【文献】
Liangbing Hu et al.,Metal nanogrids, nanowires, and nanofibers for transparent electrodes,MRS BULLETIN,2011年,VOLUME 36,pp. 760-765
【文献】
Liangbing Hu et al.,Scalable Coating and Properties of Transparent, Flexible, Silver Nanowire Electrodes,ACSNANO,2010年,VOL. 4 NO. 5,pp. 2955-2963
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透明基板の少なくとも一方の面上に、金属微粒子層からなる金属細線が網目状に積層された金属網目状導電体層が積層されるとともに、該金属網目状導電体層の両端部の近傍に、該金属網目状導電体層に通電するための電極が対向して設けられ、前記金属網目状導電体層が積層された部分は、波長400〜2000nmの光線透過率が、50%以上かつ80%以下であることを特徴とする赤外線透過型透明導電性積層体。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る赤外線透過型透明導電性積層体の、実施形態を説明する。
図1及び
図2は、本発明に係る赤外線透過型透明導電性積層体の、一例を示す図であり、これらの図中符号11は、赤外線透過型透明導電性積層体である。
本例の赤外線透過型透明導電性積層体11は、透明基板12の一方の面上に、金属微粒子層からなる金属細線が網目状に積層された金属網目状導電体層13が積層されるとともに、該金属網目状導電体層13の両端部の近傍に、該金属網目状導電体層13に通電するための電極14,15が対向して設けられ、金属網目状導電体層13が積層された部分は、波長400〜2000nmの光線透過率が、50%以上であることを特徴とする。
【0018】
前記金属網目状導電体層13は、
図3に示すように、金属細線の部分16が透明部分17を囲むように金属網目状導電体層13に縦横に延びて構成されている。
この金属細線の部分16は、
図4に示すように、微細な金属微粒子が集合し、隣接した粒子同士が結合した状態になっている。この金属細線の部分16で形成された、金属網目状導電体層13を通して通電可能になっている。
【0019】
前記透明基板12としては、特に限定されず、ガラスや樹脂など種々の基板を用いることができる。また、ガラスなどの透明な剛性を有する基板に、可撓性を有する透明合成樹脂フィルムを積層したような、2種以上の異なる透明基板12を積層してなる積層基板を用いることができる。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、透明基板12としては、透明性、柔軟性、加工性に優れる合成樹脂フィルムを用いることが好ましい。この合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルム、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリ乳酸フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、フッ素樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0021】
前記透明基板12の表面には、金属微粒子層からなる金属細線が網目状に積層されやすくなるように、親水性処理層を積層してもよい。この親水性処理層の材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、無水マレイン酸エチルエステル、などが挙げられる。その他、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の、親水性金属酸化物の微粒子などが挙げられる。
【0022】
前記透明基板12には、合成樹脂において一般に使用される各種添加剤、例えば、酸化防止剤、防曇剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤などをその特性を損なわない範囲で添加することができる。
【0023】
前記金属網目状導電体層13は、金属微粒子と、分散剤と、溶媒とを含む金属微粒子懸濁溶液を透明基板12表面に塗布した後、乾燥させることによって形成される。
前記金属微粒子懸濁溶液は、金属微粒子と、分散剤と、溶媒とを含む懸濁溶液(金属コロイド溶液)である。金属微粒子懸濁溶液に用いる溶媒としては、有機溶剤と水との混合液を用いることができる。
【0024】
