特許第5979478号(P5979478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許59794783層構造積層ダイヤモンド系基板、パワー半導体モジュール用放熱実装基板およびそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979478
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】3層構造積層ダイヤモンド系基板、パワー半導体モジュール用放熱実装基板およびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/14 20060101AFI20160817BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   H01L23/14 D
   H01L23/36 C
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-67091(P2012-67091)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-168621(P2013-168621A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2014年4月17日
(31)【優先権主張番号】特願2012-6514(P2012-6514)
(32)【優先日】2012年1月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169683
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 等
(72)【発明者】
【氏名】鹿田 真一
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 仁
(72)【発明者】
【氏名】関 章憲
【審査官】 多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−206417(JP,A)
【文献】 特開平06−338573(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/100261(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/069684(WO,A1)
【文献】 特開2008−060531(JP,A)
【文献】 特開2001−284501(JP,A)
【文献】 特開平04−240190(JP,A)
【文献】 特開平08−104597(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0223321(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/12−23/15
23/29
23/34−23/36
23/373−23/427
23/44
23/467−23/473
25/00−25/07
25/10−25/11
25/16−25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが50μm〜1000μmであるダイヤモンド系材料層と、前記ダイヤモンド系材料層とは異なる材質であって、前記ダイヤモンド系材料層の厚さ方向の両面に設けた厚さが0.1μm〜10μmであるダイヤモンド系材料膜とを有し、前記ダイヤモンド系材料層、前記ダイヤモンド系材料層の厚さ方向の両面に設けた厚さが0.1μm〜10μmであるダイヤモンド系材料膜により3層構造積層ダイヤモンド系基板とし、前記3層構造積層ダイヤモンド系基板の厚さ方向の両面にAl,Cu,及びAgから選ばれる金属の少なくとも1種を含む通電層を備え、温度サイクルによる外部接合金属板の劣化を逃れるようにした、3層構造積層ダイヤモンド系基板を用いたパワー半導体モジュール用放熱実装基板。
