(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
撹拌槽内で、触媒の存在下、少なくとも1の活性水素含有官能基を有する開始剤に、炭素数2以上のモノエポキシドを開環付加重合させてポリエーテルを得るポリエーテルの製造方法であって、
前記ポリエーテルの数平均分子量が1万以上であり、
前記撹拌槽が、該撹拌槽の中心部に、槽外の駆動源によって回転可能な撹拌軸が設けられ、該撹拌軸の下部に、前記撹拌槽の径方向に延びる板状のボトムパドルが装着され、前記撹拌軸の、ボトムパドルより上位部分に、径方向に延びるアームパドルと軸方向に延びるストリップとから構成される格子翼が装着され、前記撹拌槽内の前記ストリップの下端の位置よりも下方の2箇所以上に前記モノエポキシドを吐出するモノエポキシド供給手段が設けられた撹拌槽であることを特徴とする、ポリエーテルの製造方法。
前記ボトムパドルと前記撹拌槽の底部との間に前記吐出口が存在し、前記モノエポキシド供給手段が、該ボトムパドルおよび該撹拌槽の底部の両方に接触しないように設けられている、請求項3に記載のポリエーテルの製造方法。
前記撹拌槽に、前記開始剤の液面がモノエポキシドを吐出する吐出口の位置よりも高くなる量の前記開始剤を充填し、次いでモノエポキシドを液中に供給して開環付加重合させる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリエーテルの製造方法。
前記撹拌槽に前記複合金属シアン化物錯体触媒と前記開始剤を充填した後、前記モノエポキシドの一部を供給して複合金属シアン化物錯体触媒を活性化し、複合金属シアン化物錯体触媒を活性化した後残りのモノエポキシドを供給して開環付加重合させる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリエーテルの製造方法。
前記複合金属シアン化物錯体触媒の活性化後に前記撹拌槽内へ供給する前記モノエポキシドの供給速度が、ポリエーテルの製造量に対して1時間当たり5〜30質量%である、請求項7または8に記載のポリエーテルの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[撹拌槽]
図1は本発明の製造方法に好適に用いられる撹拌槽の一実施形態を示した、一部切欠斜視図である。
図中符号1は撹拌槽を示す。撹拌槽1は垂直方向を中心軸方向、水平方向を径方向とする竪型の略円筒形であり、中心軸に沿って撹拌軸2が配設されている。撹拌槽1は、内径が均一な胴部1bと、胴部1bより下の槽底部1aと、胴部1bより上の槽頂部1cとからなる。槽底部1aの中心部に排出口11が設けられている。
【0013】
撹拌軸2の下端は、軸受部3を介して槽底部1aに支持され、撹拌軸2の上端は、槽頂部1cの上に取り付けられた駆動装置4に、カップリング4aを介して接続されている。駆動装置4は、槽外に設けられた駆動源(図示せず)に接続されており、該駆動源を駆動させることによって、撹拌軸2が回転可能に構成されている。
撹拌軸2には撹拌翼15が装着されている。本実施形態の撹拌翼15は、撹拌軸2の下部に位置する2枚の左右のボトムパドル5、5と、その上位部分に位置する2枚の左右の格子翼6、6が一体化されたものである。
すなわち、撹拌軸2の下部には、撹拌軸2を基端として撹拌槽1の径方向に延びる2枚の板状のボトムパドル5、5が装着されている。上方から見たとき、2枚のボトムパドル5、5のなす角度は180度である。
【0014】
撹拌軸2のボトムパドル5、5が装着されている位置より上位部分には、撹拌軸2を基端として撹拌槽1の径方向であって、ボトムパドル5、5と同じ方向に延びる2枚の格子翼6、6が装着されている。格子翼6は、径方向に延びる3本の板棒状のアームパドル7a、7b、7cと、中心軸方向に延びる2本の板棒状のストリップ8a、8bが格子状に一体化されて形成されている。3本のアームパドル7a、7b、7cは互いに平行であり、そのうち2本は格子翼6の上辺(7a)と下辺(7c)をそれぞれ構成し、残りの一本(7b)は該上辺と下辺の間に配されている。2本の板棒状のストリップ8a、8bは互いに平行であり、そのうち1本は格子翼6の径方向の外縁部(8a)を構成し、残りの一本(8b)は該外縁部と撹拌軸2の間に配されている。上方から見たとき、2枚の格子翼6、6のなす角度は180度である。
本実施形態において、格子翼6の下辺をなすアームパドル7cは、ボトムパドル5と一体化されている。すなわち、格子翼6とボトムパドル5とは一体化されている。
このような格子翼6とボトムパドル5とが一体化された撹拌翼15として、例えばマックスブレンド(登録商標)翼(製品名、住友重機械プロセス機器社製)を好適に用いることができる。
撹拌槽1の径方向における、撹拌翼15の幅のうち最も大きい値(本明細書では撹拌翼15の全幅という。)は、撹拌槽1の内径の20%以上が好ましく、40%以上がより好ましい。
なお、撹拌槽1の内径とは、撹拌槽1の内径のうちで最も大きい径を意味し、本実施形態では胴部1bの内径である。
【0015】
格子翼6には、アームパドル7a、7b、7cと、ストリップ8a、8bと回転軸2とによって区画された、矩形の開口部6aが設けられている。
撹拌翼15が、かかる開口部6aとボトムパドル5、5を備えることにより、撹拌翼15を回転させたときに、回転軸2の近傍に強い下降流が発生し、槽底部1aにおいて回転軸2の下方から撹拌槽1の内壁に向かう放射流が発生し、かつ撹拌翼15と撹拌槽1の内壁との間に上昇流が発生している状態とすることができる。また回転軸2の近傍の下降流は、開口部6aによって細分化され、分散される。
開口部6aの大きさ、数、ボトムパドル5、5の大きさ等は、かかる効果が所望の程度に得られるように適宜設定することができる。
本実施形態において、撹拌翼15には8個の開口部6aが設けられている。例えば、該開口部6aの合計の面積は、該開口部6aが無いと仮定したときの撹拌翼15の全面積の40〜90%であることが好ましく、60〜80%がより好ましい。
ボトムパドル5、5の合計の面積は、該開口部6aが無いと仮定したときの撹拌翼15の全面積の5〜30%であることが好ましく、10〜20%がより好ましい。
【0016】
本実施形態において、撹拌槽1内のストリップ8a、8bの下端の位置よりも下方の2箇所以上にモノエポキシドを吐出する供給手段(モノエポキシド供給手段)として、管で構成された吐出ノズル10が設けられている。吐出ノズル10は、先端がリング部(リング状の吐出ノズル)10aとなっており、該リング部10aの管壁に2個以上の吐出口10cが開口している。該リング部10aは、撹拌槽1の外壁を貫通する供給管10bと連通しており、該供給管10bを介して、撹拌槽1の外部に設けられたモノエポキシド供給部(図示せず)と連通している。