本発明においては、金属微粒子懸濁溶液内で、金属微粒子が凝集するのを防止するために、分散剤を用いて分散されていることが好ましい。本発明で使用する分散剤としては、特に限定されないが、界面活性剤や高分子系分散剤などを用いることができる。これらは、1種類を使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
界面活性剤としては、公知の、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性界面活性剤のいずれも使用できるが、アニオン性、ノニオン性の界面活性剤が特に好ましい。
また、アニオン性の界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸アンモニウム塩、アルキルスルホン酸カリウム塩、アルキルスルホン酸ナトリウム塩等のアルキルスルホン酸塩類;アルキルカルボン酸アンモニウム塩、アルキルカルボン酸ナトリウム塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸などが挙げられる。
また、カチオン性の界面活性剤としては、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンなどの第1級ないし第3級のアミン塩、第4級アルキルアンモニウム塩等が挙げられる。
また、ノニオン性の界面活性剤としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール類;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリル化エーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン-プロピレンポリスチリル化エーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレートなどのポリオキシアルキレンジアルキルエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類、などが挙げられる。
また、両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタインなどのベタイン類、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸塩などのアルキルアミノ脂肪酸類などが挙げられる。
また、高分子系分散剤としては、例えば、極性の官能基を有する(メタ)アクリル酸モノマーの共重合体、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、セチルメタクリレートなどのモノマー、ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類、ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類などが挙げられる。
【0025】
また、本発明において、溶媒中に混合させる有機溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノルマルヘプタン、トリデカン、テトラデカンなどの炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、DIBK(ジイソブチルケトン)、シクロヘキサノン、DAA(ジアセトンアルコール)などのケトン系溶剤、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセロソルブ、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのアルコールエーテル系溶剤、およびこれらの混合溶剤が挙げられる。
これらの有機溶剤群の中から選択された1種以上の有機溶剤と、水との混合液を、金属微粒子懸濁溶液の溶媒として使用することができる。
また、本発明で使用される金属微粒子の材質は、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、ニッケル(Ni)などが挙げられる。金属微粒子の粒子径が、1〜500nm程度の金属ナノ粒子であることが好ましい。金属ナノ粒子としては、銀(Ag)を使用した銀ナノ粒子が、特に好ましい。
【0026】
本発明に使用する金属微粒子懸濁溶液は、金属微粒子と、分散剤と、溶媒とを含むものである。基材の表面で自己組織化膜を形成する金属微粒子懸濁溶液であれば、金属微粒子の構造や、使用する分散剤及び溶媒は限定されず、また、金属微粒子懸濁溶液の製造方法は、限定されない。好ましくは、温度が200℃以下で、溶媒および分散剤などの有機化合物が蒸発し、分解・飛散する金属微粒子懸濁溶液を用いるのが良い。
