(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下流結像反射光学ユニットの物体視野と結像される反射性物体とを配置することができる照明視野を斜め照明するためのEUV投影リソグラフィのための照明光学ユニットであって、
前記斜め照明と前記結像される反射性物体の構造との相互作用に起因する該結像される反射性物体の構造変数(p)への結像テレセントリック性(ΔTC)の依存性が少なくとも部分的に補償されるような該結像される反射性物体の該構造変数(p)への該結像テレセントリック性(ΔTC)の依存性をもたらす照明瞳がもたらされるように具現化された瞳発生デバイス、
を含むことを特徴とする照明光学ユニット。
前記照明瞳が、前記斜め照明の第1に照明入射平面(yz)に対して垂直であり(シグマx)、かつ第2に該斜め照明の該照明入射平面(yz)にある(シグマy)主物体視野座標(x,y)に対応する該照明瞳内の座標である少なくとも1つの主瞳座標(シグマx,シグマy)に関して鏡面非対称に設計されないことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の照明光学ユニット。
【発明を実施するための形態】
【0021】
マイクロリソグラフィのための投影露光装置1は、微細又はナノ構造化電子半導体構成要素を生成するように機能する。光源2は、照明に使用される例えば5nmと30nmの間の波長領域のEUV放射線を放出する。光源2は、GDPP光源(ガス放電生成プラズマ)又はLPP光源(レーザ生成プラズマ)とすることができる。シンクロトロンを利用した放射線源を光源2に使用することができる。当業者は、この種の光源に関する情報を例えばUS 6 859 515 B2に見出すことができるであろう。投影露光装置1内での照明及び結像にはEUV照明光又は照明放射線3が使用される。光源2の下流では、EUV照明光3は、例えば、従来技術で公知の多シェル構造を有する多段コレクター、又はこれに代えて楕円体形状コレクターとすることができるコレクター4を最初に通過する。対応するコレクターは、EP 1 225 481 Aから公知である。コレクター4の下流では、EUV照明光3は、望ましくない放射線又は粒子部分からEUV照明光3を分離するために使用することができる中間焦点面5を最初に通過する。中間焦点面5を通した後に、EUV照明光3は、視野ファセットミラー6上に最初に入射する。
【0022】
位置関係の説明を容易にするために、
図1には直交広域xyz座標系をプロットしている。
図1では、x軸は、作図面と垂直にそこから飛び出すように延びている。y軸は、
図1の右に向けて延びている。z軸は、
図1の上方に延びている。
【0023】
投影露光装置1の個々の光学構成要素の場合の位置関係の説明を容易にするために、その後の図では、各々直交局所xyz又はxy座標系を更に使用する。それぞれの局所xy座標は、別途記載しない限り、光学構成要素のそれぞれの主配置平面、例えば、反射平面に張られる。広域xyz座標系及び局所xyz又はxy座標系のx軸は、互いに平行に延びている。局所xyz又はxy座標系のそれぞれのy軸は、広域xyz座標系のy軸に対してx軸の周りのそれぞれの光学構成要素の傾斜角に対応する角度を有する。
【0024】
図2は、一例として、視野ファセットミラー6の視野ファセット7のファセット配置を示している。視野ファセット7は矩形であり、各々が同じx/yアスペクト比を有する。x/yアスペクト比は、例えば、12/5、25/4、又は104/8とすることができる。
【0025】
視野ファセット7は、視野ファセットミラー6の反射面を予め定め、かつ各々が6つから8つの視野ファセット群8a、8bを有する4つの列に群分けされる。視野ファセット群8aは、各々が7つの視野ファセット7を有する。2つの中心視野ファセット列の2つの追加の辺縁視野ファセット群8bは、各々が4つの視野ファセット7を有する。視野ファセットミラー6のファセット配置は、中心ファセット列の間、及び3番目のファセット行と4番目のファセット行の間に視野ファセットミラー6がコレクター4の保持スポークによって遮蔽される間隙空間9を有する。
【0026】
視野ファセットミラー6での反射の後に、個々の視野ファセット7に割り当てられたビーム又は部分ビームに分割されたEUV照明光3は、瞳ファセットミラー10上に入射する。
【0027】
