(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、
図1〜
図6に基づいて説明する。
【0014】
図1には、一実施形態の露光装置100の概略構成が示されている。露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、すなわち、いわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では投影光学系PLが設けられており、以下においては、この投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行なう。
【0015】
露光装置100は、照明系10、レチクルRを保持するレチクルステージRST、投影ユニットPU、ウエハWが載置されるウエハステージWSTを含むウエハステージ装置50、及びこれらの制御系等を備えている。
【0016】
照明系10は、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されるように、光源と、オプティカルインテグレータ等を含む照度均一化光学系、及びレチクルブラインド等(いずれも不図示)を有する照明光学系とを含む。照明系10は、レチクルブラインド(マスキングシステム)で規定されたレチクルR上のスリット状の照明領域IARを照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとしては、一例としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。
【0017】
レチクルステージRST上には、回路パターンなどがそのパターン面(
図1における下面)に形成されたレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系11(
図1では不図示、
図6参照)によって、XY平面内で微少駆動可能であるとともに、走査方向(
図1における紙面内左右方向であるY軸方向)に所定の走査速度で駆動可能となっている。
【0018】
レチクルステージRSTのXY平面(移動面)内の位置情報(θz方向の位置(以下ではθz回転量とも呼ぶ)の情報を含む)は、
図1に示される、移動鏡15(実際には、Y軸方向に直交する反射面を有するY移動鏡(あるいは、レトロリフレクタ)とX軸方向に直交する反射面を有するX移動鏡とが設けられている)に測長ビームを照射するレチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)16によって例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。なお、例えば米国特許出願公開第2007/0288121号明細書などに開示されているエンコーダシステムを、レチクル干渉計16の代わりに、あるいはそれと組み合わせて用いて、レチクルRの少なくとも3自由度方向の位置情報を計測しても良い。
【0019】
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの
図1における下方(−Z側)に配置され、不図示のボディの一部を構成するメインフレーム(メトロロジーフレーム)に保持されている。投影ユニットPUは、鏡筒40と、該鏡筒40に保持された複数の光学素子から成る投影光学系PLとを有している。投影光学系PLとしては、例えば、Z軸方向と平行な光軸AXに沿って配列された複数の光学素子(レンズエレメント)からなる屈折光学系が用いられている。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する。このため、照明系10からの照明光ILによって照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域IARに共役な領域(露光領域)IAに形成される。そして、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に相対移動するとともに、露光領域(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動することで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、このショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系10、及び投影光学系PLによってウエハW上にレチクルRのパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。
【0020】
なお、メインフレームは、従来用いられている門型、及び例えば米国特許出願公開第2008/0068568号明細書などに開示される吊り下げ支持型のいずれであっても良い。
【0021】
鏡筒40の−Z側端部の周囲には、例えば鏡筒40の下端面とほぼ同一面となる高さで、スケール板21がXY平面に平行に配置されている。スケール板21は、本実施形態では、この一部に鏡筒40の−Z側端部が挿入される円形の開口、及び後述するアライメント系の−Z側端部が挿入される円形の開口を有する矩形のプレートから成り、不図示のボディの一部に吊り下げ支持されている。本実施形態では、投影ユニットPUを支持する不図示のメインフレーム(メトロロジーフレーム)にスケール板21が吊り下げ支持されている。スケール板21の下面(−Z側の面)には、2次元グレーティングとして、Y軸方向を周期方向とする所定ピッチ、例えば1μmの格子と、X軸方向を周期方向とする所定ピッチ、例えば1μmの格子とから成る反射型の2次元回折格子RG(
図4及び
図5参照)が形成されている。この回折格子RGは、ウエハステージWSTの移動範囲をカバーしている。
【0022】
ウエハステージ装置50は、床面上に複数(例えば3つ又は4つ)の防振機構(図示省略)によってほぼ水平に支持されたステージベース12、該ステージベース12上に配置されたウエハステージWST、該ウエハステージWSTを駆動するウエハステージ駆動系27(
図1では一部のみ図示、
図6参照)、及びウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)の位置情報を計測する計測系を備えている。計測系は、
図6に示される、エンコーダシステム70及びウエハレーザ干渉計システム18等を備えている。なお、エンコーダシステム70及びウエハレーザ干渉計システム18については、さらに後述する。
【0023】
ステージベース12は、平板状の外形を有する部材からなり、その上面は平坦度が非常に高く仕上げられ、ウエハステージWSTの移動の際のガイド面とされている。ステージベース12の内部には、XY二次元方向を行方向、列方向としてマトリックス状に配置された複数のコイル14aを含む、コイルユニットが収容されている。
