(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材フィルム上に粘着剤層が形成され、前記粘着剤層に接するように当該粘着剤層上に接着剤層が形成されたダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの前記接着剤層に、前記接着剤層の周縁が全体にわたって10mmよりも大きくはみ出るように、半導体ウェハを貼付する半導体ウェハ貼付工程と、
前記接着剤層の周縁の外側で、ウェハリングを前記粘着剤層に貼付するウェハリング貼付工程と、
前記半導体ウェハをブレードダイシングし、個片化された複数の半導体チップを得るチップ化工程とを備え、
前記チップ化工程において、ダイシングブレード及び前記半導体ウェハに吹き付けられる切削水が、前記接着剤層の周縁部に直接当たることが抑制されるように、前記半導体ウェハからはみ出す前記接着剤層のはみ出し部分に切削水を吹き付けることを特徴とする半導体チップの製造方法。
基材フィルム上に粘着剤層が形成され、前記粘着剤層に接するように当該粘着剤層上に接着剤層が形成されたダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの前記接着剤層に、前記接着剤層の周縁が全体にわたって10mmよりも大きくはみ出るように、半導体ウェハを貼付する半導体ウェハ貼付工程と、
前記接着剤層の周縁の外側で、ウェハリングを前記粘着剤層に貼付するウェハリング貼付工程と、
前記半導体ウェハをブレードダイシングし、個片化された複数の半導体チップを得るチップ化工程とを備え、
前記チップ化工程において、ダイシングブレード及び前記半導体ウェハに吹き付けられる切削水が、前記接着剤層の周縁部に直接当たることが抑制されるように、前記半導体ウェハからはみ出す前記接着剤層のはみ出し部分に切削水を吹き付けることを特徴とする半導体ウェハの切断方法。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップと半導体チップ用の支持部材との接合には、ペースト状の接着剤が主に使用されていた。しかしながら、ペースト状の接着剤を用いる場合、半導体チップからのはみ出しや、半導体チップが傾いて接着される等の不具合、膜厚制御の困難性などの問題があった。
【0003】
このような問題を解消するため、近年、ペースト状の接着剤に代わって、フィルム状の接着剤が注目されている(例えば、下記特許文献1〜3参照)。このフィルム状の接着剤の使用方法として、ウェハ裏面貼付方式がある。ウェハ裏面貼付方式では、まず、フィルム状の接着剤層を半導体ウェハの裏面に貼付した後、粘着剤層が形成されたダイシング用基材シートを接着剤層の他面に貼り合わせる。その後、半導体ウェハをダイシングして、個片化された半導体チップを得る。個片化された半導体チップはピックアップされた後に、ボンディング工程に移される。従って、ダイシング用基材シートの粘着剤層には、半導体ウェハの切断に伴う負荷によって、接着剤層が飛散しない程度の粘着力が求められる一方、半導体チップをピックアップする際には、各半導体チップへの粘着剤の残りが無く、接着剤層付きの半導体チップを容易にピックアップできることが求められる。
【0004】
また、ウェハ裏面貼付方式に用いられるダイシングテープにはUV型と感圧型がある。UV型のダイシングテープでは、UV照射前には、ダイシング時に求められる粘着力を有し、UV照射後には、半導体チップを容易にピックアップできる粘着力まで落とすことが可能である。一方、感圧型のダイシングテープでは、UV照射工程は不要であるが、ダイシング時に必要な粘着力と、半導体チップを容易にピックアップできる粘着力という、相反する特性を両立させた粘着力を有することが要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のフィルム状の接着剤層と、ダイシング用基材シートとを一体化したダイシング・ダイボンディング一体型フィルムなるものが知られている。このダイシング・ダイボンディング一体型フィルムでは、例えば、長尺の剥離性基材上に、接着剤層、粘着剤層、及びダイシング用基材シートがこの順に形成されており、接着剤層は半導体ウェハよりも大きくなるようにプレカット(予め切断)されている。
【0007】