図3は、瞳ファセットミラー10の円形瞳ファセット11の例示的ファセット配置を示している。瞳ファセット11は、互いに内外に位置するファセットリング内の中心の周りに配置される。入射を受け、視野ファセット7のうちの1つと瞳ファセット11のうちの1つとを含むそれぞれのファセット対が、それに関連付けられたEUV照明光3の部分ビームに対する物体視野照明チャネルを予め定めるように、視野ファセット7のうちの1つによって反射されるEUV照明光3の各部分ビームに瞳ファセット11が割り当てられる。視野ファセット7への瞳ファセット11のチャネル毎の割り当ては、投影露光装置1による望ましい照明に依存して達成される。
【0028】
瞳ファセットミラー10(
図1)と、3つのEUVミラー12、13、14から構成される下流の伝達光学ユニット15とを通じて、視野ファセット7が、投影露光装置1の物体平面16に結像される。EUVミラー14は、かすめ入射のためのミラー(かすめ入射ミラー)として具現化される。物体平面16内には、結像される物体として反射レチクル17配置され、この反射レチクル17のうちで、投影露光装置1が有する下流の投影光学ユニット19の物体視野18と適合する照明視野の形態にある照明領域が、EUV照明光3によって照明される。物体視野照明チャネルは、物体視野18内で重ね合わされる。EUV照明光3はレチクル17から反射される。
【0029】
投影光学ユニット19は、物体平面16の物体視野18を像平面21の像視野20に結像する。従って、照明光3を結像光とも表している。この像平面21内には、投影露光装置1を使用する投影露光中に露光される感光層を担持するウェーハ22が配置される。投影露光中には、レチクル17とウェーハ22の両方が、y方向に同期方式で走査される。投影露光装置1はスキャナとして具現化される。以下では、走査方向を物体変位方向とも表している。
【0030】
視野ファセットミラー6、瞳ファセットミラー10、及び伝達光学ユニット15のミラー12から14は、投影露光装置1の照明光学ユニット23の一部である。投影光学ユニット19と共に、照明光学ユニット23は、投影露光装置1の光学系を形成する。
【0031】
投影光学ユニット19は、反射光学ユニット、すなわち、複数のミラーを有する光学ユニットとして具現化され、
図1には、これらのミラーのうちで投影光学ユニット19の照明ビーム経路内で第1のミラーM1と最後のミラーM6とを示している。レチクル17は、照明光3に対して反射性を用いて具現化されるので、レチクル17上に入射する照明光3のビームをレチクル17から反射される照明光3のビームから分離するためには、レチクル17の斜め照明が必要である。照明光3のビームは、中心物体視野点の主光線と物体平面に対する法線の間の入射角αでレチクル17上に入射し、最小の角度αは、投影光学ユニット19によって使用される物体側開口数に依存する。入射角αは、yz平面と適合するレチクル17の照明の入射平面内で測定される。
【0032】
図4は、視野ファセットミラー6の更に別の実施形態を示している。
図2に記載の視野ファセットミラー6を参照して上述したものに対応する構成要素は同じ参照番号を有し、これらに対しては、
図2に記載の視野ファセットミラー6の構成要素とは異なる場合に限り説明する。
図4に記載の視野ファセットミラー6は、湾曲した視野ファセット7を含む視野ファセット配置を有する。これらの視野ファセット7は、各々が複数の視野ファセット群8を有する合計で5つの列に配置される。この視野ファセット配置は、視野ファセットミラーの担持板24の円形境界内に内接する。
【0033】
図4に記載の実施形態の視野ファセット7は、全てが同じ面積と、
図2に記載の実施形態の視野ファセット7のx/yアスペクト比に対応するx方向幅とy方向の高さとの同じ比とを有する。
【0034】
視野ファセットミラー6のそれぞれの実施形態の視野ファセット7の各々は、それぞれの物体視野照明チャネルを通して瞳ファセットミラー10の瞳ファセット11のうちの正確に2つのものに割り当てられる。従って、瞳ファセットミラー10は、視野ファセットミラー6が有する視野ファセット7の正確に2倍の量の瞳ファセット11を有する。
【0035】
図5及び
図6は、略示する瞳ファセットミラー10の更に別の実施形態のファセット配置に基づいて上述のことを例示している。
図5のファセット配置の図は非常に概略的である。
図3及び
図5に記載の実施形態にある瞳ファセットミラー10は、実際には約800個の瞳ファセット11を有する。瞳ファセット11の各々は、約10mmの直径を有する。
