特許第5979644号(P5979644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979644
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】スパッタリング用ランタンターゲット
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20160817BHJP
   C22C 28/00 20060101ALI20160817BHJP
   C22F 1/00 20060101ALI20160817BHJP
   C22F 1/16 20060101ALI20160817BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   C23C14/34 A
   C22C28/00 A
   C22F1/00 613
   C22F1/00 630C
   C22F1/00 661Z
   C22F1/00 683
   C22F1/00 694B
   C22F1/16 A
   H01L21/316 Y
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-249900(P2013-249900)
(22)【出願日】2013年12月3日
(62)【分割の表示】特願2011-505993(P2011-505993)の分割
【原出願日】2010年3月17日
(65)【公開番号】特開2014-95153(P2014-95153A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2013年12月3日
【審判番号】不服2015-9688(P2015-9688/J1)
【審判請求日】2015年5月26日
(31)【優先権主張番号】特願2009-78836(P2009-78836)
(32)【優先日】2009年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 勇
(72)【発明者】
【氏名】塚本 志郎
(72)【発明者】
【氏名】大月 富男
【合議体】
【審判長】 大橋 賢一
【審判官】 永田 史泰
【審判官】 後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−169683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C14/34
C22C28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビッカース硬度60以上であり、酸素量が1500wtppm以下、希土類元素及びガス成分を除いた純度が4N以上であることを特徴とするスパッタリング用ランタンターゲット。
【請求項2】
X線回折(XRD)による(100)のピーク強度よりも、(101)ピーク強度が大きいことを特徴とする請求項1記載のスパッタリング用ランタンターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にマクロ模様のムラがないスパッタリング用ランタンターゲット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ランタン(La)は希土類元素の中に含まれるものであるが、鉱物資源として混合複合酸化物として地殻に含有されている。希土類元素は比較的希(まれ)に存在する鉱物から分離されたので、このような名称がついたが、地殻全体からみると決して希少ではない。
ランタンの原子番号は57、原子量138.9の白色の金属であり、常温で複六方最密構造を備えている。
【0003】
融点は921°C、沸点3500°C、密度6.15g/cmであり、空気中では表面が酸化され、水には徐々にとける。熱水、酸に可溶である。延性はないが、展性はわずかにある。抵抗率は5.70×10−6Ωcmである。445°C以上で燃焼して酸化物(La)となる(理化学辞典参照)。
希土類元素は一般に酸化数3の化合物が安定であるが、ランタンも3価である。最近ではランタンをメタルゲート材料、高誘電率材料(High−k)等の、電子材料として研究開発が進められており、注目されている金属である。
【0004】
ランタン金属は精製時に酸化し易いという問題があるため、高純度化が難しい材料である。また、ランタン金属を空気中に放置した場合には短時間で酸化し黒色に変色するので、取り扱いが容易でないという問題がある。
最近、次世代のMOSFETにおけるゲート絶縁膜として薄膜化が要求されているが、これまでゲート絶縁膜として使用されてきたSiOでは、トンネル効果によるリーク電流が増加し、正常動作が難しくなってきた。
【0005】
このため、それに変わるものとして、高い誘電率、高い熱的安定性、シリコン中の正孔と電子に対して高いエネルギー障壁を有するHfO、ZrO、Al、Laが提案されている。特に、これらの材料の中でも、Laの評価が高く、電気的特性を調査し、次世代のMOSFETにおけるゲート絶縁膜としての研究報告がなされている(非特許文献1参照)。しかし、この非特許文献1の場合に、研究の対象となっているのは、La膜であり、La元素の特性と挙動については、特に触れてはいない。