【請求項2】
前記ダイヤモンド系材料層は、多結晶ダイヤモンド、単結晶ダイヤモンド、及び微結晶ダイヤモンドから選ばれる少なくとも1種の材料を含む請求項1に記載の3層構造積層ダイヤモンド系基板を用いたパワー半導体モジュール用放熱実装基板。
【請求項3】
前記ダイヤモンド系材料膜は、微結晶ダイヤモンド結晶、ナノダイヤモンド結晶、ウルトラナノダイヤモンド結晶、及び傾斜組成ダイヤモンド結晶(前記傾斜組成ダイヤモンド結晶はB,P及びNから選ばれる少なくとも1種の元素を含む)から選ばれる少なくとも1種の材料を含む請求項1又は2に記載の3層構造積層ダイヤモンド系基板を用いたパワー半導体モジュール用放熱実装基板。
【請求項4】
前記3層構造積層ダイヤモンド系基板の上下面に緩衝層としてグラファイト又はカーボンナノチューブ(CNT)を設けた請求項1から3のいずれか一項に記載の3層構造積層ダイヤモンド系基板を用いたパワー半導体モジュール用放熱実装基板。
【請求項5】
前記通電層と前記3層構造積層ダイヤモンド系基板との間にろう材を備える請求項1から4のいずれか一項に記載の3層構造積層ダイヤモンド系基板を用いたパワー半導体モジュール用放熱実装基板。
【請求項6】
前記ろう材と前記3層構造積層ダイヤモンド系基板との間にTi層又はRu層を備える請求項5に記載の3層構造積層ダイヤモンド系基板を用いたパワー半導体モジュール用放熱実装基板。
【請求項7】
ダイヤモンドが種付けされたシリコンウェハを準備する工程と、前記ダイヤモンドを成長核にして第1のダイヤモンド系材料膜を形成する工程と、前記第1のダイヤモンド系材料膜上に、前記第1のダイヤモンド系材料膜とは材質が異なるダイヤモンド系材料層を形成する工程と、前記ダイヤモンド系材料層上に、前記第1のダイヤモンド系材料膜と材質が同じ第2のダイヤモンド系材料膜を形成して3層構造積層ダイヤモンド系基板を形成する工程と、前記シリコンウェハを除去する工程とを備え、さらに、記3層構造積層ダイヤモンド系基板の厚さ方向の両面にAl,Cu,及びAgから選ばれる金属の少なくとも1種を含む通電層を備える工程からなる、温度サイクルによる外部接合金属板の劣化を逃れるようにした、パワー半導体モジュール用放熱実装基板の製造方法。
【請求項8】
傷つけ処理したシリコンウェハを準備する工程と、前記シリコンウェハの傷つけエッジを成長核にして、B,P,及びNから選ばれる少なくとも1種をドープした第1のダイヤモンド系材料膜を形成する工程と、前記第1のダイヤモンド系材料膜上に、前記第1のダイヤモンド系材料膜とは材質が異なるダイヤモンド系材料層を形成する工程と、前記ダイヤモンド系材料層上に、前記第1のダイヤモンド系材料膜と材質が同じ第2のダイヤモンド系材料膜を形成して3層構造積層ダイヤモンド系基板を形成する工程と、前記シリコンウェハを除去する工程と、を備え、さらに、記3層構造積層ダイヤモンド系基板の厚さ方向の両面にAl,Cu,及びAgから選ばれる金属の少なくとも1種を含む通電層を備える工程からなる、温度サイクルによる外部接合金属板の劣化を逃れるようにした、パワー半導体モジュール用放熱実装基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気・ハイブリッド自動車、電車、産業機械、電力変換機等の大電流を制御するためのパワーモジュールの実装に関し、特に絶縁性、放熱性と接合強度に優れたパワーモジュール用放熱実装基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパワーモジュールでは、熱伝導率と絶縁性に優れたセラミックス焼結体を基板として、銅やアルミニウムなどの金属を両側から接合した放熱基板を設置し、(1)接続したパワー半導体素子から発生する熱を、ベース板や冷却フィンと言われる放熱部材へ放熱する働きと、(2)素子を放熱部材と電気的に絶縁し任意の電位に保つ働きをする。これを満たす材料として窒化アルミニウム、窒化シリコン、酸化アルミニウムなどがある。熱抵抗を下げるために、高熱伝導かつ薄膜ろう材を中間材としての接合、または直接接合などの方法が用いられており、これに耐える材料であることも重要である。またさらに、パワーモジュールでは、その厳しい動作環境から、温度サイクル試験(−40〜125℃、3000サイクル以上など)で異種接合部分の剥がれ、割れが発生しないことが要求されている。上記観点から、数多の材料の中でも、実際には窒化アルミニウムのみが利用されている。