ところで、ダイシング工程では、高速回転するダイシングブレードと半導体ウェハとの間に生じる摩擦熱を冷却するために、ダイシングブレード及び半導体ウェハ上に、切削水が吹き付けられる。しかしながら、接着剤層と粘着剤層との密着力が弱い場合、この切削水による負荷・水圧に耐えきれず、上述のように半導体ウェハよりも大きくプレカットされた接着剤層の周縁部が剥がれてしまうという問題があった。このように剥がれた接着剤層は、半導体ウェハを汚染するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、半導体ウェハのダイシング工程において、接着剤層の周縁部が粘着剤層から剥がれることを抑制する半導体チップの製造方法及び半導体ウェハの切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題の解決のため、本発明に係る半導体チップの製造方法は、基材フィルム上に粘着剤層が形成され、粘着剤層に接するように当該粘着剤層上に接着剤層が形成されたダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの接着剤層に、接着剤層の周縁が全体にわたって10mmよりも大きくはみ出るように、半導体ウェハを貼付する半導体ウェハ貼付工程と、接着剤層の周縁の外側で、ウェハリングを粘着剤層に貼付するウェハリング貼付工程と、半導体ウェハをブレードダイシングし、個片化された複数の半導体チップを得るチップ化工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
この半導体チップの製造方法によれば、接着剤層がウェハリングの穴の内側に収まると共に、接着剤層の周縁が全体にわたって半導体ウェハの外側に10mm以上はみ出ることになる。このため、半導体ウェハをダイシングする際に、ダイシングブレード及び半導体ウェハ上に吹き付けられる切削水が、接着剤層の周縁部に直接当たることが抑制される。従って、ダイシングにおける切削水の水圧に起因する接着剤層の周縁部の剥離を抑制できる。よって、接着剤層の剥離に起因する汚染の少ない半導体チップを得ることができる。
【0011】
チップ化工程において、前記半導体ウェハからはみ出す前記接着剤層のはみ出し部分に切削水を吹き付けてもよい。この場合、切削水が、接着剤層の周縁部に直接当たることが確実に抑制される。
【0012】
切削水の供給圧力は、0.2MPa〜0.6MPaであってもよい。切削水の流量は、0.5L/分〜2.0L/分であってもよい。
【0013】
また、本発明に係る半導体ウェハの切断方法は、基材フィルム上に粘着剤層が形成され、粘着剤層に接するように当該粘着剤層上に接着剤層が形成されたダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの接着剤層に、接着剤層の周縁が全体にわたって10mmよりも大きくはみ出るように、半導体ウェハを貼付する半導体ウェハ貼付工程と、接着剤層の周縁の外側で、ウェハリングを粘着剤層に貼付するウェハリング貼付工程と、半導体ウェハをブレードダイシングし、個片化された複数の半導体チップを得るチップ化工程とを備えることを特徴とする。
【0014】
この半導体ウェハの切断方法によれば、接着剤層がウェハリングの穴の内側に収まると共に、接着剤層の周縁が全体にわたって半導体ウェハの外側に10mm以上はみ出ることになる。このため、半導体ウェハをダイシングする際に、ダイシングブレード及び半導体ウェハ上に吹き付けられる切削水が、接着剤層の周縁部に直接当たることが抑制される。従って、ダイシングにおける切削水の水圧に起因する接着剤層の周縁部の剥離を抑制できる。よって、接着剤層の剥離に起因する汚染の少ない半導体チップを得ることができる。
【0015】
チップ化工程において、前記半導体ウェハからはみ出す前記接着剤層のはみ出し部分に切削水を吹き付けてもよい。この場合、切削水が、接着剤層の周縁部に直接当たることが確実に抑制される。
【0016】
切削水の供給圧力は、0.2MPa〜0.6MPaであってもよい。切削水の流量は、0.5L/分〜2.0L/分であってもよい。
【0017】
