特許第5979341号(P5979341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5979341エレクトロクロミック素子用組成物及びエレクトロクロミック表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979341
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】エレクトロクロミック素子用組成物及びエレクトロクロミック表示素子
(51)【国際特許分類】
   C09K 9/00 20060101AFI20160817BHJP
   G02F 1/15 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   C09K9/00 B
   G02F1/15 508
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-159339(P2011-159339)
(22)【出願日】2011年7月20日
(65)【公開番号】特開2012-107195(P2012-107195A)
(43)【公開日】2012年6月7日
【審査請求日】2014年5月27日
(31)【優先権主張番号】特願2010-244462(P2010-244462)
(32)【優先日】2010年10月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100090516
【弁理士】
【氏名又は名称】松倉 秀実
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(72)【発明者】
【氏名】星野 勝義
(72)【発明者】
【氏名】及川 陽介
(72)【発明者】
【氏名】安藤 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】中島 良太
(72)【発明者】
【氏名】村城 勝之
(72)【発明者】
【氏名】小松 利喜
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−099190(JP,A)
【文献】 特開2003−302659(JP,A)
【文献】 特開平09−297324(JP,A)
【文献】 特開2005−338356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 9/00
G02F 1/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表される四級アンモニウム塩または、下記式(2)で表される四級ホスホニウム塩、(B)臭素イオンを含む支持電解質、及び(C)水を必須成分とする溶媒を含有するエレクトロクロミック素子用組成物であって、
前記(A)四級アンモニウム塩または、四級ホスホニウム塩は、前記(C)水を必須成分とする溶媒に可溶であり、電極表面が白色状態と消色状態の二状態を示すエレクトロクロミック素子を製造するためのものである、エレクトロクロミック素子用組成物。
【化1】
【化2】
式(1)および式(2)中、R1、R2、R3及びR4は、独立して、無置換または置換基を有する炭素数4以上のアルキル基、若しくは無置換または置換基を有するフェニル基であり、アルキル基またはフェニル基が置換基を有する場合、置換基はハロゲンまたは水酸基であり、Xn-はハロゲンイオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、四フッ化ホウ酸イオン、リン酸イオン、六フッ化リン酸イオン、炭酸イオン、酢酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸二水素イオン、硫酸水素イオン、シアン化物イオン、チオシアン酸イオン、亜硫酸イオン、亜硝酸イオン、亜塩素酸イオン、ヘキサシアノ鉄(II)酸イオン、ヘキサシアノ鉄(III)酸イオンから選択されるいずれかのアニオンである。
【請求項2】
前記式(1)、および(2)中のR1、R2、R3及びR4が同一の基である請求項1に記載のエレクトロクロミック素子用組成物。
【請求項3】
前記式(1)、および(2)中のXn-がハロゲンイオンである請求項1または請求項2に記載のエレクトロクロミック素子用組成物。
【請求項4】
前記式(1)、および(2)中のXn-が臭素イオンまたは塩素イオンである請求項3に記載のエレクトロクロミック素子用組成物。
【請求項5】
さらに着色剤成分を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック素子用組成物。
【請求項6】
前記着色剤成分はカーボンブラックであることを特徴とする請求項5に記載のエレクトロクロミック素子用組成物。
【請求項7】
透明電極をその面上に形成した透明基板と、電極をその面上に形成した基板との一対を、互いに前記電極を配した面を対向するように配置し、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物が前記一対の基板にて挟持される構造を有し、電極表面が白色状態と消色状態の二状態を示すエレクトロクロミック表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロクロミック素子用組成物及びそれを用いたエレクトロクロミック表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ等情報処理装置の普及に伴い、情報処理装置による処理結果を表示するための表示素子(例えば、液晶表示素子など)が非常に重要となってきている。
現在、新たな表示素子として、いわゆるエレクトロクロミック特性を利用した表示素子(エレクトロクロミック表示素子)が提案されている(例えば非特許文献1参照)。エレクトロクロミック特性とは、電圧の印加により、物質に電気化学的な酸化還元反応が起こり、物質の色が可逆的に変化する特性をいう。この特性を利用したディスプレイは、(1)視野性に優れる、(2)大型化が可能である、(3)視野角依存性が少ない、(4)鮮明な表示が可能である、といった利点があり、特にいわゆる電子ペーパーといった極薄型のディスプレイへの応用が期待されている。
【0003】
上記エレクトロクロミック特性を利用した表示素子に用いられる材料としてビオロゲン化合物が知られている(例えば特許文献1、及び非特許文献2参照)。一般にビオロゲン化合物は発色状態と消色状態との色の変化が顕著であり、エレクトロクロミック特性を利用した表示素子の今後の発展において非常に重要な材料であると考えられている。
ところが、発色状態のビオロゲン化合物は紫色であり、表示素子の基本となる白色を表示することができなかった。このように電圧変化によって白色状態と消色状態の二状態のみを明確に示すエレクトロクロミック材料はこれまで得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−86259号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】M.Gratzel,Nature 409(2001)575.