【0027】
本発明で使用する金属微粒子の製造方法としては、例えば、金属を蒸発させた後、冷却させて金属微粒子を回収して行なう物理的な方法、溶液中の金属イオンを還元させて、一定の粒子径の金属微粒子を得る化学的な方法などを用いることができる。
【0028】
また、本発明で使用する金属微粒子懸濁溶液としては、市販の自己組織化する金属微粒子懸濁溶液を用いることができる。このような、市販されている金属微粒子懸濁溶液の具体例としては、例えば、戸田工業株式会社製の、商品名「銀ナノ分散塗料、CET193−32」などが挙げられる。
【0029】
また、本発明で使用する金属微粒子懸濁溶液を、透明基板12の表面に塗布する方法としては、例えば、ダイコート法、アプリケーター法、コンマコート法、スプレーコート法、ディップコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法などの公知の非接触式塗布方法を、適宜選択して用いることが好ましい。
【0030】
また、本発明で使用する金属微粒子懸濁溶液を、透明基板12表面に塗布する際に、透明基板12上の湿度が1〜85%RHとなるように雰囲気を制御することが好ましく、10〜70%RHの範囲とすることがより好ましい。
また、金属微粒子懸濁溶液を、透明基板12表面に塗布する際には、風速を遅くすることが好ましく、10m/秒以下とすることが好ましい。
さらに、金属微粒子懸濁溶液を、透明基板12表面に塗布する際の温度は、5〜100℃の範囲とすることが好ましく、15〜40℃の範囲とすることがより好ましい。
【0031】
また、本発明で使用する金属微粒子懸濁溶液を、透明基板12表面に塗布した後、これを乾燥させることによって、透明基板12の表面に金属網目状導電体層13が形成される。
このときの乾燥条件は、使用する金属微粒子懸濁溶液の成分などに応じて適宜調整されるが、通常は、金属微粒子懸濁溶液を塗布した透明基板を、温度15〜50℃の雰囲気中において、20〜120秒間程度、保持することが望ましい。
【0032】
透明基板12表面に形成された金属網目状導電体層13の網目構造は、不規則であってもよいし、規則的な網目構造であってもよい。
この金属網目状導電体層13が積層された部分は、波長400〜2000nmの光線透過率が、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。
また、前記金属網目状導電体層13の表面抵抗率は、2〜100Ω/□であることが好ましく、2〜20Ω/□であることがより好ましく、2〜5Ω/□であることがさらに好ましい。
【0033】
金属網目状導電体層13の表面抵抗率を低減させるために、透明基板12表面に形成された金属網目状導電体層13に対し、有機溶剤を接触させる工程(以下、有機溶剤処理と記す。)と、次に酸溶液を接触させる工程(以下、酸処理と記す。)とを行うことが好ましい。
【0034】
前記有機溶剤処理で使用される有機溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノルマルヘプタン、トリデカン、テトラデカンなどの炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、DIBK(ジイソブチルケトン)、シクロヘキサノン、DAA(ジアセトンアルコール)などのケトン系溶剤、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセロソルブ、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのアルコールエーテル系溶剤、およびこれらの混合溶剤が挙げられる。これらの中でも、ケトン系溶剤が好ましく、アセトンが特に好ましい。
【0035】
この有機溶剤処理において、金属網目状導電体層13に有機溶剤を接触させる方法としては、金属網目状導電体層13に外力が加わらないような方法で行うことが好ましい。例えば、有機溶剤を入れた槽内に前記透明基板12を一定時間浸漬して引き上げる方法、傾斜させた透明基板12の金属網目状導電体層13に有機溶剤を噴霧する方法などが挙げられる。
金属網目状導電体層13に有機溶剤を接触させる際の温度は、40℃以下が好ましく、30℃以下とすることがより好ましい。
また、有機溶剤の接触時間は、1〜120秒間の範囲が好ましく、1〜30秒間の範囲がより好ましい。
【0036】
この有機溶剤処理において、金属網目状導電体層13に有機溶剤を接触させた後、金属網目状導電体層13に有機溶剤が残らないように、十分に乾燥させておくことが好ましい。有機溶剤を乾燥除去するための方法としては、熱風乾燥法、通風乾燥法、オーブン加熱法などが採用できる。乾燥温度としては、140〜170℃程度で通風乾燥する方法が好ましい。