【0024】
ウエハステージWSTは、
図1に示されるように、ステージ本体91と、該ステージ本体91の上方に配置され、不図示のZ・チルト駆動機構によって、ステージ本体91に対して非接触で支持されたウエハテーブルWTBとを有している。この場合、ウエハテーブルWTBは、Z・チルト駆動機構によって、電磁力等の上向きの力(斥力)と、自重を含む下向きの力(引力)との釣り合いを3点で調整することで、非接触で支持されるとともに、Z軸方向、θx方向、及びθy方向の3自由度方向に微小駆動される。ステージ本体91の底部には、スライダ部91aが設けられている。スライダ部91aは、XY平面内でXY二次元配列された複数の磁石から成る磁石ユニットと、該磁石ユニットを収容する筐体と、該筐体の底面の周囲に設けられた複数のエアベアリングとを有している。磁石ユニットは、前述のコイルユニットとともに、例えば米国特許第5,196,745号明細書などに開示されるローレンツ電磁力駆動による平面モータ30を構成している。なお、平面モータ30としては、ローレンツ電磁力駆動方式に限らず、可変磁気抵抗駆動方式の平面モータを用いることもできる。
【0025】
ウエハステージWSTは、上記複数のエアベアリングによってステージベース12上に所定のクリアランス、例えば数μm程度のクリアランスを介して浮上支持され、平面モータ30によって、X軸方向、Y軸方向及びθz方向に駆動される。従って、ウエハテーブルWTB(ウエハW)は、ステージベース12に対して、6自由度方向に移動可能である。なお、平面モータ30によってウエハステージWSTを6自由度方向に駆動しても良い。
【0026】
本実施形態では、コイルユニットを構成する各コイル14aに供給される電流の大きさ及び方向が、主制御装置20によって制御される。平面モータ30と、前述のZ・チルト駆動機構とを含んで、
図6のウエハステージ駆動系27が構成されている。なお、平面モータ30はムービングマグネット方式に限らず、ムービングコイル方式でも良い。また、平面モータ30として、磁気浮上方式の平面モータを用いても良い。この場合、前述のエアベアリングを設けなくても良い。また、ウエハテーブルWTBを、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の少なくとも1つの方向に微動可能としても良い。すなわち、ウエハステージWSTを粗微動ステージにより構成しても良い。
【0027】
ウエハテーブルWTB上には、不図示のウエハホルダを介してウエハWが載置され、不図示のチャック機構によって例えば真空吸着(又は静電吸着)され、固定されている。また、ウエハテーブルWTBの+Y側の面(+Y端面)及び−X側の面(−X端面)には、それぞれ鏡面加工が施され、
図2に示されるように、後述するウエハレーザ干渉計システムで用いられる、反射面17a,17bが形成されている。
【0028】
エンコーダシステム70は、ウエハステージWSTのXY平面内の位置情報(θz回転量の情報を含む)を計測する。ここで、エンコーダシステム70の構成等について詳述する。
【0029】
ウエハテーブルWTBには、
図2の平面図に示されるように、その4隅にそれぞれエンコーダヘッド(以下、適宜、ヘッドと略述する)60A,60B,60C,60Dが取り付けられている。これらのヘッド60A〜60Dは、
図3にヘッド60Cを代表的に採り上げて示されるように、ウエハテーブルWTBにそれぞれ形成されたZ軸方向の貫通孔24の内部に収容されている。
【0030】
ウエハテーブルWTB上面の一方の対角線上に位置する一対のヘッド60A、60Cは、Y軸方向を計測方向とするヘッドである。また、ウエハテーブルWTB上面のもう一方の対角線上に位置する一対のヘッド60B、60Dは、X軸方向を計測方向とするヘッドである。ヘッド60A〜60Dのそれぞれとしては、例えば米国特許第7,238,931号明細書、及び国際公開第2007/083758号などに開示されるヘッド(エンコーダ)と同様の構成のものが用いられている。ただし、本実施形態では、後述するように光源及び光検出器は各ヘッドの外部に設けられ、光学系のみが各ヘッドの内部に設けられている。そして、光源及び光検出器と、光学系とは、後述する光ファイバを介して光学的に接続されている。
【0031】
ヘッド60A,60Cは、スケール板21に計測ビーム(計測光)を照射し、スケール板21表面(下面)に形成されたY軸方向を周期方向とする格子からの回折ビームを受光して、ウエハステージWSTのY軸方向の位置を計測するYリニアエンコーダ(以下、適宜、Yエンコーダ又はエンコーダと略述する)70A,70C(
図6参照)をそれぞれ構成する。また、ヘッド60B,60Dは、スケール板21に計測ビームを照射し、スケール板21表面に形成されたX軸方向を周期方向とする格子からの回折ビームを受光して、ウエハステージWSTのX軸方向の位置を計測するXリニアエンコーダ(以下、適宜、エンコーダと略述する)70B,70D(
図6参照)をそれぞれ構成する。
【0032】
本実施形態では、
図3の円C内の一部を拡大した
図4に示されるように、ヘッド60Cは、幅及び奥行きに比べて高さが低い四角柱状(すなわち直方体状)の光学系収容部22aと、該光学系収容部22aの下方にY軸方向に延設された所定長さの四角柱状のファイバ収容部22bとの2部分を有するハウジング22を有している。光学系収容部22aは、ファイバ収容部22bより外側に周囲全体に渡り一部が張り出している。前述の貫通孔24は、
図4に示されるように、ハウジング22の形状に応じた形状に形成されている。そして、ハウジング22は、上記張り出し部の下面が、貫通孔24の段部に当接する状態で、ウエハテーブルWTBに取り付けられている。この場合、ハウジング22の貫通孔24内部への挿入を容易にするため、貫通孔24の内壁面とハウジング22の外周面との間には、所定のクリアランスが形成される程度に、両者の寸法が設定されている。
【0033】
ハウジング22には、光ファイバ62a,62b及び62cの一端が、それぞれ接続されている。光ファイバ62a,62b,62cは、ファイバ収容部22bの下端、すなわちウエハテーブルWTBの下面の近傍で、ステージ本体91の上端部に突設されたファイバ保持部28によって、ウエハテーブルWTBがステージ本体91に対して微小駆動されても、それらに応力が加わらないように、保持されている。
【0034】
光ファイバ62aは送光用ファイバであり、その他端はステージ本体91に設けられた光源(不図示)、例えば半導体レーザなどに光学的に接続されている。また、光ファイバ62b,62cは受光用ファイバであり、それぞれの他端はステージ本体91に設けられた第1、第2受光系(不図示)に光学的に接続されている。第1、第2受光系は、それぞれ、偏光子(検光子)及び光検出器、例えばフォトマルチプライヤ・チューブなどを含む。なお、光ファイバ62a,62b,62cのハウジング22内部の構成については後述する。
