特許第5979548号(P5979548)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5979548無線送信機能付き電流センサ端末、無線送信方法及び無線送受信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979548
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】無線送信機能付き電流センサ端末、無線送信方法及び無線送受信システム
(51)【国際特許分類】
   G08C 17/02 20060101AFI20160817BHJP
   G08C 15/00 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   G08C17/02
   G08C15/00 E
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-246957(P2012-246957)
(22)【出願日】2012年11月9日
(65)【公開番号】特開2014-96017(P2014-96017A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年8月7日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度 独立行政法人科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業(CREST)「ULPユビキタスセンサの開発」 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩尚
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 寿浩
【審査官】 櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−122939(JP,A)
【文献】 特開2009−302632(JP,A)
【文献】 特開昭61−193300(JP,A)
【文献】 特開平07−170647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 13/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を流れる電流に基づく電磁誘導電流を検出して出力する電流センサと、
前記電流センサからの前記電磁誘導電流を整流して蓄電する蓄電回路と、
前記電流センサで検出した前記電線を流れる電流の電流量に関するデータを直接的には含まない所定の送信信号を無線送信する送信回路と、
前記送信回路に、前記蓄電回路の蓄電電圧を、前記送信回路の電源電圧として供給するためのスイッチ回路と、
前記蓄電回路の蓄電電圧が予め定めた所定の閾値電圧を超えたかどうかを判定する判定回路と、
前記判定回路の判定結果に基づき、前記蓄電回路の蓄電電圧が予め定めた所定の閾値電圧を超えた時点から、前記送信回路における前記送信信号の無線送信を完了する時間よりも長い所定時間だけ、前記スイッチ回路をオンとして、前記蓄電電圧を電源電圧として、前記送信回路に供給するようにするためのタイマー回路と、
を備え、
前記送信回路は、前記スイッチ回路を通じて電源電圧の供給を受けている前記所定時間の期間における前記送信信号の無線送信を、前記判定回路の判定結果に基づいて繰り返し実行することで、前記電流センサで検出した前記電線を流れる電流の電流量に応じて前記送信信号の送信間隔を変化させるようにした
ことを特徴とする無線送信機能付き電流センサ端末。
【請求項2】
前記所定の送信信号は、受信側で送信端末を識別できるようにする信号である
ことを特徴とする請求項1に記載の無線送信機能付き電流センサ端末。
【請求項3】
前記送信回路は、前記電流センサ端末毎に割り当てられた周波数の信号を、前記送信端末を識別できるようにする前記送信信号として無線送信する
ことを特徴とする請求項2に記載の無線送信機能付き電流センサ端末。
【請求項4】
前記判定回路は、前記蓄電回路の蓄電であるが前記閾値電圧を超えたときに、出力端がハイレベルとなる第1の比較回路からなり、
前記タイマー回路は、前記第1の比較回路の出力端がハイレベルのときに導通するダイオードと、前記ダイオードを通じた電流により充電されるコンデンサと、前記コンデンサの充電電圧に応じて放電を行うための抵抗と、前記コンデンサの充電電圧と前記閾値電圧とを比較する第2の比較回路とからなり、前記第2の比較回路の出力により前記スイッチ回路のオン・オフを制御する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線送信機能付き電流センサ端末。
【請求項5】
前記蓄電回路は、昇圧回路を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無線送信機能付き電流センサ端末。
【請求項6】
電線を流れる電流に基づく電磁誘導電流を電流センサで検出し、検出した前記電磁誘導電流を整流して蓄電する蓄電工程と、
前記蓄電工程で蓄電された蓄電電圧が予め定めた所定の閾値電圧を超えたかどうかを判定する判定工程と、
前記判定工程で、前記蓄電電圧が予め定めた所定の閾値電圧を超えたと判定されたときに、その判定時点から、前記送信信号の無線送信を完了する時間よりも長い所定時間だけ、前記蓄電電圧を電源電圧として送信回路に供給して、前記電流センサで検出した前記電線を流れる電流の電流量に関するデータを直接的には含まない送信信号の無線送信を実行する無線送信工程と、
を有し、
前記無線送信工程の後には、前記蓄電工程に戻り、前記蓄電工程から前記無線送信工程までを繰り返し、前記電流センサで検出した前記電線を流れる電流の電流量に応じて前記送信信号の送信間隔を変化させるようにした
ことを特徴とする無線送信方法。
【請求項7】
前記送信信号は、前記受信側で送信端末を識別できるようにする信号である
ことを特徴とする請求項6に記載の無線送信方法。
【請求項8】
