(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記のテトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体(a)と、下記のエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(b)と、エポキシ基を含有するエチレン共重合体(c)とを含有し、
前記テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体(a)と前記エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(b)との質量比[(a)/(b)]が70/30〜40/60であり、前記エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(b)と前記エポキシ基を含有するエチレン共重合体(c)との質量比[(b)/(c)]が100/0.1〜100/10であることを特徴とする含フッ素エラストマー組成物。
テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体(a):テトラフルオロエチレンに基づく単位45〜70モル%、プロピレンに基づく単位30〜55モル%、及びその他のモノマーに基づく単位0〜20モル%からなる共重合体。
エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(b):テトラフルオロエチレンに基づく単位45〜70モル%、エチレンに基づく単位30〜55モル%、及びその他のモノマーに基づく単位0〜20モル%からなる共重合体。
前記エポキシ基を含有するエチレン共重合体(c)が、エチレンに基づく単位、メタクリル酸グリシジルに基づく単位、及びエチレン不飽和エステルに基づく単位とからなる共重合体である、請求項1〜3のいずれかに記載の含フッ素エラストマー組成物。
導体と、該導体を被覆する被覆材を備える被覆電線であって、前記被覆材が請求項1〜4のいずれかに記載の含フッ素エラストマー組成物であることを特徴とする被覆電線。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[含フッ素エラストマー組成物]
本発明の含フッ素エラストマー組成物(以下、「本発明の組成物」という場合がある。)は、TFE/P共重合体(a)と、ETFE(b)と、エポキシ基を含有するエチレン共重合体(c)とを含有する。
なお、以下の説明において、各成分を構成する単位のモル比は、
13C−NMR,FT−IRを用いて測定されるモル比である。
【0011】
(TFE/P共重合体(a))
TFE/P共重合体(a)(以下、「(a)成分」という場合がある。)は、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」という場合がある。)に基づく単位45〜70モル%、プロピレン(以下、「P」という場合がある。)に基づく単位30〜55モル%、及びその他のモノマーに基づく単位0〜20モル%からなる共重合体である。(a)成分は、弾性共重合体(含フッ素エラストマー)である。
【0012】
(a)成分を構成する全単位中に占めるTFEに基づく単位の割合は45〜70モル%であり、50〜65モル%であることが好ましく、52〜60モル%であることがより好ましい。TFEに基づく単位の割合が45モル%以上であることにより、本発明の組成物は、機械的特性、耐薬品性、柔軟性に優れる。また、TFEに基づく単位の割合が70モル%以下であることにより、Pに基づく単位を充分な割合で有することができる。
(a)成分を構成する全単位中に占めるPに基づく単位の割合は30〜55モル%であり、35〜50モル%であることが好ましく、40〜48モル%であることがより好ましい。Pに基づく単位の割合が30モル%以上であることにより、本発明の組成物は、成形加工性、柔軟性に優れる。また、Pに基づく単位の割合が55モル%以下であることにより、TFEに基づく単位を充分な割合で有することができる。
(a)成分を構成する全単位中に占めるその他のモノマーに基づく単位の割合は0〜20モル%であり、0〜15モル%であることが好ましく、0〜10モル%であることがより好ましい。その他のモノマーに基づく単位の割合が20モル%以下であることにより、TFEとPに基づく単位を充分な割合で有することができる。
【0013】
その他のモノマーとしては、TFE以外の含フッ素モノマー、P以外の炭化水素モノマー、架橋性モノマー等が挙げられる。
含フッ素モノマーとしては、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、パーフルオロ(アルキルオキシアルキルビニルエーテル)等が挙げられる。含フッ素モノマーは1種単独または2種以上を併用してもよい。
パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)中のパーフルオロアルキル基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。また、パーフルオロ(アルキルオキシアルキルビニルエーテル)中のパーフルオロ(アルキルオキシアルキル)基の炭素数は、2〜8が好ましく、2〜6がより好ましい。
パーフルオロアルキル基の具体例としては、CF
3基、C
2F
5基、またはC
3F
7基が好ましい。
パーフルオロ(アルキルオキシアルキル)基におけるエーテル性酸素原子の数は4個以下が好ましく、2個以下がより好ましい。パーフルオロ(アルキルオキシアルキル)基の具体例としては、CF
3OCF(CF
3)CF
2−基、C
2F
5OC
2F
4−基、C
3F
7OC
3F
6−基、またはC
3F
7OC
3F
6OC
3F
6−基が好ましい。
【0014】
パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)およびパーフルオロ(アルキルオキシアルキルビニルエーテル)の具体例としては、CF
