(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記石油ワックス(E)の使用量が、前記ラジカル硬化性樹脂(A)と前記(メタ)アクリル単量体(B)との合計100質量部に対して、0.01〜1質量部の範囲である請求項1記載のラジカル硬化性樹脂組成物。
前記シリコーンオイル(F)の使用量が、前記ラジカル硬化性樹脂(A)と前記(メタ)アクリル単量体(B)との合計100質量部に対して、0.0001〜0.5質量部の範囲である請求項1又は2記載のラジカル硬化性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、前記ラジカル硬化性樹脂(A)について説明する。
【0012】
前記ラジカル硬化性樹脂(A)は、ラジカル硬化に関与する不飽和基を有するものであり、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、(メタ)アクリル共重合体等が挙げられる。これらのラジカル硬化性樹脂は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0013】
前記不飽和ポリエステル樹脂としては、例えば、α、β−不飽和二塩基酸を含む二塩基酸と多価アルコールとを反応させて得られるものが挙げられる。
【0014】
前記α、β−不飽和二塩基酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0015】
その他の二塩基酸としては、飽和二塩基酸を用いることができ、例えば、フタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン2酸,2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、またこれらのジアルキルエステル等が挙げられる。
【0016】
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、2−メチル−1,3−プロパンジオ−ル、1,3−ブタンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、水素化ビスフェノ−ルA、1,4−ブタンジオ−ル、ビスフェノ−ルAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、1,3−プロパンジオ−ル、1,2−シクロヘキサングリコ−ル、1,3−シクロヘキサングリコ−ル、1,4−シクロヘキサングリコ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、パラキシレングリコ−ル、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオ−ル、2,6−デカリングリコ−ル、2,7−デカリングリコ−ル等が挙げられる。
【0017】
また、前記不飽和ポリエステル樹脂としては、空乾性付与型不飽和ポリエステル樹脂を用いてもよい。
【0018】
前記の空乾性付与型不飽和ポリエステル樹脂としては、例えば、二塩基酸成分として環状脂肪族不飽和多塩基酸及びその誘導体を含有する化合物を用いたもの、多価アルコール成分としてアリルエーテル基を有するヒドロキ化合物を用いたもの、ジシクロペンタジエン系化合物を用いたもの、乾性油としてアマニ油及び桐油を用いたもの等が挙げられる。
【0019】
前記環状脂肪族不飽和多塩基酸及びその誘導体としては、例えば、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、α−テルピネン・無水マレイン酸付加物、トランス−ピペリレン・無水マレイン酸付加物等が挙げられる。
【0020】
前記アリルエーテル基を有するヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等が挙げられる。
【0021】
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂単独又はビスフェノール型エポキシとノボラック型エポキシ樹脂とを混合したエポキシ樹脂と、不飽和一塩基酸とを反応して得られるものである。
【0022】
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロルヒドリンとビスフェノールA若しくはビスフェノールFとの反応により得られる1分子中に2個以上のエポキシ基を有するグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、メチルエピクロルヒドリンとビスフェノールA若しくはビスフェノールFとを反応させて得られるジメチルグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物とエピクロルヒドリン若しくはメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるエポキ樹脂等が挙げられる。
【0023】
前記ノボラックタイプ型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック又はクレゾールノボラックと、エピクロルヒドリン又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0024】
前記不飽和一塩基酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、モノメチルマレート、モノプロピルマレート、モノブテンマレート、ソルビン酸、モノ(2−エチルヘキシル)マレート等が挙げられる。
