(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流体を収容する空間と、前記空間の中で界面を形成している2種の流体と、前記空間に接する膜と、前記膜の前記空間と接する側とは反対側に配置された第一の電極と、前記2種の流体の一方と接する第二の電極と、を備えるエレクトロウェッティング装置であって、
前記膜が、エーテル性酸素原子を環構造内に1個有する含フッ素脂肪族環構造を含む構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマー(A)と、エーテル性酸素原子を環構造内に2個または3個有する含フッ素脂肪族環構造を含む構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマー(B)との混合物から構成される層(M)からなる単膜であるか、または前記層(M)が前記空間と接する側の最表層に配置されている多層膜であることを特徴とするエレクトロウェッティング装置。
前記含フッ素ポリマー(A)および前記含フッ素ポリマー(B)が、それぞれ、前記各含フッ素脂肪族環を主鎖に含む含フッ素ポリマーである、請求項1に記載のエレクトロウェッティング装置。
前記層(M)中の前記含フッ素ポリマー(A)と前記含フッ素ポリマー(B)との質量比(A/B)が、10/90〜99/1である、請求項1または2に記載のエレクトロウェッティング装置。
前記含フッ素ポリマー(A)における含フッ素脂肪族環構造を含む構成単位が、エーテル性酸素原子を1個有するペルフルオロジエンを環化重合して得られる構成単位である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のエレクトロウェッティング装置。
前記層(A)を構成する含フッ素ポリマー(A)が、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基およびアミノアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する含フッ素ポリマー(AC)である、請求項6に記載のエレクトロウェッティング装置。
前記含フッ素ポリマー(B)における含フッ素脂肪族環構造を含む構成単位が、環を構成する原子として酸素原子を2個有し、環を構成する炭素原子の少なくとも1個が重合性二重結合を構成する炭素原子である、含フッ素脂肪族環構造を含む単量体を重合して得られる構成単位である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のエレクトロウェッティング装置。
前記式(b1)で表される含フッ素化合物がペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)であり、前記式(b2)で表される含フッ素化合物がペルフルオロ(2−メチレン−1,3−ジオキソラン)またはペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)である、請求項10に記載のエレクトロウェッティング装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書においては、式(a)で表される化合物を化合物(a)、式(A)で表される構成単位を構成単位(A)とも記す。他の式で表される化合物と構成単位も同様に示す。
本明細書において、「脂肪族環構造」とは、芳香族性を有さない飽和または不飽和の環構造を意味する。
「含フッ素脂肪族環構造」とは、環の主骨格を構成する炭素原子の少なくとも一部に、フッ素原子またはフッ素含有基が結合している脂肪族環構造を意味する。フッ素含有基としては、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、=CF
2等が挙げられる。
「エーテル性酸素原子」とは、炭素−炭素原子間に1個有する酸素原子(−C−O−C−)である。
「エーテル性酸素原子を環構造内に2個または3個有する含フッ素脂肪族環構造」とは、2個または3個のエーテル性酸素原子が、少なくとも1個の炭素原子を介して結合され、環を構成している含フッ素脂肪族環構造を意味する。
「ペルフルオロジエン」は、エーテル性酸素原子を有してもよい、2個の重合性二重結合を有する鎖状のペルフルオロ化合物である。
「化合物に由来する構成単位」とは、化合物(単量体)の重合により形成された構成単位を意味する。
【0015】
本発明において「含フッ素脂肪族環構造を主鎖に含む」含フッ素ポリマーとは、炭素原子の連鎖からなるポリマーの主鎖において、含フッ素脂肪族環の環を構成する炭素原子の少なくとも1個が主鎖を構成する炭素原子である、含フッ素ポリマーであることを意味する。
【0016】
[エレクトロウェッティング装置]
本発明のエレクトロウェッティング装置(以下、単に「EW装置」ということがある。)は、流体を収容する空間と、前記空間の中で界面を形成している2種の流体と、前記空間に接する膜と、前記膜の前記空間と接する側とは反対側に配置された第一の電極と、前記2種の流体の一方と接する第二の電極と、を備え、
前記膜が、エーテル性酸素原子を環構造内に1個有する含フッ素脂肪族環構造を含む構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマー(A)と、エーテル性酸素原子を環構造内に2個または3個有する含フッ素脂肪族環構造を含む構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマー(B)との混合物から構成される層(M)からなる単膜であるか、または前記層(M)が前記空間と接する側の最表層に配置されている多層膜であることを特徴とする。
【0017】
本発明のEW装置の構成を、図面を参照し実施形態例を示して説明する。
図1〜2に、本発明のEW装置の一実施形態を示す。本実施形態は、2種の流体の一方(第一の流体1)に透明な電気伝導性の水性液体、他方(第二の流体2)に着色された非電気伝導性の油性液体を使用した例である。
図1〜2は、本実施形態のEW装置10の概略断面図である。ここで、
図1は、EW装置10において、第一の電極4と第二の電極7との間に電圧を印加していない状態(オフ状態)を示す。
図2は、EW装置10において、第一の電極4と第二の電極7との間に電圧を印加している状態(オン状態)を示す。
本実施形態のEW装置10は、基板3と、基板3の片面上に設けられた透明な第一の電極4と、第一の電極4の上に設けられた透明な膜5と、膜5の上に設けられた空間6と、空間6内に設けられた第二の電極7とを備える。空間6には第一の流体1および第二の流体2が収容されており、第二の電極7は第一の流体1に接している。
「透明」とは、可視光領域(300〜800nm)の光を透過し得ることを意味する。可視光領域の光透過率は80〜100%が好ましく、90〜100%が特に好ましい。
【0018】
EW装置10においては、オフ状態では、
図1に示すように、第二の流体2が、第一の流体1と膜5との間で連続した膜を形成する。これは、第二の流体2の方が第一の流体1よりも表面張力が低く、この状態が系のエネルギー状態の中で最も低いレベルに対応することによる。
オフ状態からオン状態に切り替えて膜5の上で電位差を生じるようにすると、第一の流体1が膜5に引き寄せられて膜5に接触し、系のエネルギーレベルが低下する。また、第一の流体1に押されて第二の流体2が横方向(膜5の表面に対して平行方向、図示右側)に移動し、膜5の表面上における第二の流体2が占める割合が減少する。第二の流体2が占める割合が充分に小さければ、膜5を上方(膜5の表面に対して垂直方向、図示上側)から見たときに、第二の流体2の色は見えなくなる。
したがって、オフ状態とオン状態とを切り替えることで、第二の流体2の色が見える状態と見えない状態とを切り替えることができる。
なお、第二の流体2がどこまで移動するかは、電圧を印加することで与えられる電場の強さと、第一の流体と第二の流体との界面張力(第一の流体の表面張力と第二の流体との表面張力の差)の間のバランスによって決まる。
