(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記変形部は、前記支持部に変形力を与えるべく駆動する複数のアクチュエータと、前記複数のアクチュエータのそれぞれと前記支持部とを連結する複数の弾性部材とを有し、
複数の弾性部材のそれぞれは、前記アクチュエータの駆動方向に駆動力を伝えつつ、駆動方向に直交する方向に弾性的に変形する請求項11または12に記載の基板貼り合わせ装置。
前記変形部は、前記支持部に変形力を与えるべく駆動する複数のアクチュエータと、前記複数のアクチュエータのそれぞれと前記支持部とを連結する複数の連結部材とを有し、
複数の連結部材のそれぞれは、前記アクチュエータの駆動方向に直交する方向について前記アクチュエータおよび前記支持部の少なくとも一方に対し摺動可能に連結される請求項11または12に記載の基板貼り合わせ装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、積層基板製造装置100の模式的平面図である。積層基板製造装置100は、一対の基板121を重ね合わせて積層基板123を製造する。
【0013】
積層基板製造装置100は、筐体110と、筐体110に収容されたローダ130、ホルダストッカ140、プリアライナ160、アライナ170、ベンダ180、および加圧装置190を備える。また、筐体110の外面には、制御部112と複数のFOUP(Front Opening Unified Pod)120が配される。
【0014】
積層基板製造装置100は、制御部112を更に備える。制御部112は、予め実装された、あるいは外部から読み込ませた手順に従って、積層基板製造装置100全体の動作を制御する。FOUP120は複数の基板121を収容して、筐体110に対して個別に装着または取り外しができる。
【0015】
FOUP120を用いることにより、複数の基板121を一括して積層基板製造装置100に装填できる。また、基板121を重ね合わせて作製した複数の積層基板123をFOUP120に回収して一括して搬出できる。
【0016】
ここでいう基板121は、シリコン単結晶基板、化合物半導体基板等の半導体基板の他、ガラス基板等でもあり得る。また、重ね合わせに供される基板121の少なくとも一方は、複数の素子を含む場合がある。更に、重ね合わせに供される基板121の一方または両方は、それ自体が既に基板121を重ね合わせて製造された積層基板123である場合もある。
【0017】
筐体110は、ローダ130、ホルダストッカ140、プリアライナ160、アライナ170、ベンダ180および加圧装置190を気密に包囲する。これにより、積層基板製造装置100における基板121の通過経路を清浄に保つことができる。なお、筐体110の内部雰囲気を、窒素等のパージガスと置換してもよい。更に、筐体110の内部全体またはその一部を排気して、ローダ130、ホルダストッカ140、プリアライナ160、アライナ170、ベンダ180および加圧装置190の一部を真空環境下で動作させてもよい。
【0018】
ローダ130は、フォーク132、落下防止爪134およびフォールディングアーム136を有する。フォールディングアーム136の一端は、筐体110に対して回転自在に支持される。フォールディングアーム136の他端は、フォーク132および落下防止爪134を、垂直軸および水平軸の回りに回転自在に支持する。
【0019】
基板121は、フォーク132に搭載される。ローダ130は、フォールディングアーム136の屈曲とフォーク132の回転とを組み合わせて、フォーク132に保持された基板121を任意の位置に搬送できる。
【0020】
落下防止爪134は、フォーク132が水平軸の周りに反転して基板121を下側に保持した場合に、フォーク132の下方に差し出される。これにより、基板121が落下することを防止する。フォーク132が反転しない場合、落下防止爪134は、フォーク132上の基板121と干渉しない位置まで退避する。
【0021】
ローダ130は、FOUP120からプリアライナ160へと基板121を搬送する。また、ローダ130は、加圧装置190から搬出した積層基板123をFOUP120に搬送する。ローダ130は搬送部の一例である。
【0022】
更に、ローダ130は、ホルダストッカ140からプリアライナ160、プリアライナからアライナ170、アライナ170から加圧装置190への基板ホルダ150を搬送する。基板ホルダストッカ140は、複数の基板ホルダ150を収容している。また、使用後の基板ホルダ150は、ホルダストッカ140に戻される。
【0023】
プリアライナ160は、基板121の各々を、基板ホルダ150に保持させ、基板121を基板ホルダ150と共に移動できる状態にする。即ち、薄くて脆い基板121を、剛性および強度の高い基板ホルダ150に保持させて一体的に取り扱うことにより、積層基板製造装置100における基板121の取り扱いを容易にしている。
【0024】
また、プリアライナ160は、位置合わせ精度よりも処理速度を重視した位置合わせ機構を有し、基板ホルダ150に対する基板121の搭載位置のばらつきを、予め定められた範囲に収まるように調整する。これにより、後述するアライナ170における位置合わせに要する時間を短縮できる。
【0025】
アライナ170は、一対の基板121を相互に位置合わせした後に重ね合わせる。アライナ170に求められる位置合わせ精度は高く、例えば、素子が形成された半導体基板を重ね合わせる場合には、素子の配線間隔に相当するサブミクロンレベルの精度が求められる。アライナ170については他の図面を参照して後述する。なお、アライナ170は一対の基板121を位置合わせした後に、接触させて重ね合せるのに代えて、一対の基板ホルダ150同士の結合によって一対の基板121に間隙を有した状態で保持させてもよい。
【0026】
加圧装置190は、アライナ170において位置合わせして重ね合わされた一対の基板121を強く加圧して、基板121どうしを恒久的に接合させる。これにより重ね合わされた基板121は一体の積層基板123となる。加圧装置190は、基板121を加圧する場合に、併せて加熱する場合もある。
【0027】
図2は、下向きの基板ホルダ150を見上げた様子を示す斜視図である。基板ホルダ150は、保持する基板121に接する円形の載置面156を有する円板状の部材であり、アルミナセラミックス等の硬い材料で形成される。また、基板ホルダ150は、埋設された電極に電圧を印加した場合に載置面156に基板121を静電吸着する静電チャック158を有する。
【0028】
更に、基板ホルダ150は、側周に沿って配された複数の永久磁石152を備える。永久磁石152は、それぞれ載置面156の外側において、基板ホルダ150の縁部に対して固定される。
【0029】
図3は、上向きの他の基板ホルダ150を見下ろした様子を示す斜視図である。この基板ホルダ150も、載置面156および静電チャック158を有する点では、
図2に示した基板ホルダ150と同じ形状および構造を有する。
【0030】
図3に示した基板ホルダ150は、永久磁石152に換えて、磁性体板154を有する。磁性体板154は、永久磁石152に対応して配される。また、磁性体板154の各々は、載置面156の法線方向に変位可能に、基板ホルダ150に対して弾性的に取り付けられる。これにより、
図2に示した基板ホルダ150と
図3に示した基板ホルダ150とを向かい合わせて重ねた場合、永久磁石152が磁性体板154を吸着して、両者は重なった状態を自律的に維持する。
【0031】
図4は、アライナ170の模式的縦断面図である。アライナ170は、枠体210と、枠体210の内側に配された移動ステージ部240および固定ステージ250を有する。
【0032】
固定ステージ250は、枠体210の天井面から、複数のロードセル254を介して下向きに懸架される。固定ステージ250は、静電チャック252を備える。これにより、固定ステージ250は、貼り合わせに供する基板121の一方を保持した基板ホルダ150を下面に吸着して保持する。
【0033】
図示の例では、
図2に示した、永久磁石152を装着された基板ホルダ150が固定ステージ250に保持される。ロードセル254は、固定ステージ250に対して下方から上方に向かってかかる負荷を検出する。
【0034】
枠体210の天井面には、固定ステージ250の側方に、下向きの顕微鏡251が配される。顕微鏡251は、後述する微動ステージ230に保持された基板121の表面を観察する。なお、顕微鏡251は枠体210に固定されているので、顕微鏡251と固定ステージ250の相対位置は変化しない。
【0035】
移動ステージ部240は、移動定盤242、粗動ステージ244、重力打ち消し部246、球面座248および微動ステージ230を含む。移動定盤242は、粗動ステージ244、重力打ち消し部246および微動ステージ230を搭載して、枠体210の内部底面に固定されたガイドレール241に沿って移動する。移動定盤242の移動により、移動ステージ部240は、固定ステージ250の直下と、固定ステージ250の直下からはずれた位置との間を移動する。
【0036】
粗動ステージ244は、図中に矢印で示すX方向成分およびY方向成分を含む水平方向に、移動定盤242に対して移動する。移動定盤242に対して相対移動する場合、微動ステージ230も粗動ステージ244につれ従って移動する。
【0037】
重力打ち消し部246は、微動ステージ230の微細な変位を検知しつつ伸縮して、微動ステージ230の見かけの重量を小さくする。これにより、微動ステージ230を変位させるアクチュエータの負荷を軽減して位置の制御精度を向上させる。
【0038】
微動ステージ230は、保持部220を有し、貼り合わせに供する基板121を保持した基板ホルダ150を保持する。基板121の位置合わせ動作において、微動ステージ230は、当初、粗動ステージ244の移動に連れ従って移動する。次の段階で、微動ステージ230は粗動ステージ244に対して変位する。微動ステージ230の粗動ステージ244に対する変位は、X、Y、Z軸の全てに対する並進および回転を含む。
【0039】
また、微動ステージ230は、側方に固定された顕微鏡231を有する。顕微鏡231は微動ステージ230に対して固定されているので、微動ステージ230および顕微鏡231の相対位置は変化しない。顕微鏡231は、固定ステージ250に保持された基板121の表面を観察する。
【0040】
微動ステージ230の保持部220は基板121の素子領域の形成倍率を部分領域毎に独立して補正する、基板121の変形部としての機能も有する。保持部220の構成および機能については、後述する。
図5は、アライナ170の模式的断面図である。
図4と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0041】
図示のアライナ170においては、移動ステージ部240がガイドレール241に沿って移動し、それぞれが基板ホルダ150および基板121を保持した微動ステージ230および固定ステージ250が互いに対向した状態になる。更に、保持した一対の基板を位置合わせした上で微動ステージ230を上昇させ、一対の基板121は互いに重ねあわされて密着する。ここで、アライナ170において基板121を密着させる前に、パッド、パンプ等の位置が一致するように、基板121相互の位置合わせが実行される。
【0042】
図6は、互いに対向して接合に供される一対の基板121の概念的な斜視図である。基板121は、ノッチ124により一部が欠けた円板型の形状を有して、表面にそれぞれ複数の素子領域126およびアライメントマーク128を有する。
【0043】
ノッチ124は、基板121の結晶配向性等に対応して形成される。よって、基板121を取り扱う場合には、ノッチ124を指標として基板121の方向が判る。
【0044】
基板121の表面には、複数の素子領域126が周期的に配される。素子領域126の各々には、フォトリソグラフィ技術等により基板121を加工して形成された半導体装置が実装される。また、素子領域126の各々には、基板121を他の基板121に貼り合わせた場合に接続端子となるパッド等も含まれる。
【0045】
なお、複数の素子領域126相互の間には、素子、回路等の機能的要素が配されていないブランク領域がある。ブランク領域には、基板121を素子領域126毎に切り分ける場合に切断するスクライブライン122が配される。