【0006】
このようにランタン(酸化ランタン)については、まだ研究の段階にあると言えるが、このようなランタン(酸化ランタン)の特性を調べる場合において、ランタン金属自体がスパッタリング用ターゲット材として存在すれば、基板上にランタンの薄膜を形成することが可能であり、またシリコン基板との界面の挙動、さらにはランタン化合物を形成して、高誘電率ゲート絶縁膜等の特性を調べることが容易であり、また製品としての自由度が増すという大きな利点を持つものである。
【0007】
しかしながら、スパッタリング用ランタンターゲットを作製しても、上記の通り、空気中で短時間に(10分程度で)酸化してしまう。ターゲットに酸化膜が形成されると、電気伝導度の低下がおき、スパッタリングの不良を招く。また、空気中に長時間放置しておくと、空気中の水分と反応して水酸化物の白い粉で覆われるという状態に至り、正常なスパッタリングができないという問題すら起こる。このため、ターゲット作製後に酸化防止策を講ずることが検討されている。
【0008】
しかし、上記のような問題を解決することができても、他にも問題がある。それは、溶解したインゴットからターゲットに作製する段階で、機械加工後のランタンターゲットの表面にマクロ模様のムラが発生することである。図1に、表面にマクロ模様のムラが発生したランタンターゲットの写真を示す。
この図1では、ターゲットの中心からやや外れた位置とターゲットの周辺に、マクロ模様のムラ(雲のように見える)が発生しているのが観察できる。これは、後述する比較例に示すように、粗大化した組織で、他の生地とのアンバランスな組織となっている。
【0009】
これは、スパッタリング時に成膜の不均一性という問題とパーティクル発生の原因となる大きな問題を生ずることである。したがって、このようなマクロ模様のムラの発生を防止する方策を取る必要があるが、これまで、このような問題を解決するこができず、またランタンターゲットにおいて、このような問題があるという認識すらないのが現状である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】徳光永輔、外2名著、「High−k ゲート絶縁膜用酸化物材料の研究」電気学会電子材料研究会資料、Vol.6−13、Page.37−41、2001年9月21日発行
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開WO2009/084318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、表面にマクロ模様のムラがないスパッタリング用ランタンターゲット及びその製造方法を効率的かつ安定して提供できる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来技術に記載するように、ランタンはターゲットへの製造過程において、表面にマクロ模様のムラが生じやすい材料であるが、本願発明者は、ランタンターゲットの硬度を高め、一定の硬度を維持することにより、表面にマクロ模様のムラの発生を減少させることができるとの知見を得た。すなわち、この知見により、本願発明はビッカース硬度60以上であって、表面にマクロ模様のムラのないスパッタリング用ランタンターゲットを提供するものである。
【0014】
これによって、スパッタリング時の成膜の均一性を図ることが可能となり、またパーティクルの発生を効果的に抑制することが可能となった。
MOSFETにおけるゲート絶縁膜として利用する場合に、形成するのは主としてLaOx膜であるが、このような膜を形成する場合には、任意の膜を形成するという、膜形成の自由度を増すために、ランタン金属が必要となる。本願発明は、これに適合するターゲット材料を提供することができる。
【0015】
本発明に使用するランタンの原料としては、なるべく純度の高い材料を用いるのが望ましいが、通常含まれる不純物は許容される。特に、ランタンに含有される希土類元素には、ランタン(La)以外に、Sc,Y,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luがあるが、特性が似ているために、Laから分離精製することが難しい。特に、CeはLaと近似しているので、Ceの低減化は容易ではない。しかしながら、これらの希土類元素は、性質が近似しているが故に、希土類元素合計で1000wtppm未満であれば、電子部品材料としての使用に際し、特に問題となるものでない。
【0016】
したがって、本願発明のランタンターゲットは、このレベルの希土類元素の含有は許容されるものである。しかし、ランタン元素の特性を活かすためには、好ましくはランタン以外の希土類元素の合計量が100wtppm以下、より好ましくは10wtppm以下、さらに好ましくは、各希土類元素の含有量が1wtppm以下であることが望ましいと言える。本願発明は、これらを達成することが可能であり、これらを包含するものである。