EW装置において、第一の電極4と第二の電極7との間に印加される電圧は、通常、100〜300V程度である。
【0019】
第一の流体1として用いられる水性液体としては、水、水と水溶性有機溶剤との混合溶剤、これらに電解質等の添加剤を溶解させた水性溶液等が挙げられる。水溶性有機溶剤としては、水と混合したときに均一な溶液となるものであればよく、たとえばアルコール等が挙げられる。
第二の流体2として用いられる油性液体としては、炭素数10〜17の飽和炭化水素(アルカン、シクロアルカン等)、シリコーン油等が挙げられる。
油性液体の着色に用いられる着色剤としては、特に限定されず、所望の色調等を考慮して公知の顔料、染料等のなかから適宜選択できる。
第一の流体1および第二の流体2は通常、重力や慣性の影響を受けないように、密度がほぼ同等のものが用いられる。
【0020】
基板3を構成する材料としては、絶縁材料が好ましい。該絶縁材料の抵抗値としては体積固有抵抗値で10
10Ωcm以上が好ましく、10
12Ωcm以上が特に好ましい。
基板3を構成する絶縁材料は、透明であってもよく、透明でなくてもよい。
基板3が透明である場合、第一の電極4および膜5が透明であるため、基板3の外側(第一の電極4が設けられている側とは反対側、図示下側)からの光が基板3、第一の電極4、膜5を透過して空間6に入射するため、当該EW装置10を、透過型の表示装置、レンズ等に利用できる。
基板3が透明でない(たとえば白色)場合、第一の電極4および膜5が透明であるため、空間6の上方(膜5が設けられている側とは反対側、図示上側)からの光が膜5、第一の電極4を透過し基板3で反射されるため、当該EW装置10を、反射型の表示装置等に利用できる。
透明な絶縁材料として具体的には、ガラス、セラミックス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエーテルスルフォン等の有機高分子材料等が挙げられる。これらのなかでもガラスが好ましい。
透明ではない絶縁材料としては、前記絶縁材料に着色剤、光散乱剤等の添加剤を配合したものが挙げられる。たとえば絶縁材料として透明な樹脂を用い、該樹脂と屈折率が異なる材料からなる光散乱剤を配合すると、該基板3に入射した光が散乱して、空間6の上方(図示上側)から視認した際に背景(第二の流体2が存在しない部分)が白く見える。
基板3は、単一の層からなるものであってもよく、複数の層からなるものであってもよい。たとえば前記添加剤が配合された層と、配合されていない層とが積層された積層体であってもよい。
【0021】
第一の電極4、第二の電極7はそれぞれ、導電性材料から構成される。
導電性材料の抵抗値としては、体積固有抵抗値で0.1Ωcm以下が好ましく、0.01Ωcm以下が特に好ましい。
導電性材料としては、特に限定されず、電極の材料として用いられている公知の材料が使用できる。具体的には、金、銀、銅、ニッケル、クロム、アルミニウム、チタン、タングステン、モリブデン、錫、コバルト、パラジウム、白金、これらのうちの少なくとも1種を主成分とする合金等の金属;ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化スズ等の金属酸化物;ポリアニリン、ポリピロール、PEDOT/PSS、カーボンナノチューブ等から成る有機導電材料等が挙げられる。これらの中でも、第一の電極4を構成する導電性材料としては、透明性に優れる金属酸化物が好ましく、ITO(Indium Tin Oxide)が特に好ましい。
第一の電極4、第二の電極7はそれぞれ、単一の層からなるものであってもよく、複数の層からなるものであってもよく、組成に分布のある構造を形成していてもよい。
第一の電極4は、基板3の表面全体を被覆する薄膜(ベタ膜)であってもよく、該薄膜にパターニングを施したパターン膜であってもよい。パターン膜である場合、基板3と膜5が一部直接接触する。
【0022】
膜5は、エーテル性酸素原子を環構造内に1個有する含フッ素脂肪族環構造を含む構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマー(A)と、エーテル性酸素原子を環構造内に2個または3個有する含フッ素脂肪族環構造を含む構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマー(B)との混合物から構成される層(M)からなる単膜であるか、または層(M)が空間6と接する側の最表層に配置されている多層膜である。
含フッ素ポリマー(A)は膜強度、耐久性に優れるが撥水性に劣る。含フッ素ポリマー(B)は、撥水性に優れるが強度、耐久性に劣る。膜5をこれらの混合物で構成した場合、一般的には、撥水性、膜強度、耐久性はそれぞれ含フッ素ポリマー(A)、(B)の中間的な値になると予測されるが、意外にも、それぞれの利点を損なうことなく欠点が補われ、撥水性、膜強度、耐久性の全てが充分に満足できるものとなる。
層(M)に含まれる含フッ素ポリマー(A)、(B)はそれぞれ1種でも2種以上でもよい。
【0023】
含フッ素ポリマー(A)、(B)についてはそれぞれ後で詳細に説明するが、層(M)は、含フッ素ポリマー(A)として、後述の官能基を有しない含フッ素ポリマー(A
F)を含むことが好ましい。含フッ素ポリマー(A
F)は、官能基を有しないことから、該官能基を有する場合に比べてより高い撥水性が得られる。
含フッ素ポリマー(A
F)は、たとえば、式(a1)で表されるペルフルオロジエンを環化重合させることにより得られる。また、旭硝子社製のサイトップS(商品名)等の市販品が利用できる。
層(M)に含まれる含フッ素ポリマー(A
F)は1種でも2種以上でもよい。
【0024】
層(M)中、含フッ素ポリマー(A)と含フッ素ポリマー(B)との質量比(A/B)は、10/90〜99/1が好ましく、10/90〜97/3がより好ましく、10/90〜95/5がさらに好ましく、30/70〜95/5が特に好ましい。A/Bが上記範囲の上限値以下であれば、撥水性に優れる。一方、A/Bが上記範囲の下限値以上であれば、膜強度や耐久性が優れる。
【0025】
膜5が多層膜である場合、膜5が有する層(M)は1層でも複数層でもよい。たとえば層(M)として、含フッ素ポリマー(A)の種類、含フッ素ポリマー(B)の種類、それらの質量比(A/B)の少なくとも1つが異なる複数の層を有してもよい。ただし少なくとも空間6と接する側の最表層には層(M)が配置される。
膜5中の層(M)の数は、生産性および平坦性の点からは、1〜2が好ましく、1が特に好ましい。
層(M)の1層の膜厚は0.1〜3μmが好ましく、0.1〜2μmが特に好ましい。上記範囲の下限値以上であると膜の撥水性に優れ、上記範囲の上限値以下であると生産性および平坦性に優れる。
層(M)の合計膜厚は0.1〜3μmが好ましく、0.1〜2μmが特に好ましい。上記範囲の下限値以上であると膜の撥水性に優れ、上記範囲の上限値以下であると生産性および平坦性に優れる。
【0026】
膜5が多層膜である場合、膜5は、層(M)に加えてさらに、層(M)と基板3や第一の電極4との間の密着性を向上させる層(密着性向上層)を含むことが好ましい。
密着性向上層としては、たとえば、含フッ素ポリマー(A)で構成される層(A)、シランカップリング剤層等が挙げられる。
これらのうち、層(A)は、含フッ素ポリマー(A)を含むことから層(M)に対する密着性が良好である。また、含フッ素ポリマー(B)を含まないことから層(M)に比べて柔軟である。そのため、層(A)を設けることで、層(M)の脱離等の不具合が生じにくくなり、膜強度がさらに優れる。
【0027】
膜5が有する層(A)は1層でも複数層でもよい。たとえば層(A)として、含フッ素ポリマー(A)の種類が異なる複数の層を有してもよい。
膜5中の層(A)の数は、生産性および平坦性の点からは、1〜2が好ましく、1または2が特に好ましい。
層(A)の1層の膜厚は、0.2〜3μmが好ましく、0.2〜2μmが特に好ましい。上記範囲の下限値以上であると密着性および膜強度に優れ、上記範囲の上限値以下であると生産性および平坦性に優れる。