【0046】
更に、スクライブライン122上には、基板121を位置合わせする場合の指標となるアライメントマーク128が配される。スクライブライン122は、基板121を切断してダイにする過程で鋸代となって消滅するので、アライメントマーク128を設けることにより、基板121の実効的な面積が圧迫されることはない。
【0047】
なお、図中では素子領域126およびアライメントマーク128を大きく描いているが、例えば直径300mmの基板121に形成される素子領域126の数は数百以上にも及ぶ場合がある。また、素子領域126に形成された配線パターン等をアライメントマーク128として利用する場合もある。
【0048】
図7は、加圧装置190の模式的断面図である。加圧装置190は、筐体192の底部から順次積層された定盤198およびヒートプレート196と、筐体192の天井面から垂下された圧下部194およびヒートプレート196とを有する。ヒートプレート196の各々はヒータを内蔵する。また、筐体192の側面のひとつには装入口191が設けられる。
【0049】
加圧装置190には、既に位置合わせして重ね合わされた一対の基板121と、当該一対の基板121を挟む一対の基板ホルダ150が搬入される。搬入された基板ホルダ150および基板121は、定盤198のヒートプレート196上面に載置される。
【0050】
加圧装置190は、まず、ヒートプレート196を昇温させると共に、圧下部194を降下させて上側のヒートプレート196を押し下げる。これにより、ヒートプレート196の間に挟まれた基板ホルダ150および基板121が加熱および加圧されて接合され、一対の基板121は積層基板123となる。積層基板123においては、少なくとも一方の基板121に形成されたはんだバンプ等を介して、基板121上のパッドが相互に電気的に結合される。このように、一対の基板121上の素子を相互に結合して、積層基板123を形成できる。製造された積層基板123は、ローダ130によりFOUP120に順次格納される。
【0051】
なお、上記のような用途に鑑みて、基板ホルダ150には、加圧装置190における加熱および加圧を繰り返し受けても劣化しない強度と耐熱性が求められる。また、ヒートプレート196による加熱温度が高い場合は、基板121の表面が雰囲気と化学的に反応する場合がある。そこで、基板121を加熱加圧する場合は、筐体192の内部を排気して真空環境とすることが好ましい。このため、装入口191を気密に閉鎖する開閉可能な扉を設けてもよい。
【0052】
更に、加圧装置190には、加熱、加圧した後の積層基板123を冷却する冷却部を設けてもよい。これにより、室温までに至らなくても、ある程度冷却した積層基板123を搬出して、迅速にFOUP120に戻すことができる。
【0053】
図8、
図9、
図10および
図11は、積層基板製造装置100における基板121の状態の変遷を示す図である。これらの図面を参照しつつ、積層基板製造装置100の動作を説明する。
【0054】
貼り合わせに供される基板121は、FOUP120に収容された状態で積層基板製造装置100に装填される。積層基板製造装置100においては、まず、ローダ130が、ホルダストッカ140から搬出した基板ホルダ150をプリアライナ160に載置する。
【0055】
ここで、基板ホルダ150は、プリアライナ160に対する載置位置を調整される。これにより、基板ホルダ150は、予め定められた一定以上の精度で、プリアライナ160上に位置決めされる。
【0056】
次に、ローダ130は、FOUP120から1枚ずつ搬出した基板121を、プリアライナ160に搬送する。プリアライナ160において、基板121は、基板ホルダ150に対して、予め定められた一定以上の位置精度で基板ホルダ150に搭載される。
【0057】
こうして、
図8に示すように、基板121を保部持した基板ホルダ150が用意される。基板121を搭載された基板ホルダ150は、ローダ130によりアライナ170に順次搬送される。これにより、例えば、最初に搬送された基板121および基板ホルダ150は、ローダ130により反転されて固定ステージ250に保持される。
【0058】
次に搬入された基板121および基板ホルダ150は、そのままの向きで微動ステージ230に保持される。こうして、
図9に示すように、一対の基板121は、互いに対向した状態でアライナ170に保持される。
【0059】
次に、アライナ170は、基板121を相互に位置合わせして密着させる。この段階では、一対の基板121はまだ恒久的には接合されていない。しかしながら、一方の基板ホルダ150の永久磁石152が、他方の基板ホルダ150の磁性体板154を吸着するので、
図10に示すように、密着する一対の基板121を一対の基板ホルダ150が挟んだ状態が自律的に維持される。よって、ローダ130は、基板121を挟んだ一対の基板ホルダ150を一体的に搬送できる。
【0060】
続いて、ローダ130は、1対の基板121を挟んだ基板ホルダ150を加圧装置190に装入する。加圧装置190において加熱、加圧された1対の基板121は恒久的に接合され、
図11に示すように積層基板123となる。その後、ローダ130は、基板ホルダ150および積層基板123を分離して、基板ホルダ150はホルダストッカ140に、積層基板123は、FOUP120に、それぞれ搬送する。こうして、積層基板123を製造する一連の工程が完了する。その後、積層基板123が積層半導体装置毎に個片化される。
【0061】
上記一連の工程においてアライナ170で一対の基板121を位置合わせする場合、
図4および
図5に示したアライナ170において、顕微鏡231、251により対向する基板121のアライメントマーク128を観察して、基板121相互の相対位置を計測する。更に、計測した相対位置のずれを解消すべく微動ステージ230を移動させることにより、基板121は位置を合わせることができる。
【0062】
しかしながら、たとえ同じ装置で同じマスクを用いて作製された基板121であっても、フォトリソグラフィ過程における温度等の環境条件の相違等により、基板121上に形成された素子領域126の形成倍率が異なる場合がある。素子領域126の形成倍率が互いに異なる基板121は、基板の相対位置を変化させても位置合わせすることができない。これに対し、本実施形態の積層基板製造装置100は、ベンダ180を用いて、基板121を撓ませることにより素子領域126の形成倍率を補正する。
【0063】
図12は、ベンダ180の模式的断面図である。ベンダ180は、素子領域126の形成倍率を基板121全体で補正する場合に用いられる。
【0064】
ベンダ180は、支持部182および把持部186を有する。支持部182は、上端が開放された円筒状の形状を有する。支持部182の上端面は、縁部において基板ホルダ150の下面に接して基板ホルダ150を支持する。また、支持部182の上端面には給電供給端子187を設けられる。当該給電供給端子187を介して、基板ホルダ150の静電チャック158を駆動させる電圧が印加される。
【0065】
ここで、支持部182の上端面は環状なので、基板ホルダ150の載置面156の下面には当接しない。よって、支持部182に基板ホルダ150を載置した場合、支持部182の内側には、支持部182の内面と基板ホルダ150の下面により画成された気室188が形成される。
【0066】
気室188は、バルブ181を介して圧力源に接続される。また、バルブ181は、制御部112の制御の下に、気室188を、正圧源または負圧源に連通させる。気室188、バルブ181、圧力源がアクチュエータを形成する。
【0067】
支持部182の上面には、複数の位置決めピン184が配される。位置決めピン184は、支持部182の環状の上端面に少なくとも2箇所設けられる。これにより、支持部182の上面に基板ホルダ150を載置する場合に、位置決めピン184に側方から押し当てることにより、基板ホルダ150を、支持部182と同軸になる位置に位置決めできる。
【0068】
把持部186は、支持部182の上に載置された基板ホルダ150の縁部を上方から押し下げる。これにより、基板ホルダ150は、支持部182および把持部186の間に把持される。
【0069】
図13は、上記ベンダ180の動作手順を示す流れ図である。また、
図14から
図21までは、ベンダ180の動作に伴う基板ホルダ150および基板121の状態を模式的に示す図であり、下記の説明において随時参照する。
【0070】
図13に示すように、ベンダ180を用いる場合は、まず、それぞれが基板121を保持した一対の基板ホルダ150をローダ130がアライナ170に装入して、当該アライナ170が基板121の位置合わせを実行する(ステップS101)。これにより、基板121が許容範囲の精度で位置合わせできた場合、基板121および基板ホルダ150は、加圧装置190に搬送される。よって、制御部112は、ベンダ180に係る制御を終了する(ステップS102:YES)。
【0071】
一方、微動ステージ230を移動させても基板121を許容範囲の精度で位置合わせできなかった場合(ステップS102:NO)、制御部112は、一方の基板121における素子領域126の形成倍率を変更することにより、位置合わせ精度が、予め定められた許容範囲に到達できるか否かを計算する(ステップS103)。
【0072】
一方の基板121の形成倍率を変更して求められた位置合わせ精度を達成できる解が算出された場合(ステップS103:YES)、制御部112は、基板121の倍率変更を実行する。即ち、制御部112は、微動ステージ230に保持されていた基板121および基板ホルダ150を、ローダ130によりベンダ180に搬送させる(ステップS104)。
【0073】
即ち、制御部112は、ローダ130を制御して、ベンダ180に搬送された基板121および基板ホルダ150を、位置決めピン184で位置合わせさせた上で支持部182の上に載置させる。次に、制御部112は、把持部186を降下させ、基板ホルダ150をベンダ180に対して固定させる(ステップS105)。更に、制御部112は、基板ホルダ150の静電チャック158を解除して(ステップS106)、基板121が基板ホルダ150の上に載っている状態にする。
【0074】
図14に示すように、支持部182の間で、基板ホルダ150は水平に固定される。また、基板121は、基板ホルダ150の上面に載っているに過ぎない。次に、制御部112は、バルブ181を制御して、支持部182の気室188を負圧源に連通させる(ステップS107)。
【0075】
これにより、
図15に示すように、基板ホルダ150の下面は負圧により吸引され、基板ホルダ150の中央付近が、載置面156に対して交差する方向に降下する。こうして、基板ホルダ150は全体に変形する。このとき、基板ホルダ150による基板121の吸引は解除されている(ステップS106)ので、基板121は変形することなく基板ホルダ150に載っている。よって、基板121の中央付近は基板ホルダ150から離れて浮いている。
【0076】
次に、制御部112は、基板ホルダ150の静電チャック158に電圧を印加して、基板121を吸着させる(ステップS108)。これにより、
図16に示すように、基板121は基板ホルダ150に倣って変形し、基板121の下面が基板ホルダ150の載置面156に密着する。
【0077】
その後、制御部112は、バルブ181を制御して、気室188を大気圧に連通させる。これにより、基板ホルダ150に対する負圧による吸引は解除され、
図17に示すように、基板ホルダ150は、自身の弾性により復元力を生じ、平坦な状態に戻る方向に、いわば逆変形する(ステップS109)。
【0078】
ここで、基板121よりも遥かに厚い基板ホルダ150は、基板121よりも高い曲げ剛性を有する。更に、基板121は、下面全体で基板ホルダ150の載置面156に接している。基板ホルダ150の復元力による変形は、基板121を撓ませる。よって、図中に矢印Tで示すように、基板121には、基板121の面方向に水平に拡がる応力が作用し、素子領域126の形成倍率が大きくなる。
【0079】
ただし、基板ホルダ150は、静電チャック158による基板121の吸引を継続して、基板121を吸着したまま共に逆変形する。よって、逆変形する基板ホルダ150が生じる復元力は、基板ホルダ150自体の曲げ剛性に基板121の曲げ剛性を加味したものに対して作用する。
