(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ホールパターンが形成された薄膜を表面に有する基板に対して、前記薄膜を被覆するように、複数種類のブロックが結合したブロックコポリマーを含む層を形成するブロックコポリマー層形成工程と、
前記ブロックコポリマー層形成工程後、前記ブロックコポリマーを含む層を相分離させる相分離工程と、
前記相分離工程後、前記ブロックコポリマーを含む層のうち、前記ブロックコポリマーを構成する複数種類のブロックのうちの少なくとも一種類のブロックからなる相を選択的に除去する選択的除去工程と、
を有し、
前記薄膜が、感光性又は非感光性の有機膜又は無機膜であり、
前記薄膜に形成されているホールパターンのホール径が、前記ブロックコポリマーの周期の0.8〜2.12倍であり、
前記ブロックコポリマー層形成工程において、前記薄膜の上面から前記ブロックコポリマーを含む層の表面までの厚みを、前記薄膜の膜厚の60%以下にすることを特徴とする、コンタクトホールパターンの形成方法。
前記選択的除去工程において選択的に除去される相を構成するブロックのブロック径(d1)と、前記ブロックコポリマーの周期(d2)とが、下記式(1)を満たす請求項1に記載のコンタクトホールパターンの形成方法。
式(1)・・・d2×√(0.29)> d1 > d2×√(0.17)
前記ブロックコポリマー層形成工程において、前記ホールパターンのホール底面から前記ブロックコポリマーを含む層の表面までの厚みを、前記選択的除去工程において選択的に除去される相を構成するブロックのブロック径の50%以上にする請求項1又は2に記載のコンタクトホールパターンの形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のコンタクトホールパターン(以下、「CHパターン」ということがある。)の形成方法は、薄膜に形成されているホールパターンのホール内に、ブロックコポリマーの相分離構造を形成させた後、当該相分離構造中の少なくとも1の相を選択的に除去することによって当該ホール内にブロックコポリマーからなるCHパターンを形成する方法において、薄膜に形成されているホールパターンのホール径が、用いるブロックコポリマーの周期の0.8〜3.1倍であること を特徴とする。ホールパターンのホール径がブロックコポリマーの周期の0.8〜3.1倍であること、すなわち、ホールパターンのホール径の0.3〜1.3倍の周期を有するブロックコポリマーを用いることにより、より確実に、相分離によってホールパターン中の1つのホールの中心付近に1つのシリンダ構造の相を形成させることができる。当該シリンダ構造の相を選択的に除去することにより、元のホールよりもホール径が小さく、かつホール直径の均一性及び真円性が改善されたホールを形成することができる。
【0012】
具体的には、本発明のCHパターンの形成方法は、以下の工程を有する。
ホールパターンが形成された薄膜を表面に有する基板に対して、前記薄膜を被覆するように、複数種類のブロックが結合したブロックコポリマーを含む層を形成するブロックコポリマー層形成工程と、
前記ブロックコポリマー層形成工程後、前記ブロックコポリマーを含む層を相分離させる相分離工程と、
前記相分離工程後、前記ブロックコポリマーを含む層のうち、前記ブロックコポリマーを構成する複数種類のブロックのうちの少なくとも一種類のブロックからなる相を選択的に除去する選択的除去工程。
以下、各工程とそこで用いられる材料について、より詳細に説明する。
【0013】
<ブロックコポリマー>
ブロックコポリマーは、複数種類のブロックが結合した高分子である。ブロックコポリマーを構成するブロックの種類は、2種類であってもよく、3種類以上であってもよい。本発明においては、ブロックコポリマーを構成する複数種類のブロックは、相分離が起こる組み合わせであれば特に限定されるものではないが、互いに非相溶であるブロック同士の組み合わせであることが好ましい。また、本発明において用いられるブロックコポリマーは、これを構成する複数種類のブロック中の少なくとも1種類のブロックからなる相が、他の種類のブロックからなる相よりも、容易に選択的に除去可能な組み合わせである。
【0014】
なお、本発明及び本願明細書において、「ブロックコポリマーの周期」は、相分離構造が形成された際に観察される相構造の周期を意味し、互いに非相溶である各相の長さの和である。具体的には、相分離構造が基板表面に対して垂直なシリンダ構造を形成する場合、ブロックコポリマーの周期は、隣接する2つのシリンダ構造の中心間距離(ピッチ)である。
【0015】
ブロックコポリマーの周期は、重合度N及びフローリー−ハギンズ(Flory−Huggins)の相互作用パラメータχなどの固有重合特性によって決まる。すなわち、ブロックコポリマーにおける異なるブロック成分間の相互反発は、χNが大きくなるほど大きくなる。このため、χN=10(以下、強度分離限界点と呼ぶ)のときには、ブロックコポリマーにおける異種類のブロック間の反発が大きく、相分離が起こる傾向が強くなる。そして、強度分離限界点においては、ブロックコポリマーの周期はおよそN
2/3χ
1/6となる。つまり、ブロックコポリマーの周期は、分子量Mnと、異なるブロック成分間の分子量比とに相関する重合度Nに比例する。従って、用いるブロックコポリマーの組成及び総分子量を調整することにより、ブロックコポリマーの周期を容易に調節することができる。
【0016】
