デバイス用部材(機能性素子))
電子デバイス用部材22は、ガラス積層体20中のガラス基板18の第2主面18b上に形成され電子デバイスの少なくとも一部を構成する部材である。より具体的には、電子デバイス用部材22としては、表示装置用パネル、太陽電池、薄膜2次電池、または、表面に回路が形成された半導体ウェハ等の電子部品などに用いられる部材が挙げられる。表示装置用パネルとしては、有機ELパネル、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションパネル等が含まれる。
【0087】
例えば、太陽電池用部材としては、シリコン型では、正極の酸化スズなど透明電極、p層/i層/n層で表されるシリコン層、および負極の金属等が挙げられ、その他に、化合物型、色素増感型、量子ドット型などに対応する各種部材等を挙げることができる。
また、薄膜2次電池用部材としては、リチウムイオン型では、正極および負極の金属または金属酸化物等の透明電極、電解質層のリチウム化合物、集電層の金属、封止層としての樹脂等が挙げられ、その他に、ニッケル水素型、ポリマー型、セラミックス電解質型などに対応する各種部材等を挙げることができる。
また、電子部品用部材としては、CCDやCMOSでは、導電部の金属、絶縁部の酸化ケイ素や窒化珪素等が挙げられ、その他に圧力センサ・加速度センサなど各種センサやリジッドプリント基板、フレキシブルプリント基板、リジッドフレキシブルプリント基板などに対応する各種部材等を挙げることができる。
【0088】
(工程の手順)
上述した電子デバイス用部材付き積層体24の製造方法は特に限定されず、電子デバイス用部材の構成部材の種類に応じて従来公知の方法にて、ガラス積層体20のガラス基板18の第2主面表面18b上に、電子デバイス用部材22を形成する。
なお、電子デバイス用部材22は、ガラス基板18の第2主面18bに最終的に形成される部材の全部(以下、「全部材」という)ではなく、全部材の一部(以下、「部分部材」という)であってもよい。樹脂層14から剥離された部分部材付きガラス基板を、その後の工程で全部材付きガラス基板(後述する電子デバイスに相当)とすることもできる。
また、樹脂層14から剥離された、全部材付きガラス基板には、その剥離面(第1主面)に他の電子デバイス用部材が形成されてもよい。また、全部材付き積層体を組み立て、その後、全部材付き積層体から樹脂層付き支持基板16を剥離して、電子デバイスを製造することもできる。さらに、全部材付き積層体を2枚用いて電子デバイスを組み立て、その後、全部材付き積層体から2枚の樹脂層付き支持基板16を剥離して、電子デバイスを製造することもできる。
【0089】
例えば、OLEDを製造する場合を例にとると、ガラス積層体20のガラス基板18の樹脂層14側とは反対側の表面上(ガラス基板の第2主面18bに該当)に有機EL構造体を形成するために、透明電極を形成する、さらに透明電極を形成した面上にホール注入層・ホール輸送層・発光層・電子輸送層等を蒸着する、裏面電極を形成する、封止板を用いて封止する、等の各種の層形成や処理が行われる。これらの層形成や処理として、具体的には、例えば、成膜処理、蒸着処理、封止板の接着処理等が挙げられる。
【0090】
また、例えば、TFT−LCDの製造方法は、ガラス積層体20のガラス基板18の第2主面18b上に、レジスト液を用いて、CVD法およびスパッター法など、一般的な成膜法により形成される金属膜および金属酸化膜等にパターン形成して薄膜トランジスタ(TFT)を形成するTFT形成工程と、別のガラス積層体のガラス基板の第2主面1上に、レジスト液をパターン形成に用いてカラーフィルタ(CF)を形成するCF形成工程と、TFT形成工程で得られたTFT付き積層体とCF形成工程で得られたCF付き積層体とをTFTとCFとが対向するようにシールを介して積層する貼り合わせ工程等の各種工程を有する。
【0091】
TFT形成工程やCF形成工程では、周知のフォトリソグラフィ技術やエッチング技術等を用いて、ガラス基板の第2主面にTFTやCFを形成する。この際、パターン形成用のコーティング液としてレジスト液が用いられる。
なお、TFTやCFを形成する前に、必要に応じて、ガラス基板の第2主面を洗浄してもよい。洗浄方法としては、周知のドライ洗浄やウェット洗浄を用いることができる。
【0092】
貼り合わせ工程では、例えば、TFT付き積層体とCF付き積層体との間に液晶材を注入して積層する。液晶材を注入する方法としては、例えば、減圧注入法、滴下注入法がある。
【0093】
[分離工程]
分離工程S112は、上記部材形成工程S110で得られた電子デバイス用部材付き積層体24から、樹脂層付き支持基板を除去し、ガラス基板と電子デバイス用部材とを有する電子デバイスを得る工程である。
より具体的には、
図2(E)に示すように、該工程S112により、電子デバイス用部材付き積層体24から、樹脂層付き支持基板16を分離・除去して、ガラス基板18と電子デバイス用部材22とを含む電子デバイス26が得られる。
【0094】
剥離時のガラス基板上の電子デバイス用部材が必要な全構成部材の形成の一部である場合には、分離後、残りの構成部材をガラス基板上に形成することもできる。
以下、本工程S112の手順について詳述する。
【0095】