【非特許文献2】C.L.Bard,A.T.Kuhn,Chem.Soc.Rev.10(1981)49.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先に発明者らは、1,1’−ジベンジル−4,4’−ビピリジニウムなどのビオロゲン化合物を用いて、白色を表示させる方法を開発し、特許出願を行った。しかしながら、白色表示を明確に行うためには、いったん紫色に発色する電圧を印加する必要があり、紫色を経由せずに透明状態(消色状態)と白色状態のみを電圧変化によって制御すると白色状態に黄色味が出てしまう改善点があった。
本発明の課題は、上記課題を解決したものであり、電圧変化によって白色状態と消色状態の二状態のみを明確に示すエレクトロクロミック素子用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、(A)特定構造の四級アンモニウム塩または、四級ホスホニウム塩、(B)臭素イオンを含む支持電解質、及び(C)水を必須成分とする溶媒を含有する組成物が、電圧変化により白色状態と消色状態の二状態のみを明確に示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、以下の構成である。
[1] (A)下記式(1)で表される四級アンモニウム塩または、下記式(2)で表さ
れる四級ホスホニウム塩、(B)臭素イオンを含む支持電解質、及び(C)水を必須成分とする溶媒を含有するエレクトロクロミック素子用組成物であって、前記(A)四級アンモニウム塩または、四級ホスホニウム塩は、前記(C)水を必須成分とする溶媒に可溶であり、電極表面が白色状態と消色状態の二状態を示すエレクトロクロミック素子を製造するためのものである、エレクトロクロミック素子用組成物。
【化1】
【化2】
式(1)および式(2)中、R1、R2、R3及びR4は、独立して、無置換または置換基を有する炭素数4以上のアルキル基、若しくは無置換または置換基を有するフェニル基であり、アルキル基またはフェニル基が置換基を有する場合、置換基はハロゲンまたは水酸基であり、Xn-はハロゲンイオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、過塩素酸イ
オン、四フッ化ホウ酸イオン、リン酸イオン、六フッ化リン酸イオン、炭酸イオン、酢酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸二水素イオン、硫酸水素イオン、シアン化物イオン、チオシアン酸イオン、亜硫酸イオン、亜硝酸イオン、亜塩素酸イオン、ヘキサシアノ鉄(II)酸イオン、ヘキサシアノ鉄(III)酸イオンから選択されるいずれかのアニオンである。
[2] 前記式(1)、および(2)中のR1、R2、R3及びR4が同一の基である前記[
1]に記載のエレクトロクロミック素子用組成物。
[3] 前記式(1)および(2)中のXn-がハロゲンイオンである前記[1]または[2]
に記載のエレクトロクロミック素子用組成物。
[4] 前記式(1)および(2)中のXn-が臭素イオンまたは塩素イオンである前記[
3]に記載のエレクトロクロミック素子用組成物。
[5] さらに着色剤成分を含有する前記[1]〜[4]のいずれか1つに記載のエレク
トロクロミック素子用組成物。
[6] 前記着色剤成分はカーボンブラックであることを特徴とする前記[5]に記載の
エレクトロクロミック素子用組成物。
[7] 透明電極をその面上に形成した透明基板と、電極をその面上に形成した基板との
一対を、互いに前記電極を配した面を対向するように配置し、前記[1]〜[6]のいずれか1つに記載の組成物が前記一対の基板にて挟持される構造を有し、電極表面が白色状態と消色状態の二状態を示すエレクトロクロミック表示素子。
[8] 組成物をエレクトロクロミック素子として使用する方法であって、前記組成物は