ブロックコポリマーとしては、例えば、スチレン又はその誘導体を構成単位とするブロックと(メタ)アクリル酸エステルを構成単位とするブロックとを結合させたブロックコポリマー、スチレン又はその誘導体を構成単位とするブロックとシロキサン又はその誘導体を構成単位とするブロックとを結合させたブロックコポリマー、及びアルキレンオキシドを構成単位とするブロックと(メタ)アクリル酸エステルを構成単位とするブロックとを結合させたブロックコポリマー等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、α位に水素原子が結合したアクリル酸エステルと、α位にメチル基が結合したメタクリル酸エステルの一方あるいは両方を意味する。
【0017】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸の炭素原子に、アルキル基やヒドロキシアルキル基等の置換基が結合しているものが挙げられる。置換基として用いられるアルキル基としては、炭素原子数1〜10の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸アントラセン、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメタン、(メタ)アクリル酸プロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0018】
スチレンの誘導体としては、例えば、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−n−オクチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−ニトロスチレン、3−ニトロスチレン、4−クロロスチレン、4−フルオロスチレン、4−アセトキシビニルスチレン、ビニルシクロへキサン、4−ビニルベンジルクロリド、1−ビニルナフタレン、4−ビニルビフェニル、1−ビニルー2−ピロリドン、9−ビニルアントラセン、ビニルピリジン等が挙げられる。
【0019】
シロキサンの誘導体としては、例えば、ジメチルシロキサン、ジエチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン等が挙げられる。
アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソプロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられる。
【0020】
本発明においては、スチレン又はその誘導体を構成単位とするブロックと(メタ)アクリル酸エステルを構成単位とするブロックとを結合させたブロックコポリマーを用いることが好ましい。具体的には、ポリスチレン−ポリメチルメタクリレート(PS−PMMA)ブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリエチルメタクリレートブロックコポリマー、ポリスチレン−(ポリ−t−ブチルメタクリレート)ブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリメタクリル酸ブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリメチルアクリレートブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリエチルアクリレートブロックコポリマー、ポリスチレン−(ポリ−t−ブチルアクリレート)ブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリアクリル酸ブロックコポリマー等が挙げられる。本発明においては、特に、PS−PMMAブロックコポリマーを用いることが好ましい。
【0021】
ブロックコポリマーを構成する各ブロックの質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、相分離を起こすことが可能な大きさであれば特に限定されるものではないが、5000〜500000が好ましく、10000〜400000がより好ましく、20000〜300000がさらに好ましい。
またブロックコポリマーの分散度(Mw/Mn)は1.0〜3.0が好ましく、1.0〜1.5がより好ましく、1.0〜1.2がさらに好ましい。なお、Mnは数平均分子量を示す。
【0022】
なお、以下において、ブロックコポリマーを構成するブロックのうち、選択的に除去されないブロックをP
Aブロック、選択的に除去されるブロックをP
Bブロックという。例えば、PS−PMMAブロックコポリマーを含む層を相分離した後、当該層に対して分解処理及び現像液処理を行うことにより、PMMAからなる相が選択的に除去される。この場合、PSがP
Aブロックであり、PMMAがP
Bブロックである。
【0023】
ブロックコポリマーを構成する各ブロックの成分比や質量平均分子量比を適宜調整することにより、得られる相分離構造の各相の形状を調整することができる。本発明においては、ブロックコポリマー全体に占めるP
Bブロックの体積分率〔[P
Bブロック]/([P
Aブロック]+[P
Bブロック])〕が、0.21〜0.39であることが好ましく、0.25〜0.35であることがより好ましく、0.3であることがさらに好ましい。P
Bブロックの体積分率が当該範囲内であることにより、P
Bブロックからなる相とP
Aブロックからなる相から形成される相分離構造が基板表面に対して垂直なシリンダ構造を形成しやすくなる。
【0024】
また、本発明において用いられるブロックコポリマーは、ブロックコポリマーの周期d2と、当該ブロックコポリマー中のP
Bブロックのブロック径d1とが、下記式(1)の関係式を満たすことが好ましい。d1及びd2が、下記式(1)の関係を満たすことにより、より確実に、薄膜に形成されたホールパターンにおいて、1のホールに対して、ホールの中心に1つのP
BブロックとP
Aブロックからなるシリンダ構造の相を形成させやすくなる。なお、P