吐出ノズル10のリング部10aは、ボトムパドル5の下端5aと槽底部1aとの間に、軸受部3を囲むように配されている。リング部10aは、撹拌槽1の槽底部1aに突設された支持部材(図示せず)に固定されており、該リング部10aと槽底部1aとの間には、両者が接触しないように隙間がある。またボトムパドル5の下端5aと該リング部10aとの間にも、両者が接触しないように隙間がある。すなわち、リング部10aは、ボトムパドル5および槽底部1aの両方に接触しないように設けられている。
【0017】
撹拌槽1の中心軸方向における、吐出ノズル10のリング部10aと槽底部1aとの距離は、撹拌槽1の中心軸方向の全高さに対して5%以下が好ましく、2%以下がより好ましい。この値が小さいほど、モノエポキシドの分散効果が得られやすい。
撹拌槽1の全高さとは、撹拌槽の内部において槽底から槽頂までの長さの最も長い部分の高さを指す。
撹拌槽1の中心軸方向における、吐出ノズル10のリング部10aとボトムパドル5の下端5aとの距離は、撹拌槽1の全高さに対して5%以下が好ましく、2%以下がより好ましい。この値が小さいほど、格子翼とボトムパドルを有する撹拌翼を用いることによるモノエポキシドの分散性向上効果が発現しやすい。
撹拌槽1の中心軸方向における、ボトムパドル5の下端5aと槽底部1aとの距離(以下、クリアランスCとうこともある。)は、吐出ノズル10のリング部10aと槽底部1aとの隙間、および該リング部10aとボトムパドル5の下端5aとの隙間を確保できる距離以上に設定される。クリアランスCの上限は撹拌槽1の内径の30%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましい。該上限値以下であると格子翼とボトムパドルを有する撹拌翼を用いることによるモノエポキシドの分散性向上効果が得られやすい。
【0018】
吐出ノズル10のリング部10aを構成している管の内径は、特に限定されないが大きすぎると撹拌翼の撹拌効率が低下し、小さすぎるとモノエポキシドの供給速度に制限がかかるため、これらの不都合が生じないように設定することが好ましい。例えば撹拌槽1の中心軸方向の全高さに対して0.05〜5%が好ましく、0.1〜2%がより好ましい。
リング部10aを上から見た時の、該リングの外径は、撹拌槽1の径方向における撹拌翼15の全幅の20〜95%が好ましく、30〜90%がより好ましい。20%より小さいと多点フィードの効果が低下し、95%を超えるとモノエポキシドの分散効果が低下する。
吐出口10cの形状は特に限定されないが、円形が好ましい。吐出口10cの大きさは、特に限定されないが、大きすぎるとモノエポキシドの導入圧が不安定になり、小さすぎるとモノエポキシドの供給速度が不足するおそれがあるため、これらの不都合が生じないように設定することが好ましい。例えば0.5〜20mmが好ましく、1〜10mmがより好ましい。
吐出口10cの数は2個以上であればよい。モノエポキシドをより分散性良く供給でき、ポリエーテル製造時の高粘度化を抑える効果が大きい点では、3個以上が好ましく、4個以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、各吐出口から均一にモノエポキシドを導入しやすい点では20個以下が好ましく、15個以下がより好ましい。
【0019】
図中符号9は平板形の邪魔板で、撹拌槽1の側壁内面上に突設されている。邪魔板9の長さ方向は撹拌槽1の中心軸方向であり、本実施形態では撹拌槽1の側壁下部から上部まで連続している。撹拌槽1の周方向において、複数枚の邪魔板9が等間隔に配設されている。
邪魔板9は必須ではないが、これを設けることにより、格子翼とボトムパドルを有する撹拌翼を用いることによるモノエポキシドの分散性向上効果をさらに向上させることができる。邪魔板9の形状、大きさ、配置等は、かかる効果が所望の程度に得られるように適宜設定することができる。
例えば、邪魔板9の、撹拌槽1の中心軸方向における長さは、撹拌翼15の中心軸方向の全長の50〜100%が好ましく、60〜90%がより好ましい。撹拌槽1の径方向における邪魔板9の幅は、撹拌槽1の内径の0.5〜5%が好ましく、1〜3%がより好ましい。撹拌槽1の周方向における邪魔板9の数は2、4、6枚が好ましく、4,6枚がより好ましい。
図中符号12は、撹拌槽1の槽頂部1cに設けられた投入口であり、開閉可能に構成されている。
【0020】
重合工程において、撹拌槽1内にモノエポキシドを吐出しながら撹拌する際の、撹拌翼15の撹拌速度(回転数)は、低すぎるとモノエポキシドの良好な分散性が得られず、高すぎると必要な動力を得る為の設備対応が難しいため、かかる不都合が生じない範囲に設定する。例えば、槽内の液体の粘度が500mPa・sであるときの撹拌動力(単位動力)が、0.5〜500Kw/m
3となるように撹拌速度(回転数)を設定することが好ましく、1〜300Kw/m
3となるように設定することがより好ましい。
【0021】
なお、本実施形態では、撹拌軸2を槽外から駆動するための駆動装置4を槽頂部側に設けた例につき説明したが、該駆動装置4を槽底部側に設けてもよい。
また本実施形態では、モノエポキシド供給手段として、リング部10aを備えた吐出ノズル10を用いたが、撹拌槽1内のストリップ8a、8bの下端の位置よりも下方の2箇所以上にモノエポキシドを吐出することにより、モノエポキシドの分散向上効果が得られる構成であればよい。例えば、撹拌翼15内にモノエポキシドの流路を設けるとともに、ボトムパドル5、5の外面に吐出口を穿設してもよい。本実施形態のように、撹拌翼15の下端よりも下方でモノエポキシドが吐出される構成がより好ましい。
吐出ノズル10の先端部分はストレート状でもリング状でも良いが、吐出口10cを多く設けられる点でリング状が好ましい。特に3点以上の吐出口を設ける場合リング状であることが好ましい。
撹拌翼15の形状は本発明の範囲内で変更可能である。本実施形態では、ボトムパドル5、5と格子翼6、6とが一体化されているが、これらが別体でもよい。またこれらが別体である場合、撹拌翼15を上から見たときに、ボトムパドル5、5と格子翼6、6とが重なっていてもよく、交差していてもよい。
【0022】
<ポリエーテルの製造方法>
本発明のポリエーテルの製造方法、撹拌槽内で、触媒の存在下、少なくとも1の活性水素含有官能基を有する開始剤に、炭素数2以上のモノエポキシドを開環付加重合させてポリエーテルを得る重合工程を有する。