層(A)の合計膜厚は、0.2〜3μmが好ましく、0.2〜2μmが特に好ましい。上記範囲の下限値以上であると密着性および膜強度に優れ、上記範囲の上限値以下であると生産性および平坦性に優れる。
膜5が層(A)を有する場合、膜5における層(M)の合計膜厚は、層(A)の合計膜厚の150%以下が好ましく、100%以下が特に好ましい。層(M)の合計膜厚を、上記範囲の上限値以下とすることにより、密着性および膜強度がさらに優れる。下限は特に限定されないが、撥水性および耐久性の点で、層(A)の合計膜厚の5%以上が好ましく、10%以上が特に好ましい。
【0028】
層(A)としては、後述の官能基を有する含フッ素ポリマー(A)である含フッ素ポリマー(A
C)から構成される層(A
C)が好ましい。含フッ素ポリマー(A
C)としては、エーテル性酸素原子を1個有するペルフルオロジエンを環化重合して得られる構成単位を主成分として含み、かつカルボキシ基を有する含フッ素ポリマーが特に好ましい。なお、カルボキシ基は、塩を形成していてもよい。
層(A
C)が官能基を有する含フッ素ポリマー(A)からなることより、基板3や第一の電極4に対する密着性に優れる。そのため、層(M)と基板3や第一の電極4との間の密着性が高く、膜強度、耐久性等がさらに優れる。
この場合、膜中における層(A)は、層(A
C)のみから構成されてもよい。さらに、膜が複数の層(A)を含む場合は、層(A
C)と、含フッ素ポリマー(A
C)以外の含フッ素ポリマー(A)で構成される層とを含んでいてもよい。ただし、層(A
C)は、層(A)のなかで最も第一の電極4側に配置することが好ましい。
含フッ素ポリマー(A
C)は、たとえば、後述する含フッ素ポリマー(A)の説明で挙げる、官能基を導入する方法により得ることができる。また、旭硝子社製のサイトップA(商品名)等の市販品が利用できる。
層(A
C)に含まれる含フッ素ポリマー(A
C)は1種でも2種以上でもよい。
【0029】
膜が複数の層(A)を含む場合、該膜は層(A
C)と前記含フッ素ポリマー(A
F)から構成される層(A
F)とを含むことが好ましい。この場合、層(A
F)は、層(A
C)と層(M)との間に配置されていることが好ましい。
層(A
F)は、後述の官能基を有しないことから、該基を有する層(A
C)に比べて撥水性が高く、層(M)に対する密着性に優れる。そのため、層(A
F)を設けることで、層(A
C)と層(M)との間の密着性、ひいては基板3や第一の電極4と層(M)との間の密着性がさらに優れ、膜強度、耐久性等がさらに優れる。
この場合、膜中の層(A)は、層(A
C)および層(A
F)のみから構成されてもよい。さらに、膜は、これら2層と、含フッ素ポリマー(A
C)および含フッ素ポリマー(A
F)以外の含フッ素ポリマー(A)で構成される他の層とを含んでもよい。
層(A
F)に含まれる含フッ素ポリマー(A
F)は1種でも2種以上でもよい。また、層(M)が含フッ素ポリマー(A
F)を含む場合、層(M)に含まれる含フッ素ポリマー(A
F)と層(A
F)に含まれる含フッ素ポリマー(A
F)は同じでも異なってもよい。
【0030】
層(A)は、含フッ素ポリマー(A
C)と含フッ素ポリマー(A
F)との混合物から構成される層(A
CF)であることも好ましい。
層(A
CF)は、上述した層(A
C)の機能と層(A
F)の機能を併せ持つ。
この場合、層(A)は、層(A
CF)のみから構成されてもよい。さらに、膜が複数の層(A)を含む場合、層(A
C)、層(A
F)のいずれか一方または両方と層(A
CF)とを含んでいてもよく、含フッ素ポリマー(A
C)および含フッ素ポリマー(A
F)以外の含フッ素ポリマー(A)で構成される他の層と層(A
CF)とを含んでいてもよい。
【0031】
層(M)、層(A)(層(A
C)、層(A
F)、層(A
CF)等)はそれぞれ、対応する含フッ素ポリマーとシランカップリング剤とを含む組成物から形成されたものでもよい。これにより、密着性および耐久性がさらに優れる。
この場合、シランカップリング剤は、組成物中に含まれる含フッ素ポリマーと反応して複合体を形成していてもよい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、公知のものが利用できる。特に、当該層に含まれる含フッ素ポリマーまたは隣接する層に含まれる含フッ素ポリマーと反応して複合体を形成し得るものが好ましい。たとえば、当該層が含フッ素ポリマー(A
C)を含有するか、または隣接する層が含フッ素ポリマー(A
C)を含有する場合は、含フッ素ポリマー(A
C)が有する官能基(カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノアルキル基等)と反応する反応性官能基を有するものが好ましい。たとえばカルボキシ基と反応する反応性官能基としては、アミノ基、エポキシ基、アクリル基等が挙げられる。これらのなかでもアミノ基が好ましい。すなわち、シランカップリング剤としては、アミノ基を有するシランカップリング剤(以下、「アミノシランカップリング剤」という。)が好ましい。アミノシランカップリング剤が有するアミノ基の数は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。
【0032】
アミノシランカップリング剤としては、たとえば、以下の化合物が挙げられる。
3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類、
3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類。
【0033】
また、下記化合物(s1)、化合物(s2)等の芳香族アミン構造を有するシランカップリング剤も挙げられる。
ArSi(OR
1)(OR
2)(OR
3) …(s1)
ArSiR
4(OR
1)(OR
2) …(s2)
式中、R
1〜R
4は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基またはアリール基を表し、Arはp−、m−またはo−アミノフェニル基を表す。
【0034】
化合物(s1)および化合物(s2)の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリプロポキシシラン、アミノフェニルトリイソプロポキシシラン、アミノフェニルメチルジメトキシシラン、アミノフェニルメチルジエトキシシラン、アミノフェニルメチルジプロポキシシラン、アミノフェニルメチルジイソプロポキシシラン、アミノフェニルフェニルジメトキシシラン、アミノフェニルフェニルジエトキシシラン、アミノフェニルフェニルジプロポキシシラン、アミノフェニルフェニルジイソプロポキシシラン等。
【0035】
また、これらのアミノシランカップリング剤の部分加水縮合物を使用することも好ましい。
また、これらのアミノシランカップリング剤と、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランとの共部分加水縮合物を使用することも好ましい。
【0036】
入手の容易性等を考慮すると、特に好ましいアミノシランカップリング剤は、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランおよびアミノフェニルトリメトキシシランからなる群から選ばれる1種以上である。
【0037】
シランカップリング剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
含フッ素ポリマーとシランカップリング剤とを含む組成物におけるシランカップリング剤の含有量は、含フッ素ポリマーとシランカップリング剤との合計量に対して、0.1〜10質量%が好ましく、1〜3質量%が特に好ましい。上記範囲の下限値以上であると、密着性がさらに優れる。上記範囲の上限値以下であると、含フッ素ポリマーとシランカップリング剤とを含む組成物の貯蔵安定性が良好である。
