(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書における「繰り返し単位」とは、単量体が重合することによって形成された該単量体に由来する単位を意味する。繰り返し単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、重合体を処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
本明細書における「単量体」とは、重合反応性の炭素−炭素二重結合を有する化合物を意味する。
【0016】
本明細書において含フッ素共重合体が有機溶媒に溶解した「溶液状態」とは、含フッ素共重合体と有機溶媒とを充分に混合した混合物を目視で判定した際に、不溶物が確認されない均一な状態であることを意味する。
本明細書における「溶解温度」とは、下記の方法で測定した温度をいう。
有機溶媒の4.90gに含フッ素共重合体の0.10gを加えて混合物とし、該混合物を撹拌手段等で常に充分な混合状態を保ちつつ加熱し、含フッ素共重合体が溶解したかどうかを目視で観察する。まず、混合物が均一な溶液状態となって完全に溶解したと認められる温度を確認する。次いで、徐々に冷却して溶液が濁る温度を確認し、さらに再加熱して再び均一な溶液状態となる温度を溶解温度とする。
【0017】
<電荷保持媒体>
本発明の電荷保持媒体は、含フッ素共重合体(A)と、帯電助剤(B)とを含む組成物から得られたものである。
組成物としては、基材に塗布して、容易に塗膜(電荷保持媒体の前駆体)を形成できる点から、含フッ素共重合体(A)と、帯電助剤(B)と、有機溶媒(C)とを含むコーティング用組成物が好ましい。入手が容易な点から、含フッ素共重合体(A)のフィルムを、帯電助剤(B)および有機溶媒(C)を含む溶液で処理して得られる組成物でもよい。また、含フッ素共重合体(A)に帯電助剤(B)を混練して得られたペレットであってもよい。
【0018】
図1は、電荷保持媒体をエレクトレットとして用いた静電誘導型変換素子の一例である、静電誘導型発電素子の一例を示す斜視図である。
静電誘導型発電素子1は、絶縁性の材料からなる基材本体12の表面に、第2の基材20が運動する方向(図中矢印方向)に対して長手方向が交差するように、所定の間隔を空けて形成された複数のライン状のベース電極14を有する第1の基材10と;図中矢印方向に往復運動(振動)可能に、第1の基材10から一定の距離で略平行に配置され、絶縁性の材料からなる基材本体22の第1の基材10側の表面に、第2の基材20が運動する方向(図中矢印方向)に対して長手方向が交差するように、所定の間隔を空けて形成された複数のライン状の対向電極24を有する第2の基材20と;第1の基材10の表面のベース電極14を被覆し、ベース電極14に対応するパターンで形成された塗膜に電荷を注入したエレクトレット30と;ベース電極14と対向電極24とを電気的に接続し、途中に負荷(図示略)が設けられた配線(図示略)とを有する。
【0019】
静電誘導型発電素子1においては、第2の基材20を、図中矢印方向に、略水平に往復運動(振動)させることによって発電することができる。すなわち、該振動によって、第1の基材10に対する第2の基材20の位置が相対的に変動し、これに伴い、塗膜に電荷を注入したエレクトレット30と、対向する位置にある対向電極24との重なり面積が変化する。エレクトレット30と対向電極24との重なり部分では、エレクトレット30中の電荷によって、対向電極24に、エレクトレット30中の電荷とは逆の極性を有する電荷が静電誘導される。これに対して、エレクトレット30と対向電極24とが重ならない部分では先に誘導された電荷に対向する逆電荷がなくなり、外部の負荷(図示略)との間の電位差を打ち消すために負荷に電流が流れる。この繰り返しを電圧の波として取り出すことで電気エネルギが生じる。このようにして、運動エネルギが、電気エネルギに変換される。
【0020】
[含フッ素共重合体(A)]
含フッ素共重合体(A)は、テトラフルオロエチレン(以下、TFEともいう。)に基づく繰り返し単位とエチレンに基づく繰り返し単位とを有する共重合体である。
TFEに基づく繰り返し単位とエチレンに基づく繰り返し単位を有する共重合体は、電荷保持媒体用の材料として、下記の理由で用いられることがある。
・主鎖に環構造を有する含フッ素重合体よりも安価であるため、低コストで電荷保持媒体を得ることができる。
・結晶性を有するため、電荷保持媒体中に添加剤を導入し、結晶間のアモルファス部位に取り込ませることにより、ナノオーダーでの分散が可能となる。
・結晶性を有するため、ガラス転移点以上でも軟化しにくい。
【0021】
TFEに基づく繰返し単位とエチレンに基づく繰返し単位とのモル比(TFE/エチレン)は、70/30〜30/70が好ましく、65/35〜40/60がより好ましく、60/40〜40/60が特に好ましい。該モル比が上記範囲内であれば、耐熱性、耐候性、耐薬品性等のTFEに基づく繰返し単位に由来する特性と、機械的強度、溶融成形性等のエチレンに基づく繰返し単位に由来する特性とのバランスが良好となる。
【0022】
含フッ素共重合体(A)は、得られる共重合体に各種機能を付与できる点から、TFEまたはエチレン以外の単量体(以下、その他の単量体という。)に基づく繰り返し単位を有することが好ましい。その他の単量体としては、国際公開第2010/044421号の段落[0025]〜[0026]、国際公開第2010/044425号の段落[0026]〜[0027]に記載されたその他の単量体等が挙げられる。たとえば、フッ化ビニリデン(CF
2=CH
2)、ヘキサフルオロプロピレン(CF
2=CFCF
3)、3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン(CF
3CF
2CH=CH
2)、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキセン(CF
3CF
2CF
2CF
2CH=CH
2)、2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン(CF
2HCF
2CF
2CF=CH
2)、プロピレン、イソブチレン、4−メチル−1−ペンテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0023】
含フッ素共重合体(A)は、基材への塗膜やフィルムの接着性、帯電助剤(B)との親和性(または結合性)の点から、基材や帯電助剤(B)に対して反応性を有する反応性官能基を有することが好ましい。反応性官能基は、含フッ素共重合体(A)の分子末端または側鎖または主鎖のいずれに存在していてもよい。また、反応性官能基は、1種のみが存在していてもよく、2種以上が存在していてもよい。反応性官能基の種類や含有量は、基材や帯電助剤(B)の種類、基材や帯電助剤(B)が有する官能基、電荷保持媒体の用途、電荷保持媒体に要求される特性、含フッ素共重合体(A)への反応性官能基の導入方法等により適宜選択される。
【0024】
反応性官能基としては、カルボン酸基、1分子中の2つのカルボキシル基が脱水縮合した基(以下、酸無水物基という。)、ヒドロキシル基、スルホン酸基、エポキシ基、シアノ基、カーボネート基、イソシアネート基、エステル基、アミド基、アルデヒド基、アミノ基、加水分解性シリル基、炭素−炭素二重結合、アルコキシ基およびカルボン酸ハライド基からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
カルボン酸基とは、カルボキシル基およびその塩(−COOM
1)を意味する。ただし、M
1は、カルボン酸と塩を形成し得る金属原子または原子団である。
スルホン酸基とは、スルホ基とその塩(−SO
3M
2)を意味する。ただし、M
2は、スルホン酸と塩を形成し得る金属原子または原子団である。
加水分解性シリル基とは、ケイ素原子にアルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が結合してなる基であり、加水分解によりシロキサン結合を形成することにより架橋し得る基である。トリアルコキシシリル基、アルキルジアルコキシシリル基等が好ましい。
【0025】
反応性官能基のうち、カルボン酸基、酸無水物基、ヒドロキシル基、エポキシ基、カーボネート基、アミノ基、アミド基、加水分解性シリル基、炭素−炭素二重結合およびカルボン酸ハライド基からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。帯電助剤(B)のアミノ基との反応性の点から、カルボン酸基、酸無水物基およびカルボン酸ハライド基からなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。含フッ素共重合体(A)の反応性官能基(カルボン酸基、酸無水物基またはカルボン酸ハライド基)と帯電助剤(B)のアミノ基とが反応し、含フッ素共重合体(A)と帯電助剤(B)とがイミド結合またはアミド結合することによって、含フッ素共重合体(A)中に帯電助剤(B)がナノオーダーで分散する。帯電助剤(B)は電荷保持部位を担うため、帯電助剤(B)は含フッ素共重合体(A)中にできるだけ小さな単位で分散するほど、得られる電荷保持媒体の性能が向上する。
【0026】
含フッ素共重合体(A)に反応性官能基を導入する方法としては、下記の方法等が挙げられる。
(i)TFEとエチレンと他の単量体とを重合する際に、他の単量体の1つとして反応性官能基を有する単量体を共重合する方法。
(ii)TFEとエチレンと必要に応じて他の単量体とを共重合する際に、反応性官能基を有する重合開始剤、連鎖移動剤等を用いることによって含フッ素共重合体(A)の分子末端に反応性官能基を導入する方法。
(iii)反応性官能基およびグラフト化が可能な官能基(不飽和結合等)を有する化合物(グラフト性化合物)を含フッ素共重合体(A)にグラフトさせる方法。
【0027】
(i)〜(iii)の方法は、2種以上を適宜組み合わせてもよい。(i)〜(iii)の方法のうち、含フッ素共重合体(A)の耐久性の点から、(i)および/または(ii)の方法が好ましい。
