【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 集会名 モータドライブ、リニアドライブ合同研究会 主催者名 社団法人電気学会 開催日 平成23年12月16日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたベアリングレスモータおよびポンプによれば、2つのベアリングレスモータユニットによって、回転子を支持するラジアル軸支持力を確保することができる。しかし、未だ十分なスラスト軸支持力を確保することが困難であり、スラスト軸支持力については改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、スラスト軸支持力をより大きくすることができる、流体移送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る流体移送装置は、ハウジングと、前記ハウジングの内部に配置され、回転軸を中心に回転される回転部と、前記回転部の軸方向端部に設けられ、流体を移送する移送力を流体に作用させる作用部と、前記ハウジングに設けられた固定子と、前記回転軸に対して直交方向において前記固定子から離間して前記回転部に設けられた回転子とを有し、前記回転部に回転力を付与するモータ部と、前記回転軸に対して平行方向において前記モータ部から離間して配置され、前記回転軸に対して直交方向において前記回転部を非接触で支持するラジアル軸支持部と、前記ハウジングに設けられた第1永久磁石と前記回転部に設けられた第2永久磁石とを有し、前記第1永久磁石と前記第2永久磁石との間に生じる第1磁束によって、前記作用部に作用する外力の方向とは反対の方向のスラスト軸支持力を前記回転部に作用させるスラスト軸支持部と、前記第1磁束に重畳させる第2磁束を生じさせるスラスト軸支持コイルと、前記スラスト軸支持コイルに付与される直流電流の大きさを制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
この構成では、スラスト軸支持部が生じさせる第1磁束によって、作用部に作用する外力の方向とは反対の方向のスラスト軸支持力を回転部に作用させることができる。また、スラスト軸支持コイルが生じさせる第2磁束を第1磁束に重畳させることによって、より大きなスラスト軸支持力を簡単に得ることができる。そして、スラスト軸支持コイルに付与される直流電流の大きさを制御部で制御して第2磁束の大きさを調整することによって、スラスト軸支持力の大きさを適宜調整することができる。
【0009】
前記スラスト軸支持部は、前記ハウジングに設けられ、前記第1磁束の流れを2つに分流させる磁束分流部と、前記ハウジングに設けられ、分流された一方の前記第1磁束を導く第1固定磁性部と、前記ハウジングに設けられ、分流された他方の前記第1磁束を導く第2固定磁性部とを有しており、前記第1固定磁性部および前記第2固定磁性部は、前記回転軸に対して平行方向に間隔を隔てて、前記第1磁束の磁束密度に差が生じるように構成されており、前記スラスト軸支持コイルは、前記第1固定磁性部および前記第2固定磁性部のいずれか一方を流れる前記第1磁束に前記第2磁束を重畳可能なように前記第1固定磁性部と前記第2固定磁性部との間に配置されており、前記第1固定磁性部および前記第2固定磁性部のいずれか一方を流れる前記第1磁束に前記第2磁束が重畳されたとき、他方を流れる前記第1磁束が前記第2磁束で相殺されるものであってもよい。
【0010】
この構成では、第1固定磁性部および第2固定磁性部は、回転軸に対して平行方向に間隔を隔てて、第1磁束の磁束密度に差が生じるように構成されているので、第1固定磁性部および第2固定磁性部のうち、磁束密度が疎である一方から密である他方に向かう方向のスラスト軸支持力を回転部に作用させることができる。また、第1固定磁性部および第2固定磁性部のいずれか一方を流れる第1磁束に第2磁束が重畳されたとき、他方を流れる第1磁束が第2磁束で相殺されるので、直流電流の方向および大きさを制御することによって、スラスト軸支持力の方向および大きさを適宜調整することができる。
【0011】
