(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979081
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】単結晶ウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20160817BHJP
B24B 5/50 20060101ALI20160817BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20160817BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20160817BHJP
B24B 7/17 20060101ALI20160817BHJP
B24B 9/00 20060101ALI20160817BHJP
B24B 5/04 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
H01L21/02 A
B24B5/50 Z
H01L21/304 631
H01L21/304 601Z
H01L21/304 611W
H01L21/304 621A
B24B27/06 D
B24B7/17 Z
B24B9/00 601H
B24B5/04
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-112263(P2013-112263)
(22)【出願日】2013年5月28日
(65)【公開番号】特開2014-232780(P2014-232780A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2015年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 忠弘
【審査官】
▲高▼須 甲斐
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−246130(JP,A)
【文献】
特開2010−283227(JP,A)
【文献】
特開2009−279704(JP,A)
【文献】
特開平10−256106(JP,A)
【文献】
特開2002−124444(JP,A)
【文献】
特開2007−234945(JP,A)
【文献】
特開2011−003773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
B24B 5/04
B24B 5/50
B24B 7/17
B24B 9/00
B24B 27/06
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の単結晶インゴットの側面を研削する円筒研削工程と、円筒研削された前記単結晶インゴットを単結晶ウェーハに切断するスライス工程と、スライスされた前記単結晶ウェーハの両表面を同時に研削する両頭研削工程と、前記単結晶ウェーハに導入された加工変質層を除去するエッチング工程を有する単結晶ウェーハの製造方法であって、
前記円筒研削工程において、前記単結晶インゴットの側面に3個以上のノッチを単結晶インゴットの軸方向に形成し、該3個以上のノッチの深さの合計を1.2mm以上とし、前記3個以上のノッチのうちの1つを<011>又は<001>の結晶方位を示すようにし、
前記両頭研削工程後に、前記単結晶ウェーハに形成した<011>又は<001>の結晶方位を示すノッチを基準にした前記単結晶ウェーハの所定の位置にマークを刻印するレーザーマーキング工程を有し、
前記レーザーマーキング工程後に、前記単結晶ウェーハの前記形成した3個以上のノッチを全て除去してノッチのない単結晶ウェーハを製造するトリミング工程を有することを特徴とする単結晶ウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記円筒研削工程において、前記形成する3個以上のノッチのそれぞれの深さを0.4mm以下とすることを特徴とする請求項1に記載の単結晶ウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記円筒研削工程において形成する3個以上のノッチを周方向に不均等に配列することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の単結晶ウェーハの製造方法。
【請求項4】