ガラス基板18の第1主面18aと樹脂層14の表面14aとを剥離する方法は、特に限定されない。具体的には、例えば、ガラス基板18と樹脂層14との界面に鋭利な刃物状のものを差し込み、剥離のきっかけを与えた上で、水と圧縮空気との混合流体を吹き付けたりして剥離することができる。好ましくは、電子デバイス用部材付き積層体24の支持基板10が上側、電子デバイス用部材22側が下側となるように定盤上に設置し、電子デバイス用部材22側を定盤上に真空吸着し(両面に支持基板が積層されている場合は順次行う)、この状態でまず刃物をガラス基板18−樹脂層14界面に刃物を侵入させる。そして、その後に支持基板10側を複数の真空吸着パッドで吸着し、刃物を差し込んだ箇所付近から順に真空吸着パッドを上昇させる。そうすると樹脂層14とガラス基板18との界面へ空気層が形成され、その空気層が界面の全面に広がり、支持基板10を容易に剥離することができる。
【0096】
また、電子デバイス用部材付き積層体24から樹脂層付きガラス基板16を除去する際においては、イオナイザによる吹き付けや湿度を制御することにより、電子デバイス26に影響する可能性のある静電気を抑えることができる。あるいは、電子デバイス26に静電気を消耗させる回路を組み込んだり、犠牲回路を組み込んで端子部から積層体の外に導通をとったりしてもよい。
【0097】
上記工程S112によって得られた電子デバイス26は、携帯電話やPDAのようなモバイル端末に使用される小型の表示装置の製造に好適である。表示装置は主としてLCDまたはOLEDであり、LCDとしては、TN型、STN型、FE型、TFT型、MIM型、IPS型、VA型等を含む。基本的にパッシブ駆動型、アクティブ駆動型のいずれの表示装置の場合でも適用することができる。
【0098】
<第2の実施態様>
図3は、本発明の電子デバイスの製造方法の第2の実施態様における製造工程を示すフローチャートである。
図3に示すように、電子デバイスの製造方法は、組成物層形成工程S102、第1の除去工程S104、第2の除去工程S106、積層工程S108、部材形成工程S110、および分離工程S112を備え、組成物層形成工程S102が吸引固定工程S114および吐出工程S116より構成される。後述するように、本実施形態では、樹脂層14の表面凹凸をより抑制することができる。なお、ガラス積層体の製造方法の第2の実施態様においても、第1の実施形態中の組成物層形成工程S102が吸引固定工程S114および吐出工程S116より構成される。
図3に示す各工程は、組成物層形成工程S102が吸引固定工程S114および吐出工程S116より構成される点を除いて、
図1に示す工程と同様の手順であり、同一の工程には同一の参照符号を付し、その説明を省略し、以下では主として吸引固定工程S114および吐出工程S116について説明する。
【0099】
<吸引固定工程>
吸引固定工程S114は、支持基板の厚みよりも小さい幅を有する吸引溝および/または支持基板の厚みよりも小さい直径を有する吸引孔が表面に設けられた吸引ステージ上に支持基板を配置し、吸引溝および/または吸引孔を通じて吸引して支持基板を吸引ステージ上に吸引固定する工程である。該工程S114を実施することにより、吸引ステージ上に支持基板が固定され、後述する吐出工程S116の際に、支持基板の位置ずれなどが生じることを抑制することができる。
【0100】
該工程S114においては、吸引ステージに設けられた吸引溝の幅および吸引孔の直径が吸引ステージ上に載置される支持基板の厚みよりも小さい点に特徴がある。
本発明者は、樹脂層の表面凹凸の程度が支持基板を吸引固定する際の吸引溝および吸引孔の大きさによって影響を受けることを見出している。具体的に、
図4を用いて説明する。
図4(A)では、硬化性樹脂組成物層12が表面に配置された支持基板10が、吸引溝28aが設けられた吸引ステージ30a上に載置された態様が示され、該態様においては吸引溝28aの幅W1が支持基板10の厚みTよりも大きい。
硬化性樹脂組成物層12は、隣接する支持基板10の温度の影響を受けると共に、支持基板10を挟んで吸引ステージ30aからの影響も受ける。その際、吸引ステージ30aの吸引溝28aがある上部に位置する硬化性樹脂組成物層12aと、吸引溝28a以外の吸引ステージ30の上部に位置する硬化性樹脂組成物層12bとで、吸引ステージ30aからの伝熱量が異なる。これは吸引ステージ30aと接触している支持基板10の領域(接触領域)と、吸引ステージ30aと接触していない支持基板10の領域(非接触領域。つまり、吸引溝28aがある領域)とでの温度差に由来する。結果として、硬化性樹脂組成物層12aと硬化性樹脂組成物層12bとで、被膜の乾燥度合いが異なり、
図4(A)に示すように、硬化性樹脂組成物層12a中の硬化性樹脂組成物層12bに近接する部分において微小凹凸が生じやすく、結果として樹脂層14の表面凹凸が大きくなる場合がある。
【0101】
一方、
図4(B)に示すように、吸引溝28aの幅W2が支持基板10の厚みTよりも小さい態様においては、硬化性樹脂組成物層12aと硬化性樹脂組成物層12bとへの熱伝導量の違いがより小さくなり、微小凹凸の発生をより抑制できる。
以下では、まず、本工程S114で使用される吸引ステージ30a(および30b)について詳述し、その後工程S114の手順について詳述する。
【0102】
[吸引ステージ]
吸引ステージは、その表面に支持基板を載置して保持するものである。
図5においては吸引ステージの第1の実施態様が示されており、