【0080】
このため、支持部182による基板ホルダ150の変形が解除された場合の基板121の平坦度は、基板ホルダ150単独の平坦度とは異なる。よって、予め基板121の曲げ剛性を考慮に入れて、目的とする形成倍率が得られる変形量を基板ホルダ150に与えることが好ましい。
【0081】
図17に示した状態から、制御部112は、静電チャック158による基板121の保持を維持したまま、ローダ130により、基板121および基板ホルダ150を再びアライナ170に装入させる(ステップS110)。こうして、形成倍率の差が補正されるので、アライナ170は、基板121をベンダ180で変形する前の位置合わせ精度よりも高い位置合わせ精度で基板121を位置合わせできる。
【0082】
なお、基板ホルダ150は、基板121の下面全体に張力を作用させる。よって、基板121に応力集中が生じることなく、基板121全体を延伸させて、素子領域126の形成倍率を拡大できる。
【0083】
また、ステップS110において基板121を再吸着させる場合に、基板ホルダ150が大きく変形している場合には、吸着する基板121と基板ホルダ150の間隔がより大きく開く。また、基板ホルダ150の変形が大きい場合は、ステップS109において基板の変形を解除した場合に基板121に作用する応力も大きくなる。よって、基板ホルダ150の変形量がより大きい場合には、基板ホルダ150が発生する吸引力をより強くすることが望ましい。
【0084】
図18は、基板ホルダ150の静電チャック158に対する印加電圧と、静電チャック158による基板121を保持する保持力の関係を示すグラフである。図示のように、静電チャック158に対する印加電圧を上昇させるほど、静電チャック158による保持力も高くなる。
【0085】
一例として、直径300mmのシリコン単結晶基板121を、載置面156の摩擦係数が0.3程度の基板ホルダ150に保持させる場合を示す。このような場合、基板ホルダ150中央における変形が5ppm程度になっても、吸着力が169.9kPa以上あれば、基板ホルダ150は基板121を保持し続けることができる。この吸着力は、平坦な基板121を平坦な基板ホルダ150で保持する場合の2.5倍程度の電圧を静電チャック158に印加することで発生させることができる。例えば平坦な基板121を保持する場合の印加電圧が200Vである場合、変形した基板121を保持し続ける上記吸着力を発生させるには500V程度、好ましくは1000V程度の電圧を静電チャック158に印加すればよい。
【0086】
なお、印加電圧が絶たれた場合、静電チャック158の吸引力は徐々に低下する。よって、基板ホルダ150をローダに受け渡す場合に、印加電圧が短時間絶たれたとしても、基板ホルダ150による基板121の吸着は概ね維持される。
【0087】
図19、
図20および
図21は、制御部112が、バルブ181を介して気室188を正圧に連通させた場合の基板121および基板ホルダ150の状態遷移を示す図である。
図13に示した手順を適宜参照しつつ説明する。
【0088】
ステップS106において、制御部112は、基板ホルダ150の静電チャック158を解除して、基板121が基板ホルダ150の上に載っている状態にする。次いで、制御部112は、バルブ181を制御して、支持部182の気室188を正圧源に連通させる(ステップS107)。
【0089】
これにより、
図19に示すように、基板ホルダ150の下面は正圧により押し上げられる。よって、基板ホルダ150の中央付近は、載置面156に対して交差する方向に上昇して、基板ホルダ150全体が変形する。このとき、基板ホルダ150による基板121の吸引は解除されている(ステップS106)ので、基板121は変形することなく基板ホルダ150に載っている。よって、基板121の周縁付近は基板ホルダ150から離れて浮いている。
【0090】
次に、制御部112は、基板ホルダ150の静電チャック158に電圧を印加して、基板121を吸着させる(ステップS108)。これにより、
図20に示すように、基板121は基板ホルダ150に倣って変形する。よって、基板121の下面は、基板ホルダ150の載置面156に密着する。
【0091】
その後、制御部112は、バルブ181を制御して、気室188を大気圧に連通させる。これにより、基板ホルダ150に対する負圧による吸引は解除され、
図21に示すように、基板ホルダ150は自身の弾性により復元力を生じ、平坦に戻る方向に、いわば逆変形しようとする(ステップS109)。
【0092】
ただし、基板ホルダ150は、静電チャック158による基板121の吸引を継続して、基板121を吸着したまま共に逆変形する。よって、逆変形する基板ホルダ150が生じる復元力は、基板ホルダ150の曲げ剛性に基板121の曲げ剛性を加味したものに作用する。
【0093】
また、基板121よりも遥かに厚い基板ホルダ150は、基板121よりも高い曲げ剛性を有する。更に、基板121は、下面全体で基板ホルダ150の載置面156に接している。基板ホルダ150の復元力による変形は、基板121を撓ませる。よって、図中に矢印Pで示すように、基板121には、基板121を面方向に水平に縮める応力が作用し、素子領域126の形成倍率が小さくなる。
【0094】
そこで、制御部112は、静電チャック158による基板121の保持を維持したまま、ローダ130により、基板121および基板ホルダ150を再びアライナ170に装入させる(ステップS110)。こうして、素子領域126の形成倍率の差が補正されるので、アライナ170は、予め定められた位置精度以下まで基板121を位置合わせできる。
【0095】
なお、ステップS110において基板121を再吸着させる場合に、基板ホルダ150の周縁付近では、載置面156と基板121の間隔が大きい。よって、この領域では、静電チャック158に印加する電圧を、他の領域よりも高くすることが好ましい。これにより、基板121を全面にわたって載置面156に吸着できる。
【0096】
こうして、アライナ170は、素子領域126の形成倍率に相違のある基板121をも位置合わせして積層することができる。なお、制御部112はベンダ180のアクチュエータの駆動量と基板121のずれの補正量との関係を予め対応付けたテーブルを記憶している。より具体的には当該テーブルには、負圧または正圧の圧力値と基板121のずれの補正量とが対応付けられている。制御部112は、テーブルを参照して、位置合わせ精度を達成できる解による基板121の補正量に対応づけられた駆動量を特定し、アクチュエータ、具体的にはバルブ181を当該駆動量で駆動する。
【0097】
なお、上記ステップS103において、一方の基板121における素子領域126の形成倍率を変更して、求められた許容範囲の位置合わせ精度を達成できる解が得られない場合(ステップS103:NO)がある。即ち、基板121の製造過程において、素子領域126の形成にフォトリソグラフィを繰り返した場合に、基板121に部分的な歪みが生じる場合がある。このような部分的な歪みを有する基板121に更にフォトリソグラフィを繰り返すと、一枚の基板121の中で素子領域126の形成倍率に相違が生じる場合がある。
【0098】
このような場合は、アライメントマーク128に基づいて基板121を位置合わせしようとしても、位置ずれを解消する微動ステージ230の移動量を算出できない。また、素子領域126の形成倍率を基板121全体にわたって補正しても、依然として定められた位置合わせ精度を達成できない。このような場合、制御部112は、保持部220を用いた部分的な倍率変更を実行する。
【0099】
図22は、微動ステージ230に組み込まれた保持部220の模式的断面図である。保持部220は、微動ステージ230上に基板ホルダ150を保持する機能を有する。また、保持部220は、素子領域126の形成倍率を基板121の一部で補正する場合にも用いられる。
【0100】
保持部220は、真空チャック229および複数の気室222、224、226を含む。真空チャック229は、微動ステージ230の上表面の開口に連通したバルブ227を含む。バルブ227は、当該開口と負圧源とを連通または遮断する。
【0101】
また、気室222、224、226の各々は、個別に開閉できるバルブ221、223、225に連通する。バルブ221、223、225は、制御部112の制御の下に、気室222、224、226を、正圧源または負圧源に個別に連通させる。各気室222等、対応する各バルブ221等および圧力源がそれぞれアクチュエータを形成する。
【0102】
図23は、保持部220を有する微動ステージ230の平面図である。
図22と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0103】
図示のように、気室222、224、226のそれぞれは、微動ステージ230の上面に個別に開口する。よって、微動ステージ230に基板ホルダ150が載置された場合、気室222、224、226の各々は、基板ホルダ150のうちの互いに異なる一部領域により封止される。
【0104】
図24は、保持部220の動作手順を示す流れ図である。
図24に示す動作手順は、
図13における「ステップS103:NO」に続く動作手順でもある。また、
図25から
図28は、保持部220の動作に伴う基板ホルダ150および基板121の状態を模式的に示す図であり、下記の説明において随時参照する。
【0105】
図24に示すように、制御部112は、保持部220の真空チャック229により基板ホルダ150を微動ステージ230に保持させる(ステップS201)。次に、制御部112は、基板121の一部領域における素子領域126の形成倍率を修正することにより、予め定められた許容範囲の位置合わせ精度を達成すべく、補正の対象となる領域の特定と、当該領域における補正量を算出する(ステップS202)。
【0106】
ここで、補正量の解が得られない場合(ステップS202:NO)、制御部112は、当該基板に対する貼り合わせを見合わせる。この場合、微動ステージ230に載置された基板121を交換してもよいし、固定ステージ250に保持された基板121まで交換してもよい。
【0107】
しかしながら、いずれの場合も、制御部112は、微動ステージ230に現在搭載されている基板121に対する処理をいったん終了する。また、新しい基板121がアライナ170に装入された場合、制御部112は、
図13に示した動作手順を始めから実行し直す。
【0108】
一方、基板121における素子領域126の形成倍率を部分的に変更して位置合わせ精度を達成できる解が算出された場合(ステップS202:YES)、制御部112は、基板121の修正を開始する。即ち、制御部112は、まず、基板ホルダ150の静電チャック158を解除(ステップS203)する。
【0109】
これにより、
図25に示すように、微動ステージ230上の基板ホルダ150は、真空チャック229に水平に固定される。これに対して、基板121は、基板ホルダ150の上にただ載っている状態になる。
【0110】
次に、
図26に示すように、制御部112は、バルブ221、225を制御して、気室222を負圧に、気室226を正圧に連通させる。これにより、気室222、226に面した領域で、基板ホルダ150は個別に変形する(ステップS204)。
【0111】
なお、基板ホルダ150の静電チャック158による基板121の吸引は解除されているので、基板121は変形することなく平坦なまま基板ホルダ150に載っている。よって、基板121は、部分的に基板ホルダ150から離れて浮いている。
【0112】
次に、制御部112は、基板ホルダ150の静電チャック158に電圧を印加して、基板121を吸着させる(ステップS205)。これにより、
図27に示すように、基板121は変形した基板ホルダ150の形状に倣って変形する。よって、基板121の下面は、基板ホルダ150の載置面156に密着する。
【0113】
その後、制御部112は、基板ホルダ150の静電チャック158を有効にしたまま、バルブ221、225を制御して、減圧または加圧していた気室222、226を大気圧に連通させる。これにより、基板ホルダ150の変形は解かれ、
図28に示すように、自身の弾性により復元力を生じ、平坦に戻る方向に、いわば逆変形しようとする(ステップS206)。
【0114】