[ポリエーテル]
本発明におけるポリエーテルとは、少なくとも1個の活性水素含有官能基を有する開始剤に、炭素数2以上のモノエポキシドを開環付加重合して得られる、主鎖にエーテル結合を持つ線状高分子化合物を意味する。活性水素含有官能基の活性水素にモノエポキシドが開環して付加することにより新たに水酸基が生成し、次にこの水酸基にさらにモノエポキシドが開環して付加することによりエーテル結合が生成するとともに新たな水酸基が生成し、このようなモノエポキシドの開環付加反応が繰り返されることによって主鎖にエーテル結合を持つ線状高分子化合物が生成する。従って、本発明のポリエーテルの末端基の少なくとも1個は水酸基である。
【0023】
[開始剤]
活性水素とは、水酸基の水素原子、アミノ基の水素原子等、モノエポキシドが反応しうる活性な水素原子をいう。活性水素含有官能基としては、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、およびアミノ基(1級または2級)が挙げられる。
開始剤は、活性水素含有官能基を1個以上有する化合物であればよく、ポリエーテルの開始剤として公知の化合物を適宜用いることができる。
開始剤として、ポリエーテル製造時のDMC触媒活性を考慮すると水酸基数当たりの数平均分子量(Mn)が300以上のポリエーテルモノオールまたはポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。該ポリエーテルモノオールおよびポリエーテルポリオールは、任意選択によりエステル結合およびポリカーボネート結合などから選択されるエーテル結合以外の化学結合を含んでいてもよい。
【0024】
開始剤としてのポリエーテルモノオールまたはポリエーテルポリオールは、低分子量開始剤にプロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルモノオールまたはポリエーテルポリオールが特に好ましい。低分子量開始剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、およびヘキサノールなどのモノオール;水、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、および蔗糖などのポリオールが好ましい。
開始剤としては、1分子当たりの平均水酸基数が1〜8であることが好ましく、1〜4がより好ましい。水酸基価は10〜600mgKOH/gが好ましく、10〜400mgKOH/gがさらに好ましく、10〜240mgKOH/gが特に好ましい。
本発明における水酸基価(mgKOH/g)はJIS−K−1557に準拠して測定した値である。
重合工程において、開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
[モノエポキシド]
モノエポキシドは、1個のエポキシ環を有する化合物である。ポリエーテルの製造において公知のモノエポキシドを適宜用いることができる。具体例としては、アルキレンオキシド、グリシジルエーテル、グリシジルエステル等が挙げられる。ポリエーテルの高分子量化が可能である点では、アルキレンオキシドが好ましい。
炭素数2以上のアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、スチレンオキシド等が挙げられ、エチレンオキシド、プロピレンオキシドが好ましい。
重合工程において、モノエポキシドは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。開始剤に2種以上のモノエポキシドを開環付加重合させる場合、2種以上のモノエポキシドの混合物を開環付加重合させてランダム重合鎖を形成してもよく、2種以上のモノエポキシドを別々に順次開環付加重合させてブロック重合鎖を形成してもよい。さらに、ランダム重合鎖の形成とブロック重合鎖の形成を組み合わせてもよい。変成シリコーンポリマーの原料として用いる場合には、プロピレンオキシドを単独で用いることが好ましい。
【0026】
[触媒]
重合工程で用いられる触媒は、モノエポキシドの開環付加重合において公知の触媒を適宜用いることができる。例えば複合金属シアン化物錯体触媒、ルイス酸触媒、アルカリ金属触媒が挙げられる。
特に触媒が複合金属シアン化物錯体触媒であると、反応速度が大きくなりやすいため、本発明の製造方法によりモノエポキシドの分散性を向上させて製造中の粘度上昇を抑制する効果が大きい。すなわち、触媒が複合金属シアン化物錯体触媒である場合に、本発明の製造方法を用いることが特に好ましい。
【0027】
複合金属シアン化物錯体触媒(以下、DMC触媒ということもある。)は、亜鉛ヘキサシアノコバルテートに有機配位子が配位したDMC触媒が好ましい。
DMC触媒における有機配位子としては、アルコ−ル、エ−テル、ケトン、エステル、アミン、アミドなどが挙げられる。好ましい有機配位子としては、tert−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、iso−ペンチルアルコール、N,N−ジメチルアセトアミド、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(グライムともいう。)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライムともいう。)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライムともいう。)、iso−プロピルアルコール、およびジオキサンが挙げられる。ジオキサンは、1,4−ジオキサンでも1,3−ジオキサンでもよいが、1,4−ジオキサンが好ましい。有機配位子は1種でもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのうちでも、有機配位子としてtert−ブチルアルコ−ルを有することが好ましい。したがって、有機配位子の少なくとも一部としてtert−ブチルアルコ−ルを有するDMC触媒を用いることが好ましい。このような有機配位子を有するDMC触媒は活性が高く、総不飽和度の低いポリエーテルが得られやすい。また、高活性のDMC触媒を用いると、使用量を少量にすることが可能であり、残存触媒量を低減させるうえでも好ましい。
重合工程において触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。1種のみがより好ましい。
【0028】
[重合工程]