Bブロックのブロック径d1は、相分離構造が形成された際に観察される相構造の周期のうち、選択的除去工程において選択的に除去される相の長さを表す。
式(1)・・・d2×√(0.29)> d1 > d2×√(0.17)
【0025】
また、本発明においては、薄膜に形成されているホールパターンのホール径が、用いるブロックコポリマーの周期の0.8〜3.1倍、好ましくは1〜3倍、より好ましくは1〜2倍である。ブロックコポリマーの周期が、ホールパターンのホール径よりも小さすぎる場合には、薄膜に形成されたホールパターンにおいて、1のホールに対して、P
Bブロックからなるシリンダ構造の相が複数形成されやすい。逆にブロックコポリマーの周期が、ホールパターンのホール径よりも大きすぎる場合には、P
Bブロックからなるシリンダ構造の相が形成されない傾向にある。本発明においては、薄膜に形成されているホールパターンのホール径の大きさに対して最適な周期を有するブロックコポリマーを用いることにより、より確実に、相分離によってホールパターン中の1つのホールの中心付近に1つのシリンダ構造の相を形成させることができる。
【0026】
なお、薄膜に形成されているホールパターンのホール形状が円形又はそれに類似の場合には、「薄膜に形成されているホールパターンのホール径」とは、当該ホールの直径である。また、当該ホール形状がだ円形又はこれに近似される形状の場合には、「薄膜に形成されているホールパターンのホール径」には、当該ホールの長径と短径のいずれも含まれる。つまり、当該ホール形状がだ円形の場合、用いるブロックコポリマーの周期は、当該ホールの長径の1/3〜1倍であり、かつ当該ホールの短径の1/3〜1倍であることが好ましい。
【0027】
<基板>
基板は、その表面上に薄膜を形成した後、当該薄膜にホールパターンを形成し得るものであれば、その種類は特に限定されない。例えば、シリコン、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属、ガラス、酸化チタン、シリカ、マイカなどの無機物からなる基板、アクリル板、ポリスチレン、セルロース、セルロースアセテート、フェノール樹脂などの有機化合物からなる基板などが挙げられる。
また、本発明において用いられる基板の大きさや形状は、特に限定されるものではない。基板は必ずしも平滑な表面を有する必要はなく、様々な材質や形状の基板を適宜選択することができる。例えば、曲面を有する基板、表面が凹凸形状の平板、薄片状などの様々な形状のものまで多様に用いることができる。
【0028】
また、基板表面には、無機系および/または有機系の膜が設けられていてもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)が挙げられる。
【0029】
<基板洗浄処理>
基板に薄膜を形成する前に、基板表面を洗浄してもよい。基板表面を洗浄することにより、後の薄膜形成工程が良好に行える場合がある。
洗浄処理としては、従来公知の方法を利用でき、例えば酸素プラズマ処理、水素プラズマ処理、オゾン酸化処理、酸アルカリ処理、化学修飾処理等が挙げられる。例えば、基板を硫酸/過酸化水素水溶液等の酸溶液に浸漬させた後、水洗し、乾燥させる。その後、当該基板の表面に、ブロックコポリマーを含む層を形成することができる。
【0030】
<中性化処理>
基板に薄膜を形成する前に、基板を中性化処理してもよい。薄膜にホールパターンを形成させた場合、ホールの底面は、薄膜が積層される前の基板表面となる。そこで、薄膜形成前に基板を中性化処理しておくことにより、ホールパターンのホール底面を、中性化処理された表面とすることができる。なお、中性化処理とは、基板表面を、ブロックコポリマーを構成するいずれのブロックとも親和性を有するように改変する処理をいう。中性化処理を行うことにより、相分離によって特定のブロックからなる相のみが基板表面に接することを抑制することができ、P
Bブロックからなる相を、基板表面に対して垂直方向に配向されたシリンダ構造に形成させやすくなる。
【0031】
具体的には、中性化処理としては、基板表面に、ブロックコポリマーを構成するいずれのブロックとも親和性を有する下地剤を含む薄膜(中性化膜)を形成する処理等が挙げられる。
このような中性化膜としては、樹脂組成物からなる膜を用いることができる。下地剤として用いられる樹脂組成物は、ブロックコポリマーを構成するブロックの種類に応じて、薄膜形成に用いられる従来公知の樹脂組成物の中から適宜選択することができる。下地剤として用いられる樹脂組成物は、熱重合性樹脂組成物であってもよく、ポジ型レジスト組成物やネガ型レジスト組成物等の感光性樹脂組成物であってもよい。
その他、中性化膜は非重合性膜であってもよい。例えば、フェネチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン等のシロキサン系有機単分子膜も、中性化膜として好適に用いることができる。
これらの下地剤からなる中性化膜は、常法により形成することができる。
【0032】
このような下地剤としては、例えば、ブロックコポリマーを構成する各ブロックの構成単位をいずれも含む樹脂組成物や、ブロックコポリマーを構成する各ブロックと親和性の高い構成単位をいずれも含む樹脂等が挙げられる。
例えば、PS−PMMAブロックコポリマーを用いる場合には、下地剤として、PSとPMMAの両方を構成単位として含む物樹脂組成物や、芳香環等のPSと親和性が高い部位と、極性の高い官能基等のPMMAと親和性の高い部位の両方を含む化合物又は組成物を用いることが好ましい。
PSとPMMAの両方を構成単位として含む物樹脂組成物としては、例えば、PSとPMMAのランダムコポリマー、PSとPMMAの交互ブロック(各モノマーが交互に共重合しているもの)等が挙げられる。
【0033】