また、基板121よりも遥かに厚い基板ホルダ150は、基板121よりも高い曲げ剛性を有する。更に、基板121は、下面全体で基板ホルダ150の載置面156に接している。基板ホルダ150の復元力による変形は、基板121を撓ませる。よって、図中に矢印T、Pで示すように、基板121には、基板121を面方向に水平に拡げる応力または縮める応力が作用し、素子領域126の形成倍率が部分的に変化する。
【0115】
ただし、基板ホルダ150は、静電チャック158による基板121の吸引を継続して、基板121を吸着したまま共に逆変形する。よって、逆変形する基板ホルダ150が生じる復元力は、基板ホルダ150の曲げ剛性に基板121の曲げ剛性を加味したものに作用する。
【0116】
続いて、制御部112は、静電チャック158による基板121の補正を維持したまま、再び、固定ステージ250に保持された基板121に対する位置合わせを実行する(ステップS207)。こうして、アライナ170は、基板121の補正前よりも高い位置合わせ精度を達成できる。なお、制御部112が、保持部220のアクチュエータの駆動量と基板121のずれの補正量との関係を予め対応付けたテーブルを記憶し、駆動時に参照することは、ベンダ180の場合と同様である。
【0117】
ステップS110において基板121を再吸着させる場合には、既に説明した通り、基板ホルダ150に対する間隔が大きい領域では、静電チャック158に印加する電圧を、他の領域よりも高くすることが好ましい。よって、静電チャック158を形成する電極を、気室222、224、226の配置に応じて分割してもよい。
【0118】
このように、保持部220は、基板121を、基板ホルダ150を複数の領域に分割した分割領域毎に独立して変形させて、当該基板ホルダ150に保持された基板121における素子領域の形成倍率を部分的に修正できる。よって、微動ステージ230の単純な移動では位置合わせできなかった基板121に対しても、目標とする位置合わせ精度を達成できる。
【0119】
上記一連の動作手順が実行される間、制御部112は、真空チャック229により基板ホルダ150を吸着し続けている。よって、一連の動作の間に、基板ホルダ150が微動ステージ230から脱落することはない。また、基板121の部分的な形成倍率補正が他の領域に影響を及ぼすことも防止される。
【0120】
なお、上記の例では、基板121全体における素子領域126の形成倍率を一括して変更するベンダ180をアライナ170の外部に配置し、基板121の部分的な形成倍率を変化させる保持部220をアライナ170の微動ステージ230に設けた。しかしながら、ベンダ180と保持部220の配置を入れ換えてもよいし、両方をアライナ170の外に配置してもよい。また、ベンダ180および保持部220を、積層基板製造装置100の外部に配置してもよい。更に、ベンダ180および保持部220のいずれか一方を省いてもよい。
【0121】
また、上記ステップS106およびS203において静電チャック158を解除した場合に、基板121と基板ホルダ150との位置がプリアライナで決められた位置からずれるおそれがある。そこで、ステップS110で補正後の基板121がアライナ170に搬送されたとき、および、ステップS207で補正後の基板121がアライナ170で位置合わせされる場合に、補正後の基板121のアライメントマークを再計測してもよい、再計測により、上記ずれに基づくXY面内のシフト量およびZ軸周りの回転量がアライナ170で修正できる範囲内である場合には、補正後の基板121の位置合わせ時に上記ずれ量をアライナ170で修正することが好ましい。一方、上記ずれに基づくXY面内のシフト量およびZ軸周りの回転量がアライナ170で修正できる範囲を超えている場合は、基板121および基板ホルダ150をプリアライナ160に戻してプリアライメントをやり直すことが好ましい。
【0122】
上記に代えて、または、上記に加えて、上記ステップS203の静電チャック158の解除直後に、アライナ170の顕微鏡251等を用いて、静電チャック158を解除する前後の基板121のずれを測定しても良い。さらに、制御部112は、位置合わせ精度を達成できる上記解に、当該ずれ量分の位置補正をして、基板121を補正するアクチュエータを駆動してもよい。
【0123】
更に、貼り合わせる一対の基板121の一方を補正する貼り合わせ方法において基板121の厚さに相違がある場合、即ち、一方が積層基板123である場合、両方とも積層基板123であって積層数が異なる場合等は、より厚い方の基板121または積層基板123を固定ステージ250に保持させ、より薄い方の基板121または積層基板123を微動ステージ230に保持させて修正することが好ましい。これにより、より変形し易い基板121または積層基板123を修正して貼り合わせることができる。
【0124】
また更に、基板ホルダ150が載置された基板121を保持する仕組みは、静電チャック158には限られない。積層基板製造装置100に接続されている負圧源を利用した真空チャック等、他の方法も用いることができる。
【0125】
更に、ベンダ180および保持部220において基板ホルダ150を変形させる機構は、流体により圧力を加える方式の他に、圧電材料または各種アクチュエータにより機械的に発生した変位を基板ホルダ150に伝える構造としてもよい。また、複数種類のアクチュエータを組み合わせて使用してもよい。
【0126】
図29は、他の構造を有するベンダ280の模式的断面図である。ベンダ280は、制御部112、ベースプレート183および支持プレート260を備える。ベースプレート183は、可動連結部270およびアクチュエータ272並びに固定連結部274により、支持プレート260と複数箇所で結合される。
【0127】
アクチュエータ272は、個別に伸縮して、可動連結部270を昇降させる。アクチュエータ272としては、熱を生じることなく動作する圧電アクチュエータ、エアアクチュエータ等を用いることができる。固定連結部274は、ベースプレート183および支持プレート260の中央にそれぞれ直結され、ベースプレート183および支持プレート260の間隔を一定に維持する。
【0128】
なお、可動連結部270および固定連結部274のそれぞれは、アクチュエータ272の伸縮方向、即ち、鉛直方向の変位は効率よく支持プレート260に伝達する。これにより、アクチュエータ272のいずれかが動作した場合、支持プレート260の該当個所は昇降方向に変位する。
【0129】
ただし、ベースプレート183に対する支持プレート260の傾きが変化する変位については、可動連結部270および固定連結部274の首振り動作によりアクチュエータ272に伝達されない。よって、アクチュエータ272が動作して伸縮した場合、支持プレート260の各部は、ベースプレート183に対して専ら直交する方向に変位して変形する。
【0130】
また、支持プレート260は、吸引孔262、枠部264および支持突起266を含むピンチャック部268を有する。吸引孔262は、支持プレート260の上面において、枠部264の内側全体に多数分布し、支持突起266の間にそれぞれが開口する。吸引孔262のそれぞれは、固定連結部274、ベースプレート183およびバルブ181を通じて負圧源に結合される。
【0131】
支持プレート260の枠部264は、支持プレート260が支持する基板ホルダ150の周縁部に沿って環状に形成される。よって、支持プレート260上に基板ホルダ150を載置した状態でバルブ181が解放された場合、基板ホルダ150および支持プレート260の間が減圧され、基板ホルダ150は支持プレート260に吸着される。
【0132】
支持突起266は、支持プレート260の上面において、枠部264に包囲された領域の内側に配される。支持突起266の各々の頂面の高さは、枠部264の高さと等しい。よって、支持プレート260が平坦な状態で枠部264および支持突起266の上に載置された基板ホルダ150は平坦になる。
【0133】
制御部112は、バルブ181の開閉およびアクチュエータ272の個々の動作を制御する。即ち、制御部112は、バルブ181を開閉することにより、基板ホルダ150を支持プレート260に吸着または解放させることができる。また、制御部112は、アクチュエータ272を個々に伸縮させることにより、支持プレート260を部分的に昇降させることができる。
【0134】
また、基板ホルダ150は、基板121を載置する載置面156から支持プレート260の側へ貫通する貫通穴153を有する。さらに支持プレート260は、一方が貫通穴153と連通し、他方が吸引孔262と共通して負圧源と接続された負圧路276を有する。貫通穴153が負圧路276を介して負圧源に接続されているので、ベンダ280において基板121が基板ホルダ150に吸着される場合に、貫通穴153を負圧にして基板121と基板ホルダ150の間が脱気される。
【0135】
基板ホルダ150は、既に説明した通り、静電チャック158を有して、基板121を吸着する。基板121を吸着した基板ホルダ150が支持プレート260の上面に載置された場合、制御部112は、基板ホルダ150の静電チャック158への給電をいったん停止する。これにより、基板121は、基板ホルダ150の上に吸着されることなく載せられた状態になる。
【0136】
次いで、制御部112は、バルブ181を解放して負圧源に連通させ、吸引孔262に負圧を生じさせる。これにより、基板ホルダ150は、平坦な状態の支持プレート260に吸着されて、支持プレート260と一体になる。
【0137】
図30は、ベンダ280の模式的断面図であり、アクチュエータ272の一部が動作した状態を示す。
図29と同じ要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0138】
図中に矢印dで示すように、図示の例では、左から2本目のアクチュエータ272が縮んで可動連結部270を引き下げ、支持プレート260を部分的に降下させている。また、図中に矢印uで示すように、右から2本目のアクチュエータ272が伸びて可動連結部270を押し上げ、支持プレート260を部分的に上昇させている。このような支持プレート260の部分的な昇降により、支持プレート260は変形する。
【0139】
支持プレート260は、吸引孔262に生じた負圧により基板ホルダ150を吸着して基板ホルダ150と一体化している。よって、支持プレート260が上記のように変形した場合、基板ホルダ150も支持プレート260に連れ従って共に変形する。
【0140】
ただし、この段階では、基板ホルダ150の静電チャック158は作動しておらず、基板ホルダ150は基板121を吸着していない。よって、変形した基板ホルダ150上に載置された基板121は、基板ホルダ150の上面に載っているに過ぎず、部分的に離間している場合もある。
【0141】
このように、基板121の補正におけるひとつの段階においては、基板121を吸着していない状態で、支持プレート260および基板ホルダ150を、初期状態よりも変形量が大きい状態まで変形させる。基板ホルダ150の初期状態とは、例えば、基板ホルダ150が平坦な状態を指す。なお、制御部112が、アクチュエータ272の駆動量と基板121のずれの補正量との関係を予め対応付けたテーブルを記憶し、駆動時に参照することは、ベンダ180の場合と同様である。
【0142】
図31は、ベンダ280の模式的断面図であり、
図30に示した状態の次の段階を示す。
図29および
図30と同じ要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0143】
図示の状態では、制御部112が静電チャック158に電圧を印加させる。これにより、基板121は、既に支持プレート260と共に変形している基板ホルダ150に吸着され、基板121、基板ホルダ150および支持プレート260が一体化する。
【0144】
この状態でアクチュエータ272を動作させることにより、支持プレート260および基板ホルダ150を通じて、基板121の変形を解消または減少させることができる。即ち、
図30に示した段階で、一体化した支持プレート260および基板ホルダ150を、基板121の変形に倣うように変形させる。次に、その状態でアクチュエータ272を動作させて支持プレート260を平坦な状態に戻すことにより、基板ホルダ150および基板121も平坦な状態になる。
【0145】