【0035】
ここで、ヘッド60Cのハウジング22内部に収容された光学系の構成などについて、
図5に基づいて説明する。
【0036】
光学系収容部22aの内部には、
図5に示されるように、例えば、その分離面がXZ平面と平行である偏光ビームスプリッタPBS、一対の反射ミラーR1a,R1b、レンズL2a,L2b、四分の一波長板(以下、λ/4板と表記する)WP1a,WP1b、及び反射ミラーR2a,R2b等が、所定の位置関係で、不図示の支持部材などを介して、ハウジング22に固定されて成る主光学系64と、副光学系64
0(詳細については後述する)とが、収容されている。
【0037】
光ファイバ62aは、
図5に示されるように、ハウジング22の内部で、第1部分62a
1と第2部分62a
2とに分離されており、第1部分62a
1と第2部分62a
2とは、ビームスプリッタBSを介して光学的に接続されている。ビームスプリッタBSは、入射面を光ファイバ62aの第2部分62a
2の一端側の端面に対向させ、射出面を光ファイバ62aの第1部分62a
1の他端側の端面に対向させた状態で、不図示の支持部材を介してハウジング22に固定されている。
【0038】
光学系64の偏光ビームスプリッタPBSの入射面に対向して光ファイバ62aの第1部分62a
1の一端側の端面が配置され、偏光ビームスプリッタPBSの射出面に対向して光ファイバ62bの一端側の端面が配置されている。
【0039】
ヘッド60C(Yエンコーダ70C)において、ステージ本体91に設けられた光源(不図示)からレーザビームLBが射出され、光ファイバ62a(より正しくは、第2部分62a
2、ビームスプリッタBS、及び第1部分62a
1)を介して偏光ビームスプリッタPBSに入射し、偏光分離により2つの計測ビームLB
1,LB
2となる。偏光ビームスプリッタPBSを透過した計測ビームLB
1は反射ミラーR1aを介してスケール板21に到達し、偏光ビームスプリッタPBSで反射された計測ビームLB
2は反射ミラーR1bを介してスケール板21に到達する。なお、ここで「偏光分離」とは、入射ビームをP偏光成分とS偏光成分に分離することを意味する。
【0040】
計測ビームLB
1,LB
2の照射によって回折格子RGから発生する所定次数の回折ビーム、例えば1次回折ビームは、それぞれレンズL2a,L2bを介して、λ/4板WP1a,WP1bにより円偏光に変換された後、反射ミラーR2a,R2bにより反射されて再度λ/4板WP1a,WP1bを通り、往路と同じ光路を逆方向に辿って偏光ビームスプリッタPBSに達する。
【0041】
偏光ビームスプリッタPBSに達した2つの1次回折ビームは、各々この偏光方向が元の方向に対して90度回転している。このため、先に偏光ビームスプリッタPBSを透過した計測ビームLB
1の1次回折ビームは、偏光ビームスプリッタPBSで反射される。先に偏光ビームスプリッタPBSで反射された計測ビームLB
2の1次回折ビームは、偏光ビームスプリッタPBSを透過する。そして、計測ビームLB
1,LB
2それぞれの1次回折ビームは同軸上に合成され、合成ビームLB
12として、光ファイバ62bに入射する。合成ビームLB
12は、光ファイバ62bを介して、ステージ本体91に設けられた第1受光系(不図示)に送光される。
【0042】
第1受光系(不図示)の内部では、合成ビームLB
12として合成されたビームLB
1,LB
2の1次回折ビームが例えば検光子によって偏光方向が揃えられ、相互に干渉して干渉光となり、この干渉光が光検出器によって検出され、干渉光の強度に応じた電気信号に変換される。ここで、計測方向(この場合、Y軸方向)に関する、ウエハステージWSTの移動によるヘッド60Cとスケール板21との相対移動によって2つのビーム間の位相差が変化して干渉光の強度が変化する。この干渉光の強度の変化が、受光系(不図示)によって検出され、この強度変化に応じた位置情報がYエンコーダ70Cの主計測値として主制御装置20(
図6参照)に出力される。
【0043】
上の説明からわかるように、Yエンコーダ70C(エンコーダヘッド60C)では、ビームLB
1,LB
2の空気中での光路長が極短いため、空気揺らぎの影響がほとんど無視できる。
【0044】
その他のヘッド60A,60B,60D(エンコーダ70A,70B,70D)等も、ヘッド60C(エンコーダ70C)と同様にして構成されている。
【0045】
前述のようにウエハテーブルWTB上にヘッドを搭載する場合、ウエハテーブルWTBが動くこと(ウエハテーブルWTBに加速度が加えられること)等により、ヘッドの位置が設計位置からずれたり、この姿勢が基準姿勢から変化したりする蓋然性が高く、かかるヘッドの位置(姿勢を含む)の変化は、エンコーダシステム70によるウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)の位置計測の誤差要因となる。そこで、本実施形態では、ヘッド60A〜60Dのそれぞれに、ウエハテーブルWTBに対するヘッドの位置及び姿勢の変化を計測するための、前述の副光学系64
0が設けられている。
【0046】
ここで、
図5に示される、ヘッド60Cのハウジング22内部の副光学系64
0を代表的に取り上げて、副光学系の構成などについて説明する。
【0047】
ハウジング22のファイバ収容部22bの内部には、XY平面及びXZ平面と45度をなす分離面を有する偏光ビームスプリッタPBS
0、λ/4板WP,WP
0、及び参照ミラーRM
0等が、所定の位置関係で、不図示の支持部材などを介して、ハウジング22に固定されて成る副光学系64
0が、収容されている。
【0048】
前述したビームスプリッタBSにより、光ファイバ62aの第2部分62a
2を介して導光されるレーザビームLBは、主光学系64に対する入射ビームと、計測ビームLB
0とに分岐される。計測ビームLB
0は、副光学系64
0の偏光ビームスプリッタPBS
0に入射し、偏光分離されて測長ビームと参照ビームとなる。測長ビームは偏光ビームスプリッタPBS
0で反射され、Y軸に平行な光路に沿って、λ/4板WPを通り、ファイバ収容部22b(ハウジング22)に設けられた開口部(又は光透過部)を介して、ウエハテーブルWTBの貫通孔24の+Y側の内壁面に入射する。
【0049】
ウエハテーブルWTBの貫通孔24の+Y側の内壁面には、鏡面加工が施されて、Y軸に垂直な反射面RMが形成されている。従って、測長ビームは反射面RMで反射され、元の光路を逆に辿って偏光ビームスプリッタPBS
0に戻る。この際、測長ビームは、λ/4板WPを2度通ることで、その偏光方向は元の方向から90度回転している。このため、測長ビームは偏光ビームスプリッタPBS
0を透過する。
【0050】
一方、参照ビームは偏光ビームスプリッタPBS
0を透過し、Z軸に平行な光路に沿って、λ/4板WP
0を通り、参照ミラーRM