2=CFOCF
3、CF
2=CFOCF
2CF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2CF
3、CF
2=CFO(CF
2)
3CF
3、CF
2=CFO(CF
2)
4CF
3、CF
2=CFOCF
2OCF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2OCF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2OCF
2CF
3、CF
2=CFO(CF
2)
3OCF
2CF
3、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
3、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)O(CF
2)
2CF
3、CF
2=CFO(CF
2CF
2O)
2CF
2CF
3、CF
2=CFO[CF
2CF(CF
3)O]
2CF
3、CF
2=CFO[CF
2CF(CF
3)O]
2(CF
2)
2CF
3等が挙げられる。
TFE以外の含フッ素モノマーに基づく単位を含有することにより、本発明の組成物の低温柔軟性などを改善することができる。
【0015】
炭化水素モノマーとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル等のビニルエーテル;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ノナン酸ビニル等のビニルエステル;エチレン、ブテン、イソブテン等のα−オレフィン(Pを除く)等が挙げられる。
P以外の炭化水素モノマーに基づく単位を含有することにより、本発明の組成物の成形加工性などを改善することができる。
【0016】
その他のモノマーとして、含フッ素モノマー、炭化水素モノマーまたはそれらの混合物を用いる場合、TFEとPに基づく単位の合計のモル数に対して、その他のモノマーに基づく単位の含有量は、0.01〜20モル%が好ましく、0.1〜15モル%がより好ましく、0.3〜10モル%が特に好ましい。
【0017】
架橋性モノマーとは、同一分子内に架橋性基を1個以上有するモノマーをいう。架橋性モノマー中の架橋性基としては、炭素−炭素二重結合基、ハロゲン原子などが挙げられる。架橋性モノマーとしては、1−ブロモ−1,1,2,2−テトラフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル、1−ヨード−1,1,2,2−テトラフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル、クロトン酸ビニル、メタクリル酸ビニル等が挙げられる。架橋性モノマーは1種単独または2種以上を併用してもよい。
架橋性モノマーに基づく単位の含有量は、(a)成分を構成する全単位中に、0.001〜8モル%が好ましく、0.001〜5モル%がより好ましく、0.01〜3モル%が特に好ましい。
架橋性モノマーに基づく単位を含有することにより、本発明の組成物の機械的特性や圧縮永久歪などを改善することができる。
【0018】
(a)成分のムーニー粘度(ML
1+10,121℃)は、20〜200が好ましく、30〜150がより好ましく、40〜120が最も好ましい。ムーニー粘度は、分子量の尺度であり、後述の測定方法で測定される。この値が大きいと分子量が大きいことを示し、小さいと分子量が小さいことを示す。この範囲にあると含フッ素エラストマー組成物は機械的特性、成形性に優れる。
(a)成分の市販品の例としては、「AFLAS150CS」(旭硝子社製)等が挙げられる。
【0019】
(ETFE(b))
ETFE(b)(以下、「(b)成分」という場合がある。)は、TFEに基づく単位30〜80モル%、エチレン(以下、「E」とう場合がある。)に基づく単位20〜70モル%、及びその他のモノマーに基づく単位0〜10モル%からなる共重合体である。
(b)成分は、耐熱性、耐油性、電気絶縁性、耐薬品性、耐水性、耐放射線性等に優れる樹脂である。
【0020】
(b)成分を構成する全単位中に占めるTFEに基づく単位の割合は30〜80モル%であり、40〜70モル%であることが好ましく、50〜65モル%であることがより好ましい。TFEに基づく単位の割合が40モル%以上であることにより、本発明の組成物は、耐油性に優れる。また、TFEに基づく単位の割合が70モル%以下であることにより、Eに基づく単位を充分な割合で有することができる。
(b)成分を構成する全単位中に占めるEに基づく単位の割合は20〜70モル%であり、30〜60モル%であることが好ましく、35〜50モル%であることがより好ましい。Eに基づく単位の割合が60モル%以下であることにより、(b)成分は、融点が充分に高く耐熱性に優れる。また、Eに基づく単位の割合が55モル%以下であることにより、TFEに基づく単位を充分な割合で有することができる。
(b)成分を構成する全単位中に占めるその他のモノマーに基づく単位の割合は0〜10モル%であり、0.01〜7モル%であることが好ましく、0.1〜5モル%であることがより好ましい。その他のモノマーに基づく単位の割合が10モル%以下であることにより、TFEとEに基づく単位を充分な割合で有することができる。また、その他のモノマーに基づく単位の割合が好ましい下限値以上であれば、本発明の組成物の耐ストレスクラック性、加工性等の特性が向上する。
【0021】
その他のモノマーとしては、TFE以外の含フッ素オレフィン、フルオロビニルエーテル、炭化水素モノマー、フッ素を含まないビニルエーテル等が挙げられる。
TFE以外の含フッ素オレフィンとしては、フッ化ビニリデン、トリフルオロクロロエチレン等の含フッ素エチレン(ただし、TFEを除く。);CF
2=CFCF
3、CF
2=CHCF
3、CH
2=CHCF
3等の含フッ素プロピレン、下式(1)で表されるモノマー(以下、「モノマー(1)」という。)、が挙げられる。
CH
2=CR
1−(CF
2)