また、PSと親和性が高い部位とPMMAと親和性の高い部位の両方を含む組成物としては、例えば、モノマーとして、少なくとも、芳香環を有するモノマーと極性の高い置換基を有するモノマーとを重合させて得られる樹脂組成物が挙げられる。芳香環を有するモノマーとしては、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル基等の、芳香族炭化水素の環から水素原子を1つ除いた基、及びこれらの基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基等を有するモノマーが挙げられる。また、極性の高い置換基を有するモノマーとしては、トリメトキシシリル基、トリクロロシリル基、カルボキシ基、水酸基、シアノ基、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基等を有するモノマーが挙げられる。
その他、PSと親和性が高い部位とPMMAと親和性の高い部位の両方を含む化合物としては、フェネチルトリクロロシラン等のアリール基と極性の高い置換基の両方を含む化合物や、アルキルシラン化合物等のアルキル基と極性の高い置換基の両方を含む化合物等が挙げられる。
【0034】
<ホールパターンが形成された薄膜の形成>
基板表面には、ブロックコポリマーを含む層を形成する前に、予めホールパターンが形成された薄膜が形成されている。当該薄膜は、感光性膜であってもよく、非感光性膜であってもよい。また、有機膜であってもよく、無機膜であってもよい。本発明においては、感光性又は非感光性の有機膜であることが好ましく、感光性又は非感光性のレジスト膜であることがより好ましい。
【0035】
ホールパターンが形成されたレジスト膜の形成方法は特に限定されるものではなく、レジスト膜にホールパターンを形成するために用いられる公知の手法の中から適宜選択することができる。フォトリソグラフィ法による場合には、例えば、必要に応じて洗浄処理又は中性化処理が施された基板表面に、レジスト組成物からなる膜を形成した後、所定のホールパターンが形成されたマスクを介して、光、電子線等の放射線にて選択的露光を行い、現像処理を施すことにより、ホールパターンが形成されたレジスト膜を形成することができる。
【0036】
ホールパターンを形成するレジスト組成物は、一般的にレジストパターンの形成に用いられるレジスト組成物やその改変物の中から適宜選択して用いることができる。当該レジスト組成物としては、ポジ型レジスト組成物とネガ型レジスト組成物のいずれであってもよい。また、現像の際に用いる現像液は、アルカリ現像液であってもよく、有機溶剤を含有する有機系現像液であってもよい。
【0037】
例えば、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する基材成分、及び露光により酸を発生する酸発生剤成分を含有するポジ型レジスト組成物を用いて、ホールパターンを形成することができる。かかるポジ型レジスト組成物においては、放射線が照射(露光)されると、酸発生剤成分から酸が発生し、該酸の作用により極性が増大してアルカリ現像液に対する溶解性が増大する。そのため、ホールパターンの形成において、当該レジスト組成物を用いて得られるレジスト膜に対して選択的露光を行うと、当該レジスト膜における露光部の、前記アルカリ現像液に対する溶解性が増大する一方で、未露光部はアルカリ難溶性のまま変化しないため、アルカリ現像を行うことにより露光部が除去されてホールパターンが形成される。なお、該ポジ型レジスト組成物としては、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大し、且つ、露光により酸を発生する基材成分を含有するものも用いることができる。
【0038】
具体的には、例えば、基板表面上に、前記ポジ型レジスト組成物をスピンナーなどで塗布し、80〜150℃の温度条件下、プレベーク(ポストアプライベーク(PAB))を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施し、これに例えばArF露光装置などにより、ArFエキシマレーザー光をホールパターンのマスクを介して選択的に露光した後、80〜150℃の温度条件下、PEB(露光後加熱)を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施す。次いでこれをアルカリ現像液、例えば0.1〜10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を用いて現像処理し、好ましくは純水を用いて水リンスを行い、乾燥を行う。また、場合によっては、上記現像処理後にベーク処理(ポストベーク)を行ってもよい。このようにして、マスクパターンに忠実なホールパターンを形成することができる。
【0039】
また、酸の作用により極性が増大し、有機溶剤を含有する現像液に対する溶解性が減少する基材成分、及び露光により酸を発生する酸発生剤成分を含有するネガ型現像用レジスト組成物を用いて、ホールパターンを形成することもできる。かかるネガ型現像用レジスト組成物においては、放射線が照射(露光)されると、基材成分から酸が発生し、該酸の作用により基材成分の有機溶剤に対する溶解性が減少する。そのため、ホールパターンの形成において、当該レジスト組成物を用いて得られるレジスト膜に対して選択的露光を行うと、当該レジスト膜における露光部の、前記有機溶剤を含有する有機系現像液に対する溶解性が減少する一方で、未露光部の該有機系現像液に対する溶解性は変化しないため、該有機系現像液を用いたネガ型現像を行うことにより未露光部が除去されてホールパターンが形成される。
【0040】