【0036】
視野ファセットミラー6の視野ファセット7の反射面は、視野ファセット7上に入射するEUV部分ビームを第1の物体視野照明チャネルに沿って瞳ファセット11
iのうちの1つの方向に案内するための第1の照明傾斜位置と、視野ファセット7上に入射するEUV部分ビームを更に別の物体視野照明チャネルに沿って瞳ファセット11
iのうちで視野ファセット7の第1の照明傾斜位置において部分ビームが案内される瞳ファセット11とは異なる別のもの方向に案内する更に別の照明傾斜位置との間で傾斜させることができる。
【0037】
図5は、瞳ファセット11から構成される合計で4つの対11
1,11
1’、11
2,11
2’、11
3,11
3’、11
4,11
4’を強調表示して略示しており、これらの対の各々の瞳ファセットは、視野ファセット7のうちの1つが有する2つの照明傾斜位置にそれぞれ割り当てられる。瞳ファセット対11
1,11
1’、11
2,11
2’、11
3,11
3’、11
4,11
4’の間の接続線25
1、25
2、25
3、25
4は、割り当てられた視野ファセット7が2つの照明傾斜位置の間で入れ替わる時のこの視野ファセットから反射されるEUV部分ビームの経路を略示している。
【0038】
接続線25は、直線として略示したものである。実際には、接続線は、多くの場合に直線的に延びず、円錐断面の形態で延びる。接続線25の進路の正確な形態は、一方で瞳ファセット11の照明の幾何学形状に、他方でそれぞれの視野ファセット7に対する傾斜機構に依存する。
【0039】
対11
1,11
1’、11
2,11
2’、11
3,11
3’、11
4,11
4’を用いて、外側の瞳ファセット11
1、11
2、11
3、11
4と内側の瞳ファセット11
1’、11
2’、11
3’、11
4’とが、各々互いに対して割り当てられる。内側の瞳ファセット11
1’から11
4’は、
図5に略示すものよりも更に瞳ファセットミラー10の中心Zの近くに移動することができる。
【0040】
瞳ファセット11の配置は、4つの象限I、II、III、IVに大まかに再分割することができ、
図5の象限Iは、
図4に示す担体板24の中心Zから見て右に配置された扇形内に位置し、更に別の象限IIからIVは、数学的な通例通り、反時計方向に順次番号が振られている。
【0041】
照明傾斜位置の間で傾斜可能な視野ファセット7は、更にターンオフ傾斜位置に傾斜させることができる。2つの照明傾斜位置は、傾斜可能視野ファセット7の端部止め具を用いてこれらの位置に正確に定められるが、2つの照明傾斜位置の間に位置するターンオフ傾斜位置の場合はそうではない。ターンオフ傾斜位置は、視野ファセット7上に入射するEUV部分ビームを物体視野18に対して作用せず、物体視野照明チャネルの方向とは異なるターンオフビーム経路の方向に案内するように機能する。
【0042】
これを瞳ファセット対11
1,11
1’に割り当てられた視野ファセット7
1をこの視野ファセットの反射面に対して垂直な断面に示す
図6を参照して例示する。視野ファセット7
1は、
図6の作図面に対して垂直な関節接合軸27の周りに一方が視野ファセット7
1上にあり、他方が視野ファセット担体26上にある止め具28、29によって定められる2つの照明傾斜位置の間でアクチュエータを用いて視野ファセット担体26に対して傾斜させることができる。この視野ファセット7
1をこれらの2つの照明傾斜位置の間に位置するターンオフ傾斜位置に例示している。更に、
図6は、視野ファセット7
1上に入射する照明光3のEUV部分ビーム、第1の照明傾斜位置に割り当てられた物体視野照明チャネル3
1、第2の照明傾斜位置に割り当てられた第2の物体視野照明チャネル3
1’を略示し、更にターンオフビーム経路30を破線形式で略示している。
【0043】
視野ファセット7は、各々、投影露光装置1の中央制御デバイス29bに例示していない方式で信号接続したアクチュエータ29aを用いて傾斜される。
【0044】
図7は、照明光学ユニット23の照明瞳31を通しての物体視野18内のレチクル17上の中心物体視野点OFの照明を略示している。照明瞳31は、照明光学ユニット23の瞳平面32内に位置する。照明瞳31内での照明光3の強度分布は、物体視野18にわたる照明の照明角度分布と直接相関する。例えば、中心物体視野点OFの照明中に、傾斜可能視野ファセット7による物体視野照明チャネルの駆動によって照明光3が瞳ファセット11の集団上に如何に入射するかに基づいて、照明瞳31内に予め定められた強度分布がもたらされ、相応に照明角度分布がもたらされる。