aR
2 ・・・(1)
ただし、前記式(1)中、R
1およびR
2はそれぞれ独立に水素原子またはフッ素原子であり、aは1〜12の整数である。
モノマー(1)としては、CF
3CF
2CH=CH
2、CF
3CF
2CF
2CF
2CH=CH
2、CF
3CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CH=CH
2、CF
3CF
2CF
2CF
2CF=CH
2、CF
2HCF
2CF
2CF=CH
2等が挙げられる。
TFE以外の含フッ素オレフィンに基づく単位を含有することにより、本発明の組成物の耐ストレスクラック性や機械的特性を改善することができる。
【0022】
フルオロビニルエーテルとしては、下式(2)で表されるモノマー等のフルオロビニルエーテル(以下、「モノマー(2)」という。)、CH
3OC(=O)CF
2CF
2CF
2OCF=CF
2、FSO
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF=CF
2等の、容易にカルボン酸基やスルホン酸基に変換可能な基を有するフルオロビニルエーテルが挙げられる。
フルオロビニルエーテルに基づく単位を含有することにより、本発明の組成物の耐ストレスクラック性を改善することができる。
【0023】
Rf(OCFR
3CF
2)
bOCF=CF
2 ・・・(2)
(ただし、前記式(2)中、Rfは炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基、R
3はフッ素原子またはトリフルオロメチル基、bは0〜5の整数である。)
モノマー(2)としては、CF
3CF
2OCF
2CF
2OCF=CF
2、C
3F
7OCF(CF
3)CF
2OCF=CF
2等が挙げられる。
【0024】
炭化水素モノマーとしては、P、ブテン、イソブテン等の炭素数3〜4のα−オレフィン、4−メチル−1−ペンテン、シクロヘキセン等が挙げられる。
フッ素を含まないビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等が挙げられ、また、酢酸ビニル、乳酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のビニルエステル等が挙げられる。
炭化水素モノマーに基づく単位を含有することにより、本発明の組成物の加工性等を改善することができる。
【0025】
その他のモノマーとしては、本発明の組成物の機械的強度を向上させることができることから、モノマー(1)が好ましく、前記式(1)中のR
1が水素原子で、R
2がフッ素原子であるモノマーがより好ましく、CF
3CF
2CF
2CF
2CF=CH
2、CF
3CF
2CF
2CF
2CH=CH
2、CF
3CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CH=CH
2が特に好ましく、CF
3CF
2CF
2CF
2CH=CH
2 が最も好ましい。
【0026】
(b)成分の分子量は、特には限定されず、40℃以下でワックス状の低分子量物から溶融成形可能な高分子量物まで幅広く使用できる。
分子量の目安となるメルトフローレイト(以下、「MFR」という。)としては、0.01〜50000g/10分が好ましく、0.1〜2000g/10分がより好ましく、0.3〜100g/10分がさらに好ましい。前記MFRが上記下限値以上であれば、本発明の組成物の熱溶融によるフッ素樹脂同等の成型加工が設備的に可能となる。前記MFRが上記上限値以下であれば、成型加工品が実用途に使用可能な強度を有す
る。
【0027】
(エポキシ基を含有するエチレン共重合体(c))
エポキシ基を有するエチレン共重合体(c)(以下、「(c)成分」という場合がある。)は、上述した(a)成分と(b)成分との相溶性を高める働きをしていると考えられる。
(c)成分としては、Eに基づく単位とエポキシ基を有する単量体に基づく単位とからなる2元共重合体;Eに基づく単位、エポキシ基を有する単量体に基づく単位及びその他の単量体に基づく単位からなる3元以上の共重合体;等のエチレン共重合体が挙げられる。(c)成分は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0028】
エポキシ基を有する単量体としては、不飽和グリシジルエーテル類(例えば、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルなど。)、不飽和グリシジルエステル類(例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなど。)等が挙げられる。これらの中では、(a)成分と(b)成分との相溶性をより向上させる(c)成分が得られることから、メタクリル酸グリシジルが好ましい。エポキシ基を有する単量体は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0029】
その他の単量体としては、アクリル酸エステル類(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなど。)、メタクリル酸エステル類(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなど。)、酢酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル類、E以外のαオレフィン類等が挙げられる。これらの中では、エチレン不飽和エステル、すなわち、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、または脂肪酸ビニルエステル類が好ましい。その他の単量体としてこれらの単量体を用いると、(a)成分と(b)成分との相溶性をより向上させる(c)成分が得られる。その他の単量体は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0030】