前記第1永久磁石および前記第2永久磁石が前記第1磁束を放射状に生じさせるように前記回転軸の周囲に配置されており、前記ラジアル軸支持部は、前記第1磁束に重畳させる第3磁束を生じさせるラジアル軸支持巻線を有しており、放射状の前記第1磁束の所定の第1部分に前記第3磁束が重畳され、前記回転軸を挟んで前記第1部分の反対側に位置する第2部分が前記第3磁束で相殺されるものであってもよい。
【0012】
放射状の第1磁束の所定の第1部分に第3磁束を重畳させ、第2部分を第3磁束で相殺すると、磁束密度が疎である第2部分から磁束密度が密である第1部分に向かう方向にラジアル軸支持力が発生する。上記構成では、スラスト軸支持部とラジアル軸支持部との間で永久磁石を共有しているので、スラスト軸支持部およびラジアル軸支持部のいずれか一方において永久磁石を省略することができる。
【0013】
前記ハウジングに設けられた第3永久磁石と前記回転部に設けられた第4永久磁石とを備え、前記第3永久磁石および前記第4永久磁石は、前記回転軸に対して平行方向において前記モータ部から前記作用部側に離間して配置されており、前記第3永久磁石と前記第4永久磁石との間に生じる磁束によって、前記作用部に作用する外力の方向とは反対の放射状放射状方向のスラスト軸支持力を前記回転部に作用させるものであってもよい。
【0014】
この構成では、モータ部から作用部側に離間した位置において、作用部に作用する外力の方向とは反対の方向のスラスト軸支持力を回転部に作用させることができるので、さらに大きなスラスト軸支持力を得ることができる。
【0015】
前記回転部に設けられた磁性体からなるセンサターゲットと、前記センサターゲットの前記回転軸に対する平行方向の変位を検知する変位センサと、前記ハウジングに設けられ、前記作用部に作用する外力の方向とは反対の方向のスラスト軸支持力を前記センサターゲットに作用させる第5永久磁石とを備えており、前記回転部の中心部には、流体が流れる貫通孔が軸方向に延びて形成されており、前記センサターゲットは、前記貫通孔の周囲に配置されており、前記変位センサは、前記回転軸の延長線上から外れた位置に配置されているものであってもよい。
【0016】
この構成では、センサターゲットに第5永久磁石の磁力を作用させることによってスラスト軸支持力を得るようにしているので、センサターゲットとは別に磁性部を設ける必要がなく、コストの低減および軽量化を図ることができる。センサターゲットは、貫通孔の周囲に配置されており、変位センサは、回転軸の延長線上から外れた位置に配置されているので、センサターゲットおよび変位センサが貫通孔を流れる流体の流れを妨げることを抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記の構成によって、スラスト軸支持コイルに付与する電流を小さく抑えつつ、スラスト軸支持力をより大きくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る流体移送装置の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の実施形態では、本発明に係る「流体移送装置」が液体を移送する遠心ポンプに適用されている。
【0020】
図1は、実施形態に係る遠心ポンプ10の全体構成を示す断面図であり、
図2は、遠心ポンプ10の主要部の構成を示す斜視図である。
図3は、ラジアル軸支持力Fβの発生原理を示す図である。
【0021】
図1に示すように、遠心ポンプ10は、ハウジング12と、回転部14と、インペラ16と、モータ部18と、第1ラジアル軸支持部20と、第2ラジアル軸支持部22と、第1スラスト軸支持部23と、第2スラスト軸支持部24と、スラスト軸支持コイル26と、第3スラスト軸支持部28とを備えている。また、遠心ポンプ10は、モータ部18、第1ラジアル軸支持部20、第2ラジアル軸支持部22およびスラスト軸支持コイル26のそれぞれに電流を供給する電源部29と、電源部29を制御する制御部30とを備えている。
【0022】
図1に示すように、ハウジング12は、略有底円筒状のモーターハウジング32と、略円錐状のポンプハウジング34とを有しており、モーターハウジング32の開口部にポンプハウジング34の基端部が接続されている。ポンプハウジング34の軸方向端部には、吸込み口34aが形成されており、ポンプハウジング34の側部には、吐出口34bが形成されている。吸込み口34aと吐出口34bとは、ポンプハウジング34の内部空間を介して連通されている。
