(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る起電モジュールを備えた使い捨て着用物品(使い捨ておむつ)の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0013】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0014】
(1)排泄検知システム全体概略構成
図1は、本実施形態に係る排泄検知システム1の全体概略構成図である。
図1に示すように、排泄検知システム1は、使い捨ておむつ10、無線中継局20及び排泄検知サーバ30によって構成される。
【0015】
使い捨ておむつ10は、一般的なオープンタイプ(テープ式)である。使い捨ておむつ10には、尿によって起電力を発生する起電モジュール100と、無線中継局20に向けて無線信号を送信する無線送信モジュール150とが搭載されている。
【0016】
無線送信モジュール150は、所定の無線通信方式に従った無線信号を無線中継局20に向けて送信する。例えば、無線送信モジュール150は、起電モジュール100が尿と接触することで得られる起電力によって排尿があったことを示す無線信号を無線中継局20に向けて送信する。或いは、無線送信モジュール150は、温度センサ(不図示)などを有し、当該センサからの出力データが多重された無線信号を無線中継局20に向けて送信してもよい。
【0017】
排泄検知サーバ30は、無線送信モジュール150から無線信号が送信されたことを示す信号を、無線中継局20を介して受信する。排泄検知サーバ30は、当該信号に基づいて、使い捨ておむつ10の着用者の排泄の有無を検出する。
【0018】
(2)使い捨て着用物品の構成
図2は、使い捨ておむつ10の平面展開図である。
図3は、
図2のF2-F2線に沿った使い捨ておむつ10の断面図である。
【0019】
図2及び
図3に示すように、使い捨ておむつ10は、液透過性のトップシート11、液不透過性のバックシート15、及びトップシート11とバックシート15との間に設けられる吸収体14を備える。本実施形態では、トップシート11と吸収体14との間にセカンドシート12が備えられ、吸収体14は、吸水紙13によって覆われている。また、バックシート15の外側には、バック不織布16が備えられる。
【0020】
さらに、本実施形態では、吸収体14の製品幅方向W外側に一対のギャザー不織布17が備えられる。ギャザー不織布17の自由端部には、製品長手方向Lに沿って弾性部材18が備えられる。
【0021】
なお、使い捨ておむつ10を構成する各部材は特に限定されないが、例えば、以下のような部材を用いることができる。
【0022】
・トップシート11: スルーエア不織布 25g/m
2
・セカンドシート12: スルーエア不織布 25g/m
2
・吸水紙13: ティッシュ(パルプ) 17g/m
2
・吸収体14: パルプ及びSAP(重量比率=50:50) 340g/m
2
・バックシート15: ポリエチレンフィルム 18g/m
2
・バック不織布16: スパンボンド不織布 17g/m
2
・ギャザー不織布17: スパンボンド−メルトブロン−スパンボンド不織布 15g/m
2
・弾性部材18: 糸コ゛ム 620DTEX
【0023】
なお、各部材は、スパイラル状に塗布されたホットメルト接着剤(7g/m
2)によって接合されている。また、セカンドシート12、吸水紙13、バック不織布16、ギャザー不織布17及び弾性部材18は、必ずしも必須ではない。
【0024】
使い捨ておむつ10には、起電モジュール100及び無線送信モジュール150が備えられる。具体的には、起電モジュール100はトップシート11と吸収体14との間、より具体的にはセカンドシート12と吸収体14に配置される。起電モジュール100は、後述するように一対の起電電極を含み、製品幅方向Wの中央部に、製品長手方向Lに沿って配置される。無線送信モジュール150は、起電モジュール100に電気的に接続される。
【0025】
無線送信モジュール150は、起電モジュール100に対して外付けできるように構成されている。具体的には、起電モジュール100の無線送信モジュール150との接続部は、使い捨ておむつ10のバックシート15側より取り出した構造となっており、当該接続部に無線送信モジュール150が接続される。
【0026】
(3)起電モジュール及び無線送信モジュールの構成
次に、
図4及び