(c)成分としては、Eに基づく単位とメタクリル酸グリシジルに基づく単位とを有する共重合体が好ましい。該共重合体を用いると、得られる含フッ素エラストマー組成物の架橋物は、柔軟性、耐油性、成形性などの特性がより優れる。
このような共重合体の具体例としては、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体が挙げられる。
また、Eに基づく単位、メタクリル酸グリシジルに基づく単位及びエチレン不飽和エステルに基づく単位とからなる共重合体も成形性、機械的特性の点で好ましい。具体例としては、エチレン−メタクリル酸グリシジル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル共重合体が挙げられる。中でも、エチレン−アクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル共重合体、またはエチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル共重合体が好ましい。
【0031】
(c)成分における、Eに基づく単位の含有量は、55〜99.9モル%が好ましく、70〜94モル%がより好ましい。エポキシ基を含有する単量体に基づく単位の含有量は、0.1〜45モル%が好ましく、1〜10モル%がより好ましい。Eに基づく繰返し単位が55モル%以上であると、本発明の組成物は耐熱性や靭性に優れる。エポキシ基を含有する単量体に基づく単位の含有量が2モル%以上であると、本発明の組成物は、成形性、機械的特性に優れる。
【0032】
(c)成分がその他の単量体に基づく単位を有する場合には、その他の単量体に基づく単位の含有量は、1〜30モル%が好ましく、5〜20モル%がより好ましい。各単位の含有量が上記範囲内の(c)成分を用いると、(a)成分と(b)成分との相溶性をより向上させることができる。その結果、得られる含フッ素エラストマー組成物の架橋物は、柔軟性、耐油性、耐熱変、成形性などの特性がより優れる。
【0033】
(c)成分の市販品としては、「ボンドファストE(商品名、住友化学社製)」等が挙げられる。エチレン−アクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル共重合体の市販品としては、「ボンドファスト7M(商品名、住友化学社製)」等が挙げられる。
【0034】
(配合比)
本発明の含フッ素エラストマー組成物における(a)成分と(b)成分との質量比[(a)/(b)]は、70/30〜40/60であり、65/35〜45/55が好ましく、60/40〜50/50がより好ましい。
(a)成分の配合比が上記下限値以上であると、優れた柔軟性が得られる。一方、(b)成分の配合比が上記下限値以上であると、優れた耐油性が得られる。
【0035】
含フッ素エラストマー組成物における(b)成分と(c)成分との質量比[(b)/(c)]は、100/0.1〜100/10であり、100/0.3〜100/7が好ましく、100/0.5〜100/5がより好ましい。
(c)成分の配合比が上記下限値未満では、含フッ素エラストマー組成物の架橋物は、熱変色の問題が生じやすい。これは、(a)成分と(b)成分との相溶性を低下するためであると考えられる。
(c)成分の配合比が上記上限値を超えると、耐油性が低下すると共に、耐熱性も不充分となる。
また、含フッ素エラストマー組成物全体を100質量%とした場合の(a)〜(c)成分の合計含有量[((a)+(b)+(c))/含フッ素エラストマー組成物]は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0036】
本発明の含フッ素エラストマー組成物は、上記(a)〜(c)成分以外に任意成分を含有してもよい。任意成分としては、架橋剤、架橋助剤、充填剤、安定剤、着色剤、酸化防止剤、加工助剤、滑剤、潤滑剤、難燃剤、帯電防止剤等などが挙げられ、必要に応じて1種以上を含有できる。
本発明の含フッ素エラストマー組成物が架橋される場合には、これら配合剤のうち、架橋剤または架橋助剤を含有することが好ましい。
【0037】
架橋剤としては、従来公知のものはすべて使用できるが、有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物としては、加熱、酸化還元の存在下で容易にラジカルを発生するものであれば使用できる。有機過酸化物を用いて架橋された含フッ素エラストマー組成物は耐熱性に優れる。
有機過酸化物の具体例としては、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロへキサン、2,5−ジメチルへキサン−2,5−ジヒドロパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−へキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−へキシン−3、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)へキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等が挙げられる。中でもα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼンが挙げられる。これらの有機過酸化物は、含フッ素エラストマー組成物の架橋性に優れる。
有機過酸化物の含有量は、含フッ素エラストマー組成物中の(a)〜(c)成分の合計含有量の100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましく、0.2〜4質量部がより好ましく、0.5〜3質量部が最も好ましい。この範囲にあると、有機過酸化物の架橋効率が高い。
【0038】
架橋助剤としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタールアミド、トリアリルホスフェート等が挙げられ、中でも、トリアリルイソシアヌレートが好ましい。架橋助剤は1種以上を使用できる。