【0045】
照明光強度分布は、分布I(シグマx,シグマy)に基づいて照明瞳にわたって指定することができ、この場合シグマx及びシグマyは、瞳座標、すなわち、物体視野座標x,yに対応する照明瞳31に張られる座標である。
【0046】
更に
図7は、レチクル17上の2つの典型的な線構造、すなわち、投影露光中にウェーハ22に転写することが意図される構造の典型的な変形を例示的に示している。この図は、水平線構造の水平線33と垂直線構造の垂直線34とを示している。隣接する水平線33の間の距離はp
H(水平ピッチ)である。隣接する垂直線34の間の距離はp
V(垂直ピッチ)である。
【0047】
水平線33は、
図1に記載の広域xyz座標系のx軸と平行に延びている。垂直線34は、
図1に記載の広域xyz座標系のy軸と平行に延びている。
【0048】
図8及び
図15は、異なる照明設定、すなわち、物体視野照明チャネルを通して照明することができる瞳ファセット11の異なる分布を例示的に示している。相応にこれらの異なる照明設定は、照明視野、すなわち、物体視野18が照明される照明角度の異なる分布を導く。
【0049】
図8は、瞳ファセットミラー10の中心Zの周りの制限半径R
Gの外側に位置する瞳ファセット11の照明を示している。従って、この照明は、環状照明設定を生成するための瞳ファセットミラー10の照明を必要とする。
【0050】
図15は、物体視野照明チャネルを通して象限II及びIV内の瞳ファセット11が照明されるy二重極照明設定を示している。この設定に対して相補的に、物体視野照明チャネルを通して象限I及びIII内の瞳ファセットが照明されるx二重極照明設定も可能である。
【0051】
図9は、補償設定が実施される前の環状照明設定の場合の照明光3の例示的な強度分布を瞳座標グラフに示している。照明光3の部分ビームは、各々瞳ファセット11のうちの1つの場所に入射し、それによって
図9に記載のグラフにある強度寄与I(シグマx,シグマy)を与える。強度寄与Iは、この場所に存在して瞳ファセットの場所で積分された強度に依存して異なるサイズで例示している。小さめの点は、低めの積分強度に対応する。強度差は、それぞれの物体視野照明チャネルを通して案内される異なる照明光強度によってもたらされる。
【0052】
図9に記載の環状照明設定は、照明光3が入射する瞳ファセット11の構成に関する限り、いかなる場合にも瞳座標シグマxと瞳座標シグマyの両方に関して鏡面対称である。
【0053】
図10は、物体構造変数p(ピッチ)へのテレセントリック性変化ΔTCの依存性を更に別のグラフに示している。この依存性は、垂直線34を有する物体構造に対してテレセントリック性曲線35として、及び水平線33を有する物体構造に対してテレセントリック性曲線36としてプロットしている。
【0054】
垂直構造テレセントリック性曲線35は、ΔTC=0の場合に構造変数に依存せずに推移する。水平構造テレセントリック性曲線36は、約40nmの構造変数pの場合に約−12mradの値を有する。この値は、大きい構造変数pに向けてその絶対値が減少し、p≒80nmにおいて−5mradの値、及びp=100nmにおいてΔTC≒−4mradの値に達し、p≧130nmではΔTC=−3mradの値で停滞する。
【0055】
一方で水平線33、他方で垂直線34に関するテレセントリック性曲線35、36のこれらの異なるプロファイルは、水平線33が垂直線34とは原理的に異なって照明されるという効果を有するレチクル17の斜め照明に起因してもたらされる。
【0056】
図11は、補償照明瞳37における強度分布をここでもまた瞳座標グラフに示している。補償照明瞳37は、下記で説明する補償設定の結果である。補償照明瞳37は、
図10を参照して上述した斜め照明に起因してもたらされる構造変数pに対する結像テレセントリック性TCの依存性が低下するようなすなわち、少なくとも部分的に補償されるようなレチクル17の構造変数pに対する結像テレセントリック性TCの依存性をもたらす。
【0057】
補償照明瞳37は、内側制限半径R
G及び外側制限半径が
図9に記載の環状照明設定の制限半径に対応するリング形状リング瞳寄与38を有する。更に、補償照明瞳37は、リング瞳寄与38内に、すなわち、R≦R