(A)上記式(1)で表される四級アンモニウム塩または、上記式(2)で表される四級ホスホニウム塩、(B)臭素イオンを含む支持電解質、及び(C)水を含む、使用方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエレクトロクロミック素子用組成物は、白色状態と消色状態の二状態のみを明確に電圧で制御することができる。また前記組成物に着色剤成分をさらに加えることで白
色状態と着色状態の二状態を電圧で制御することができる。
【0010】
本発明のエレクトロクロミック素子用組成物は表示素子に有用であり、本発明のエレクトロクロミック表示素子は、電子ペーパー等のフラットパネルディスプレイとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の(1)の条件にて得られた組成物のサイクリックボルタンモグラムを示す。
図2】実施例1の(2)の条件にて得られた組成物のサイクリックボルタンモグラムを示す。
図3】実施例1の(3)の条件にて得られた組成物のサイクリックボルタンモグラムを示す。
図4】実施例2にて得られた組成物のサイクリックボルタンモグラムを示す。
図5】比較例1にて得られた組成物のサイクリックボルタンモグラムを示す。
図6】実施例3の(1)の条件にて得られた組成物のサイクリックボルタンモグラムを示す。
図7】実施例3の(2)の条件にて得られた組成物のサイクリックボルタンモグラムを示す。
図8】実施例4にて得られた組成物のサイクリックボルタンモノグラムを示す。
図9】実施例5にて得られた組成物のサイクリックボルタンモノグラムを示す。
図10】実施例6にて得られた組成物のサイクリックボルタンモノグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の組成物は、(A)下記式(1)で表される四級アンモニウム塩または、下記式(2)で表される四級ホスホニウム塩、(B)臭素イオンを含む支持電解質、及び(C)水を必須成分とする溶媒を含有する。
【0013】
【化3】
【化4】
【0014】
水を必須成分とする溶媒中にて、電気化学的に臭素イオン(Br-)の酸化を行うと、電極近傍にて上記酸化によって生成したBr2と、溶媒中のBr-とが反応して三臭素イオン(Br3-)が生じる。すると上記式(1)で示される四級アンモニウムイオンあるいは上記式(2)で示される四級ホスホニウムイオンはBr3-と結合して白色の物質を形成し、電極上に析出する。そして、Br3-が、Br-に戻る電位に設定すると、白色の物質は元の四級アンモニウムイオンあるいは四級ホスホニウム塩とBr-に戻り無色透明となる。この白色化と透明化は可逆的に起こる。
上記四級アンモニウムイオンまたは四級ホスホニウムイオンと臭素イオンとがこのような特異な性質を有することは従来知られていなかった。
また、上記のような性質を実現するためには、四級アンモニウム塩または、四級ホスホニウム塩は、水を必須成分とする溶媒に可溶である必要がある。可溶とは、四級アンモニウム塩または、四級ホスホニウム塩の溶解度が1mmol/L以上であることをいい、5mmol/Lであることが好ましく、7mmol/Lであることがより好ましい。
【0015】
式(1)および式(2)中のR1、R2、R3及びR4は、独立して、無置換または置換基を有する炭素数4以上のアルキル基若しくは無置換または置換基を有するフェニル基である。上記アルキル基またはフェニル基が置換基を有する場合、置換基はハロゲンまたは水酸基である。アルキル基の炭素数が3以下のアルキル基を含む場合には、四級アンモニウム塩または、四級ホスホニウム塩はBr3-と結合し難くなり、白色の物質を生成しないのでエレクトロクロミック素子として、白色を明確に表示することができない。他方、アルキル基の炭素数が高くなるにつれ上記四級アンモニウム塩または、四級ホスホニウム塩が後述する前記(C)の水を必須成分とする溶媒に難溶となる傾向にある。そのため、アルキル基の炭素数は18以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、8以下であることが更に好ましく、6以下であることが特に好ましい。また、アルキル基の好ましい範囲は、前記(C)溶媒における水以外の成分、例えばアルコール濃度などによっても変化する。例えば、前記(C)の溶媒が水である場合には、上記アルキル基の炭素数の好ましい範囲は4〜6であり、前記(C)の溶媒が水とメタノールの二成分混合溶媒であり、その容積比が1対0.5乃至1対2の混合溶媒である場合には上記アルキル基の炭素数の好ましい範囲は4〜8である。