【0038】
膜5は、層(M)および層(A)以外の他の層(以下、「層(C)」ともいう。)を含んでもよい。
層(C)としては、たとえば、前記含フッ素ポリマー(B)で構成される層、シランカップリング剤層等が挙げられる。
本発明においては特に、膜5が、基板3側(第一の電極4側)の最表層に、シランカップリング剤層を有することが好ましい。これにより、膜5の基板3または第一の電極4に対する密着性がさらに優れる。かかる効果は、シランカップリング剤層に隣接する層が含フッ素ポリマー(A
C)を含む場合に顕著である。そのため、膜5中のシランカップリング剤層に接する層は、層(A
C)、層(A
CF)、または含フッ素ポリマー(A)として含フッ素ポリマー(A
C)を含む層(M)であることが好ましい。
シランカップリング剤層の形成に用いられるシランカップリング剤は、上記と同様のものが挙げられる。
シランカップリング剤層の厚さは、密着性および透明性の点から、1〜100nmが好ましく、1〜50nmが特に好ましい。
【0039】
膜5の好ましい形態としては、以下の(1)〜(8)等が挙げられる。
(1)層(M)からなる単膜。
(2)空間6側から順に、層(M)、層(A
C)が直接積層した2層膜。
(3)空間6側から順に、層(M)、層(A
F)、層(A
C)が直接積層した3層膜。
(4)空間6側から順に、層(M)、層(A
CF)が直接積層した2層膜。
(5)空間6側から順に、層(M)、シランカップリング剤層が直接積層した2層膜。
(6)空間6側から順に、層(M)、膜(A
C)、シランカップリング剤層が直接積層した3層膜。
(7)空間6側から順に、層(M)、層(A
F)、層(A
C)、シランカップリング剤層が直接積層した4層膜。
(8)空間6側から順に、層(M)、層(A
CF)、シランカップリング剤層が直接積層した3層膜。
これらの形態において、層(M)、層(A
F)、層(A
C)、層(A
CF)はそれぞれ、対応する含フッ素ポリマーとシランカップリング剤とを含む組成物から形成されてもよい。
膜5の形態としては、上記の中でも、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)が好ましく、(5)、(6)、(7)、(8)が特に好ましい。
【0040】
膜5の膜厚(全体の膜厚)は、単膜である場合は、0.1〜3μmが好ましく、0.1〜2μmが特に好ましい。多層膜である場合は、0.2〜6μmが好ましく、0.2〜4μmが特に好ましい。上記範囲の下限値以上であると撥水性に優れ、上記範囲の上限値以下であると生産性および平坦性に優れる。
【0041】
<含フッ素ポリマー(A)>
含フッ素ポリマー(A)は、エーテル性酸素原子を環構造内に1個有する含フッ素脂肪族環構造を含む構成単位(以下、「構成単位(A1)」ともいう。)を主成分として含む。
含フッ素ポリマー(A)は、構成単位(A1)を主成分として含むことから、膜強度、水等に対する耐久性、柔軟性等に優れる。また、非晶質性のポリマーであることから、透明性が高い。
含フッ素ポリマー(A)は、含フッ素脂肪族環を主鎖に含む含フッ素ポリマーであることが好ましい。ペルフルオロジエンを環化重合して得られる構成単位においては、重合性二重結合を構成する合計4個の炭素原子のうち少なくとも2個の炭素原子と重合性二重結合間の原子(ただし、分岐部の原子を除く。)が脂肪族環を構成し、しかも重合性二重結合を構成する合計4個の炭素原子のうち少なくとも2個の炭素原子がポリマーの主鎖を構成する炭素原子となる。
ペルフルオロジエンとしては、重合性二重結合間に(ただし、分岐部を除く。)1または2個のエーテル性酸素原子を有するペルフルオロジエンが好ましく、特に1個のエーテル性酸素原子を有するペルフルオロジエンが好ましい。すなわち、構成単位(A1)としては、エーテル性酸素原子を1個有するペルフルオロジエンを環化重合して得られる構成単位が好ましい。
【0042】
前記エーテル性酸素原子を1個有するペルフルオロジエンとしては、膜強度および耐久性の点で、下記化合物(a1)が好ましい。
化合物(a1)を環化重合すると、下記構成単位(A1−1)〜(A1−4)等が形成される。環化重合では5員の脂肪族環が生成しやすく、したがって、nが1の場合は構成単位(A1−1)が生成しやすく、nが0の場合は構成単位(A1−2)または(A1−3)が生成しやすい。たとえば、nが1の化合物(a1)を環化重合すると、通常、構成単位(A1−1)のみからなるポリマー、または構成単位(A1−1)を主とし構成単位(A1−2)〜(A1−4)の少なくとも1種を含むポリマーが生成しやすい。
なお、下記式(a11)は、前記式(a1)におけるペルフルオロジエンの重合性二重結合を構成する4個の炭素原子をC
a、C
b、C
c、C
dで示したものである。ペルフルオロジエンの該炭素原子に対応する構成単位(A1−1)〜(A1−4)の炭素原子も同様にC
a、C
b、C
c、C
dで示す。
【0045】
式(a1)および式(A1−1)〜(A1−4)中、W
6はフッ素原子または炭素数1〜3のペルフルオロアルキル基を表す。耐久性の点からは、W
6がフッ素原子であることが好ましい。撥水性の点からは、W
6が炭素数1〜3のペルフルオロアルキル基であることが好ましい。nは0または1である。
式(A1−1)〜(A1−3)中のC
a〜C
dの4個の炭素原子は環を構成する炭素原子であると同時にポリマーの主鎖を構成する炭素原子である。また、式(A1−4)中のC
aとC
dの2個の炭素原子は環を構成する炭素原子であると同時にポリマーの主鎖を構成する炭素原子である。
化合物(a1)の具体例としては、下記化合物(a1−1)〜(a1−3)等が挙げられる。これらの中でも、膜強度および耐久性の点で、化合物(a1−1)、すなわちペルフルオロ(3−ブテニルビニルエーテル)が特に好ましい。
【0047】
ペルフルオロジエンとしては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
含フッ素ポリマー(A)は、構成単位(A1)を主成分として含む。
ここで「主成分として含む」とは、含フッ素ポリマー(A)中の構成単位(A1)の割合、つまり含フッ素ポリマー(A)を構成する全構成単位中に占める構成単位(A1)の割合が80モル%以上であることを示す。
含フッ素ポリマー(A)中の構成単位(A1)の割合は、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、100モル%が特に好ましい。上記下限値以上であると、透明性の点で好ましい。含フッ素ポリマー(A)は、単位(A1)のみからなることが特に好ましい。
【0048】
含フッ素ポリマー(A)は、構成単位(A1)以外の構成単位(以下、「単位(A2)」ともいう。)を含んでいてもよい。構成単位(A2)は、エーテル性酸素原子を1個有するペルフルオロジエンと共重合可能な化合物(以下、「化合物(a2)」ともいう。)に由来する構成単位であればよい。
ただし、構成単位(A2)の割合は、含フッ素ポリマー(A)の全構成単位中、20モル%以下であり、0〜20モル%が好ましく、0〜10モル%が特に好ましい。
【0049】
構成単位(A2)は、透明性および膜強度の点で、下式(a2−1)で表される含フッ素化合物(以下、「化合物(a2−1)」ともいう。)に由来する構成単位(以下、「構成単位(A2−1)」ともいう。)を含むことが好ましい。
構成単位(A2−1)は、下式(A2−1)で表される。
【0052】
式(a2−1)および式(A2−1)中、X
1はフッ素原子、炭素数1〜8のペルフルオロアルキル基、または炭素数1〜8のペルフルオロアルコキシ基を表す。
化合物(a2−1)の具体例としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)等が挙げられる。
【0053】
含フッ素ポリマー(A)は、官能基を有していてもよい。前記含フッ素ポリマー(A