Gである瞳座標値の場所に補償瞳寄与39を有する。
【0058】
補償照明瞳39は、選択視野ファセット7をこれらの視野ファセットが、
図9に記載の照明設定に従って瞳ファセット11に対して作用するそれぞれの第1の照明傾斜位置と、制限半径R
Gの範囲にある瞳ファセットが照明される第2の照明傾斜位置との間で切り換えを行うことによって生成される。傾斜可能視野ファセット7は、予め定められた照明瞳を生成するための瞳発生デバイスである。
【0059】
補償照明瞳37は、作用を受ける瞳ファセット11に関して、座標軸シグマx又は座標軸シグマ
yのいずれに関しても正確に
鏡面対称であることはない。
【0060】
補償照明瞳37を生成するためには、全体的に、視野ファセット7のうちの約5%が、第1の照明傾斜位置から第2の照明傾斜位置に切り換えられる。異なる切り換え百分率、例えば、1%、2%、3%、4%、6%、7%、8%、9%、10%、又は他に10%超も可能である。
【0061】
図12は、補償照明瞳37に関する水平構造テレセントリック性曲線40と垂直構造テレセントリック性曲線41とを
図10に対応するΔTC/ピッチグラフに示している。水平構造テレセントリック性曲線40は、p=40nmにおいて値ΔTC≒−2mradを有する。この値は、その絶対値が、p≒60nmにおけるΔTC≒0mradまで低下し、その後に、より大きい構造変数pの場合にp≒130nmにおけるΔTC≒−1.5mradの値まで徐々に増加し、p≒250nmまでこの値に留まる。絶対値においては、水平構造テレセントリック性曲線40は、テレセントリック性偏差ΔTCの2mradの最大絶対値を有する。垂直構造テレセントリック性曲線は、≦80nmの構造変数においてΔTC≒−2.5mradの値を有し、その後に、構造変数p=100nmまでに符号を変化させ、このp=100nmにおいてΔTC≒2mradの値を有する。その後に、この正の値は僅かしか増大せず、p≒160nmを始端としてΔTC≒2.5mradの最大値を有する。垂直構造テレセントリック性曲線41は、2.5mradの値ΔTCにおいてその最大絶対値を有する。従って、補償照明瞳37の具備の結果として、最大テレセントリック性偏差は、絶対値で約12mradの値から絶対値で約2.5mradの値まで低減されている。
【0062】
図13は、更に別の補償照明瞳42を
図11に記載のものに対応する図に示している。この補償照明瞳42も、
図9に記載の環状照明設定から進んで発生される。この場合に、視野ファセット7のうちの一部は、第2の照明傾斜位置だけでなく、ターンオフ傾斜位置にも持ってこられる。全体的に、約5%の視野ファセット7が第2の照明傾斜位置に持ってこられ、4%の視野ファセット7がターンオフ傾斜位置に持ってこられる。これらの百分率の比率は可変とすることができ、
図11に関して上述した値を有する。
【0063】
図14は、補償照明瞳42に関する水平構造テレセントリック性曲線43及び垂直構造テレセントリック性曲線44のプロファイルをここでもまたΔTC/pグラフに示している。
【0064】
テレセントリック性曲線43、44の曲線プロファイルは、水平構造テレセントリック性曲線43が、水平構造テレセントリック性曲線40と比較して幾分高めのΔTC値に向けてシフトており、それに対して垂直構造テレセントリック性曲線44が、垂直テレセントリック性曲線41と比較して幾分低めのΔTCに向けてシフトしているという相違点を伴って、
図12に記載のテレセントリック性曲線40、41の曲線プロファイルと質的に同様である。その結果、この場合にもΔTCにおける最大絶対値において2.1mradの値への低減がもたらされる。全体的に、ΔTCにおける絶対値の最初の最大値(12mradである
図10を参照されたい)と比較して5倍よりも大きい低減が達成された。
【0065】
照明光学ユニット23の補償設定には以下の手順が使用される。
【0066】
最初に、レチクル17の物体構造変数に依存し、すなわち、特にピッチpに依存する物体結像変数が決定される。物体結像変数は、上記に例示的に説明したようにテレセントリック性偏差とすることができる。
【0067】