【0016】
上記アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。R1、R2、R3及びR4は、同一炭素数のアルキル基であることが好ましく、R1、R2、R3及びR4は、同一の直鎖状のアルキル基であることが、容易に合成でき、かつ安価に入手できることから特に好ましい。またR1、R2、R3及びR4は上記要件を満足する限りにおいて、アルキル基とフェニル基が混在してもよいが、容易に合成できることから、同一のアルキル基または同一のフェニル基のみからなるものを好適に用いることができる。
【0017】
上記式(1)および(2)中のXn-は対イオンを構成するものであり、ハロゲンイオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、四フッ化ホウ酸イオン、リン酸イオン、六フッ化リン酸イオン、炭酸イオン、酢酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸二水素イオン、硫酸水素イオン、シアン化物イオン、チオシアン酸イオン、亜硫酸イオン、亜硝酸イオン、亜塩素酸イオン、ヘキサシアノ鉄(II)酸イオン、ヘキサシアノ鉄(III)酸イオンを挙げることができる。このうち、ハロゲンイオン、特に臭素イオン、塩素イオンである場合が、四級アンモニウム塩および四級ホスホニウム塩の入手のしやすさの点から好ましい。
【0018】
以上の要件を満たす四級アンモニウム塩としては、アルキル基の炭素数が4〜6であるハロゲン化テトラアルキルアンモニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、ハロゲン化テトラフェニルアンモニウム、水酸化テトラフェニルアンモニウムを挙げることができる。
上記のハロゲン化テトラアルキル化アンモニウムの例としては、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウムなどのハロゲン化テトラブチルアンモニウム;臭化テトラペンチルアンモニウム、塩化テトラペンチルアンモニウム、フッ化テトラペンチルアンモニウムなどのハロゲン化テトラペンチルアンモニウム;臭化テトラヘキシルアンモニウム、塩化テトラヘキシルアンモニウム、フッ化テトラヘキシルアンモニウムなどのハロゲン化テトラヘキシルアンモニウムを挙げることができる。加えて、アルキル基の炭素数が7または8である、臭化テトラヘプチルアンモニウム、塩化テトラヘプチルアンモニウム、フッ化テトラヘプチルアンモニウムなどのハロゲン化テトラヘプチルアンモニウム;臭化テトラオクチルアンモニウム、塩化テトラ
オクチルアンモニウム、フッ化テトラオクチルアンモニウムなどのハロゲン化テトラヘキシルアンモニウムを挙げることができる。
上記の水酸化テトラアルキルアンモニウムとしては、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラペンチルアンモニウム、水酸化テトラヘキシルアンモニウムなどを挙げることができる。加えてアルキル基の炭素数が7または8である、水酸化テトラヘプチルアンモニウム、水酸化テトラオクチルアンモニウムを挙げることができる。
上記のハロゲン化テトラフェニルアンモニウムとしては、臭化テトラフェニルアンモニウム、塩化テトラフェニルアンモニウム、フッ化テトラフェニルアンモニウムなどを挙げることができる。
上記記載の四級アンモニウム塩以外であっても、溶媒に可溶な四級アンモニウム塩も使用することができる。例えば1,2,3−トリブチル−4−デシルアンモニウムや、1,2,3−トリブチル−4−ドデシルアンモニウムなどが例示される。
また、四級ホスホニウム塩も四級アンモニウム塩と同様に例示することが出来る。例えば、アルキル基の炭素数が4〜6であるハロゲン化テトラアルキルホスホニウム、水酸化テトラアルキルホスホニウム、ハロゲン化テトラフェニルホスホニウム、水酸化テトラフェニルホスホニウムを例示できる。