【0023】
回転部14は、ハウジング12の内部に略水平方向に延びて配置され、その回転軸Lを中心に回転される部分であり、モーターハウジング32の軸方向長さとほぼ同じ長さを有する略棒状またはパイプ状の軸部36を有している。回転部14およびインペラ16の中心部(すなわち軸部36の中心部)には、ハウジング12の内部で流体を循環させるための貫通孔15が軸方向に延びて形成されている。
【0024】
インペラ16は、液体を移送する移送力を液体に作用させる「作用部」として機能する部分であり、回転部14の軸方向端部に取り付けられた状態で、ポンプハウジング34の内部に配置されている。回転部14の回転に伴ってインペラ16が回転されると、ポンプハウジング34の内部の液体に遠心力が作用し、当該液体がインペラ16の中心部から径方向の外側に向けて移送され、その後、吐出口34bから排出される。これにより、ポンプハウジング34の内部空間における吸込み口34aの近傍部分が負圧となり、当該負圧によって吸込み口34aからポンプハウジング34に新たな液体が取り込まれる。
図1では、白抜き矢印が液体の流れを示している。
【0025】
インペラ16が回転されたとき、インペラ16には、上記負圧によって吸込み口34a側に向かう外力が作用する。このとき、当該外力は、スラスト軸支持部23,24,28等で生じる逆方向のスラスト軸支持力Fγ(Fγ=F1p+F2p+F2a+F3p、
図2)によって相殺されるので、インペラ16がポンプハウジング34の内面に接触することはない。なお、本実施形態では、説明の便宜上、スラスト軸支持力Fγの方向をスラスト方向γ、スラスト方向γに対して直交する上下方向を鉛直ラジアル方向β、スラスト方向γに対して直交する水平方向を水平ラジアル方向αとしている。また、
図1における右方向を正のスラスト方向γ、左方向を負のスラスト方向γとし、
図1における上方向を正の鉛直ラジアル方向β、下方向を負の鉛直ラジアル方向βとし、
図1における手前方向を正の水平ラジアル方向α、奥行方向を負の水平ラジアル方向αとしている。
【0026】
図1に示すように、モータ部18は、回転部14に回転力を付与する部分であり、ハウジング12に設けられた固定子40と回転軸Lに対して直交方向において固定子40から離間して回転部14に設けられた回転子42とを有している。固定子40は、鉄等の磁性体からなる固定磁性部44と、固定磁性部44に巻回された電動機巻線46とを有しており、電動機巻線46が電源部29に対して電気的に接続されている。一方、回転子42は、回転軸Lの周囲に配置された複数の永久磁石48を有している。モータ部18は、回転部14の軸方向中央部に配置されており、モータ部18を挟んだ軸方向両側に、第1ラジアル軸支持部20および第2ラジアル軸支持部22が配置されている。
【0027】
図1に示すように、第1ラジアル軸支持部20は、回転軸Lに対して直交する2軸(すなわち鉛直ラジアル方向βおよび水平ラジアル方向α)において回転部14を非接触で支持する部分であり、モータ部18から負のスラスト方向γ(すなわちインペラ16側)に離間して配置されている。第1ラジアル軸支持部20は、ハウジング12に設けられた固定子50と、回転軸Lに対して直交方向において固定子50から離間して回転部14に設けられた回転子52とを有している。固定子50は、鉄等の磁性体からなる2つの固定磁性部54,56と、一方の固定磁性部54に巻回されたラジアル軸支持巻線58と、2つの固定磁性部54,56の両方に異なる磁極で接続された永久磁石60とを有している。本実施形態では、永久磁石60のS極が一方の固定磁性部54に接続されており、N極が他方の固定磁性部56に接続されている。そして、ラジアル軸支持巻線58が電源部29に対して電気的に接続されている。一方、回転子52は、2つの固定磁性部54,56に対してギャップを隔てて対向する鉄等の磁性体からなる2つの回転磁性部62,64と、2つの回転磁性部62,64の両方に異なる磁極で接続された永久磁石66とを有している。本実施形態では、永久磁石66のN極が一方の回転磁性部62に接続されており、S極が他方の回転磁性部64に接続されている。
【0028】
図1に示すように、2つの永久磁石60,66は、固定子50と回転子52との間に放射状のバイアス磁束Ψs1を生じさせるように回転軸Lの周囲に配置されており、ラジアル軸支持巻線58は、放射状のバイアス磁束Ψs1(