電線を流れる電流量を無線送信する無線送信機能付き電流センサ端末と、前記無線送信機能付き電流センサ端末からの送信信号を受信する受信装置とからなる無線送受信システムにおいて、
前記無線送信機能付き電流センサ端末は、
電線を流れる電流に基づく電磁誘導電流を検出して出力する電流センサと、
前記電流センサからの前記電磁誘導電流を整流して蓄電する蓄電回路と、
前記電流センサで検出した前記電線を流れる電流の電流量に関するデータを直接的には含まない所定の送信信号を無線送信する送信回路と、
前記送信回路に、前記蓄電回路の蓄電電圧を、前記送信回路の電源電圧として供給するためのスイッチ回路と、
前記蓄電回路の蓄電電圧が予め定めた所定の閾値電圧を超えたかどうかを判定する判定回路と、
前記判定回路の判定結果に基づき、前記蓄電回路の蓄電電圧が予め定めた所定の閾値電圧を超えた時点から、前記送信回路における前記送信信号の無線送信を完了する時間よりも長い所定時間だけ、前記スイッチ回路をオンとして、前記電源電圧を、前記送信回路に供給するようにするためのタイマー回路と、
を備え、
前記送信回路は、前記スイッチ回路を通じて電源電圧の供給を受けている前記所定時間の期間における前記送信信号の無線送信を、前記判定回路の判定結果に基づいて繰り返し実行することで、前記電流センサで検出した前記電線を流れる電流の電流量に応じて前記送信信号の送信間隔を変化させるようにし、
前記受信装置は、
前記送信信号を受信する毎に、その受信時点の情報を記憶する記憶回路と、
前記記憶回路に記憶した前記送信信号の受信時点の時間的に隣り合うものの時間差から、前記送信信号の送信間隔を算出し、算出した送信間隔を、電流量または消費電力に換算する換算回路と、
を備える無線送受信システム。
【請求項9】
前記送信信号は、前記受信側で送信端末を識別できるようにする信号であり、
前記受信装置は、
前記受信した前記送信信号から、前記送信端末を識別する識別回路を備えると共に、
前記記憶回路は、前記識別回路で識別した前記送信端末の識別情報に対応付けることにより、前記送信端末毎に前記送信信号の受信時点を記憶し、
前記換算回路は、前記送信端末毎に、前記算出した送信間隔を、電流量または消費電力に換算する
ことを特徴とする請求項8に記載の無線送受信システム。
【請求項10】
前記換算回路は、
前記識別情報で識別される送信端末毎に、送信間隔と電流量または消費電力との対応情報を記憶する記憶回路を含み、
前記送信端末毎に、前記算出した送信間隔に対応する電流量または消費電力を、前記記憶している対応情報を参照することで算出する
ことを特徴とする請求項9に記載の無線送受信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線を流れる電流の電流量を検出して、例えば電力消費を監視するシステム等に適用して好適な無線送信機能付き電流センサ端末、無線送信方法及び無線送受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近は、電力エネルギーの需給事情の問題から、いわゆる省エネが重要課題となっている。そのため、工場、商業施設、オフィス、さらには一般家庭においても、木目細かく消費電力を監視して全体としての省エネに役立てようとする試みが進んでいる。このような目的を達成するためには、工場全体、商業施設全体、オフィス全体、一般家庭の一戸当たり全体の電力を監視するだけではなく、部屋毎あるいは端末装置や電気機器毎の消費電力を監視する必要がある。
【0003】
このような要請から、部屋毎に配線されている電線や端末装置や電気機器に電源を供給する電線に流れる電流量や消費電力を検出するセンサ端末に無線送信機能を付与し、適宜に設置して、そのセンサ端末で検出された電流量や消費電力を、受信機能を有する監視センターに、無線送信するようにした無線センサネットワークシステムが提案されている。
【0004】
このシステムに対応できるように提案されている無線送信機能付きのセンサ端末は、電源としてバッテリーを搭載し、或る時間間隔で、送信データを監視センターに無線送信するようにする。そして、その場合に、センサ端末から無線送信するデータには、自端末の識別情報などの他、測定した電流量のデジタル値や消費電力のデジタル値がそのまま含められるのが一般的である(例えば以下に示す特許文献1や特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−159532号公報
【特許文献2】特開2011−259252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来から提案されている無線センサネットワークシステムに用いられる無線送信機能付きのセンサ端末は、電源としてバッテリーを搭載しているため、このバッテリーが劣化した場合にはその交換が必要であるという問題がある。
【0007】
そこで、電池交換を不要とするために、バッテリー電源を持たずに、自立電源を備えることが望ましい。この要求を満たす方法として、電線に取り付けて電磁誘導電流を検出するタイプのクランプ型電流センサを用い、このクランプ型電流センサで検出される電磁誘導電流を蓄電することで、無線送信のための電源電圧とすることが考えられる。
【0008】
しかし、この場合に、電線、特に家庭用電灯線などから検出される電磁誘導電流は微小レベルであるが、その蓄電電圧を電源として用いて、適当な時間間隔で確実に無線送信を実行することができるようにすることを考慮しなければならない。すなわち、無線送信機能付きのセンサ端末は、できるだけ無線送信時の電力消費が少ないことが重要である。
【0009】
ところで、無線送信の際の消費電力は、送信するデータの総データ量(総電文量)に比例する。したがって、無線送信時の電力消費を少なくするためには、送信する総データ量をできるだけ少なくすることが肝要である。
【0010】