なお、反応性官能基以外に、含フッ素共重合体(A)に各種機能を付与するために必要に応じて導入される官能基についても、反応性官能基を導入する方法と同様の方法で含フッ素共重合体(A)に導入できる。
【0028】
(i)の方法で含フッ素共重合体(A)に反応性官能基を導入する場合、含フッ素共重合体(A)中の反応性官能基を有する単量体に基づく繰り返し単位の割合は、全繰り返し単位(100モル%)のうち、0.01〜5モル%が好ましく、0.05〜3モル%が特に好ましい。反応性官能基を有する単量体に基づく繰り返し単位の割合が該範囲内であれば、実質的にTFEに基づく繰り返し単位およびエチレンに基づく繰り返し単位のみからなるETFEが有する特性を損なうことなく、基材や帯電助剤(B)に対する充分な反応性を付与できる。
【0029】
含フッ素共重合体(A)の融点は、溶解性、強度等の点から、130℃〜275℃が好ましく、140℃〜265℃がより好ましく、150℃〜260℃が特に好ましい。含フッ素共重合体(A)の融点は、たとえば、示差走査熱量測定(DSC)装置によって測定される。
【0030】
含フッ素共重合体(A)の容量流速(以下、Q値という。)は、0.1〜2,000mm
3/秒が好ましい。Q値は、含フッ素共重合体(A)の溶融流動性を表す指標であり、分子量の目安となる。Q値が大きいと分子量が低く、小さいと分子量が高いことを示す。Q値は、フローテスタ(島津製作所社製)を用い、含フッ素共重合体(A)の融点より50℃高い温度において、荷重7kgf下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に含フッ素共重合体(A)を押出すときの押出速度である。Q値が小さすぎると溶解性が悪くなり、大きすぎると含フッ素共重合体の機械的強度が低下するとともに、塗膜にした場合にひび割れ等が発生しやすくなる。含フッ素共重合体(A)のQ値は、5〜500mm
3/秒がより好ましく、10〜200mm
3/秒が特に好ましい。Q値が上記範囲にあれば、含フッ素共重合体(A)は機械的強度に優れ、コーティング用組成物として用いる場合には、塗膜にひび割れ等が発生せず、塗膜特性に優れる。
【0031】
含フッ素共重合体(A)として、市販のETFEを用いてもよい。市販のETFEとしては、国際公開第2010/044421号の段落[0028]、国際公開第2010/044425号の段落[0031]に記載されたものが挙げられる。たとえば、旭硝子社製:Fluon(登録商標)ETFE Series、Fluon LM−ETFE AH Series等が挙げられる。
含フッ素共重合体(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
[帯電助剤(B)]
帯電助剤(B)は、電荷保持媒体中にて電荷保持部位を担う成分である。組成物中に帯電助剤(B)を含むことによって、得られる電荷保持媒体の電荷密度がさらに高くなり、表面電位が向上すると同時に表面電位の経時安定性も向上する。電荷密度が向上する機構としては、電荷保持媒体中に電荷が注入される際に帯電助剤(B)の分極が生じ、注入された電荷をトラップするトラップサイトとして働き、保持電荷を安定化することによるものであると考えられる。帯電助剤(B)近傍にトラップされた電荷は、含フッ素共重合体(A)の高い絶縁性により外部に放電されることなく保持される。さらに、含フッ素共重合体(A)と帯電助剤(B)とを含ませて電荷保持媒体とした系では、含フッ素共重合体(A)がアミノ基と反応する反応性官能基を有する場合は、帯電助剤(B)が架橋剤として機能し、得られる電荷保持媒体の表面電荷の熱安定性が向上する。すなわち電荷保持媒体の電荷保持特性(耐久性)が向上する。
【0033】
帯電助剤(B)は、1つ以上のアミノ基と1つ以上の反応性官能基(アミノ基を除く)とを有する化合物(以下、化合物(B1)ともいう。)、および2つ以上のアミノ基を有し反応性官能基(アミノ基を除く)を有さない化合物(以下、化合物(B2)ともいう。)からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0034】
化合物(B1)における反応性官能基(アミノ基を除く)としては、加水分解性シリル基(トリアルコキシシリル基、アルキルジアルコキシシリル基等)、シラノール基、ヒドロキシル基、チオール基等が挙げられる。化合物(B1)における反応性官能基同士および/または化合物(B1)と含フッ素共重合体(A)との縮合反応によって縮合物を形成し、該縮合物が含フッ素共重合体(A)中でナノオーダーで相分離することによって得られる電荷保持媒体の表面電荷および電荷保持特性(耐久性)がさらに向上する、および含フッ素共重合体(A)と基材との接着性が向上する点から、加水分解性シリル基、またはシラノール基が好ましく、加水分解性シリル基が特に好ましい。したがって、化合物(B1)としては、1つ以上のアミノ基と1つ以上の加水分解性シリル基とを有する化合物、いわゆるアミノ基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0035】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、国際公開第2010/032759号の段落[0078]〜[0081]に記載されたシランカップリング剤のうち、アミノ基を有するものが挙げられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、アミノ基を有するシランカップリング剤は、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等)との共部分加水分解物としてもよい。
【0036】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、得られる電荷保持媒体の電荷保持特性(表面電位値、表面電位の経時安定性および熱安定性)に優れる点から、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリエトキシシラン、アミノフェニルメチルジメトキシシラン、またはアミノフェニルメチルジエトキシシランが特に好ましい。
【0037】
化合物(B2)としては、下記のものが挙げられる。
脂肪族ジアミン:エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,2−ジアミノペンタン、1,3−ジアミノペンタン、1,4−ジアミノペンタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、N−メチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N−プロピルエチレンジアミン、N−ブチルエチレンジアミン、N−メチル−1,3−ジアミノプロパン、N−メチル−1,4−ジアミノブタン、N−メチル−1,5−ジアミノペンタン、N−メチル−1,6−ジアミノヘキサン、N−メチル−1,7−ジアミノヘプタン、N−メチル−1,8−ジアミノオクタン、N−メチル−1,9−ジアミノノナン、N−メチル−1,10−ジアミノデカン、N−メチル−1,11−ジアミノウンデカン、N−メチル−1,12−ジアミノドデカン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ピペラジン等。
芳香族ジアミン:1,2−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン等。
脂肪族トリアミン:ジエチレントリアミン、ビス(3−アミノプロピル)アミン、ビス(4−アミノブチル)アミン、ビス(5−アミノペンチル)アミン、N−(6−アミノヘキシル)−1,6−ヘキサンジアミン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン等。
脂肪族テトラミン:N,N’−ビス(2−アミノエチル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ビス(2−アミノエチル)−1,4−ブタンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン、N,N’−ビス(4−アミノブチル)−1,4−ブタンジアミン、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリス(3−アミノプロピル)アミン、トリス(4−アミノブチル)アミン、トリス(5−アミノペンチル)アミン、トリス(6−アミノヘキシル)アミン等。
脂肪族ペンタアミン:テトラエチレンペンタアミン等。
脂肪族ヘキサアミン:ペンタエチレンヘキサアミン等。
【0038】
化合物(B2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
化合物(B2)としては、得られる電荷保持媒体の表面電荷および電荷保持特性(耐久性)に優れる点から、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリス(3−アミノプロピル)アミン、トリス(4−アミノブチル)アミン、トリス(5−アミノペンチル)アミン、またはトリス(6−アミノヘキシル)アミンが好ましく、トリス(2−アミノエチル)アミンが特に好ましい。
【0039】
[有機溶媒(C)]
有機溶媒(C)は、含フッ素共重合体(A)の融点以下の温度で含フッ素共重合体(A)を溶解し得る有機溶媒であり、後述する工程(II)で含フッ素共重合体溶液から含フッ素共重合体(A)の微粒子を析出させ、均一に分散させた後は、少なくとも常温常圧において、該微粒子を分散状態で存在させる分散媒として機能する有機溶媒である。
【0040】
有機溶媒(C)としては、国際公開第2010/044421号の段落[0035]〜[0062]、国際公開第2010/044425号の段落[0037]〜[0038]に記載された含フッ素芳香族化合物;国際公開第2010/044425号の段落[0042]〜[0048]に記載されたカルボニル基を有する鎖状の炭化水素化合物等が挙げられる。
【0041】