図5に示される吸引ステージ30aは、その表面に開口する吸引溝28aが形成されている。吸引溝28aは、複数本(
図5では、4本)が交差している。交差の仕方は特に限定されないが、
図5(A)および(B)に示すように、十字、T字、L字に交差して設ける構成をとることができる。
なお、
図5(A)および(B)では吸引溝28aは全て直線状で交差部分は直交しているが、これに限定されるものではなく、曲線状であってもよいし、所定の角度を付けて交差していてもよい。
吸引溝28aの深さは特に限定されないが、0.5〜1mm程度である。
【0103】
図5(B)に示すように、吸引溝28aの交差部分に吸引口32が設けられている。吸引口32は、
図5(C)に示すように、吸引ステージ30aを貫通して、吸引ステージ30aの裏面に取着された継手34にそれぞれ連通しており、継手34から真空配管36を介して真空ポンプ38に接続されている。
なお、吸引口32から真空ポンプ38までの接続はこれに限定されず、例えば、吸引ステージ30aの内部に空洞を設けて、吸引ステージ30aをヘッダとして、継手34を1箇所にして接続したり、真空配管38に電磁弁等を設けたりしてもよい。
また、
図5(B)では、吸引口32は吸引溝28aが十字、T字に交差する部分に設けられているが、これに限定されるものではなく、L字に交差している部分や直線部分に設けてもよい。
【0104】
吸引ステージ30aの表面に設けられた吸引溝28aの幅は、その表面に載置される支持基板10の厚みよりも小さい。なかでも、樹脂層14の表面凹凸がより抑制される点で、吸引溝28aの幅は支持基板10の厚みの60%以下の大きさであることが好ましく、40%以下の大きさであることがより好ましく、20%以下の大きさであることがさらに好ましい。下限は特に制限されないが、支持基板10に対する吸引力の低下が抑制できる点で、10%以上の大きさであることが好ましい。
【0105】
図6においては、吸引ステージの第2の実施態様が示されており、
図6(A)および(B)に示される吸引ステージ30bは、その表面に開口する吸引孔28bが形成されている。吸引孔28bは、16個配置されているが、その個数は
図6の態様に限定されない。また、吸引孔28bは等間隔で配置されているが、これに限定されず、ランダムに配置されていてもよい。
吸引孔28bは、
図6(C)に示すように、吸引ステージ30bを貫通して、吸引ステージ30bの裏面に取着された継手34にそれぞれ連通しており、継手34から真空配管36を介して真空ポンプ38に接続されている。
【0106】
吸引孔28bの直径は、その表面に載置される支持基板10の厚みよりも小さい。なかでも、樹脂層14の表面凹凸がより抑制される点で、吸引孔28bの直径は支持基板10の厚みの60%以下の大きさであることが好ましく、40%以下の大きさであることがより好ましく、20%以下の大きさであることがさらに好ましい。下限は特に制限されないが、支持基板10に対する吸引力の低下が抑制できる点で、10%以上の大きさであることが好ましい。
なお、吸引孔28bの開口部分が楕円形である場合、その長径が支持基板10の厚みDよりも小さければよい。
【0107】
なお、吸引ステージには、支持基板を昇降動作させる基板昇降機構が設けられていてもよい。具体的には、
図7(A)に示すように、吸引孔28bの内部には、Z軸方向に昇降動作可能なリフトピン40が設置されていてもよい。
図7(B)に示すように、吸引ステージ30bの表面に支持基板10を載置した状態でリフトピン40を上昇させることにより、リフトピン40の先端部分が支持基板10に当接し、複数のリフトピン40の先端部分で支持基板10を所定の高さ位置に保持できるようになっている。これにより、支持基板10との接触部分を極力抑えて保持することができ、支持基板10を損傷させることなくスムーズに交換できる。
【0108】
なお、
図7においては、吸引孔28b内部にリフトピン40を設置されているが、
図5(B)の吸引口32の内部にリフトピンを設置してもよい。また、リフトピン40を設置するための別途ピン孔を吸引ステージに設けてもよい。
【0109】
[工程の手順]
支持基板10を吸引ステージ30a(または30b)上に吸引固定する手順としては、まず、支持基板10を吸引ステージ30a(または30b)上に載置して、真空ポンプ38にて真空引きすることで、吸引溝28a(または吸引孔28b)から排気され、吸引溝28a(または吸引孔28b)内部の気圧が下がり吸引力が発生し、支持基板10が吸引ステージ30a(または30b)の表面に吸引固定される。
なお、真空引きを停止、または、電磁弁の切替え等により、吸引溝28a(または吸引孔28b)が大気開放されると、支持基板10は吸引ステージ30a(または30b)から容易に剥離できる。
【0110】
<吐出工程>
吸引工程S116は、上記吸引固定工程S114の後に、上述した硬化性樹脂組成物を吐出する吐出ノズルから硬化性樹脂組成物を吸引固定された支持基板に向けて吐出させつつ、支持基板が吸引固定された吸引ステージおよび吐出ノズルの少なくとも一方を相対的に移動させることにより、支持基板上に未硬化の硬化性樹脂組成物層を形成する工程である。
図8は、吸引ステージ30aに吸引固定されている支持基板10に、吐出ノズル42から硬化性樹脂組成物層12を塗布する方法を示している。以下、
図8に基づいて、説明する。
【0111】