ところが、従来は、上述したように、送信するデータには、測定した電流量のデジタル値や消費電力のデジタル値からなる測定データが、そのまま含められているため、送信すべき総データ量が大きいという問題がある。このため、電流センサで検出した電磁誘導電流を蓄電した蓄電電圧を無線送信のための電源電圧としようとすると、必要な蓄電電圧を得るために長期間に渡って蓄電しなければならず、実用に耐えないという問題がある。あるいは、送信すべき総データが多いために、蓄電電圧を電源電圧としたときに、送信データのすべての送信を完了することができないおそれがある。したがって、従来は、電流センサで検出した電磁誘導電流を蓄電した蓄電電圧を、無線送信機能付きのセンサ端末の自立電源として用いることが事実上困難であった。
【0011】
この発明は、以上の問題点に鑑み、交換が必要なバッテリーを電源とすることなく、自立電源を用いる場合であっても、測定した電流量や消費電力の情報を、無線送信することができるようにした無線送信機能付き電流センサ端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、この発明は、
電線を流れる電流に基づく電磁誘導電流を検出して出力する電流センサと、
前記電流センサからの前記電磁誘導電流を整流して蓄電する蓄電回路と、
前記電流センサで検出した前記電線を流れる電流の電流量に関するデータを直接的には含まない所定の送信信号を無線送信する送信回路と、
前記送信回路に、前記蓄電回路の蓄電電圧を、前記送信回路の電源電圧として供給するためのスイッチ回路と、
前記蓄電回路の蓄電電圧が予め定めた所定の閾値電圧を超えたかどうかを判定する判定回路と、
前記判定回路の判定結果に基づき、前記蓄電回路の蓄電電圧が予め定めた所定の閾値電圧を超えた時点から、前記送信回路における前記送信信号の無線送信を完了する時間よりも長い所定時間だけ、前記スイッチ回路をオンとして、前記蓄電電圧を電源電圧として、前記送信回路に供給するようにするためのタイマー回路と、
を備え、
前記送信回路は、前記スイッチ回路を通じて電源電圧の供給を受けている前記所定時間の期間における前記送信信号の無線送信を、前記判定回路の判定結果に基づいて繰り返し実行することで、前記電流センサで検出した前記電線を流れる電流の電流量に応じて前記送信信号の送信間隔を変化させるようにした
ことを特徴とする無線送信機能付き電流センサ端末を提供する。
【0013】
上述の構成のこの発明による無線送信機能付き電流センサ端末においては、送信信号には、電流センサで検出した前記電線を流れる電流の電流量に関するデータを直接的には含まない。その代わりに、電流センサで検出した電線を流れる電流の電流量に応じて送信信号の送信間隔を変化させる。
【0014】
このため、この発明においては、電線を流れる電流に基づく電磁誘導電流を検出し、その検出した電磁誘導電流を整流して蓄電する蓄電回路を備える。そして、判定回路において、蓄電回路の蓄電電圧が予め定めた所定の閾値電圧を超えたかどうかを判定し、蓄電回路の蓄電電圧が予め定めた所定の閾値電圧を超えたときに、送信回路により前記所定の送信信号を無線送信する。
【0015】
この際に、蓄電回路の蓄電電圧が予め定めた所定の閾値電圧を超えた時点から、送信回路における送信信号の無線送信を完了する時間よりも長い所定時間だけ、タイマー回路によりスイッチ回路をオンとして、蓄電電圧を電源電圧(自立電源)として、送信回路に供給するようにする。
【0016】
この所定時間の無線送信の期間で送信回路において蓄電回路の蓄電電圧が電力消費されるため、蓄電電圧は前記所定の閾値電圧よりも一定電圧だけ下がる。無線送信の期間が終了すると、蓄電回路においては、この低下した蓄電電圧から、電磁誘導電流による蓄電を開始する。蓄電電圧が次に閾値電圧を超えるのは、電線を流れる電流の時間積分である電流量に応じた時間後である。すなわち、電線を流れる電流が小さければ、次に閾値電圧まで上昇するのに時間がかかり、電線を流れる電流が大きければ、次に閾値電圧まで上昇するまでの時間は、短くなる。すなわち、送信回路からは、電流センサで検出した電線を流れる電流の電流量に応じた送信間隔で送信信号が送出される。
【0017】
したがって、受信側では、受信した送信信号の送信間隔を検出し、その検出した送信間隔から、当該送信間隔の間において電流センサで検出された電線を流れる電流の電流量が算出される。つまり、受信側では、受信した送信信号の送信間隔が電流量に換算される。そのため、この発明においては、センサ端末が無線送信する所定の送信信号には、測定した電流量に関するデジタルデータを直接的に含める必要はない。測定した電流量のデジタルデータの送信信号に占める割合は大きいので、送信信号の総データ量を大幅に削減することができる。これにより、送信時の消費電力を大幅に低減することができる。こうして、この発明によれば、自立電源を用いる場合であっても、測定した電流量や消費電力の情報を、適宜のタイミングで、無線送信することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、電流センサで検出した電線を流れる電流の電流量に応じて送信信号の送信間隔を変化させて、受信側で受信した送信データの送信間隔を電流量に換算することができるようにすることで、送信するデータの総データ量を最小限とすることができるようになり、交換が必要なバッテリーを電源とすることなく、自立電源を用いる場合であっても、測定した電流量や消費電力の情報を、無線送信することができる無線送信機能付き電流センサ端末装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明による無線送受信システムの実施形態の構成例の概要を説明するための図である。
図2】この発明による無線送信機能付き電流センサ端末の実施形態の外観構成例を示す図である。
図3】この発明による無線送信機能付き電流センサ端末の実施形態における無線送信部の構成例を示す回路図である。
図4図3の回路図の動作説明に用いるタイミングチャートを示す図である。
図5】この発明による無線送信機能付き電流センサ端末の実施形態における送信信号の例を説明するための図である。
図6】この発明による無線送受信システムの実施形態を構成する受信装置の構成例を示す図である。
図7図6の例の受信装置の処理動作例を説明するためのフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、この発明による無線送受信システムの実施形態の構成例の概要を説明する図である。図1において四角で囲んで示すエリア1は、工場や店舗、あるいは一般家庭における電源配線エリアを示している。