0に入射し、反射される。反射された参照ビームは、元の光路を逆に辿って、再度λ/4板WP
0を通り、偏光ビームスプリッタPBS
0に戻る。ここで、参照ビームがλ/4板WPを2度通ることにより、その偏光方向は元の方向から90度回転している。このため、参照ビームは偏光ビームスプリッタPBS
0で反射される。
【0051】
偏光ビームスプリッタPBS
0を透過した測長ビームは、偏光ビームスプリッタPBS
0で反射された参照ビームと、同軸上に合成され、合成ビームLB
0として光ファイバ62cに入射する。合成ビームLB
0は、光ファイバ62cを介して、ステージ本体91に設けられた第2受光系(不図示)に送光される。
【0052】
第2受光系(不図示)の内部では、合成ビームLB
0として合成された側長ビームと参照ビームが例えば検光子によって偏光方向が揃えられ、相互に干渉して干渉光となり、この干渉光が光検出器によって検出され、干渉光の強度に応じた電気信号に変換される。ここで、例えばウエハテーブルWTBの動きに伴いヘッド60Cの設置位置がY軸方向にずれると、ヘッド60C内の副光学系64
0と反射面RMとの相対距離が変化する。これにより、測長ビームの光路長が変化し、該測長ビームと参照ビームとの光路長との差(光路差)が変化するため、干渉光の強度が変化する。この干渉光の強度の変化が受光系によって検出され、Y軸方向に関するヘッド60Cと反射面RMとの相対位置、すなわちウエハテーブルWTBとの相対位置dYに関する情報が、Yエンコーダ70C(ヘッド60C)の副計測値として主制御装置20に出力される。
【0053】
なお、副光学系64
0に加えて副光学系64
0と同様の別の副光学系を設け、その別の副光学系を、副光学系64
0の+Z側に所定距離離間して配置しても良い。例えば、光ファイバ62aの第1部分を2つに切断して、その切断した2部分の端面間にビームスプリッタBSと同様にして別のビームスプリッタを配置し、主光学系64に向かうレーザビームLBの一部をそのビームスプリッタで分岐して取り出し、別の副光学系に対する入射ビームとしても良い。勿論、別の副光学系の計測ビームと参照ビームの合成ビームは、上記と同様に光ファイバを介して別の受光系(第3受光系)に送られる。この場合、主制御装置20は、副光学系64
0と別の副光学系との副計測値の平均値として、ヘッド60CとウエハテーブルWTBとのY軸方向に関する相対位置dYを求めることができるとともに、2つの副計測値の差に基づいて、ヘッド60CとウエハテーブルWTBとのθx方向に関する相対姿勢(傾斜)dθxを求めることができる。以下では、上述の2つの副光学系が設けられているものとして、説明を行う。
【0054】
上述のように、Yエンコーダ70C(ヘッド60C)の出力として、スケール板21に対するヘッド60CのY軸方向に関する位置情報Y(主計測値)と、異なるZ位置におけるウエハテーブルWTBに対するヘッド60CのY軸方向に関する相対位置dY(2つの副計測値)が得られる。そこで、主制御装置20は、その2つの副計測値を用いて前述の如く、ウエハテーブルWTBに対するヘッド60CのY軸方向に関する相対位置dYとθx方向に関する相対姿勢dθxとを算出し、その相対位置dYと相対姿勢dθxの算出結果を用いて、位置情報Yに対する補正量ΔY(dY,θx)を求め、該補正量ΔY(dY,θx)を位置情報Yの計測値に加えて、Y+ΔY(dY,θx)と補正する。なお、2つの副計測から、ウエハテーブルWTBに対するヘッド60CのY軸方向に関する相対位置dYとθx方向に関する相対姿勢dθxとを算出する演算回路を、Yエンコーダ70Cの一部として設けても良い。
【0055】
なお、補正量ΔY(dY,θx)は、スケール板21上面を基準とするヘッド60Cの位置及び姿勢より、幾何学的に求めることができる。あるいは、オペレータの指示に基づき、主制御装置20は、次のようにして、補正量ΔY(dY,θx)を実験的に求めても良い。すなわち、主制御装置20は、ウエハテーブルWTBを例えばY軸方向に駆動しつつ、エンコーダシステム70と後述するウエハ干渉計システム18(
図6参照)とを用いてウエハテーブルWTBのY軸方向及びθx方向に関する位置の同時計測を、所定の複数のサンプリング点について、行う。次に、主制御装置20は、Yエンコーダ70C(ヘッド60C)の計測値と、ウエハ干渉計システム18の計測結果から予測されるYエンコーダ70C(ヘッド60C)の計測値の予測値との差を、複数のサンプリング点のそれぞれについて求める。そして、主制御装置20は、この差を表す、ヘッド60Cの相対位置dYと相対姿勢dθxに関する関数を求め、この関数を補正量ΔY(dY,θx)とする。
【0056】
その他のヘッド60A,60B,60D(エンコーダ70A,70B,70D)にも、ヘッド60C(エンコーダ70C)と同様の2つの副光学系が、それぞれ設けられている。ただし、主制御装置20は、ヘッド60B,60D(エンコーダ70B,70D)の計測値に基づいて、ウエハテーブルWTBに対するヘッド60B,60DのX軸方向に関する相対位置dXとθy方向に関する相対姿勢dθyを算出する。そして、主制御装置20は、これらのヘッドについては、相対位置dXと相対姿勢dθyの算出結果を用いて、X軸方向に関する位置情報Xに対する補正量ΔX(dX,θy)を求め、その求めた補正量を位置情報Xの計測値に加えて、X+ΔX(dX,θy)と補正する。なお、この場合も、2つの副計測から、ウエハテーブルWTBに対する各ヘッドの計測方向に関する相対位置と計測方向についての傾斜方向に関する相対姿勢とを算出する演算回路を、各エンコーダの一部として設けても良い。
【0057】
エンコーダシステム70の各ヘッド(60A〜60D)の計測値及び副計測値は、主制御装置20に供給される。主制御装置20は、上述のように、各ヘッドの副計測値に基づいて所定の演算を行い、位置情報(例えば、ヘッド60Cについては位置情報Y)に対する補正量を求め、補正量を位置情報の計測値に加えて補正する。そして、主制御装置20は、回折格子RGが形成されたスケール板21の下面に対向する少なくとも3つのヘッド(すなわち、有効な計測値を出力している少なくとも3つのヘッド)の補正後の計測値を用いて、ウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)のXY平面内の位置情報(θz回転量の情報を含む)を計測する。
【0058】
また、本実施形態の露光装置100では、ウエハステージWSTの位置は、ウエハレーザ干渉計システム(以下、「ウエハ干渉計システム」という)18(
図6参照)によって、エンコーダシステム70とは独立して、計測可能である。
【0059】
ウエハ干渉計システム18は、
図2に示されるように、ウエハテーブルWTBの反射面17aにY軸方向と平行な複数の測長ビームを照射するY干渉計18Yと、反射面17bにX軸方向と平行な1又は2以上の測長ビームを照射するX干渉計とを備え、このX干渉計は複数、本実施形態では2つのX干渉計18X