さらに、アルカリ現像液に可溶性の基材成分と、露光により酸を発生する酸発生剤成分と、架橋剤とを含有するネガ型レジスト組成物を用いて、ホールパターンを形成することもできる。かかるネガ型レジスト組成物においては、露光により酸発生剤成分から酸が発生すると、当該酸が作用して基材成分と架橋剤成分との間で架橋が起こり、アルカリ現像液に対して難溶性へ変化する。そのため、ホールパターンの形成において、当該レジスト組成物を用いて得られるレジスト膜に対して選択的露光を行うと、当該レジスト膜における露光部はアルカリ現像液に対して難溶性へ転じる一方で、未露光部はアルカリ現像液に対して可溶性のまま変化しないため、アルカリ現像することにより未露光部が除去されてホールパターンが形成できる。
【0041】
その他、エッチング処理を利用して、ホールパターンを形成することもできる。例えば、必要に応じて洗浄処理又は中性化処理が施された基板表面にレジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成した後、当該レジスト膜上に、ホールパターンが形成されている耐ドライエッチング耐性を備えるマスクを設置し、その後ドライエッチング処理を行うことにより、ホールパターンが形成されたレジスト膜を形成することができる。ドライエッチング処理としては、酸素プラズマ処理、水素プラズマ処理、オゾン処理、及びUV照射処理等が挙げられる。
【0042】
その他、ウェットエッチング処理により、ホールパターンを形成することもできる。具体的には、まず、基板表面に、非感光性レジスト膜を形成し、当該非感光性レジスト膜上にさらに感光性レジスト膜を積層させた後、当該感光性レジスト膜にホールパターンを形成する。その後、当該感光性レジスト膜よりも当該非感光性レジスト膜のほうが溶解性の高い有機溶剤によって、当該非感光性レジスト膜のうち、当該ホールパターンによってマスクされていない領域を溶解除去することにより、当該非感光性レジスト膜に当該ホールパターンが形成される。非感光性レジスト膜としては、SiO
2を主成分とする膜等のシリカ系被膜を好適に用いることができる。SiO
2を主成分とする膜は、例えば、ケイ素化合物を有機溶剤に溶解した溶液を塗布し、加熱処理するSOG(spin−on−glass)法、化学気相成長法等により形成することができる。また、感光性レジスト組成物としては、一般的にレジストパターンの形成に用いられるレジスト組成物やその改変物の中から適宜選択して用いることができる。
【0043】
ホールパターンを形成するレジスト組成物は、一般的にレジストパターンの形成に用いられるレジスト組成物やその改変物の中から、ブロックコポリマーを構成するいずれかのブロックと親和性を有するものを適宜選択して用いることができる。
【0044】
また、ホールパターンが形成された基板上にブロックコポリマーの有機溶剤溶液が流し込まれた後、相分離を起こすために、熱処理がなされる。このため、ホールパターンを形成するレジスト組成物としては、耐溶剤性と耐熱性に優れたレジスト膜を形成し得るものであることが好ましい。
【0045】
<ブロックコポリマー層形成工程>
本発明においては、まず、ホールパターンが形成された薄膜を表面に有する基板に対して、前記薄膜を被覆するように、複数種類のブロックが結合したブロックコポリマーを含む層を形成する。具体的には、適用な有機溶剤に溶解させたブロックコポリマーを、スピンナー等を用いて前記薄膜上に塗布する。
ブロックコポリマーを溶解させる有機溶剤としては、用いるブロックコポリマーを溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、ブロックコポリマーを構成する各ブロックのいずれとも相溶性の高いものを用いることができる。有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
【0046】
ブロックコポリマーを溶解させる有機溶剤としては、例えば、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;
アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;
エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;
エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類又は前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];
ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;
アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤などを挙げることができる。
例えば、ブロックコポリマーとしてPS−PMMAブロックコポリマーを用いる場合には、トルエン等の芳香族系有機溶剤、PGMEA等に溶解させることが好ましい。
【0047】
本発明においては、ブロックコポリマーを含む層の厚さの下限値は、相分離が起こるために十分な厚みであればよく、形成される相分離構造の構造周期サイズを考慮して適宜決定することができる。例えば、前記薄膜に形成されたホールパターンのホール底面から、ブロックコポリマーを含む層の表面までの厚みを、P
Bブロックのブロック径の50%以上、好ましくは100%%以上にすることにより、より効率よく、ホールパターン中の1つのホールに対して1つのP
BブロックとP
Aブロックからなる基板表面に垂直なシリンダ構造の相を形成させることができる。
【0048】
ブロックコポリマーを含む層の厚みが厚くなるにつれて、P
BブロックとP
Aブロックからなるシリンダ構造の相が、ホールパターン中の1つのホールに対して複数形成されやすくなり、さらに当該厚みが厚くなると、P