【0021】
エリア1内には、配電盤2が設けられている。この配電盤2は、送電線3に接続されていると共に、この配電盤2から、エリア1内の各部屋や設備に配電するための複数本の電線41,42,・・・,4n(nは正の整数)が導出されている。そして、この実施形態では、配電盤2において、電線41,42,・・・,4nのそれぞれの一部を構成している電線部分には、無線送信機能付き電流センサ端末51,52,・・・,5nが取り付けられている。
【0022】
ここで、無線送信機能付き電流センサ端末51,52,・・・,5nは、全く同様のハードウエア構成を備えているので、以下の説明において、無線送信機能付き電流センサ端末51,52,・・・,5nのそれぞれを区別する必要がないときには、無線送信機能付き電流センサ端末5と記載する。また、同様に、複数本の電線41,42,・・・,4nのそれぞれを区別する必要がないときには、電線4と記載する。なお、以下の説明において、無線送信機能付き電流センサ端末は、電流センサ端末と略称する。
【0023】
電流センサ端末5は、図2に示すように、クランプ型電流センサ501と、無線送信部502とからなる。クランプ型電流センサ501は、クランプ機構部503と、電流検出部504とからなる。クランプ機構部502は、例えばU字型を有し、図2(A)及び(B)に示すように、電流検出部504に対してヒンジ部505を中心にして回動可能に取り付けられている。電流センサ端末5は、図2(B)に示すように、クランプ機構部503を、電線4をU字型部分内に収納するようにしてクランプすることにより、電線4に取り付けられる。クランプ機構部503は、電流検出部504に設けられている突起507に、クランプ機構部503の係合部分506が係合することで、ロックされる。
【0024】
このように電線4にクランプ機構部503がロックされた状態では、電流センサ端末5においては、電線4を中心としてリング状コア(図2(B)の点線参照)が形成される。そして、このリング状コアにはコイルが巻回されており、このコイルには、電線4に流れる電流によって発生する磁界により電磁誘導電流が誘起される。電流検出部504は、このコイルに誘起される電磁誘導電流を検出する。そして、この実施形態では、クランプ型電流センサ501で検出された電磁誘導電流は、無線送信部502に供給される。
【0025】
無線送信部502は、クランプ型電流センサ501から受けた電磁誘導電流を整流して蓄電し、その蓄電電圧を無線送信のための電源電圧として用いるようにする。そして、無線送信部502は、蓄電電圧が、無線送信のための電源電圧として用いることができる電圧以上の予め定めた所定の閾値電圧以上となったときに、所定の送信信号を受信装置6に対して無線送信するようにする。
【0026】
このとき、この実施形態では、無線送信部502は、送信信号には、クランプ型電流センサ501で検出された電流に基づいて測定された電流量の電文データ(デジタルデータ)は含めない。その代わりに、無線送信部502は、クランプ型電流センサ501から受けた電磁誘導電流の電流量に応じた送信間隔で、送信信号を受信装置6に送信する。
【0027】
また、この実施形態では、図1に示したように、受信装置6では、複数個の電流センサ端末51〜5nからの送信信号を共通に受信するので、受信装置6では、電流センサ端末51〜5nのうちのいずれからの送信信号であるかを識別することができる必要がある。そのため、無線送信部502からの送信信号は、受信装置6で、複数個の電流センサ端末51〜5nいずれからの送信信号であるかを識別することができる信号とされる。
【0028】
この場合に、送信信号に、それぞれの電流センサ端末5の識別データを含めることで、受信装置6で、いずれの電流センサ端末5からの送信信号であるかを識別することができる。しかし、それでは、送信信号の電文データ量が多くなってしまうので、この実施形態では、以下に説明するように、識別データは送信信号の電文データには含めず、受信装置6で、複数個の電流センサ端末51〜5nいずれからの送信信号であるかを識別することができるように、送信信号を工夫している。
【0029】
図3は、無線送信部502の構成例を示す回路図である。この図3に示すように、無線送信部502は、蓄電回路510と、閾値電圧判定回路520と、タイマー回路530と、スイッチ回路540と、無線送信回路550とを備えている。
【0030】
蓄電回路510は、倍電圧整流回路511と、蓄電用コンデンサ512とからなる。倍電圧整流回路511は、クランプ型電流センサ501の出力端子501a,501bに接続されており、この出力端子501a,501b間に現れる交流の電磁誘導電流を倍電圧整流し、その倍電圧整流して得た直流電流により、蓄電用コンデンサ512を充電して蓄電する。
【0031】
倍電圧整流回路511は、クランプ型電流センサ501により電線4に流れる電流から検出して出力する電磁誘導電流レベルが小さいので、昇圧するためのものである。この倍電圧整流回路511としては、通常はチャージポンプなどを使用した昇圧回路を用いるが、それでは消費電力が大きいため、この実施形態では、例えばコッククロフト・ウォルトンの回路などのような、ダイオードとコンデンサのみからなり、低消費電力の昇圧回路を用いる。
【0032】
蓄電用コンデンサ512は、クランプ型電流センサ501で検出された電線4に流れる電流に応じた電磁誘導電流により充電されるので、この蓄電用コンデンサ512の蓄電電圧VCは、電線4に流れる電流の時間積分値である電流量に応じて上昇する。
【0033】
この蓄電用コンデンサ512に蓄積された蓄電電圧VCは、閾値電圧判定回路520及びタイマー回路530の電源電圧として供給されると共に、スイッチ回路540を通じて、無線送信回路550の電源電圧として供給される。スイッチ回路540は、蓄電用コンデンサ512に蓄積された蓄電電圧VCを、無線送信回路550に電源電圧として供給するか否かを制御する電源電圧供給制御回路を構成している。
【0034】