このように、基板121の補正における他のひとつの段階においては、基板121を吸着した状態で、基板ホルダ150の変形量を初期状態に近づけるべく支持プレート260を変形させる。よって、支持プレート260の変形は、基板121を保持した後に、いわば初期状態に向かって戻される。これにより、基板121は、基板ホルダ150の変形状態から初期状態への変形に従って変形することにより補正される。
【0146】
このように、支持プレート260は、基板121を吸着保持する基板ホルダ150を変形させることにより、基板121の様々な変形を修正する場合に用いることができる。このような支持プレート260は、プリアライナ160、アライナ170等において、基板121または基板ホルダ150を載置する部材の一部として使用できる。
【0147】
また、上記の例では、支持プレート260が、基板ホルダ150を吸着支持し、基板ホルダ150と共に基板121を変形させる場合について例示した。しかしながら、支持プレート260は、基板121を直接に吸着支持して変形させることもできる。よって、基板ホルダ150を用いない場合でも、支持プレート260を用いることができる。
【0148】
このように、ベンダ280を用いることにより、基板121の各部に個別に力を作用させて部分的に変形させることができる。これにより、基板121における形成倍率を部分的に変化させること、基板121の変形を部分的に修正すること等ができる。よって、例えば、処理の対象となる基板121の変形に倣った変形を基板ホルダ150に与えた上で基板121を吸着させてから基板ホルダ150の変形を解放すると、基板121を平坦化できる。
【0149】
なお、上記の例では、アクチュエータ272により支持プレート260を平坦な状態に戻したが、ピンチャック部268による基板ホルダ150の保持を解除しても、基板121を平坦な状態に近づけることができる。即ち、
図31に示した段階で一体化した基板121、基板ホルダ150および支持プレート260において、ピンチャック部268による基板ホルダ150の吸着を解放すると、基板ホルダ150は、それ自体の弾性により、いわば逆変形して当初の平坦な状態に近づく。
【0150】
基板121よりも遥かに厚い基板ホルダ150は、基板121よりも高い曲げ剛性を有する。また、基板ホルダ150は、基板121の下面全体を載置面156に吸着している。よって、基板ホルダ150が逆変形する場合、基板121も基板ホルダ150の逆変形に連れ従って変形する。
【0151】
この場合、基板ホルダ150が変形を解放される段階では、静電チャック158による基板121の吸着が継続しており、基板ホルダ150は、基板121を吸着したまま共に逆変形する。逆変形する基板ホルダ150が生じる復元力は、基板ホルダ150の曲げ剛性に基板121の曲げ剛性を加味したものに対して作用する。よって、支持プレート260の曲げ剛性は、基板121および基板ホルダ150のそれぞれの曲げ剛性よりも大きく、且つ、基板121の曲げ剛性と基板ホルダ150の曲げ剛性とを合わせた曲げ剛性よりも大きい曲げ剛性を有することが望ましい。
【0152】
このため、支持プレート260による基板ホルダ150の変形が解除されたからといって、基板ホルダ150が変形前と同じように平坦に戻るわけではない。しかしながら、基板ホルダ150から基板121に対しては平坦に戻そうとする力が不断に作用するので、基板121を平坦化する場合にかける力を軽減できる。
【0153】
ピンチャック部268による基板ホルダ150の保持を解除しても基板ホルダ150が平坦に戻らない場合、アクチュエータ272を用いて、再度、基板ホルダ150を変形させて強制的に平坦に戻しても良い。上記方法に代えて、基板ホルダ150が平坦に戻らない状態で基板121の補正量が上記解に基づく補正量となるように、基板ホルダ150の変形量を変えても良い。
【0154】
このように、ベンダ280は、他の基板121に接合される基板121を基板ホルダ150と共に保持する支持プレート260と、保持した基板121の面方向と交差する方向に支持プレート260を変形させることにより基板121を変形させて、保持した基板121と他の基板121とのずれを補正するアクチュエータ272とを備える。
【0155】
アクチュエータ272の個数は下記の通り設定することが好ましい。支持プレート260の中央が固定連結部274で連結されているので、基板121を一次元で補正すると仮定すると、少なくとも二個、二次成分までの補正に対して計四個、三次成分までの補正に対して計六個あることが好ましい。また、基板121を二次元で補正する場合は、一次元の場合の二乗分個数を用いることが好ましい。特に、当該アクチュエータ272を正方格子上に配する場合に、一次成分の補正であれば四個、二次成分までの補正であれば計十六個、三次成分までの補正であれば三十六個あることが好ましい。
【0156】
よって、保持した基板121を上記のように面方向に交差する方向に変形させることにより、当該基板121と接合される他の基板121とのずれを補正する補正段階を実行できる。即ち、一対の基板121を位置合わせした場合に、位置合わせ後に閾値以上の位置ずれが残る場合に、上記ベンダ280を用いて支持プレート260、基板ホルダ150および基板121を変形させて、残ったずれを打ち消すことができる。
【0157】
図32はさらに他のベンダ282の断面図を示し、
図33は当該ベンダ282の上面図を示す。ベンダ282において上記ベンダ280と同じ構成に対して同じ参照番号を付して説明を省略する。
【0158】
ベンダ282において、ベースプレート183の周囲の壁部185が4箇所設けられる。4箇所の壁部185と支持プレート260とは、XY平面に面方向を有する板バネ273が架け渡されている。これにより板バネ273は、支持プレート260との連結部分についてZ方向の移動を許容しつつ、XY方向の移動およびZ軸まわりの回転方向の移動を規制する。
【0159】
図34は、ベンダ282における可動連結部271の拡大図である。可動連結部271は、支持プレート260の下面に固定された板状部材275と、当該板状部材275に対向してアクチュエータ272の上面に固定された板状部材277と、これら一対の板状部材275、277に連結された弾性部材278とを有する。弾性部材278は例えば柱状の弾性体であって、アクチュエータ272の駆動方向に駆動力を伝えつつ、駆動方向に直交する方向に弾性的に変形する。これにより、アクチュエータ272のZ方向の移動に伴う支持プレート260のXY方向への移動によるひずみを解消することができる。
【0160】
図35は、ベンダ282における固定連結部284の拡大図である。固定連結部284は大径の本体部分と当該本体部分の上面に配された小径部分とを有する。小径部分の高さは0.2mmから0.5mm程度である。当該小径部分において支持プレート260の下面に連結している。
【0161】
小径部分において支持プレート260と連結することにより、支持プレート260において変形できる領域を大きくすることができる。一方、大径の本体部分により、支持プレート260を強固に支えて支持プレート260のねじれ力等に対抗することができる。
【0162】
ここで、ベンダ282には板バネ273が設けられている。よって、可動連結部271が支持プレート260をXY方向について可動自在となっていても、当該支持プレート260のZ方向の変形を許容しつつ、XY方向およびZ軸周りの回転方向についてふらつくことを防ぐことができる。
【0163】
図36は、他の可動連結部290の拡大図である。可動連結部290は、上端を支持プレート260に連結された連結部材289と、アクチュエータ272から上方に伸びた規制壁292と、連結部材289の他端が接する摺動面287とを有する。連結部材289は規制壁292に囲まれた可動領域279を摺動できる。
【0164】
規制壁292と連結部材289との間は当該連結部材289がXY方向に移動できる可動領域を形成する。これにより、アクチュエータ272のZ方向の移動に伴う支持プレート260のXY方向への移動に対し、連結部材289の他端が可動領域内で摺動面287上を摺動することにより、ひずみを解消することができる。
【0165】
図37は、他の固定連結部285の拡大図である。固定連結部285においてベースプレート183側から支持プレート260側へ向けて徐々に径が細くなる円錐形を有している。これにより、
図35の固定連結部284と同様の効果を有することができる。
【0166】
図38は、さらに他の固定連結部286の拡大図である。固定連結部286は大径の円柱形状を有する。一方、支持プレート260における固定連結部286との連結部分には当該固定連結部286からの逃げである凹部269が配され、当該凹部の中心に固定連結部286と連結する、当該固定連結部286よりも小径の突起が設けられる。これにより、
図35の固定連結部284と同様の効果を有することができる。
【0167】
なお、支持プレート260は、予め定められた曲率で湾曲した湾曲部を有してもよい。この場合、アクチュエータ272は、支持プレート260の曲率が変化するように支持プレート260を変形させる。また、複数のアクチュエータ272により領域毎に変形させるベンダ280の機能を、基板ホルダ150に設けてもよい。これにより、既存の設備において基板121の補正を実行することもできる。
【0168】
図39は、ベンダ280の支持プレート261における可動連結部270および固定連結部274の配置の一例を示す平面図である。支持プレート261の表面において、枠部264の内側には、多数の支持突起266が配される。支持突起266の間には、図示の縮尺では見えない微細な吸引孔262が多数配される。よって、支持プレート261上に載置した基板ホルダ150には、全体に均一な吸引力を作用させることができる。
【0169】
固定連結部274は、支持プレート261の中央に配される。既に説明した通り、固定連結部274は、ベースプレート183および支持プレート261の双方に対して固定される。よって、支持プレート261の中央は、面方向についても、面方向と直交する方向についても、ベースプレート183に対して固定される。
【0170】
可動連結部270は、上記固定連結部274を始点として、隣接する可動連結部270に対して互いに等間隔に、二次元的に配される。図示の例では、可動連結部270は、支持プレート261表面を平面充填する正三角形の頂点に配される。換言すれば、可動連結部270は、支持プレート261表面を平面充填してハニカム構造を形成する正六角形の頂点と中心に配される。
【0171】
これにより、アクチュエータ272により昇降された可動連結部270は、支持プレート260の各領域を個別に昇降させることができる。よって、支持プレート260に吸着させた基板ホルダ150の各領域も個別に変形させることができる。更に、可動連結部270の一部を、支持プレート260上の基板ホルダ150において基板121が保持される領域の外側まで配することにより、基板ホルダ150を外縁部まで変形させることができる。
【0172】
なお、支持プレート260内周側の円A上に配された可動連結部270が全周にわたって等間隔に配されているのに対して、外周側の円B上に配された可動連結部270およびアクチュエータ272では間隔が開いている箇所が周期的に存在する。しかしながら、このような配列の可動連結部270を有する支持プレート260でも、基板ホルダ150および基板121を変形させる場合の制御性は殆ど低下しなかった。
【0173】
具体的には、図中に示すように、隣接する可動連結部270とのピッチが65.5mmになるように、1本の固定連結部274と30本の可動連結部270を配置した支持プレート260を作成し、直径300mmの基板121を試料として修正を試みた。その結果、下記の表1に示すように、高い精度でアライメントマークの位置を修正できた。
【表1】
【0174】
図40は、ベンダ280の支持プレート263における可動連結部270の他の配置を示す平面図である。図示の支持プレート263に配置された可動連結部270は、
図39に示した支持プレート261における可動連結部270の一部と同じ位置に配されている。ただし、支持プレート261内周側の円A上に配された可動連結部270が省略されている。吸引孔262、支持突起266および固定連結部274の配置は、
図39に示した支持プレート261の場合と変わらない。
【0175】
このような配列であっても、基板ホルダ150および基板121を変形させる場合の制御性の低下は殆ど生じなかった。具体的には、