含フッ素エラストマー組成物が架橋助剤を含有する場合、架橋助剤の含有量は、(a)成分の100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜15質量部がより好ましく、1〜10質量部がさらに好ましい。架橋助剤の含有量が上記範囲の下限値以上であると、架橋速度が大きく、充分な架橋度が得られやすい。上記範囲の上限値以下であると、含フッ素エラストマー組成物が架橋してなる架橋物の伸びなどの特性が良好となる。
【0039】
充填剤としては、カーボンブラック、ホワイトカーボン、クレー、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、炭素繊維、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ETFEなど。)等が挙げられる。
カーボンブラックとしては、フッ素ゴムの充填剤として用いられているものであれば制限なく使用できる。その具体例としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイト等が挙げられ、ファーネスブラックが好ましい。ファーネスブラックとしては、HAF−LSカーボン、HAFカーボン、HAF−HSカーボン、FEFカーボン、GPFカーボン、APFカーボン、SRF−LMカーボン、SRF−HMカーボン、MTカーボン等が挙げられ、これらのなかではMTカーボンがより好ましい。充填剤は1種以上を使用できる。
【0040】
含フッ素エラストマー組成物がカーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、(a)成分の100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、3〜20質量部がより好ましい。カーボンブラックの含有量が上記範囲の下限値以上であると、含フッ素エラストマー組成物の架橋物は強度が優れ、カーボンブラックを配合したことによる補強効果が充分に得られる。また、上記範囲の上限値以下であると、架橋物の伸びも優れる。このようにカーボンブラックの含有量が上記範囲内であると、架橋物の強度と伸びとのバランスが良となる。
【0041】
含フッ素エラストマー組成物がカーボンブラック以外の充填剤を含有する場合、その含有量は、(a)成分の100質量部に対して、5〜200質量部が好ましく、10〜100質量部がより好ましい。
なお、充填剤としては、カーボングラックとそれ以外の充填剤とを併用してもよい。含フッ素エラストマー組成物が、カーボンブラックとそれ以外の充填剤とを含有する場合、その含有量は、(a)成分の100質量部に対して、1〜100質量部が好ましく、3〜50質量部がより好ましい。
【0042】
安定剤としては、ヨウ化銅、酸化鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化アンチモン、五酸化リン等が挙げられる。
加工助剤としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等が挙げられ、具体的には、ステアリン酸、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩が好ましい。加工助剤の含有量は、(a)成分の100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましく、1〜3質量部がさらに好ましい。加工助剤は1種以上を使用できる。
滑剤としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等があげられ、ステアリン酸、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩が好ましい。滑剤の含有量は、含フッ素エラストマー組成物中の(a)〜(c)成分の合計含有量の100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.2〜10質量部、最も好ましくは1〜5質量部である。
【0043】
(含フッ素エラストマー組成物の特性)
本発明の含フッ素エラストマー組成物のメルトフローレイト(MFR)は、4〜50g/10分が好ましく、5〜40g/10分がより好ましく、6〜30g/10分が最も好ましい。MFRがこの範囲にあると成形性および機械的特性が優れている。
本発明の含フッ素エラストマー組成物の曲げ弾性率は、10〜600MPaが好ましく、50〜400MPaがより好ましく、70〜300MPaが最も好ましい。曲げ弾性率は、柔軟性の指標となる値である。曲げ弾性率が大きいと柔軟性が低いことを示し、小さいと柔軟性が高いことを示す。
【0044】
(含フッ素エラストマー組成物の製造方法)
本発明の含フッ素エラストマー組成物は、上述の(a)〜(c)成分と必要に応じて配合される各種配合剤などの任意成分とをインターナルミキサー、一軸混練機、二軸混練機、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機等の公知の混練機構を有する機器で混練することによって製造される。中でも、二軸押出機、多軸押出機等の押出成形機を用いて混練することが好ましい。なお、任意成分は、(a)〜(c)の各成分を混練する工程でこれら各成分とともに添加されてもよいし、(a)〜(c)の各成分を混練した後に添加されてもよい。
【0045】
各成分の混練は、温度250〜320℃に加熱下に行う溶融混練であることが好ましい。加熱温度は、255〜310℃がより好ましく、260〜300℃がさらに好ましい。混練温度がこの範囲内であると、(a)成分と(b)成分の溶融粘度の比が1に近くなり、分散性に優れる含フッ素エラストマー組成物が得られ、それから得た成形体は、表面平滑性に優れる。
【0046】