閾値電圧判定回路520は、蓄電用コンデンサ512に蓄電された蓄電電圧VCが、予め定められた閾値電圧Vthを超えたか否かを判定する。この例では、閾値電圧Vthは、無線送信回路550を駆動するのに十分な電圧値、例えば3ボルトとされる。
【0035】
図3の例の閾値電圧判定回路520は、比較回路を構成するオペアンプ521を備える。そして、閾値電圧判定回路520においては、蓄電用コンデンサ512に並列に抵抗器522と抵抗器523との直列回路が接続されている。抵抗器522と抵抗器523の接続点には、蓄電用コンデンサ512の両端間電圧である蓄電電圧VCが抵抗器522及び抵抗器523の抵抗値R1及びR2に応じて分圧された分圧電圧Vdが得られ、この分圧電圧Vdが、比較回路を構成するオペアンプ521の非反転入力端子に供給される。一方、オペアンプ521の反転入力端子には、比較用基準電圧Vrefが供給される。
【0036】
この実施形態では、オペアンプ521として、バンドギャップリファレンス回路を内蔵し、そのバンドギャップリファレンスによる基準電圧を出力することができるものを用いている。このバンドギャップリファレンスによる基準電圧は、オペアンプ521を構成するIC中の素子のばらつき、電源電圧、温度に依存しない安定な基準電圧であり、例えば1.25ボルトである。この実施形態では、このオペアンプ521のバンドギャップリファレンスによる基準電圧を、比較用基準電圧Vrefとして、当該オペアンプ521の反転入力端子に供給するように構成している。
【0037】
オペアンプ521は、抵抗器522と抵抗器523の接続点の分圧電圧Vdが、比較用基準電圧Vrefよりも大きい所定電圧を超えると、出力端子に得られる出力信号SU1がハイレベルとなり、その他のときには出力信号SU1はローレベルとなる。この実施形態では、抵抗器522と抵抗器523の接続点の分圧電圧Vdは、蓄電用コンデンサ512の蓄電電圧VCが前述した3ボルトとなったときに、比較用基準電圧Vrefよりも大きい所定電圧になるように、この例では、抵抗器522と抵抗器523の抵抗値R1及びR2が選定されている。
【0038】
以上の説明から明らかなように、オペアンプ521の出力信号SU1は、蓄電用コンデンサ512の蓄電電圧VCが、無線送信回路550を駆動するのに十分な電圧値、この例では3ボルトになったときにハイレベルの信号となる。
【0039】
そこで、このオペアンプ521の出力信号SU1を、直接にスイッチ回路540にスイッチ制御信号として供給して、この出力信号SU1のハイレベル区間で、スイッチ回路540をオンとして、無線送信回路550に、蓄電用コンデンサ512の蓄電電圧VCをその電源電圧として供給することが考えられる。
【0040】
しかしながら、もしもそのように構成した場合には、スイッチ回路540がオンとなって蓄電電圧VCが電源電圧として無線送信回路550に供給されると、当該無線送信回路550で電力が消費されることにより、蓄電用コンデンサ512の蓄電電圧VCの電圧値が下がる。すると、抵抗器522と抵抗器523の接続点の分圧電圧Vdが、比較用基準電圧Vrefよりも大きい所定電圧よりも低くなるので、オペアンプ521の出力信号SU1がローレベルとなって、スイッチ回路540がオフとなり、無線送信回路550での送信信号の無線送信が完了する前に、無線送信回路550への電源が断たれてしまうと言う問題が生じる。
【0041】
この問題を回避するために、この実施形態では、タイマー回路530が、閾値電圧判定回路520の出力端とスイッチ回路540との間に設けられている。タイマー回路530は、この例では、時定数回路を構成する充放電回路531と、比較回路を構成するオペアンプ532とで構成されている。
【0042】
充放電回路531は、閾値電圧判定回路520のオペアンプ521の出力端子にアノードが接続されるダイオード533と、このダイオード533のカソードに接続されるコンデンサ534及び抵抗器535の並列回路とからなる。そして、コンデンサ534の両端間電圧が、比較回路を構成するオペアンプ532の非反転入力端子に供給される。このオペアンプ532の反転入力端子には、オペアンプ521のバンドギャップリファレンスによる基準電圧が、比較用基準電圧Vrefとして供給されている。
【0043】
そして、スイッチ回路540は、タイマー回路530と無線送信回路550との間に設けられ、タイマー回路530のオペアンプ532の出力信号SU2が、スイッチ回路540に、そのスイッチ制御信号として供給される。
【0044】
タイマー回路530の時定数回路を構成する充放電回路531においては、閾値電圧判定回路520のオペアンプ521の出力信号SU1がハイレベルとなると、ダイオード533が導通して、コンデンサ534に充電電流が流れ、このコンデンサ534の両端間電圧は瞬時に3ボルトまで上昇する。すると、オペアンプ532の出力信号SU2がハイレベルとなり、これによりスイッチ回路540がオンとなり、蓄電用コンデンサ512の蓄電電圧VCが無線送信回路550への電源電圧として供給される。
【0045】
こうしてスイッチ回路540がオンとなって無線送信回路550への電源電圧の供給が開始され、無線送信回路550での電力消費がなされると、蓄電用コンデンサ512の蓄電電圧VCが低下するため、閾値電圧判定回路520のオペアンプ521の出力信号SU1は、ローレベルとなる。このため、タイマー回路530の充放電回路531のコンデンサ534への充電が停止し、このコンデンサ534からは、抵抗器535を通じて放電電流が流れ始める。このとき、ダイオード533は逆バイアスとなって、オフの状態となり、放電電流は抵抗器535のみを流れる。したがって、コンデンサ534の静電容量と抵抗器535の抵抗値で決まる放電時定数で、コンデンサ534の両端間電圧は、低下することになる。
【0046】
そして、コンデンサ534の両端間電圧が、比較用基準電圧Vrefよりも低くなると、オペアンプ532の出力信号SU2はローレベルとなり、スイッチ回路540はオフとなる。したがって、スイッチ回路540は、蓄電用コンデンサ512の蓄電電圧VCが3ボルトに達した時点から、充放電回路531の放電時定数で決まる一定時間Txだけ、オンとなって、無線送信回路550に、蓄電用コンデンサ512の蓄電電圧VCを電源電圧として供給する。