前記スライス工程後、前記両頭研削工程前に、前記円筒研削工程において形成した3個以上のノッチを除去しないようにしながら、前記単結晶ウェーハの面取りを行う面取り工程を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の単結晶ウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体メモリ向けの直径300mm以上のシリコン単結晶ウェーハ等の単結晶ウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直径300mm以上のシリコン単結晶ウェーハ等の単結晶ウェーハには、製造工程中にウェーハの向きを合わせるため、外周上にノッチとよばれる切り欠きが設けられている。結晶構造が製造する半導体素子の動作に最も適した方向となるよう、ウェーハは特定の結晶方位に沿って切断されており、導電型と結晶方位によって、<110>や<100>等の結晶方位の方向にノッチ位置が決められている。
【0003】
近年のDRAM、NAND、MPU等の半導体素子の高集積化やウェーハの大直径化に伴い、半導体素子の製造工程での熱処理時にウェーハにかかる応力が増大し、ジャンクションリークの原因となるスリップの発生が問題となる。特にノッチのような局所的な形状を持つ部位は応力分布が生じやすく、
図7に示すように、スリップが発生しやすい。そのため、ノッチ等切り欠きのないウェーハが要求されている。
【0004】
一般に、半導体素子材料として用いられる単結晶ウェーハの製造では、まず、チョクラルスキー(Czochralski;CZ)法等を使用して特定の結晶方位を持った単結晶インゴットを製造する(単結晶成長工程)。製造した単結晶インゴットの側面を研削して外径を整え、単結晶インゴットの外周に結晶方位を示すノッチを1つ形成する(円筒研削工程)。単結晶インゴットを特定の結晶方位に沿って薄円板状のウェーハにスライスし(スライス工程)、該スライスしたウェーハの割れ、欠けを防止するためにその外周部を面取りする(面取り工程)。
【0005】
その後、面取りしたウェーハの両面を同時に研削して平坦化し(両頭研削工程)、面取り及び研削されたウェーハに残留する加工歪みをエッチングして除去する(エッチング工程)。更に、ウェーハ表面及び/又は裏面を研磨して鏡面化し(研磨工程)、研磨されたウェーハを洗浄して、これに付着した研磨剤や異物を除去する(洗浄工程)。
【0006】
これらの工程のうちスライス工程及び両頭研削工程では、ノッチが用いられる。具体的には、スライス工程では、予め、スライス方位を決定するために、Y−θ方式と呼ばれる単結晶インゴットのX線測定を行って配向するが、インゴットの長さ軸を中心に回転させるθ値をノッチを基準にして決定する(特許文献1参照)。また、両頭研削工程では、スライス後のウェーハを平坦化するため、その形状精度や厚さ精度の観点から、枚葉で両面を同時に研削加工する両頭研削が採用され、ノッチに係合するノッチと同形状の突起部を有するリング状のホルダーの保持孔内に保持されたウェーハが回転駆動される(特許文献2参照)。
【0007】
ノッチのないウェーハを製造する方法については、ノッチを基準としてレーザーマーキングで結晶方位マークを刻印した後、面取り加工でノッチを除去する方法が提案されている(特許文献3参照)。マークを刻印する際には、マーキング位置はノッチを基準に決定される。この方法は、上記した従来の製造工程でノッチを基準とした配向がそのまま使用できるという利点がある。
【0008】
また、半導体素子は、ウェーハ面内の結晶方位に沿って作り込まれるため、ノッチのない場合は、ノッチの代わりに結晶方位を明示する結晶方位マークをレーザーで刻印することがSEMI規格にて提案されている。しかし、具体的な方法についてはウェーハ製造メーカに任されているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−294914号公報
【特許文献2】特開2009−279704号公報
【特許文献3】特開平10−256106号公報
【特許文献4】特開平2000−107999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、上記した一般的な単結晶ウェーハの製造工程におけるウェーハ直径の推移を以下に示す。
最終製品の直径Df[mm]に対して、引き上げ後の単結晶インゴットの円筒研削後の直径DbはDf+1[mm]であり、各工程の公差を考慮して設定されている。同じくスライス後のウェーハ直径DsはDb[mm]となり、面取り後のウェーハ直径DcはおよそDfとなる。即ち、面取り工程で削り落とす直径は1mmである。
【0011】