図39に示した支持プレート261の内周側6本の可動連結部270を省略した支持プレート263を作成し、直径300mmの基板121を試料として修正を試みた。その結果、下記の表2に示すように、精度の低下は僅かであった。
【表2】
【0176】
図41は、ベンダ280の支持プレート265における可動連結部270の配置を示す平面図である。支持プレート265は、
図40に示した支持プレート263と同じ数の可動連結部270を有する。吸引孔262、支持突起266および固定連結部274の配置は、
図32に示した支持プレート261、263の場合と変わらない。
【0177】
ただし、支持プレート265において、可動連結部270の半分は、支持プレート265上に載置された基板121の外側において、基板121の外径よりも大きな径を有する円Dの上に等間隔に配される。また、可動連結部270の残り半分は、支持プレート265上に載置された基板121の内側において、基板121の外径よりも小さな径を有する円Cの上に等間隔に配される。円Cおよび円Dは互いに同心円をなす。
【0178】
更に、基板121の外側に配された可動連結部270の配置周期と、基板121の内側に配された可動連結部270の配置周期は、互いに半周期ずつずれている。よって、基板121の周方向にみた場合、可動連結部270は互いに隣接する可動連結部270と等間隔に配される。このような配列により、比較的少ない可動連結部270で、基板ホルダ150および基板121を変形させる場合の高い制御性が得られた。
【0179】
具体的には、図中に示すように、半径130mmの円Bと、半径170mmの円Cの上に、それぞれ等間隔に12個の可動連結部270を配置した支持プレート265を作成し、直径300mmの基板121を試料として修正を試みた。その結果、下記の表3に示すように、高い精度で基板121を修正できた。
【表3】
【0180】
上記の結果から、二次元的に配列した可動連結部270の最外周および最内周の数を減らしても、修正の精度は低下しないことが判った。これにより、アクチュエータ272の数を削減した廉価な支持プレート265により、基板121を高精度に修正できることが判った。
【0181】
図42は、ベンダ280の支持プレート267における可動連結部270の配置を示す平面図である。支持プレート267は、
図41に示した支持プレート265と同じ数の可動連結部270を有する。
【0182】
支持プレート267においては、支持プレート265と同様に、可動連結部270の半分は、支持プレート265上に載置された基板121の外側において、基板121の外径よりも大きな径を有する円Dの上に等間隔に配される。また、可動連結部270の残り半分は、支持プレート265上に載置された基板121の内側において、基板121の外径よりも小さな径を有する円Cの上に等間隔に配される。
【0183】
また、円C上の可動連結部270の配置周期は、円D上の可動連結部270の配置周期と同期している。よって、円C上に配される可動連結部270は、他の円D上の可動連結部270と、周方向について同じ位置に配される。このような配置を有するベンダ280は、下記の表4に示すように、より高い精度で基板121を修正できた。
【表4】
【0184】
なお、ベンダ280の支持プレート267を変位させる可動連結部270の配置は、上記の例に限られない。例えば、可動連結部を複数の同心円上に配置する場合に、当該複数の同心円がいずれも基板121の径の内側あるいは外側になる配置としてもよい。また、可動連結部270の数を増加または低減してもよい。
【0185】
図43は、基板貼り合わせ装置の全体構成図である。基板貼り合わせ装置410は、2枚の基板490、490を貼り合わせて、重ね合わせ基板492を製造する。尚、基板貼り合わせ装置410が、3枚以上の基板490を貼り合わせて、重ね合わせ基板492を製造するように構成してもよい。
【0186】
図43に示すように、基板貼り合わせ装置410は、筐体412と、常温部414と、高温部416と、制御部418とを備える。筐体412は、常温部414及び高温部416を囲むように形成されている。
【0187】
常温部414は、複数の基板カセット420、420、420と、基板ホルダラック422と、ロボットアーム424と、プリアライナ426と、アライナ428と、ロボットアーム430とを有する。ロボットアーム424、430は、搬送部の一例である。
【0188】
基板カセット420は、基板貼り合わせ装置410において結合されて貼り合わされる基板490を収容する。また、基板カセット420は、基板貼り合わせ装置410において結合されて貼り合わされた重ね合わせ基板492を収容する。基板カセット420は、筐体412の外面に脱着可能に装着されている。これにより、複数の基板490を基板貼り合わせ装置410に一括して装填できる。また、複数組の重ね合わせ基板492を一括して回収できる。基板貼り合わせ装置410によって貼り合わされる基板490は、単体のシリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、ガラス基板等の他、それらに素子、回路、端子等が形成されていてもよい。また、装填された基板490が、既に複数のウエハが積層された重ね合わせ基板492であってもよい。
【0189】
基板ホルダラック422は、一対の基板490が重ね合わされた重ね合わせ基板492を上下方向から保持する下基板ホルダ502及び上基板ホルダ504を収容する。
【0190】
ロボットアーム424は、筐体412の内部であって、基板カセット420の近傍に配置されている。ロボットアーム424は、基板カセット420に装填されている基板490をプリアライナ426に搬送する。ロボットアーム424は、プリアライナ426に搬送した基板490を、後述するアライナ428の移動ステージ438に載置された下基板ホルダ502及び上基板ホルダ504へと搬送する。ロボットアーム424は、結合されて移動ステージ438まで搬送された重ね合わせ基板492を基板カセット420の何れかに搬送する。
【0191】
プリアライナ426は、筐体412の内部であって、ロボットアーム424の近傍に配置されている。プリアライナ426は、アライナ428に基板490を装填する場合に、高精度であるがゆえに、狭いアライナ428の調整範囲に基板490が装填されるように、基板490の位置を仮合わせする。これにより、アライナ428における基板490の位置決めが、迅速且つ正確にできる。
【0192】
アライナ428は、ロボットアーム424とロボットアーム430との間に配置されている。アライナ428は、枠体434と、固定ステージ436と、移動ステージ438と、一対のシャッタ440及びシャッタ442とを有する。
【0193】
枠体434は、固定ステージ436及び移動ステージ438を囲むように形成されている。枠体434の基板カセット、420側の面と、高温部416側の面は、基板490等を搬入及び搬出可能に、開口されている。
【0194】
固定ステージ436は、枠体434の内側であって、基板カセット420の近傍に固定されている。固定ステージ436の下面は、基板490を保持した状態で、ロボットアーム430により移動ステージ438から搬送される上基板ホルダ504を真空吸着する。
【0195】
移動ステージ438は、枠体434の内側であって、高温部416側に配置されている。移動ステージ438の上面は、下基板ホルダ502及び上基板ホルダ504を真空吸着する。移動ステージ438は、枠体434の内部を水平方向及び鉛直方向に移動する。これにより、移動ステージ438が移動することによって、上基板ホルダ504を介して固定ステージ436に保持された基板490と、下基板ホルダ502を介して移動ステージ438に保持された基板490とが位置合わせされ、重ね合わされる。尚、基板490と基板490は、接着剤、または、プラズマ等によって仮接合してもよい。
【0196】
シャッタ440は、枠体434の基板カセット420側の開口を開閉する。シャッタ442は、枠体434の高温部416側の開口を開閉する。枠体434及びシャッタ440、442に囲まれた領域は、空気調整機等に連通されて、温度管理される。これにより、基板490と基板490との位置合わせの精度が向上する。
【0197】
ロボットアーム430は、筐体412の内部であって、高温部416とアライナ428との間に配置されている。ロボットアーム430は、基板ホルダラック422に収容されている下基板ホルダ502及び上基板ホルダ504を移動ステージ438へと搬送する。移動ステージ438に載置された下基板ホルダ502及び上基板ホルダ504は、ロボットアーム424によってプリアライナ426から搬送された基板490を静電吸着により保持する。ロボットアーム430は、移動ステージ438上に載置され、基板490を保持する上基板ホルダ504を、裏返して固定ステージ436へと搬送する。固定ステージ436の下面は、ロボットアーム430によって搬送された上基板ホルダ504を真空吸着する。
【0198】
ロボットアーム430は、移動ステージ438によって位置合わせされた一対の基板490を保持する下基板ホルダ502及び上基板ホルダ504を真空吸着して、高温部416へと搬送する。ロボットアーム430は、高温部416において、結合されて貼り合わされた重ね合わせ基板492を高温部416から移動ステージ438へと搬送する。
【0199】
高温部416は、基板貼り合わせ装置410の貼り合わせ工程において、高温且つ真空状態に設定される。高温部416は、断熱壁446と、エアロック室448と、一対のシャッタ450及びシャッタ452と、ロボットアーム454と、5個の収容室455と、5個の加熱加圧装置456とを備える。ロボットアーム454は、搬送部の一例である。尚、加熱加圧装置456の個数は、5個に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0200】
断熱壁446は、高温部416を包囲する。これにより、断熱壁446は、高温部416の高い内部温度を維持するとともに、高温部416から外部への熱輻射を遮断する。この結果、断熱壁446は、高温部416の熱が常温部414に及ぼす影響を低減する。また、断熱壁446は、高温部416と外部との気体の流れを遮断する。これにより、断熱壁446は、高温部416の真空状態を維持する。
【0201】
エアロック室448は、常温部414と高温部416とを連結する。エアロック室448の常温部414側及び高温部416側は、下基板ホルダ502及び上基板ホルダ504に保持された一対の基板490を含む重ね合わせ基板492を搬送可能に開口されている。
【0202】
シャッタ450は、エアロック室448の常温部414側の開口を開閉する。シャッタ450が開状態になると、エアロック室448が常温部414と連通される。これにより、エアロック室448は、常温部414と略同じ気圧となる。この状態で、ロボットアーム430は、エアロック室448とアライナ428との間で、重ね合わせ基板492を搬送する。
【0203】
シャッタ452は、エアロック室448の高温部416側の開口を開閉する。シャッタ452が開状態になると、エアロック室448は、高温部416と連通される。これにより、エアロック室448は、高温部416と略同じ気圧となる。尚、貼り合わせ工程において、シャッタ450及びシャッタ452の両方が開状態になることはない。
【0204】
ロボットアーム454は、シャッタ452が開状態において、ロボットアーム430によりエアロック室448に搬入された重ね合わせ基板492を、下基板ホルダ502及び上基板ホルダ504とともに、何れかの加熱加圧装置456へと搬入する。
【0205】
収容室455は、中空状に形成されている。収容室455は、加熱加圧装置456の主要部を収容して包囲する。収容室455は、重ね合わせ基板492を搬入及び搬出するために、開閉可能な開口部を有する。収容室455は、重ね合わせ基板492が搬入された後、真空状態にするために密閉される。
【0206】
加熱加圧装置456は、加熱装置の一例である。加熱加圧装置456は、断熱壁446の内部に配置されている。5個の加熱加圧装置456は、断熱壁446の中心の周りに略等角度間隔で配置されている。加熱加圧装置456は、ロボットアーム454によってエアロック室448から搬入された重ね合わせ基板492を保持する。加熱加圧装置456は、結合温度状態の重ね合わせ基板492を加圧する。そして、加熱加圧装置456は、重ね合わせ基板492の基板490が結合可能な結合温度まで、搬入された重ね合わせ基板492を昇温させる。これにより、加熱加圧装置456は、重ね合わせ基板492を結合して貼り合わせる。