【0025】
前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、例えば、ポリオールとポリイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリル化合物とを反応させて得られるものである。
【0026】
前記ポリオールとしては、例えば、アクリルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0027】
前記ポリイソシアネートは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有するものであり、例えば、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族または脂肪族環式構造含有ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、メチレンジフェニルジシソシアネートのホルマリン縮合体、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体等の芳香族系ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0028】
前記水酸基を有する(メタ)アクリル化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート等が挙げられる。
【0029】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基とアクリロイル基の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル化合物」とは、アクリル化合物とメタクリル化合物の一方又は両方をいう。
【0030】
前記ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する飽和ポリエステルもしくは不飽和ポリエステルである。前記飽和ポリエステルは、飽和二塩基酸と多価アルコールとを縮合反応させたものであり、また、前記不飽和ポリエステルとは、α、β−不飽和二塩基酸と多価アルコールとを縮合反応させたものであり、いずれも末端に(メタ)アクリロイル基を有しているものである。
【0031】
前記飽和二塩基酸、α、β−不飽和二塩基酸及び前記多価アルコールは、前記不飽和ポリエステル樹脂で用いるものと同様のものを用いることができる。
【0032】
前記ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂に(メタ)アクリロイル基を導入する方法としては、(メタ)アクリル酸のグリシジルエステル化合物を用いることが好ましく、グリシジル(メタ)アクリレートを用いることが特に好ましい。
【0033】
前記(メタ)アクリル共重合体は、(メタ)アクリルモノマーを公知の方法により重縮合反応して得られるものである。
【0034】
前記(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、(メタ)アクリル酸メチル(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0035】
前記ラジカル硬化性樹脂(A)としては、前記したものの中でも、後述する(E)及び(F)成分との相溶性や常温乾燥性を更に向上できる観点から、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、(メタ)アクリル重合体を用いることが好ましく、(メタ)アクリル重合体を用いることが特に好ましい。
【0036】
前記ラジカル硬化性樹脂(A)の重量平均分子量としては、5,000〜100,000の範囲が好ましく、10,000〜50,000の範囲がより好ましく、20,000〜40,000の範囲が特に好ましい。
【0037】
次に、前記(メタ)アクリル単量体(B)について説明する。
【0038】
前記(メタ)アクリル単量体(B)は、前記ラジカル硬化性樹脂(A)の反応性希釈剤であり、例えば、前述の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、前述の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸β−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−シアノエチル(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0039】
前記ラジカル硬化性樹脂(A)と前記(メタ)アクリル単量体(B)の質量比[(A)/(B)]としては、引張り物性等の観点から、10〜90/90〜10の範囲が好ましく、20〜80/80〜20の範囲が更に好ましく、30/70〜70/30の範囲が特に好ましい。
【0040】
次に、前記硬化剤(C)について説明する。
【0041】
前記硬化剤(C)としては、常温乾燥性の観点から有機過酸化物を用いることが好ましく、例えば、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系等が挙げられる。これらの硬化剤は、養生条件等により適宜選択される。
【0042】
