【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の態様に限定されない。
【0031】
実施例1
0.01%コラーゲン(タイプI)((株)機能性ペプチド研究所; Cat: IFP9660)溶液、及び該溶液をD-PBS(-) (ナカライテスク; Cat: 14249-95)溶液で10倍希釈した0.001%コラーゲン溶液を用意した。両溶液を小型マイクロアレイプリンター(クボタコンプス; Cat: KCS-mini)を用いて 10 nLずつ、PEG鎖をガラス表面に固定化した35 mmガラスボトムディッシュ(サイトグラフ; 大日本印刷; 特注品)上にスポットし(スポット径:約600 μm; A: 1ng / spot; 約3.54 ng/mm
2; B: 0.1ng / spot; 約0.354 ng/mm
2 )、風乾した 。
得られた35 mmガラスボトムディッシュ上に、NBTL2b(ラット膀胱癌由来癌細胞)を2.5
x 10
5 個(3ml培地(MEM+非必須アミノ酸+10% FBS))、播種し、1時間後、20時間後のコラーゲンスポット上の細胞接着性を比較した。その結果、
図1Aに示すように、0.01%スポット上には細胞が接着でき、スポット以外のPEG上には細胞が接着できないことが確認できた。一方、
図1Bに示すように、0.001%スポット上には細胞の接着がうまくできないことが確認できた。
【0032】
実施例2
0.01%コラーゲン(タイプI)((株)機能性ペプチド研究所; Cat: IFP9660)溶液、及び該溶液をD-PBS(-) (ナカライテスク; Cat: 14249-95)溶液で10倍希釈した0.001%コラーゲン溶液を用意した。両溶液を、 35 mm PEG-coatedガラスボトムディッシュ(サイトグラフ; 大日本印刷; 特注品)、及び通常の35mmガラスボトムディッシュに注ぎ、ディッシュ全体をコラーゲンコートした後、得られた35 mmガラスボトムディッシュ上に、NBTL2b(ラット膀胱癌由来癌細胞)を2.5 x 10
5 個(3ml培地(MEM+非必須アミノ酸+10% FBS))播種し、コラーゲンスポット上の細胞接着性を比較した。その結果、スポットではなく、全体コートにおいても、高濃度(0.01%)のコラーゲンを用いた場合、PEG上にもコラーゲンコートが可能で、細胞の接着が認められた(
図2A)。一方、通常濃度(0.001%)コラーゲンでのPEG上へのコーティングは不可能だった(
図2B)。なお、通常濃度(0.001%)コラーゲンで通常の疎水処理済ガラス上へのコーティングは可能である(
図2C)。したがって、
図2Bの点線内のPEGコートが無い領域では細胞が付着した(
図2Bでは一部PEG非コート領域を有するガラスボトムディッシュを用いた)。
【0033】
実施例3
フィブロネクチン(有限会社ライフ研究所; Cat: LL-10007)粉末をDMEM(GIBCO, 31053-028)に溶解し、0.08%フィブロネクチン溶液を用意した。小型マイクロアレイプリンター(クボタコンプス; Cat: KCS-mini)を用いて 10 nLずつ、PEG鎖をガラス表面に固定化した35 mmガラスボトムディッシュ(サイトグラフ; 大日本印刷; 特注品)上にスポットした(スポット径:約600 μm,スポットの フィブロネクチン量:8 ng / spot; 約28.3 ng/mm
2 ) 。
得られた35 mmガラスボトムディッシュ上に、NBTL2b(ラット膀胱癌由来癌細胞)を2.5
x 10
5 個(3ml培地(MEM+非必須アミノ酸+10% FBS))、播種し、1時間後、20時間後スポット上の細胞接着性を確認した。なお、中央の大きい丸がフィブロネクチンスポットの範囲であり、その周りの4つの小さい丸はPEGコートが無い領域である(
図3では一部PEG非コート領域を有するガラスボトムディッシュを用いている)。
図3に示すように、フィブロネクチンスポット上には細胞が接着でき、スポット以外のPEG上には細胞が接着できないことが確認できる。また、PEGコートが無い領域にも細胞の非特異的接着が見られる。
【0034】
実施例4
フィブロネクチン(有限会社ライフ研究所; Cat: LL-10007)粉末をdH
2Oに溶解した0.4%溶液を5μl、pVenus-N1(蛍光タンパク質発現プラスミド; 1μg/μl)を1μl、Lipofectamine 2000 (Invitrogen)を2μl、0.2%ゼラチンを1.25 μl、 DMEM(GIBCO, 31053-028)を15.75 μlミックスした溶液を用意した。小型マイクロアレイプリンター(クボタコンプス; Cat: KCS-mini)を用いて 10 nLずつ、PEG鎖をガラス表面に固定化した35 mmガラスボトムディッシュ(サイトグラフ; 大日本印刷; 特注品)上にスポットした(スポット径:約600 μm,スポットの フィブロネクチン量:8 ng / spot; 約28.3 ng/mm
2 )。