ある有機溶媒が、含フッ素共重合体(A)を溶解し得る有機溶媒(C)であるかどうかは、該有機溶媒が有する極性がある特定の範囲にあるかどうかで判断できる。本発明においては、有機溶媒(C)として、ハンセン溶解度パラメータ(Hansen solubility parameters)に基づいて、ある特定の範囲の極性を有する有機溶媒を選択することが好ましい。
【0042】
ハンセン溶解度パラメータは、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメータを、ハンセン(Hansen)が分散項δd、極性項δp、水素結合項δhの3成分に分割し、3次元空間に示したものである。分散項δdは、分散力のよる効果を示し、極性項δpは、双極子間力による効果を示し、水素結合項δhは、水素結合力の効果を示す。3次元空間における特定の樹脂Xの座標とある有機溶媒の座標とが近いほど、樹脂Xは該有機溶媒に溶解しやすい。
【0043】
ハンセン溶解度パラメータの定義および計算方法は、下記の文献に記載されている。
Charles M. Hansen著、「Hansen Solubility Parameters: A Users Handbook」、CRCプレス、2007年。
【0044】
また、文献値が知られていない有機溶媒については、コンピュータソフトウエア(Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP))を用いることによって、その化学構造から簡便にハンセン溶解度パラメータを推算できる。
本発明においては、HSPiPバージョン3を用い、データベースに登録されている有機溶媒についてはその値を、登録されていない有機溶媒については推算値を用いる。
【0045】
特定の樹脂Xのハンセン溶解度パラメータについては、通常、該樹脂Xを、ハンセン溶解度パラメータが確定している数多くの異なる有機溶媒に溶解させて溶解度を測る溶解度試験を行うことによって決定される。具体的には、溶解度試験に用いたすべての有機溶媒のハンセン溶解度パラメータの座標を3次元空間に示した際、樹脂Xを溶解した有機溶媒の座標がすべて球の内側に内包され、溶解しない有機溶媒の座標が球の外側になるような球(溶解度球)を探し出し、溶解度球の中心座標を樹脂Xのハンセン溶解度パラメータとする。
そして、溶解度試験に用いられなかったある有機溶媒のハンセン溶解度パラメータの座標が(δd、δp、δh)であった場合、該座標が溶解度球の内側に内包されれば、該有機溶媒は樹脂Xを溶解すると考えられる。一方、該座標が溶解度球の外側にあれば、該有機溶媒は樹脂Xを溶解することができないと考えられる。
【0046】
本発明においては、含フッ素共重合体(A)をその融点以下の温度で溶解させ、かつ室温において含フッ素共重合体(A)を凝集させず、微粒子として分散させるのに最も適した有機溶媒であるジイソプロピルケトンを、ハンセン溶解度パラメータ的には含フッ素共重合体(A)に最も近い性質の物質であると仮定して、ジイソプロピルケトンを基準(溶解度球の中心)とし、ジイソプロピルケトンのハンセン溶解度パラメータの座標(15.7、5.7、4.3)から一定の距離(すなわち溶解度球の内側)にある有機溶媒群を有機溶媒(C)として用いることができる。
【0047】
具体的には、ハンセン溶解度パラメータの3次元空間における2点間の距離Raを求める式としてよく知られた式:(Ra)
2=4×(δd2−δd1)
2+(δp2−δp1)
2+(δh2−δh1)
2をベースにして、ジイソプロピルケトンの座標とある有機溶媒の座標と距離を見積もる下式(1)を作成し、下式(1)で表わされるRを、含フッ素共重合体(A)に対する溶解指標とする。
R=4×(δd−15.7)
2+(δp−5.7)
2+(δh−4.3)
2 ・・・(1)。
ただし、δd、δpおよびδhは、それぞれ、有機溶媒のハンセン溶解度パラメータにおける分散項、極性項および水素結合項[(MPa)
1/2]である。
【0048】
有機溶媒(C)としては、溶解指標(R)が49未満のものが好ましく、36未満のものが特に好ましい。溶解指標(R)が上記上限値未満である有機溶媒(C)は、含フッ素共重合体(A)との親和性が高く、含フッ素共重合体(A)の溶解性および分散性が高くなる。
有機溶媒(C)が2種以上の有機溶媒を組み合わせた混合溶媒の場合であっても、溶解指標(R)を、含フッ素共重合体(A)に対する溶解指標とすることができる。たとえば、混合溶媒の混合比(体積比)から平均のハンセン溶解度パラメータを求め、該平均値から溶解指標(R)を算出する。
【0049】
溶解指標(R)が49未満である有機溶媒(C)としては、具体的には、下記の有機溶媒が挙げられる。
【0057】
有機溶媒(C)としては、含フッ素共重合体(A)との親和性が高く、含フッ素共重合体(A)の溶解性および分散性が充分に高い点から、下記の溶媒が好ましい。
メチルエチルケトン、2−ペンタノン、メチルイソプロピルケトン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ピナコリン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソピロピルケトン、イソアミルメチルケトン、2−オクタノン、2−ノナノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−エチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、イソホロン、(−)−フェンコン、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸sec−ブチル、ギ酸アミル、ギ酸イソアミル、ギ酸ヘキシル、ギ酸ヘプチル、ギ酸オクチル、ギ酸2−エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ヘプチル、酢酸2,2,2−トリフルオロエチル、酢酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、酢酸2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、酢酸1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル、酢酸2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロピル、酢酸2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル、酢酸2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル、酢酸2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル、酢酸2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル、酢酸3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル、酢酸4,4,5,5,6,6,7,7,7−ノナフルオロヘプチル、酢酸2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸sec−ブチル、プロピオン酸t−ブチル、プロピオン酸アミル、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸ヘキシル、プロピオン酸シクロヘキシル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、酪酸sec−ブチル、酪酸t−ブチル、酪酸アミル、酪酸イソアミル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、イソ酪酸イソプロピル、イソ酪酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、イソ酪酸sec−ブチル、イソ酪酸t−ブチル、イソ酪酸アミル、イソ酪酸イソアミル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、吉草酸イソプロピル、吉草酸ブチル、吉草酸イソブチル、吉草酸sec−ブチル、吉草酸t−ブチル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸プロピル、イソ吉草酸イソプロピル、イソ吉草酸ブチル、イソ吉草酸イソブチル、イソ吉草酸sec−ブチル、イソ吉草酸t−ブチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸プロピル、ヘキサン酸イソプロピル、ヘプタン酸メチル、ヘプタン酸エチル、オクタン酸メチル、シクロヘキサンカルボン酸メチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル、シクロヘキサンカルボン酸2,2,2−トリフルオロエチル、こはく酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)、グルタル酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)、トリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸プロピル、トリフルオロ酢酸イソプロピル、トリフルオロ酢酸ブチル、トリフルオロ酢酸イソブチル、トリフルオロ酢酸sec−ブチル、トリフルオロ酢酸t−ブチル、トリフルオロ酢酸アミル、トリフルオロ酢酸イソアミル、トリフルオロ酢酸ヘキシル、トリフルオロ酢酸シクロヘキシル、トリフルオロ酢酸ヘプチル、ジフルオロ酢酸エチル、ペルフルオロプロピオン酸エチル、ペルフルオロブタン酸メチル、ペルフルオロブタン酸エチル、ペルフルオロペンタン酸メチル、ペルフルオロペンタン酸エチル、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタン酸メチル、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタン酸エチル、ペルフルオロヘプタン酸メチル、ペルフルオロヘプタン酸エチル、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプタン酸メチル、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプタン酸エチル、2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル、2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロピオン酸エチル、酢酸2−プロポキシエチル、酢酸2−ブトキシエチル、酢酸2−ペンチルオキシエチル、1−メトキシ−2−アセトキシプロパン、1−エトキシ−2−アセトキシプロパン、1−プロポキシ−2−アセトキシプロパン、1−ブトキシ−2−アセトキシプロパン、酢酸3−メトキシブチル、酢酸3−エトキシブチル、酢酸3−プロポキシブチル、酢酸3−メトキシ−3−メチルブチル、酢酸3−エトキシ−3−メチルブチル、酢酸4−メトキシブチル、酢酸4−エトキシブチル、酢酸4−プロポキシブチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチル、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)カーボネート、テトラヒドロフラン、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、カプロニトリル、イソカプロニトリル、ヘプタンニトリル、オクタンニトリル、ノナンニトリル、3−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、ペンタフルオロ安息香酸メチル、ペンタフルオロ安息香酸エチル、3−(トリフルオロメチル)安息香酸メチル、4−(トリフルオロメチル)安息香酸メチル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)安息香酸メチル、1−(ペンタフルオロフェニル)エタノール、ギ酸ペンタフルオロフェニル、酢酸ペンタフルオロフェニル、プロパン酸ペンタフルオロフェニル、ブタン酸ペンタフルオロフェニル、ペンタン酸ペンタフルオロフェニル、2',3',4',5',6'−ペンタフルオロアセトフェノン、3',5'−ビス(トリフルオロメチル)アセトフェノン、3'−(トリフルオロメチル)アセトフェノン、ペンタフルオロアニソール、3,5−ビス(トリフルオロメチル)アニソール、ペンタフルオロピリジン、4−クロロベンゾトリフルオリド、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、安息香酸2,2,2−トリフルオロエチル、安息香酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、安息香酸2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、安息香酸1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル、安息香酸2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロピル、安息香酸2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル、安息香酸2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル、安息香酸2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル、安息香酸2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル、フタル酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)、5−(ペルフルオロブチル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−(ペルフルオロブチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−4−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)ペンタン、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブタノール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノール、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−1−プロパノール、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノール、2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(ペルフルオロプロピルオキシ)−1−プロパノール、4,4,5,5,6,6,7,7,7−ノナフルオロ−1−ヘプタノール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロ−1−ヘプタノール、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクタノール、7,7,8,8,8−ペンタフルオロ−1−オクタノール、4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−トリデカフルオロ−1−ノナノール、7,8,8,8−テトラフルオロ−7−(トリフルオロメチル)−1−オクタノール。
【0058】
有機溶媒(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、混合後に有機溶媒(C)として用い得るものであれば、有機溶媒(C)に他の有機溶媒を混合した混合溶媒を用いてもよい。さらに、混合後に有機溶媒(C)として用い得るものであれば、2種以上の他の有機溶媒を混合した混合溶媒を用いてもよい。
有機溶媒(C)として用い得る混合溶媒としては、具体的には、下記の組み合わせのものが挙げられる。
【0060】
有機溶媒(C)としては、含フッ素共重合体(A)と溶液状態を呈する温度が230℃以下にも存在する有機溶媒を用いることが好ましい。該温度範囲が230℃以下にも存在すれば、含フッ素共重合体(A)の融点よりも充分に低い温度で後述する含フッ素共重合体(A)の溶解を実施できるため、含フッ素共重合体(A)の特性の劣化を抑えることができる。
【0061】
含フッ素共重合体(A)と溶液状態を呈する温度範囲が230℃以下にも存在する、すなわち溶解温度が230℃以下である有機溶媒(C)としては、下記の溶媒が挙げられる。
1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(溶解温度:140℃)、
ジイソプロピルケトン(溶解温度:150℃)、
2−ヘキサノン(溶解温度:150℃)、
シクロヘキサノン(溶解温度:180℃)、
3',5'−ビス(トリフルオロメチル)アセトフェノン(溶解温度:150℃)、
2',3',4',5',6'−ペンタフルオロアセトフェノン(溶解温度:150℃)、
ベンゾトリフルオリド(溶解温度:150℃)、
酢酸イソブチル(溶解温度:150℃)。
ただし、括弧内の溶解温度は、含フッ素共重合体(A)が後述する実施例における含フッ素共重合体(A−1)の場合の溶解温度である。
【0062】
有機溶媒(C)としては、コーティング用組成物として用いる点から、室温(25℃)において液体である有機溶媒が好ましい。また、有機溶媒(C)の融点は、同じ理由から、20℃以下が好ましい。
有機溶媒(C)の沸点(常圧)は、有機溶媒(C)の取り扱い性および後述する工程(V)における有機溶媒(C)の除去性の点から、210℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましく、180℃以下が特に好ましい。また、有機溶媒(C)の沸点(常圧)は、後述する工程(V)において気泡の発生を抑える点から、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、80℃以上が特に好ましい。
【0063】
[組成物]
組成物(コーティング用組成物を含む)における帯電助剤(B)の量は、含フッ素共重合体(A)の100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部が特に好ましい。帯電助剤(B)の量が上記範囲内であれば、得られる電荷保持媒体の電荷密度がさらに高くなり、また電荷保持特性がさらに向上する。
【0064】
組成物がコーティング用組成物の場合、含フッ素共重合体(A)の含有量は、コーティング用組成物の100質量%のうち、0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜20質量%が特に好ましい。
【0065】
組成物がコーティング用組成物の場合、有機溶媒(C)の含有量は、コーティング用組成物の100質量%のうち、70〜99.9質量%が好ましく、80〜99.5質量%が特に好ましい。溶媒(C)の含有量が上記範囲内であれば、コーティング用組成物として塗膜製造における塗布時の取り扱い性等に優れ、かつ得られる塗膜を均質なものとすることができる。
【0066】
コーティング用組成物の調製に用いる有機溶媒(C)に含まれる水分は少ないことが好ましく、100質量ppm以下が好ましく、20質量ppm以下が特に好ましい。
【0067】
コーティング用組成物の固形分濃度は、形成しようとする膜厚に応じて適宜設定すればよい。通常、0.1〜30質量%であり、0.5〜20質量%が好ましい。
固形分は、質量を測定したコーティング用組成物を常圧下200℃で1時間加熱することで、有機溶媒(C)を留去し、残存する固形分の質量を測定して算出する。
【0068】