一般的に、単結晶ウェーハの製造工程において形成されるノッチの深さVhは約1.2mmであるため(SEMI−M1規格参照:1+0.25−0mm)、ノッチを除去するための面取り工程で削り落とす直径は、最低でも2.4mm(1.2mm×2)必要であり、各工程での公差を考慮すると更に多くの除去量が必要となる。従って、この場合の円筒研削後の単結晶インゴットの直径DbはDf+2.4[mm]が最低でも必要であり、結果的に加工ロスが増大する。
【0012】
直径300mm、長さ300mmの単結晶インゴットで換算すると、1本当たり約11.7kgの単結晶が廃棄されることとなる。直径450mm、長さ300mmの単結晶インゴットでは、廃棄される単結晶は16.9kgに達する。
【0013】
上記した特許文献3には、ノッチ深さを0.2〜0.7mm程度とすることが記載されており、このようにノッチ深さを従来の1〜1.25mmより浅く設定した場合、上記単結晶の加工ロスは低減する。例えば、ノッチ深さ2.4mmの場合とノッチ深さ0.7mmの場合とで加工ロスを比較すると、直径300mm、長さ300mmの単結晶インゴットで、約8.3kgの差が、直径450mm、長さ300mmの単結晶インゴットで、約11.9kgの差が生じる。
【0014】
しかし、ノッチ深さを浅くすると両頭研削工程で、ウェーハのノッチとホルダーの突起部を係合してウェーハを回転駆動する際、ノッチと突起部間に負荷がかかり、突起部が破損しやすいという問題が発生する。
また、従来のノッチ付きウェーハ、或いは特許文献3に記載される方法においても、ノッチが2個以下しかない場合、レーザーマーキング時にウェーハの面指定ができないという根本的な欠点が存在する。
【0015】
ここで、面指定とは、ウェーハが表裏で異なる特性を持っており、表裏を識別することを意味する。例えば、
図8(A)に示すように、ノッチ方位<011>方向に対し、<001>方向に結晶軸の傾きがある場合には、ウェーハの表裏は等価であるが、
図8(B)に示すように、ノッチ方位<011>方向に対し、<011>方向に結晶軸の傾きがある場合には、ウェーハの表裏は異なる特性となり、面指定が必要となる。
【0016】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、従来の単結晶ウェーハの製造方法を大きく変更することなく、ノッチのない単結晶ウェーハを製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明によれば、円柱状の単結晶インゴットの側面を研削する円筒研削工程と、円筒研削された前記単結晶インゴットを単結晶ウェーハに切断するスライス工程と、スライスされた前記単結晶ウェーハの両表面を同時に研削する両頭研削工程と、前記単結晶ウェーハに導入された加工変質層を除去するエッチング工程を有する単結晶ウェーハの製造方法であって、前記円筒研削工程において、前記単結晶インゴットの側面に3個以上のノッチを単結晶インゴットの軸方向に形成し、該3個以上のノッチの深さの合計を1.2mm以上とし、前記3個以上のノッチのうちの1つを<011>又は<001>の結晶方位を示すようにし、前記両頭研削工程後に、前記単結晶ウェーハに形成した<011>又は<001>の結晶方位を示すノッチを基準にした前記単結晶ウェーハの所定の位置にマークを刻印するレーザーマーキング工程を有し、前記レーザーマーキング工程後に、前記単結晶ウェーハの前記形成した3個以上のノッチを全て除去してノッチのない単結晶ウェーハを製造するトリミング工程を有することを特徴とする単結晶ウェーハの製造方法が提供される。
【0018】
このような製造方法であれば、従来の単結晶ウェーハの製造方法を大きく変更することなく、ノッチのない単結晶ウェーハを製造することができる。また、上記のような深さのノッチを3個以上形成することで、両頭研削工程において突起部の破損を抑制できる。さらに、刻印したマークを結晶方位を示す基準としてノッチの替わりに用いることができる。
【0019】
このとき、前記円筒研削工程において、前記形成する3個以上のノッチのそれぞれの深さを0.4mm以下とすることが好ましい。
このようにすれば、単結晶の加工ロスの増加、即ちコスト増加を伴わずにノッチのない単結晶ウェーハを製造できる。
【0020】
このとき、前記円筒研削工程において形成する3個以上のノッチを周方向に不均等に配列することが好ましい。
このようにすれば、周方向に不均等に配列したノッチの形成パターンによって、ウェーハの面指定が可能となる。
【0021】
また、前記スライス工程後、前記両頭研削工程前に、前記円筒研削工程において形成した3個以上のノッチを除去しないようにしながら、前記単結晶ウェーハの面取りを行う面取り工程を有することができる。
