特許第5979778号(P5979778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5979778エポキシ樹脂硬化性組成物及びその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979778
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂硬化性組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/28 20060101AFI20160818BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   C08G59/28
   C08L63/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-64779(P2012-64779)
(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公開番号】特開2013-194193(P2013-194193A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089406
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 宏
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一彦
(72)【発明者】
【氏名】朝蔭 秀安
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−235919(JP,A)
【文献】 特開平01−108219(JP,A)
【文献】 特開平02−047129(JP,A)
【文献】 特開平04−339818(JP,A)
【文献】 特開昭63−174981(JP,A)
【文献】 特開昭63−243124(JP,A)
【文献】 特開2005−314512(JP,A)
【文献】 特開2007−056089(JP,A)
【文献】 特開2010−095727(JP,A)
【文献】 特開2000−044651(JP,A)
【文献】 小椋一郎,エポキシ樹脂の化学構造と特性の関係,DIC Technical Review,2001年,No.7,p1-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08L 63/00−63/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)と硬化剤とを包含する硬化性エポキシ樹脂組成物であって、該エポキシ樹脂(A)は、エポキシ樹脂(a)とエポキシ樹脂(b)とを含み、エポキシ樹脂(A)の水酸基含有量は70meq/100g以下であり、該エポキシ樹脂(a)は、全塩素含有量が0.3質量%以下であり、水酸基含有量が160meq/100g以下であり、芳香族3級アミノ基を含有し、前記エポキシ樹脂(b)は、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有することを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
エポキシ樹脂(A)は、25℃の粘度が6000mPa・s以下の液状である請求項1に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物
【請求項3】
エポキシ樹脂(A)のエポキシ基1当量に対して、硬化剤の官能基が0.3〜1.5当量となる範囲で硬化剤を配合してなる請求項1または請求項2に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として半導体封止材用途をはじめとした電気絶縁材料等の電気電子産業用に好適な、低粘度で、耐熱性の高い、芳香族3級アミノ基を含有するエポキシ樹脂を必須成分として配合してなる硬化性エポキシ樹脂組成物、ならびにその硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は液状から固形まで様々なものがあり、またエポキシ樹脂は硬化剤との反応性に優れていることから取り扱い易く、硬化剤により架橋させた場合に大きな架橋密度を有する硬化樹脂となり、優れた耐熱性、耐湿性、耐薬品性、電気特性等を示すものであり電気・電子分野に多く使用されている。
【0003】
エポキシ樹脂は工業的に幅広い用途で使用されてきているが、その要求性能は近年ますます高度化している。例えば、エポキシ樹脂を主剤とする樹脂組成物の代表的分野に半導体封止材料があるが、近年、半導体素子の集積度の向上に伴い、パッケージサイズが大面積化、薄型化に向かうとともに、実装方式も表面実装化への移行が進展しており、より半田耐熱性に優れた材料の開発が望まれている。
【0004】
また最近では、高集積化、高密度実装化の技術動向により、従来の金型を利用したトランスファー成形によるパッケージに変わり、ハイブリッドIC、チップオンボード、テープキャリアパッケージ、プラスチックピングリッドアレイ、プラスチックボールグリッドアレイ等、金型を使用しないで液状材料を用いて封止し、実装する方式が増えてきている。しかし、一般に液状材料はトランスファー成形に用いる固形材料に比べて耐熱性が低い欠点がある。耐熱性が高い液状エポキシ樹脂として芳香族3級アミノ基を含有するアミン系エポキシ樹脂がある。しかしながら、アミン系エポキシ樹脂は一般的に、塩素含有量が高く、硬化剤を配合した後のポットライフ(可使時間)が短い、という欠点があった。
【0005】
特許文献1には、ジアミノジフェニルメタンのオルソ位にエチル基が1個ずつ導入された構造の化合物のアミノ基を、テトラグリシジル化して得られる芳香族3級アミノ基を含有するエポキシ樹脂が開示されているが、ベンゼン環にアルキル基を導入することにより液状化するものであり、硬化物はガラス転移点が低下し易いという課題があった。
【0006】