なお、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムは、基材フィルムと、基材フィルム上に形成され、ブレードダイシングに用いられるウェハリングが貼付される感圧型の粘着剤層と、粘着剤層上に形成され、ブレードダイシングの対象である半導体ウェハが貼付される中央部を有する接着剤層と、を備え、接着剤層の平面形状は円形となっており、接着剤層の面積は、半導体ウェハの面積よりも大きく、かつ基材フィルム及び粘着剤層のそれぞれの面積よりも小さくなっており、接着剤層の直径は、半導体ウェハの直径よりも大きくかつウェハリングの内径よりも小さくなっており、接着剤層の直径と半導体ウェハの直径との差が20mmよりも大きく35mmよりも小さくなっていることを特徴としてもよい。
【0018】
このダイシング・ダイボンディング一体型フィルムでは、接着剤層の直径と半導体ウェハの直径との差が20mmよりも大きく35mmよりも小さくなっている。一般的に、ウェハリングの内径は、半導体ウェハの直径よりも35mm以上大きいので、接着剤層はウェハリングの穴の内側に収まる。また、半導体ウェハが接着剤層の中央部に貼付された際に、接着剤層の周縁が半導体ウェハの外側に10mmよりも大きくはみ出ることになる。このため、半導体ウェハをダイシングする際に、ダイシングブレード及び半導体ウェハ上に吹き付けられる切削水が、接着剤層の周縁部に直接当たることが抑制される。従って、ダイシングにおける切削水の負荷や水圧に起因する接着剤層の周縁部の剥離を抑制できる。
【0019】
また、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの製造方法は、基材フィルム上に粘着剤層が形成されたダイシングフィルムを準備するダイシングフィルム準備工程と、剥離性基材上に接着剤層が形成されたダイボンディングフィルムを準備するダイボンディングフィルム準備工程と、接着剤層の面積が、接着剤層の中央部に貼付される半導体ウェハの面積よりも大きく、かつ粘着剤層及び基材フィルムのそれぞれの面積よりも小さくなるように、接着剤層を円形に切断する接着剤層切断工程と、ダイシングフィルムの粘着剤層が形成された面を、ダイボンディングフィルムの剥離性基材及び円形に切断された接着剤層に貼り付けるフィルム貼付工程と、を備え、接着剤層切断工程において、接着剤層の直径が、半導体ウェハの直径よりも大きくかつブレードダイシングに用いられるウェハリングの内径よりも小さくなり、接着剤層の直径と半導体ウェハの直径との差が20mmよりも大きく35mmよりも小さくなるように、接着剤層を切断することを特徴としてもよい。
【0020】
ダイシングフィルム準備工程では、基材フィルム上に感圧型の粘着剤層が形成されたダイシングフィルムを準備することが好ましい。
【0021】
このダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの製造方法によれば、接着剤層の直径と半導体ウェハの直径との差が20mmよりも大きく35mmよりも小さくなる。一般的に、ウェハリングの内径は、半導体ウェハの直径よりも35mm以上大きいので、接着剤層はウェハリングの穴の内側に収まる。また、半導体ウェハが接着剤層の中央部に貼付された際に、接着剤層の周縁が半導体ウェハの外側に10mm以上はみ出ることになる。よって、半導体ウェハをダイシングする際に、ダイシングブレード及び半導体ウェハ上に吹き付けられる切削水が、接着剤層の周縁部に直接当たることが抑制される。従って、ダイシングにおける切削水の負荷や水圧に起因する接着剤層の周縁部の剥離を抑制できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、半導体ウェハのダイシング工程において、接着剤層の周縁部が粘着剤層から剥がれることを抑制する、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの製造方法、及び半導体チップの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る半導体チップの製造方法及び加工用フィルムの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明に係るダイシング・ダイボンディング一体型フィルム1の一実施形態を示す図である。
図2は、
図1のII−II線に沿った断面を示す図である。
【0026】
ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム1は、半導体ウェハを半導体チップに個片化するダイシング用フィルムとしての機能と、個片化された半導体チップをダイパッドに接続する際の接着剤層を半導体チップに付与する機能と、を一体的に有するフィルムである。このダイシング・ダイボンディング一体型フィルム1は、基材フィルム3a、粘着剤層3b、及び接着剤層2を備えている。
【0027】
基材フィルム3aは、ダイシング時に半導体ウェハを支持する部分である。基材フィルム3aは円形の平面形状を有し、基材フィルム3aの直径α1は、ダイシングに使用される環状のウェハリングの内径よりも大きくなっている。基材フィルム3aには、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリ酢酸ビニルポリエチレン共重合体からなるフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルム及び、それらを積層したフィルム等を用いることができる。
【0028】
粘着剤層3bは、ウェハリングが貼付・固定される部分である。粘着剤層3bは円形の平面形状を有し、粘着剤層3bの直径α1は、ダイシングに使用される環状のウェハリングの内径よりも大きくなっている。粘着剤層3bの厚さは、例えば1μm〜50μm程度となっている。粘着剤層3bは感圧型であり、例えば、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、ポリウレタン系、又はポリエステル系などを主成分とする粘着剤層である。なお、感圧型の粘着剤層とは、エネルギー線を照射しなくても被着物を剥離させることが可能な粘着剤層である。粘着剤層3bが感圧型であると、粘着剤層3b上の部位ごとの粘着力のばらつきが生じ難くなる。
【0029】
接着剤層2は、ダイシング対象である半導体ウェハが同心状に貼付される中央部を有し、ダイシング後に個片化された半導体チップをダイパッドに接着・接続するためのものである。接着剤層2に含まれる接着剤としては、例えばエポキシ樹脂などの熱硬化性接着剤、光硬化性接着剤、熱可塑性接着剤あるいは酸素反応性接着剤等が挙げられる。接着剤層2は円形の平面形状を有する。接着剤層2の面積は、半導体ウェハの面積よりも大きくなっている。接着剤層2の膜厚は、例えば1μm以上250μm以下程度となっている。接着剤層2の膜厚が1μmよりも薄いとダイボンド時に十分な接着力を確保することが困難になり、250μmよりも厚いと不経済であり特性上の利点も少ない。
【0030】
接着剤層2の直径α2は、半導体ウェハの直径よりも大きく、接着剤層2の直径α2と半導体ウェハの直径との差は20mmよりも大きく35mmよりも小さくなっている。ブレードダイシング用のウェハリングの内径は、ブレードダイシングの際にブレードがウェハリングに触れない程度に大きくなっている必要がある。このため、ウェハリングの内径は、例えば、半導体ウェハの直径よりも45mm以上大きくなっている。接着剤層2は、ウェハリングの穴の内側に確実に収まる大きさであることが好ましい。例えば、ウェハリングを配置する装置の位置決め精度を考慮すると、接着剤層2の直径は、ウェハリングの穴の内径よりも10mm程度小さいことが好ましい。また、ダイシング後に個片化された半導体チップをダイパッドに接着・接続する工程では、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム1はエキスパンドされる。ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム1がエキスパンドされることにより、半導体チップの間隔が広がり、ピックアップが容易に行えるようになる。このエキスパンドの応力を十分に伝えるためにも、接着剤層2は、ウェハリングの穴の内径よりも10mm程度小さいことが好ましい。従って、接着剤層2の直径と半導体ウェハの直径との差が35mmよりも小さいと、接着剤層2は、ウェハリングの穴の内側に確実に収まると共に、エキスパンドの応力を十分に伝えることができることとなる。特に、接着剤層2の直径と半導体ウェハの直径との差が32mmよりも小さいと、接着剤層2は、ウェハリングの穴の内側により確実に収まると共に、エキスパンドの応力をより十分に伝えることができることとなる。
