(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
水性ゲルとして、例えば、アクリル酸ナトリウムと架橋モノマーとを共重合させることによって得られたポリアクリル酸ナトリウムは、紙おむつ、化粧品などのゲル化剤、リチウム電池の電解質ゲル化剤などに使用されている。このポリアクリル酸ナトリウムは、当該ポリマーが有するカルボン酸イオン(−COO
−イオン)同士の反発と架橋構造により、少量で添加するだけで高粘度のゲルになるという利点を有する。しかし、このポリアクリル酸ナトリウムからなる水性ゲルは、前記カルボン酸イオン(−COO
−イオン)同士の反発を無効にする塩化ナトリウムなどの塩が共存するとイオン同士の反発が小さくなるため、それ自身が崩れるおそれがある(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
また、カチオン性増粘剤として、アミン含有(メタ)アクリル系モノマー、ビニルモノマー(メタ)アクリロイル基含有モノマーおよび架橋性ビニルモノマーを重合させてなるカチオン性増粘剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このカチオン性増粘剤を少量で用いても高粘度を有する水性ゲルを調製することができる。しかし、この得られた水性ゲルは、前記ポリアクリル酸ナトリウムと同様に、塩化ナトリウムなどの塩が共存すると崩壊するおそれがある。
【0004】
塩が存在していても崩壊しがたい水性ゲルとして、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはその塩と架橋性モノマーを多価アルコールおよび水性媒体中で共重合させることによって得られた高粘着性ハイドロゲル組成物(例えば、特許文献2参照)、中和された架橋ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)および酸化剤を含有するゲル化剤を用いて調製されたゲルなどが知られている(例えば、特許文献3参照)。しかし、前記高粘着性ハイドロゲル組成物およびゲルは、柔軟性および機械的強度を同時に満足するものではない。
【0005】
機械的強度に優れている高分子ゲルとして、物理架橋によって形成された物理架橋網目構造と、第1のモノマーを重合させ、架橋させることによって形成された第1の網目構造と、第2のモノマーを重合させ、架橋させることによって形成された第2の網目構造とからなる相互侵入網目構造を有する高分子ゲルが提案されている(例えば、特許文献4参照)。しかし、この高分子ゲルは、正の電荷に帯電したとき、ゲル強度が低くなるという欠点がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発
明は、前記したように、
酸性モノマーを含有するモノマー成分の水溶液を溶液重合させた後、得られたポリマーBと、ベタインモノマーを含有するモノマー成分の水溶液とを均一な組成となるように混合し、得られた混合物を溶液重合させてポリマーAを調製するか、またはベタインモノマーを含有するモノマー成分の水溶液を溶液重合させた後、得られたポリマーAと酸性モノマーを含有するモノマー成分とを均一な組成となるように混合し、得られた混合物を溶液重合させてポリマーBを調製する際に、前記ベタインモノマーとしてN−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタイン、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタイン、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタイン、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタイン、N−アクリルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−メタクリルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−アクリルアミドプロピル−N,N−ジエチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−メタクリルアミドプロピル−N,N−ジエチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−アクリルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタイン、N−メタクリルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタイン、N−アクリルアミドプロピル−N,N−ジエチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタインおよびN−メタクリルアミドプロピル−N,N−ジエチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタインからなる群より選ばれた少なくとも1種のベタインモノマーを用い、前記酸性モノマーとしてビニルスルホン酸、パラスルホン酸スチレン、アリルスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、メタクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、エチレンオキサイド変性リン酸アクリレートおよびエチレンオキサイド変性リン酸アクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種の酸性モノマーを用いることを特徴とする。
【0021】
本発明の水性ゲルは、前記ポリマーAおよび前記ポリマーBによって構成されるものであるので、塩が共存していてもゲル強度が低下しがたく、柔軟性および機械的強度を同時に満足するものである。本発明の水性ゲルがこのように優れた性質を有するのは、推測であるが、おそらくポリマーAとポリマーBとの相互作用により、ポリマーAとポリマーBとが相互に侵入した網目構造を有することに基づくものと考えられる。より具体的には、電荷として中性のベタインモノマーに基づくポリマーAの網目構造と、酸性を示す酸性モノマーに基づくポリマーBの網目構造とが併用されていることにより、ポリマーAが有するアミノ基とポリマーBが有する酸性基とが相互作用するので、強固で柔軟性に優れた水性ゲルが得られるものと考えられる。
【0022】
ポリマーAは、
前記ベタインモノマーを含有するモノマー成分を重合させることによって得られる。
【0028】
前記ベタインモノマーとしては、例えば、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタイン、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタイン、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタイン、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタイン、N−アクリルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−メタクリルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−アクリルアミドプロピル−N,N−ジエチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−メタクリルアミドプロピル−N,N−ジエチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−アクリルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタイン、N−メタクリルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタイン、N−アクリルアミドプロピル−N,N−ジエチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタイン、N−メタクリルアミドプロピル−N,N−ジエチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタインなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのベタインモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。ベタインモノマーは、例えば、特開平9−95474号公報、特開平9−95586号公報、特開平11−222470号公報などに記載の方法で容易に調製することができる。