重合工程は、上述した構成を有する撹拌槽1を用い、開始剤と触媒を撹拌槽1に充填し、モノエポキシドを撹拌槽1に供給して開環付加重合を行う工程をいう。
重合の初期においてモノエポキシドは開始剤の液中に供給することが好ましい。モノエポキシドを開始剤液中に供給することにより、重合工程の初期において開始剤とモノエポキシドとの混合を容易にし、両者を速やかに反応させることができる。また、モノエポキシドの反応量が増加するに従い撹拌槽中の液量が増加することより、重合工程の初期以降においても引き続きモノエポキシドを液中に供給することができる。
具体的には、撹拌槽1内に開始剤の全量と触媒を供給して充填した状態で、モノエポキシドを吐出する吐出口10cを開始剤の液中に開口させるようにする。開始剤の量により撹拌槽1中の開始剤の液面の高さは変動することより、撹拌槽1における吐出口10cの開口位置は、開始剤液面の高さの変動を考慮して、ストリップの下端の位置よりも下方であってかつそのうちの比較的低い位置とすることが好ましい。特に前記のように、ボトムパドル5と撹拌槽1の底部との間に開口させることが好ましい。
なお、重合工程ではモノエポキシド供給の前から撹拌槽内の液は撹拌されていることが好ましい。そのために、撹拌槽内のモノエポキシド供給の前の液量を撹拌可能な液量とする。具体的には、撹拌槽1内に開始剤の全量とDMC触媒を充填した状態で、ボトムパドル5の少なくとも下端は開始剤の液中に位置させるようにすることが好ましい。
以下、触媒としてDMC触媒を用いる場合の一実施形態を説明する。
【0029】
本実施形態では、温度調節機能を有し耐圧構造を備えた撹拌槽1を用い、まず、撹拌槽1内に開始剤の全量とDMC触媒を供給する。好ましくは撹拌槽1内を窒素等の不活性ガスで置換して酸素を除去した後、撹拌混合しながら加熱して、所定の反応温度に昇温させる。
次いで、モノエポキシドの一部を供給して反応させることによってDMC触媒を活性化する。DMC触媒が活性化されると発熱が生じ、圧力の低下が生じるため、このことによって活性化が生じたことを確認できる。この工程で供給するモノエポキシドの量は、開始剤に対して3〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。
【0030】
この後、残りのモノエポキシドを徐々に供給しながら、所定の反応温度に保ちつつ撹拌して反応させる。該残りのモノエポキシドは連続的に供給してもよく、断続的に供給してもよい。このときの撹拌槽1内へのモノエポキシドの供給速度は、速すぎるとモノエポキシドが均一に分散しにくく、遅すぎると製造時間のロスになるため、これらの不都合が生じないように設定することが好ましい。ポリエーテルの製造量(100質量%)に対して、1時間当たりのモノエポキシドの供給量が5〜30質量%であることが好ましく、10〜25質量%がより好ましい。
モノエポキシドの供給が終了した後、さらに同じ反応温度に保ちつつ撹拌して熟成を行い、ポリエーテルを得る。
反応温度は90〜150℃の範囲内が好ましく、100〜140℃がより好ましい。
重合工程では、必要に応じて重合溶媒を用いてもよい。例えば、特許第2946580号公報に記載されているような溶媒を使用してもよい。具体例としては、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、エチルメチルケトンが挙げられる。
開始剤に開環付加重合させるモノエポキシドの量によって、得られるポリエーテルの分子量を調整することが可能である。
重合工程後、必要に応じて、溶媒除去や触媒除去等の精製を行ってもよい。また酸化防止剤などの安定剤等の添加剤を添加してもよい。
本発明におけるポリエーテルの製造量とは、開始剤と、開始剤に付加したモノエポキシドの合計質量を意味し、撹拌槽に供給される開始剤とモノエポキシドの合計質量をポリエーテルの製造量とみなす。
【0031】
本発明において、重合工程で製造されるポリエーテルの分子量はとくに限定されないが、本発明の製造方法は、特に高分子量のポリエーテルを製造するのに好適であり、高分子量でありながら低粘度のポリエーテルを製造することができる。
ポリエーテルの製造中における反応液の粘度は、合成されたポリエーテルの分子量が大きくなるに従って増大する。特にポリエーテルの数平均分子量が1万以上になると高粘度化が顕著に進むため、製造が困難となりやすく、製造できたとしても粘度が高いために使用に適さない重合体となりやすい。したがって、重合体の分子量が高いほど、低粘度化の要求が強く、本発明を採用することによる効果が大きい。
本発明の製造方法は、数平均分子量が1万以上のポリエーテルの製造に好適であり、2万以上がより好ましく、3万以上がより特に好ましい。該数平均分子量の上限は特に限定されないが、8万までのポリエーテルの製造化可能であり、現実的には5万以下が好ましい。
また、製造されるポリエーテルの数平均分子量は、それを製造するために使用した開始剤の数平均分子量の1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましい。開始剤の数平均分子量の100倍近い数平均分子量のポリエーテルの製造が可能であるが、撹拌槽の容量が自ずから制限されることより、通常はポリエーテルの数平均分子量は、開始剤の数平均分子量の30倍以下であることが好ましく、20倍以下であることがより好ましい。数平均分子量の比較的低い開始剤からより高分子量のポリエーテルを製造しようとする場合は、本発明の製造方法を繰り返して製造することができる。すなわち、数平均分子量の比較的低い開始剤からポリエーテルを製造し、次に得られたポリエーテルを開始剤としてさらに高分子量のポリエーテルを製造することができる。
【0032】
本発明の製造方法を用いることにより、ポリエーテルの粘度を低く抑えることができる。その理由としては、重合工程において、上述した構成を有する撹拌槽を用いることによって良好な撹拌効率を得るとともに、撹拌槽内の2箇所以上からモノエポキシドを吐出する方法でモノエポキシドを供給することにより、撹拌槽内におけるモノエポキシドの分散性が良好に向上した結果、分子量分布が小さくなり、数平均分子量が同じであっても、粘度が低くなると考えられる。
したがって、同じ数平均分子量で低粘度化されたポリエーテルが得られる。これにより、従来は粘度が高くて使用に適さなかった高分子量のポリエーテルを、使用に適する粘度で得ることができる。
本発明の製造方法で得られたポリエーテルは公知の各種用途に用いることができる。例えばシーリング材に用いられる変成シリコーンポリマーの製造に好適に用いることができる。
【0033】
<変成シリコーンポリマー>