溶融混練によって、(a)〜(c)成分が溶融し、互いに相溶化し、均一な分散状態となる。実際、走査型電子顕微鏡にて観察されるモルフォロジー観察の結果、分散相が小粒径化することにより確認できた。また、(c)成分と(b)成分とが相溶することは、(b)成分の動的粘弾性測定におけるTanδのピーク温度を観察の結果、ガラス転移点が変化することにより確認できた。
【0047】
(a)成分と(b)成分の2成分のみでは、熱変色性の問題が生じやすい。これは、両者が非相溶であり、これら2成分のみを加熱下に混練しても、局部的に分散が不充分となるためであると考えられる。
本発明では、(c)成分を加えることにより、優れた特性を有する含フッ素エラストマー組成物が得られる。これは、(c)成分により相溶性が高められるためと考えられる。特に、(a)成分と(b)成分の質量比が55/45〜45/55の場合は、両共重合体が連続相になる場合がある。
(a)成分と(b)成分が連続相になる場合、そのようなモルフォロジーが固定化されることにより、含フッ素エラストマー組成物の柔軟性や耐熱性が保持できるものと考えられる。このようなモルフォロジーの固定化によって、分散不良の発生を抑え、伸びなどの機械的特性に優れた成形体を得ることができると考えられる。
【0048】
溶融混練に用いる装置としては、二軸押出機または混練効果の高いスクリューを備えた単軸押出機が好ましく、二軸押出機がより好ましく、混練効果の高いスクリューを備えた二軸押出機が最も好ましい。混練効果の高いスクリューとしては、組成物に充分な混練効果を有し、かつ、過剰なせん断力を与えないものを選択することがより好ましい。
せん断速度は、上述の温度範囲において、上記組成物の溶融粘度に応じて設定することが好ましい。
溶融混練における押出成形機のスクリューの回転数は、好ましくは50〜1000rpm、より好ましくは100〜500rpmである。スクリューの回転数が小さすぎるとせん断により得られる組成物の分散性が低い場合があり、大きすぎると共重合体の分子鎖の切断により得られる組成物の伸びが低い場合がある。この範囲にあると、相溶化反応が最適に進み、強度と伸びとのバランスが良好である。
相溶化の進行は、混練時間、混練温度、せん断速度等のパラメータを調整することにより制御できる。特に、(b)成分と(c)成分との溶融粘度差の条件を出来るだけ狭める、せん断速度条件にすることにより(b)成分の分散粒子がより小粒径化する。
【0049】
溶融混練は、組成物の粘度が一定になるまで実施する。組成物の溶融混練中の粘度変化は、スクリューを介してトルクメーターによる回転トルクの経時変化により観測できる。「組成物の粘度が一定になるまで」とは、回転トルクの値の変動が一定時間以上中心値から5%以内にある状態となるまで溶融混練することを意味する。
溶融混練に要する時間は、溶融混練を行う温度、組成物の組成、スクリュー形状により変わり得るが、経済性と生産性の点で、1〜30分が好ましく、1〜20分がより好ましく、2〜10分が最も好ましい。
例えば、溶融粘度が2.3kPa・sの(a)成分と溶融粘度が2.4kPa・sの(b)成分とを質量比50/50として270℃で溶融混練する場合、インターナルミキサーでは、混練時間は2〜7分が好ましい。また、二軸押出成形機では、1〜5分の滞留時間が好ましい。滞留時間は、ラボプラストミル(東洋精機社製)などのバッチ式二軸混練機を用いて粘度の経時変化を予め測定しておき、その経時変化のデータに基づき設定できる。
【0050】
溶融混練に用いる(b)成分の形態としては、粉体が好ましい。粉体としては、粒子径の小さいものがより好ましい。粒径が小さいと、溶融混練を行う際、混練が容易となるうえ、均一な溶融混練状態を得られやすい。特に、粉体としては、溶液重合で得られたETFEスラリーを乾燥して得られた粉体が好ましい。
また、(a)成分の形態としては、クラムが好ましい。特に、乳化重合で得られたTFE/P共重合体のラテックスを凝集して得られたTFE/P共重合体のクラムを乾燥して用いることが好ましい。
上記溶融混練の前に、上記TFE/P共重合体のクラム及びETFEの粉体を、従来公知の装置を用いて加熱せずに混合することも好ましい。また、溶融混練時に両共重合体を押出成形機内で混合することも好ましい。
【0051】
[成形体および架橋物]
本発明の成形体は、本発明の含フッ素エラストマー組成物を成形してなる成形体である。成形方法としては、射出成形、押出成形、共押出成形、ブロー成形、圧縮成型、インフレーション成形、トランスファー成型またはカレンダー成形等が挙げられる。
本発明の含フッ素エラストマー組成物は、原料の(a)成分よりも溶融粘度が低いことから、引取速度を大きく設定でき、成形加工性に優れる。
本発明の架橋物は、本発明の含フッ素エラストマー組成物を架橋したものである。架橋は、成形と同時に、または成形の後に行われることが好ましい。
本発明の成形体または架橋物は、例えば電気部品の被覆材などの電気絶縁性材料とすることができる。具体的な用途としては、後述の被覆電線における被覆材の他、電線を保護するためのシース材や、ケーブルの絶縁被覆材およびシース材などが挙げられる。
また、架橋物は、例えばホース、チューブなどの筒状製品とすることもできる。筒状製品は、含フッ素エラストマー組成物を筒状に押出成形し、その後、架橋することにより製造される。
本発明の架橋物は、ガスケット、パッキン、ダイヤフラムなど、自動車分野、産業ロボット分野、熱機器分野などの各種産業分野で使用される各種部品とすることもできる。
【0052】
架橋物を得る際の架橋方法は特に限定されず、例えば、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキシド等の有機過酸化物を架橋剤として使用した化学架橋法、X線、γ線、電子線、陽子線、重陽子線、α線、β線等の電離性放射線を使用した照射架橋法などが挙げられる。
電線などの電気部品の被覆材用途においては、電離性放射線として電子線を用いる電子線架橋が好ましく、ホース、チューブなどの筒状製品用途においては、有機過酸化物を用いる化学架橋法が好ましい。
【0053】
[被覆電線]
本発明の被覆電線は、導体を本発明の含フッ素エラストマー組成物または架橋物で被覆したものである。