図3)の所定の第1部分にラジアル軸支持磁束Ψs2β,Ψs2α(
図3)を重畳させ、かつ、回転軸Lを挟んで第1部分の反対側に位置する第2部分をラジアル軸支持磁束Ψs2β,Ψs2α(
図3)で相殺するように配置されている。
図3に示すように、ラジアル軸支持巻線58に直流電流を付与して2極のラジアル軸支持磁束Ψs2βを発生させると、放射状のバイアス磁束Ψs1の上部にラジアル軸支持磁束Ψs2βが重畳され、かつ、放射状のバイアス磁束Ψs1の下部がラジアル軸支持磁束Ψs2βで相殺される。つまり、鉛直ラジアル方向βにおいては、放射状のバイアス磁束Ψs1の上部が、磁束が密となる「第1部分」となり、下部が、磁束が疎となる「第2部分」となる。これにより、正の鉛直ラジアル方向β(上方向)のラジアル軸支持力Fβが回転部14に作用する。一方、水平ラジアル方向αにおいては、他のラジアル軸支持巻線58が発生させる2極のラジアル軸支持磁束Ψs2αによって、正の水平ラジアル方向αのラジアル軸支持力が回転部14に作用する。
【0029】
図1に示すように、第1ラジアル軸支持部20の近傍に位置する回転部14の軸方向端部には、鉄等の磁性体からなる略円筒状のセンサターゲット67が回転軸Lを中心として設けられている。一方、ハウジング12には、鉛直ラジアル方向βにおけるセンサターゲット67の変位を検知する変位センサ68がセンサターゲット67の上部に対向して設けられている。そして、変位センサ68が制御部30に対して電気的に接続されている。したがって、変位センサ68でセンサターゲット67の変位を検知することによって、鉛直ラジアル方向βにおける回転部14の変位を検知することが可能である。制御部30は、回転部14の変位が所定値となるように、電源部29の動作を制御してラジアル軸支持巻線58に付与される直流電流の大きさを制御する。
【0030】
図4に示すように、固定子50の固定磁性部56は、それに対応する回転子52の回転磁性部64よりも正のスラスト方向γにずれて配置されている。したがって、固定磁性部56と回転磁性部64とを流れるバイアス磁束Ψs1は、これらの間のギャップGを回転軸L(
図2)に直交する方向に対して傾斜して流れ、これにより、正のスラスト方向γの受動的な第1スラスト軸支持力F1p(
図2)が回転部14に作用する。つまり、本実施形態では、ハウジング12に設けられた永久磁石60(すなわち第3永久磁石)と、回転部14に設けられた永久磁石66(すなわち第4永久磁石)と、固定磁性部56と、回転磁性部64とによって第1スラスト軸支持部23が構成されている。そして、永久磁石60と永久磁石66との間(すなわち第3永久磁石と第4永久磁石との間)に生じるバイアス磁束Ψs1によって、インペラ16(
図1)に作用する外力の方向とは反対の方向の第1スラスト軸支持力F1p(
図2)が回転部14に作用する。
【0031】
図1に示すように、第2ラジアル軸支持部22は、回転軸Lに対して直交する2軸(すなわち鉛直ラジアル方向βおよび水平ラジアル方向α)において回転部14を非接触で支持する部分であり、モータ部18から正のスラスト方向γに離間して、第2スラスト軸支持部24と一体的に設けられている。第2ラジアル軸支持部22は、ハウジング12に設けられた固定子70と、回転軸Lに対して直交方向において固定子70から離間して回転部14に設けられた回転子72とを有している。固定子70は、スラスト方向γにおいて互いに間隔を隔てて配置された鉄等の磁性体からなる2つの固定磁性部74,76と、一方の固定磁性部74に巻回されたラジアル軸支持巻線78と、2つの固定磁性部74,76の両方に異なる磁極で接続された永久磁石80とを有している。本実施形態では、永久磁石80のS極が一方の固定磁性部74に接続されており、N極が他方の固定磁性部76に接続されている。そして、ラジアル軸支持巻線78が電源部29に対して電気的に接続されている。一方、回転子72は、固定磁性部74に対してギャップを隔てて対向する鉄等の磁性体からなる回転磁性部82と、回転磁性部82に接続された永久磁石84とを有している。本実施形態では、永久磁石84のN極が回転磁性部82に接続されており、S極が固定磁性部76に対してギャップを隔てて対向している。
【0032】