【0003】
近年のパワーデバイスモジュールは、高出力化に伴い、高電圧・高電流密度化が進んでおり、それに伴いデバイス冷却が限界を迎えつつある。ところが、窒化アルミニウムの熱伝導率は180〜230W/mK程度で、高パワー・高密度化するパワーモジュールの放熱には不十分になりつつあり、モジュール自体の両面冷却など構造の工夫などがなされているが、限界があり抜本対策にはなっていないのが現実である。
これらの課題に対して、絶縁性と熱伝導率の双方で群を抜くダイヤモンド粒を、絶縁材料の中に埋め込む手法によって熱伝導を向上させ、線膨張係数の差による温度サイクルによる割れを防止する試みが行われている(特許文献1参照)。
これは、ダイヤモンドの粒を埋め込むため、ダイヤモンドの三次元的熱伝達の利点を減ずるほか、熱流が粒に到達するまでの熱抵抗、粒間の熱抵抗などが高く、製造も粒を均一に埋め込むことが難しいなどの特徴がある。
【0004】
また、炭化珪素、窒化アルミニウム、窒化珪素、ダイヤモンド及び黒鉛の中から選ばれる1種類以上からなり、気孔率が10〜50体積%である多孔体又は粉末成形体に、アルミニウム、アルミニウム合金、シリコン、シリコン合金及びガリウム合金の中から選ばれる1種類を含浸し、面方向の面積がパワー半導体素子の搭載面の面積に対し2〜100倍、板厚がパワー半導体素子の厚さに対して1〜20倍、表面粗さ(Ra)が0.01〜0.5μmになるように加工する金属基複合材料基板を作製し、前記金属基複合材料基板上にパワー半導体素子をロウ付け又ははんだ付けにより接合、或いは、銀ペーストにより接着することを特徴とするパワーモジュール部材の製造方法が知られている(特許文献2参照)。
さらに、パワーモジュール以外では、半導体レーザー、マイクロ波素子などのために、ダイヤモンドの片側の面を接合する放熱基板の試みが行われている(特許文献3)。
しかし、この用途では超高電界に耐える必要がなく従って、構造も機能も全く異なる別の応用と技術であり、本目的とは別のものであり、パワーデバイスの放熱基板としては参考にならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特許文献1 特開2007−214492号公報
特許文献2 特開2010−278171号公報
特許文献3 特開2001−284501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ダイヤモンドを三次元的放熱及び超高電界に耐え、ヒートサイクル試験による劣化を減じ、かつ、製造も容易なパワーデバイス用放熱基板を提供するものである。
本発明で前記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、ダイヤモンドの連続した基板を用いること、また同時に構造・材料の工夫により、線膨張係数差を原因とする温度サイクルによる外部接合金属板の劣化等を逃れ、高耐圧を保持するパワー半導体モジュール用放熱実装基板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、厚さが50μm〜1000μmであるダイヤモンド系材料層と、前記ダイヤモンド系材料層とは異なる材質であって、前記ダイヤモンド系材料層の厚さ方向の両面に設けた厚さが0.1μm〜10μmであるダイヤモンド系材料膜とを有し、前記ダイヤモンド系材料層、前記ダイヤモンド系材料層の厚さ方向の両面に設けた厚さが0.1μm〜10μmであるダイヤモンド系材料膜により3層構造積層ダイヤモンド系基板とし、前記3層構造積層ダイヤモンド系基板の厚さ方向の両面にAl,Cu,及びAgから選ばれる金属の少なくとも1種を含む通電層を備え、温度サイクルによる外部接合金属板の劣化を逃れるようにした、3層構造積層ダイヤモンド系基板を用いたパワー半導体モジュール用放熱実装基板。である。