【0207】
ロボットアーム454は、結合されて貼り合わされた重ね合わせ基板492を加熱加圧装置456からエアロック室448へと搬送する。
【0208】
制御部418は、基板貼り合わせ装置410の全体の動作を制御する。制御部418は、基板貼り合わせ装置410の電源投入、各種設定等をする場合に、ユーザが外部から操作する操作部を有する。更に、制御部418は、配備された他の機器と基板貼り合わせ装置410とを接続する接続部を有する。
【0209】
図44は、加熱加圧装置456の全体構造を示す正面図である。
図44に示すように、加熱加圧装置456は、床面側に配置される下部モジュール460と、天井側に配置される上部モジュール462とを有する。
【0210】
下部モジュール460は、昇降部466と、下部圧力制御モジュール468と、下部加熱モジュール470と、下部トッププレート472とを有する。
【0211】
昇降部466は、重ね合わせ基板492とともに、下部圧力制御モジュール468、下部加熱モジュール470及び下部トッププレート472を昇降させる。また、昇降部466は、上部モジュール462の下面に上基板ホルダ504が接触した後も、下基板ホルダ502及び上基板ホルダ504に保持された重ね合わせ基板492を上昇させる。これにより、昇降部466は、重ね合わせ基板492を加圧する。
【0212】
下部圧力制御モジュール468は、昇降部466の上面に配置されている。下部圧力制御モジュール468は、中空加圧部469を有する。中空加圧部469は、ゴムシート等によって形成される袋状の圧力制御部である。中空加圧部469の内部には、外部から供給される流体が充填されている。中空加圧部469は、流体の供給量によって、自己の形状を変形させる。これにより、下部圧力制御モジュール468は、昇降部466が重ね合わせ基板492に作用させる圧力を水平面内で制御する。例えば、中空加圧部469は、上面を平面にしたり、上面の中央部を凸状に変形させたり、上面の周縁部を凸状に変形させることにより、水平面内での圧力を制御する。昇降部466及び下部圧力制御モジュール468が加圧部の一例である。
【0213】
下部加熱モジュール470は、下部圧力制御モジュール468の上部に配置されている。下部加熱モジュール470は、複数の電熱ヒータを有する。複数電熱ヒータは、それぞれ独立して温度を制御可能に構成されている。
【0214】
下部トッププレート472は、下部加熱モジュール470の上面に配置されている。下部トッププレート472は、下基板ホルダ502及び上基板ホルダ504よりも直径の大きい円板状に形成されている。下部トッププレート472の上面には、下基板ホルダ502及び上基板ホルダ504に保持された重ね合わせ基板492が載置される。
【0215】
上部モジュール462は、複数の電熱ヒータを含む上部加熱モジュール480と、上部トッププレート482とを有する。上部加熱モジュール480は下部加熱モジュール470と上下が逆である以外、略同様の構成であり、上部トッププレート482は下部トッププレート472と略同様の構成である。
【0216】
図45は、基板490a、490bの電極パッド496a、496bの位置ずれを説明する図である。
図46は、基板490a、490bの電極パッド496a、496bの位置ずれの補正を説明する図である。
図47は、補正後の基板490a、490bの電極パッド496a、496bの貼り合わ合わせを説明する図である。尚、
図45から
図47において、下側の基板の符号を「490a」とし、上側の基板の符号を「490b」とする。
【0217】
図45に示すように、基板490aの貼り合わせ面494aには、電極パッド496aが形成されるとともに、基板490bの貼り合わせ面494bには、電極パッド496bが形成されている。基板490aと基板490bとが貼り合わされると、電極パッド496aは、いずれかの電極パッド496bに接続されるように、電極パッド496a、496bの位置は設定されている。尚、
図45の点線で示す電極パッド496a、496bがその設定された位置である。しかしながら、基板490aが収縮すると、
図45に実線で示すように、電極パッド496aの位置が基板490aの中心に接近して、例えば設定位置から距離D1または距離D2ずれる。逆に基板490bが膨張すると、
図45に実線で示すように、電極パッド496bの位置が基板490bの中心から離れて、例えば設定位置から距離D3または距離D4ずれる。従って、この状態の基板490a、490bを平坦のまま貼り合わせると、電極パッド496aは、電極パッド496bと接続されない、または、電極パッド496bと部分的に接続されて、接続不良等が生じる。
【0218】
本実施形態では、
図46に示すように、収縮した基板490aを、中央部が凸状の中凸面498によって押圧して、基板490aをその面と交差する方向に変形させるととともに、膨張した基板490bを、中央部が凹状の中凹面499によって押圧して、基板490bをその面と交差する方向に変形させる。
【0219】
中凸面498によって撓む基板490aの貼り合わせ面494aは、上側に凸状となる。これにより、基板490aの貼り合わせ面494aに形成された電極パッド496aは、水平方向において、基板490aの中心から離れる。この結果、平面視において、電極パッド496aは、設定位置に接近する。一方、中凹面499は上側に凹状の面なので、基板490bの貼り合わせ面494bは、上側に凹状の面となる。これにより、基板490bの貼り合わせ面494bに形成された電極パッド496bは、水平方向において、基板490bの中心に近づく。このため、平面視において、電極パッド496bは、設定位置に接近する。
【0220】
この結果、位置のずれた電極パッド496a及び電極パッド496bが、水平方向において、互いに近づいて補正されることになる。ここで、電極パッド496aの位置ずれとその電極パッド496aに接続される電極パッド496bの位置ずれは、方向が逆で、大きさが等しいことが好ましい。しかし、当該位置ずれの大きさは、電極パッド496a及び電極パッド496bの接触面の大きさ程度の誤差は許容される。
【0221】
この状態で、基板490a及び基板490bを貼り合せることによって、
図47に示すように、電極パッド496a及び電極パッド496bが、略全面的に接続される。尚、膨張及び収縮は、変形の起因の一例であって、他の要因を起因とする位置ずれにも同様に対応できる。
【0222】
図48は、下基板ホルダ502の縦断面図である。
図48に示すように、下基板ホルダ502は、下ホルダ本体510と、6個の吸着子512とを備える。
【0223】
下ホルダ本体510は、セラミックス、金属等の高剛性材料により形成されている。下ホルダ本体510は、平面視において、円形状に形成されている。下ホルダ本体510の上面は、下側の基板490を保持する下保持面514として機能する。下保持面514は、中央部が上側に凸状の曲面に形成されている。これにより、下保持面514は、上述の中凸面498として機能して、下保持面514に保持されて押圧される基板490は、中央部が上側に凸状の曲面に変形される。尚、曲面の一例は、部分球面または部分楕円面である。下保持面514は、平面視において、基板490よりも大きい。
【0224】
下ホルダ本体510の下面は、平坦な下被押圧面516が形成されている。下被押圧面516は、移動ステージ438の上面及び下部トッププレート472の上面等に面接触して、下基板ホルダ502を水平に支持する。下保持面514の近傍には、複数の電極プレートが埋設されている。電極プレートは、基板490を静電吸着により保持する。電極プレートには、下被押圧面516に埋設された電力供給端子を介して供給される。
【0225】
吸着子512は、電磁石を有する。電磁石には、下被押圧面516に埋設された電力供給端子を介して、電力が供給される。6個の吸着子512は、2個を1組として、下ホルダ本体510の中心の周りに520°間隔で配置されている。基板490を保持した状態において、6個の吸着子512は、基板490の外側に位置する。尚、吸着子512の個数は、6個に限定されない。
【0226】
図49は、上基板ホルダ504の縦断面図である。
図49に示すように、上基板ホルダ504は、上ホルダ本体520と、6個の被吸着子522とを有する。
【0227】
上ホルダ本体520は、セラミックス、金属等の高剛性材料により形成されている。上ホルダ本体520は、円板状に形成されている。上ホルダ本体520の下面の中央部は、上側の基板490を保持する上保持面526として機能する。上保持面526は、平面視において、基板490よりも大きい。上保持面526は、中央部が上側に凹状の曲面に形成されている。これにより、上保持面526は、上述の中凹面499として機能して、上保持面526に保持されて押圧される基板490は、中央部が上側に凸状の曲面に変形される。尚、曲面の一例は、部分球面または部分楕円面である。上保持面526は、下保持面514と略平行である。これにより、上保持面526と下保持面514は、互いに相補的な関係となる。上保持面526の外周部は、平坦に形成されている。
【0228】
上ホルダ本体520の上面には、上被押圧面528が形成されている。上被押圧面528は、平坦に形成されている。上被押圧面528は、固定ステージ436の下面及び上部トッププレート482の下面と面接触して、上基板ホルダ504を水平に支持する。尚、上基板ホルダ504は、基板ホルダラック422及び移動ステージ438では、上被押圧面528を下にして載置される。上保持面526の近傍には、基板490を静電吸着により保持する複数の電極プレートが埋設されている。
【0229】
被吸着子522は、永久磁石を有する。被吸着子522は、上ホルダ本体520の下面であって、上保持面526の外側に配置されている。6個の被吸着子522は、上基板ホルダ504の吸着子512と対向する位置に配置されている。被吸着子522が吸着子512によって吸着された吸着状態では、下基板ホルダ502及び上基板ホルダ504が互いに固定される。
【0230】
図50〜
図55は、基板貼り合わせ装置410による重ね合わせ基板492の製造工程を説明する図である。貼り合わせ工程では、まず、ロボットアーム424が、基板カセット420の何れかから基板490をプリアライナ426へと搬送する。次に、
図50に示すように、ロボットアーム430が、基板ホルダラック422から上基板ホルダ504を移動ステージ438へと搬送する。移動ステージ438は、上基板ホルダ504を真空吸着する。ロボットアーム430は、プリアライナ426によって位置が調整された基板490を、移動ステージ438に載置された上基板ホルダ504の上保持面526へと搬送して載置する。尚、この基板490は、上側の基板となる。上基板ホルダ504は、載置された基板490を静電吸着する。ここで、上側の基板490を保持する上保持面526は中央部が凹状の曲面に形成されている。従って、下保持面514は、凹状の曲面に倣って、中央部が下側に凸状の曲面に上側の基板490を撓ませて変形させる。更に、この結果、
図50の状態では、上側の基板490上面の貼り合わせ面は、中央部が凹状に変形される。
【0231】
この後、ロボットアーム430は、基板490を保持する上基板ホルダ504を移動ステージ438から固定ステージ436へと裏返して搬送する。固定ステージ436は、
図51に示すように、基板490とともに上基板ホルダ504をロボットアーム430から受け取った後、上基板ホルダ504を真空吸着により保持する。これにより、上側の基板490は、上側に凸状の曲面となる。
【0232】
次に、同様の動作によって、ロボットアーム430が移動ステージ438に下基板ホルダ502を搬送した後、ロボットアーム424が移動ステージ438上の下基板ホルダ502に基板490を搬送する。ここで、下基板ホルダ502に搬送される下側の基板490は、上基板ホルダ504が保持する上側の基板490の位置ずれを考慮して選択される。例えば、電極パッドの位置ずれが、上側の基板490の電極パッドの位置ずれに対して、方向が逆で、大きさが等しい基板が下側の基板490として選択される。