このようにすれば、両頭研削工程以降の工程において、単結晶ウェーハのチップ、カケを抑制できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、円筒研削工程において、深さの合計を1.2mm以上とした3個以上のノッチを単結晶インゴットの側面に軸方向に形成し、そのうちの1つを<011>又は<001>の結晶方位を示すようにする。また、両頭研削工程後に、結晶方位を示すノッチを基準にした単結晶ウェーハの所定の位置にマークを刻印する。その後、単結晶ウェーハのノッチを全て除去する。これにより、従来の単結晶ウェーハの製造方法を大きく変更することなく、また、両頭研削工程において突起部の破損を抑制しつつ、ノッチのない単結晶ウェーハを製造することができる。さらに、刻印したマークを結晶方位を示す基準としてノッチの替わりに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の単結晶ウェーハの製造方法の一例を示すフロー図である。
【
図2】円筒研削工程において得られた3個のノッチが形成された単結晶インゴットを示す図である。
【
図3】スライス工程における単結晶インゴットのスライス加工を説明する図である。
【
図4】スライス工程においてマウント治具に当て板を介して接着した単結晶インゴットを示す図である。
【
図5】両頭研削工程における単結晶ウェーハの両頭研削加工を説明する図である。
【
図6】両頭研削工程においてホルダーの突起部と単結晶ウェーハのノッチを係合させて単結晶インゴットを保持する様子を示す図である。
【
図7】半導体素子の製造工程でスリップが発生したウェーハの一例を示す図である。
【
図8】ノッチ方位<011>方向に対し、<011>方向に結晶軸の傾きを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
近年、直径300mm以上の、特に450mm以上の大直径の単結晶ウェーハには、デバイス熱処理工程中のノッチからのスリップ発生によるチップ歩留まりの低下や、ノッチ自体によるチップ数低下を避けるために、ノッチが形成されていないことが要求されている。
そこで本発明者は、従来の両頭研削による単結晶ウェーハの平坦化を行う製造方法を大きく変更することなく、かつ、加工ロスを増加することなく、ノッチのない単結晶ウェーハを製造する方法を検討した。
【0025】
その結果、結晶方位を示すノッチを含む3個以上のノッチを単結晶インゴットの側面に形成し、ノッチの深さの合計を1.2mm以上となるようにすれば、両頭研削時にホルダーの突起部の破損を確実に抑止できることに想到した。また、ノッチのそれぞれの深さを0.4mm以下とすれば、1mmの面取り加工で全てのノッチを除去でき、加工ロスの増加を抑制できることに想到し、本発明を完成させた。
【0026】
本発明の単結晶ウェーハの製造方法について
図1を参照しながら説明する。
まず、準備工程として、単結晶インゴットを準備する(
図1のA)。この準備工程では、例えばCZ法により単結晶インゴットを引き上げ、両端部(トップとテール)を切り落とし、所定の長さで切断して円柱状のブロックを得る。
【0027】
〔円筒研削工程(
図1のB)〕
上記で得られた単結晶インゴットのブロックの両端部をクランプして保持し、単結晶インゴットを軸周りに回転させながら、円筒研削ホイールを単結晶インゴットの側面に当接して所望の直径になるように研削する。
その後、
図2に示すように、単結晶インゴット1の側面に3個以上のノッチ2を単結晶インゴットの軸方向に形成する。この時、X線回折を用いたX線方位測定により単結晶インゴット1の結晶方位を測定し、3個以上のノッチ2のうちの1つを<011>又は<001>の結晶方位を示すようにノッチを形成する。また、ノッチ2の深さの合計を1.2mm以上とする。
【0028】
結晶方位を示すノッチ以外のノッチを形成する位置は任意とすることができるが、
図2に示すように、上記3個以上のノッチ2を周方向に不均等に配列することが好ましい。このようにすれば、後述するスライス工程で切断したウェーハの表裏を、以降の工程においてノッチの形成パターンによって容易に判別できるようになる。ここで、不均等な配列とは、ウェーハ円周上の隣り合うノッチ間の円周上距離が全て等しくないことを意味する。尚、これらのノッチが周方向に均等に配置されると、表裏の判別が困難となる。
【0029】
ノッチの深さと個数に関しては、下記の両頭研削工程で詳細を述べるが、合計深さが1.2mm以上に設定され、個々のノッチ深さは形成されるノッチ個数に依存する。ノッチの個数は最低3個である。ノッチが3個の場合のそれぞれのノッチ深さの最低値は0.4mm(1.2÷3)となり、4個の場合は、0.3mmとなる。それぞれのノッチ深さを0.4mm以下とすれば、各工程の公差を考慮した上で、これらノッチを除去する際の直径の減少量を、従来の一般的な面取り加工時に低減する直径の量である1mm以下とすることができ、単結晶の加工ロスの増加を抑制できる。ノッチ個数を増やすことでノッチ深さを減少させ、さらに加工ロスを低減することができる。