また、本発明の3層構造積層ダイヤモンド系基板を用いたパワー半導体モジュール用放熱実装基板においては、前記ダイヤモンド系材料層は、多結晶ダイヤモンド、単結晶ダイヤモンド、及び微結晶ダイヤモンドから選ばれる少なくとも1種の材料を含むことができる。
さらに、本発明の3層構造積層ダイヤモンド系基板を用いたパワー半導体モジュール用放熱実装基板前記ダイヤモンド系材料膜は、微結晶ダイヤモンド結晶、ナノダイヤモンド結晶、ウルトラナノダイヤモンド結晶、及び傾斜組成ダイヤモンド結晶(前記傾斜組成ダイヤモンド結晶はB,P及びNから選ばれる少なくとも1種の元素を含む)から選ばれる少なくとも1種の材料を含むことができる。
また、本発明の3層構造積層ダイヤモンド系基板を用いたパワー半導体モジュール用放熱実装基板においては、前記3層構造積層ダイヤモンド系基板の上下面に緩衝層としてグラファイト又はカーボンナノチューブ(CNT)を設けることが望ましい。
さらに、本発明の3層構造積層ダイヤモンド系基板を用いたパワー半導体モジュール用放熱実装基板においては、前記通電層と前記3層構造積層ダイヤモンド系基板との間にろう材を備えることができる。
また、本発明の3層構造積層ダイヤモンド系基板を用いたパワー半導体モジュール用放熱実装基板においては、前記ろう材と前記3層構造積層ダイヤモンド系基板との間にTi層又はRu層を備えることができる。
【0008】
またさらに、本発明は、ダイヤモンドが種付けされたシリコンウェハを準備する工程と、前記ダイヤモンドを成長核にして第1のダイヤモンド系材料膜を形成する工程と、前記第1のダイヤモンド系材料膜上に、前記第1のダイヤモンド系材料膜とは材質が異なるダイヤモンド系材料層を形成する工程と、前記ダイヤモンド系材料層上に、前記第1のダイヤモンド系材料膜と材質が同じ第2のダイヤモンド系材料膜を形成して3層構造積層ダイヤモンド系基板を形成する工程と、前記シリコンウェハを除去する工程とを備え、さらに、記3層構造積層ダイヤモンド系基板の厚さ方向の両面にAl,Cu,及びAgから選ばれる金属の少なくとも1種を含む通電層を備える工程からなる、温度サイクルによる外部接合金属板の劣化を逃れるようにした、パワー半導体モジュール用放熱実装基板の製造方法である。
さらに、本発明は、傷つけ処理したシリコンウェハを準備する工程と、前記シリコンウェハの傷つけエッジを成長核にして、B,P,及びNから選ばれる少なくとも1種をドープした第1のダイヤモンド系材料膜を形成する工程と、前記第1のダイヤモンド系材料膜上に、前記第1のダイヤモンド系材料膜とは材質が異なるダイヤモンド系材料層を形成する工程と、前記ダイヤモンド系材料層上に、前記第1のダイヤモンド系材料膜と材質が同じ第2のダイヤモンド系材料膜を形成して3層構造積層ダイヤモンド系基板を形成する工程と、前記シリコンウェハを除去する工程と、を備え、さらに、記3層構造積層ダイヤモンド系基板の厚さ方向の両面にAl,Cu,及びAgから選ばれる金属の少なくとも1種を含む通電層を備える工程からなる、温度サイクルによる外部接合金属板の劣化を逃れるようにした、パワー半導体モジュール用放熱実装基板の製造方法である。

【発明の効果】
【0009】
本発明のパワー半導体モジュール用放熱実装基を用いると、従来AlNを基板に用いた放熱基板に比べて、極めて良好な放熱特性を有し、温度サイクルによる外部接合金属板の劣化等を逃れ、高耐圧を保持する放熱モジュール基板を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明のパワー半導体モジュール用放熱実装基板の断面図。