組成物(コーティング用組成物を含む)は、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等)を含んでいてもよい。テトラアルコキシシランの含有量は、組成物の100質量%のうち、50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。コーティング用組成物の場合、テトラアルコキシシランの含有量は、コーティング用組成物の100質量%のうち、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0069】
組成物(コーティング用組成物を含む)は、必要に応じて、その他任意成分を本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。その他任意成分としては、たとえば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、架橋剤、滑剤、可塑剤、増粘剤、分散安定剤、充填剤(フィラー)、強化剤、顔料、染料、難燃剤等の各種添加剤が挙げられる。その他任意成分の含有量は、組成物の100質量%のうち、50質量%以下が好ましく、20質量%以下が特に好ましい。コーティング用組成物の場合、その他任意成分の含有量は、コーティング用組成物の100質量%のうち、30質量%以下が好ましく、10質量%以下が特に好ましい。
【0070】
[好ましい組み合わせ]
組成物における含フッ素共重合体(A)および帯電助剤(B)の好ましい組み合わせとしては、得られる電荷保持媒体の表面電荷および電荷保持特性(耐久性)に優れる点から、下記の組み合わせが挙げられる。
含フッ素共重合体(A):TFE/エチレン/反応性官能基(カルボン酸基、酸無水物基またはカルボン酸ハライド基からなる群より選ばれる少なくとも1種)を有する単量体が65〜40/35〜60/0.01〜5(モル比)である、含フッ素共重合体。
帯電助剤(B):アミノ基を有するシランカップリング剤、またはトリス(2−アミノエチル)アミン、トリス(3−アミノプロピル)アミン、トリス(4−アミノブチル)アミン、トリス(5−アミノペンチル)アミン、およびトリス(6−アミノヘキシル)アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種。
特に好ましい組み合わせは以下である。
【0071】
(組み合わせ1)
含フッ素共重合体(A):TFE/エチレン/ヘキサフルオロプロピレン/3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキセン/無水イタコン酸の共重合体、
帯電助剤(B):γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン。
【0072】
(組み合わせ2)
含フッ素共重合体(A):TFE/エチレン/ヘキサフルオロプロピレン/3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキセン/無水イタコン酸の共重合体、
帯電助剤(B):N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン。
【0073】
(組み合わせ3)
含フッ素共重合体(A):TFE/エチレン/ヘキサフルオロプロピレン/3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキセン/無水イタコン酸の共重合体、
帯電助剤(B):N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン。
【0074】
(組み合わせ4)
含フッ素共重合体(A):TFE/エチレン/ヘキサフルオロプロピレン/3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキセン/無水イタコン酸の共重合体、
帯電助剤(B):トリス(2−アミノエチル)アミン。
【0075】
(組み合わせ5)
含フッ素共重合体(A):TFE/エチレン/3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン/無水イタコン酸の共重合体、
帯電助剤(B):N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン。
【0076】
(組み合わせ6)
含フッ素共重合体(A):Dyneon社製 Dyneon(登録商標)HTE 1705(TFE、エチレン、ヘキサフルオロプロピレンの共重合体)、
帯電助剤(B):N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン。
【0077】
<電荷保持媒体の製造方法>
基材の表面に電荷保持媒体を設ける方法としては、たとえば、下記の方法(α)〜(ε)が挙げられる。
【0078】
(α)含フッ素共重合体(A)と帯電助剤(B)と有機溶媒(C)とを含むコーティング用組成物を基材に塗布し、予備乾燥し、次いで焼成して塗膜を形成した後、該塗膜に電荷を注入する方法。
(β)原料を混練して含フッ素共重合体(A)と帯電助剤(B)とを含む組成物(ペレット)を調製し、該組成物を各種成形法(押出成形法、射出成形法等)によってフィルムにし、該フィルムを高温プレス、接着剤等によって基材の表面に貼り付けた後、該フィルムに電荷を注入する方法。
(γ)原料を混練して含フッ素共重合体(A)と帯電助剤(B)とを含む組成物(ペレット)を調製し、該組成物と基材の材料(樹脂等)とを共押出して、組成物のフィルムと基材フィルムとの積層体とした後、組成物のフィルムに電荷を注入する方法。
(δ)含フッ素共重合体(A)と帯電助剤(B)とを含む組成物(粉体塗料)を調製し、該粉体塗料を基材の表面に付着させ、焼成して塗膜を形成した貼り付けた後、該塗膜に電荷を注入する方法。
(ε)含フッ素共重合体(A)を各種成形法(押出成形法、射出成形法等)によってフィルムにし、該フィルムを高温プレス、接着剤等によって基材の表面に貼り付けた後、帯電助剤(B)を該フィルム上に塗布し、焼成して塗膜を形成した後、該塗膜に電荷を注入する方法。
【0079】
方法(α)〜(ε)のうち、容易に塗膜(電荷保持媒体の前駆体)を形成できる点から、方法(α)が好ましい。
方法(α)としては、得られる電荷保持媒体の表面電荷および電荷保持特性(耐久性)に優れる点から、下記の工程(I)〜工程(VII)を、この順で具備する方法が好ましい。
【0080】
(I)含フッ素共重合体(A)が有機溶媒(C)に溶解する溶解温度以上かつ含フッ素共重合体(A)の融点以下にて、含フッ素共重合体(A)を有機溶媒(C)に溶解し、含フッ素共重合体溶液を得る工程。
(II)含フッ素共重合体溶液を前記溶解温度未満に冷却して、含フッ素共重合体(A)の微粒子が有機溶媒(C)中に分散した含フッ素共重合体分散液を得る工程。
(III)含フッ素共重合体分散液と帯電助剤(B)とを混合してコーティング用組成物を得る工程。
(IV)コーティング用組成物を基材に塗布し、ウェット膜(湿潤層)を形成する工程。
(V)ウェット膜を50℃以上150℃未満で予備乾燥し、次いで230〜350℃で焼成して、塗膜(電荷保持媒体の前駆体)を形成する工程。
(VI)必要に応じて、塗膜の表面に他の層を形成する工程。
(VII)必要に応じて、塗膜に電荷を注入し、電荷保持媒体を得る工程。
工程(I)〜工程(VII)の工程前、工程間および工程後には、各工程に影響を及ぼさない限り、他の工程を行ってもよい。
【0081】
(工程(I))
工程(I)における温度は、含フッ素共重合体(A)の融点以下である。含フッ素共重合体(A)の融点は、最も高いもので概ね275℃であることから、有機溶媒(C)に含フッ素共重合体(A)を溶解する温度は、概ね275℃以下が好ましく、含フッ素共重合体(A)の劣化を抑える点では、230℃以下がより好ましく、200℃以下が特に好ましい。工程(I)における温度が275℃を超えると、実際作業を行う上で、容易に実行できないことがある。
【0082】
また、工程(I)における温度は、前記溶解温度以上であり、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、操作性等を考慮すると80℃以上が特に好ましい。工程(I)における温度が40℃未満では、充分な溶解状態が得られない場合がある。
【0083】
工程(I)における圧力は、通常、常圧または0.5MPa程度の微加圧が好ましい。有機溶媒(C)の沸点が工程(I)における温度より低い場合、耐圧容器中で、少なくとも自然発生する圧力以下、好ましくは3MPa以下、より好ましくは2MPa以下、さらに好ましくは1MPa以下の条件下、特に好ましくは常圧以下の圧力で溶解すればよく、通常、0.01〜1MPa程度とされる。
【0084】
工程(I)の時間は、含フッ素共重合体(A)の含有量、含フッ素共重合体(A)の形状等に依存するが、0.1〜8時間が好ましく、0.2〜2時間が特に好ましい。工程(I)の時間が上記範囲の下限値以上であると充分な溶解状態が得られ、上記範囲の上限値以下であると効率的である。含フッ素共重合体(A)の形状は、溶解時間を短くする作業効率の点からは、粉末状のものが好ましく、入手のし易さの点からは、ペレット状が好ましい。粉末状の場合は、平均粒子径が5〜1,000μmであるのが好ましく、5〜700μmが特に好ましい。ペレット状の場合は、形状は特に限定されない。円筒形状のペレットの場合、平均長さおよび平均直径が共に0.5〜30mmであるのが好ましく、0.5〜5mmであるのが特に好ましい。なお、平均長さおよび平均直径はノギスにより測定した値である。
【0085】
工程(I)における混合手段としては、ホモミキサ、ヘンシェルミキサ、バンバリーミキサ、加圧ニーダ、一軸または二軸押出機等の公知の撹拌混合機が挙げられる。
加圧下に溶解する場合、撹拌機付きオートクレーブ等の装置を用いてもよい。撹拌翼の形状としては、マリンプロペラ翼、パドル翼、アンカー翼、タービン翼等が挙げられる。小スケールで行う場合、マグネティックスターラ等を用いてもよい。
【0086】