本発明の変成シリコーンポリマーとは、ポリエーテルの末端に連結基を介して、下式(1)で表される加水分解性シリル基が導入された構造を有するものである。
−SiX
aR
13−a ・・・(1)
式(1)中、R
1は炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価の有機基であり、Xは水酸基または加水分解性基であり、aは1、2または3である。ただし、R
1が複数個存在するときは同じでも異なってもよく、Xが複数個存在するときは同じでも異なってもよい。
【0034】
式(1)中のXとしての加水分解性基としては、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミド基、アミノ基、アミノオキシ基、ケトキシメート基、ヒドリド基などが挙げられる。
これらのうち炭素原子を有する加水分解性基の炭素数は6以下が好ましく、4以下が特に好ましい。好ましいXは炭素数4以下の低級アルコキシ基であり、特にメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基またはプロペニルオキシ基が好ましい。
式(1)中のR
1は、好ましくは炭素数8以下のアルキル基、フェニル基またはフルオロアルキル基である。特に好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等である。
【0035】
<変成シリコーンポリマーの製造方法>
本発明の変成シリコーンポリマーの製造方法は、本発明の製造方法でポリエーテルを製造する工程と、該ポリエーテルの分子末端に、加水分解性シリル基を導入する工程を有する。
ポリエーテルの分子末端に加水分解性シリル基を導入する方法は、公知の手法を用いることができる。例えば下記(i)〜(iv)の方法を用いることができる。
【0036】
[方法(i)]
重合工程において末端が水酸基であるポリエーテルを製造し、その末端にオレフィン基を導入した後、下式(2)で表されるヒドロシリル化合物を反応させることにより、加水分解性シリル基を導入できる。
HSiX
aR
13−a ・・・(2)
式(2)中、R
1 、X、aは前記に同じ。
ポリエーテルにオレフィン基を導入する方法としては、例えば、水酸基と反応する官能基およびオレフィン基を有する化合物を、ポリエーテルの水酸基に反応させる方法を用いることができる。
【0037】
[方法(ii)]
重合工程において、開始剤にモノエポキシドを開環付加重合させる際に、アリルグリシジルエーテルなどのオレフィン基含有エポキシ化合物を開環付加重合させることにより、ポリエーテルの末端にオレフィン基(例えばアリル基)が導入されたアリル基変性ポリエーテルを製造し、これに上式(2)で表されるヒドロシリル化合物を反応させることにより、加水分解性シリル基を導入できる。
【0038】
[方法(iii)]
重合工程において末端が水酸基であるポリエーテルを製造し、これとポリイソシアネート基および上式(1)で表される加水分解性シリル基を有する化合物とを反応させることにより、加水分解性シリル基を導入できる。
【0039】
[方法(iv)]
上記(i)または(ii)の方法で、末端にオレフィン基を導入されたポリエーテルを得、該オレフィン基と、下式(3)で表されるケイ素化合物のメルカプト基(−SH)とを反応させることにより、加水分解性シリル基を導入できる。
R
13−a−SiX
a−R
2SH・・・(3)
式(3)中R
1、X、aは前記に同じ、R
2は2価の有機基である。
【0040】
<プレポリマーの製造方法およびこれを用いた変成シリコーンポリマーの製造方法>
本発明のプレポリマーの製造方法は、本発明の製造方法でポリエーテルを製造する工程と、該ポリエーテルと、ポリイソシアネート化合物とを反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを得る工程を有する。
該プレポリマーを用いた本発明の変成シリコーンポリマーの製造方法は、本発明の製造方法でプレポリマーを製造する工程と、該プレポリマーの分子末端に、加水分解性シリル基を導入する工程を有する。
【0041】
ポリイソシアネート化合物としては、たとえば、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等のアラルキルポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環族ポリイソシアネート;および、前記ポリイソシアネート化合物から得られるウレタン変性体、ビュレット変性体、アロファネート変性体、カルボジイミド変性体、およびイソシアヌレート変性体等が挙げられる。
これらのうちで、イソシアネート基を2個有するものが好ましく、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0042】
ポリエーテルとポリイソシアネート化合物とを、イソシアネート基過剰の割合で反応させることにより、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーが得られる。この工程は公知の手法を用いて行うことができる。
末端にイソシアネート基を有するプレポリマーの分子末端に加水分解性シリル基を導入する方法は、公知の手法を用いることができる。例えば下記(v)の方法を用いることができる。
【0043】
[方法(v)]
プレポリマーの末端のイソシアネート基に、下式(4)で表されるケイ素化合物のW基を反応させることにより、加水分解性シリル基を導入できる。
R
13−a−SiX
a−R
2W・・・(4)
式(4)中のR
1、X、aは前記に同じ、R
2は2価の有機基、Wは水酸基、カルボキシル基、メルカプト基およびアミノ基(1級または2級)から選ばれる活性水素含有基である。
【0044】
本発明の製造方法で得られたポリエーテルを用いて、プレポリマーまたは変成シリコーンポリマーを製造することにより、従来と同じ数平均分子量で低粘度化されたプレポリマーまたは変成シリコーンポリマーが得られる、これにより、従来は粘度が高くて使用に適さなかった高分子量の変成シリコーンポリマーを、使用に適する粘度で得ることができる。
変成シリコーンポリマーが低粘度化されると塗工性が向上する。また変成シリコーンポリマーの分子量が高いと硬化物の強度、伸び等の機械的特性に優れる。
かかる変成シリコーンポリマーは、特にシーリング材用に好適である。
【実施例】
【0045】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<測定方法および評価方法>
(1)粘度