【0047】
この実施形態では、タイマー回路530の充放電回路531の放電時定数で決まる一定時間Tx、すなわち、スイッチ回路540がオンとなる期間の長さは、無線送信回路550で送信信号の無線送信を完了するのに十分な時間長となるようにされる。すなわち、コンデンサ534の静電容量と抵抗器535の抵抗値は、放電時定数で決まる一定時間Txが送信信号の無線送信を完了するのに十分な時間長となるように選定されている。
【0048】
無線送信回路550は、この例では、例えばマイクロコンピュータからなるMCU(Micro Controller Unit)551と、高周波無線送信回路を構成する無線IC(Integrated Circuit;集積回路)552とからなる。ここで、MCU551及び無線IC552は、この例では、電源電圧が3ボルトで動作するものとされている。したがって、スイッチ回路540を通じてMCU551と無線IC552とに、蓄電用コンデンサ512に蓄電された3ボルトの蓄電電圧VCが印加されると、無線IC552は、MCU551の制御を受けて、この例の送信信号を無線送信する。
【0049】
この実施形態では、電流センサ端末51〜5nのそれぞれの無線IC552には、互いに異なる無線送信周波数が割り当てられており、無線IC552は、MCU551の制御に基づき、その無線送信周波数の周波数信号を送信信号として無線送信する。
【0050】
送信信号は、例えば、図5(A)に示すように、プリアンブル区間、データ区間および誤り検出区間を有する信号とされ、図5(B)に示すように、この送信信号のハイレベル期間にのみ、割り当てられている周波数信号が送出されるASK(Amplitude Shift Keying)信号とされる。すなわち、送信信号は、プリアンブル区間及び誤り検出区間では、電流センサ端末51〜5nのそれぞれに割り当てられた無線送信周波数の周波数信号の断続信号とされ、データ区間では、この例では1ビット分の時間長区間の前記周波数信号の連続信号とされている。
【0051】
なお、図5の例では、プリアンブル区間と誤り検出区間との間にデータ区間を設けるようにしたが、この実施形態では、送信信号には、電流量のデジタルデータは含まなくて良いので、最小、データ区間は0ビット分のデータとすることができ、データ区間は設けなくてもよい。
【0052】
なお、システムに設けられる電流センサ端末5の数が多すぎて、電流センサ端末毎に異なるように割り当てられる周波数の数が足りなくなる場合には、送信信号のデータ区間に電流センサ端末の識別情報を含めるようにしてもよい。また、無線送信部502に対して電流センサ501に加えて温度センサなどを接続して、その温度センサで計測した温度のデータを、データ区間に含めるようにしても良い。
【0053】
受信装置6では、受信した送信信号の周波数を判別することにより、複数個の電流センサ端末51〜5nのうちのいずれの電流センサ端末からの送信信号を受信したかを判断する。すなわち、この実施形態では、送信信号の周波数が、電流センサ端末51〜5nのそれぞれの識別情報となっている。
【0054】
また、図5からも明らかなように送信信号には、クランプ型センサ501で検出された電流の電流量のデジタルデータは、電文データとしては含まれてはおらず、前述したように、受信装置6では、受信した送信信号の送信間隔から、クランプ型センサ501で検出された電流量を判別するようにする。
【0055】
電流センサ端末5の動作の例を、図4を参照しながら説明する。クランプ型センサ501のクランプ機構部503により、電流センサ端末5が、図2(B)に示すように電線4に装着されると、無線送信部502の蓄電用コンデンサ512の蓄電電圧VCは、図4(A)に示すように、電線4に流れる電流の電流量に応じて徐々に上昇する。
【0056】
そして、図4の時点t1において、蓄電用コンデンサ512の蓄電電圧VCが閾値電圧Vth(=3ボルト)を超えると、そのことが閾値電圧判定回路520で判定されて、オペアンプ521の出力信号SU1(図4(B)参照)がハイレベルとなる。このため、タイマー回路530の充放電回路531のコンデンサ534が3ボルトまで瞬時に充電され、オペアンプ532の出力信号SU2(図4(C)参照)がハイレベルとなって、スイッチ回路540がオンとなる。
【0057】
このスイッチ回路540のオンにより、無線送信回路550のMCU551及び無線IC552に、蓄電用コンデンサ512の3ボルトの蓄電電圧VCが印加され、無線IC552から、前述した当該電流センサ端末5に割り当てられた周波数による送信信号が、受信装置6に対して無線送信(図4(D)の斜線部参照)される。
【0058】
この無線送信の開始により、蓄電用コンデンサ512の蓄電電圧VCが閾値電圧Vthよりも低下することにより、閾値電圧判定回路520のオペアンプ521の出力信号SU1(図4(B)参照)はローレベルになる。しかし、タイマー回路530の充放電回路531のコンデンサ534の充電電圧は、抵抗器535の抵抗値に応じた放電時定数で下がり、この時点では、比較用基準電圧Vrefよりも大きいので、オペアンプ532の出力信号SU2(図4(C)参照)は、ハイレベルを維持する。
【0059】
そして、図4(D)の斜線部で示す送信信号の無線送信が完了した後におけるタイマー回路530の充放電回路531の放電時定数に応じた時間Txだけ経過した時点t2になると、コンデンサ534の充電電圧が比較用基準電圧Vrefよりも低下するため、オペアンプ532の出力信号SU2(図4(C)参照)がローレベルとなる。このオペアンプ532の出力信号SU2がローレベルとなることにより、スイッチ回路540はオフとなり、無線送信回路550のMCU551及び無線IC552への電源電圧の供給が遮断される。しかし、この時点t2では、前述したように、無線ICからの送信信号の無線送信は完了している。
【0060】
そして、この時点t2でスイッチ回路540がオフとなることにより、蓄電用コンデンサ512の蓄電電圧VCへの無線送信回路550への供給が遮断されるので、蓄電用コンデンサ512には、電線4に流れる電流による充電により蓄電が再開され、蓄電電圧VCは、図示のように徐々に上昇する。なお、時点t2においては、蓄電用コンデンサ512の蓄電電圧VCはゼロボルトになる訳ではなく、無線送信回路550で消費された電力に応じた分だけ低い電圧値OFSとなる。