上記のハロゲン化テトラアルキル化ホスホニウムの具体例としては、臭化テトラブチルホスホニウム、塩化テトラブチルホスホニウム、フッ化テトラブチルホスホニウムなどのハロゲン化テトラブチルホスホニウム;臭化テトラペンチルホスホニウム、塩化テトラペンチルホスホニウム、フッ化テトラペンチルホスホニウムなどのハロゲン化テトラペンチルホスホニウム;臭化テトラヘキシルホスホニウム、塩化テトラヘキシルホスホニウム、フッ化テトラヘキシルホスホニウムなどのハロゲン化テトラヘキシルホスホニウムを挙げることができる。
【0019】
式(1)で表される四級アンモニウム塩または、式(2)で表される四級ホスホニウム塩のエレクトロクロミック素子用組成物中の濃度は、1〜5000mmol/Lであることが好ましく、5〜2000mmol/Lであることがより好ましく、5〜1000mmol/Lの濃度であることが特に好ましい。組成物中の四級アンモニウム塩または、四級ホスホニウム塩の下限濃度が上記範囲内であれば、白色状態の鮮明度は十分である。また、組成物中の四級アンモニウム塩または、四級ホスホニウム塩の上限濃度が上記範囲内であれば、析出した四級アンモニウム塩または、四級ホスホニウム塩の溶解終了に要する時間が長くなり過ぎないので、四級アンモニウムイオンまたは、四級ホスホニウムイオンを含む白色生成物の白色度を十分に高く保ちつつ、鋭い応答速度が得られる。
【0020】
臭素イオンを含む支持電解質としては、組成物中の溶媒に通電性を付与し、電圧印加時に三臭素イオン(Br3-)を生じさせ得るものであれば特に限定されるわけではないが、例えば、LiBr、NaBr、KBr、CsBr、(CH34NBr、(C254NBr、(C374NBr、(C494NBr、(C5114NBr、(C6134NBrなどが挙げられる。なお、臭素イオンを含む支持電解質は臭化テトラアルキルアンモニウム、または臭化テトラアルキルホスホニウムであってもよく、上記(A)四級アンモニウム塩、または四級ホスホニウム塩が臭化テトラアルキルアンモニウム、または臭化テトラアルキルホスホニウムである場合には、同時に(B)臭素イオンを含む支持電解質を含有することになる。そのため、別途(B)臭素イオンを含む支持電解質を含有させなくてもよい。すなわち、上記(A)四級アンモニウム塩、または四級ホスホニウム塩が臭化テトラアルキルアンモニウム、または臭化テトラアルキルホスホニウムである場合には、(C)水を必須成分とする溶媒のみを含有するのみで本発明が成立し、当該発明も本発明の技術的範囲に属する。
【0021】
これら支持電解質の濃度は、溶媒に通電性を付与できる範囲であれば特に限定されない。エレクトロクロミック素子用組成物中の支持電解質の濃度は、溶媒の粘度を著しく上昇
させないためには、0.01〜1mol/Lであることが好ましく、0.05〜0.5mol/Lであることがより好ましく、0.1〜0.5mol/Lの濃度であることが特に好ましい。
またエレクトロクロミック素子用組成物中の四級アンモニウム塩または、四級ホスホニウム塩に対する支持電解質の含有比率は、モル比で四級アンモニウム塩または四級ホスホニウム塩:支持電解質=1:10〜1:1,000の範囲が好ましく、1:20〜1:200の範囲がより好ましい。
なお、上記(A)四級アンモニウム塩または四級ホスホニウム塩が臭化テトラアルキルアンモニウムである場合には、上記含有比率は、モル比で四級アンモニウム塩:支持電解質=1:0〜1:1,000の範囲が好ましく、1:0〜1:200の範囲がより好ましい。加えて、(A)四級アンモニウム塩と(B)支持電解質との合計濃度として、0.01〜5mol/Lであることが好ましく、0.05〜1mol/Lであることがより好ましく、0.1〜0.5mol/Lの濃度であることが特に好ましい。また、上記(A)四級アンモニウム塩または四級ホスホニウム塩が臭化テトラアルキルホスホニウムである場合には、上記含有比率は、モル比で四級ホスホニウム塩:支持電解質=1:0〜1:1,000の範囲が好ましく、1:0〜1:200の範囲がより好ましい。加えて、(A)四級ホスホニウム塩と(B)支持電解質との合計濃度として、0.01〜5mol/Lであることが好ましく、0.05〜1mol/Lであることがより好ましく、0.1〜0.5mol/Lの濃度であることが特に好ましい。