【0031】
例えば、ダイシング対象である半導体ウェハの直径が8インチ(203mm)であり、ウェハリングの内径が248mmである場合には、接着剤層2の直径は、例えば223mm以上248mm未満であり、好ましくは228mm以上238mm未満である。また例えば、ダイシング対象である半導体ウェハの直径が12インチ(305mm)であり、ウェハリングの内径が350mmである場合には、接着剤層2の直径は、例えば325mm以上350mm未満であり、好ましくは330mm以上340mm未満である。
【0032】
ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム1は、基材フィルム3a、粘着剤層3b、及び接着剤層2がこの順に積層されることによって構成されている。すなわち、粘着剤層3bは、基材フィルム3a上に接して形成されており、接着剤層2は、粘着剤層3b上に接して形成されている。互いに円形の平面形状を有する基材フィルム3a、粘着剤層3b、及び接着剤層2は、それぞれの円の中心が重なるように積層されている。また、基材フィルム3a及び粘着剤層3bと、接着剤層2とは同心状に配置されている。基材フィルム3a及び粘着剤層3bの直径α1は互いに同じであり、粘着剤層3bの面積は基材フィルム3aの面積と同じとなっている。接着剤層2の面積は、粘着剤層3b及び基材フィルム3aのそれぞれの面積よりも小さくなっている。
【0033】
上述したダイシング・ダイボンディング一体型フィルム1では、接着剤層2の直径α2と半導体ウェハの直径との差が20mmよりも大きく35mmよりも小さくなっており、接着剤層2の中央部に半導体ウェハを同心状に貼付する場合(すなわち接着剤層2の中心と半導体ウェハの中心とが重なるように貼付する場合)、接着剤層2の周縁が全体にわたって半導体ウェハの外側から10mmよりも大きくはみ出ることになる。よって、
図8に示すように、半導体ウェハをダイシング装置のダイシングブレード30でダイシングする際に、切削水供給ノズル40から吹き付けられる切削水が、接着剤層2の周縁部Eに直接当たることが抑制される。従って、ダイシングにおける切削水の水圧に起因する接着剤層2の周縁部Eの剥離を抑制でき、接着剤層2の剥離に起因する半導体ウェハの汚染が抑制される。特に、接着剤層2の直径α2と半導体ウェハの直径との差が25mm以上であると、ダイシングにおける切削水の水圧に起因する接着剤層2の周縁部Eの剥離をより確実に抑制でき、接着剤層2の剥離に起因する半導体ウェハの汚染がより確実に抑制される。ここで、接着剤層2の周縁部Eとは、接着剤層2の外周の端部からの距離が約10mm以下の外周部分をいう。
【0034】
なお、接着剤層2の周縁は、全体にわたって半導体ウェハの外側から10mmよりも大きくはみ出ることが特に好ましいが、切削水が当たり易い方向において10mmよりも大きくはみ出ていれば、必ずしも全体にわたって10mmよりも大きくはみ出ている必要はない。
【0035】
なお、切削水としては、例えば、ブレードクーラー、シャワー、スプレーが標準装備されている。ブレードクーラー、シャワー、スプレーのそれぞれの供給圧力は、例えば0.2MPa〜0.6MPa程度である。ブレードクーラー、シャワー、スプレーのそれぞれの流量は、例えば0.5L/分〜2.0L/分程度である。
【0036】
これに対して、従来のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムのように、接着剤層2の直径と半導体ウェハの直径との差が20mm以下であると、接着剤層2の中央部に半導体ウェハを同心状に貼付する場合、接着剤層2の周縁が半導体ウェハの外側からはみ出る量が全体にわたって10mm以下となる。この場合、
図10に示すように、半導体ウェハをダイシングブレード30でダイシングすると、切削水が接着剤層2の周縁部Eに直接当たる。よって、ダイシングにおける切削水の水圧に起因する接着剤層2の周縁部Eの剥離が生じ、剥離した接着剤層2の破片Bが半導体ウェハに付着してしまう。
【0037】
また、上述したダイシング・ダイボンディング一体型フィルム1では、基材フィルム3a及び粘着剤層3bのそれぞれの直径α1は、ダイシングに使用されるウェハリングの内径よりも大きくなっており、接着剤層2の直径α2が、ウェハリングの内径よりも小さくなっていることにより、ダイシングに使用されるウェハリングを基材フィルム3a上に積層された粘着剤層3bに容易に貼付することができる。