Bブロックからなる相を、基板表面に垂直に形成させ難くなる。このため、ホールパターンが形成された薄膜の上面からブロックコポリマーを含む層の表面までの厚みを、当該薄膜の膜厚の70%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは40%以下にする。
【0049】
図1に、ブロックコポリマー層形成工程によって形成された、ブロックコポリマーを含む層が形成された基板の一態様を模式的に示す。反射防止膜2を形成した基板1の表面に中性化膜3を形成した後、当該中性化膜3の表面上にホールパターンを形成した薄膜4が形成された基板1に対して、薄膜4を被覆するように、ブロックコポリマーを含む層5を形成する。ホールパターンが形成された薄膜4の上面からブロックコポリマーを含む層5の表面までの厚みHが、薄膜4の膜厚Lの70%以下にする。さらに、薄膜4に形成されたホールパターンのホール底面から、ブロックコポリマーを含む層5の表面までの厚みH’を、P
Bブロックのブロック径d1の50%以上にすることが好ましい。
【0050】
<相分離工程>
ブロックコポリマーを含む層が形成された基板をアニール処理することにより、当該ブロックコポリマーを含む層を相分離させる。この結果、ホールパターン中の1つのホールに対して1のP
BブロックとP
Aブロックからなる基板表面に垂直なシリンダ構造の相が形成される。
【0051】
アニール処理としては、熱アニール処理や溶媒アニール処理等の、ブロックコポリマーを相分離させるために用いられるいずれの処理であってもよい。熱アニール処理は、具体的には、ブロックコポリマーを含む層が形成された基板を熱処理する。熱処理の温度は、用いるブロックコポリマーのガラス転移温度以上であり、かつ熱分解温度未満で行うことが好ましい。また、熱処理は、窒素等の反応性の低いガス中で行われることが好ましい。また、溶媒アニール処理は、ブロックコポリマーを含む層が形成された基板を、高分子ブロック共重合体組成物の良溶媒蒸気に暴露した状態でアニール処理する方法である。溶媒アニール処理においては、良溶媒蒸気に暴露した状態の基板をさらに熱処理してもよい。具体的には、例えば、ブロックコポリマーを含む層が形成された基板を、デシケーター内に高分子ブロック共重合体組成物の良溶媒とともに入れて放置する。また、高分子ブロック共重合体組成物の良溶媒に窒素ガスをバブリングさせて得られた良溶媒蒸気含有窒素ガスを導入した状態で、ブロックコポリマーを含む層が形成された基板を熱処理してもよい。
【0052】
<選択的除去工程>
次いで、相分離構造を形成させた後の基板上のブロックコポリマーを含む層のうち、露出しているP
Bブロックからなる相を選択的に除去する。これにより、P
Aブロックからなる相のみが、基板の露出面に残る。すなわち、基板上には、P
Aブロックのみから形成されており、薄膜に元々形成されていたホールパターンよりもホール径が小さく、かつホール直径の均一性及び真円性が改善されたCHパターンが形成される。
【0053】
選択的除去処理は、P
Aブロックに対しては影響せず、P
Bブロックを分解除去し得る処理であれば、特に限定されるものではなく、ドライエッチング法であってもよく、溶液エッチング法であってもよい。ドライエッチングは、ナノ相分離構造に反応性のガスを吹き付け、当該ドライガスに対するブロックの分解速度の違いによって選択的に除去する方法である。具体的には、酸素プラズマ処理、水素プラズマ処理、オゾン処理等が挙げられる。
【0054】
一方、溶液エッチング法は、必要に応じてナノ相分離構造中の特定のブロック領域のポリマーを選択的に分解させた後、当該ナノ相分離構造を、主に有機溶媒を主成分とする現像液に浸漬させ、特定の相部分を優先的に溶解除去する方法である。溶液エッチング法の場合には、現像液に浸漬させる前に、相分離構造を形成させた後の基板上のブロックコポリマーを含む層のうち、P
Bブロックからなる相中のポリマーの少なくとも一部を分解(低分子量化)する。予めP
Bブロックの一部を分解することにより、現像液に対する溶解性を高められる結果、P
Bブロックからなる相がP
Aブロックからなる相よりも選択的に除去しやすくなる。
【0055】
分解処理は、P
AブロックよりもP
Bブロックを優先的に分解可能な処理であれば特に限定されるものではなく、ブロックの分解に用いられる手法の中から、P
AブロックとP
Bブロックの種類に応じて、適宜選択して行うことができる。当該分解処理としては、例えば、UV(紫外線)照射処理、熱分解処理、及び化学反応処理等が挙げられる。
【実施例】
【0056】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0057】
[製造例1]
ホールパターンを形成させるレジスト膜を形成するためのレジスト組成物溶液を製造した。
具体的には、下記式(A)−1で表されるポリマー(Mw:10000、分散度(Poly dispersity index:PDI):1.7)を100質量部、下記式(B)−1で表される光酸発生剤(和光純薬社製)を10質量部、トリ−n−アミルアミンを1.2質量部、サリチル酸を2.0質量部、及びPGMEAを2500質量部混合し、溶解してレジスト組成物溶液を調製した。なお、式(A)−1中、( )の右下の数値は各構成単位の割合(モル%)を示す。
【0058】
【化1】
【0059】
【化2】
【0060】
[実施例1]
まず、有機系反射防止膜組成物「ARC−29」(商品名、ブリュワーサイエンス社製)を、スピンナーを用いて8インチシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で205℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚85nmの有機系反射防止膜を形成した。