【0022】
本発明の組成物に用いる溶媒は水を必須成分とする溶媒である。また、溶媒を構成する成分として、溶媒の通電性を著しく低下させない範囲、かつ上記四級アンモニウム塩または、四級ホスホニウム塩の溶媒への溶解性を著しく変動させない範囲で水以外の溶媒を混合することもできる。水以外の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールを挙げることができる。上記の水以外の溶媒と水とを混合して使用する場合、水と水以外の溶媒との混合比率は、容積比で、水:水以外の溶媒=1:0.01〜1:100であることが好ましく、1:0.01〜1:10であることがより好ましく、1:0.01〜1:1であることが特に好ましい。
【0023】
本発明のエレクトロクロミック用組成物は、着色剤成分を含有することが好ましい。組成物が着色剤成分を含有する場合には、電気化学的反応によって上記四級アンモニウムまたは、四級ホスホニウム塩とBr3-からなる白色物質は、元の四級アンモニウム塩または、四級ホスホニウム塩とBr-に戻り、溶媒中に溶解することにより電極表面の白色状態が消失し、電極は無色透明となる。結果、透明になった電極を通して背景の着色溶液が表出し、着色剤成分による着色状態を現出させることができる。
着色剤成分としては特に制限はなく、既存の顔料または染料、並びにそれらの組み合わせを用いることができる。着色剤成分の色相に特に限定はなく、黒色成分、赤色成分、青色成分等の着色剤成分を好適に用いることができる。黒色成分としてはカーボンブラックに代表される黒色顔料やC.I.アシッドブラック2、ダイレクトブラック22等の黒色染料を用いることができるが、着色効果の上からはカーボンブラックが好ましい。また赤色成分としてC.I.ピグメントレッド1、2、3等の赤色顔料やC.I.ソルベントレッド1、3、8等の赤色染料を、青色成分としてC.I.ピグメントブルー2、3、15等の青色顔料やC.I.ダイレクトブルー1、2などの青色染料を好適に用いることができる。なお、水に難溶性の着色顔料を用いる場合、臭素イオンの電気化学反応を阻害しない限りにおいて、顔料表面に親水化処理を施してもよいし、また表示品位を落とさない範囲で組成物中に分散剤を適宜加えてもよい。
【0024】
上記の着色剤成分はエレクトロクロミック素子用組成物中に、0.01〜10重量%の濃度で含まれていることが好ましく、0.01〜5重量%の濃度で含まれていることがより好ましく、0.01〜1重量%の濃度で含まれていることが特に好ましい。
【0025】
また表示品位を上げる、応答速度を速くする等の目的で他の成分を含有することもできる。
【0026】
本発明の組成物の特性を利用すれば、例えば透明電極をその面上に形成した透明基板と、電極をその面上に形成した基板の一対とを、互いに前記電極を配した面を対向するように配置し、本発明の組成物が前記一対の基板にて挟持される構造とすることにより、所定の電圧変化によって本発明組成物中の四級アンモニウムが電極上に繰り返し、析出・溶解されるエレクトロクロミック表示素子とすることができる。
【実施例】
【0027】
精製水:IWAKI社製蒸留装置「STILL−N1P」によって蒸留した後、オルガノ社製カートリッジ純水器「G−10C型」によって精製された導電率18MΩcm以下の水。
【0028】
(実施例1)