【0017】
一般に、ガス成分として、C、N、O、S、Hが存在する。これらは単独の元素として存在する場合もあるが、多くは化合物(CO、CO、SO等)又は構成元素との化合物の形態で存在することもある。これらのガス成分元素は原子量及び原子半径が小さいので、多量に含有されない限り、不純物として存在しても、材料の特性に大きく影響を与えることは少ない。したがって、純度表示をする場合には、ガス成分を除く純度とするのが普通である。
【0018】
この意味で、本願発明のランタンの純度は、ガス成分を除く純度が4N以上とするものである。このレベルに精製したランタンは、ガス成分もそれにつれて低減する。例えば、ランタンに含有する酸素が2000wtppm以上、場合によっては5000wtppm以下であれば、大きな問題とはならない場合がある。
しかしながら、本願発明は、5000wtppm近傍の酸素含有量を目途とするものではないことは理解されるべきことである。すなわち、酸素もできるだけ少ない方が望ましいことは言うまでもない。本願発明においては、1500wtppm以下、さらには1000wtppm未満とすることを目途とし、これを達成するものである。
【0019】
さらに、本願発明のランタンターゲットは、希土類元素及びガス成分を除いた純度が4N以上であることが望ましい。特に、ランタン中のアルミニウム、鉄及び銅がそれぞれ100wtppm以下、かつ酸素含有量が1500wtppm以下、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の各元素がそれぞれ1wtppm以下、上記以外の遷移金属及び高融点金属の各元素がそれぞれ10wtppm以下、放射性元素がそれぞれ10wtppb以下であることが望ましい。
【0020】
スパッタリング用ランタンターゲットの製造に際しては、原料となるランタンを溶解、鋳造してインゴットを製造した後、このインゴットを300〜500°Cの温度でこねくり鍛造し、その後さらに300〜500°Cで据え込み鍛造してターゲット原形に形状を整え、さらにこれを機械加工してターゲットとする。なお、こねくり鍛造は、縦方向と横方向から交互に大きな歪を入れる熱間鍛造であり、これによりインゴットの鋳造組織を破壊するものである。
【0021】
これによって、ビッカース硬度60以上であって、機械加工後の表面にマクロ模様のムラのないスパッタリング用ランタンターゲットを製造することが可能である。なお、ビッカース硬度60未満では、表面の「むしれ」が発生するので、ビッカース硬度60以上は必須の要件である。これを、さらに所定サイズに裁断し、研摩工程を経てスパッタリングターゲットにすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、ビッカース硬度60以上であって、機械加工後の表面にマクロ模様のムラのないスパッタリング用ランタンターゲットに関するが、このようにして得られたランタンターゲットを使用してスパッタリングを行うと、均一な成膜が可能となり、パーティクルの発生も抑制できるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】機械加工後のターゲット表面のマクロ模様のムラを示す写真である。
図2】本発明の実施例の機械加工後のターゲット表面の顕微鏡写真である(×50)。
図3】本実施例のXRDによる結晶方位のピークを示す図である。
図4比較例1の機械加工後のターゲット表面の顕微鏡写真である(×100)。
図5比較例1のXRDによる結晶方位のピークを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本願発明においては、マクロ模様のムラをランタンターゲットから除去し、かつターゲットの硬度を上げたものである。この硬度を高めるためには、製造工程が重要となる。
本願発明のスパッタリング用ランタンターゲットを製造するには、ランタンを溶解し、これを鋳造して(凝固させて)インゴットを製造する。そして、このインゴットを300〜500°Cの温度でこねくり鍛造する。
【0025】
従来の加工方法では、通常は、そのままインゴットを高温(800°C程度)で鍛造し、ターゲット形状に整え、それを機械加工して製造されている。しかし、ランタンは軟らかく、展延性があるために、このような鍛造条件で作製した材料では、機械加工の際に、「むしれ」が発生し、ランタンターゲット表面に残存するという問題がある。
また、従来の製法では、機械加工したランタン表面に、マクロ模様のムラが生ずるという問題がある。このような、ランタンターゲット表面のマクロ模様のムラや「むしれ」が存在する場合には、スパッタリング時にパーティクルが発生し、また均一な成膜ができないという大きな問題を生ずる。
【0026】
上記のような問題のある従来の製造方法に替えて、本発明者は数多くの実験により、製造条件に工夫を行い、表面にマクロ模様のムラのないスパッタリング用ランタンターゲットを得ることが可能となった。