C)はこの官能基を有する含フッ素ポリマー(A)である。官能基としては、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノアルキル基、ハルゲノカルボニル基、1分子中の2つのカルボキシ基が脱水縮合した酸無水物基、ヒドロキシ基、スルホ基、エポキシ基、シアノ基、カーボネート基、イソシアナート基、アミド基、アルデヒド基、アミノ基、加水分解性シリル基、炭素−炭素二重結合、アルコキシ基およびアシル基等が挙げられる。
加水分解性シリル基とは、ケイ素原子にアルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が結合してなる基であり、加水分解によりシロキサン結合を形成することにより架橋し得る基である。
アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
アミノアルキル基としては、アミノエチル基、アミノプロピル基等が挙げられる。
含フッ素ポリマー(A)が官能基を有する場合、官能基は、主鎖の末端に存在してもよく、側鎖部分、つまり構成単位中に存在してもよい。
含フッ素ポリマー(A)が有する官能基は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
官能基としては、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基およびアミノアルキル基からなる群から選ばれる官能基が好ましく、カルボキシ基が特に好ましい。
【0054】
含フッ素ポリマー(A
C)としては、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基およびアミノアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する含フッ素ポリマー(A)が好ましく、カルボキシ基を有する含フッ素ポリマー(A)が特に好ましい。
【0055】
官能基の導入方法としては、たとえば、下記方法(i)〜(iv)が挙げられる。
(i)重合開始剤を用いて重合を行い、生成する不安定末端基を熱処理等により分解し、末端にカルボニルフルオリド基(−CF=O基)を生成させる。また、該基に後処理を施すことによって、主鎖の末端に他の官能基を導入できる。具体的には、カルボニルフルオリド基を加水分解するとカルボキシ基に変換できる。また、アルコールを作用させるとアルコキシカルボニル基に変換できる。
(ii)官能基を有する単量体を共重合させることにより、側鎖部分に官能基を導入する。
(iii)重合の際に、官能基を有する重合開始剤、連鎖移動剤等を用いることによって、主鎖の末端に官能基を導入する。
(iv)含フッ素ポリマーに、官能基およびグラフト化が可能な官能基(不飽和結合等)を有する化合物(グラフト性化合物)をグラフトさせる。
方法(i)〜(iv)は、2種以上を組み合わせてもよい。
含フッ素ポリマーにカルボキシ基を導入する場合、導入方法としては方法(i)が好ましい。
【0056】
含フッ素ポリマー(A)は、前記官能基を有していなくてもよい。前記含フッ素ポリマー(A
F)は官能基を有しない含フッ素ポリマー(A)である。官能基を有しない含フッ素ポリマー(A
F)は、ポリマー中の不安定末端基を安定な末端基に変換する方法、ポリマー中の官能基を不活性な基に変換する方法等で製造することができる。特に前記官能基を有しない重合開始剤や連鎖移動剤を使用して重合しかつ不安定末端基を生成した場合は、該不安定末端基を安定な末端基に変換して、含フッ素ポリマー(A
F)を得ることが好ましい。
【0057】
含フッ素ポリマー(A)の質量平均分子量(Mw)は、50,000〜1,000,000が好ましく、50,000〜500,000が特に好ましい。上記範囲の下限値以上であると膜5の膜強度が良好になり、上記範囲の上限値以下であると、膜5の含フッ素溶媒への溶解性が良好となり製造性に優れる。
含フッ素ポリマー(A)のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定される値である。あるいは、流下式の粘度管を用いた固有粘度法により固有粘度値から推測する。
【0058】
含フッ素ポリマー(A)は、公知の方法により合成できる。たとえば化合物(a1)を単独重合させることにより合成することができる。重合方法としてはラジカル重合が用いられる。すなわち、重合の手段は、ラジカル的に重合が進行するものであれば何等制限されず、たとえば、有機または無機のラジカル開始剤、光、電離放射線または熱による重合等を挙げることができる。重合の方法もバルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等を用いることができる。
【0059】
<含フッ素ポリマー(B)>
含フッ素ポリマー(B)は、エーテル性酸素原子を環構造内に2個または3個有する含フッ素脂肪族環構造を含む構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマーである。
含フッ素ポリマー(B)は、上記含フッ素脂肪族環構造を有することから、膜強度および柔軟性に優れる。また、非晶質性のポリマーであることから、透明性が高い。含フッ素ポリマー(B)は、上記含フッ素脂肪族環構造を含む含フッ素化合物を重合することにより得られる。含フッ素ポリマー(B)は、前記含フッ素ポリマー(A)と比較して、柔軟性に乏しい。
また、含フッ素脂肪族環としては、ペルフルオロ脂肪族環が好ましい。
含フッ素脂肪族環の環骨格を構成する原子の数は、4〜7個が好ましく、5〜6個であることが特に好ましい。すなわち、含フッ素脂肪族環は4〜7員環であることが好ましく、5〜6員環であることが特に好ましい。
含フッ素脂肪族環としては、環構造内に2個のエーテル性酸素原子を含む脂肪族環であるジオキソール構造またはジオキソラン構造の含フッ素脂肪族環が好ましい。
【0060】
含フッ素ポリマー(B)としては、エーテル性酸素原子を環構造内に2個または3個有する含フッ素脂肪族環構造および重合性二重結合を有する含フッ素化合物に由来する構成単位を含むものが好ましい。
該含フッ素化合物において、重合性二重結合を構成する2つの炭素原子は、いずれも環構造内に含まれるか、または1つが環構造内に含まれ、他方が環構造に含まれないことが好ましい。これら重合性二重結合を構成する2個の炭素原子はポリマーの主鎖を構成する炭素原子となる。したがって、環内に重合性二重結合を有する含フッ素化合物に由来する構成単位においては、環を構成する隣接する2個の炭素原子が同時にポリマーの主鎖を構成する炭素原子であり、環を構成する炭素原子と環外の炭素原子との間に重合性二重結合を有する含フッ素化合物に由来する構成単位においては、環を構成する1個の炭素原子が同時にポリマーの主鎖を構成する炭素原子である。
該含フッ素化合物としては、エーテル性酸素原子を環構造内に2個有する含フッ素脂肪族環構造を有する化合物が好ましく、ジオキソール構造またはジオキソラン構造を有する化合物が特に好ましい。
【0061】
含フッ素ポリマー(B)は、撥水性の点で、下式(b1)で表される含フッ素化合物(以下、「化合物(b1)」ともいう。)に由来する構成単位(以下、「構成単位(B1)」ともいう。)および下式(b2)で表される含フッ素化合物(以下、「化合物(b2)」ともいう。)に由来する構成単位(以下、「構成単位(B2)」ともいう。)から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。構成単位(B1)および(B2)は、片方を含んでいても両方を含んでいてもよい。
構成単位(B1)、(B2)は、それぞれ、下式(B1)、(B2)で表される。
なお、下記式(b11)は、前記式(b1)における重合性二重結合を構成する2個の炭素原子をC
e、C
fで示し、下記式(b21)は、前記式(b2)における重合性二重結合を構成する2個の炭素原子をC
g、C
hで示で示したものである。下記式(B1)、(B2)においても式(b11)、式(b21)の炭素原子に対応する構成単位の炭素原子を同様にC
e、C
f、C
g、C