この場合に、テレセントリック性偏差又はテレセントリック性誤差は、フォーカス偏差に対する横方向像シフトの比を表している。フォーカス偏差は、像平面21と垂直に測定され、理想的な像点のz座標と、像が測定されるか又はウェーハ22上に露光される層が置かれる実際の像点のz座標との間の差を表している。横方向像シフトは、理想的な像平面21と平行な平面内で測定される。測定平面と理想的な像平面21との間の距離が、厳密にフォーカス偏差である。横方向像シフトは、理想的な像点と、像平面21と平行な測定平面内の実際の像点との間の距離である。そのようなテレセントリック性偏差は、レチクル17の斜め照明との相互作用の結果として生じる可能性がある。テレセントリック性偏差は、これに加えて、照明瞳の構成を用いて影響を及ぼされる可能性がある。
【0068】
テレセントリック性偏差は、測定するか、又は光学シミュレーション計算を用いて計算するかのいずれかとすることができる。
【0069】
その後に、補償結像パラメータ、すなわち、上述の例では照明瞳31内の強度分布が、補償前の結像変数と結像変数の補償寄与とで構成することができる構造依存の合計結像変数をもたらすように予め定められ、この場合に、合計結像変数は、予め定められた結像変数値の許容誤差範囲にある。上述のテレセントリック性偏差の例(例えば、
図12及び
図14)の場合に、3mradよりも小さいテレセントリック性偏差の最大絶対値に導く合計テレセントリック性偏差がもたらされた。補償結像パラメータの事前定義は、個々の視野ファセットの傾斜切り換えの補償の影響の経験的な決定によって決定することができる。これに代えて又はこれに加えて、補償の影響は、光学シミュレーション計算を用いてコンピュータによって決定することができる。
【0070】
決定され、かつ補償される物体結像変数の場合に、照明入射平面に対して垂直な水平物体線及び/又は照明入射平面内の垂直物体線を考慮することができる。予め定めた値からの結像変数の偏差の最大値の事前定義の代わりに、予め定めた値からの結像変数の偏差の平均値を予め定めることができる。望ましい結像変数の構造依存性プロファイルを定めることができる。補償結像パラメータの事前定義に関して、2次条件、例えば、照明光学ユニット23の最小伝達率、又は例えばNILS値又は照明のコントラスト値のような他の結像変数を考慮することができる。
【0071】
NILS(「正規化像対数勾配」)は、空間像強度曲線の導関数、すなわち、像視野20にわたる結像光の結像される構造(例えば、線)の縁部位置における強度を示し、コントラストと同等の方式で像品質の尺度である。値NILSは、次式の通りに計算することができる。
NILS=CD×d(lnI)/dx|I
0
=CD/I
0×dI/dx|I
0
【0072】
この場合に、CD(「臨界寸法」)は、線幅(一般的に、結像される物体の幅)であり、Iは、空間座標xの関数としての像強度であり、lnは自然対数であり、I
0は、空間像が評価される強度閾値である。|I
0は、この導関数が、空間像強度Iが値I
0を取る位置xにおいて形成されることを意味する。
【0073】
補償結像パラメータの事前定義は、光学近接性補正とも表すレチクルの特定のレイアウトの事前定義との組合せで行うことができる。このレイアウト事前定義は、レチクル17上に事前補償構造プロファイルを生成する段階を含み、この段階では、投影露光装置1を用いた結像の結果としての収差が構造的に事前補償される。
【0074】
補償結像パラメータの事前定義は、反復的に行うことができる。
【0075】
補償結像パラメータとしての補償照明瞳のy二重極照明設定から進む生成の異なる変形を例として以下に
図16を参照して説明する。
【0076】
図16は、瞳ファセットミラーの象限II及びIVが照明されるy二重極設定を
図9と類似の図に示している。
【0077】
図17は、水平構造テレセントリック性曲線45及び垂直構造テレセントリック性曲線46のプロファイルを
図10に記載のものに対応する図に示している。
【0078】
水平構造テレセントリック性曲線45は、p≒35nmにおいて値ΔTC≒−5.5mradを有する。水平構造テレセントリック性曲線45の場合に、テレセントリック性偏差の絶対値は、最初に、p≒42nmにおけるΔTC≒−8mradの値まで低下する。その後に、テレセントリック性偏差値は、p≒85nmにおけるΔTC≒−3mradまで増大し、次いで、より大きい構造変数pではこのレベルに留まる。垂直構造テレセントリック性曲線46は、ΔTC=0において構造変数とは独立したプロファイルを有する。従って、テレセントリック性偏差における最大絶対値は、
図16に記載の照明設定の場合は約8mradの値にある。
【0079】
図18は、