得られた35 mmガラスボトムディッシュ上に、NBTL2b(ラット膀胱癌由来癌細胞)を2.5
x 10
5 個(3ml培地(MEM+非必須アミノ酸+10%FBS))、播種し、1時間後、20時間後のコラーゲンスポット上の細胞接着性を比較した。中央の大きい丸がフィブロネクチンスポットの範囲であり、その周りの4つの小さい丸はPEGコートが無い領域である(
図4では一部PEG非コート領域を有するガラスボトムディッシュを用いた)。その結果、
図4に示すように、20h後に導入遺伝子による蛍光がフィブロネクチンスポット上で検出できた。また、スポット以外のPEG上には細胞が接着できないので蛍光は見られなかった。このように、細胞の接着を制御しつつ、特定の領域のみに遺伝子を導入することができた。なお、PEGコートが無い領域にも細胞の非特異的接着が見られる。
【0035】
実施例5
フィブロネクチン(有限会社ライフ研究所; Cat: LL-10007)粉末をDMEM(GIBCO, 31053-028)に溶解し、0.08%フィブロネクチン溶液を用意した。小型マイクロアレイプリンター(クボタコンプス; Cat: KCS-mini)を用いて 10 nLずつ、PEG鎖をガラス表面に固定化した35 mmガラスボトムディッシュ(サイトグラフ; 大日本印刷; 特注品)上にスポットした(スポット径:約600 μm,スポットの フィブロネクチン量:8 ng / spot; 約28.3 ng/mm
2 ) 。
得られた35 mmガラスボトムディッシュ上に、HeLa(ヒト子宮頸癌由来細胞)を2 x 10
5 個(3ml培地(DMEM+10% FBS))、播種し、1時間後、26時間後スポット上の細胞接着性を確認した。中央の大きい丸がフィブロネクチンスポットの範囲であり、その周りの2つの小さい丸はPEGコートが無い領域である(
図5では一部PEG非コート領域を有するガラスボトムディッシュを用いた)。
図5に示すように、フィブロネクチンスポット上には細胞が接着でき、スポット以外のPEG上には細胞が接着できないことが確認できる。なお、PEGコートが無い領域にも細胞の非特異的接着が見られる。
【0036】
実施例6
フィブロネクチン(有限会社ライフ研究所; Cat: LL-10007)粉末をdH
2Oに溶解した0.4%溶液を5μl、pVenus-N1(蛍光タンパク質発現プラスミド; 1μg/μl)を1μl、Lipofectamine 2000 (Invitrogen)を2μl、0.2%ゼラチンを1.25 μl、 DMEM(GIBCO, 31053-028)を15.75 μlミックスした溶液を用意した。小型マイクロアレイプリンター(クボタコンプス; Cat: KCS-mini)を用いて 10 nLずつ、PEG鎖をガラス表面に固定化した35 mmガラスボトムディッシュ(サイトグラフ; 大日本印刷; 特注品)上にスポットした(スポット径:約600 μm,スポットの フィブロネクチン量:8 ng / spot; 約28.3 ng/mm
2 ) 。
得られた35 mmガラスボトムディッシュ上に、HeLa(ヒト子宮頸癌由来細胞)を2.0 x 10
5 個(3ml培地(DMEM+10% FBS))、播種し、1時間後、26時間後のコラーゲンスポット上の細胞接着性を比較した。大きい丸がフィブロネクチンスポットの範囲であり、小さい丸がPEGコートが無い領域である(
図6では一部PEG非コート領域を有するガラスボトムディッシュを用いた)。
図6に示すように、26h後に蛍光がフィブロネクチンスポット上のみで検出され、蛍光遺伝子がフィブロネクチンスポット上のみで導入されているのが確認できる。また、スポット以外のPEG上には細胞が接着できない。このように、細胞の接着を制御しつつ、特定の領域のみに遺伝子を導入することができた。なお、PEGコートが無い領域にも細胞の非特異的接着が見られる。
【0037】
実施例7
フィブロネクチン(有限会社ライフ研究所; Cat: LL-10007)粉末をdH
2Oに溶解した0.4%溶液を5μl、pVenus-N1(蛍光タンパク質発現プラスミド; 1μg/μl)を1μl、Lipofectamine 2000 (Invitrogen)を2μl、0.2%ゼラチンを1.25 μl、 DMEM(GIBCO, 31053-028)を15.75 μlミックスした溶液を用意した。小型マイクロアレイプリンター(クボタコンプス; Cat: KCS-mini)を用いて 10 nLずつ420 μm間隔で
図7Aのパターンを、PEG鎖を固定化した35mmディッシュ上にスポットし、乾燥させた(
図7B)。
【0038】
実施例8
ディッシュ上に、HeLa細胞を2.5 x10
5 cells / 3ml(培地(DMEM+10% FBS)) で播種し、42hr後に位相差像(
図8A)、蛍光像(
図8B)を顕微鏡により撮影した。パターン上では、蛍光タンパク質発現遺伝子が細胞に導入され細胞が蛍光色に光っている(
図8)。このように、様々なパターンを描画し、その上面から遺伝子を導入できることが示された。