hで示す。
【0064】
式(b1)および式(B1)中、W
1はフッ素原子、炭素数1〜3のペルフルオロアルキル基、または炭素数1〜3のペルフルオロアルコキシ基である。
W
2およびW
3はそれぞれ独立に、フッ素原子、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜6のペルフルオロアルコキシ基、もしくはエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜6のペルフルオロアルキル基であるか、またはW
2とW
3とが相互に結合して、エーテル性酸素原子を有してもよい炭素数2〜6のペルフルオロアルキレン基を形成している。
W
2とW
3とが相互に結合している場合、W
2とW
3とそれらが結合した炭素原子とによって環状構造が形成される。該環状構造としては、エーテル性酸素原子を2個有する6員環が好ましい。
撥水性の点からは、W
2およびW
3のうち少なくとも1つが炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基であることが好ましい。
なお、式(B1)中のC
e、C
fの2個の炭素原子は環を構成する炭素原子であると同時にポリマーの主鎖を構成する炭素原子である。
【0065】
式(b2)および式(B2)中、W
4およびW
5はそれぞれ独立に、フッ素原子、炭素数1〜8のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜8のペルフルオロアルコキシ基、もしくはエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜8のペルフルオロアルキル基であるか、またはW
4とW
5とが相互に結合して、エーテル性酸素原子を有してもよい炭素数2〜6のペルフルオロアルキレン基を形成している。
W
4とW
5とが相互に結合している場合、W
4とW
5とそれらが結合した炭素原子とによって環状構造が形成される。該環状構造としては、エーテル性酸素原子を1個有する5員環、またはエーテル性酸素原子を含まない6員環が好ましい。
撥水性の点からは、W
4およびW
5のうち少なくとも1つが炭素数1〜8のペルフルオロアルキル基であることが好ましい。
なお、式(B2)中のC
gの炭素原子は環を構成する炭素原子であると同時にポリマーの主鎖を構成する炭素原子である。
【0066】
化合物(b1)の具体例としては、下式(b1−1)〜(b1−4)で表される化合物等が挙げられる。なかでも、下式(b1−1)で表される化合物、すなわちペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)が好ましい。
化合物(b1)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
化合物(b2)の具体例としては、下式(b2−1)で表されるペルフルオロ(2−メチレン−1,3−ジオキソラン)、下式(b2−2)で表されるペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)等が挙げられる。
化合物(b2)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
含フッ素ポリマー(B)は、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノアルキル基等の前記官能基を有しないことが好ましい。官能基を有しない含フッ素ポリマー(B)は、官能基を有する含フッ素ポリマー(B)に比べてより優れた撥水性を発現できる。
【0071】
含フッ素ポリマー(B)は、ホモポリマー、コポリマー、ホモポリマーとコポリマーとの混合物のいずれであってもよい。
含フッ素ポリマー(B)は、構成単位(B1)および構成単位(B2)から選ばれる少なくとも1種を、全構成単位に対して10モル%以上の割合で含むことが好ましく、50モル%以上の割合で含むことがより好ましく、80モル%以上の割合で含むことが特に好ましい。上限は特に限定されず、100モル%であってもよい。
構成単位(B1)と構成単位(B2)との両方を含む場合は、構成単位(B1)と構成単位(B2)の合計で10モル%以上の割合とすることが好ましく、50モル%以上の割合で含むことがより好ましく、80モル%以上の割合で含むことが特に好ましい。上限は特に限定されず、100モル%であってもよい。
含フッ素ポリマー(B)が構成単位(B1)を含む場合、構成単位(B1)は1種類のみからなっていてもよく、また2種類以上からなっていてもよい。
含フッ素ポリマー(B)が構成単位(B2)を含む場合、構成単位(B2)は1種類のみからなっていてもよく、また2種類以上からなっていてもよい。
【0072】
含フッ素ポリマー(B)が構成単位(B1)を含み、かつ構成単位(B2)を含まない場合、構成単位(B1)の割合は、含フッ素ポリマー(B)の全構成単位中、10〜100モル%が好ましく、50〜100モル%が特に好ましい。
含フッ素ポリマー(B)が構成単位(B1)を含まず、かつ構成単位(B2)を含む場合、構成単位(B2)の割合は、含フッ素ポリマー(B)の全構成単位中、10〜100モル%が好ましく、50〜100モル%が特に好ましい。
含フッ素ポリマー(B)が構成単位(B1)および構成単位(B2)の両方を含む場合、構成単位(B1)の割合は、含フッ素ポリマー(B)の全構成単位中、1〜99モル%が好ましく、30〜70モル%が特に好ましい。また、構成単位(B2)の割合は、含フッ素ポリマー(B)の全構成単位中、1〜99モル%が好ましく、30〜70モル%が特に好ましい。
この場合の含フッ素ポリマー(B)中の構成単位(B1)と構成単位(B2)とのモル比(B1/B2)は、1/99〜99/1が好ましく、30/70〜70/30が特に好ましい。
【0073】
含フッ素ポリマー(B)は、構成単位(B1)および構成単位(B2)以外の構成単位(以下、他の構成単位ともいう。)を含んでもよい。
該他の構成単位の含有割合は、全構成単位に対して90モル%以下が好ましく、50モル%以下がより好ましく、20モル%以下が特に好ましい。
【0074】
前記他の構成単位としては、化合物(b1)または化合物(b2)と共重合可能な化合物(以下、「化合物(b3)」ともいう。)に由来する構成単位であればよい。
化合物(b3)としては、たとえば、1個または2個以上の重合性二重結合を有し、エーテル性酸素原子を有していてもよい鎖状のペルフルオロ化合物が挙げられ、1個の重合性二重結合を有するものが好ましい。
該ペルフルオロ化合物として具体的には、ペルフルオロアルケン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)等が挙げられる。
前記ペルフルオロアルケンおよびペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)の炭素数は、それぞれ、2〜10個が好ましく、2〜5個が特に好ましい。
【0075】
化合物(b3)としては、下式(b3−1)で表される化合物(以下、「化合物(b3−1)」ともいう。)が好ましい。
化合物(b3−1)に由来する構成単位は、下式(B3−1)で表される。
【0078】
式(b3−1)および式(B3−1)中、X
2はフッ素原子、炭素数1〜8のペルフルオロアルキル基、または炭素数1〜8のペルフルオロアルコキシ基を表す。
化合物(b3−1)としては、たとえばテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)等が挙げられる。
【0079】
含フッ素ポリマー(B)の質量平均分子量(Mw)は、50,000〜1,000,000が好ましく、50,000〜500,000が特に好ましい。上記範囲の下限値以上であると、膜5の造膜性および撥水性が良好となり、上記範囲の上限値以下であると、膜5の膜強度が良好になる。
含フッ素ポリマー(B)のMwは、GPC法により測定される値である。あるいは、流下式の粘度管を用いた固有粘度法により固有粘度値から推測する。