吐出ノズル42には、その先端に硬化性樹脂組成物を吐出できるように形成されたスリット状の吐出口(図示せず)が設けられている。スリット幅の大きさは特に制限されず、20〜200μm程度である。なお、吐出口の形状もスリット状以外であってもよい。
吐出ノズル42は、硬化性樹脂組成物が貯留される貯留槽48と配管44および開閉バルブ46を介して接続している。
【0112】
吐出ノズル42は、その吐出口から硬化性樹脂組成物を吐出しながら、図示されない走査機構により矢印の方向に向かって支持基板10の一旦側から他端側に走査され、支持基板10に対して相対的に移動する。該操作によって、支持基板10上に硬化性樹脂組成物層12が形成される。
吐出ノズル42の移動速度は特に制限されないが、20〜80mm/sの速度で移動可能である。
【0113】
なお、
図8においては、吐出ノズル42が移動する態様について述べたが、吐出ノズル42の位置が固定され、支持基板10を吸引固定した吸引ステージ30aを吐出ノズル42に対して相対的に移動させてもよい。また、吐出ノズル42および吸引ステージ30aの両者を移動させてもよい。
【0114】
<第3の実施態様>
本発明の電子デバイス(またはガラス積層体)の製造方法の第3の実施形態においては、上記第1の除去工程S104および/または第2の除去工程S106にて、複数の支持ピンの頂部に載置されたセッター(保持板)上に支持基板を配置して、反応抑制剤の除去および/または溶媒の除去を行うことを特徴とする。後述するように、本実施形態では、樹脂層14の表面凹凸をより抑制することができる。
本実施態様は、上記手順以外は、
図1に示す工程と同様の手順であり、同一の工程にはその説明を省略し、以下では主としてセッターを使用した態様について説明する。
【0115】
従来から、塗布膜がその表面に配置されたガラス基板を、複数の支持ピンの頂部に載置して、加熱乾燥する方法が知られている。しかしながら、この塗布膜の硬化処理(例えば、加熱乾燥)に於いて、塗布膜の硬化処理中ずっとガラス基板の決められた位置を支持ピンで支持していると、ガラス基板と支持ピンの当接周辺との温度差により塗布膜の乾燥ムラが生じることがあった。具体的には、
図9(A)に示すように、支持台50上に配置された複数の支持ピン52の頂部上の硬化性樹脂組成物層12が配置された支持基板10を載置して上記第1の除去工程S104および第2の除去工程S106を実施すると、
図9(B)に示すように、支持ピン52の上部付近に位置する樹脂層14の表面に微小な凹凸が生じる場合があった。
【0116】
そこで、支持基板を支持ピンの頂部に直接載置するのではなく、支持ピンと支持基板との間にセッターを設けることにより、樹脂層の表面の凹凸をより抑制できることを本発明者は見出している。具体的には、
図10(A)に示すように、支持台50上に配置された複数の支持ピン52の頂部にセッター54を載置して、さらに該セーター板54上に硬化性樹脂組成物層12が配置された支持基板10を載置して上記第1の除去工程S104および第2の除去工程S106を実施すると、
図10(B)に示すように、支持ピン52の影響がより抑制され、形成される樹脂層14の表面凹凸がより抑制される。
以下に、支持ピン52およびセッター54について詳述する
【0117】
支持ピン52は、支持台50上に複数個離間して配設され、その先端(頂部)上でセッター54の下面を支持するピンである。
支持ピン52の数は
図10では3本であるが、その数は特に限定されず、10本以上あってもよい。また、支持ピン52の配置位置は特に制限されず、所定の間隔をあけて配置しても、ランダムに配置してもよい。
【0118】
なお、支持ピン52としては、上述したリフトピン40を使用してもよい。つまり、上記吸引固着工程S114および吐出工程S116を経た後、吸引ステージ30の真空引きを停止し、吸引溝28a(または吸引孔28b)が大気開放された後、硬化性樹脂組成物層12が表面に配置された支持基板10をリフトピン40で持ち上げ、その状態で第1の除去工程S114および/または第2の除去工程S116を実施してもよい。
【0119】
セッター54は、第1主面54aが支持ピン52の頂部と接触し、第2主面54bで支持基板10を支持する板である
セッター54の第2主面54bのうねり曲線の最大断面高さ(W
t)が0.3μm以下であることが好ましい。セッター54の第2主面54bの表面うねりが上記範囲内であれば、セッター54と支持基板10との接触面積が大きくなり、結果として第1の除去工程S104および/または第2の除去工程S106での硬化性樹脂組成物層12の表面の温度ムラが少なくなり、樹脂層14の表面凹凸がより抑制される。なかでも、樹脂層14の表面凹凸がより抑制される点で、0.2μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であれば更により好ましい。なお、下限は特に制限されないが、セッター54の製造工程がより容易になる点から、0.01μm以上であることが好ましい。
「表面うねり」は、公知の触針式の表面形状測定装置を用いて、JIS B−0610(1987)に記載のW
CA(ろ波中心線うねり)を測定した値である。なお、本発明において、ろ波うねり曲線のカットオフ値は0.8mmとし、測定長さは40mmとする。
なお、セッター54表面の表面うねりを低減する方法としては、公知の研磨方法(例えば、公知の物理研摩または化学研磨。より具体的には、CMPなど)を使用することができる。