該有機系反射防止膜上に、製造例1により製造されたレジスト組成物溶液を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、85℃、60秒間の条件でプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚100nmのホールパターン形成用レジスト膜を形成した。
【0061】
次いで、当該ホールパターン形成用レジスト膜に対して、ArF露光装置NSR−S308F(ニコン社製;NA(開口数)=0.92)により、ArFエキシマレーザー(193nm)を、表1の「マスクC.D.」欄に記載のホール径と158nmのピッチを有するホールを形成するためのマスクパターン(6%ハーフトーン)を介して選択的に照射した。そして、125℃、60秒間の条件で露光後加熱(PEB)処理を行い、さらに酢酸ブチルで16秒間の条件で現像し、振り切り乾燥を行った。次いで100℃、1分間、その後200℃、5分間の条件でポストベーク処理を行った。その結果、表1の「パターンC.D.」欄に記載のホール径と158nmのピッチを有するホールパターンが形成された。これら一連の処理後のレジスト膜の膜厚は60nmであった。
【0062】
この基板に、PS−PMMAブロックコポリマー1(PSの分子量:45000、PMMAの分子量:20000、PDI:1.07、周期:36.5nm、PMMAのブロック径:20nm)のPGMEA溶液(0.8質量%)を、前記ホールパターン形成用レジスト膜の上面からの厚みが20、45、又は60nmとなるようにスピンコート(回転数:1500rpm、60秒間)し、110℃、60秒間の条件でプレベーク(PAB)処理を行い、PS−PMMAブロックコポリマー1を含む層を形成させた。その後、当該基板を、窒素気流下、240℃で60秒間加熱させて相分離構造を形成させた。
その後、TCA−3822(商品名、東京応化工業社製)を用いて、該基板に対して酸素プラズマ処理(200sccm、40Pa、200W、40℃、20秒間)を施し、PMMAからなる相を選択的に除去した。
【0063】
得られた基板の表面を、走査型電子顕微鏡SU8000(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて観察し、ホールパターン形成用レジスト膜に形成されていた元々のホール1つ当たり、PSからなる相より形成されたホールが1個形成されたものを○、複数形成されたものを△、全く形成されなかったものを×として、CHパターン形成の評価を行った。また、形成されたCHパターンについて、9個のホールの直径を測定し、その結果から標準偏差の3倍値が2.0未満のものを○、2.0〜3.0のものを△、3.0超のものを×として、ホール径の均一性を評価した。さらに、CD−SEM(日立ハイテクノロジーズ社製)のオペレーティングソフトウェアの放射状測定の測定値の標準偏差の3倍値が1.5未満のものを○、1.5〜3.0のものを△、3.0超のものを×として、ホールの真円性を評価した。ホールパターン形成用レジスト膜の上面からPS−PMMAブロックコポリマー1を含む層の上面までの厚み(以下、「厚みH」ということがある。)が20nmの結果を表1に、厚みHが45nmの結果を表2に、厚みHが60nmの結果を表3に、それぞれ示す。表2及び3中「−」は測定不能であることを示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
この結果、厚みHが60nmの場合、つまり、ホールパターン形成用レジスト膜の膜厚(60nm)の100%以上の場合には、相分離後のPMMA相の選択的除去によっては、ホールは形成されなかった。これに対して、厚みHが20nmの場合には、つまり、ホールパターン形成用レジスト膜の膜厚(60nm)の60%以下である場合には、ホール径が60.7〜114nm、すなわちPS−PMMAブロックコポリマー1の周期の1.65〜3.1倍では、ホール1つ当たりPSからなる相より形成されたホールが1個形成されたが、ホール径が122nm以上では、ホール1つ当たり複数のPSからなる相より形成されたホールが形成されてしまっていた。ホール径が122〜233nmでは、形成されたホールの均一性及び真円性は良好であった。また、厚みHが45nm(ホールパターン形成用レジスト膜の膜厚(60nm)の75%)の場合には、ホール径が60.7〜72.3nmではホールが形成されず、ホール径が76.8nm以上では、ホールは形成されたものの、ホールパターン形成用レジスト膜上の1のホール当たり複数のホールが形成されてしまった。また、形成されたホールは、いずれもホール径の均一性及び真円性があまり良好ではなかった。
【0068】
[実施例2]
PS−PMMAブロックコポリマー1に代えて、PS−PMMAブロックコポリマー2(PSの分子量:95500、PMMAの分子量:35500、PDI:1.11、周期:73.5nm、PMMAのブロック径:40nm)を用いた以外は実施例1と同様にして、基板上のホールパターン形成用レジスト膜にホールパターンを形成した後、PS−PMMAブロックコポリマー2を含む層を形成し、相分離後、PMMAからなる相を選択的に除去し、得られた基板の表面を観察し、実施例1と同様にして評価した。結果を表4〜6に示す。
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
【表6】
【0072】