図2図2は本発明で用いる3層構造積層ダイヤモンド系材料の断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の放熱基板構造について、以下詳細に記述する。本発明の3層構造積層構造ダイヤモンド基板の基本構造を図2に示す。
中心層2−2のダイヤモンド系材料層は、耐電圧のため50μm以上が好ましく、熱抵抗を抑制するために1000μm以下が好ましい。さらに好ましくは、100〜600μmである。ダイヤモンド系材料層の厚みについて、50μm以上が好ましい理由は、より具体的には、車両用の半導体素子として最低限必要な耐電圧性が得られると考えられるためである。上層2−1及び下層2−3のダイヤモンド系材料膜の厚みは、基板が外部又は内部から受ける応力を緩和するために0.1μm以上が好ましく、積層構造全体での熱抵抗を抑制するために10μm以下が好ましい。さらに、本発明の3層構造積層ダイヤモンド系基板は、図1に示すように、基板の両側に、Al,Cu,及びAgから選ばれる金属の少なくとも1種を被覆して、通電層1及び通電層3を形成している。
ダイヤモンド系材料膜2−1、2−3は、微結晶ダイヤモンド結晶、ナノダイヤモンド結晶、ウルトラナノダイヤモンド結晶、及び傾斜組成ダイヤモンド結晶(前記傾斜組成ダイヤモンド結晶はB,P及びNから選ばれる少なくとも1種の元素を含む)で形成する。ダイヤモンド系材料層2−2は、多結晶ダイヤモンド、単結晶ダイヤモンド、及び微結晶ダイヤモンドにより形成することができる。 また、3層構造積層構造ダイヤモンド基板は、上下面に緩衝層としてグラファイト又はカーボンナノチューブ(CNT)で形成しても良い。通電層は、蒸着、スパッタリング、めっき、溶着、溶接など周知の方法により、通電層を設けることができる。通電層は、ろう材を介して設けることができる。ここでろう材とは、接合する部材(母材)よりも融点の低い合金(ろう)を溶かして一種の接着剤として用いる事により、母材自体を溶融させずに複数の部材を接合させることができるろう材をいう。
【0012】
また、図1において、本発明の改良されたパワー半導体モジュール用放熱実装基板においては、上下の通電層1及び通電層3は、Al,Cu,及びAgから選ばれる金属の少なくとも1種と、ろう材の1種を重ね合わせたものである
中心層2は、3層構造積層ダイヤモンド系材料の上下面をTi薄膜で被覆したものであり、その構造は、Ti/3層構造積層ダイヤモンド系材料/Tiである。
また、チタンに代えてルテニウムを用いたRu/3層構造積層ダイヤモンド系材料/Ru を用いることもできる。
より改良されたパワー半導体モジュール用放熱実装基板においては、さらに、Ti/3層構造積層ダイヤモンド系材料/Ti基板2を1,3で両側から挟み込み、直接加熱接合して得られたもので、Al,Cu,及びAgから選ばれる金属の少なくとも1種/ろう材/Ti/3層構造積層ダイヤモンド系材料/Ti/ろう材/Al,Cu,及びAgから選ばれる金属の少なくとも1種という7層の積層構造を有する。
【0013】
本発明のさらに改良されたパワー半導体モジュール用放熱実装基板は、3層構造積層ダイヤモンド系材料の上層及び下層にさらにナノダイヤモンド層を設けた(Al,Cu,及びAgから選ばれる金属の少なくとも1種)/ろう材/Ti/ナノダイヤモンド/3層構造積層ダイヤモンド系材料/ナノダイヤモンド/Ti/ろう材/(Al,Cu,及びAgから選ばれる金属の少なくとも1種)の9層構造とすることができる。
【0014】
本発明でいう3層構造積層ダイヤモンド系材料では、多結晶ダイヤモンド、単結晶ダイヤモンド、微結晶ダイヤモンドなどを用いて、成長させた厚さ50〜1000μm、好ましくは、100〜600μmのダイヤモンド系材料であり、各種のダイヤモンドは、周知の方法で適宜に成長させることができる。