【0120】
セッター54の材料は特に制限されず、例えば、金属、セラミックス、ガラスなどが挙げられる。
セッター54の厚みは特に制限されず、樹脂層14の表面凹凸がより抑制される点で、500〜5000μmが好ましく、1000〜3000μmがより好ましい。
【実施例】
【0121】
以下に、実施例等により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0122】
<実施例1>
縦350mm、横300mm、板厚0.5mmのガラス基板(「AN100」、線膨張係数38×10
-7/℃の無アルカリガラス板:旭硝子株式会社製)を支持基板として用意し、純水洗浄、UV洗浄して表面を浄化して、表面を清浄化した支持基板を得た。
次に、成分(A)として直鎖状ビニルメチルポリシロキサン(「VDT−127」、25℃における粘度700−800cP(センチポアズ):アズマックス製、オルガノポリシロキサン1molにおけるビニル基のmol%:0.325)と、成分(B)として直鎖状メチルヒドロポリシロキサン(「HMS−301」、25℃における粘度25−35cP(センチポアズ):アズマックス製、1分子内におけるケイ素原子に結合した水素原子の数:8個)とを、全ビニル基と全ケイ素原子に結合した水素原子とのモル比(水素原子/ビニル基)が0.9となるように混合し、このシロキサン混合物100重量部に対して、成分(C)として下記式(1)で示されるアセチレン系不飽和基を有するケイ素化合物(沸点:120℃)1質量部を混合した。
HC≡C−C(CH
3)
2−O−Si(CH
3)
3 式(1)
次いで成分(A)と成分(B)と成分(C)との合計量に対して、白金換算で白金金属濃度が100ppmとなるように白金系触媒(信越シリコーン株式会社製、CAT−PL−56)を加えオルガノポリシロキサン組成物の混合液を得た。さらに、得られた混合液に100重量部に対して、IPソルベント2028(沸点:213〜262℃、出光興産製)を150重量部加えて混合溶液を得た。
【0123】
次に、
図5に示す幅0.1mmの吸引溝が表面に設けられた吸引ステージ上に支持基板を載置して、吸引溝を通じて真空吸引して吸引ステージ上に支持基板を吸引固定した。その後、ダイコーターより上記混合溶液を吐出しながら(速度40mm/s、GAP100μm、吐出圧50kPa)、ダイコーターを支持基板の一端側から他端側に移動させながら、支持基板上に硬化性樹脂組成物層を形成した。
その後、真空引きを停止して、吸引ステージ上から支持基板を持ち上げ、複数の支持ピンの頂部で支持されるセッター上に支持基板を載置した。
セッターは、厚み1mmのアルミニウム基板であり、支持基板が載置される表面のうねり曲線の最大断面高さ(W
t)は0.1μmであった。
【0124】
その後、大気中で180℃、10分間の加熱硬化処理(第1の除去工程)を実施した後、大気中で270℃、30分間の加熱硬化処理(第2の除去工程)を実施して、支持基板上に硬化シリコーン樹脂層(縦350mm×横300mm×厚み15μm)を形成し、樹脂層付き支持基板Aを得た。
【0125】
一方、縦350mm、横300mm、板厚0.1mmのガラス基板(「AN100」、線膨張係数38×10
-7/℃の無アルカリガラス板:旭硝子株式会社製)を純水洗浄、UV洗浄し、ガラス基板の表面を清浄化した。
その後、上記支持基体Aとガラス基板とを位置合わせしたうえで、真空プレス装置を用いて、室温下で、ガラス基板の第1主面と、樹脂層付き支持基板Aの硬化シリコーン樹脂層の剥離性表面とを密着させガラス積層体を得た。
【0126】
<実施例1−2>
縦350mm、横300mm、板厚0.1mmのガラス基板の代わりに、縦350mm、横300mm、板厚0.2mmのガラス基板を使用した以外は、実施例1−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
【0127】
<実施例1−3>
縦350mm、横300mm、板厚0.1mmのガラス基板の代わりに、縦350mm、横300mm、板厚0.3mmのガラス基板を使用した以外は、実施例1−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
【0128】
<実施例2−1>
第1の除去工程の加熱温度を180℃から120℃に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
なお、本例においては、第1の除去工程において、反応抑制剤である式(1)で示されるアセチレン系不飽和基を有するケイ素化合物(沸点:120℃)が除去され、IPソルベントは残存しており、第2の除去工程においてIPソルベントが除去された。
【0129】
<実施例2−2>
縦350mm、横300mm、板厚0.1mmのガラス基板の代わりに、縦350mm、横300mm、板厚0.2mmのガラス基板を使用した以外は、実施例2−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
【0130】
<実施例2−3>
縦350mm、横300mm、板厚0.1mmのガラス基板の代わりに、縦350mm、横300mm、板厚0.3mmのガラス基板を使用した以外は、実施例2−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
【0131】
<実施例3−1>