1,18X
2を含む。
【0060】
Y干渉計18YのY軸方向に関する実質的な測長軸は、投影光学系PLの光軸AXと、後述するアライメント系ALGの検出中心とを通るY軸方向の直線である。Y干渉計18Yは、ウエハテーブルWTBのY軸方向、θz方向(及びθx方向)の位置情報を計測する。
【0061】
また、X干渉計18X
1のX軸方向に関する実質的な測長軸は、投影光学系PLの光軸AXを通るX軸方向の直線である。X干渉計18X
1は、ウエハテーブルWTBのX軸方向、θz方向(及びθy方向)の位置情報を計測する。
【0062】
また、X干渉計18X
2の測長軸は、アライメント系ALGの検出中心を通るX軸方向の直線である。X干渉計18X
1は、ウエハテーブルWTBのX軸方向(及びθy方向)の位置情報を計測する。
【0063】
なお、反射面17a,17bに代えて、例えばウエハテーブルWTBの端部に、平面ミラーからなる移動鏡を取り付けても良い。また、ウエハテーブルWTBにXY平面に対し45度傾斜した反射面を設け、該反射面を介してウエハテーブルWTBのZ軸方向の位置を計測するようにしても良い。
【0064】
ウエハ干渉計システム18の各干渉計の計測値は、主制御装置20に供給される。但し、本実施形態では、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のXY平面内の位置情報(θz回転量の情報を含む)は、主として、上述したエンコーダシステム70によって計測され、干渉計18Y、18X
1、18X
2の計測値は、エンコーダシステム70の計測値の長期的変動(例えばスケールの経時的な変形などによる)を補正(較正)する場合、あるいはエンコーダシステム70の出力異常時のバックアップ用などとして補助的に用いられる。
【0065】
アライメント系ALGは、
図1及び
図2に示されるように、投影光学系PLの−Y側に所定間隔を隔てて配置されたオフアクシス方式のアライメント系である。本実施形態では、アライメント系ALGとして、一例としてハロゲンランプ等のブロードバンド(広帯域)光でマークを照明し、このマーク画像を画像処理することによってマーク位置を計測する画像処理方式のアライメントセンサの一種であるFIA(Field Image Alignment)系が用いられている。アライメント系ALGからの撮像信号は、不図示のアライメント信号処理系を介して主制御装置20(
図6参照)に供給される。
【0066】
なお、アライメント系ALGとしては、FIA系に限らず、例えばコヒーレントな検出光をマークに照射し、そのマークから発生する散乱光又は回折光を検出する、あるいはマークから発生する2つの回折光(例えば同次数の回折光、あるいは同方向に回折する回折光)を干渉させて検出するアライメントセンサを単独であるいは適宜組み合わせて用いることは勿論可能である。アライメント系ALGとして、例えば米国特許出願公開第2008/0088843号明細書などに開示される、複数の検出領域を有するアライメント系を採用しても良い。
【0067】
この他、本実施形態の露光装置100には、投影ユニットPUの近傍に、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示されるものと同様の構成の斜入射方式の多点焦点位置検出系(以下、多点AF系と略述する)AF(
図1では不図示、
図6参照)が設けられている。多点AF系AFの検出信号は、AF信号処理系(不図示)を介して主制御装置20に供給される(
図6参照)。主制御装置20は、多点AF系AFの検出信号に基づいて、各検出点におけるウエハW表面のZ軸方向の位置情報を検出し、この検出結果に基づいて走査露光中のウエハWのいわゆるフォーカス・レベリング制御を実行する。なお、アライメント系ALGの近傍に多点AF系を設けて、ウエハアライメント時にウエハ表面の面位置情報(凹凸情報)を事前に取得し、露光時には、その面位置情報とウエハテーブル上面のZ軸方向の位置を検出する別のセンサ(例えば、エンコーダあるいは干渉計など)の計測値とを用いて、ウエハWのいわゆるフォーカス・レベリング制御を実行することとしても良い。
【0068】
露光装置100では、さらに、レチクルRの上方に、露光波長の光を用いたTTR(Through The Reticle)方式の一対のレチクルアライメント検出系13A,13B(
図1では不図示、
図6参照)が設けられている。レチクルアライメント検出系13A,13Bの検出信号は、不図示のアライメント信号処理系を介して主制御装置20に供給される。
【0069】
図6には、露光装置100のステージ制御に関連する制御系が一部省略してブロック図にて示されている。この制御系は、主制御装置20を中心として構成されている。主制御装置20は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等からなるいわゆるマイクロコンピュータ(又はワークステーション)を含み、装置全体を統括して制御する。
【0070】
上述のようにして構成された露光装置100では、デバイスの製造に際し、前述のレチクルアライメント検出系13A,13B、ウエハテーブルWTB上の基準板(不図示)などを用いて、通常のスキャニング・ステッパと同様の手順(例えば、米国特許第5,646,413号明細書などに開示される手順)で、レチクルアライメント及びアライメント系ALGのベースライン計測が行われ、これと前後してウエハアライメント(例えば米国特許第4,780,617号明細書などに開示されるエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA)など)などが行われる。
【0071】
そして、主制御装置20により、ベースラインの計測結果、及びウエハアライメントの結果に基づいて、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行われ、ウエハW上の複数のショット領域にレチクルRのパターンがそれぞれ転写される。この露光動作は、前述したレチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期移動を行う走査露光動作と、ウエハステージWSTをショット領域の露光のための加速開始位置に移動するショット間移動(ステッピング)動作とを交互に繰り返すことで行われる。
【0072】
本実施形態の露光装置100では、上述の一連の動作中、主制御装置20により、エンコーダシステム70を構成する複数のエンコーダヘッド60A〜60Dのうち、回折格子RGが形成されたスケール板21の下面に対向する少なくとも3つのエンコーダヘッド(すなわち、有効な計測値を出力している少なくとも3つのエンコーダヘッド)の計測値を前述した手順で補正しつつ、その補正後の計測値に基づいて、ウエハテーブルWTBがXY平面内で駆動される。