E型粘度計VISCONIC EHD型(トキメック社製)を使用し、No.1ローターを用いてJIS K 1557に準拠して25℃での粘度を測定した。
(2)総不飽和度(USV)
JIS K1557に準拠し、酢酸水銀法にて測定した。
【0046】
(3)数平均分子量(Mn)および質量平均分子量(Mw)
ポリエーテルの数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)は、分子量既知の標準ポリスチレン試料を用いて作成した検量線を用い、以下の条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することによって得られた、ポリスチレン換算分子量である。
[GPCの測定条件]使用機種:HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)、データ処理装置:SC−8020(東ソー株式会社製)、使用カラム:TSG gel G2500H(東ソー株式会社製)、カラム温度:40℃、検出器:RI、溶媒:テトラヒドロフラン、流速:0.6ml/分、試料濃度:0.25%、注入量:10μl、検量線作成用標準サンプル:ポリスチレン(Polymer Laboratories社製;〔EasiCal〕PS−2〔Polystyrene Standards〕)。
【0047】
(4)実質官能基数
重合体の実質官能基数fを下記式によって求めた。
f=(1000fn/Mn)/[{(1000/Mn)−(USV/fn)}+USV]
尚、fnは開始剤の水酸基数、Mnは数平均分子量、USVは総不飽和度である。
副生物のモノオールの生成が少ないほど、開始剤の水酸基数と実質官能基数との差が小さくなる。
(5)ポリエーテル中のゲル状物の有無
得られたポリエーテルおよび製造後のオートクレーブおよび撹拌翼を目視で観察し、ゲル状物の有無を確認した。
【0048】
[実施例1]
本例では
図1に示す構成の撹拌槽1を用いてポリエーテルを製造した。撹拌槽1には、外部熱媒ジャケットおよび冷却用内部コイル付きのSUS製オートクレーブ(内径208mm、高さ350mm)を用いた。
図1に示す、格子翼6とボトムパドル5とが一体化した撹拌翼15として、マックスブレンド(登録商標)翼(住友重機械プロセス機器社製)を用いた。撹拌槽1の中心軸方向において、撹拌翼15の全長は310mm、格子翼6の上辺をなすアームパドル7aおよびその下のアームパドル7bの長さ各15mm、下辺をなすアームパドル7cとボトムパドル5の合計の長さは55mmである。アームパドル7aの下端からアームパドル7bの上端までの距離は110mm、アームパドル7bの下端からアームパドル7cの上端までの距離は115mmである。
撹拌槽1の径方向において、撹拌翼15の全幅は116mm、2本のストリップ8a、8bの幅は各9mm、中心軸から内側のストリップ8bの内側端部までの距離は29mmである。
撹拌翼15は、撹拌槽1の中心軸方向における、ボトムパドル5の下端5aと槽底部1aとの距離(クリアランスC)が20mmとなるように、撹拌軸に装着されている。
撹拌槽1の周方向において、4枚の邪魔板9が等間隔に設けられている。1枚の邪魔板の大きさは、撹拌槽1の中心軸方向における長さが10mm、径方向における幅が260mmである。
【0049】
吐出ノズル10は、内径4mmのSUS製の管で構成されており、先端がリング部10aとなっている。該リング部10aの外径は110mmである。リング部10aを上から見たときの外縁部の管壁に、内径2mmの円形の吐出口10cが、リング部10aの周方向において等間隔で4個設けられている。
撹拌槽1の中心軸方向において、吐出ノズル10のリング部10aと槽底部1aとの距離が7mm、吐出ノズル10のリング部10aとボトムパドル5の下端5aとの距離が7mmとなるように設けられている。
【0050】
開始剤として、水酸基価112.2mgKOH/g(水酸基価から求めた分子量:約1000、水酸基数当たりの分子量約500)のポリプロピレングリコールを用い、触媒として、有機配位子がtert−ブチルアルコ−ル(以下、TBAということもある。)のDMC触媒を用いた。モノエポキシドとしてはプロピレンオキシド(以下、POということもある。)を用いた。これらはいずれも本例における使用温度で液状である。
撹拌槽1に、開始剤の900gと触媒の0.45gを仕込み、窒素置換を行って系内の酸素を除去した後、撹拌翼15を駆動させて撹拌混合を開始した。撹拌翼15の撹拌速度(回転数)は、槽内の液体の粘度が500mPa・sであるときの撹拌動力(単位動力)が、1.98Kw/m
3となるように設定した(以下、同様)。本例では300rpmであった。
撹拌しながら加熱して槽内の液温を130℃に昇温させ、触媒を活性化させるために、まず90gのPO(初期PO)を、吐出ノズル10を通して、10分かけて供給した。槽内の発熱及び圧力低下により触媒活性が起こったことを確認した後、槽内の液温を130℃に保ちつつ、8010gのPO(残りのPO)を、吐出ノズル10を通して、4時間かけて連続的に供給した。この4時間の連続供給におけるPOの供給速度は、ポリエーテルの製造量に対して1時間当たり22.3質量%であった。
POの供給終了後、130℃に保持し、撹拌を続けて熟成を行なうことによってポリエーテルを得た。ポリエーテルの製造量は9000gであった。
得られたポリエーテルについて、上記の方法で数平均分子量(Mn)、粘度、分子量分布(Mw/Mn)、総不飽和度、実質官能基数を測定した。また、得られたポリエーテル中におけるゲル状物の有無を上記の方法で評価した。
これらの結果を表1に示す。表1には主な製造条件を合わせて示す(以下、同様。)
【0051】
[実施例2]
実施例1において、開始剤を水酸基価11.2mgKOH/g(水酸基価から求めた分子量:約10000、水酸基数当たりの分子量約5000)のポリプロピレングリコールに変更した。
また開始剤の使用量を2000g、触媒の使用量を0.35g、初期POの使用量を100g、残りのPOの使用量を4900gに変更した以外は、実施例1と同様の設備、製造方法にて行った。ポリエーテルの製造量は7000gであり、4時間の連続供給におけるPOの供給速度は、ポリエーテルの製造量に対して1時間当たり17.5質量%であった。得られたポリエーテルの上記方法による測定結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例2において、触媒の使用量を0.45g、残りのPOの使用量を6900gに変更した以外は、実施例2と同様の設備、製造方法にて行った。ポリエーテルの製造量は9000gであり、4時間の連続供給におけるPOの供給速度は、ポリエーテルの製造量に対して1時間当たり19.2質量%であった。得られたポリエーテルの上記方法による測定結果を表1に示す。