第1の除去工程の条件を大気中で180℃、10分間の加熱硬化処理から、室温下での真空乾燥処理に変更した以外は、実施例1−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
なお、本例においては、第1の除去工程において、反応抑制剤である式(1)で示されるアセチレン系不飽和基を有するケイ素化合物(沸点:120℃)が除去され、IPソルベントは残存しており、第2の除去工程においてIPソルベントが除去された。
【0132】
<実施例3−2>
縦350mm、横300mm、板厚0.1mmのガラス基板の代わりに、縦350mm、横300mm、板厚0.2mmのガラス基板を使用した以外は、実施例3−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
【0133】
<実施例3−3>
縦350mm、横300mm、板厚0.1mmのガラス基板の代わりに、縦350mm、横300mm、板厚0.3mmのガラス基板を使用した以外は、実施例3−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
【0134】
<実施例4−1>
支持基板をセッター上に載置する代わりに、セッターを使用せず、支持基板を直接支持ピンの頂部に載置した以外は、実施例1−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
【0135】
<実施例4−2>
縦350mm、横300mm、板厚0.1mmのガラス基板の代わりに、縦350mm、横300mm、板厚0.2mmのガラス基板を使用した以外は、実施例4−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
【0136】
<実施例4−3>
縦350mm、横300mm、板厚0.1mmのガラス基板の代わりに、縦350mm、横300mm、板厚0.3mmのガラス基板を使用した以外は、実施例4−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
【0137】
<実施例5−1>
吸着溝の幅を0.1mmから0.6mmに変更した以外は、実施例1−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
【0138】
<実施例5−2>
縦350mm、横300mm、板厚0.1mmのガラス基板の代わりに、縦350mm、横300mm、板厚0.2mmのガラス基板を使用した以外は、実施例5−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
【0139】
<実施例5−3>
縦350mm、横300mm、板厚0.1mmのガラス基板の代わりに、縦350mm、横300mm、板厚0.3mmのガラス基板を使用した以外は、実施例5−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
【0140】
<実施例6−1>
支持基板をセッター上に載置する代わりに、セッターを使用せず、支持基板を直接支持ピンの頂部に載置し、吸着溝の幅を0.1mmから0.6mmに変更した以外は、実施例1−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
【0141】
<実施例6−2>
縦350mm、横300mm、板厚0.1mmのガラス基板の代わりに、縦350mm、横300mm、板厚0.2mmのガラス基板を使用した以外は、実施例6−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
【0142】
<実施例6−3>
縦350mm、横300mm、板厚0.1mmのガラス基板の代わりに、縦350mm、横300mm、板厚0.3mmのガラス基板を使用した以外は、実施例6−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
【0143】
<比較例1−1>
IPソルベント2028の代わりにヘプタン(沸点:98℃)を使用した以外は、実施例6−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
なお、本例においては、第1の除去工程において、溶媒であるヘキサン、および、反応抑制剤である式(1)で示されるアセチレン系不飽和基を有するケイ素化合物(沸点:120℃)が除去されていた。
【0144】
<比較例1−2>
縦350mm、横300mm、板厚0.1mmのガラス基板の代わりに、縦350mm、横300mm、板厚0.2mmのガラス基板を使用した以外は、比較例1−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
【0145】
<比較例1−3>
縦350mm、横300mm、板厚0.1mmのガラス基板の代わりに、縦350mm、横300mm、板厚0.3mmのガラス基板を使用した以外は、比較例1−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
【0146】
<比較例2−1>
IPソルベント2028の代わりにヘプタン(沸点:98℃)を使用し、第1の除去工程の加熱温度を180℃から120℃に変更した以外は、実施例6−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