【0038】
また、本発明は、上述したダイシング・ダイボンディング一体型フィルム1に限られるものではない。例えば、接着剤層2の平面形状は、半導体ウェハの平面形状と相似の関係であることが好ましく、例えば円の外周の一部が直線である形状などでもよい。また、基材フィルム3a及び粘着剤層3bの平面形状は、円形以外であってもよく、例えば矩形であってもよい。また、粘着剤層3bの直径は、ダイシングに使用される環状のウェハリングの内径よりも大きくなっていればよく、基材フィルム3aの直径以下となっていてもよい。粘着剤層3bが感圧型であると、本発明の効果が特に顕著になるが、粘着剤層3bがUV型(UV照射により粘着力を変化させることができるもの)であっても、本発明の効果は得られる。また、上述したダイシング・ダイボンディング一体型フィルム1の接着剤層2及び粘着剤層3bは、剥離性基材によって支持・保護されていることが好ましい。このような剥離性基材には、貼り付け対象である半導体ウェハの直径よりも大きい幅を有する長尺シートを用いることができる。剥離性基材の厚みは、作業性を損なわない範囲で適宜に選択でき、例えば1μm以上1000μm以下程度とすることができる。剥離性基材としては、ポリエステル系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、プラスチックフィルム等を用いることができる。
【0039】
以下に、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム1の製造方法の一例を
図3〜
図5を用いて説明する。まず、
図3(a)に示すように、基材フィルム3a上に粘着剤層3bが形成されたダイシングフィルムを準備する(ダイシングフィルム準備工程)。また、
図3(b)に示すように、剥離性基材10上に接着剤層2が形成されたダイボンディングフィルムを準備する(ダイボンディングフィルム準備工程)。
【0040】
次いで
図4(a)に示すように、接着剤層2を円形に切断する(接着剤層切断工程)。接着剤層切断工程では、接着剤層2の面積が、接着剤層2の中央部に同心状に貼付される半導体ウェハの面積よりも大きく、かつ粘着剤層3b及び基材フィルム3aの面積よりも小さくなるように、接着剤層2を切断する。この際、接着剤層2の直径が、半導体ウェハの直径よりも大きくかつダイシングの際に用いられるウェハリングの内径よりも小さくなり、接着剤層2の直径と半導体ウェハの直径との差が20mmよりも大きく35mmよりも小さくなるように、接着剤層2を円形に切断する。
【0041】
続いて、
図4(b)に示すように、ダイシングフィルムの粘着剤層3bが形成された面を、剥離性基材10及び円形に切断された接着剤層2に貼り付ける(フィルム貼付工程)。これにより、ダイシングフィルムとダイボンディングフィルムとが一体となる。
【0042】
フィルム貼付工程の後に、基材フィルム3a及び粘着剤層3bを円形に切断する(基材フィルム及び粘着剤層切断工程)。基材フィルム及び粘着剤層切断工程では、基材フィルム3a及び粘着剤層3bのそれぞれの直径が、ダイシングに用いられるウェハリングの内径よりも大きくなるように、基材フィルム3a及び粘着剤層3bを円形に切断する。なお、あらかじめ基材フィルム3a及び粘着剤層3bの平面形状の大きさが、ウェハリングよりも大きければ、基材フィルム及び粘着剤層切断工程は省略することができる。
【0043】
このダイシング・ダイボンディング一体型フィルム1の製造方法によれば、接着剤層2の直径α2と半導体ウェハの直径との差が20mmよりも大きく35mmよりも小さくなる。よって、上述したように、半導体ウェハをダイシングブレードでダイシングする際に、切削水が接着剤層2の周縁部Eに直接当たることが抑制される。従って、ダイシングにおける切削水の負荷・水圧に起因する接着剤層2の周縁部Eの剥離を抑制できる。
【0044】