工程(I)において、含フッ素共重合体(A)と有機溶媒(C)との混合および加熱は同時に行ってもよく、含フッ素共重合体(A)と有機溶媒(C)とを混合した後、必要に応じて撹拌しながら加熱してもよい。
【0087】
(工程(II))
工程(I)で得られた含フッ素共重合体溶液を、含フッ素共重合体(A)が微粒子として有機溶媒(C)中に析出する条件下(通常は常温常圧下)におくことで、含フッ素共重合体(A)の微粒子が有機溶媒(C)中に析出し、含フッ素共重合体(A)の微粒子が有機溶媒(C)中に分散した含フッ素共重合体分散液が得られる。具体的には、含フッ素共重合体溶液を、含フッ素共重合体(A)が微粒子として析出する温度以下、すなわち前記溶解温度未満、通常は常温まで冷却することによって、含フッ素共重合体(A)の微粒子を有機溶媒(C)中に析出させる。冷却の方法は、徐冷であってもよく、急冷であってもよい。なお、好ましい冷却速度は0.02〜100℃/秒であり、特に好ましくは0.1〜20℃/秒である。冷却速度が上記範囲であると、好ましい平均粒子径を有する含フッ素共重合体(A)の微粒子が得られる。
【0088】
含フッ素共重合体分散液における含フッ素共重合体(A)の微粒子の平均粒子径は、0.005〜2μmが好ましく、0.005〜1μmがより好ましく、0.01〜0.5μmが特に好ましい。微粒子の平均粒子径が上記範囲であると、均質で透明性、平坦性、および密着性に優れた塗膜を形成することができるので好ましい。
含フッ素共重合体(A)の微粒子の平均粒子径は、20℃において小角X線散乱法または動的光散乱法で測定する。
【0089】
(工程(III))
工程(III)においては、帯電助剤(B)と工程(II)で得られた含フッ素共重合体分散液(コーティング用組成物)とを混合しても、あらかじめ有機溶媒に溶解した帯電助剤溶液と含フッ素共重合体分散液とを混合してもよいが、含フッ素共重合体(A)と帯電助剤(B)とが混合しやすい点から、後者が好ましい。
帯電助剤(B)を溶解する有機溶媒としては、含フッ素共重合体分散液に用いられる有機溶媒(C)と同じものが好ましい。
有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
工程(III)における混合手段としては、ボールミル等の公知の撹拌混合機が挙げられる。
また、含フッ素共重合体(A)の微粒子をより均一に分散する目的で、高剪断を加える撹拌混合機を用いてもよい。具体的には、高剪断力を加えながら液状物を撹拌するために通常用いられる撹拌装置が好ましい。
【0090】
なお、帯電助剤(B)は、工程(I)の前に有機溶媒(C)に加えてもよく、工程(I)において含フッ素共重合体(A)とともに有機溶媒(C)に加えてもよいが、工程(I)において含フッ素共重合体(A)と帯電助剤(B)とが共存する場合、工程(I)における加熱によって含フッ素共重合体(A)と帯電助剤(B)とが反応し、工程(II)において含フッ素共重合体(A)の微粒子の有機溶媒(C)への均一な分散が阻害される場合がある。よって、工程(II)と工程(IV)との間、すなわち工程(III)にて帯電助剤(B)と含フッ素共重合体分散液とを混合することが好ましい。
【0091】
(工程(IV))
工程(IV)における塗布方法は、特に限定されるものではなく、一般的に用いられる方法を用いることができる。
塗布方法としては、ロールコータ法、キャスト法、ポッティング法、ディッピング法、スピンコート法、水上キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法、ダイコート法、インクジェット法、スプレーコート法、凸版印刷法、グラビア印刷法、平板印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法等が挙げられる。電荷保持媒体の用途、基材、要求特性等により、適宜選択される。
【0092】
工程(IV)におけるコーティング用組成物の状態は、含フッ素共重合体(A)が有機溶媒(C)に溶解した状態であってもよく、含フッ素共重合体(A)が有機溶媒(C)に分散した状態であってもよい。本発明においては後者が好ましい。すなわち、含フッ素共重合体分散液(コーティング用組成物)を、含フッ素共重合体(A)が有機溶媒(C)に溶解する溶解温度未満で基材に塗布し、工程(V)において比較的低い温度で有機溶媒(C)を除去できるため、作業性の観点から好ましい。また、塗布温度や乾燥温度を低い温度に調整することで、基材や各材料に負担をかけることなく、緻密で平坦な塗膜を得ることができる。
【0093】
工程(IV)における塗布温度は、コーティング用組成物によって異なるが、0〜210℃が好ましく、0〜130℃がより好ましく、0〜50℃が特に好ましい。塗布温度が上記範囲の下限値以上であると含フッ素共重合体(A)の分散状態が充分になり、上記範囲の上限値以下であると、有機溶媒(C)が揮発しにくくなり、気泡等が発生する可能性が少ない。
【0094】
ウェット膜の形状、大きさは、所望の電荷保持媒体の形状、大きさに応じて適宜設定すればよい。静電誘導型変換素子用途または圧電素子用途のエレクトレットの場合、エレクトレットの厚さは、通常、1〜200μmであり、エレクトレットしての特性、および塗膜の加工性の点から、10〜20μmが好ましい。よって、工程(V)後の塗膜の厚さを、1〜200μm、好ましくは10〜20μmとするためには、ウェット膜の厚さを、2〜220μm、好ましくは12〜25μmとすればよい。クリーニングローラの表面部材や帯電粒子用の部材用途に用いる場合は、部材用塗膜の厚みは、通常、0.001〜50μmであり、帯電特性および塗膜の加工性の点から、0.01〜10μmが好ましい。よって、工程(V)後の塗膜の厚さを、0.001〜50μm、好ましくは0.01〜10μmとするためには、ウェット膜の厚さを、0.0012〜60μm、好ましくは0.012〜12μmとすればよい。集塵用フィルタ用途で用いる場合は、フィルタの厚さは通常、1μm〜10mmであり、フィルタの捕集効率および成形性の点から、20μm〜1mmが好ましい。よって、工程(V)後の塗膜の厚さを、1μm〜10mm、好ましくは20μm〜1mmとするためには、ウェット膜の厚さを、1.2μm〜12mm、好ましくは24μm〜1.2mmとすればよい。
【0095】
基材としては、形成された塗膜に電荷を注入する際に、アースに接続できるような基材であればよい。基材としては、金属(金、白金、銅、アルミニウム、クロム、ニッケル等)からなるもの;絶縁性の材料(ガラス等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリル樹脂等の有機高分子材料等)が挙げられる。基材本体の表面に、スパッタリング、蒸着、ウェットコーティング等によって金属膜を形成してもよい。
【0096】
また、半導体材料(シリコン等)であっても、表面に金属膜を形成したもの、または半導体材料の抵抗値が低いものであればそのまま用いることができる。
基材の抵抗値は、体積固有抵抗値で0.1Ωcm以下が好ましく、0.01Ωcm以下が特に好ましい。
【0097】
基材は、表面が平滑な平板であってもよく、表面に凹凸を形成したものであってもよい。また、様々な形状にパターニングされていてもよい。絶縁性の材料を基材本体として用いる場合、絶縁性の材料そのものに凹凸またはパターンを形成してもよく、表面に形成された金属膜に凹凸またはパターンを形成してもよい。
【0098】
基材に凹凸またはパターンを形成する方法としては、従来公知の方法を用いればよい。凹凸またはパターンを形成する方法は、真空プロセスであってもよく、湿式プロセスであってもよい。真空プロセスとしては、マスクを介したスパッタリング法、マスクを介した蒸着法等が挙げられる。湿式プロセスとしては、ロールコータ法、キャスト法、ディッピング法、スピンコート法、水上キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法、ダイコート法、インクジェット法、スプレーコート法、凸版印刷法、グラビア印刷法、平板印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法等が挙げられる。また、微細な凹凸またはパターンを形成する方法としては、ナノインプリント法、フォトリソグラフィ法等が挙げられる。
【0099】
基材の表面には、基材と塗膜との密着性の向上等を目的として、前処理を行ってもよい。前処理方法としては、基材にポリエチレンイミン等を塗布する方法、サンドブラスト等により表面を物理的に処理する方法、コロナ放電等によって表面を化学的に処理する方法等が挙げられる。
【0100】
(工程(V))
予備乾燥では、ウェット膜の有機溶媒(C)をできるだけ飛散させ、ウェット膜を予備的に乾燥させる。予備乾燥によって、焼成時の塗膜の発泡、表面荒れ、不均一化等を抑えることができる。
予備乾燥温度は、有機溶媒(C)の沸点以下が好ましく、具体的には、50℃以上150℃未満が好ましく、80〜120℃が特に好ましい。
予備乾燥時間は、0.1〜5時間が好ましく、0.5〜2時間が特に好ましい。
【0101】
焼成温度は、230℃〜350℃が好ましく、230℃〜300℃がより好ましく、240〜280℃が特に好ましい。焼成温度が上記範囲内であれば、焼成後の冷却で含フッ素共重合体(A)の結晶がより秩序の高いものとなり(結晶の高秩序化)、帯電助剤(B)含フッ素共重合体(A)中の結晶間に存在するアモルファス部位に取り込まれることにより、ナノオーダーで分散される。このことにより充分な表面電位を有し、熱安定性に優れた電荷保持媒体を得ることができる。また、焼成温度が上記範囲の下限値以上であると、上述した含フッ素共重合体(A)の反応性官能基(カルボン酸基、酸無水物基またはカルボン酸ハライド基)と帯電助剤(B)のアミノ基とのイミド結合またはアミド結合の生成が促進され、得られる電荷保持媒体が熱安定性に優れたものとなる。焼成温度が上記範囲の上限値以上では帯電助剤(B)の分解が起こる可能性があり、上限値以下で行うのが好ましい。
焼成時間は、0.5〜5時間が好ましく、1〜2時間が特に好ましい。焼成時間を上記範囲にすると、残存する溶媒量を少なくできる点で好ましい。