永久磁石80,84は、固定子70と回転子72との間に放射状のバイアス磁束Ψs2(
図2)を生じさせるように回転軸Lの周囲に配置されており、ラジアル軸支持巻線78は、放射状のバイアス磁束Ψs2(
図2)の所定の第1部分にラジアル軸支持磁束(すなわち第3磁束。以下、同じ。)を重畳させ、かつ、回転軸Lを挟んで第1部分の反対側に位置する第2部分をラジアル軸支持磁束で相殺するように配置されている。第2ラジアル軸支持部22におけるラジアル軸支持力Fβの発生原理は、第1ラジアル軸支持部20におけるラジアル軸支持力Fβの発生原理と同様である(
図3)。鉛直ラジアル方向βにおいては、放射状のバイアス磁束Ψs2(
図2)の上部が磁束が密となる「第1部分」となり、下部が、磁束が疎となる「第2部分」となる。これにより、正の鉛直ラジアル方向β(上方向)のラジアル軸支持力Fβが回転部14に作用する。一方、水平ラジアル方向αにおいては、他のラジアル軸支持巻線58が発生させる2極のラジアル軸支持磁束によって、正の水平ラジアル方向αのラジアル軸支持力が回転部14に作用する。
【0033】
図1に示すように、第2ラジアル軸支持部22の近傍に位置する回転部14の軸方向端部には、鉄等の磁性体からなる略円筒状のセンサターゲット87が、回転軸Lを中心として貫通孔15の周囲に配置されている。一方、ハウジング12には、鉛直ラジアル方向βにおけるセンサターゲット87の鉛直ラジアル方向βの変位を検知する変位センサ88がセンサターゲット87の上部に対向して設けられている。そして、変位センサ88が制御部30に対して電気的に接続されている。したがって、変位センサ88でセンサターゲット87の変位を検知することによって、鉛直ラジアル方向βにおける回転部14の変位を検知することが可能である。制御部30は、回転部14の変位が所定値となるように、電源部29の動作を制御してラジアル軸支持巻線78に付与される直流電流の大きさを制御する。
【0034】
図1に示すように、第2スラスト軸支持部24は、「作用部」としてのインペラ16に作用する外力の方向とは反対の方向(正のスラスト方向γ)の第2スラスト軸支持力F2p(
図2)を回転部14に作用させる部分であり、ハウジング12に設けられた永久磁石80(すなわち第1永久磁石)、磁束分流部90、固定磁性部76および固定磁性部92と、回転部14に設けられた永久磁石84(すなわち第2永久磁石)および回転磁性部94とを有している。第2スラスト軸支持部24においては、説明の便宜上、ハウジング12に設けられた永久磁石80を「第1永久磁石80」と称し、回転部14に設けられた永久磁石84を「第2永久磁石84」と称する。また、一方の固定磁性部76を「第1固定磁性部76」と称し、他方の固定磁性部92を「第2固定磁性部92」と称する。そして、「バイアス磁束Ψs2」を「第1磁束Ψs2」と称する。
【0035】
図2に示すように、第1永久磁石80および第2永久磁石84は、第2スラスト軸支持力F2pを発生させるための第1磁束Ψs2を生じさせるものであり、磁束分流部90は第1永久磁石80のN極から与えられた第1磁束Ψs2の流れを2つに分流させる部分である。第1固定磁性部76は分流された一方の第1磁束Ψs2を回転磁性部94に導く部分であり、第2固定磁性部92は分流された他方の第1磁束Ψs2を回転磁性部94に導く部分である。回転磁性部94は、第1固定磁性部76および第2固定磁性部92のそれぞれから与えられた第1磁束Ψs2を合流させて第2永久磁石84のS極に導く部分である。磁束分流部90、第1固定磁性部76、第2固定磁性部92および回転磁性部94のそれぞれは、鉄等の磁性体によって形成されている。
【0036】
図1に示すように、第1固定磁性部76および第2固定磁性部92は、回転軸Lに対して平行方向に間隔を隔てて配置されており、第1固定磁性部76と第2固定磁性部92とは、回転軸Lに対して直交する方向における回転軸Lから離間した側の端部において磁束分流部90を介して連結されている。したがって、第1固定磁性部76、第2固定磁性部92および磁束分流部90の全体の断面形状は、回転軸L側に開いた略溝形(略コ字形)である。そして、第1永久磁石80のN極が第1固定磁性部76に接続されており、第2永久磁石84のS極が回転磁性部94に接続されている。