図16に記載のy二重極瞳に基づいて、この場合にも第1の照明傾斜位置から第2の照明傾斜位置に約5%の視野ファセット7を切り換えることによって得られた補償照明瞳47を示している。補償照明瞳47の場合に、象限II及びIV内で照明される瞳ファセット11による二重極瞳寄与48と共に象限I及びIII内で照明される瞳ファセット11による補償瞳寄与49も存在する。
【0080】
図19は、ここでもまた、補償照明瞳47における水平構造テレセントリック性曲線50と垂直構造テレセントリック性曲線51とを示している。水平構造テレセントリック性曲線50は、構造変数p≒35nmとp≒75nmの間でΔTC≒−1mradのプラトー上を延びる。その後に、水平構造テレセントリック性曲線50は符号を変化させて、p≒85nmにおいてΔTC≒1mradの値に達し、より大きい構造変数においてほぼこの値に留まる。垂直構造テレセントリック性曲線51は、構造変数p≒75nmとp≒200nmの間で良好な近似でΔTC≒0に留まる。2つのテレセントリック性曲線50、51は、各々、テレセントリック性偏差において最大で1.4mradの最大絶対値を有する。
【0081】
図20は、
図16に記載のy二重極照明設定をもたらす第1の照明傾斜位置を前と同じく起点として、約4%の視野ファセットが第2の照明傾斜位置に切り換えられ、約1%の視野ファセット7がターンオフ位置に切り換えられた更に別の補償照明瞳52を
図13に記載のものに対応する図に示している。
【0082】
図21は、
図20に記載の補償照明瞳52における水平構造テレセントリック性曲線53と垂直構造テレセントリック性曲線54とを示している。テレセントリック性曲線53、54のプロファイルは、テレセントリック性曲線50、51のものにほぼ対応する。
【0083】
図22は、象限II及びIV内で制限半径R
Gよりも大きい中心Zから距離Rの場所にある照明瞳又は瞳座標が照明されるy二重極照明設定の変形を示している。更に、
図22に記載のy二重極の2つの極は、
図16に記載のy二重極設定の場合のように中心Zの周りで周方向に90°にわたって広がることはなく、60°にわたってしか広がらない。
図22に記載の照明設定では、極の不均衡に関して、PB
sigma y=0%が成り立つ。従って、
図22の上側の二重極瞳寄与48は、
図22の下側の二重極瞳寄与48と正確に同じ積分された照明光強度を有する。
【0084】
図23は、水平物体線33に対する望ましいテレセントリック性曲線55の望ましい構造プロファイルを示している。この望ましいテレセントリック性曲線55は、レチクル17での反射時にレチクル17上の構造に起因して生成されるテレセントリック性曲線の負の部分を表している。
【0085】
図24は、
図22に記載のy二重極照明設定から先行して発生された補償照明瞳56を示している。補償照明瞳56は、ここでもまた、
図22に記載の設定が照明される第1の照明傾斜位置から第2の照明傾斜位置に視野ファセット7の一部分を切り換えることによって得られたものである。約15%の視野ファセット7を切り換えている。
図24に記載の照明設定は、極不均衡PB
sigma y=−9.59%を有する。従って、正のシグマy値にわたって積分した場合よりも、負のシグマy値にわたって積分した場合の方が高い照明光強度が存在する。
【0086】
更に、補償照明瞳56では、更に別の視野ファセット7をターンオフ傾斜位置から照明傾斜位置に切り換えており、すなわち、補償照明瞳56を照明する上で更に別の照明チャネルを利用可能にしたものである。補償照明瞳56の場合に、照明光3は、
図22に記載の照明設定の場合よりも約10%多い照明チャネル上に入射する。
【0087】
補償照明瞳56は、第1の照明傾斜位置にあるy二重極設定の
図22及び
図24の下側の極を照明する視野ファセット7を切り換え、かつ更に別の視野ファセット7を有効にすることにより、ほぼそれだけで発生されたものである。補償照明瞳56は、シグマy軸に関して鏡面対称である。
【0088】
図25は、補償照明瞳56によって生成されたテレセントリック性偏差からの寄与と、レチクル誘起テレセントリック性偏差からの寄与との和としての合計テレセントリック性曲線を合計テレセントリック性曲線57として示している。合計テレセントリック性曲線57は、p≒25nmにおいてΔTC≒0の値を有する。次いで、合計テレセントリック性は、p=40nmにおける約6mradのΔTC値まで増大し、その後に、p≒90nmにおけるΔTC≒−5.5mradの値まで徐々に低下する。合計テレセントリック性曲線57の場合に、合計テレセントリック性偏差ΔTCの最大絶対値は5.5mradである。