以下に、本発明に係る半導体チップの製造方法の一例について説明する。まず、上述したダイシング・ダイボンディング一体型フィルム1の製造方法によって製造されたダイシング・ダイボンディング一体型フィルム1を準備する(準備工程)。この例では、接着剤層2、粘着剤層3b、及び基材フィルム3aを長尺の剥離性基材10上に形成したダイシング・ダイボンディング一体型フィルム1を用いる。最初、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム1は、
図6に示すように、繰出装置11に巻回されている。
【0045】
準備工程の後に、剥離性基材10を剥離する(基材剥離工程)。次いで、剥離性基材10を剥離することによって露出した接着剤層2に、半導体ウェハWを接着剤層2の中央部に同心状に貼付する(半導体ウェハ貼付工程)。これにより、接着剤層2の周縁が全体にわたって半導体ウェハWの外側に10mmよりも大きくはみ出ることになる。なお、接着剤層2の周縁は、全体にわたって半導体ウェハの外側から10mmよりも大きくはみ出ることが特に好ましいが、切削水が当たり易い方向において10mmよりも大きくはみ出ていれば、必ずしも全体にわたって10mmよりも大きくはみ出ている必要はない。次いで、接着剤層2の周縁の外側で、粘着剤層3bにウェハリングRを貼付する(ウェハリング貼付工程)。
【0046】
具体的には、まず、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム1を繰出装置11から送り出しローラー13によって送り出し、分離板15によって剥離性基材10を剥離する。これにより、接着剤層2、粘着剤層3b、及び基材フィルム3aを剥離性基材10から分離する。分離した接着剤層2、粘着剤層3b、及び基材フィルム3aを、押し付けローラー14によって、ステージS上の半導体ウェハW及びウェハリングRに押し付ける。このようにして、
図7に示すように、接着剤層2に半導体ウェハWを貼付し、粘着剤層3bにウェハリングRを貼付する。なお、剥離された剥離性基材10は、巻き取りローラー16によって巻取装置12へ巻き取られる。
【0047】
続いて、
図8に示すように、接着剤層2に貼付された半導体ウェハWをダイシングし、個片化された複数の半導体チップW1を得る(チップ化工程)。ダイシングでは、ダイシングブレード30及び半導体ウェハW上に、ダイシング装置の切削水供給ノズル40から切削水を吹き付ける。切削水によって、半導体ウェハWとダイシングブレード30との間の摩擦熱が冷却されるとともに、半導体ウェハWの切り屑などが洗浄・除去される。
【0048】
このダイシングの際に、切削水として標準装備されているブレードクーラー、シャワー、スプレーのそれぞれの供給圧力を0.2MPa〜0.6MPa程度、流量を0.5L/分〜2.0L/分程度とする。
【0049】
その後、個片化された半導体チップW1をピックアップし、
図9に示すように接着剤層2aを間に介してダイパッド7上に搭載する(ダイボンディング工程)。そして、ダイパッド7上の半導体チップW1をリードフレームのリードに繋ぐ(ワイヤーボンディング工程)。最後に、半導体チップW1を搭載したリードフレームを樹脂などで成形する(モールド工程)。
【0050】
以上説明したように、この半導体チップの製造方法によれば、接着剤層2の直径α2と半導体ウェハWの直径との差が20mmよりも大きく35mmよりも小さくなっている。よって、上述したように、半導体ウェハWをダイシングブレード30でダイシングする際に、切削水が接着剤層2の周縁部Eに直接当たることが抑制される。従って、ダイシングにおける切削水の水圧に起因する接着剤層2の周縁部Eの剥離を抑制できる。よって、接着剤層2に起因する汚染の少ない半導体チップW1を得ることができる。
【0051】
以下、実施例1〜8及び比較例1〜2について説明するが、本発明は以下の実施例に限られるものではない。
(実施例1)
【0052】
実施例1では、75μm厚で直径が203mm(8インチ)のシリコンウェハ、直径が248mm以上のウェハリングを用いる例を示す。まず、基材フィルム上に粘着剤層が形成された300mm幅のダイシングフィルム(例えば、日立化成工業株式会社製SD−3001シリーズ)を準備した。また、剥離性基材上に接着剤層が形成されたダイボンディングフィルム(例えば、日立化成工業株式会社製FH−900シリーズ)を準備した。
【0053】