【0052】
[実施例4]
実施例1において、開始剤を水酸基価33.66mgKOH/g(水酸基価から求めた分子量:約5000、水酸基数当たりの分子量約1700)のポリエーテルポリオール(グリセリンにPOを開環付加重合させて得られるポリオール)に変更した。
また開始剤の使用量を1500g、触媒の使用量を0.45g、初期POの使用量を150g、残りのPOの使用量を7350gに変更した以外は、実施例1と同様の設備、製造方法にて行った。ポリエーテルの製造量は9000gであり、4時間の連続供給におけるPOの供給速度は、ポリエーテルの製造量に対して1時間当たり20.4質量%であった。得られたポリエーテルの上記方法による測定結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例4において、開始剤の使用量を1000g、触媒の使用量を0.3g、初期POの使用量を100g、残りのPOの使用量を6900gに変更した以外は、実施例4と同様の設備、製造方法にて行った。ポリエーテルの製造量は8000gであり、4時間の連続供給におけるPOの供給速度は、ポリエーテルの製造量に対して1時間当たり19.2質量%であった。得られたポリエーテルの上記方法による測定結果を表1に示す。
【0053】
[実施例6]
実施例1において、開始剤を水酸基価44.88mgKOH/g(水酸基価から求めた分子量:約5000、水酸基数当たりの分子量約1250)のポリエーテルポリオール(ペンタエリスリトールにPOを開環付加重合させて得られるポリオール)に変更した。
また開始剤の使用量を1000g、触媒の使用量を0.4g、初期POの使用量を100g、残りのPOの使用量を6900gに変更した以外は、実施例1と同様の設備、製造方法にて行った。4時間の連続供給におけるPOの供給速度は、ポリエーテルの製造量に対して1時間当たり21.6質量%であった。得られたポリエーテルの上記方法による測定結果を表1に示す。
[実施例7]
実施例6において、開始剤の使用量を900g、触媒の使用量を0.45g、初期POの使用量を90g、残りのPOの使用量を8010gに変更した以外は、実施例6と同様の設備、製造方法にて行った。4時間の連続供給におけるPOの供給速度は、ポリエーテルの製造量に対して1時間当たり22.3質量%であった。得られたポリエーテルの上記方法による測定結果を表2に示す。
【0054】
[比較例1]
本例では、
図1に示す撹拌槽において、モノエポキシド供給手段として、吐出ノズル10に替えて、吐出口が1個である単管(内径4mmのパイプ)を用いた。すなわち、吐出ノズル10のリング部10aが取り除かれて、供給管10bの先端からモノエポキシドが供給される状態とした(以下、同様。)。それ以外は実施例4と同様に行った。得られたポリエーテルの上記方法による測定結果を表2に示す。
【0055】
[実施例8]
[イソシアネート基末端プレポリマーの製造]
1Lのガラス製の撹拌翼付き反応槽に実施例1で得られたポリエーテルを400g投入する。また、反応槽にトリレンジイソシアネート(2,4−体と2,6−体の異性体混合物であり、2,4−体を80質量%含む。商品名:TDI−80、日本ポリウレタン工業社製)と4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製、商品名ミリオネートMT)をモル比7/3で、ポリエーテルに対してイソシアネート基/水酸基(モル比)が1.95になるような量だけ投入する。反応槽内を窒素で置換した後、内容物を100rpmで撹拌しながら反応槽を90℃に昇温し、そのまま90℃を保つ。反応の間、一定時間毎に内容物の一部を取り出し、イソシアネート基の含有量z
1(質量%)を測定し、理論イソシアネート基含有量z
0(質量%)に対する、イソシアネート反応率z(%)を求める。イソシアネート基の含有量z
1(質量%)が、理論イソシアネート基含有量z
0(0.84質量%)以下になったことを確認して反応を終了し、イソシアネート基末端プレポリマーを得る。得られたイソシアネート基末端プレポリマーの粘度は、44000mPa・sである。
【0056】
[実施例9]
[変成シリコーンポリマー(a)の製造]
SUS製オートクレーブ(内容積5L(リットル))に実施例2で得られたポリエーテルの3000gを投入し、内温を110℃に保持しながら減圧脱水する。つぎに、反応器内雰囲気を窒素ガスに置換し、内温を50℃に保持しながら、ウレタン化触媒として、ナーセム亜鉛(日本化学産業社製)を前記ポリエーテルに対して50ppm添加し、撹拌した後、水酸基の総数に対するイソシアネート基の総数の比(NCO/OH)が0.97となるように、1−イソシアネートメチルメチルジメトキシシラン(純度95%)を投入する。続いて、内温を80℃に8時間保持して、ポリエーテルと1−イソシアネートメチルメチルジメトキシシランとをウレタン化反応させ、FT−IR(フーリエ変換型赤外分光)にてイソシアネートのピークが消失していることを確認する。その後、常温まで冷却し、末端に加水分解性基としてメチルジメトキシシリル基を有する変成シリコーンポリマー(a)を得る。得られた変成シリコーンポリマーの粘度は、60000mPa・sである。
【0057】
[変成シリコーンポリマー(b)の製造]
SUS製オートクレーブ(内容積5L(リットル))に実施例2で得られたポリエーテルの3000gを投入し、内温を110℃に保持しながら減圧脱水する。つぎに、反応器内雰囲気を窒素ガスに置換し、内温を50℃に保持しながら、ウレタン化触媒として、ナーセム亜鉛(日本化学産業社製)を前記ポリエーテルに対して50ppm添加し、撹拌した後、水酸基の総数に対するイソシアネート基の総数の比(NCO/OH)が0.97となるように、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(純度98%)を投入する。続いて、内温を80℃に8時間保持して、ポリエーテルと3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランとをウレタン化反応させ、FT−IR(フーリエ変換型赤外分光)にてイソシアネートのピークが消失していることを確認する。その後、常温まで冷却し、末端に加水分解性基としてメチルジメトキシシリル基を有する変成シリコーンポリマー(b)を得る。得られた変成シリコーンポリマー(b)の粘度は、58000mPa・sである。