【0037】
また、前記酸処理において使用される酸溶液としては、種々の無機酸、有機酸から選択することができる。酸溶液の具体例としては、例えば、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、DL−リンゴ酸、ステアリン酸、アジピン酸、サリチル酸、クエン酸、酢酸などが挙げられる。これらの中でも、塩酸を含む酸溶液が好ましい。
【0038】
この酸処理において、金属網目状導電体層13に酸溶液を接触させる方法としては、金属網目状導電体層13に外力が加わらないような方法で行うことが好ましい。例えば、酸溶液を入れた槽内に前記透明基板12を一定時間浸漬して引き上げる方法、傾斜させた透明基板12の金属網目状導電体層13に酸溶液を噴霧する方法などが挙げられる。
金属網目状導電体層13に酸溶液を接触させる際の温度は、40℃以下が好ましく、30℃以下とすることがより好ましい。
また、酸溶液の接触時間は、10〜500秒間の範囲が好ましく、30〜120秒間の範囲がより好ましい。
【0039】
この酸処理において、金属網目状導電体層13に酸溶液を接触させた後、金属網目状導電体層13に酸溶液が付着して残らないように、十分に水で洗浄した後、乾燥させておくことが好ましい。
この乾燥の方法は、熱風乾燥法、通風乾燥法、オーブン加熱法などが採用できる。乾燥温度としては、140〜170℃程度で通風乾燥する方法が好ましい。
【0040】
このように形成した金属網目状導電体層13の両端部の近傍には、金属網目状導電体層13に通電するための電極14,15が対向して設けられる。
前記電極14,15としては、銀ペーストなどの導電性ペーストを金属網目状導電体層13の両端部の近傍に塗布し、熱処理することで簡単に形成することができる。また、この電極14,15には、アルミ箔や銅箔などの金属箔や銅線、銅線ワイヤを配置した後、導電性ペーストを塗布し、熱処理して形成することもできる。このような金属箔や銅線を透明基板12から突き出すように設けておくことで、金属網目状導電体層13に通電するための端子を形成することができる。
【0041】
前述したように、透明基板12の表面上に、金属網目状導電体層13と、その両端部の近傍に電極14,15を対向して形成することで、
図1及び
図2に示す赤外線透過型透明導電性積層体11が得られる。
【0042】
この赤外線透過型透明導電性積層体11は、波長400〜2000nmの光線透過率が50%以上であり、また、表面抵抗率が、5Ω/□以下である。この赤外線透過型透明導電性積層体11は、電極14,15間に通電することによって、対向した電極14,15に挟まれた範囲の金属網目状導電体層13が均一に発熱し、平面内の均一な発熱が可能な面状発熱体として機能する。
【0043】
前記金属網目状導電体層13は、
図3に示した金属細線の部分16以外の隙間に透明樹脂を満たすことによって、平坦な表面に形成することもできる。
この透明樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0044】
このように、
図3に示した金属細線の部分16以外の隙間に透明樹脂を満たす方法としては、溶融状態の樹脂を金属網目状導電体層13側の面上にフィルム上に押出してこれをロール加工する方法や、未硬化樹脂溶液と硬化剤とからなる塗布液を金属網目状導電体層13側の面上に塗布し、硬化させる方法などによって行うことができる。
【0045】
前記金属網目状導電体層13は、透明基板12の表面に直接形成してもよいし、別に用意した基板の表面に金属網目状導電体層13を形成した後、これを透明基板12表面に転写させる方法で積層することもできる。
【0046】
本実施形態による赤外線透過型透明導電性積層体は、透明基板12の表面に、金属微粒子層からなる金属細線が網目状に積層された金属網目状導電体層13が積層されるとともに、該金属網目状導電体層13の両端部の近傍に、該金属網目状導電体層13に通電するための電極14,15が対向して設けられている。金属網目状導電体層13が積層された部分は、波長400〜2000nmの光線透過率が、50%以上なので、広い波長帯域で光線透過率が高く、特に赤外線領域を透過でき、表面抵抗率が低い金属網目状導電体層を有する、赤外線透過型透明導電性積層体を提供できる。
この赤外線透過型透明導電性積層体11は、赤外線を透過できるので、赤外線センサのセンサ部に取り付ける防曇用或いは凍結防止用の透明面状発熱体として有用である。
【実施例】
【0047】
(金属網目状導電体層の作製)