焼成時の雰囲気は、不活性ガス中でも空気中であってもよいが、帯電助剤(B)に上述の加水分解性シリル基またはシラノール基を有する場合にその加水分解縮合が促進される点から、空気中が好ましい。なお、不活性ガス中とは、窒素ガス、およびヘリウムガスおよびアルゴンガス等の希ガスからなる群より選ばれる少なくとも1種の不活性ガスを99体積%以上含む気体中であることをいう。
焼成時の圧力は、常圧が好ましい。
【0102】
得られる塗膜の厚さは、目的に応じて自由に選択できる。濃度の高いコーティング用組成物を用いれば、厚みのある塗膜が得られ、濃度の低いコーティング用組成物を用いれば、薄い塗膜が得られる。また、工程(IV)を複数回繰り返して行うことによって、より厚みのある塗膜が得られる。
【0103】
ウェット膜を予備乾燥、焼成した後は、冷却を行い、常温にする。冷却は、徐冷でも急冷でも構わないが、徐冷が好ましい。冷却速度は5℃/分〜10℃/分が好ましい。冷却は装置も用いて行っても放置して自然冷却させてもよいが、塗膜の状態(表面平滑性、膜厚均一性等)を安定させる観点から装置も用いて行うのが好ましい。
工程(V)で得られた塗膜は、基材から剥がして単独の膜として用いてもよい。
【0104】
(工程(VI))
必要に応じて、工程(V)で得られた塗膜の表面に、他の層を積層してもよい。積層可能な他の層としては、たとえば、保護層、含フッ素共重合体(A)のみからなる層、含フッ素共重合体(A)以外の含フッ素重合体からなる層、無機物からなる層等が挙げられる。他の層としては、帯電助剤を含まない含フッ素重合体からなる層が好ましい。該含フッ素重合体としては、含フッ素共重合体(A)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ペルフルオロアルケニルビニルエーテル重合体、ペルフルオロアルキルビニルエーテル重合体、または脂肪族環構造を有する含フッ素重合体が好ましい。帯電助剤を含まない含フッ素重合体からなる層を設けることにより、エレクトレットの高温高湿下での電荷の安定性が向上する効果がある。帯電助剤を含まない含フッ素重合体からなる層の厚みは、1〜10μmが好ましい。
他の層は、焼成後の塗膜の表面に形成してもよく、予備乾燥と焼成との間に形成し、予備乾燥されたウェット膜とともに焼成してもよい。
【0105】
(工程(VII))
塗膜に電荷を注入する方法としては、絶縁体を帯電させる通常の方法が挙げられる。たとえば、コロナ放電法(G.M.Sessler著、「Electrets Third Edition」、Laplacian Press、1998年、p.20、Chapter 2.2、「Charging and Polarizing Methods」)、電子ビーム衝突法、イオンビーム衝突法、放射線照射法、光照射法、接触帯電法、液体接触帯電法等が挙げられ、エレクトレットの場合、コロナ放電法、または電子ビーム衝突法が好ましい。
【0106】
電荷を注入する際の温度は、注入後に保持される電荷の安定性の点から、含フッ素共重合体(A)のガラス転移温度以上が好ましく、ガラス転移温度+10〜20℃程度の温度がより好ましい。
電荷を注入する際の印加電圧は、塗膜の絶縁破壊電圧以下であれば、できるだけ高い電圧が好ましい。本発明における塗膜では、±6〜±30kVの高電圧が適用可能であり、±8〜±15kVの電圧が好ましい。塗膜を構成する含フッ素共重合体(A)が正電荷より負電荷をより安定に保持できることから、−8〜−15kVの電圧が特に好ましい。
【0107】
塗膜に電荷を注入して得られた電荷保持媒体は、基材を剥離してフィルム状の電荷保持媒体とした後に静電誘導型変換素子等に用いてもよく、基材の表面に設けたまま静電誘導型変換素子等に用いてもよい。
【0108】
(作用効果)
以上説明した本発明の電荷保持媒体にあっては、含フッ素共重合体(A)と帯電助剤(B)とを含む組成物から得られたものであるため、帯電助剤(B)が電荷保持媒体中にて電荷保持部位を担うようになる。その結果、含フッ素共重合体(A)を含む組成物から得られたものであるにも関わらず、実用レベルの表面電位を有する。
【実施例】
【0109】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
例1、2、11〜16、21〜26、31〜35、41、42、44は実施例であり、例3、43は比較例である。
【0110】
(含フッ素共重合体(A))
含フッ素共重合体(A−1):ETFE(繰り返し単位のモル比:TFE/エチレン/ヘキサフルオロプロピレン/3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキセン/無水イタコン酸=47.7/42.5/8.4/1.2/0.2、融点:188℃、Q値:9.5mm
3/秒、ガラス転移温度:52℃)。
含フッ素共重合体(A−2):ETFE(繰り返し単位のモル比:TFE/エチレン/3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン/無水イタコン酸=57.5/39.9/2.3/0.3、融点:240℃、Q値:15〜30mm
3/秒、ガラス転移温度:87℃)。
含フッ素共重合体(A−3):Dyneon社製 Dyneon(登録商標)HTE 1705(TFE、エチレン、ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、融点:210℃)。
【0111】
(帯電助剤(B))
化合物(B1−1):γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業社製)。
化合物(B1−2):N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業社製)。
化合物(B1−3):N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製)。
化合物(B2−1):トリス(2−アミノエチル)アミン(東京化成工業社製)。
【0112】
(有機溶媒(C))
有機溶媒(C−1):1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(東京化成工業社製、溶解指標(R):26.5、溶解温度(含フッ素共重合体(A−1)):140℃、溶解温度(含フッ素共重合体(A−2)):185℃、溶解温度(含フッ素共重合体(A−3)):200℃、沸点(常圧):116℃)。
【0113】
(含フッ素重合体(D))
ペルフルオロブテニルビニルエーテル(CF
2=CFOCF
2CF
2CF=CF
2)の45g、イオン交換水の240g、メタノールの7g、および重合開始剤としてジイソプロピルペルオキシジカーボネート粉末(((CH
3)
2CHOCOO)
2)の0.1gを、内容積500mLの耐圧ガラス製オートクレーブに入れた。系内を窒素で3回置換した後、40℃で23時間懸濁重合を行い、含フッ素重合体(D−1)の39gを得た。含フッ素重合体(D−1)のIRスペクトルを測定したところ、モノマーに存在した二重結合に起因する1,660cm
−1および1,840cm
−1付近の特性吸収はなかった。
次に、得られた含フッ素重合体(D−1)を、空気中において250℃で8時間熱処理した後、ペルフルオロトリブチルアミン溶媒に9質量%となるように溶解した。その後、得られた溶液をオートクレーブに入れ、オートクレーブ内をフッ素ガスおよび窒素ガスで充満させ、200℃で30時間加熱処理を行って含フッ素重合体(D−2)を得た。
含フッ素重合体(D−1)と含フッ素重合体(D−2)のそれぞれの圧縮成形フィルムのIRスペクトルを測定した。その結果、含フッ素重合体(D−1)では主鎖の末端に−COF基由来の1,890cm
−1の特性吸収が認められたのに対し、含フッ素重合体(D−2)では1,890cm
−1の特性吸収が認められなかった。
また、含フッ素重合体(D−2)について示差走査熱分析(DSC)を行ったところ、含フッ素重合体(D−2)のガラス転移温度(Tg)は108℃であった。
【0114】
(コーティング液P1)
ペルフルオロトリブチルアミンに、前記含フッ素重合体(D−2)を濃度が9質量%となるように溶解してコーティング液P1を得た。
【0115】
〔例1〕
(工程(I))
硼珪酸ガラス製耐圧反応容器に、含フッ素共重合体(A−1)の320mg、有機溶媒(C−1)の15.68gを入れ、撹拌しながら140℃に加熱したところ、均一で透明な含フッ素共重合体溶液となった。加熱は0.3時間行った。
(工程(II))
含フッ素共重合体溶液を徐々に室温まで放冷したところ、均一で沈降物のない含フッ素共重合体分散液が得られた。冷却時間は0.3時間であった。
【0116】
(工程(III))
化合物(B1−1)の0.3gを有機溶媒(C−1)の9.7gに溶解し、帯電助剤溶液を得た。
工程(II)で得た含フッ素共重合体分散液の16.00gと該帯電助剤溶液の0.32gとを混合し、均一なコーティング用組成物を得た。
【0117】
(工程(IV))
銅基材(3cm角、厚さ300μm)に、該コーティング用組成物をポッティング法によりコーティングした。
(工程(V))
ウェット膜を、ヤマト科学社製クリーンオーブンDT610を用いて、100℃で1時間予備乾燥した後、同じオーブン中で280℃で1時間焼成し、厚さ15μmの塗膜を形成した。
【0118】
(工程(VII))
得られた塗膜に、
図2に示すコロナ荷電装置を用いて電荷の注入を行い、例1のエレクトレットを得た。
コロナ荷電装置は、塗膜32を形成した第1の基材10(銅基材)を電極として、直流高圧電源装置42(松定プレシジョン社製、HAR−20R5)によって、コロナ針44と第1の基材10との間に高電圧を印加できるようになっている。また、グリッド46には、グリッド用電源48からグリッド電圧を印加できるようになっている。これにより、コロナ針44から放電した負イオンが、グリッド46で均一化された後、塗膜32上に降り注ぎ、電荷が注入されるようになっている。
また、塗膜32に注入される電荷の安定を図るため、ホットプレート50によって、電荷を注入中の塗膜32をガラス転移温度以上に加熱できるようになっている。なお、符号40は電流計である。