【0030】
上記した特許文献2のようにノッチを2つとした場合、加工ロスを1mm以下に抑制するために、ノッチの深さをそれぞれの0.4mm以下とすれば、後述する両頭研削工程において、突起部が破損してしまうという問題を生じる。そのため、加工ロスの悪化と、突起部の破損の両方を抑制するためには、上記深さのノッチが3個以上必要である。
単結晶ウェーハの表裏の判定は、例えば後述する両頭研削工程やレーザーマーキング工程で必要となることがあるが、ノッチの個数を2個とした場合には、ノッチの形成パターンによる単結晶ウェーハの表裏の判定は不可能である。
【0031】
〔スライス工程(
図1のC)〕
この工程では、単結晶インゴットを切断装置により単結晶ウェーハに切断する。切断装置としては例えば
図3に示すようなワイヤソーを用いることができる。
まず、単結晶インゴットの切断方向を決定するためX線方位測定を行う。このX線方位測定には、Y―θ方式の方位測定機が用いられる(特許文献1参照)。単結晶インゴットをY−θテーブルの上で回転させ、インゴット端面の結晶方位を測定する。ここで、Y方向はインゴット円筒側面基準の移動量、θ方向は<011>或いは<001>の結晶方位が割り付けられたノッチを基準とする回転角度を示す。このX線方位測定で得られたY値、θ値を用いて、単結晶インゴットを回転させ、単結晶インゴットを切断装置に固定する。
【0032】
ここで、単結晶インゴットの切断方向を決定するX線測定は、近年では主に、切断装置外で予め実施する外段取り方式が採用される。尚、外段取り方式に対し、切断装置内でX線測定・方位出しを行う内段取り方式があるが、内段取り方式では、切断装置に単結晶インゴットを固定した後に角度を自由に変更可能なゴニオメータヘッドが取り付けられているため、装置剛性の観点から望ましくない。
【0033】
図3に示すようなワイヤソー3を用いる場合には、単結晶インゴットを固定する際に、
図4に示すように、単結晶インゴット1をマウント治具7に当て板6を介して接着する。その後、ワイヤソー3の複数の溝付きローラー5間に巻掛けられたワイヤ4をワイヤ軸方向に往復走行させ、ワイヤ4に切断用のスラリを供給しつつ、単結晶インゴット1を往復走行するワイヤ4に押し当てて切り込み送りして複数の単結晶ウェーハに切断する。
この切断したウェーハを、温水洗浄やブラシ洗浄を用いて洗浄・乾燥する。
【0034】
〔面取り工程(
図1のD)〕
上記で切断・洗浄したウェーハのチップ又はカケを防止するために、スライスされたウェーハの面取り加工を行うことができる。この面取り加工では、上記円筒研削工程において形成した3個以上のノッチを除去しないようにしながら、総型溝形状を持つ砥石によるならい研削方式や溝なし砥石を面取り断面形状に輪郭動作させる研削方法により、ウェーハ外周部の面取り加工を行う。後述するように、後工程でノッチを除去するトリミング加工を行うため、この面取り加工における方式や精度は特に問わない。
【0035】
〔両頭研削工程(
図1のE)〕
単結晶ウェーハを平坦化するため、単結晶ウェーハの両頭研削加工を行う。
図5に示すように、リング状のホルダー9の保持孔内に単結晶ウェーハ8を保持し、単結晶ウェーハ8の半径にほぼ等しい直径を有する砥石10、10’を対向させて回転させ、ウェーハ8を両面から同時に研削する。
ホルダー9には、
図6に示すように、単結晶ウェーハ8を回転させるために、ウェーハ8上のノッチ2に係合するノッチと同形状の突起部11を有している。この突起部11を介して回転駆動力がウェーハ8に伝えられ、ホルダー9と共にウェーハ8が回転する。
突起部11は接するウェーハ8へのキズやワレを抑制するため、ポリアミド等の樹脂製となっている。
【0036】
この両頭研削は固定砥粒を用いた加工方式であるため、遊離砥粒スラリを用いたラップ加工に比べ、高速な加工が可能であり、砥粒径を微細化することにより、より浅い加工変質層を得ることができ、後工程である両面研磨での研磨量の削減、研磨時間の短縮が容易となる。
【0037】
従来、約1.2mmの深さの1つのノッチで両頭研削中のウェーハの回転駆動を賄っていたが、加工ロスを削減するためにノッチの深さを浅くすると、研削中の負荷により樹脂製の突起部が破損するという問題が頻発する。そこで、本発明者は実験を重ね、両頭研削中のウェーハを安定に回転させるためには、最低3個のノッチが必要となり、ノッチ深さと最低ノッチ個数の関係を、以下に示す条件式を満たすようにすれば、回転駆動にかかるノッチへの応力を分散させて、突起部の破損を防ぐことができることを見出した。