前記硬化剤(C)の使用量としては、前記ラジカル硬化性樹脂(A)と前記(メタ)アクリル単量体(B)の合計100質量部に対して、常温硬化性の観点から0.01〜10質量部の範囲が好ましく、0.1〜8質量部の範囲がより好ましい。
【0043】
次に、前記硬化促進剤(D)について説明する。
【0044】
前記硬化促進剤(D)は、硬化剤(C)の有機過酸化物をレドックス反応によって分解し、活性ラジカルの発生を容易にする作用のある物質であり、例えば、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト等のコバルト系有機酸塩;オクチル酸亜鉛、オクチル酸バナジウム、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム等の金属石鹸類;バナジウムアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート、鉄アセチルアセトネート等の金属キレート類;アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジンのエチレンオキサイド付加物、N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4−[N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4−(N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン、トリエタノールアミン、m−トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニリモルホリン、ピペリジン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N−置換アニリン、N,N−置換−p−トルイジン、4−(N,N−置換アミノ)ベンズアルデヒド等のアミン類などが挙げられる。
【0045】
前記硬化促進剤(D)の使用量としては、前記ラジカル硬化性樹脂(A)と前記(メタ)アクリル単量体(B)の合計100質量部に対し、0.01〜5質量部の範囲が好ましく、0.05〜3質量部の範囲が更に好ましい。
【0046】
次に、前記石油ワックス(E)について説明する。
【0047】
前記石油ワックス(E)は、酸素による硬化阻害を防止するものであり、融点が43〜72℃の石油ワックス(D)を用いることが、前記ラジカル硬化性樹脂(A)や前記(メタ)アクリル単量体(B)との相溶性の観点から好ましく、融点が46〜66℃の石油ワックスが更に好ましい。前記石油ワックス(D)としては、具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等が挙げられ、前記ラジカル硬化性樹脂(A)や前記(メタ)アクリル単量体(B)との相溶性の観点からパラフィンワックスを用いることが特に好ましい。なお、前記石油ワックス(D)の融点は、JIS K2235に基づいて測定される融点を示す。
【0048】
前記石油ワックス(E)の使用量は、常温乾燥性や塗膜の硬度の点から、前記ラジカル硬化性樹脂(A)と前記(メタ)アクリル単量体(B)との合計100質量部に対して、0.01〜1質量部の範囲であることが好ましく、0.1〜0.8質量部の範囲がより好ましく、0.2〜0.6質量部の範囲が特に好ましい。
【0049】
次に、前記シリコーンオイル(F)について説明する。
【0050】
前記シリコーンオイル(F)としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、テトラメチルテトラフェニルトリシロキサン等の非反応性シリコーンオイル、変性シリコーン油、(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンオイル、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシリコーンオイル等の反応性基を有するシリコーンオイル等が挙げられる。これらのシリコーンオイルは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中での、前記石油ワックスとの相溶性や常温乾燥性等の点から、非反応性シリコーンオイルを用いることが好ましい。
【0051】
前記シリコーンオイル(F)の使用量は、常温乾燥性や塗膜の硬度の点から、前記ラジカル硬化性樹脂(A)と前記(メタ)アクリル単量体(B)との合計100質量部に対して、0.0001〜0.5質量部の範囲であることが好ましく、0.0005〜0.3質量部の範囲がより好ましく、0.001〜0.2質量部の範囲が特に好ましい。
【0052】
前記石油ワックス(E)と前記シリコーンオイル(F)との質量比[(E)/(F)]は、1.5〜450の範囲であることが、本発明の課題を解決する上で必須である。前記石油ワックス(E)の質量比が、前記範囲を下回る場合には、液体成分であるシリコーンオイルの相対量が多くなるため、塗膜の表面硬度が低下してしまう。また、前記範囲を超える場合には、石油ワックスの相対量が多くなるため、石油ワックスの凝集物とラジカル硬化性樹脂層との海島構造が発生し、塗膜の乾燥性にムラができるため、塗膜全体の常温乾燥性が低下してしまう。前記質量比としては、表面乾燥性や硬度の点から、2.0〜400の範囲がより好ましく、2.5〜300の範囲が特に好ましい。
【0053】
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物は、前記(A)〜(F)成分を必須に含有するが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0054】