例えば、図2において、中心層2−2(ダイヤモンド系材料層)が厚いダイヤモンド系材料の骨格部分で、多結晶ダイヤモンド、単結晶ダイヤモンド、微結晶ダイヤモンド、など熱伝導と絶縁破壊耐圧の異なる材料を搭載するパワーデバイスモジュールの仕様に応じて選択することができる。この層で、基本的に高熱伝導及び高絶縁耐圧を確保する。そのため中心層2−2(ダイヤモンド系材料層)はある程度厚い板材となるが、ダイヤモンドは絶縁破壊耐圧が高いため、従来のAlNなどに比べて1/10程度の厚さにすることも可能である。
【0015】
本発明においては、種々の実施態様がある。
基本的には、ダイヤモンド系材料自体を構造的に3層またはそれ以上の層状構造にし、両方の外側に緩衝層を有する。
緩衝層として、ナノダイヤ、グラファイト、カーボンナノチューブ(CNT)を有し、かつTiによりTiCを形成して、Niめっき、ろう材、Al板と接合したサンドイッチ構造のパワー半導体モジュール用放熱実装基板を得ることができる。
緩衝層としては、これ以外に、ダイヤモンド自体の傾斜組成(B,P,Nなどのドーピングによる傾斜)、金属、金属炭化物、圧電材料、金属複合材料、発泡性金属板なども挙げられる。
【0016】
本発明の3層構造積層ダイヤモンド系材料における上層2−1(ダイヤモンド系材料膜)及び2−3(ダイヤモンド系材料膜)は、接合部分との緩衝を行う中間緩衝層としての薄膜である。中心層2−2(ダイヤモンド系材料層)がダイヤモンド系材料であるので、極めて熱伝導と絶縁破壊が高いため、上層2−1(ダイヤモンド系材料膜)及び下層2−3(ダイヤモンド系材料膜)でそれを阻害しても、3層全体としては十二分の特性を確保可能である。
上層2−1(ダイヤモンド系材料膜)及び下層2−3(ダイヤモンド系材料膜)の外側に設ける緩衝層としては、ナノダイヤモンド結晶、ウルトラナノダイヤモンド結晶、ダイヤモンド自体の傾斜組成(B,P,Nなどのドーピング層やその傾斜材料)、グラファイト、CNT等のナノカーボンなどが考えられる。さらにこれ以外に、金属炭化物、圧電材料、金属複合材料、発泡性金属板など任意の材料も挙げられる。
次に本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるべきものではない。
【実施例1】
【0017】
シリコンウェハ上にナノダイヤモンド結晶(粒径約10nm)を、超音波懸濁液を用いて種付けした。乾燥後、マイクロ波CVD装置に入れ、ナノダイヤモンドを成長核にして、はじめに2μm厚のナノダイヤモンド(ダイヤモンド系材料膜)を合成した。その後合計600μm厚の多結晶ダイヤモンド系膜(ダイヤモンド系材料層)を形成した。合成条件は、70Torr、3kW、CH4濃度2%水素中)、温度900℃である。その後、再度上記種付けを行い、2μm厚のナノダイヤモンド(ダイヤモンド系材料膜)を合成した。その後、シリコンウウェハを外し、ナノダイヤ/多結晶ダイヤモンド/ナノダイヤの3層構造積層ダイヤモンド系材料を得た。この3層構造積層ダイヤモンド系材料の熱伝導を測ると1550W/mKであった。同一条件で作成した別の試料の2μm厚のナノダイヤモンドを除去して熱伝導を測ると1750W/mKであったので、ナノダイヤ層2層により200W/mK低下したことになるが、従来のAlNの熱伝導率は180〜230W/mK程度であり、それから考えると3層構造積層ダイヤモンド系材料でも十二分の熱伝導率を保有する。
次にこの3層構造積層ダイヤモンド系材料にTiを形成し、その後通常のAlNを用いた基板と同様、Al板を両側にホットプレスでろう材を介して直接接合して、Al/ダイヤモンド3層構造/Alの構造を有する放熱実装基板を得た。これは構造を詳細に再度記載すると、Al/ろう材/Ti/ナノダイヤモンド/多結晶ダイヤモンド/ナノダイヤモンド/Ti/ろう材/Al の9層構造、放熱基板である。
この放熱基板上に、IGBTデバイスを半田で実装し、さらに水冷放熱ユニットに半田で実装した。インバータ回路動作させた。印可した電流は20Aで、最高温度はΔT=15℃であった。このモジュールを、−40 〜+125 ℃で熱サイクル試験を実施し、再度インバータ動作特性を計測したところ、変化は見られず良好に動作していることが確認できた。
実施例1の構造は、