本実施形態では、回転軸Lに対して平行方向における第1固定磁性部76と第2固定磁性部92との中間位置に回転磁性部94が配置されており、第1永久磁石80から第1固定磁性部76を経て回転磁性部94に至る第1磁路R1の長さが、第1永久磁石80から磁束分流部90および第2固定磁性部92を経て回転磁性部94に至る第2磁路R2の長さよりも短くされている。これにより第1磁路R1の磁気抵抗が第2磁路R2の磁気抵抗よりも小さくなっている。したがって、第1固定磁性部76における第1磁束Ψs2の磁束密度は、第2固定磁性部92における第1磁束Ψs2の磁束密度よりも大きくなっており、磁束密度が疎の部分から密の部分に向かう方向、すなわち正のスラスト方向γの受動的な第2スラスト軸支持力F2p(
図2)が回転部14に作用する。なお、磁気抵抗は、磁路R1,R2の断面積や透磁率を変えることによって適宜調整されてもよい。
【0037】
図2に示すように、スラスト軸支持コイル26は、第1磁束Ψs2に重畳させる第2磁束Ψtγ(すなわちスラスト軸支持磁束)を生じさせるものであり、第1固定磁性部76および第2固定磁性部92のいずれか一方を流れる第1磁束Ψs2に第2磁束Ψtγを重畳可能なように、回転軸Lの周囲に巻回された状態で第1固定磁性部76と第2固定磁性部92との間に配置されている。そして、スラスト軸支持コイル26が電源部29に対して電気的に接続されている。スラスト軸支持コイル26に直流電流を付与すると、直流電流の方向に応じて、第1固定磁性部76および第2固定磁性部92のいずれか一方を流れる第1磁束Ψs2に第2磁束Ψtγが重畳される。
【0038】
図5(A)に示すように、第1固定磁性部76を流れる第1磁束Ψs2に第2磁束Ψtγが重畳されると、第2固定磁性部92を流れる第1磁束Ψs2が第2磁束Ψtγで相殺される。すると、第1固定磁性部76における磁束の磁束密度と第2固定磁性部92における磁束の磁束密度との差が大きくなり、正のスラスト方向γの第2スラスト軸支持力F2p(
図2)に対して同じ方向の能動的なスラスト軸支持力F2a(
図2)が加算される。一方、
図5(B)に示すように、第2固定磁性部92を流れる第1磁束Ψs2に第2磁束Ψtγが重畳されると、第1固定磁性部76を流れる第1磁束Ψs2が第2磁束Ψtγで相殺される。すると、第1固定磁性部76における磁束の磁束密度と第2固定磁性部92における磁束の磁束密度との差が小さくなり、或いは、第2固定磁性部92における磁束の磁束密度が第1固定磁性部76における磁束の磁束密度より大きくなる。これにより、第2スラスト軸支持力F2p(
図2)に加算されるスラスト軸支持力F2a(
図2)が小さくなり、或いは、第2スラスト軸支持力F2p(
図2)に加算されるスラスト軸支持力F2a(
図2)が負の値となる。
図2に示すように、通常運転では、第1固定磁性部76を流れる第1磁束Ψs2に第2磁束Ψtγが重畳され、正のスラスト方向γの第2スラスト軸支持力F2pに対して同じ方向のスラスト軸支持力F2aが加算され、より大きなスラスト軸支持力F2p+F2aが得られる。
【0039】
図1に示すように、第3スラスト軸支持部28は、「作用部」としてのインペラ16に作用する外力の方向とは反対の方向(正のスラスト方向γ)の第3スラスト軸支持力F3p(
図2)を回転部14に作用させる部分であり、正のスラスト方向γにおけるハウジング12の端部に設けられた固定部100を備えている。固定部100は、その中心軸が回転軸Lと一致する鉄等の磁性体からなる略円盤状の固定磁性部102と、固定磁性部102におけるセンサターゲット87に対向する面の中央部に設けられた略円盤状の永久磁石104(すなわち第5永久磁石)と、当該面の外周部に設けられた略円環状の永久磁石106(すなわち第5永久磁石)とを有している。本実施形態では、永久磁石104のN極が固定磁性部102に接続されており、永久磁石106のS極が固定磁性部102に接続されている。そして、
図6に示すように、永久磁石104,106(すなわち第5永久磁石)で発生した磁束Ψs3がセンサターゲット87に作用し、これにより正のスラスト方向γの第3スラスト軸支持力F3p(
図2)が回転部14に作用する。
【0040】