【0058】
[実施例10]
[変成シリコーンポリマー(c)の製造]
SUS製オートクレーブ(内容積5L(リットル))に実施例2で得られたポリエーテルの3000gを投入し、内温を110℃に保持しながら減圧脱水する。つぎに、液温を50℃にし、ポリエーテルの水酸基量に対して1.05倍モルのナトリウムメトキシドを含むメタノール溶液を添加する。液温を130℃にして減圧しながらメタノールを除去し、ポリエーテルのアルコラート化反応を行う。その後、液温を80℃にし、ポリエーテルの水酸基量に対して過剰量の塩化アリルを添加し反応させ、未反応の塩化アリルを除去及び精製を行い、分子末端にアリル基を有する重合体を得る。次に、塩化白金酸六水和物の存在下、得られた重合体の末端のアリル基量に対して0.6倍モルのジメトキシメチルシランを添加し、70℃にて5時間反応させる。これにより、末端に加水分解性基としてメチルジメトキシシリル基を有する変成シリコーンポリマー(c)を得る。得られた変成シリコーンポリマー(c)の粘度は、50000mPa・sである。
【0059】
[実施例11]
[シーリング材の製造]
実施例10で得られた変性シリコーンポリマー(b)の100質量部、ジイソノニルフタレート(DINP、花王社製、商品名:ビニサイザー90)の40質量部、膠質炭酸カルシウム(白石工業社製、商品名:白艶華CCR)の75質量部、重質炭酸カルシウム(白石工業社製、商品名:ホワイトンSB、平均粒径1.78μm)の75質量部、脂肪酸アマイド系チクソ性付与剤(楠本化成社製、商品名:ディスパロン#6500)の5質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャルティー・ケミカル社製、商品名:チヌビン326)の1質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティーケミカル社製、商品名:イルガノックス1010)の1質量部、4価の有機スズ化合物(旭硝子社製:EXCESTAR C201)の2質量部を混合し、1成分型の変成シリコーン系シーリング材を調整する。こうして得られる1成分型の変成シリコーン系シーリング材は作業性が良好である。
【0060】
[参考例1]
本例では、
図1に示す撹拌槽において、撹拌翼15を
図2に示すアンカー翼21とパドル翼22を組み合わせた撹拌翼に変更した。それ以外の構成要素は
図1と同じであり同じ構成要素には同じ符号を付す。なお主要な符号以外は省略する。
本例では、撹拌軸2の下部に2枚のアンカー翼21、21が装着されており、その上に4枚の羽根が1組となって回転方向に等間隔に配されたパドル翼22が、間隔をあけて2組装着されている。
撹拌槽1の径方向において、アンカー翼21、21の全幅(2枚の合計)は116mm、パドル翼22の全幅(2枚の羽根の合計)は116mmである。パドル翼22の各羽根は、短辺が15mmの長方形板を、撹拌槽1の中心軸方向に対して45度傾けて装着されている。
アンカー翼21の下端と槽底部1aとの距離(クリアランスC)は20mmである。
このように撹拌翼を変更した以外は実施例4と同様に行った。なお、撹拌翼の撹拌速度(回転数)は、槽内の液体の粘度が500mPa・sであるときの撹拌動力(単位動力)が、1.98Kw/m
3となるように設定したところ、本例では400rpmであった。
得られたポリエーテルの上記方法による測定結果を表2に示す。表2には、比較のために実施例4の結果も合わせて示す。
【0061】
[参考例2]
本例では、
図2に示す撹拌槽において、モノエポキシド供給手段として、吐出ノズル10に替えて、吐出口が1個である単管(内径4mmのパイプ)を用いた。
それ以外は参考例1と同様に行った。得られたポリエーテルの上記方法による測定結果を表2に示す。
【0062】
[参考例3]
本例では、
図1に示す撹拌槽において、撹拌翼15を
図3に示すフルゾーン(登録商標)翼(神鋼環境ソリューション社製)に変更した。それ以外の構成要素は
図1と同じであり同じ構成要素には同じ符号を付す。なお主要な符号以外は省略する。
本例では、撹拌軸2に、2枚の羽根31、31が1組となって全体で長方形板状をなす翼32が2組、中心軸方向に連続して、かつ上方から見たときに互いに直交するように装着されている。撹拌槽1の径方向において、翼32の全幅(2枚の羽根の合計)は116mmである。下の翼32の下端と槽底部1aとの距離(クリアランスC)は20mmである。
このように撹拌翼を変更した以外は実施例4と同様に行った。なお、撹拌翼の撹拌速度(回転数)は、槽内の液体の粘度が500mPa・sであるときの撹拌動力(単位動力)が、1.98Kw/m
3となるように設定したところ、本例では300rpmであった。
得られたポリエーテルの上記方法による測定結果を表2に示す。
【0063】
[参考例4]
本例では、
図3に示す撹拌槽において、モノエポキシド供給手段として、吐出ノズル10に替えて、吐出口が1個である単管(内径4mmのパイプ)を用いた。それ以外は参考例3と同様に行った。得られたポリエーテルの上記方法による測定結果を表2に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
表1、2の結果に示されるように、本発明にかかる実施例1〜7によれば、数平均分子量が1万以上の高分子量ポリエーテルであっても、製造時の高粘度化が抑えられ、ポリエーテル中におけるゲル状物の生成も見られず、良好に製造することができた。
表2の結果に示されるように、実施例4と比較例1は
図1のマックスブレンド(登録商標)翼を用いた例である。モノエポキシドを供給するための吐出口を1個(比較例1)から4個(実施例4)としたことにより、ポリエーテルの粘度が効果的に低下した。またポリエーテル中にゲル状物の生成も見られなかった。
参考例1、2は
図2のパドル翼を用いた例である。吐出口を1個(参考例2)から4個(参考例1)にすることにより、ポリエーテルの粘度の低下はみられたが、実施例4に比べると低粘度化が不十分であり、ポリエーテル中にゲル状物が生成した。該ゲル状物は超高分子量の副生成物であると考えられる。
参考例3、4は
図3のフルゾーン(登録商標)翼を用いた例である。吐出口を1個(参考例4)から4個(参考例3)にすることにより、ポリエーテルの粘度の低下はみられたが、実施例4に比べると低粘度化が不十分であり、ポリエーテル中にゲル状物が生成した。
なお、2011年11月4日に出願された日本特許出願2011−241910号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。