次いで、ダイボンディングフィルムの接着剤層の平面形状が直径223mmの円形となるように、接着剤層をプレカット(予め切断)した。この際、接着剤層の面積が、ダイシング対象であるシリコンウェハの面積よりも大きく、かつ粘着剤層及び基材フィルムの面積よりも小さくなるように、接着剤層をプレカットした。
【0054】
続いて、ダイシングフィルムの粘着剤層が形成された面を、剥離性基材及びプレカットされた接着剤層に貼り付けた。その後、基材フィルム及び粘着剤層の平面形状が直径270mmの円形となるように、基材フィルム及び粘着剤層をプレカット(予め切断)し、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを作製した。この際、円形の基材フィルム及び粘着剤層と、円形の接着剤層とが同心状となるようにした。
【0055】
次いで、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの剥離性基材を剥離して、露出した接着剤層にシリコンウェハをラミネートした。また、ウェハリングを粘着剤層に固着した。この状態で、シリコンウェハをダイシングブレード(例えば、株式会社ディスコ製のフルオートダイサーDFD−6361)を用いて切削水を吹き付けながらダイシングした。ダイシングは、厚さの異なる2枚のダイシングブレードを順次用いて加工するステップカット方式で行った。1枚目の厚いダイシングブレードとして、株式会社ディスコ製のダイシングブレードNBC−ZH204J−SE27HDDDを用い、2枚目の薄いダイシングブレードとして、株式会社ディスコ製のダイシングブレードNBC−ZH127F−SE 27HDBBを用いた。ブレード回転数は40,000rpmとし、切断速度は30mm/秒とした。また、シリコンウェハを切断する際のブレードの送りピッチ、すなわちダイシングを行う間隔を5mmとした。また、ダイシングの際に、切削水として標準装備されているブレードクーラー、シャワー、スプレーのそれぞれの供給圧力を0.4MPa程度とし、ブレードクーラー、シャワー、スプレーのそれぞれの流量を1.5L/分、1.0L/分、1.0L/分とした。
(実施例2〜8)
【0056】
実施例2〜8では、ダイボンディングフィルムの接着剤層の直径をそれぞれ225mm、228mm、230mm、233mm、235mm、238mm、240mmとした以外は、実施例1と同じ条件とした。
(比較例1)
【0057】
比較例1では、ダイボンディングフィルムの接着剤層の直径を220mmとした以外は、実施例1と同じ条件とした。
(実施例9〜16)
【0058】
実施例9では、75μm厚で直径が305mm(12インチ)のシリコンウェハ、直径が350mm以上のウェハリング、400mm幅のダイシングフィルムを用い、ダイボンディングフィルムの接着剤層の直径をそれぞれ325mm、327mm、330mm、332mm、335mm、337mm、340mm、342mmとした以外は、実施例1と同じ条件とした。
(比較例2)
【0059】
比較例2では、75μm厚で直径が305mm(12インチ)のシリコンウェハ、直径が350mm以上のウェハリング、400mm幅のダイシングフィルムを用い、ダイボンディングフィルムの接着剤層の直径を320mmとした以外は、実施例1と同じ条件とした。
(評価)
【0060】
評価方法として、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの接着剤層の端部が、ダイシング時の切削水によって、粘着剤層から剥がれた量を観測した。接着剤層の端部の剥離の有無は、目視によって確認した。その結果を表1及び表2に示す。表1及び表2では、シリコンウェハをダイシングブレードにより80ラインダイシングした時に剥離がなかったものを○、剥離したものを×とした。
【表1】
【表2】
【0061】
表1及び表2より、比較例1及び2では接着剤層の端部の剥離発生が見られたのに対し、実施例1〜16では接着剤層の端部の剥離発生が見られず、結果が良好であった。以上より、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの接着剤層の周縁部が、ダイシング時の切削水によって粘着剤層から剥がれないようにするためには、半導体ウェハを接着剤層の中央部に同心状に貼付する場合に、接着剤層の直径と半導体ウェハの直径との差を、20mmよりも大きくすればよいことがわかった。