【0061】
ここで、無線送信回路550から無線送信される送信信号は、測定された電流量に応じた電文データを含まない図5に示したような固定の送信信号であるので、無線送信回路550における無線送信で消費される電力は一定である。このため、無線送信回路550における無線送信動作後に蓄電用コンデンサ512に残る蓄電電圧VCは、常に閾値電圧Vthから当該無線送信で消費される一定の電力分を差し引いた値となるので、電圧値OFSは一定値となる。
【0062】
蓄電用コンデンサ512は、この電圧値OFSから蓄電を開始する。そして、蓄電用コンデンサ512の蓄電電圧VCが、例えば時点t3において、再び、閾値電圧Vthを超えると、上述した時点t1以降と全く同様にして、その時点t3から時点t4までの時間Txの間、送信信号の無線送信を実行する。そして、時点t4から、蓄電用コンデンサ512における電線4を流れる電流の電流用に応じた蓄電が再開される。以下、全く同様にして、蓄電用コンデンサ512の蓄電電圧VCが閾値電圧Vthである3ボルトを越える毎に、時点t5から時点t6までの時間Txの間、さらに、時点t7から時点t8までの時間Txの間、というように、送信信号の無線送信を繰り返し実行する。
【0063】
そして、前の時間Txの送信区間の終了時点t2、t4、t6・・・から、次の時間Txの送信区間の開始時点t3、t5、t7・・・までの時間長P1、P2、P3・・・は、蓄電用コンデンサ512の蓄電電圧VCが、前記電圧値OFSから閾値電圧Vthに到達するまでの時間長であり、Vth−OFS=一定であるので、この時間長P1、P2、P3・・・は、電線4に流れる電流の電流量に応じた時間となる。
【0064】
したがって、受信装置6で、この時間長P1、P2、P3・・・を検出することにより、クランプ型電流センサ501で検出された電流の電流量を検出することができる。送信区間の時間長Txは、一定であって既知であるので、受信装置6では、前回の送信区間の時間Txの開始時点(送信信号の受信開始時点)から今回の送信区間の時間Txの開始時点(送信信号の受信開始時点)までの時間長から、時間長Txを減算することにより、時間長P1、P2、P3・・・を算出することができる。
【0065】
次に、受信装置6の構成例について、図6のブロック図を参照して説明する。受信回路6は、図6に示すように、受信回路61と、A/D変換回路62と、FFT(Fast Fourier Transform)回路63と、処理プロセッサ64と、周波数対応端末IDテーブルメモリ65と、時計部66と、端末ID毎受信時刻メモリ67と、端末ID毎参照データメモリ68と、端末ID毎電流量メモリ69とからなる。
【0066】
周波数対応端末IDテーブルメモリ65には、複数個の電流センサ端末51〜5nのそれぞれの端末ID(Identification;識別情報)と、電流センサ端末51〜5nのそれぞれに割り当てられている周波数との対応テーブルが記憶されている。
【0067】
端末ID毎受信時刻メモリ67は、受信装置6で受信した送信信号の受信時刻が、その送信信号を無線送信した電流センサ端末5の端末IDに対応付けられて格納されるメモリである。
【0068】
端末ID毎参照データメモリ68には、電流センサ端末51〜5nのそれぞれ毎に予め測定された、送信信号の送信間隔の時間長と、その送信間隔の時間長の間に電線41〜4nのそれぞれに流れる電流の電流量との対応テーブルが、それぞれの端末IDに対応付けられて記憶されている。
【0069】
端末ID毎電流量メモリ69には、電流センサ端末51〜5nのそれぞれからの送信信号を受信する毎に、一つ前の受信時刻との時間差から後述するように算出される電流量が、それぞれの端末IDに対応付けられて記憶される。
【0070】
処理プロセッサ64は、FFT回路63からの復調データから、受信した送信信号の送信間隔を算出し、算出した送信間隔を、当該送信間隔における電流量に換算する換算回路の機能を有する。
【0071】
次に、この例の受信装置6の処理動作を、主として処理プロセッサ64での処理の流れを示す図7のフローチャートを参照しながら以下に説明する。
【0072】
受信装置6においては、電流センサ端末5からの送信信号は、受信部61で受信され、A/D変換部62においてデジタル信号に変換されて、FFT回路63に供給される。FFT回路63では、受信した周波数信号を周波数スペクトル信号に変換して、処理プロセッサ64に供給する。
【0073】
処理プロセッサ64は、このFFT回路63からの周波数スペクトル信号を復調データとして取得し(図7のステップS101)、この周波数スペクトル信号の復調データ中の特定の周波数位置に、有意と見なすことができるピークが立っているか否かにより、電流センサ端末5からの送信信号を受信したか否か判別する(ステップS102)。
【0074】
ステップS102で、電流センサ端末5からの送信信号を受信してはいないと判別したときには、処理プロセッサ64は、処理をステップS101に戻し、新たな復調データを取り込むようにする。
【0075】
また、ステップS102で、電流センサ端末5からの送信信号を受信したと判別したときには、処理プロセッサ64は、FFT回路63からの周波数スペクトル信号のピークが立っている周波数により、受信した送信信号の周波数を判定する。そして、処理プロセッサ64は、判定した周波数から、その周波数が割り当てられている電流センサ端末の端末IDを、周波数対応端末IDテーブルメモリ65の前記対応テーブルを参照することで認定する(ステップS103)。
【0076】
次に、処理プロセッサ64は、このときの時計部66の時刻情報を、受信した送信信号の受信時刻Rtとして取得して、ステップS103で認定した端末IDに対応付けて、端末ID毎受信時刻メモリ67に格納する(ステップS104)。
【0077】