特許文献2には、不純物としての加水分解性塩素含有率が1000ppm以下であることを特徴とするグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂が記載されており、各種のアミノフェノール類を公知の方法でエポキシ化できることが開示されているが、得られるエポキシ樹脂の粘度が高くなるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−001525号公報
【特許文献2】特開2000−044651号公報
【0008】
これらの問題点を克服するため、各種骨格のエポキシ樹脂が報告されているが、高い耐熱性と長いポットライフを両立できるエポキシ樹脂は存在しなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、上記の目的を達成しようと鋭意研究を重ねた結果、アミン系エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂類は、高分子成分の側鎖および不純物基に存在するアルコール性水酸基等によって、硬化剤との反応が促進されること見出し、塩素含有率と水酸基含有率とを所定量以下とすることにより、ポットライフと硬化物物性とを高い領域で両立できる本発明を完成させたものであり、本発明の目的は、アミン系エポキシ樹脂を含有するものでありながら長いポットライフを有し、かつ耐熱性、耐湿性に優れた硬化物を与える、硬化性エポキシ樹脂組成物、ならびにその硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)エポキシ樹脂(A)と硬化剤とを包含する硬化性エポキシ樹脂組成物であって、該エポキシ樹脂(A)は、エポキシ樹脂(a)とエポキシ樹脂(b)とを含み、エポキシ樹脂(A)の水酸基含有量は70meq/100g以下であり、該エポキシ樹脂(a)は、全塩素含有量が0.3質量%以下であり、水酸基含有量が160meq/100g以下であり、芳香族3級アミノ基を含有し、前記エポキシ樹脂(b)は、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有することを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物。
(2)エポキシ樹脂(A)は、25℃の粘度が6000mPa・s以下の液状である請求項1に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物
(3)エポキシ樹脂(A)のエポキシ基1当量に対して、硬化剤の官能基が0.3〜1.5当量となる範囲で硬化剤を配合してなる請求項1または請求項2に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物
(4)請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物、
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の、エポキシ樹脂(A)を用いた硬化性エポキシ樹脂組成物は低塩素で水酸基含有量が低いためアミン系エポキシ樹脂を含有するものでありながらポットライフが長い。また、エポキシ樹脂(A)を含有する硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物は、耐熱性、耐湿性に優れた性能を有するため、重防食塗料、粉体塗料、PCM塗料、缶塗料等の塗料用途や土木・建設用途、接着用途、電気絶縁用、半導体チップ仮止剤等の電気・電子部品用途及びプリント配線板や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を始めとする各種複合材料用途等に適し、特に、プリント配線板、半導体封止等の電気・電子分野の絶縁材料等に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について詳細に述べる。
【0013】
本発明で用いるエポキシ樹脂(a)の全塩素量は0.3質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下である。全塩素量が0.3%質量を超えると塩基性の硬化促進剤を用いた組成物の場合、硬化反応が阻害され、その結果硬化物の物性が低下する。また絶縁信頼性の低下が起こり、電気・電子分野での用途に好ましくない。
【0014】
本発明で用いるエポキシ樹脂(a)の水酸基含有量は160meq/100g以下であり、好ましくは150meq/100g以下である。水酸基含有量が160meq/100gを超えると硬化剤と混合したときのポットライフが短くなる。
【0015】
本発明で用いるエポキシ樹脂(a)の好ましい含有量はエポキシ樹脂(A)全体に対して5質量%以上であり、好ましくは20〜80質量%、望ましくは25〜50質量%である。5質量%以下であると、耐熱性の向上の効果が十分ではなく、80質量%以上では場合によりポットライフに悪い影響を与えることがある。
【0016】
本発明のエポキシ樹脂(a)と1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(b)とを含有するエポキシ樹脂(A)の水酸基含有量は70meq/100g以下であり、好ましい水酸基含有量は60meq/100g以下である。70eq/100gを超えると硬化剤と混合したときのポットライフが短くなる。好ましい水酸基含有量は60meq/100g以下である。
エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は90g/eq以上、500g/eq以下であることがこのましく、より好ましくは100g/eq以上、400g/eq以下である。
【0017】
本発明で用いるエポキシ樹脂(a)は、芳香族3級アミノ基を含有するエポキシ樹脂であり、このようなエポキシ樹脂としては、ジアミノジフェニルメタンのエポキシ樹脂(芳香環がアルキル基で置換されていないもの)、パラアミノフェノールのエポキシ樹脂等が挙げられるが、一般的に市販されているこれらのエポキシ樹脂は塩素含有量や水酸基含有量が高い。
エポキシ樹脂(a)のエポキシ当量は80g/eq以上、300g/eq以下であることが好ましく、より好ましくは90g/eq以上、250g/eq以下である。
【0018】