【0029】
ポリマーAは、ベタインモノマーを含有するモノマー成分を重合させることによって得られる。モノマー成分は、ベタインモノマーのみで構成されていてもよく、ベタインモノマー以外に中性モノマーが含有されていてもよい。
【0030】
なお、本明細書において、中性モノマーとは、モノマー自体が中性であることを意味するのではなく、ベタインモノマーとの共重合によってポリマーAとなったとき、当該ポリマーAに酸性基および塩基性基を付与しないモノマーを意味する。
【0031】
中性モノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ネオペンチル、メタクリル酸ネオペンチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸セチル、メタクリル酸セチルなどのアルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルなとの炭素数6〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレート;アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジルなどのアリール基の炭素数が6〜12の(メタ)アクリル酸アリールエステル;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチルなどのヒドロキシアルキル基の炭素数が2〜6の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸メトキシブチル、メタアクリル酸メトキシブチルなどのアルコキシアルキル基の炭素数が2〜8の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル;アクリル酸エチルカルビトール、メタクリル酸エチルカルビトールなどのアルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルカルビトール;N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−tert−ブチルメタクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−オクチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミドなどのアルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリルアミド:N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタアクリルアミドなどのアルコキシ基の炭素数が1〜6のアルコキシ(メタ)アクリルアミド;アクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリンなどの(メタ)アクリロイルモルホリン;ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミドなどのジアセトン(メタ)アクリルアミド;スチレン、メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;イタコン酸メチル、イタコン酸エチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外のアルキル基の炭素数が1〜4の脂肪酸アルキルエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムなどの窒素原子含有モノマーなどの単官能モノマー;
【0032】
エチレンジアクリレート、エチレンジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのジまたはトリ(メタ)アクリレート化合物;ビスメチレンアクリルアミド、ビスメチレンメタクリルアミドなどの炭素−炭素二重結合を2個以上有する(メタ)アクリルアミド;ジビニルベンゼン、ジアリルベンゼンなどの炭素−炭素二重結合を2個以上有する芳香族化合物;トリアリルアミンなどのアリル基を2個以上有するアミン化合物;メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミドなどの炭素−炭素二重結合を2個以上有する(メタ)アクリルアミド化合物などの多官能モノマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの中性モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0033】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリ」は、「アクリ」または「メタクリ」を意味する。
【0034】
ベタインモノマーを含有するモノマー成分における中性モノマーの含有率は、特に限定されないが、中性モノマーに基づく性質を付与する観点から、好ましくは20重量%以上、より好ましくは50重量%以上であり、ベタインモノマーに基づく相互作用を向上させる観点から、好ましくは90重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。また、ベタインモノマーを含有するモノマー成分におけるベタインモノマーの含有率は、特に限定されないが、ベタインモノマーに基づく相互作用を向上させる観点から、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上であり、中性モノマーに基づく性質を付与する観点から、好ましくは80重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。
【0035】
ベタインモノマーを含有するモノマー成分を重合させる際の雰囲気は、特に限定がなく、大気であってもよく、あるいは窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよい。
【0036】
ベタインモノマーを含有するモノマー成分の重合は、例えば、塊状重合法、溶液重合法などによって行なうことができる。ベタインモノマーを含有するモノマー成分を溶液重合法によって重合させる場合には、溶媒が用いられる。溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのアルキルエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物類;n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステル類などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。溶媒の量は、当該溶媒の種類によって異なるので一概には限定することができないが、通常、ベタインモノマーを含有するモノマー成分100重量部あたり、300〜1000重量部程度であることが好ましい。
【0037】
ベタインモノマーを含有するモノマー成分の重合は、例えば、ラジカル重合法、リビングラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、付加重合法、重縮合法などの重合法によって行なうことができる。
【0038】
ベタインモノマーを含有するモノマー成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。
【0039】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾイソブチロニトリル、アゾイソ酪酸メチル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ系重合開始剤、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過酸化物系重合開始剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