本願発明はインゴットを300〜500°Cの温度でこねくり鍛造し、インゴットの組織を破壊するのが大きな特徴である。また、このこねくり鍛造時に材料を加工硬化させて硬度を上げる。この条件はランタン金属としては、かなり過酷な加工となるので、300°C以上の温間鍛造を行う必要がある。逆に500°Cを超える温度では軟化するため、十分に硬度を上げることができない。
【0027】
その後、さらに300〜500°Cで据え込み鍛造してターゲット原形に形状を整える。この据え込み鍛造により、径を大きくし、ランタンターゲットの原形とする。これをさらに機械加工してターゲットとする。この後に、必要に応じて、仕上げ加工(研磨)を行うこともできる。
この結果、ランタンターゲット自体の硬度がビッカース硬度60以上となり、このようにして作製したランタンターゲットの表面には、マクロ模様のムラは一切見られなくなった。また、機械加工の際に、表面の「むしれ」などの発生も全く見られなくなった。
【0028】
このようにして作製したターゲットは、鍛造加工した状態になっているので、未再結晶組織を有するが、必要に応じて再結晶焼鈍することも可能である。この場合は、微細な結晶を維持する必要がある。
本願発明のランタンターゲットの組織には、上記のような大きな相違が認められるが、この点の差異を調べるためにX線回折(XRD)による結晶方位による組織観察を行った。しかし、このXRDでは、大きな差異は認められなかった。
しかし、本願発明のランタンターゲットでは、後述する従来の製造方法で得たランタンターゲットに比べ、(100)のピーク強度よりも(101)ピーク強度が強くなっているという結果が出た。この結果については、後述する実施例及び比較例で、再度説明する。
【0029】
本願発明のランタンターゲットについては、ターゲットの作製後、バッキングプレートに結合するが、通常ロウ付けではなく、拡散接合(DB)して銅(通常:OFC「無酸素銅」)のバッキングプレートに接合する。
しかし、接合部の剥がれや浮きが発生しないように、銅−クロム(Cu−1%Cr)合金製のバッキングプレートを使用するのが望ましい。このような銅−クロム合金製のバッキングプレートを使用した場合には、スパッタリング中に、ターゲットとバッキングプレートとの接合部の剥がれや浮きが発生せず、良好な接合が可能となる。このバッキングプレートの使用は、本願発明のランタンターゲットの固有の特徴の一つでもある。
【実施例】
【0030】
次に、実施例について説明する。なお、この実施例は理解を容易にするためのものであり、本発明を制限するものではない。すなわち、本発明の技術思想の範囲内における、他の実施例及び変形は、本発明に含まれるものである。
【0031】
(実施例1)
ランタンの原料として、純度99.9%のランタンを使用した。この原料を70kWのEB溶解炉を用い、真空度6.0×10−5〜7.0×10−4mbar、溶解出力10kWで溶解した。これを鋳造し、冷却してランタンインゴットを作成した。
次に、このインゴットを大気中、400°Cの温度でこねくり鍛造し、その後さらに300〜500°Cで据え込み鍛造して径を大きくし、かつターゲット原形に形状を整え、さらにこれを機械加工してφ140×14t(単位は、いずれもmmである。以下同様。)の円盤状ターゲットとした。このターゲットの重量は1.42kgであった。これをさらに銅−クロム合金バッキングプレートに拡散接合して、ランタンスパッタリング用ターゲットとした。
このようにして作製したランタンスパッタリング用ターゲットの硬度はビッカース硬度で70となり、本願発明の条件を満たしていた。
【0032】
次に、このようにして得たランタンスパッタリング用ターゲットの組織を観察するために、1wt%硝酸水溶液を用いてエッチングした。この結果の顕微鏡写真(×50)を図2に示す。ターゲットの組織は未再結晶組織であった。この図2に示すように、ランタンスパッタリング用ターゲットの表面にはマクロ模様のムラは観察されなかった。
一方、この実施例で得たランタンスパッタリング用ターゲットをX線回折(XRD)による結晶方位の測定した結果を図3に示す。後述する比較例1のランタンターゲットに比べ、(100)のピーク強度よりも(101)ピーク強度が強くなっているという結果が出たが、それ以外の点については、大きな差異はなかった。この結果、結晶方位の相違は、本願発明のマクロ模様のムラの発生には、大きく影響はしていないと考えられた。
【0033】
さらに、ランタンスパッタリング用ターゲットを用いて、パワー100Wの条件でスパッタリングを実施した。この結果、パーティクルの発生はなく、基板への均一な膜が形成された。また、長時間のスパッタリングを実施しても、バッキングプレートからターゲットの浮き上がりやターゲットとバッキングプレートとの間の剥がれがなく、良好なスパッタリングが可能であった。この結果、銅−クロム合金バッキングプレートに拡散接合が有効であることが確認できた。
【0034】
(比較例1)
ランタンの原料として、純度99.9%のランタンを使用した。この原料を70kWのEB溶解炉を用い、真空度6.0×10−5〜7.0×10−4mbar、溶解出力10kWで溶解した。これを鋳造し、冷却してランタンインゴットを作成した。