この結果、厚みHが60nmの場合、つまり、ホールパターン形成用レジスト膜の膜厚(60nm)の100%以上の場合には、相分離後のPMMA相の選択的除去によっては、ホールは形成されなかった。また、厚みHが20nm及び40nmの場合、つまり、ホールパターン形成用レジスト膜の膜厚(60nm)の70%以下である場合には、ホール径が60.7〜156nm、すなわちPS−PMMAブロックコポリマー2の周期の0.83〜2.12倍では、ホール1つ当たりPSからなる相より形成されたホールが1個形成された。一方で、厚みHが40nmの場合には、ホール径が167nm以上では、ホール1つ当たり複数のPSからなる相より形成されたホールが形成されてしまっていた。さらに、厚みHが20nmの場合には、ホール径が167nm(すなわち、PS−PMMAブロックコポリマー2の周期の2.27倍)ではホール1つ当たり複数のホールが形成され、さらにホール径が233nm以上(すなわち、PS−PMMAブロックコポリマー2の周期の3.17倍以上)では、ホール自体が形成されなかった。厚みHが20nm及び40nmの場合には、形成されたホールは、いずれもホール径の均一性及び真円性が良好であった。
【0073】
[実施例3]
まず、有機系反射防止膜組成物「ARC−29」(商品名、ブリュワーサイエンス社製)を、スピンナーを用いて8インチシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で205℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚85nmの有機系反射防止膜を形成した。
該有機系反射防止膜上に、スチレン/メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメタン/メタクリル酸プロピルトリメトキシシラン(組成比:75/20/5、Mw:40000、PDI:1.7)のPGMEA溶液(0.4質量%)をスピンコートし、250℃、60秒間の条件でプレベーク(PAB)処理を行い、中性化膜(膜厚:10nm)を形成させた。
該中性化膜上に、実施例1と同様にして、製造例1により製造されたレジスト組成物溶液を塗布し、得られたホールパターン形成用レジスト膜にホールパターンを形成した後、PS−PMMAブロックコポリマー1を含む層を形成し、相分離後、PMMAからなる相を選択的に除去し、得られた基板の表面を観察した。
この結果、実施例1の場合と同様に、厚みHが60nmの場合には相分離後のPMMA相の選択的除去によっては、ホールは形成されず、厚みHが20nmの場合には、ホールパターン形成用レジスト膜上のホール径がPS−PMMAブロックコポリマー1の周期の3.1倍以下の場合に、1のホールに対して1のホールが形成された。
【0074】
[実施例4]
PS−PMMAブロックコポリマー1に代えて、実施例2で用いたPS−PMMAブロックコポリマー2を用いた以外は、実施例3と同様にして、有機系反射防止膜(下地膜)及び中性化膜を形成した基板上のホールパターン形成用レジスト膜にホールパターンを形成した後、PS−PMMAブロックコポリマー2を含む層を形成し、相分離後、PMMAからなる相を選択的に除去し、得られた基板の表面を観察した。
この結果、実施例2の場合と同様に、厚みHが60nmの場合には相分離後のPMMA相の選択的除去によっては、ホールは形成されず、厚みHが20nm及び40nmの場合には、ホールパターン形成用レジスト膜上のホール径がPS−PMMAブロックコポリマー2の周期の0.83〜2.12倍の場合に、1のホールに対して1のホールが形成された。
【0075】
[実施例5]
実施例1と同様にして、基板上のホールパターン形成用レジスト膜にホールパターンを形成した後、PS−PMMAブロックコポリマー1を含む層を形成し、相分離させた。その後、酸素プラズマ処理に代えて、オゾンレス低圧水銀ランプSSP17−110(254nm)(セン特殊光源社製、低圧水銀灯:SUV110GS−36、照度:16mW/cm
2)を用いて、当該基板に対して窒素気流下2分間、UVを照射した後、当該基板をトルエン(特級)に15秒間浸漬させ、PMMAからなる相を選択的に除去した。その後、当該基板を窒素ガスで風乾し、得られた基板の表面を観察した。
この結果、実施例1の場合と同様に、厚みHが60nmの場合には相分離後のPMMA相の選択的除去によっては、ホールは形成されず、厚みHが20nmの場合には、ホールパターン形成用レジスト膜上のホール径がPS−PMMAブロックコポリマー1の周期の3.1倍以下の場合に、1のホールに対して1のホールが形成された。
【0076】
[実施例6]
実施例1と同様にして、基板上のホールパターン形成用レジスト膜にホールパターンを形成した後、PS−PMMAブロックコポリマー2に代えて、PS−PMMAブロックコポリマー3(PSの分子量:40000、PMMAの分子量:20000、PDI:1.07、周期:34.7nm、PMMAのブロック径:20nm)を用いた以外は実施例1と同様にして、基板上のホールパターン形成用レジスト膜にホールパターンを形成した後、PS−PMMAブロックコポリマー3を含む層を形成し、相分離後、PMMAからなる相を選択的に除去し、得られた基板の表面を観察し、実施例1と同様にして評価した。結果を表7〜9に示す。
【0077】
【表7】
【0078】
【表8】
【0079】
【表9】
【0080】
この結果、厚みHが60nmの場合、つまり、ホールパターン形成用レジスト膜の膜厚(60nm)の100%以上の場合には、相分離後のPMMA相の選択的除去によっては、ホールは形成されなかった。また、厚みHが20nmの場合では、ホール径が60.7〜114nm、すなわちPS−PMMAブロックコポリマー2の周期の1.75〜3.29倍では、ホール1つ当たりPSからなる相より形成されたホールが1個形成され、かつ形成されたホールは、いずれもホール径の均一性及び真円性が良好であった。一方で、厚みHが40nmの場合には、ホール径が60.7〜72.3nmではホールが形成されず、ホール径が76.8nm以上では、ホールは形成されたものの、ホールパターン形成用レジスト膜上の1のホール当たり複数のホールが形成されてしまった。また、形成されたホールは、いずれもホール径の均一性及び真円性があまり良好ではなかった。