なお、本例においては、第1の除去工程において、溶媒であるヘキサン、および、反応抑制剤である式(1)で示されるアセチレン系不飽和基を有するケイ素化合物(沸点:120℃)が除去されていた。
【0147】
<比較例2−2>
縦350mm、横300mm、板厚0.1mmのガラス基板の代わりに、縦350mm、横300mm、板厚0.2mmのガラス基板を使用した以外は、比較例2−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
【0148】
<比較例2−3>
縦350mm、横300mm、板厚0.1mmのガラス基板の代わりに、縦350mm、横300mm、板厚0.3mmのガラス基板を使用した以外は、比較例2−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
【0149】
<比較例3−1>
IPソルベント2028の代わりにヘプタン(沸点:98℃)を使用し、第1の除去工程の条件を大気中で180℃、10分間の加熱硬化処理から、室温下での真空乾燥処理に変更した以外は、実施例6−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
なお、本例においては、第1の除去工程において、溶媒であるヘキサン、および、反応抑制剤である式(1)で示されるアセチレン系不飽和基を有するケイ素化合物(沸点:120℃)が除去されていた。
【0150】
<比較例3−2>
縦350mm、横300mm、板厚0.1mmのガラス基板の代わりに、縦350mm、横300mm、板厚0.2mmのガラス基板を使用した以外は、比較例3−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
【0151】
<比較例3−3>
縦350mm、横300mm、板厚0.1mmのガラス基板の代わりに、縦350mm、横300mm、板厚0.3mmのガラス基板を使用した以外は、比較例3−1と同様の手順に従って、ガラス積層体を製造した。
【0152】
<評価1>
上記実施例および比較例で得られた積層体の硬化シリコーン樹脂層とガラス基板との間に生じた気泡を目視にて確認し、以下の基準に従って評価した。結果を表1にまとめて示す。
なお、実用上、「×」でないことが望ましい。
「○」:目視では気泡が観察されない
「△」:極微小の気泡(直径2mm以下の気泡)が少量見られるが、実用上問題がない
「×」:気泡(直径2mm超の気泡)が確認され、加熱すると気泡が拡大する可能性があり実用上問題がある
【0153】
<評価2>
上記実施例および比較例で得られた樹脂層付き支持基板の樹脂層表面を、サーフコム(東京精密社製:1400D−12)により測定し、JIS B−0610(1987)に記載のうねり曲線の最大断面高さ(W
t)を測定した。
【0154】
なお、表1中、「除去工程」欄は、第1の除去工程で反応抑制剤が除去され、溶媒は除去されず、第2の除去工程で溶媒が除去された場合を「○」、第1の除去工程では溶媒が除去された場合を「×」として示す。
「吸着溝幅」欄は、吸着溝の幅の大きさを示す。
「セッター使用有無」欄は、セッターを使用した場合を「○」、使用しなかった場合を「×」として示す。
「評価1」欄は、上記評価1の結果を示す。
【0155】
【表1】
【0156】
上記表1に示すように、本発明のガラス積層体の製造方法においては、樹脂層とガラス基板との間の気泡(空隙)の発生が抑制された、平坦性に優れた樹脂層を有するガラス積層体が得られる。
なお、実施例6−1〜6−3の比較から分かるように、厚みがより薄いガラス基板(厚み0.1mmのガラス基板)を使用した場合、基板の剛性が低下し、樹脂層表面への追随性が上昇し、結果としてより気泡の発生が抑制されたと推測される。なお、実施例6−2および実施例6−3では評価1は共に「△」であるが、実施例6−2に含まれる気泡の大きさは主に1mm未満であり、実施例6−3に含まれる気泡の大きさは主に0.1mm以上0.2mm未満であった。
なかでも、実施例1−3と実施4−3との比較から分かるように、セッター板を使用した場合、気泡の発生をより抑制できることが確認された。
また、実施例1−3と実施例5−3との比較から分かるように、吸着溝の幅の大きさが支持基板の厚みより大きい場合、気泡の発生をより抑制できることが確認された。
一方、比較例1−1〜3−3に示すように、高沸点溶媒を使用せず、反応抑制剤と溶媒とを同時に除去した場合は、気泡の発生を抑制することができなかった。
【0157】
<実施例7>
本例では、実施例1−1で製造されたガラス積層体を用いてOLEDを作製した。
より具体的には、ガラス積層体における研磨処理を施したガラス基板の第2主面上に、スパッタリング法によりモリブデンを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングによりゲート電極を形成した。次に、プラズマCVD法により、ゲート電極を設けたガラス基板の第2主面側に、さらに窒化シリコン、真性アモルファスシリコン、n型アモルファスシリコンの順に成膜し、続いてスパッタリング法によりモリブデンを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより、ゲート絶縁膜、半導体素子部およびソース/ドレイン電極を形成した。次に、プラズマCVD法により、ガラス基板の第2主面側に、さらに窒化シリコンを成膜してパッシベーション層を形成した後に、スパッタリング法により酸化インジウム錫を成膜して、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより、画素電極を形成した。