導体としては、特に限定されず、銅、銅合金、アルミニウム及びアルミニウム合金、スズメッキ、銀メッキ、ニッケルメッキ等の各種メッキ線、より線、超電導体、半導体素子リード用メッキ線などが挙げられる。
導体を本発明の架橋物で被覆した被覆電線は、導体を本発明の含フッ素エラストマー組成物で被覆した本発明の被覆電線に電子線を照射し、含フッ素エラストマー組成物を架橋することにより製造できる。
電子線の照射線量は、50〜700kGyが好ましく、80kGy〜400kGyがより好ましく、100〜250kGyが最も好ましい。電子線の照射時の温度は、0〜300℃が好ましく、10〜200℃がより好ましく、20〜100℃が最も好ましい。
本発明の含フッ素エラストマー組成物は、原料の(a)成分よりも溶融粘度が低いことから、引取速度を大きく設定でき、成形加工性に優れる。そのため、本発明の被覆電線は、高速で製造できる。また、(a)成分を含有しているので、熱可塑性である(b)成分のみを用いて得られた被覆電線に比べて、高温での連続使用が可能であり、かつ、柔軟性にも優れるため、省スペースへの配線が必要な自動車用被覆電線等への利用に好適である。
【実施例】
【0054】
以下、本発明について、実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
各例において使用した材料を下記に示す。
〔(a)成分〕
TFE/P2元共重合体である、旭硝子社製「AFLAS 150C」を用いた。
TFEに基づく単位とPに基づく単位とのモル比(TFE/P)は56/44、過酸化物架橋タイプ、フッ素含有量は57質量%、ムーニー粘度ML
1+10(121℃)は120、ガラス転移温度(Tg)は−3℃、融点(Tm)は無し。
【0055】
〔(b)成分〕
E/TFE/(パーフルオロブチル)エチレン3元共重合体である、旭硝子社製「Fluon LM−730AP」を用いた。
Eに基づく単位と、TFEに基づく単位と、(パーフルオロブチル)エチレンに基づく単位とのモル比(E/TFE/(パーフルオロブチル)エチレン)は、40/57/3、MFRは25g/10分、Tgは75℃、Tmは225℃。
【0056】
〔(c)成分〕
エチレン−アクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル共重合体である、住友化学社製「ボンドファスト 7M」を用いた。
Eに基づく単位の含有量は67モル%、アクリル酸メチルに基づく単位の含有量は27モル%、メタクリル酸グリシジルに基づく単位の含有量は6モル%、MFRは7g/10min、Tgは−33℃、Tmは52℃。
【0057】
〔(d)成分〕
(c)成分の比較として、エチレン−酢酸ビニル共重合体である、三井デュポンポリケミカル社製「エバフレックス EV260」を用いた。(d)成分はエポキシ基を有しない。
Eに基づく単位の含有量は72モル%、酢酸ビニルに基づく単位の含有量は28モル%、MFRは6g/10分(測定温度190℃)、Tgは−27℃、Tmは72℃。
【0058】
〔充填剤〕
シリカ、アエロジルR972。東新化成社製。
〔架橋助剤〕
トリアリルイソシアネート。日本化成社製。
【0059】
[実施例1〜3、比較例1〜7]
インターナルミキサーを用いて、上記の各材料を表1、表2に示した配合部数(質量基準)で充分に混練(溶融混練)し、各例の含フッ素エラストマー組成物を得た。混練の温度および時間は250℃×10分間、ローター回転数は150rpmとした。
ついで、得られた含フッ素エラストマー組成物を250℃×15分、10MPaの条件にてプレス成型し、厚さ約1mmのシートを作成した。ついで、各シートを照射線量120kGyで電子線架橋し、各例の架橋サンプルを作製した。
【0060】
[含フッ素エラストマー組成物の観察]
実施例1、実施例3、比較例2、および比較例3の含フッ素エラストマー組成物を、走査型電子顕微鏡(倍率2,000倍)にて観察した。結果を
図1〜4に示す。
図1に示すように、実施例1では(a)成分と(b)成分が連続相を形成していることが観察された。また、
図2に示すように、実施例3では、(b)成分が微細な分散相となって(a)成分中に良好に分散していることが観察された。
これに対して、
図3、
図4に示すように、比較例2、4では、(b)成分が不定形かつ大きい分散相となって(a)成分中に存在し、分散性に劣ることが観察された。
【0061】
[含フッ素エラストマー組成物の評価]
熱変色性の指標となる黄色度は、JIS K7373:2006に準拠して求めた。実施例1と比較例7以外の例については、目視で実施例1及び比較例7と比較し、黄色度が10未満に相当するものを○(良好)、黄色度が10以上に相当するものを×(不良)と評価した。MFRは、メルトインデクサーを用いて、温度297℃、荷重5kg下に、直径2
.1mm、長さ8mmのノズルから単位時間(10分間)に流出する含フッ素エラストマー組成物の質量(g)を測定し、MFRとした。
最大引取速度は、キャピラリーレオメーターを用いて、押出温度300℃、押出速度5mm/分、キャピラリー径1mmで、引取速度を変化させて測定した。結果を表1、表2に示す。
【0062】
[架橋サンプルの評価]
各例の架橋サンプルについて、JIS K6251:1999およびJIS K6253:1999に準拠して、常態物性(初期の引張強度、引張伸び)、耐熱老化性(強度残率、伸び残率)、耐ATF性(165℃で120時間、自動変速機油に晒した際の体積変化率)を評価した。
なお、耐熱老化性の強度残率は、250℃で96時間放置した後における引張強度の初期引張強度に対する割合であり、耐熱老化性の伸び残率は、250℃で96時間放置した後における引張伸びの初期引張伸びに対する割合である。
また、柔軟性の指標となる曲げ弾性率を、JIS K7171:1994に準拠して評価した。結果を表1、表2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
表1、2に示すように、実施例1〜3の含フッ素エラストマー組成物は、いずれも、黄色度が10未満であり熱変色しにくいものであった。これに対して、(c)成分と(d)成分を共に含まない比較例2、4、7では、黄色度が10以上であり熱変色しやすいものであった。