図52に示すように、移動ステージ438は、基板490を上側にして、基板490及び下基板ホルダ502を保持する。ここで、下側の基板490を保持する下保持面514は上側に凸状の曲面に形成されている。従って、下保持面514は、凸状の曲面に倣って、中央部が上側に凸状であって、上側の基板490と相補的且つ平行な曲面に下側の基板490を撓ませて変形させる。これにより、下側の基板490の上面の貼り合わせ面は、中央部が凸状に変形される。この後、シャッタ440、442が閉状態となった後、移動ステージ438は、基板490及び下基板ホルダ502を保持しつつ、基板490及び上基板ホルダ504を保持する固定ステージ436の下方へと移動する。これにより、移動ステージ438の基板490と、固定ステージ436の基板490とが位置合わせされる。
【0233】
次に、
図53に示すように、移動ステージ438が、上方へと移動する。これにより、下基板ホルダ502の吸着子512が、上基板ホルダ504の被吸着子522を吸着する。固定ステージ436が上基板ホルダ504の真空吸着を解除した後、移動ステージ438が下基板ホルダ502を真空吸着した状態で、ロボットアーム430の方向へと移動する。
【0234】
次に、シャッタ450が開状態となり、エアロック室448と常温部414とが連通される。尚、シャッタ452は閉状態である。この状態で、ロボットアーム430が、移動ステージ438上の下基板ホルダ502及び上基板ホルダ504に、変形された状態で保持された重ね合わせ基板492をエアロック室448へと搬送する。この後、シャッタ450が閉状態となるとともに、シャッタ452が開状態となり、エアロック室448が常温部414から遮断されるとともに、高温部416と連通される。この状態で、ロボットアーム454が、下基板ホルダ502及び上基板ホルダ504とともに重ね合わせ基板492をエアロック室448から加熱加圧装置456へと搬入する。
【0235】
次に、加熱加圧装置456では、昇降部466が、下基板ホルダ502及び上基板ホルダ504に保持された重ね合わせ基板492を上昇させる。これにより、上基板ホルダ504の上被押圧面528が、上部トッププレート482の下面に面接触する。この状態で、下部加熱モジュール470及び上部加熱モジュール480が、重ね合わせ基板492を結合温度まで加熱した後、その結合温度を維持する。また、昇降部466は、更に、下部トッププレート472を上昇させて、重ね合わせ基板492の一対の基板490、490を撓ませた状態で加圧する。ここで、下保持面514及び上保持面526によって、基板490と基板490とを撓ませることによって、
図46及び
図47で示したように、電極パッド496a、496b等の位置ずれが補正された状態で基板490、490が貼り合わされる。また、基板490と基板490とを互いに平行な曲面に変形させているので、
図54に示すように、基板490と基板490とが密着した状態で貼り合わされて、重ね合わせ基板492となる。
【0236】
次に、シャッタ452が開状態になるとともに、シャッタ450が閉状態となる。これにより、エアロック室448が常温部414から遮断され、高温部416と連通される。この後、ロボットアーム454が、貼り合わされた重ね合わせ基板492を下基板ホルダ502及び上基板ホルダ504とともに、エアロック室448へと搬送する。
【0237】
次に、シャッタ452が閉状態となるとともに、シャッタ450が開状態になる。これにより、エアロック室448が高温部416から遮断されるとともに、常温部414と連通される。この状態で、ロボットアーム430が、重ね合わせ基板492を下基板ホルダ502及び上基板ホルダ504とともに、エアロック室448から移動ステージ438へと搬送する。
図55に示すように、重ね合わせ基板492が、移動ステージ438上で、下基板ホルダ502及び上基板ホルダ504から分離される。この後、ロボットアーム424が、重ね合わせ基板492を基板カセット420の何れかに搬出する。これにより、基板貼り合わせ装置410による重ね合わせ基板492の貼り合わせ工程が終了して、重ね合わせ基板492が完成する。
【0238】
上述したように、本実施形態による基板貼り合わせ方法では、基板490と基板490とを相補的に撓ませた状態で、貼り合わせて重ね合わせ基板492を製造している。これにより、基板490、490が、膨張または収縮等によって、電極パッド496a、496b等が位置ずれを生じていても、電極パッド496a、496b同士を接続することができる。
【0239】
本実施形態では、基板490と基板490とを互いに平行な曲面に変形された後、貼り合わせている。これにより、貼り合わされた基板490と基板490との密着性を向上させることができる。
【0240】
本実施形態では、下基板ホルダ502の下保持面514及び上基板ホルダ504の上保持面526が、基板490、490を撓ませて変形させている。これにより、基板490、490の変形後の形状を容易に予測できるので、位置ずれの補正精度を向上させることができる。
【0241】
次に、上述した実施形態の一部を変更した実施形態について説明する。
【0242】
下部圧力制御モジュール468によって基板490、490を撓ませる基板貼り合わせ方法について説明する。
図56は、基板490、490が変形する前の状態を説明する図である。
図57は、下部圧力制御モジュール468によって撓ませた基板490、490を説明する図である。
【0243】
本実施形態では、下基板ホルダ602及び上基板ホルダ604が平坦な円板状に形成されている。また、下基板ホルダ602の下ホルダ本体610の下保持面614及び上基板ホルダ604の上ホルダ本体620の上保持面626は、ともに平坦に形成されている。従って、加熱加圧装置456への搬送中、基板490、490は、平坦な状態である。
【0244】
上基板ホルダ604は、弾性部材624を有する。弾性部材624は、金属製のバネを有する。弾性部材624は、被吸着子622の下面に配置されている。これにより、被吸着子622が吸着子612に吸着された吸着状態では、弾性部材624は、被吸着子622と吸着子612との間に配置される。また、弾性部材624の弾性力は、吸着子612と被吸着子622との間に作用する吸着力よりも大きい。
【0245】
これにより、吸着状態において、他の外力が作用していない場合、弾性部材624は、下基板ホルダ602に保持される基板490と上基板ホルダ604に保持される基板490とを離間させる。この状態で、
図56に示すように、基板490、490は、互いに離間した状態で、加熱加圧装置456の下部トッププレート472に搬送される。
【0246】
次に、昇降部466が基板490、490とともに下部トッププレート472を上昇させることによって、
図57に示すように、上基板ホルダ604の被押圧面618が上部トッププレート482の下面に接触する。この状態で、下部圧力制御モジュール468の中空加圧部469に流体を供給する。これにより、中空加圧部469の上面が、上側に凸状の曲面に変形する。昇降部466が下部トッププレート472を更に上昇させることによって、弾性部材624が収縮して、基板490と基板490とが接する。また、下部トッププレート472が、中空加圧部469の上面に倣って上側に凸状の曲面に変形する。更に、下基板ホルダ602、基板490、490、上基板ホルダ604及び上部トッププレート482が、下部トッププレート472に倣って、上側に凸状の曲面に撓んで変形する。ここで、加圧面となる下部トッププレート472の上面が中凸面498として機能するとともに、加圧面となる上部トッププレート482の下面が中凹面499として機能する。これにより、下部トッププレート472の上面と上部トッププレート482の下面とを互いに相補的に変形させた状態で、基板490、490が加圧される。
【0247】
この結果、基板490、490が相補的に変形されるので、基板490、490の電極パッド等の位置ずれが補正されて、基板490、490が貼り合わされる。そして、重ね合わせ基板492が完成する。
【0248】
図58は、基板490、490を保持する下基板ホルダ702及び上基板ホルダ704の図である。
図59は、下基板ホルダ702及び上基板ホルダ704によって撓ませた基板490、490を説明する図である。下基板ホルダ702及び上基板ホルダ704が、水平面内の分割された領域で加圧を制御する基板貼り合わせ方法について説明する。
【0249】
図58に示すように、本実施形態では、下基板ホルダ702は、下ホルダ本体710と、複数の下分割加圧部材711と、電磁石を有する吸着子712とを備える。
【0250】
下ホルダ本体710は、略平坦な下円板部713と、複数の下脚部715とを有する。下円板部713は、基板490を静電吸着する電極プレートを有する。下脚部715は、下円板部713の下面に設けられている。下脚部715は、水平面内おいて、単位面積当たりの個数が略均一になるように配置されている。下脚部715の下端部は、回動可能に下分割加圧部材711に連結されている。
【0251】
複数の下分割加圧部材711は、いずれかの下脚部715の下端部に設けられている。従って、下分割加圧部材711は、水平面内において、単位面積当たりの個数が略均一となるように配置されている。下分割加圧部材711は、圧電体を含む。各下分割加圧部材711には、下部トッププレート472から異なる電圧が印加される。これにより、下分割加圧部材711は、それぞれ異なる形状に変形して、異なる圧力によって、独立して基板490を加圧する。また、独立して下分割加圧部材711が変形することにより、連結された下ホルダ本体710の下円板部713は平坦な形状から異なる形状に変形する。
【0252】
上基板ホルダ704は、上ホルダ本体720と、複数の上分割加圧部材721と、永久磁石を有する被吸着子722と、バネを有する弾性部材724とを備える。尚、上基板ホルダ704に関しては、下基板ホルダ702と略同様の構成なので、異なる構成について説明する。上ホルダ本体720は、略平坦な上円板部723と、複数の上脚部725とを有する。上脚部725は、上円板部723の上面に設けられている。複数の上分割加圧部材721は、いずれかの上脚部725の上端部に連結されている。各上分割加圧部材721は、異なる電圧が印加されることにより、異なるか圧力によって独立して基板490を加圧する。
【0253】
下基板ホルダ702及び上基板ホルダ704は、それぞれ電極プレートによって基板490、490を吸着する。この状態で、基板490と基板490とが位置合わせされた後、吸着子712が被吸着子722を吸着する。これにより、
図58に示すように、基板490と基板490との間に間隔が形成された状態で、下基板ホルダ702及び上基板ホルダ704によって基板490と基板490とが保持される。この状態で、基板490、490が、加熱加圧装置456の下部トッププレート472へと搬送される。
【0254】
次に、昇降部466が、下基板ホルダ702及び上基板ホルダ704とともに、基板490、490を上昇させる。これにより、上基板ホルダ704の上分割加圧部材721が、上部トッププレート482に接する。この後、昇降部466が更に基板490、490を上昇させることにより、基板490と基板490とが接する。この状態で、下分割加圧部材711及び上分割加圧部材721に電圧が印加される。これにより、下ホルダ本体710の下円板部713の上面が、上側に凸状の曲面に変形するとともに、上ホルダ本体720の上円板部723の下面が、上側に凹状の曲面であって、下円板部713の上面と相補的な形状に変形する。下円板部713の上面が、中凸面498として機能して、上円板部723の下面が中凹面499として機能する。この結果、下側の基板490及び上側の基板490が、下円板部713及び上円板部723を介して、下分割加圧部材711及び上分割加圧部材721に加圧されつつ、ともに上側に凸状の曲面状に変形される。この後、基板490、490を加熱及び加圧することにより、基板490、490が貼り合わされて重ね合わせ基板492となる。
【0255】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0256】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を、後の処理で用いる場合でない限り、任意の順序で実現しうることに留意されたい。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。