塩素含有量、水酸基含有量が本発明の所定量となる芳香族3級アミノ基を含有するエポキシ樹脂(a)を得るためには、YH−434(ジアミノジフェニルメタンのエポキシ樹脂)、JER−630(パラアミノフノールのエポキシ樹脂)等の芳香族3級アミノ基を含有するエポキシ樹脂に残存する全ハロゲン量に対して、1〜30倍量のアルカリ金属水酸化物を加え、60〜90℃の温度で10分〜2時間精製反応を行なった後、中和、水洗等の方法で過剰のアルカリ金属水酸化物や副生塩を除去し、さらに溶媒を減圧留去することで低塩素化することができ、不純物基に含有されるアルコール性水酸基を低減することができる。
【0019】
さらに得られた樹脂を、トルエン、ヘキサン等の溶媒に溶解して、不溶部分を分液で除去することにより、ペンダントのアルコール性水酸基を含有する高分子成分が除去され、アルコール性水酸基含有量が低い芳香族3級アミノ基を含有するエポキシ樹脂を得ることができる。尚、本発明でいう水酸基とは、アルコール性水酸基に限らず、フェニルイソシアネートと反応する水酸基を示す。
【0020】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(a)に、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(b)及び硬化剤を配合することができる。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂(a)を必須成分とする場合の硬化剤としては、一般にエポキシ樹脂の硬化剤として知られているものはすべて使用できる。例えば、ジシアンジアミド、多価フェノール類、酸無水物類、芳香族及び脂肪族アミン類等がある。特に好ましい硬化剤はジシアンジアミド及び芳香族アミン類である。
【0022】
具体的に例示すれば、多価フェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価のフェノール類、あるいは、トリス−(4−ヒドロキジフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキジフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、ナフトールノボラック、ポリビニルフェノール等に代表される3価以上のフェノール類がある。更には、フェノール類、ナフトール類または、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−キシリレングリコール等の縮合剤とから合成される多価フェノール性化合物等がある。
【0023】
酸無水物としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチル無水ハイミック酸、無水ナジック酸、無水トリメリット酸等がある。
【0024】
アミン類としては、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン等の芳香族アミン類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族アミン類がある。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物には、これら硬化剤の1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
また、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物に用いることができる1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(b)としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン等の2価のフェノール類、あるいは、トリス−(4−ヒドロキジフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキジフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック等の3価以上のフェノール類、またはテトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類から誘導されるグリシジルエーテル化物等、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等アルコール類のポリグリシジルエーテル類等、ジアミノジフェニルメタン等のポリグリシジルアミン類等、脂環式エポキシ樹脂等がある。これらのエポキシ樹脂は、1種または2種以上を混合して用いることができる。特には、分子蒸留型として市販されているビスフェノールA型エポキシ樹脂またはビスフェノールF型エポキシ樹脂は高分子成分が除去されているために水酸基含有量が極めて低く、エポキシ樹脂(b)として好ましい。
【0026】
また、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物中には、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、石油樹脂、インデンクマロン樹脂、フェノキシ樹脂等のオリゴマーまたは高分子化合物を適宜配合してもよいし、無機充填剤、顔料、難燃剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、流動性向上剤等の添加剤を配合してもよい。無機充填剤としては、例えば、球状あるいは、破砕状の溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ粉末、アルミナ粉末、ガラス粉末、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、アルミナまたは水和アルミナ等が挙げられる。顔料としては、有機系または無機系の体質顔料、鱗片状顔料等がある。チクソ性付与剤としては、シリコン系、ヒマシ油系、脂肪族アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス、有機ベントナイト系等を挙げることができる。また更に必要に応じて、本発明の樹脂組成物には、カルナバワックス、OPワックス等の離型剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤、カーボンブラック等の着色剤、三酸化アンチモン等の難燃剤、シリコンオイル等の低応力化剤、ステアリン酸カルシウム等の滑剤等を使用できる。