四級アンモニウム塩として臭化テトラブチルアンモニウム、溶媒として精製水を用い、濃度が(1)7mmol/L、(2)14mmol/L、(3)21mmol/Lである各々のテトラブチルアンモニウム水溶液に、支持電解質としてLiBrを0.1mol/Lの濃度になるように加えた溶液を調製し、動作電極としてITO電極、対向電極としてPt板、参照電極として飽和カロメル電極(SCE)を用いて、サイクリックボルタンメトリーを行った。電圧印加に先立ち、上記溶液を窒素で30分バブリングした後、セル内を窒素雰囲気に保った。掃引電位範囲−1.0V〜+1.5V、掃引速度20mV/sの条件にて掃引を10回実施した。上記(1)〜(3)の実験において、動作電極の浸漬面積は、それぞれ(1)0.58cm2、(2)0.40cm2、(3)0.51cm2であった。各々の場合におけるサイクリックボルタンモグラムを図1図3に示す。(1)の実験では、1.4V近傍でITO電極上に白色物質が層状に析出するのが観察された。さらに掃引すると−0.5V付近で電極上の白色物質の層が完全に消失した。この現象は、掃引回数を重ねても繰り返し確認できた。(2)、(3)の実験では、(1)に比べ白色物質の層が消失する電圧がやや低い傾向にあったものの同様に白色物質の析出、消失が確認できた。
【0029】
(実施例2)
四級アンモニウム塩として臭化テトラペンチルアンモニウムを用い、かつ動作電極の浸漬面積は、0.71cm2であった他は実施例1の(1)の実験と同様の条件で実験を行った。この場合におけるサイクリックボルタンモグラムを図4示す。
【0030】
(比較例1)
四級アンモニウム塩として臭化テトラプロピルアンモニウムを用い、かつ動作電極の浸漬面積が0.49cm2であった他は実施例1の(1)の実験と同様にして実験を行った。この場合におけるサイクリックボルタンモグラムを図5示す。1.4V近傍でITO電極上に白色物質が層状に析出するのを観察できた。しかし、白色物質の層はきわめて薄く実用にたえるものではなかった。さらに−0.25Vまで掃引すると白色物質の層は消失した。
【0031】
(比較例2)
四級アンモニウム塩として臭化テトラヘプチルアンモニウムを7mmol/L濃度となるよう水に溶かそうと試みたが溶けなかった。さらに加熱しても水に浮いたままの状態で溶かすことができなかった。
【0032】
(実施例3)
溶媒として、精製水とエチルアルコールとを各々(1)2:1、(2)1:1の容積比で混合した溶媒を用い、かつ動作電極の浸漬面積がそれぞれ(1)0.43cm2、(2)0.57cm2であった他は実施例1の(1)の実験と同様にして実験を行った。各々の場合におけるサイクリックボルタンモグラムを図6図7に示す。(1)の条件では、1.4V近傍でITO電極上に白色物質が層状に析出するのが観察された。さらに掃引すると−0.5V付近で電極上の白色物質の層が完全に消失した。これは、掃引回数を重ねても繰り返し確認できた。(2)の条件では、(1)に比べ白色物質の層が消失する電圧がやや低い傾向にあったものの同様に白色物質の析出、消失が確認できた。
【0033】
(実施例4)
四級アンモニウム塩として臭化テトラヘキシルアンモニウムを用い、かつ動作電極の浸漬面積は、0.69cm2であった他は実施例1の(1)の実験と同様の条件で実験を行った。この場合におけるサイクリックボルタンモグラムを図8に示す。実施例1と同様に白色物質の層の析出、消失が確認できた。
【0034】
(実施例5)
四級アンモニウム塩及び支持電解質として臭化テトラブチルアンモニウム、溶媒として精製水を用い、濃度が0.1mol/lであるテトラブチルアンモニウム水溶液を調製した。本実施例では、臭化テトラブチルアンモニウムが四級アンモニウム塩と支持電解質の機能を兼ねている。動作電極の浸漬面積は、0.58cm2であった他は実施例1の(1)の実験と同様の条件で実験を行った。この場合におけるサイクリックボルタンモグラムを図9に示す。実施例1と同様に白色物質の層の析出、消失が確認できた。
【0035】
(実施例6)
四級ホスホニウム塩として臭化テトラブチルホスホニウム、溶媒として精製水を用い、濃度が0.1mol/lである臭化テトラブチルホスホニウム水溶液に電解質としてLiBrの濃度が0.5mol/lになるように調整した。動作電極の浸漬面積は、0.60cm2であり、その他の条件は実施例1の(1)の実験と同様の条件で実験を行った。この場合におけるサイクリックボルタンモグラムを図10に示す。実施例1と同様に白色物質の層の析出、消失が確認できた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10