【0089】
投影光学ユニット19の一部としての波面操作デバイスの効果を
図26から
図29を参照して以下に解説する。波面操作デバイスは、投影光学ユニット19のミラーM1からM6のうちの少なくとも1つに対して作用し、かつそこにミラーの又はそのセグメントの微調節及び/又は変形を与える調節/変形ユニット58(
図1を参照されたい)の形態にあるマニピュレータである。従って、調節/変形ユニット58は、投影光学ユニット19の波面マニピュレータを構成する。
【0090】
投影光学ユニット19のミラーの調節及び/又は変形により、像視野20内で結像光3の波面に対して対応する影響をもたらすことができる。この波面影響は、一方でレチクル17の水平線33のかつ他方でレチクル17の垂直線34の像の結像フォーカスシフト(最良フォーカスシフト、bfs)、すなわち、像位置のzオフセットに相応に影響を及ぼすのに使用される。
【0091】
図26は、水平構造フォーカスシフト曲線59と垂直構造フォーカスシフト曲線60とをフォーカスシフト(最良フォーカスシフト、bfs)/構造変数(ピッチ)グラフに示している。これらのフォーカスシフト曲線59、60は、非補償波面に適用される。水平構造フォーカスシフト曲線59は、最小検出構造変数p≒40nmの場合にbfs≒17nmの値を有する。この値は、p≒50nmにおけるbfs≒22nmまで増大し、次いで、p≒80nmにおけるbfs≒8nmまで低下し、その後に、ほぼこのレベルに留まる。垂直構造フォーカスシフト曲線60の場合に、p≒40nmに対する値bfsは、約−25nmであり、次いで、p≒55nmにおける約−22nmまで増大し、その後に、構造変数p≒80nmから始まるbfs≒−30nmまで再び低下し、それよりも大きい構造変数ではほぼこの値に留まる。
【0092】
ゼルニケ多項式Z4、Z5、Z9、Z12、Z16、Z17、Z21、及びZ25が最適化のための対称性寄与として使用される調節/変形ユニット58を利用したミラー調節/変形最適化は、補償水平構造フォーカスシフト曲線61と補償垂直構造フォーカスシフト曲線62が構造変数範囲40nm<p<200nm内で値bfs≒0の前後で良好な近似で変化し、かつ2.5nmよりも小さいbfsの最大絶対値がもたらされるような反射光学ユニット19の結像光3の補償波面をもたらす。
【0093】
図27から
図29は、補償水平構造フォーカスシフト曲線63,65、67と補償垂直構造フォーカスシフト曲線64,66、及び68とに基づく対応する波面の調節/変形補償を示している。
図27に記載の波面補償の場合に、ゼルニケ多項式Z4、Z5、及びZ9に従って対称性群が変化された。
図28に記載の波面補償の場合に、ゼルニケ多項式Z4及びZ5に従って対称性群が変化された。
図29に記載の波面補償の場合に、ゼルニケ多項式Z5に従って対称性群が変化された。全ての場合に、フォーカスシフトに関する初期曲線59、60と比較して、フォーカスシフトの最大絶対値の有意な低減が同じく生じる。この最大絶対値は、
図27に記載の補償の場合にbfs≒4nmであり、
図28に記載の補償の場合にbfs≒8nmであり、
図29に記載の補償の場合にbfs≒9nmである。非補償フォーカスシフト曲線59、60と比較して、フォーカスシフトの最大絶対値の2倍よりも大きい低減が全ての場合に生じる。
【0094】
従って、上述の補償を用いてもたらされた一方でテレセントリック性偏差のかつ他方でフォーカスシフトの誤差寄与の低減に起因して、ウェーハ22上に極微構造を発生させるための相応に改善された結像特性がもたらされる。
【0095】
視野ファセット7の傾斜位置を用いて、他の照明設定、例えば、x二重極設定、四重極照明設定、又はあらゆる他の多重極照明設定の補償する変形を生成することも可能である。
【0096】
投影露光中に、レチクル17と、EUV照明光3に対して感光性を有するコーティングを担持するウェーハ22とが与えられる。その後に、レチクル17の少なくとも1区画が、少なくとも1つの補償結像パラメータの事前定義によって相応に設定された光学系を用いた投影露光装置1を用いてウェーハ22上に投影される。最後に、ウェーハ22上のEUV照明光3で露光された感光層が現像される。このようにして、微細又はナノ構造化構成要素、例えば、半導体チップが生成される。