図5を参照して、起電モジュール100及び無線送信モジュール150の構成について説明する。
図4は、起電モジュール100及び無線送信モジュール150の機能ブロック構成図である。
図5(a)及び(b)は、起電モジュール100の斜視図及び断面図である。
【0027】
(3.1)起電モジュール
図4及び
図5に示すように、起電モジュール100は、一対の起電電極110及び起電電極120と、基材130とによって構成される。
【0028】
起電電極110及び起電電極120は、イオン化傾向が異なる材料によって構成される電極であり、ボルタの電池の原理を利用し、着用者の排泄物(尿)が接触することによって起電力を発生する。起電電極110及び起電電極120は、長方形状のシート状であり、製品長手方向Lに沿って配置される。
【0029】
基材130には、起電電極110及び起電電極120が設けられる。基材130は、起電電極110と起電電極120との間隔を保持しつつ、起電電極110と起電電極120を支持する。
【0030】
起電モジュール100は、電極面100f及び基材面100rを有する(
図5(b)参照)。電極面100fは、起電電極110及び起電電極120が露出する面である。基材面100rは、基材130が露出する面である。電極面100fは、吸収体14(具体的には吸水紙13で覆われた吸収体14)と面している。つまり、起電電極110及び起電電極120が尿を吸収した吸収体14と安定して接触できるように配慮されている。
【0031】
本実施形態に係る起電電極110、起電電極120及び基材130の仕様は、以下のとおりである。
【0032】
・起電電極110
・MnO2+Cシート(幅4mm)
・基材シート: PET75μm
・MnO2・C配合比率: マンガン粉末/カーボンインク※
・上層: 33.3/66.6%
・下層: 0/100%(2色印刷)
※・カーボンインク組成(カーボン60%、樹脂(ポリエステル系)溶剤40%)
・膜厚
・下層: 約12.5μm
・総厚: 約40μm
・起電電極120
・ALシート(幅4mm)
・膜厚: 50μm
・基材130
・ポリエチレンテレフタラート(PET)
・膜厚: 75μm、200μm、300μmまたは400μm
【0033】
上述したように、基材130は、PETを用いて形成されたシート状の部材であり、本実施形態では、起電電極110及び起電電極120と、基材130とは、アクリル系接着剤を用いて接着されている。なお、起電電極110及び起電電極120は、接着に代えて印刷またはエッチングによって基材130に固定してもよい。
【0034】
起電電極110及び起電電極120の幅(W1及びW2)は、その材質及び厚みにもよるが、使い捨ておむつ10内部に配置する場合、幅が広すぎると使い捨ておむつ10の着用者が違和感を覚える。また、膜状のシートを吸収体14上に配置するため、吸収体14への尿の吸収が遮られるため、起電モジュール100の表面に尿残りが発生し得る。逆に、起電電極110及び起電電極120の幅が細すぎると起電量が少なくなるため、各電極の幅は2mm以上とすることが好ましい。具体的には、起電モジュール100の幅は、5mm〜25mmとすることが好ましい。また、起電電極110と起電電極120との間隔(W3)は、1mm以上とすることが好ましい。
【0035】
さらに、使い捨ておむつ10の着用時においても起電モジュール100を吸収体14に安定して接触させるため、起電モジュール100の曲げ剛性と、吸収体14の曲げ剛性との差は、0.5N以上、1.0N以下となるように設定される。具体的には、材料の物性などを考慮すると、起電モジュール100の曲げ剛性は、0.6N以上、1.0N以下であることが好ましく、起電モジュール100の曲げ剛性を考慮して吸収体14の曲げ剛性が調整される。
【0036】
また、起電モジュール100は、吸収体14に間欠的(例えば、四隅)に接着されることが好ましい。起電モジュール100と吸収体14との接着には、例えば、スパイラル状に塗布されたHMAを用いることができる。
【0037】
(3.2)無線送信モジュール
図4に示すように、無線送信モジュール150は、蓄電電源部151、制御部153及び無線送信部155を備える。
蓄電電源部151は、キャパシタを有し、起電モジュール100によって起電された起電力を蓄える。
【0038】
制御部153は、蓄電電源部151に蓄えられた起電力を用いて無線送信部155を制御する。また、制御部153には、図示しない温度センサなどが接続されていてもよい。
【0039】