【0080】
含フッ素ポリマー(B)は、公知の方法により合成できる。たとえば化合物(b1)または化合物(b2)を単独重合させるか、あるいは化合物(b1)と化合物(b2)とを共重合させることにより合成することができる。また、化合物(b1)および/または化合物(b2)と化合物(b3)とを共重合させることによっても含フッ素ポリマー(B)を得ることができる。
重合方法としてはラジカル重合が用いられる。すなわち、重合の手段は、ラジカル的に重合が進行するものであれば何等制限されず、たとえば、有機または無機のラジカル開始剤、光、電離放射線または熱による重合等を挙げることができる。重合の方法もバルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等を用いることができる。
【0081】
[EW装置10の製造方法]
EW装置10は、公知の方法により製造できる。たとえば、基板3上に第一の電極4、膜5が順次積層した積層体を作製し、得られた積層体の膜5の上に、膜5の外縁部から膜5の表面に対して垂直に延びる図示しない側壁部材を設置し、その上の開口から第一の流体1および第二の流体2を収容し、該開口を、片面に第二の電極7を形成した図示しない上部基材で封止する等により製造できる。この場合、膜5と側壁部材と上部基材とにより空間6が形成される。
【0082】
基板3上への第一の電極4の形成方法は特に限定されず、物理的蒸着法、無電解めっき法等の、導電性薄膜の形成方法として公知の方法を利用できる。
物理蒸着法としては、スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等が挙げられる。
無電解めっき法とは、金属塩、還元剤等を含む無電解めっき液に、表面に触媒が付着した基板を浸漬し、還元剤から生じる電子の還元力によって、触媒が付着した基板表面において選択的に金属を析出させ、無電解めっき膜を形成する方法である。
無電解めっき液に含まれる金属塩としては、ニッケル塩(硫酸ニッケル、塩化ニッケル、次亜リン酸ニッケル等。)、第二銅塩(硫酸銅、塩化銅、ピロリン酸等。)、コバルト塩(硫酸コバルト、塩化コバルト等。)、貴金属塩(塩化白金酸、塩化金酸、ジニトロジアンミン白金、硝酸銀等。)等が挙げられる。
無電解めっき液に含まれる還元剤としては、次亜リン酸ナトリウム、ホルムアルデヒド、テトラヒドロほう酸ナトリウム、ジアルキルアミンボラン、ヒドラジン等が挙げられる。
無電解めっき法により第一の電極4を形成する場合、第一の電極4を形成する前に、予め、基板3の表面に触媒を付着させておくことが好ましい。該触媒としては、金属微粒子、金属を担持した微粒子、コロイド、有機金属錯体等が挙げられる。
【0083】
形成した導電性薄膜をパターニングしてもよい。導電性薄膜のパターニングは、たとえばフォトリソグラフィー法とウェットエッチング法の組み合わせ、ナノメタルインク等を印刷することによる配線形成、等により実施できる。たとえばフォトリソグラフィー法とウェットエッチング法の組み合わせによるパターニングは、導電性薄膜上にフォトレジストを塗布してレジスト膜を形成した後、該レジスト膜に対し、露光、現像を行うことでパターン(レジストマスク)を形成し、該レジストマスクをマスクとして導電性薄膜をエッチングすることにより実施できる。導電性薄膜のエッチングは、たとえばエッチング液として導電性薄膜を溶解する液体(通常は酸性溶液)を用いたウェットエッチングにより実施できる。また、ナノメタルインク等を印刷する方法としてはスクリーン印刷法、インクジェット法またはマイクロコンタクトプリンティング法等を用いることができる。ナノメタルインクとは前述の導電性材料のナノ粒子を有機溶媒や水等に分散させたインクのことをいう。
【0084】
第一の電極4上への膜5の形成方法としては、通常の単層または多層のコーティング膜の形成方法が採用される。たとえば、形成しようとする膜5の層構成(層の材質、層の数、積層順等)に応じて、以下の工程(Ia)〜(Ib)を1回行うか、または複数回繰り返すことにより、基板3上に第一の電極4、膜5が順次積層した積層体が得られる。
(Ia)層を構成する材料(含フッ素ポリマー(A)、含フッ素ポリマー(B)、シランカップリング剤等)を溶媒に溶解させて溶液組成物を調製する工程、
(Ib)前記(Ia)で調製した溶液組成物を、第一の電極4が形成された基板3上に塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥することにより成膜する工程。
なお、2回目以降の工程(Ib)においては、溶液組成物は、その前の工程(Ib)で成膜した層の上に塗布する。
【0085】
溶液組成物が層(M)または(A)の形成用である場合、つまり含フッ素ポリマーを含有する場合、溶媒としては、含フッ素溶媒が好ましく用いられる。
含フッ素溶媒としては、使用する含フッ素ポリマー(含フッ素ポリマー(A)または(B))を溶解するものであれば限定されない。たとえばペルフルオロ化合物を使用することができる。ペルフルオロ化合物の具体例としては、ペルフルオロトリブチルアミン、ペルフルオロトリプロピルアミン、ペルフルオロトリペンチルアミン、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロデカン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロベンゼン、ペルフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、ペルフルオロデカリンが挙げられる。
ペルフルオロ化合物以外の含フッ素系溶媒の具体例としては、デカフルオロ−3−メトキシ−4−トリフルオロペンタン、1−エトキシ−ノナフルオロブタン、1−メトキシ−ノナフルオロブタン、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル、1−ハイドロトリデカフルオロヘキサン、ノナフルオロヘキサン、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、メチルトリデカフルオロヘキシルエーテル、1,1,1,2,2−ペンタフルオロ−3,3−ジクロロプロパン、1,1,2,2,3−ペンタフルオロ−1,3−ジクロロプロパンが挙げられる。
【0086】
層(M)形成用の溶液組成物に用いる含フッ素溶媒と、層(A)形成用の溶液組成物に用いる含フッ素溶媒とは、同じであっても異なっていてもよい。
層(M)形成用の溶液組成物における含フッ素ポリマー(A)および(B)の合計の濃度、層(A)形成用の溶液組成物における含フッ素ポリマー(A)の濃度はそれぞれ、1〜13質量%が好ましい。ポリマーの濃度を調整することにより、所望の膜厚の薄膜を得ることができる。
該溶液組成物は、含フッ素ポリマーと含フッ素溶媒のほかに、必要に応じて、シランカップリング剤を含有してもよい。
【0087】
溶液組成物がシランカップリング剤層の形成用である場合、つまりシランカップリング剤を含有し、含フッ素ポリマー(A)または(B)を含有しない場合、溶媒としては、シランカップリング剤を溶解可能なものであればよく、特に限定されない。たとえばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水等が挙げられる。
シランカップリング剤層の形成用の溶液組成物におけるシランカップリング剤の濃度は、0.01〜10質量%が好ましい。
【0088】
溶液組成物の塗布方法としては、溶液から膜を形成させる方法が使用でき、たとえばロールコート法、キャスト法、ディップ法、スピンコート法、水上キャスト法、ダイコート法、ラングミュア・プロジェット法等が挙げられる。非常に厳密な膜厚形成が求められる場合は、スピンコート法が好ましい。
塗工量は、形成しようとする層の厚さに応じて設定される。
【0089】
塗膜の乾燥は、常温での風乾により行ってもよく、減圧下で行ってもよい。