【0073】
以上説明したように、本実施形態の露光装置100によると、主制御装置20により、エンコーダシステム70を介して計測されたXY平面内におけるウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)の位置情報(θz回転量の情報を含む)と、その位置情報の計測に用いられた、スケール板21(回折格子RG)に対向する少なくとも3つのエンコーダヘッド(すなわち、有効な計測値を出力している少なくとも3つのエンコーダヘッド(エンコーダヘッド60A〜60Dのうちの少なくとも3つ)それぞれとウエハテーブルWTBとの相対位置に関する情報とに基づいて、ウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)が駆動される。従って、ウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)の駆動に伴い、エンコーダヘッドがウエハテーブルWTBに対して移動した場合であっても、高精度なウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)の位置情報の計測、ひいては高精度なウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)の駆動制御が可能となる。
【0074】
また、本実施形態の露光装置100によると、走査露光時においても、主制御装置20は、上述のようにしてスケール板21(回折格子RG)に対向する少なくとも3つのエンコーダヘッドの計測値を、それぞれのエンコーダヘッドとウエハテーブルWTBとの相対位置に関する情報に基づいて補正しつつ、レチクルR(レチクルステージRST)に同期して、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)を精度良く走査方向に駆動するので、走査露光の前後のウエハステージWSTの加減速の影響を受けることなく、ウエハW上にレチクルRのパターンを精度良く転写することができる。
【0075】
なお、上記実施形態では、ヘッド60A,60C(エンコーダ70A,70C)は、その計測方向であるY軸方向に関するウエハテーブルWTBとの相対位置dYと計測方向についての傾斜方向(θx方向)に関するウエハテーブルWTBとの相対姿勢(傾斜)dθxに対してのみ感度をもつことを前提として説明を行った。しかし、ヘッド60A,60C(エンコーダ70A,70C)が、X軸方向に関するウエハテーブルWTBとの相対位置dXとθy方向に関するウエハテーブルWTBとの相対姿勢dθyに対しても感度をもつ場合には、相対位置dXと相対姿勢dθyを計測する副光学系をさらに設けることが望ましい。この場合、主制御装置20は、相対位置dX,dY及び相対姿勢dθx,dθyの計測値を用いて、Y軸方向に関する位置情報Yに対する補正量ΔY(dX,dY,dθx,dθy)を求め、それを加えて位置情報Yの計測値を補正する。
【0076】
同様に、ヘッド60B,60D(エンコーダ70B,70D)が、Y軸方向に関するウエハテーブルWTBとの相対位置dYとθx方向に関するウエハテーブルWTBとの相対姿勢dθxに対しても感度をもつ場合、相対位置dYと相対姿勢dθxを計測する副光学系をさらに設けることが望ましい。この場合、主制御装置20は、相対位置dX,dY及び相対姿勢dθx,dθyの計測値を用いて、X軸方向に関する位置情報Xに対する補正量ΔX(dX,dY,dθx,dθy)を求め、それを加えて位置情報Xの計測値を補正する。なお、補正量は、先と同様に求めることができる。
【0077】
なお、上記実施形態では、各ヘッド60A〜60D(エンコーダ70A〜70D)として、1つの方向(X軸方向又はY軸方向)のみを計測方向とする1次元エンコーダを用いる場合を例示したが、これらのヘッドに代えて、X軸方向とY軸方向とを計測方向とする2次元ヘッド(エンコーダ)を採用することもできる。この場合、上述した補正量ΔY(dX,dY,dθx,dθy)、ΔX(dX,dY,dθx,dθy)を求める取り扱いが必須となる。すなわち、副光学系64
0と同様の構成の副光学系を少なくとも4つ、各ヘッドのファイバ収容部22bに設ける。具体的には、Y軸に平行な測長軸を有する2つの副光学系をZ軸方向に離間して設け、X軸に平行な測長軸を有する2つの副光学系をZ軸方向に離間して設ける。そして、これらの副光学系のそれぞれから出力される副計測値に基づいて、主制御装置20は、各ヘッドのウエハテーブルWTBに対するX軸方向及びY軸方向に関する相対位置dX,dYとθx方向及びθy方向に関する相対姿勢dθx,dθyとを算出し、この算出結果に基づき、位置情報X,Yに対する補正量ΔX(dX,dY,dθx,dθy),ΔY(dX,dY,dθx,dθy)を求め、これらの補正量を加えて位置情報X,Yの計測値を補正する。なお、補正量は、先と同様に求めることができる。
【0078】
さらに、ヘッド60A〜60D(エンコーダ70A〜70D)が、ウエハテーブルWTBに対する相対位置dZ及び/又は相対姿勢(回転)dθzに対しても感度をもつ場合、相対位置dZ及び/又は相対姿勢dθzを計測するための副光学系をさらに設けることとする。そして、主制御装置20は、相対位置dX,dYと、相対姿勢dθx,dθyと、相対位置dZ及び/又は相対姿勢dθzとの計測結果(算出結果)を用いて補正量を求め、それを加えて各ヘッドの計測方向に関する位置情報の計測値を補正する。なお、補正量は、先と同様に求めることができる。
【0079】
なお、上記実施形態では、各ヘッド60A〜60Dに、それらのウエハテーブルWTBに対する相対位置(相対姿勢を含む)を計測するための光学式(非接触式)の変位センサ(副光学系64
0)を用いる場合について例示した。しかし、この変位センサに代えて加速度センサを用いても良い。この場合、各ヘッドから計測方向に関するウエハテーブルWTBの位置情報の計測値とともに、このヘッドに加わる加速度情報の計測値が出力される。これらの計測値は主制御装置20に送られる。主制御装置20は、加速度情報の計測値に対して数値処理を施して、ヘッドとウエハテーブルWTBとの相対位置に変換する。主制御装置20は、変換により求められた相対位置を用いて、先と同様に、ウエハテーブルWTBの位置情報を補正することができる。
【0080】
また、変位センサは、ヘッドにスケールを設けるエンコーダなどでも良いし、非接触式に限らず、接触式でも良い。
【0081】
また、上記実施形態では、走査露光時などに変位センサを用いてリアルタイムに各ヘッド60A〜60DのウエハテーブルWTBに対する相対位置(相対姿勢を含む)を計測し、その計測結果に基づいてウエハテーブルWTBの位置情報を補正するための補正情報を取得する場合について説明したが、これに限らず、事前に試し焼き(テスト露光)を行って、その結果に基づいて、補正情報を取得しておいても良い。
【0082】