透明基板として、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなる基材(SKC社製、商品名「Skyrol SH34」)の片面を、コロナ処理により親水化処理した。
この親水化処理面上に、金属微粒子懸濁溶液(戸田工業株式会社製、商品名「銀ナノ分散塗料 CET193−32」)を、Wet厚25μmとなるように塗工した。この金属微粒子懸濁溶液の塗工は、ダイコート法により行った。
次に、温度40℃の雰囲気下で45秒間放置して、PET樹脂からなる基材上に、金属網目状構造を形成した。
次に、150℃熱風オーブンで1分間乾燥させた。乾燥後、得られた金属網目状導電体層の表面抵抗率を測定した結果、表面抵抗率は65〜70Ω/□であった。
【0048】
(低抵抗化処理)
前記の通り、透明基板上に金属網目状導電体層を形成したサンプルを、アセトン中に30秒間浸漬した後、150℃の熱風オーブンで2分間乾燥した。このアセトン処理した後のサンプルは、表面抵抗率が20〜25Ω/□であった。
次に、アセトン処理後のサンプルを、1N塩酸中に1分間浸漬した後、水洗し、150℃の熱風オーブンで2分間乾燥した。この塩酸処理した後のサンプルは、表面抵抗率が4〜5Ω/□であった。
【0049】
(赤外線透過型透明導電性積層体の作製)
剥離処理したPET樹脂からなる基材(以下、剥離処理PET基材と呼ぶ)の一方の面に粘着剤を塗工し、その粘着剤の上に、前記剥離処理PET基材とは、剥離力の異なる(剥離力の弱い)剥離処理を施した、剥離処理PET基材を貼合し、両面に剥離処理PET基材が貼合された粘着フィルムを作製した。
次に、前記金属網目状導電体層を形成した面とは反対面に、前記粘着フィルムの片方の剥離処理PET基材を剥離しながらラミネータで貼合し、粘着層を形成した。
次に、前記粘着層の他方の剥離処理PET基材を剥離しながら、ガラス(3mm厚フロートガラス)に貼合した。
次に、金属網目状導電体層の両端部の近傍に、Acheson社製銀ペースト(商品名「Electrodag 820B」)を幅5mm、厚み300μmで塗布後、130℃熱風オーブンで20分間熱処理し、電極を対向させて形成した。
これによって、
図5及び
図6に示すように、ガラス20上に粘着層24を介して、PET基材23と金属網目状導電体層21が順に積層され、この金属網目状導電体層21の両端部の近傍に電極22が対向して形成された、本発明に係わる赤外線透過型透明導電性積層体(以下、実施例と記す場合がある)を作製した。得られた赤外線透過型透明導電性積層体を、面状発熱体として用いた場合の効果を次に示した。
【0050】
[発熱試験]
ガラス(長さ1600mm×幅90mm×厚さ3mm)上に、前記赤外線透過型透明導電性積層体を用いて、面状発熱体を、以下のサイズで形成した。
・サンプルNo.1:長さ1568mm×幅58mm
・サンプルNo.2:長さ1568mm×幅24mm
【0051】
AC100V電源を使用し、スライダック(MATSUNAGA MFG製、SLIDE REGULATOR)を用いて電圧を調整して、前記電極にAC75Vとなるように電圧を印加した。
また、テスター(METLEX M−3870D)を用いて、印加した電圧を計測した。また、電流計(KEITHLEY製KEITHLEY2100 6 1/2Digit Multimeter)を用いて、電流を計測した。
また、熱電対(RKC製、ST−50)をガラス面に貼着して温度を計測し、データロガー(KEYENCE製、NR−600)にて温度変化を記録した。
上記試験を、室温環境下(23℃〜28℃)、及び氷点下環境下(−20℃)にて行い、本発明に係わる赤外線透過型透明導電性積層体の、面状発熱体としての性能を確認した。その結果を、
図7及び
図8に示す。
【0052】
図7に示す通り、室温環境下において面状発熱体のサンプルNo.1は、28℃→53℃(+25℃)、面状発熱体のサンプルNo.2は24℃→40℃(+16℃)とガラス表面温度を上昇させた。
また、
図8に示す通り、氷点下環境下において面状発熱体のサンプルNo.1は−16℃→5℃(+21℃)、面状発熱体のサンプルNo.2は−18℃→−2℃(+16℃)とガラス表面温度を上昇させた。
【0053】
[分光透過率の測定]
日本分光製分光透過率計V−570を用い、前記面状発熱体のサンプルの分光透過率を測定した。その結果を
図9に示す。
図9に示すように、前記面状発熱体のサンプルは、可視光線〜赤外線領域までの広い波長帯域において高い光線透過率を有しており、特に、赤外線領域(700nm〜2000nm)の光線透過率は概ね70%程度であった。
【0054】
一方、比較のために、市販の透明熱線反射フィルム(帝人社製、商品名「レフテル」)について分光透過率を測定した結果、赤外線領域(700nm〜2000nm)の光線透過率は概ね50%未満であった。