また、実施例1〜3の含フッ素エラストマー組成物は、いずれも、MFRが10〜20g/10分の範囲にあり、加工性に優れる。これに対して、(b)成分を含まない比較例1の含フッ素エラストマー組成物は、MFRが4未満であり加工性が充分でなかった。
また、(b)成分を含んでいても、(c)成分を過剰に含む比較例3と(c)成分に代えて(d)成分を用いた比較例6の含フッ素エラストマー組成物は、耐熱老化性強度残率が90%以下となり、熱老化性が劣る材料であった。
また、(a)成分と(b)成分の質量比率が共に50:50である実施例1と比較例4とを対比すると、実施例1の最大引取速度の方が大きく、(c)成分の配合により加工効率が高まることが分かった。
【0066】
また、実施例1〜3の架橋サンプルは、いずれも、常態物性(初期の引張強度、引張伸び)、耐熱老化性(強度残率、伸び残率)の総ての項目で良好な結果が得られたが、比較例1〜7の架橋サンプルは、いずれも、常態物性(初期の引張強度、引張伸び)、耐熱老化性(強度残率、伸び残率)のいずれかの項目で問題があった。
また、実施例1〜3の架橋サンプルは、いずれも、体積変化率が小さく、耐ATF性に優れていた。これに対して、(b)成分を含まない比較例1の架橋物は、体積変化率が大きく、耐ATF性に劣っていた。また、(b)成分を含んでいても、(c)成分を過剰に含む比較例3及び比較例5と、(c)成分に代えて(d)成分を用いた比較例6の架橋サンプルも、体積変化率が大きく、耐ATF性に劣っていた。
また、実施例1〜3の架橋サンプルは、いずれも、曲げ弾性率が充分に低く、柔軟性を備えていた。
【0067】
[実施例4]
表3の(a)成分、(b)成分および(c)成分を15mm二軸押出成形機(L/D=45)に一括で投入することで2分間混練した。温度は250〜300℃とし、スクリュー回転は300〜400rpmとした。これをペレット化し、表1の実施例1と同じ組成の含フッ素エラストマー組成物を得た。
得られた含フッ素エラストマー組成物を、260℃〜290℃に予熱した30mm押出成形機(L/D=24)を用い、外径1.8mmの導体(すずめっき銅芯撚線)上に厚さ0.5mmで押出被覆し、未架橋の被覆電線を得た。次いで、未架橋の被覆電線の一部について120kGyの電子線を照射して、架橋させた被覆電線を得た。
【0068】
[比較例8]
表3の(a)成分と(b)成分を15mm二軸押出成形機(L/D=45)に一括で投入し、2分混練した。温度は250〜300℃とし、スクリュー回転は300〜400rpmとした。これをペレット化し、表1の比較例4と同じ組成の含フッ素エラストマー組成物を得た。
得られた含フッ素エラストマー組成物を用いる以外は、実施例4と同様にして、未架橋の被覆電線及び架橋被覆電線を得た。
【0069】
[比較例9]
表3の(a)成分と(b)成分を15mm二軸押出成形機(L/D=45)に一括で投入し、2分混練した。温度は250〜300℃とし、スクリュー回転は300〜400rpmとした。これをペレット化し、表1の比較例7と同じ組成の含フッ素エラストマー組成物を得た。
得られた含フッ素エラストマー組成物を用いる以外は、実施例4と同様にして、未架橋の被覆電線及び架橋被覆電線を得た。
【0070】
[被覆電線の評価]
各例で得た被覆電線6種について、ウェルドラインを起点とした被覆材の剥離現象を確認するため、高温自己径巻付け試験を行った。また、成形体である被覆電線の耐熱性を確認するため、高温クラック温度試験を行った。
【0071】
(高温自己径巻付け試験)
作製した各被覆電線を、1mごとの長さに切断したものを電線サンプルとした。各例で得た被覆電線6種の電線サンプルを各々5本ずつ準備し、190℃の恒温槽内で96時間加熱した後、常温まで冷却した。その後、それぞれの電線サンプルについて、その電線サンプル自身の一端側の周囲に、残りの部分を線と線が接触するように緊密に10回以上巻き付けて、再度200℃の恒温槽内で1時間加熱した後、常温まで冷却した。冷却後、絶縁被覆材の剥離またはクラックがないかを目視により確認した。5本全てに剥離またはクラックがないものを○(良)、1本以上に剥離またはクラックがあるものを×(不良)とした。
【0072】
(高温クラック温度試験)
作製した各被覆電線を、1mごとの長さに切断したものを電線サンプルとした。各例で得た被覆電線6種の電線サンプルを所定の加熱温度毎に各々5本ずつ準備し、所定の加熱温度(T)に保温された恒温槽内で96時間加熱した後、常温まで冷却した。加熱温度は、180〜200℃の間で、5℃間隔(ΔT=20℃)で設定した。
その後、それぞれの電線サンプルについて、その電線サンプル自身の一端側の周囲に、残りの部分を線と線が接触するように緊密に10回以上巻き付けて、再度200℃の恒温槽内で1時間加熱した後、常温まで冷却した。冷却後、絶縁被覆材の剥離またはクラックがないかを目視により確認した。
その結果より、全クラックする最高温度(Th)とクラック百分率の総和(S)を求め、高温クラック温度(Tc)を以下の式で算出した。結果を表3に示す。
【0073】
高温クラック温度(Tc)=Th+ΔT(S/100−1/2)
クラック百分率:各加熱温度(T)において剥離またはクラックが発生した本数/5×100
クラック百分率の総和(S):各加熱温度(T)におけるクラック百分率の合計
全クラックする最高温度(Th):5本の全てに剥離またはクラックが発生したときの加熱温度
【0074】
【表3】
【0075】
高温自己径巻付け試験の結果、表3に示すように、実施例4の被覆電線は、電子線架橋の有無に関わらず、ウェルドラインを起点とした被覆材の剥離またはクラックが発生しなかった。一方、比較例8、9の被覆電線は、電子線架橋を行わなかった場合、ウェルドラインを起点とした部位から、被覆材の剥離またはクラックが発生した。
また、高温クラック温度試験の結果、実施例4の被覆電線は、電子線架橋をしていなくても200℃近くの全クラックする最高温度が得られたが、比較例8、9の被覆電線は、電子線架橋を行わなかった場合の全クラックする最高温度が低く耐熱性に劣っていた。