次に、処理プロセッサ64は、端末ID毎受信時刻メモリ67から、ステップS103で認定した端末IDについての前回の受信時刻R(t−1)を読み出す(ステップS105)。そして、処理プロセッサ64は、前回の受信時刻R(t−1)と今回の受信時刻Rtとの差から、前記送信区間の時間長Txを差し引いた時間長として、当該端末IDの電流センサ端末5からの送信信号の今回の送信間隔Pt(=Rt−R(t−1)−Tx)を算出する(ステップS106)。
【0078】
次に、処理プロセッサ64は、端末ID毎参照データメモリ68に記憶されているステップS103で認定した端末IDについての送信信号の送信間隔の時間長と電流量との対応テーブルを、ステップS106で算出した送信間隔Ptにより参照して(ステップS107)、対応する電流量を算出し、端末ID毎電流量メモリ69にステップS103で認定した端末IDに対応付けて記憶する(ステップS108)。そして、このステップS108の次には、処理プロセッサ64は、処理をステップS101に戻し、このステップS101以降の処理を繰り返す。
【0079】
なお、ステップS108で、送信信号の送信間隔の時間長と電流量との対応テーブルには、ステップS106で算出した送信間隔Ptに対応する値が直接的には存在しなかったときには、前記対応テーブルに存在する、ステップS106で算出した送信間隔Ptの前後の送信間隔の時間長と電流量との対応データを用いて補間演算処理を行うことで、ステップS106で算出した送信間隔Ptに対応する電流量を算出するものである。
【0080】
以上のようにして、この実施形態においては、電流センサ端末5は、電線4に流れる電流に基づく電磁誘導電流を整流して蓄電する蓄電回路510を備え、この蓄電回路510の蓄電電圧VCが所定の閾値電圧Vthになる毎に、受信装置6に送信信号を無線送信するようにしたことにより、送信信号の送信間隔を、測定した電流量に応じて変化させることができる。
【0081】
そして、受信装置6は、電流センサ端末5から受信した送信信号の送信間隔を検知することで、対応する電流量を検知する。したがって、電流センサ端末5は、測定対象の電流量のデジタルデータを送信信号の電文データとする必要がなく、送信データ量を大幅に削減することができ、無線送信のための電力消費を小さくすることができる。
【0082】
このため、電流センサ端末5は、蓄電回路510の蓄電電圧VCを無線送信のための電源として用いることが可能となる。つまり、バッテリーを搭載することなく、電磁誘導電流による蓄電電圧VCを自立電源電圧として用いることができる。しかも、この実施形態においては、無線送信回路550における無線送信が完了するまで、蓄電電圧VCを電源電圧として無線送信回路550に供給されるようにするタイマー回路530を備えているので、送信信号の無線送信が確実にできるという効果を有する。
【0083】
そして、そのタイマー回路530は、ダイオードと、コンデンサ及び抵抗とからなる簡単な回路構成の充放電回路(時定数回路)で構成されると共に、係る構成により電力消費が抑えられるという効果もある。
【0084】
[他の実施形態又は変形例]
なお、比較回路を構成するオペアンプ521及びオペアンプ532に供給する比較用基準電圧Vrefは、この実施形態のようなバンドギャップリファレンスによる基準電圧を用いるようにしたが、比較用基準電圧Vrefは、バンドギャップリファレンスによる基準電圧を用いる場合に限られるものではない。例えば、無線送信部502の消費電力を更に低減するために、出力電圧の経時変化特性が平坦な、例えば酸化銀電池などの出力電圧を、比較用基準電圧Vrefとして用いるようにしても良い。
【0085】
また、上述の実施形態では、受信装置6では、送信間隔は、前回の送信区間の時間Txの開始時点(送信信号の受信開始時点)から今回の送信区間の時間Txの開始時点(送信信号の受信開始時点)までの時間長から、時間長Txを減算した時間長P1、P2、P3・・・として算出するようにした。しかし、前回の送信区間の時間Txの開始時点(送信信号の受信開始時点)から今回の送信区間の時間Txの開始時点(送信信号の受信開始時点)までの時間長、すなわち、前記時間長P1、P2、P3・・・のそれぞれと、一定の時間長Txとの和の時間長を、送信間隔として算出するようにしても良い。その場合には、受信装置6では、時間長P1、P2、P3・・・のそれぞれと、一定の時間長Txとの和の時間長からなる送信間隔と、電流量との対応テーブルを、端末ID毎参照データメモリ68に記憶しておくようにする。
【0086】
また、上述の実施形態では、受信装置6では、端末ID毎参照データメモリ68には、受信した送信信号の送信間隔と電流量との対応テーブルを記憶しておき、送信間隔を電流量に換算するようにした。しかし、当該電流量に応じた消費電力と、送信間隔との対応テーブルを、端末ID毎参照データメモリ68に記憶しておくことにより、受信装置6では、送信間隔を、電流量ではなく消費電力に換算して記憶するようにしても良い。
【0087】
また、上述の実施形態では、送信信号は、各電流センサ端末に割り当てられた周波数のASK信号としたが、FSK(Frequency Shift Keying)など、他の変調方法を用いることもできる。
【0088】
また、上述の実施形態では、受信側で送信端末を識別できるようにする送信信号としては、電流センサ端末毎に割り当てられた周波数を用いるようにしたが、これに限られるものではなく、例えば識別データのみからなる送信信号を無線送信するようにしても良い。また、送信信号として、電流センサ端末毎に、伝送レート(ボーレート)の異なるものを用い、受信側で送信信号のボーレートを検出することで、電流センサ端末のそれぞれを識別するようにしても良い。
【0089】
また、送信信号は、上述の実施形態の例のようなプリアンブル区間と誤り検出区間を必ずしも有しなくても良く、要は、受信装置側で、電流センサ端末のそれぞれを識別することができる信号であれば、どのような信号であっても良い。
【符号の説明】
【0090】
4、41〜4n…電線、5、51〜5n…電流センサ端末、6…受信装置、501…電流センサ、502…無線送信部、510…蓄電回路、520…閾値電圧判定回路、530…タイマー回路、540…スイッチ回路、550…無線送信回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7