ノッチ個数Nv≧1.2÷ノッチ深さ[mm]
【0038】
このとき、ノッチを周方向に不均等に配列した場合には、予めアライメント時にノッチの配置位置を測定することで表裏の判定を行い、ホルダーの突起部の配列に合わせてウェーハをホルダーの保持孔に挿入する。
【0039】
〔レーザーマーキング工程(
図1のF)〕
この工程では、単結晶ウェーハに形成した<011>又は<001>の結晶方位を示すノッチを基準にした単結晶ウェーハの所定の位置(SEMI規格又は顧客規格に基づいて定めることができる)にマークを刻印する。具体的には、パルスレーザを単結晶ウェーハに照射して、マークをウェーハ固有の識別コードとして刻印する。刻印するマークとして、例えば、SEMI規格に準拠するOCR文字やバーコード、或いは、従来のノッチを代替する<011>或いは<001>の結晶方向を示す結晶方位マークとすることができる(SEMI M1−0309参照)。
【0040】
このとき、面指定を行う必要がある、すなわち単結晶ウェーハの表裏どちらかにマークを刻印するかが定められている場合には、周方向に不均等に配列されたノッチの形成パターンによって単結晶ウェーハの表裏を判定し、所定の面側にマークを刻印する。
【0041】
〔トリミング工程(
図1のG)〕
ノッチのない単結晶ウェーハを得るため、レーザーマーキング後の単結晶ウェーハの外周部を研削により除去する。近年では、単結晶ウェーハの面取り部の断面形状が半導体素子の製造工程内でのウェーハ・ワレに影響するとされ、厳密に表裏対象な面取り形状が要求されるため、溝なし砥石を面取り形状に輪郭動作させる研削方法による面取り加工が望ましい。具体的には、ノッチの位置出しを行わず、センタリング機構によるウェーハの中心出しのみを行ったウェーハを吸着ステージに固定・回転させ、粗研削を行った後、輪郭動作する溝なし砥石によって精研削を行い、所望の直径、断面形状を形成し、かつ形成されている3個以上のノッチを除去する。この際、半径除去量は、ノッチ深さに装置の公差を加えた量となる。
【0042】
そこで、表裏対象な面取り形状を得るために、特許文献4に示されるように、ウェーハの周縁の所定の箇所の厚さを測定し、厚さ方向の中心が、常に面取り装置の研削砥石の総型溝の中央に位置するように面取り加工する。本発明では、上記レーザーマーキングにより<011>又は<001>の結晶方位を示すノッチを基準にした位置にマークが刻印されているため、そのマークの位置を測定することで、マークに合わせた事前の厚さ測定により、上記研削砥石の位置制御を行うことができる。
【0043】
〔エッチング工程(
図1のH)〕
上記工程で単結晶ウェーハに導入された加工変質層を除去するため、エッチング処理等、通常のウェーハ加工工程を経て、ノッチのない単結晶ウェーハが最終製品として製造される。
この製造された単結晶ウェーハには、<011>又は<001>の結晶方位を示すノッチを基準にした位置にマークが刻印されているため、パーティクル測定や平坦度測定等、これ以降の工程で従来ノッチ位置を基準にアライメントしていた動作は、このマークで容易に代替することができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
(実施例)
本発明の単結晶ウェーハの製造方法に従って直径300mmのシリコン単結晶ウェーハを製造した。ノッチを周方向に不均等に配列するように3個形成し、その内の1つを<011>の結晶方位を示すノッチとした。このとき、それぞれのノッチ深さを0.4mmとした。また、ウェーハの裏面に、<011>の結晶方位を示すマークを刻印した。
【0046】
その結果、両頭研削時にホルダーの突起部が破損することもなく、面取り工程及びトリミング工程で減少した直径の合計を約1mmに抑えることができ、加工ロスの増加を抑制できた。また、ノッチの形成パターンによりウェーハの裏面を容易に特定できた。
【0047】
(比較例)
深さ0.4mmのノッチを2個形成した以外、実施例と同様な条件でシリコン単結晶ウェーハを製造した。
その結果、両頭研削時にホルダーの突起部が破損してしまった。そこで、深さ0.6mmのノッチを2個形成して再度シリコン単結晶ウェーハを製造したところ、両頭研削時にホルダーの突起部は破損しなかったが、減少した直径の合計が約1.4mmと実施例と比較して増加してしまった。また、ウェーハの表裏面の判定が困難であった。
【0048】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0049】
1…単結晶インゴット、 2…ノッチ、 3…ワイヤソー、 4…ワイヤ、
5…溝付きローラ、 6…当て板、 7…マウント治具、
8…単結晶ウェーハ、 9…ホルダー、 10、10’…砥石、
11…突起部。