【0027】
更に、必要に応じて本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物には、公知の硬化促進剤を用いることができる。例を挙げれば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−メチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン等のイミダゾリン類、イミダゾール化合物のトリアジン塩、シアノエチル塩、シアノエチルトリメリット酸塩などの各種塩類、酢酸亜鉛、酢酸ナトリウムなどの金属系化合物類、テトラエチルアンモニウムクロリドなどの第4級アンモニウム塩類、アミド化合物類、トリフェニルホスフィン等の有機リン化合物類などを挙げることができる。これら硬化促進剤の配合割合は、本発明で用いるエポキシ樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜5重量部、より好ましくは0.1〜2重量部である。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂硬化物は、上記の硬化性エポキシ樹脂組成物を加熱することにより得ることができる。硬化物を得るための方法としては注型、注入、ポッティング、ディッピング、ドリップコーティング、トランスファー成形、圧縮成形等が好適に用いられ、その際の温度としては通常、100℃〜300℃の範囲である。
【実施例】
【0029】
以下に本発明の実施例および比較例を挙げ詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお例中の部は質量部、%は質量%を意味する。また、物性値は次の方法により測定した。
エポキシ当量はJIS K 7236の規定に従い測定した。
全塩素量はJIS K 7243−3の規定に従い測定した。
25℃粘度は、JIS K-7233、単一円筒回転粘度計法により測定した。
50℃粘度は、ICI粘度計により測定した。
水酸基含有量は、水酸基にジブチルスズマレートを触媒としてフェニルイソシアネートを反応させ、過剰のフェニルイソシアネートをジブチルアミンにて反応させた。その後、過塩素酸溶液にてジブチルアミンを滴定し、その滴定量から求めた。
実施例1
【0030】
撹拌噐、温度計、窒素ガス導入装置、滴下装置、冷却管及び油水分離装置を備えた内容量1.5LのガラスフラスコにYH−434(ジアミノジフェニルメタングリシジルエーテル、新日鐵化学(株)製)300部、トルエン200部を仕込み、窒素ガスを流しながら80℃まで加熱して溶解した。49%水酸化ナトリウム20.9部を投入し同温度で6時間反応を行った後トルエン150部に溶解した。その後温水50部を加えて攪拌、分液し樹脂溶液を脱水濾過、トルエンを蒸留して除去した。さらにトルエン120部、ヘキサン120部で溶解して60℃まで加熱して溶解したのち分液により、下層成分を除去した。その後上層のトルエン、ヘキサンを蒸留して除去して120部のエポキシ樹脂Aを得た。樹脂のエポキシ当量は110g/eq、水酸基含有量140meq/100g、粘度2650mPa・s/50℃、全塩素0.16%であった。得られた樹脂の性状を表1に記載した。
実施例2
【0031】
YH−434をJER−630(パラアミノフェノールグリシジルエーテル、三菱化学製)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い123.2部のエポキシ樹脂Bを得た。この樹脂のエポキシ当量は92g/eq、水酸基含有量145meq/100g、粘度700mPa・s/25℃、全塩素0.15%であった。得られた樹脂の性状を表1に記載した。
比較例1
【0032】
YH−434(ジアミノジフェニルメタングリシジルエーテル、新日鐵化学(株)製)をエポキシ樹脂Cとした。樹脂のエポキシ当量は122g/eq、水酸基含有量240meq/100g、粘度11000mPa・s/50℃、全塩素0.42%であった。性状を表1に記載した。
比較例2
【0033】
JER−630(パラアミノフェノールグリシジルエーテル、三菱化学製)をエポキシ樹脂Dとした。この樹脂のエポキシ当量は96g/eq、水酸基含有量235meq/100g、粘度750mPa・s/25℃、全塩素0.56%であった。得られた樹脂の性状を表1に記載した。
【0034】
【表1】
実施例3、4比較例3,4
【0035】
エポキシ樹脂成分として、YDF−8170(分子蒸留タイプビスフェノールFグリシジルエーテル、新日鐵化学(株)製)を70重量部に対してエポキシ樹脂A〜エポキシ樹脂Dを30重量部で配合した。硬化剤として、カヤハードA−A(芳香族アミン、活性水素当量63.5g/eq、日本化薬製)、硬化促進剤として、2E4MZ(四国化成製)を用い、表2に示す配合でエポキシ樹脂組成物を得た。なお、表中の単位の無い数値は配合における重量部を示す。
このエポキシ樹脂組成物を用いて150℃で2時間硬化させて、硬化物試験片を得た後、各種物性測定に供した。結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
(1)硬化物Tgは、熱機械測定装置(セイコー電子社製)を用いて10℃/分の昇温速度で測定した。
(2)吸水率は、直径50 mm、厚さ5 mmの円形の試験片を用いて、23℃、100% RHの条件で24時間吸湿させた後の重量増加変化率とした。
【0038】
表1より本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、低塩素で、低水酸基、低粘度である。 また表2よりポットライフが長く、更に本発明の硬化物は高いTgと低い吸水率を示す。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明による硬化性エポキシ樹脂組成物を用いると、ポットライフが長く、Tgが高く耐湿性優れた硬化物が得られる。これは、通常の使用範囲において必要十分な耐熱性で湿性優れた硬化物が製造可能になり、半導体素子に代表される電気・電子部品等の封止、コーティング材料、積層材料、複合材料等に有用な樹脂組成物が得られ、その技術上の意味に大きなものがある。