無線送信部155は、制御部153からの制御に基づいて温度を示すデータなどが多重された無線信号を無線中継局20に向けて送信する。
【0040】
(4)作用・効果
次に、本実施形態に係る使い捨ておむつ10の作用及び効果について説明する。表1は、吸収体14及び起電モジュール100(基材130)の物性が異なる複数の使い捨ておむつ10による起電力についての試験結果を示す。
【0042】
表1に示す試験に用いた起電モジュール100では、4mm幅の電極を用い、電極の間隔を1mm(つまり、総幅は9mm)に設定した。また、起電電極110及び起電電極120の長さは、性別や姿勢により排尿位置が異なることを想定し、吸収体14の長さである280mmに設定した。
【0043】
試験では、アクリル製の固定用治具に固定された使い捨ておむつ10に80ccの人工尿(塩濃度:0.9%)を注入し、起電モジュール100と人工尿の接触により発生した電圧を測定した。異なる曲げ剛性を得るため、基材130のPETフィルムシートの厚みを、0.075mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm(75μm、200μm、300μmまたは400μm)に変化させた。また、曲げ剛性の測定には、テーパースティフネステスター(安田精機製作所)を用いた。
【0044】
表1に示すように、起電モジュール100の曲げ剛性と、吸収体14の曲げ剛性との差が概ね0.5N以上、1.0N以下であることによって、人工尿の注入から60秒後の到達電圧が無線送信モジュール150の動作に必要な0.9V程度まで上昇している。
【0045】
図6(a)及び(b)は、このような到達電圧に差が生じる原因についての説明図である。
図6(a)は、使い捨ておむつ10の着用時における断面形状を示す。
図6(b)は、比較例の使い捨ておむつの着用時における断面形状を示す。
【0046】
図6(b)に示すように、起電モジュール100のPETフィルム(基材130)が薄い(柔らかい)と吸収体14が変形した場合、起電モジュール100だけが先に曲がってしまい、吸収体14から浮いてきてしまい、隙間Gが生じる。また、起電モジュール100のPETフィルムが厚い(硬い)と起電モジュール100が吸収体14の変形に追従しなくなり、起電電極と吸収体間に隙間Gが生じる。
【0047】
一方、
図6(a)に示すように、起電電極の剛性(柔軟性)を吸収体14の剛性(柔軟性)と同等程度の適正な範囲にすることによって、吸収体14と起電電極110及び起電電極120との接触が安定的になり、効率的に起電力確保できる。
【0048】
上述したように、尿と起電電極110及び起電電極120が接触することによって得られる起電力は微弱であるため、無線送信モジュール150を起動させるためには、効率よく蓄電電源部151に起電された電気を蓄えなければならない。尿量が少ない場合や、起電電極110及び起電電極120に尿の接触が少ない場合でも効率的に起電する必要がある。
【0049】
本実施形態に係る使い捨ておむつ10によれば、起電モジュール100の曲げ剛性と、吸収体14の曲げ剛性との差が概ね0.5N以上、1.0N以下とすることによって、起電電極110及び起電電極120が吸収体14の変形にしっかりと追従するため、着用によって吸収体14が変形した場合でも、無線送信モジュール150を起動するために十分な起電力を継続的に発生し得る。つまり、蓄電電源部151に制御部153及び無線送信部155の動作に必要な電力が速やかに蓄えられるため、温度を示すデータの送信遅延が防止され、排泄があったことを速やかに検知できる。
【0050】
また、起電モジュール100の曲げ剛性を0.6N以上、1.0N以下とし、幅を5mm以上、25mm以下とすることによって、より効率的に起電力を発生させることができる。さらに、基材130として、ポリエチレンテレフタラートを用いて形成されたシート状の部材を用いることによって、上述したような起電モジュール100の特性を容易に実現し得る。
【0051】
(5)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0052】
例えば、上述した実施形態では、起電モジュール100は、無線送信モジュール150をと接続されていたが、無線送信モジュール150は必ずしも必須ではない。無線送信モジュール150に代えて、温度センサのデータを蓄積する記憶デバイスや、他の計測システムと接続するようにしてもよい。
【0053】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。