層(M)または層(A)を形成する場合は、常温での風乾の後に減圧して、膜中に残留する溶媒を除去することが好ましい。減圧時の真空度は、1Pa(絶対圧)以下が好ましく、10
−3Pa(絶対圧)以下が特に好ましい。減圧時の温度は、(含フッ素ポリマーのガラス転移温度)〜250℃が好ましく、40〜210℃が特に好ましい。
塗膜の乾燥は、溶媒が検出限界以下になるまで行うのが好ましい。膜中に残留する溶媒量が少ないほど、密着性および耐久性に優れる。
【0090】
以上、本発明のEW装置の実施形態例を、
図1〜2を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、2種の流体が収容される空間に接する膜として特定の構成のものを用いる以外は、公知のEW装置の構成を採用できる。
たとえば、上記実施形態では、2種の流体の一方(第一の流体1)に透明な電気伝導性の水性液体、他方(第二の流体2)に着色された非電気伝導性の油性液体を使用した例を示したが、第一の流体1と第二の流体2の組み合わせはこれに限定されない。
2種の流体は、相溶性がないもの、つまり、同一の空間内に収容されたときに、該空間の中で互いに混じり合うことなく2相に分離し、界面を形成し得るものであればよく、これまで、エレクトロウェッティング装置に用いられているいかなる組み合わせも採用できる。たとえば表示装置用途の場合、着色された油性液体と透明な水性液体との組み合わせ、それぞれ異なる色調に着色された水性液体と油性液体との組み合わせ、着色された水性液体と気体(空気、不活性ガス等)との組み合わせ等が採用される。レンズ用途の場合、水性液体と空気との組み合わせが好ましい。
また、基板3、第一の電極4、膜5がそれぞれ平坦である例を示したが、これらは平坦でなくてもよい。たとえば凹部を設け、該凹部内に第二の流体2が収容されるようにしてもよい。
【実施例】
【0091】
以下に、上記実施形態の具体例を実施例として説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
後述する例1〜5のうち、例1〜3で得た膜が本発明における膜に相当し、例4〜5で得た膜は比較品である。
以下の各例において形成した層の厚さは、DektakXT(製品名、アルバック社製)により測定した。
また、以下の各例で使用した材料は以下のとおりである。
【0092】
<含フッ素ポリマー(A)>
CTX−803A:商品名、旭硝子社製、ペルフルオロ(3−ブテニルビニルエーテル)を環化重合して得られた単独重合体であって、カルボキシ基を有する含フッ素ポリマーを含フッ素溶媒CT−solv180(商品名、旭硝子社製)で濃度3質量%に希釈した溶液。
CTX−809S:商品名、旭硝子社製、ペルフルオロ(3−ブテニルビニルエーテル)を環化重合して得られた単独重合体であって、官能基を有しない含フッ素ポリマーを、含フッ素溶媒CT−solv180(商品名、旭硝子社製)で濃度9質量%に希釈した溶液。
【0093】
<含フッ素ポリマー(B)>
含フッ素ポリマー(B−1):以下の手順で合成した合成品。
ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)の1.5gとASAHIKLIN AC−2000(商品名、旭硝子社製、トリデカフルオロヘキサン)の21.7gとを0.1Lの耐圧容器に仕込んだ。該耐熱容器に、重合開始剤として、ビス(ヘプタフルオロブチリル)ペルオキシド(PFB)を3質量%のASAHIKLIN AK−225(商品名、旭硝子社製、3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパンと1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンとの混合物)溶液として添加した。系内を減圧脱気した後、テトラフルオロエチレンの1.0gをフィードし、40℃で3時間重合させた。重合後、反応溶液をメタノール中に滴下して、ポリマーを再沈させた後、100℃で12時間、200℃で1時間真空乾燥、300℃で1時間熱処理して、含フッ素ポリマー(B−1)を得た。
【0094】
<シランカップリング剤>
KBE903:商品名、信越化学工業社製、3−アミノプロピルトリエトキシシラン。
【0095】
<層(M)形成用の混合液>
混合液M1:CTX−809Sと、含フッ素ポリマー(B−1)をペルフルオロトリブチルアミンで濃度3質量%に希釈した溶液(以下、「(B−1)溶液」という。)とを、含フッ素ポリマー(A)/含フッ素ポリマー(B)の質量比が20/80になるように混合したもの。
混合液M2:CTX−809Sと、(B−1)溶液とを、含フッ素ポリマー(A)/含フッ素ポリマー(B)の質量比が50/50になるように混合したもの。
混合液M3:CTX−809Sと、(B−1)溶液とを、含フッ素ポリマー(A)/含フッ素ポリマー(B)の質量比が80/20になるように混合したもの。
【0096】
[例1]
ガラス基板(ソーダガラス)に、KBE903をエタノールで濃度0.05質量%に希釈した溶液をスピンコートで塗布し、風乾して厚さ5nmのシランカップリング剤層を形成した。
続いて、CTX−803Aをスピンコートで塗布し、100℃オーブンで30分間乾燥して厚さ0.2μmの層(A
C)を形成した。
続いて、CTX−809Sをスピンコートで塗布し、100℃オーブンで30分間乾燥して厚さ1μmの層(A
F)を形成した。
続いて、混合液M1をスピンコートで塗布し、200℃オーブンで30分間乾燥して厚さ0.2μmの層(M)を形成して、積層体(ガラス基板/シランカップリング剤層/層(A
C)/層(A
F)/層(M))を得た。
【0097】
[例2]
混合液M1の代わりに混合液M2を用いた以外は例1と同様にして積層体を得た。
【0098】
[例3]
混合液M1の代わりに混合液M3を用いた以外は例1と同様にして積層体を得た。
【0099】
[例4]
ガラス基板(ソーダガラス)に、KBE903をエタノールで濃度0.05質量%に希釈した溶液をスピンコートで塗布し、風乾して厚さ5nmのシランカップリング剤層を形成した。
続いて、CTX−809Sをスピンコートで塗布し、200℃オーブンで30分間乾燥して厚さ1μmの層(A
F)を形成して、積層体(ガラス基板/シランカップリング剤層/層(A
F))を得た。
【0100】
[例5]
CTX−809Sの代わりに(B−1)溶液を用いた以外は例4と同様にして積層体(ガラス基板/シランカップリング剤層/層(B))を得た。
【0101】
各例で得られた積層体について、以下の手順で、動的後退角、膜強度、温水下の耐久性を評価した。結果を表1に示す。
動的後退角:製造直後(初期)の積層体について、膜表面(ガラス基板側とは反対側)の純水(40μL)に対する動的後退角を、協和界面化学社製DM−500を用いて拡張収縮法にて測定した(測定温度:23℃)。
膜強度:小津産業社製DusperY−1を用いて、膜表面を、100gの加重をかけて水平方向に3往復擦り、その後の膜の外観を目視で確認した。結果を表1に示す。
温水下の耐久性:積層体を50℃の水に200時間浸漬した。水中から積層体を取出し、エアパージにより膜表面を乾燥させた後、膜の動的後退角を前記と同じ手順で測定した。また、測定結果から、動的後退角の変化量(浸漬後の動的後退角−浸漬前の動的後退角)を算出した。結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
上記結果に示すとおり、例1〜3で形成した膜は、初期の動的後退角の値が110°を超えており、優れた撥水性を有していた。また、膜強度も良好であった。耐久性にも優れ、温水浸漬時の撥水性の低下が抑制されていた。
これに対して、最表層を含フッ素ポリマー(A)のみで構成した例4の膜は、例1〜3に比べて撥水性が劣っていた。また、温水浸漬時に撥水性が大きく低下した。
最表層を含フッ素ポリマー(B)のみで構成した例5の膜は、初期の動的後退角の値が110°を超えており、優れた撥水性を有していたが、膜強度が低かった。また耐久性が低く、温水浸漬時に撥水性が大きく低下した。