図1に示すように、センサターゲット87の端面87aは、回転軸Lに対して直交して配置されており、一つの磁気回路を形成する2つの永久磁石104,106の間には、スラスト方向γにおけるセンサターゲット87の変位を検知する変位センサ108がセンサターゲット87の端面87aに対向して、回転軸Lの延長線上から外れた位置に配置されている。そして、変位センサ108が制御部30に対して電気的に接続されている。したがって、変位センサ108でセンサターゲット87の変位を検知することによって、スラスト方向γにおける回転部14の変位を検知することが可能である。制御部30は、回転部14の変位が所定値となるように、電源部29の動作を制御してスラスト軸支持コイル26に付与する直流電流の方向および大きさを制御する。
【0041】
第1ラジアル軸支持部20におけるバイアス磁束Ψs1(
図2)の磁路および第2ラジアル軸支持部22におけるバイアス磁束Ψs2(
図2)の磁路のそれぞれの断面積は、これらの磁路が常に磁気飽和を起こすように小さめに設計されている。したがって、回転部14の位置がスラスト方向γにおいて変動した場合でも、第1ラジアル軸支持部20のバイアス磁束Ψs1(
図2)および第2ラジアル軸支持部22のバイアス磁束Ψs2(
図2)の両方について、磁束密度の変動を抑制することが可能であり、ラジアル軸支持力Fβを安定させることができる。
図1に示すように、回転部14に設けられた各種の部品およびハウジング12に設けられた各種の部品は、フッ素樹脂等からなる耐薬品性の被覆層110によって被覆されている。
【0042】
本実施形態によれば、上記構成により、以下の効果を奏することができる。すなわち、
図2に示すように、スラスト軸支持コイル26が生じさせる第2磁束Ψtγを第1磁束Ψs2に重畳させることによって、受動的な第2スラスト軸支持力F2pに能動的なスラスト軸支持力F2aを加算することが可能であり、これにより、第2スラスト軸支持力F2pよりもさらに大きなスラスト軸支持力F2p+F2aを簡単に得ることができる。
【0043】
スラスト軸支持コイル26に付与される直流電流の大きさを制御部30(
図1)で制御して第2磁束Ψtγ(
図2)の大きさを調整することによって、スラスト軸支持力F2p+F2a(
図2)の大きさを適宜調整することができる。
【0044】
図2に示すように、第1スラスト軸支持部23において正のスラスト方向γの受動的な第1スラスト軸支持力F1pを得ることができ、第2スラスト軸支持部24およびスラスト軸支持コイル26において正のスラスト方向γの受動的な第2スラスト軸支持力F2pと能動的なスラスト軸支持力F2aとを得ることができ、第3スラスト軸支持部28において正のスラスト方向γの受動的な第3スラスト軸支持力F3pを得ることができるので、全体として十分な大きさ(本実施形態では718N以上)のスラスト軸支持力Fγ(Fγ=F1p+F2p+F2a+F3p)を簡単に得ることができる。
【0045】
図1に示すように、第2スラスト軸支持部24と第2ラジアル軸支持部22との間で永久磁石80,84を共有しており、鉛直ラジアル方向βの変位センサ88とスラスト方向γの変位センサ108との間でセンサターゲット87を共有しているので、部品点数を削減してコストを低減することができる。
【0046】
図1に示すように、センサターゲット87は、貫通孔15の周囲に配置されており、変位センサ108は、回転軸Lの延長線上から外れた位置に配置されているので、センサターゲット87および変位センサ108が貫通孔15を流れる流体の流れを妨げることがない。これにより、ハウジング12の内部における流体の循環を促すことができ、回転部14の軸方向両側における圧力差を小さくすることができる。
【0047】
図1に示すように、スラスト方向γにおけるモータ部18を挟んだ両側に第1ラジアル軸支持部20および第2ラジアル軸支持部22が離れて配置されているので、ラジアル位置制御のロバスト性を向上することができる。
【0048】
なお、上述の実施形態では、本発明が液体を移送する遠心ポンプに適用されているが、他の実施形態では、気体を移送する送風機等に適用されてもよい。
【0049】
また、上述の実施形態では、「作用部」としてのインペラ16に負のスラスト方向γの外力が作用しているが、他の実施形態では、インペラ等に正のスラスト方向γの外力が作用してもよく、この場合には、当該外力を、スラスト軸支持部23,24,28等で生じる負のスラスト方向γのスラスト軸支持力Fγ(Fγ=F1p+F2p+F2a+F3p)によって相殺してもよい。