また、加速度情報を用いる場合、その計測系は加速度センサに限らず、例えば干渉計の計測情報から加速度情報を得ても良いし、加速度情報の計測系は設けず、ウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)を移動させるための推力の情報からヘッドの変位情報を求めても良い。ウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)の移動だけでなく、例えばウエハテーブルWTB又はヘッドの熱変形などによっても計測誤差が生じるが、上記実施形態では、結果的にその計測誤差をも補正している。
【0083】
ウエハテーブル(微動ステージ)にエンコーダヘッドを設ける場合、ウエハテーブル(微動ステージ)及びエンコーダヘッドのチルト(θx方向及びθy方向の回転)による計測誤差はエンコーダシステムで元々補正計算しており、それ故、変位センサを用いて、各ヘッドのウエハテーブルWTBに対するX軸方向及びY軸方向に関する相対位置dX,dYのみならず、θx方向及びθy方向に関する相対姿勢dθx,dθyをも算出し、この算出結果に基づき算出された補正量を用いて位置情報X,Yの計測値を補正する場合、チルトに起因する計測誤差が二重に補正されないようにする。
【0084】
なお、上記実施形態では、単一のウエハステージを備える露光装置に本発明が適用された場合について例示したが、これに限らず、例えば、米国特許第6,590,634号明細書、米国特許第5,969,441号明細書、米国特許第6,208,407号明細書などに開示されるように複数のウエハステージを備えたマルチステージ型の露光装置に本発明を適用しても良い。また、例えば、国際公開第2005/074014号などに開示されるようにウエハステージとは別に、計測部材(例えば、基準マーク、及び/又はセンサなど)を含む計測ステージを備える露光装置(参照)に本発明を適用しても良い。すなわち、計測ステージを備える露光装置であって、計測ステージの位置情報をエンコーダで計測する場合に、エンコーダの計測誤差を前述と同様にして、補正することとしても良い。
【0085】
さらに、複数のウエハステージを備えたマルチステージ型の露光装置、例えば2つのウエハステージを備えた露光装置では、計測ステーションでウエハの位置情報(マーク情報、面位置情報などを含む)を計測する場合にも、本発明を同様に適用して、その計測ステーションにあるウエハステージの位置を計測するエンコーダの計測誤差を補正することとしても良い。この場合、エンコーダの変位情報からエンコーダの計測情報を補正しても良いし、あるいはマーク位置の計測情報を補正しても良い。また、面位置情報の計測時にはXY座標と対応付けてその結果を記憶するが、その対応付けるXY座標を補正することとしても良い。
【0086】
また、上記実施形態では、エンコーダシステム70が、一対のXヘッドと、一対のYヘッドとを備えた場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。すなわち、エンコーダヘッドの数は特に問わないが、ウエハステージWSTのXY平面内の位置情報(θz回転量の情報を含む)を計測するためには、XヘッドとYヘッドとを少なくとも各1つ含み、合計で3つ有していれば良い。また、1次元ヘッドに代えて2次元ヘッドを採用する場合、少なくとも2つの2次元ヘッドがあれば、ウエハステージWSTのXY平面内の位置情報(θz回転量の情報を含む)を計測することができる。
【0087】
なお、上記実施形態におけるウエハステージでのエンコーダ(ヘッド)の配置は一例であって、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、ウエハステージの4隅に、それぞれ、エンコーダ及びそのバックアップ用エンコーダを、ステージ中心から放射方向に沿って配置しても良い。
【0088】
また、ウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)などの移動体の一面上にエンコーダヘッドを配置する場合に、ヘッド本体は移動体の内部に配置し、一面には受光部のみを配置しても良い。
【0089】
また、上記実施形態において、Z軸方向の位置情報の計測が可能なセンサ(又はヘッド)を併用しても良いし、X軸方向及びY軸方向の位置情報の計測が可能なセンサ(又はヘッド)あるいはX軸方向を計測方向とするセンサ(Xセンサ)とY軸方向を計測方向とするセンサ(Yセンサ)とを組み合わせても良い。また、メインセンサに加えて、該メインセンサの出力異常時等にそのバックアップに用いられるバックアップセンサをも設けても良いし、メインセンサとバックアップセンサとを複数グループ設ける場合、グループ毎に微動ステージのグレーティングを兼用させても良い。
【0090】
また、上記実施形態では、エンコーダは、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方の位置情報を計測可能としたが、これに限らず、例えばZ軸方向のみ計測可能としても良い。
【0091】
また、上記実施形態では、スケール板21の下面に2次元回折格子が形成されているものとしたが、これに限らず、ウエハステージの移動経路(各ヘッドの移動経路)に応じた配置になっていれば、スケール板21の下面に、X軸方向を周期方向とするXグレーティングと、Y軸方向を周期方向とするYグレーティングとを組み合わせて形成しても良い。また、スケール板21を複数のスケール板を組み合わせて構成しても良い。あるいは、少なくとも露光動作とアライメント動作でエンコーダによる計測が可能となるようにスケールを配置するだけでも良い。
【0092】
また、例えば投影光学系とアライメント系とが離れている露光装置などでは、投影光学系の近傍(周囲)と、アライメント系の近傍(周囲)とで別々のスケール板を配置しても良い。この場合、ウエハWの露光動作を行う際には、投影光学系の近傍に配置されたスケール板を用いて、エンコーダシステムにより、ウエハステージの位置が計測され、ウエハアライメントの際などには、アライメント系の近傍に配置されたスケール板を用いて、エンコーダシステムにより、ウエハステージの位置が計測されることとなる。
【0093】
また、上記実施形態では、エンコーダシステムに加えて、ウエハ干渉計システムが設けられている場合を例示したが、ウエハ干渉計システムは、必ずしも設けなくても良い。
【0094】
また、上記実施形態では、ヘッド60A〜60Dの外部(ステージ本体91)に光源及び受光系(光検出器を含む)を配置し、これら光源及び受光系とヘッド60A〜60Dそれぞれとの間で、光ファイバ62a〜62cを用いて、光源からエンコーダヘッドに入射する光(計測光)及びエンコーダヘッドから受光系に戻る光の両者を導光する場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、エンコーダヘッド内に半導体レーザなどの光源を有している場合には、各エンコーダヘッドと受光系(光検出器を含む)との間を光ファイバで光学的に接続するのみで良い。あるいは、エンコーダヘッド内に受光系(光検出器を含む)を有していても良い。この場合において、ヘッドの外部に光源がある場合には、光源とヘッドとの間で、光源からの計測光の光ファイバを介した送光を上記実施形態と同様に行う。