例1では、ホットプレート50による塗膜32の加熱温度を、含フッ素共重合体(A−1)のガラス転移温度より68℃高い120℃とした。
そして、空気中、コロナ針44と第1の基材10との間に−8kVの高電圧を3分間印加した。また、その間のグリッド電圧は、−1,200Vとした。
【0119】
(表面電位の測定)
エレクトレットについて、以下の各表面電位を測定した。結果を表9に示す。
各表面電位の値は、表面電位計(モンローエレクトロニクス社製、model279)を用い、エレクトレットの9点の測定点(膜の中心から3mm毎に格子状に設定。
図3参照。)の表面電位を測定した平均値である。
初期表面電位:コロナ荷電によって電荷を注入した直後のエレクトレットを、常温(25℃)に戻した際の表面電位。
200時間後表面電位:初期表面電位測定後のエレクトレットを、20℃、60%RHの条件で200時間保管した後、常温に戻した際の表面電位。
【0120】
(TSD試験)
TSD試験前表面電位を測定したエレクトレットについて、
図4に示す装置を用い、以下の手順によりTSD試験を行った。
まず、
図4に示すように、第1の基材10(銅基材)上のエレクトレット30に対向して、対向電極となる第2の基材20を配置した。
次いで、
図4の破線で示される部分の温度を、ヒータで加熱することによって一定の速さ(1℃/分)で昇温し、エレクトレット30から放出される電荷量を、第2の基材20から流れる電流値iとして電流計52(微小電流計、Keithley社製、Model6517A)によって測定し、放電開始温度および放電ピーク温度を求めた。結果を表9に示す。
ここで、放電ピーク温度とは、放電の際に検出される電流値が最大になる温度を示し、放電開始温度とは、電流計52にて、下式(2)で求められる電流値(放電開始時電流値)が検出された時点の温度を示す。
放電開始時電流値={(放電ピーク温度における電流値)−(放電前の電流値)}×0.1+(放電前の電流値) ・・・(2)。
【0121】
TSD試験は、Thermal Stimulated Discharge法(以下、TSD法と称する。)と呼ばれる方法による試験である。この方法では、エレクトレット30と第2の基材20(対向電極)とでキャパシタが形成されたことになる。そのため、エレクトレット30を加熱したときに、膜中にトラップされた電荷が不安定となり、拡散等によって表面付近の電荷が消滅すると、第2の基材20に蓄えられた電荷も減少する。したがって、第2の基材20から流れる電流値の大きさを測定することによって、エレクトレット30の熱安定性を評価できる。
TSD法による試験では、放電ピーク温度、放電開始温度の両方が重要であるが、特に放電開始温度が重要である。これらの温度が高いほど、よりエレクトレットの熱安定性が高いと言える。
【0122】
〔例2〕
工程(VII)のグリッド電圧を表9に示す値とした以外は、例1と同様にしてエレクトレットを得た。結果を表9に示す。
【0123】
〔例3〕
工程(III)を省略したこと以外は、例1と同様にしてエレクトレットを得た。結果を表9に示す。
【0124】
【表9】
【0125】
例1と例3との比較により、帯電助剤(B)として化合物(B1−1)を添加することで、電荷保持性能(初期表面電位と200時間後表面電位)および熱安定性(TSD放電開始温度及び放電ピーク温度)が向上することを確認した。
【0126】
〔例11、12〕
化合物(B1−1)を化合物(B1−3)に変更し、工程(V)の焼成温度や工程(VII)のグリッド電圧を表10に示す値とした以外は、例1と同様にしてエレクトレットを得た。結果を表10に示す。
【0127】
〔例13〜16〕
化合物(B1−1)を化合物(B2−1)に変更し、工程(V)の焼成温度や工程(VII)のグリッド電圧を表10に示す値とした以外は、例1と同様にしてエレクトレットを得た。結果を表10に示す。
【0128】
【表10】
【0129】
例11〜16の結果より、帯電助剤(B)として、化合物(B1−3)、化合物(B2−1)を用いた場合でも、工程(V)の焼成温度を230℃以上とすることで化合物(B1−1)を用いた場合と同様の効果が見られることがわかった。
【0130】
〔例21〜26〕
化合物(B1−1)を化合物(B1−2)に変更し、帯電助剤(B)の量を表11に示す量に変更し、工程(V)の焼成温度や工程(VII)のグリッド電圧を表11に示す値とした以外は、例1と同様にしてエレクトレットを得た。結果を表11に示す。
【0131】
【表11】
【0132】
例21〜26の結果より、含フッ素共重合体(A−1)の100重量部に対して、帯電助剤(B)の添加量1〜10重量部の範囲内では添加量による電荷保持性能への影響は小さいことがわかった。
【0133】
〔例31〜35〕
化合物(B1−1)を化合物(B1−2)に変更し、工程(V)の焼成温度を表12に示す値とした以外は、例1と同様にしてエレクトレットを得た。結果を表12に示す。
【0134】
【表12】
【0135】
例31〜35および22の結果より、焼成温度が高いほど、初期表面電位、電荷保持の熱安定性(TSD放電開始温度および放電ピーク温度)が高いことがわかった。これは前述の結晶の高秩序化が焼成温度を上げることにより高度に進行し、帯電助剤(B)の分散状態がより均一化されたであるためと考えられる。エレクトレットの初期表面電位としては、−700V以下が好ましいため、焼成温度としては、230℃以上が好ましいことを確認した。また、電荷保持の熱安定性(TSD放電開始温度及び放電ピーク温度)は、工程(V)の焼成温度によらず優れていることがわかった。
【0136】
〔例41〕
含フッ素共重合体(A−1)を含フッ素共重合体(A−2)に変更し、工程(I)における温度を185℃とし、化合物(B1−1)を化合物(B1−2)に変更し、工程(V)の焼成温度や工程(VII)のグリッド電圧を表13に示す値とした以外は、例1と同様にしてエレクトレットを得た。結果を表13に示す。
【0137】
〔例42〕
含フッ素共重合体(A−1)を含フッ素共重合体(A−3)に変更し、工程(I)における温度を200℃とし、化合物(B1−1)を化合物(B1−2)に変更した以外は、例41と同様にしてエレクトレットを得た。結果を表13に示す。
【0138】
[例43]
工程(III)を省略した以外は、例42と同様にしてエレクトレットを得た。結果を表13に示す。
【0139】
【表13】
【0140】
例42および例43の結果より、含フッ素共重合体(A−3)について同様の帯電助剤(B)の効果が認められた。
【0141】
〔例44〕
例22において、工程(V)で得た15μmの塗膜上に、さらにコーティング液P1をポッティング法によりコーティングした。次に、ヤマト科学社製クリーンオーブンDT610を用いて、100℃で1時間予備乾燥した後、同じオーブン中で200℃で1時間焼成し、厚さ2μmの塗膜を形成した。次に、例22同様、工程(VII)でグリッド電圧を−1,200Vにして電荷の注入を行い、エレクトレットを得た。得られたエレクトレットの初期表面電位と、耐湿熱性の評価結果を表14に示す。
(耐湿熱性)
初期表面電位測定後のエレクトレットを、50℃、95%RHの条件で100時間保管した後、常温に戻した際の表面電位を測定し、表面電位の残存率を算出した。
【0142】
【表14】
【0143】
例44は、帯電助剤を含まない最外層を有しているため、最外層に帯電助剤を含む例22と比べて、高温高湿下での電荷の安定性に優れていた。
【0144】
(赤外線吸収スペクトルの測定)
例31〜35および22で用いたコーティング用組成物をポリテトラフルオロエチレン製シート(以下「PTFEシート」という。)の表面にポッティング法によりコーティングした。ウェット膜を100℃で1時間予備乾燥した後、表14に記載の焼成温度にて1時間焼成し、塗膜を形成した。塗膜をPTFEシートから剥離して、50〜100μm厚のキャスト膜を得た。
【0145】
各キャスト膜の赤外吸収スペクトルを、サーモニコレット(Thermo Nicolet)社製 AVATAR370 FT−IRを用いて測定し、以下の2つのピークの変化を確認した。
2,800〜2,950cm
−1の吸収(以下、ピーク(x)という。):化合物(B1−2)のメトキシ基のC―H結合由来。
1,710〜1,720cm
−1の吸収(以下、ピーク(y)という。):化合物(B1−2)と含フッ素共重合体(A−1)中の反応性官能基(無水イタコン酸基)が反応することにより形成されたイミド基のカルボニル基由来。
【0146】
ピーク(x)の面積を、下式(3)により、含フッ素重合体(A)のCF
2由来の2,000〜2,700cm
−1の吸収(以下、ピーク(z)という。)の面積で規格化したピーク面積規格化値を、表14に示す。
(ピーク面積規格化値)=(ピーク(x)の面積)/(ピーク(z)の面積)×100
・・・(3)。
また、ピーク(y)のピークトップ波数についても表15に示す。
【0147】
【表15】
【0148】
ピーク(x)は、焼成温度が高いほどピーク面積が減少し、特に220℃以上の温度で大きく減少することがわかった。ピーク(y)は、焼成温度が高いほど、高波数側にシフトすることがわかった。
【0149】
以上の結果から、焼成温度は230℃以上が好ましいことが確認できる。
すなわち、焼成温度を上昇させると、まず、220℃までの温度で化合物(B1−2)のアルコキシシリル基の加水分解が進行する。焼成温度を230℃よりも高くすると、含フッ素共重合体(A−1)中の反応性官能基と該アルコキシシリル基とが反応してイミド基を形成する。さらに、生成したシラノール基が縮合し、該シラノール基と化合物(B1−2)を介して結合している該イミド基の運動が束縛されることを示していると考えられる。
例31〜35および22の結果より、工程(V)の焼成温度を230℃以上にした場合に、電荷保持性能(初期表面電位と200時間後表面電位)が特に向上することがわかった。IRスペクトルの測定結果から、含フッ素共重合体(A)と帯電助剤(B)とを含むことで、含フッ素共重合体(A)と帯電助剤(B)とが反応することで得られるエレクトレットの電荷保持性能が向上することを確認した。さらに、工程(V)の焼成温度を該範囲にすることで、該反応が充分進行することを確認した。