次に、このインゴットを真空中、800°Cの温度でホットプレス(HP)し、これによって、径を大きくすると共にターゲット原形に形状を整え、さらにこれを機械加工してφ140×14tの円盤状ターゲットとした。このターゲットの重量は1.42kgであった。これをさらに銅バッキングプレートに拡散接合して、ランタンスパッタリング用ターゲットとした。
【0035】
このようにして作製したランタンスパッタリング用ターゲットの硬度はビッカース硬度で51となり、本願発明の条件を満たしていなかった。
次に、このようにして得たランタンスパッタリング用ターゲットの組織を観察するために、1wt%硝酸水溶液を用いてエッチングした。この結果の顕微鏡写真(×100)を図4に示す。この図4に示すように、ターゲットの組織は結晶粒径が200〜300μmの粗大結晶組織であり、ランタンスパッタリング用ターゲットの表面にはマクロ模様のムラが観察された。
【0036】
一方、この実施例で得たランタンスパッタリング用ターゲットをX線回折(XRD)による結晶方位の測定した結果を図5に示す。前記実施例のランタンターゲットに比べ、(101)のピーク強度よりも(100)ピーク強度が強くなっているという結果が出たが、それ以外の点については、大きな差異はなかった。この結晶方位は、マクロ模様のムラの発生には、大きく影響はしていないと考えられた。
【0037】
さらに、ランタンスパッタリング用ターゲットを用いて、パワー100Wの条件でスパッタリングを実施した。この結果、パーティクルの発生が実施例に比べて多くなり、基板への成膜も不均一となった。
また、スパッタリング実施時に、ターゲットとバッキングプレートとの間の剥がれはなかったが、若干バッキングプレートからターゲットが浮き上がる傾向が見られた。これは、スパッタリング時間が短時間であったため、大きな影響がなかったと思われる。
しかし、これを長時間実施したところ、予想通りターゲットとバッキングプレートとの間の剥がれが発生した。これにより、実施例に示す銅−クロム合金製バッキングプレートが好ましいことが確認することができた。
【0038】
(比較例2)
ランタンの原料として、純度99.9%のランタンを使用した。この原料を70kWのEB溶解炉を用い、真空度6.0×10−5〜7.0×10−4mbar、溶解出力10kWで溶解した。これを鋳造し、冷却してランタンインゴットを作成した。
次に、このインゴットを大気中、600°Cの温度でこねくり鍛造し、その後さらに300〜500°Cで据え込み鍛造して径を大きくし、かつターゲット原形に形状を整え、さらにこれを機械加工してφ140×14tの円盤状ターゲットとした。このターゲットの重量は1.42kgであった。これをさらに銅バッキングプレートに拡散接合して、ランタンスパッタリング用ターゲットとした。
このようにして作製したランタンスパッタリング用ターゲットの硬度はビッカース硬度で52となり、本願発明の条件を満たしていなかった。
【0039】
次に、このようにして得たランタンスパッタリング用ターゲットの組織を観察するために、1wt%硝酸水溶液を用いてエッチングした。ターゲットの組織は結晶粒径が150〜250μmの粗大結晶組織であり、ランタンスパッタリング用ターゲットの表面にはマクロ模様のムラが観察された。このことから、インゴットを300〜500°Cの温度でこねくり鍛造することが良いことが確認できた。
【0040】
一方、この比較例で得たランタンスパッタリング用ターゲットをX線回折(XRD)による結晶方位を測定した。実施例1のランタンターゲットと同様に、(100)のピーク強度よりも(101)ピーク強度が強くなっているという結果が出た。この結晶方位は、マクロ模様のムラの発生には、大きく影響はしていないと考えられた。
さらに、ランタンスパッタリング用ターゲットを用いて、パワー100Wの条件でスパッタリングを実施した。この結果、パーティクルの発生が実施例に比べて多くなり、基板への成膜も不均一となった。
【0041】
また、スパッタリング実施時に、ターゲットとバッキングプレートとの間の剥がれはなかったが、若干バッキングプレートからターゲットが浮き上がる傾向が見られた。これは、スパッタリング時間が短時間であったため、大きな影響がなかったと思われる。
しかし、これを長時間実施したところ、予想通りターゲットとバッキングプレートとの間の剥がれが発生した。これにより、実施例に示す銅−クロム合金製バッキングプレートが好ましいことが確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によって得られるビッカース硬度60以上であって、表面にマクロ模様のムラのないスパッタリング用ランタンターゲットは、スパッタリング時にパーティクルの発生がなく、また均一な成膜が可能である。これによって、従来の問題を解消することが可能となり、本願発明のランタンターゲットをスパッタリングして得た薄膜は、電子材料として、特にゲート絶縁膜又はメタルゲート用薄膜等の材料として有用である。
図1
図2
図3
図4
図5