続いて、ガラス基板の第2主面側に、さらに蒸着法により正孔注入層として4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン、正孔輸送層としてビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン、発光層として8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq
3)に2,6−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)−N−フェニル]アミノスチリル]ナフタレン−1,5−ジカルボニトリル(BSN−BCN)を40体積%混合したもの、電子輸送層としてAlq
3をこの順に成膜した。次に、ガラス基板の第2主面側にスパッタリング法によりアルミニウムを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより対向電極を形成した。次に、対向電極を形成したガラス基板の第2主面上に、紫外線硬化型の接着層を介してもう一枚のガラス基板を貼り合わせて封止した。上記手順によって得られた、ガラス基板上に有機EL構造体を有するガラス積層体は、電子デバイス用部材付き積層体に該当する。
続いて、得られたガラス積層体の封止体側を定盤に真空吸着させたうえで、ガラス積層体のコーナー部のガラス基板とシリコーン樹脂層との界面に、厚さ0.1mmのステンレス製刃物を差し込み、ガラス積層体から樹脂層付き支持基板を分離して、OLEDパネル(電子デバイスに該当。以下パネルAという)を得た。作製したパネルAにICドライバを接続し、常温常圧下で駆動させたところ、駆動領域内において表示ムラは認められなかった。また、高温高湿環境(80℃、80%RH)下で駆動させた場合も、表示ムラは認められなかった。
【0158】
<実施例8>
本例では、実施例1−1で製造されたガラス積層体を用いてLCDを作製した。
ガラス積層体を2枚用意し、まず、片方のガラス積層体における研磨処理が施されたガラス基板の第2主面上に、スパッタリング法によりモリブデンを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングによりゲート電極を形成した。次に、プラズマCVD法により、ゲート電極を設けたガラス基板の第2主面側に、さらに窒化シリコン、真性アモルファスシリコン、n型アモルファスシリコンの順に成膜し、続いてスパッタリング法によりモリブデンを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより、ゲート絶縁膜、半導体素子部およびソース/ドレイン電極を形成した。次に、プラズマCVD法により、ガラス基板の第2主面側に、さらに窒化シリコンを成膜してパッシベーション層を形成した後に、スパッタリング法により酸化インジウム錫を成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより、画素電極を形成した。次に、画素電極を形成したガラス基板の第2主面上に、ロールコート法によりポリイミド樹脂液を塗布し、熱硬化により配向層を形成し、ラビングを行った。得られたガラス積層体を、ガラス積層体A1と呼ぶ。
次に、もう片方のガラス積層体における研磨処理が施されたガラス基板の第2主面上に、スパッタリング法によりクロムを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより遮光層を形成した。次に、遮光層を設けたガラス基板の第2主面側に、さらにダイコート法によりカラーレジストを塗布し、フォトリソグラフィ法および熱硬化によりカラーフィルタ層を形成した。次に、ガラス基板の第2主面側に、さらにスパッタリング法により酸化インジウム錫を成膜し、対向電極を形成した。次に、対向電極を設けたガラス基板の第2主面上に、ダイコート法により紫外線硬化樹脂液を塗布し、フォトリソグラフィ法および熱硬化により柱状スペーサを形成した。次に、柱状スペーサを形成したガラス基板の第2主面上に、ロールコート法によりポリイミド樹脂液を塗布し、熱硬化により配向層を形成し、ラビングを行った。次に、ガラス基板の第2主面側に、ディスペンサ法によりシール用樹脂液を枠状に描画し、枠内にディスペンサ法により液晶を滴下した後に、上述したガラス積層体A1を用いて、2枚のガラス積層体のガラス基板の第2主面側同士を貼り合わせ、紫外線硬化および熱硬化によりLCDパネルを有する積層体を得た。ここでのLCDパネルを有する積層体を以下、パネル付き積層体B2という。
次に、実施例1と同様にパネル付き積層体B2から両面の樹脂層付き支持基板を剥離し、TFTアレイを形成した基板およびカラーフィルタを形成した基板からなるLCDパネルB(電子デバイスに該当)を得た。
作製したLCDパネルBにICドライバを接続し、常温常圧下で駆動させたところ、駆動領域内において表示ムラは認められなかった。また、高温高湿環境(80℃、80%RH)下で駆動させた場合も、表示ムラは認められなかった。