Al/ろう材/Ti/ナノダイヤモンド/多結晶ダイヤモンド/ナノダイヤモンド/Ti/Alの9層構造放熱基板となっている。
【実施例2】
【0018】
傷付け処理を行ったシリコンウェハを合成条件70Torr、3kW、CH4濃度1〜3%(水素中)、温度900℃、NはCH4比で5%のマイクロ波CVD装置に入れ、傷つけエッジを成長核にして、Nをドープしたダイヤモンドを0.1〜10μm厚(ダイヤモンド系材料膜)を成膜し、その後、100〜400μm厚の多結晶ダイヤモンド系膜(ダイヤモンド系材料層)を形成し、その後、再度Nドープダイヤモンドを0.1〜10μm厚(ダイヤモンド系材料膜)を合成した後、シリコンウウェハを外し、Nドープダイヤ/多結晶ダイヤモンド/Nドープダイヤの3層構造積層ダイヤモンド系材料を得る。
この緩衝層を外側に有する3層構造積層ダイヤモンド系材料の熱伝導を測ると1600W/mKであった。
次にこの3層構造材料にTiを形成し、その後通常のAlNを用いた基板と同様に、Al板を両側にホットプレスで直接接合して、Al/ダイヤモンド3層構造/Alの構造を有する放熱実装基板を得た。これは構造を詳細に再度記載すると、
Al/ろう材/Ti/ Nドープダイヤモンド/多結晶ダイヤモンド/ Nドープダイヤモンド/Ti/ろう材/Alの9層構造、放熱基板である。
この放熱基板上に、IGBTデバイスを半田で実装し、さらに水冷放熱ユニットに半田で実装した。インバータ回路動作させた。印可した電流は20Aで、最高温度はΔT=15℃であった。このモジュールを、−40 〜+125 ℃で熱サイクル試験を実施し、再度インバータ動作特性を計測したところ、変化は見られず良好に動作していることが確認できた。
【0019】
(比較例1)
傷付け処理を行ったシリコンウェハ上をマイクロ波CVD装置に入れ、傷つけエッジを成長核にして、合計250μm厚の多結晶ダイヤモンド膜を形成した。合成条件は、70Torr、3kW、CH4濃度1〜3%(水素中)、温度900℃である。その後、シリコンウウェハを外し、多結晶ダイヤモンドの熱伝導を測ると1700W/mKであった。次にこの材料にTiを形成し、その後通常のAlNを用いた基板と同様に、Al板を両側にホットプレスで直接接合して、Al/多結晶ダイヤモンド/Alの構造を有する放熱実装基板を得た。これは構造を詳細に再度記載するとAl/Ti/多結晶ダイヤモンド/Ti/Al
の5層構造、放熱基板である。
この放熱基板上に、IGBTデバイスを半田で実装し、さらに水冷放熱ユニットに半田で実装した。インバータ回路動作させた。印可した電流は20Aで、最高温度はΔT=15℃であった。このモジュールを、−40 〜+125 ℃で熱サイクル試験を実施し、再度インバータ動作特性を計測したところ、基板の耐圧が劣化して、1500Vを印可した動作試験が不可能になっていることが確認できた。原因を調査したところ、Al板に亀裂が数筋走っているのが発見された。
【0020】
(比較例2)
市販の、熱伝導率220W/mKのAlN基板を用いたDBA放熱基板(Al/ろう材/AlN/ろう材/Al)上に、IGBTデバイスを半田で実装し、さらに水冷放熱ユニットに半田で実装した。インバータ回路動作させた。印可した電流は20Aで、最高温度はΔT=23℃であり、ダイヤモンド3層構造とは8℃の差であった。この差は、ダイヤモンドとAlNの熱伝導率の差から生じたものである。このモジュールを、−40 〜+125 ℃で熱サイクル試験を実施し、再度インバータ動作特性を計測したところ、変化は見られず良好に動作していることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のパワー半導体モジュール用放熱実装基板は、パワー半導体デバイスの安定的な普及を促進することができ、産業上きわめて有用である。
【符号の説明】
【0022】
1 通電層
2 3層構造積層ダイヤモンド系材料
2−1 上層(ダイヤモンド系材料膜)
2−2 中心層(ダイヤモンド系材料層)
2−3 下層(ダイヤモンド系材料膜)
3 通電層
図1
図2