【0095】
また、上記実施形態では、前述の各光ファイバに代えて、リレー光学系その他の送光光学系を用いることも可能である。また、上記実施形態では、ヘッド60A〜60Dそれぞれと光ファイバを介して光学的に接続される光源及び受光系(光検出器を含む)が、ステージ本体91に配置されている場合を例示したが、必ずしも光源及び受光系(光検出器を含む)等の全てがステージ本体91に配置されている必要はない。
【0096】
また、ウエハテーブルWTB(微動ステージ)の位置決め精度を向上させるため、ステージ本体91(粗動ステージ)とウエハテーブルWTB(微動ステージ)との間(以下、粗微動ステージ間と略述する)で、レーザ光等を空中伝送しても良いし、あるいはヘッドをステージ本体91(粗動ステージ)に設けて、該ヘッドによりステージ本体91(粗動ステージ)の位置を計測し、かつ別のセンサで粗微動ステージ間の相対変位を計測する構成としても良い。
【0097】
なお、上記実施形態では、スキャニング・ステッパに本発明が適用された場合について説明したが、これに限らず、ステッパなどの静止型露光装置に本発明を適用しても良い。ステッパなどであっても、露光対象の物体が搭載されたステージの位置をエンコーダで計測することにより、干渉計を用いてこのステージの位置を計測する場合と異なり、空気揺らぎに起因する位置計測誤差の発生を殆ど零にすることができ、エンコーダの計測値に基づいて、ステージを高精度に位置決めすることが可能になり、結果的に高精度なレチクルパターンの物体上への転写が可能になる。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置にも本発明は適用することができる。
【0098】
また、上記実施形態の露光装置における投影光学系は縮小系のみならず等倍系及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、その投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。
【0099】
また、照明光ILは、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)に限らず、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F
2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
【0100】
また、上記実施形態では、露光装置の照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。例えば、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を用いるEUV露光装置に本発明を適用することができる。その他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、本発明は適用できる。さらに、例えば米国特許出願公開第2005/0259234号明細書などに開示される、投影光学系とウエハとの間に液体が満たされる液浸型露光装置などに本発明を適用しても良い。液浸型露光装置の場合、露光動作時だけでなく他の動作、例えば基準マークの検出、あるいはウエハステージ上のセンサ(照明むらセンサ、空間像計測センサ、照射量センサ、偏光センサ、波面計測センサなど)による計測などの動作時に、液体が接触するヘッドから他のヘッドに、ウエハステージの位置計測に用いるヘッドを切り換えることとしても良い。ただし、ウエハステージが少なくとも1つの計測部材(センサなど)を有し、ウエハステージ上に液浸領域が形成されていることが前提となる。ヘッドの切り換えは、液体検出センサの出力、エンコーダの出力などから液体が接触するヘッドを検出した結果に基づいて行うこととしても良いし、あるいは、液体検出を一切行わず、露光シーケンスにおいて液体が接触することが分かっているヘッドを事前に他のヘッドに切り換えるのみでも良い。
【0101】
また、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。かかる可変成形マスクを用いる場合には、ウエハ又はガラスプレート等が搭載されるステージが、可変成形マスクに対して走査されるので、このステージの位置をエンコーダを用いて計測することで、上記実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0102】
また、例えば国際公開第2001/035168号に開示されているように、干渉縞をウエハW上に形成することによって、ウエハW上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
【0103】
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを、投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも本発明を適用することができる。
【0104】
また、物体上にパターンを形成する装置は前述の露光装置(リソグラフィシステム)に限られず、例えばインクジェット方式にて物体上にパターンを形成する装置にも本発明を適用することができる。
【0105】
なお、上記実施形態及び変形例でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
【0106】
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【0107】
なお、本発明の移動体システムは、露光装置に限らず、その他の基板の処理装置(例えば、レーザリペア装置、基板検査装置その他)、あるいはその他の精密機械における試料の位置決め装置、ワイヤーボンディング装置等の移動ステージを備えた装置にも広く適用できる。
【0108】
なお、半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、上記実施形態の露光装置で、マスクに形成されたパターンをウエハ等の物体上に転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハ(物体)を現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置が用いられるので、高集積度のデバイスを歩留り良く製造することができる。