前記その他の添加剤としては、例えば、石油ワックス、酸化防止剤、老化防止剤、顔料、チキソ性付与剤、溶剤、充填剤、プロセスオイル、可塑剤、紫外線防止剤、補強材、骨材、難燃剤、安定剤等を用いることができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0056】
[合成例1]ラジカル硬化性樹脂(A−1)の合成
撹拌機、温度計、冷却器及び窒素導入管を備えた反応容器に、キシレン450質量部を加え、115℃にまで昇温して、保持した。次いで、メチルメタクリレート240質量部、n−ブチルメタクリレート160質量部、ジ−tert−ブチルパーオキサイド3質量部及びキシレン150質量部を、4時間にかけて滴下した。滴下終了後も、120℃に8時間保持して、不揮発分が40質量%のラジカル硬化性樹脂(A−1)の溶液を得た。その後、170℃昇温、減圧し、重量平均分子量35,000のラジカル硬化性樹脂(A−1)を得た。
【0057】
[実施例1]ラジカル硬化性樹脂組成物の調製
前記ラジカル硬化性樹脂(A−1)30質量部、メタクリル酸メチル50質量部、アクリル酸n−ブチル10質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル10質量部、融点が46℃のパラフィンワックス0.125質量部、融点が65℃のパラフィンワックス0.125質量部、ジメチルシリコーンオイル0.1質量部を混合し、ラジカル硬化性樹脂組成物を得た。
【0058】
[実施例2〜6、比較例1〜7]
用いる石油ワックスとシリコーンオイルの量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてラジカル硬化性樹脂組成物を得た。
【0059】
[常温乾燥性の評価方法]
常温乾燥性の評価は、下記に示す[タックフリータイム(TF)]及び[ゲルタイム(GT)]より、[TF]/[GT]の値で評価した。
なお、前記[TF]/[GT]の値により以下のように評価した。
2以下である場合は、「○」
2を超えて3以下である場合は、「△」
3を超える場合は、「×」
【0060】
[タックフリータイム(TF)]
デスカップに、実施例及び比較例で得られたラジカル硬化性樹脂組成物を入れ5℃に調製したのち、前記ラジカル硬化性樹脂組成物中のラジカル硬化性樹脂(A−1)と(メタ)アクリル単量体(B)との合計100質量部に対し、過酸化ベンゾイル40質量%懸濁液(日油株式会社製「ナイパーNS」)を5質量部、トルイジン化合物イソプロパノール溶液(DIC株式会社製「RP−191」)を1質量部配合した。これを5℃の雰囲気下で、ガラス板上に厚み0.5mm及び1.5mmとなるようにそれぞれアプリケーターにて塗布した。塗膜の表面状態を指触にて確認し、指に樹脂が付かなくなるまでの時間(秒)をタックフリータイム(TF)とした。
また、ラジカル硬化性樹脂組成物の調製温度、塗布時の環境温度を15℃にし、前記過酸化ベンゾイル40質量%懸濁液を3.5質量部に変更して同様にタックフリータイムを測定した。
また、ラジカル硬化性樹脂組成物の調製温度、塗布時の環境温度を23℃にし、前記過酸化ベンゾイル40質量%懸濁液を2.5質量部に変更して同様にタックフリータイムを測定した。
【0061】
[ゲルタイム(GT)]
デスカップに、実施例及び比較例で得られたラジカル硬化性樹脂組成物を入れ5℃に調製したのち、前記ラジカル硬化性樹脂組成物中のラジカル硬化性樹脂(A−1)と(メタ)アクリル単量体(B)との合計100質量部に対し、前記過酸化ベンゾイル40質量%懸濁液を5質量部、前記トルイジン化合物イソプロパノール溶液を1質量部配合した。これを5℃の温度に調整したガラス板上に厚み0.5mm及び1.5mmとなるようにそれぞれアプリケーターにて塗布した。塗膜の表面状態をスパーチラーで確認し、ゲル化するまでの時間(秒)をゲルタイムとした。
また、ラジカル硬化性樹脂組成物の調製温度、塗布時の環境温度及びガラス板の調整温度を15℃にし、前記過酸化ベンゾイル40質量%懸濁液を3.5質量部に変更して同様にゲルタイムを測定した。
また、ラジカル硬化性樹脂組成物の調製温度、塗布時の環境温度及びガラス板の調整温度を23℃にし、前記過酸化ベンゾイル40質量%懸濁液を2.5質量部に変更して同様にゲルタイムを測定した。
【0062】
[塗膜の硬度の評価方法]
塗膜の硬度は、鉛筆硬度にて評価した。具体的には、前記[タックフリータイム(TF)]の評価において、塗膜表面のタックフリーを確認した後の塗膜表面の鉛筆硬度をJIS K 5400に準じて測定し、以下のように評価した。
H以上「◎」
F 「○」
HB〜B 「△」
2B〜4B「×」
5B以下 「××」
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物である実施例1〜6のものは、薄膜、厚膜においても、また、低温から常温においても常温乾燥性及び塗膜の硬度に優れることが分かった。
【0066】
一方、比較例1は、石油ワックスを含有しない態様であるが、低温・厚膜での塗膜の硬度が不良であった。
【0067】
比較例2及び3は、成分(D)/(E)の質量比が、本発明で規定する範囲を下回る態様であるが、厚膜での塗膜の硬度が不良であった。
【0068】
比較例4〜6は、成分(D)/(E)の質量比が、本発明で規定する範囲を超える態様であるが、薄膜での常温乾燥性が不良であった。
【0069】
比較例7は、シリコーンオイルを含有しない態様であるが、常温乾燥性が不良であることが分かった。