重合開始剤として、熱重合開始剤を用いる場合、当該熱重合開始剤の量は、ベタインモノマーを含有するモノマー成分100重量部あたり、通常、0.01〜20重量部程度であることが好ましい。
【0041】
光重合開始剤としては、例えば、2−オキソグルタル酸、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル1−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0042】
重合開始剤として、光重合開始剤を用いる場合、当該光重合開始剤の量は、ベタインモノマーを含有するモノマー成分100重量部あたり、通常、0.01〜20重量部程度であることが好ましい。
【0043】
ベタインモノマーを含有するモノマー成分の重合温度は、特に限定がなく、通常、5〜80℃程度の温度であればよい。また、ベタインモノマーを含有するモノマー成分の重合に要する時間は、重合条件によって異なるので一概には決定することができないことから任意である。重合反応は、通常、残存しているモノマーの量が10重量%以下になった時点で、任意に終了することができる。なお、残存しているモノマーの量は、例えば、臭素をモノマーの二重結合に付加し、二重結合含量を測定することによって決定することができる。
【0044】
以上のようにしてベタインモノマーを含有するモノマー成分を重合させることにより、ポリマーAが得られる。
【0045】
ポリマーBは、
前記酸性モノマーを含有するモノマー成分を重合させることによって得られる。
【0046】
なお、本明細書において、酸性モノマーは、水溶液としたときに電離度が高いモノマーを意味する。より具体的には、酸性モノマーは、水溶液としたときに、その酸解離定数(pKa)が0以下であるものを意味する。
【0047】
本発明においては、ポリマーBの原料であるモノマー成分に酸性モノマーが用いられているので、ポリマーBがプロトンを放出しようとする力が強いことから、モノマー成分にカルボン酸が用いられている場合と対比して、塩による影響を受けがたいという優れた性質が発現される。このように優れた性質が発現されるのは、例えば、塩化ナトリウムなどの強酸強塩基の塩が存在する場合、カルボン酸では、−COO
-基が−COOH基となるため、イオンの反発が低下することから、ポリマーが収縮するようになる。これに対して、酸性モノマーは、その電離度がカルボン酸よりも高く、塩化ナトリウムの電離度との差が小さいことから、ポリマーの収縮が小さくなることに基づくものと考えられる。
【0051】
前記酸性モノマーの具体例としては、ビニルスルホン酸、パラスルホン酸スチレン、アリルスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、メタクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、エチレンオキサイド変性リン酸アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの酸性モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの酸性モノマーのなかでは、モノマーとしての安定性を向上させるとともに工業的生産性を向上させる観点から、ビニルスルホン酸、パラスルホン酸スチレン、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸およびメタクリルアミドメチルプロパンスルホン酸が好ましい。
【0052】
ポリマーBは、酸性モノマーを含有するモノマー成分を重合させることによって得られる。モノマー成分は、酸性モノマーのみで構成されていてもよいが、酸性モノマー以外に中性モノマーが含有されていてもよい。
【0053】
中性モノマーとしては、前記ベタインモノマーを含有するモノマー成分に用いられる中性モノマーと同様のものを例示することができる。中性モノマーは、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0054】
酸性モノマーを含有するモノマー成分における中性モノマーの含有率は、特に限定されないが、中性モノマーに基づく性質を付与する観点から、好ましくは20重量%以上、より好ましくは50重量%以上であり、酸性モノマーに基づく性質を向上させる観点から、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。また、酸性モノマーを含有するモノマー成分における酸性モノマーの含有率は、特に限定されないが、酸性モノマーに基づく性質を向上させる観点から、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、中性モノマーに基づく性質を付与する観点から、好ましくは80重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。
【0055】
酸性モノマーを含有するモノマー成分を重合させる際の雰囲気は、特に限定がなく、大気であってもよく、あるいは窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよい。
【0056】
酸性モノマーを含有するモノマー成分の重合は、例えば、塊状重合法、溶液重合法などによって行なうことができる。酸性モノマーを含有するモノマー成分を溶液重合法によって重合させる場合には、溶媒が用いられる。溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのアルキルエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物類;n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステル類などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。溶媒の量は、当該溶媒の種類によって異なるので一概には限定することができないが、通常、酸性モノマーを含有するモノマー成分100重量部あたり、300〜1000重量部程度であることが好ましい。
【0057】
酸性モノマーを含有するモノマー成分の重合は、例えば、ラジカル重合法、リビングラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、付加重合法、重縮合法などの重合法によって行なうことができる。
【0058】
酸性モノマーを含有するモノマー成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。熱重合開始剤および光重合開始剤としては、前記ベタインモノマーを含有するモノマー成分に用いられる熱重合開始剤および光重合開始剤と同様のものを例示することができる。
【0059】
重合開始剤の量は、熱重合開始剤および光重合開始剤のうちいずれを用いる場合でも、酸性モノマーを含有するモノマー成分100重量部あたり、通常、0.01〜20重量部程度であることが好ましい。
【0060】
酸性モノマーを含有するモノマー成分の重合温度は、特に限定がなく、通常、5〜80℃程度の温度であればよい。また、酸性モノマーを含有するモノマー成分の重合に要する時間は、重合条件によって異なるので一概には決定することができないことから任意である。重合反応は、通常、残存しているモノマーの量が10重量%以下になった時点で、任意に終了することができる。なお、残存しているモノマーの量は、例えば、臭素をモノマーの二重結合に付加し、二重結合含量を測定することによって決定することができる。
【0061】
以上のようにして酸性モノマーを含有するモノマー成分を重合させることにより、ポリマーBが得られる。
【0062】
なお、本発明の水性ゲルは、ベタインモノマーを含有するモノマー成分を重合させることによって得られるポリマーAおよび酸性モノマーを含有するモノマー成分を重合させることによって得られるポリマーBを含有するポリマー成分をゲル化させることによって得られる。
【0063】
ポリマーAとポリマーBとの官能基のモル比は、ゲル強度を向上させる観点から、好ましくは0.5/1以上であり、ゲルの弾性率を高める観点から、好ましくは1.5/1以下である。なお、ポリマーAおよびポリマーBの官能基は、具体的には、ポリマーAのCOO
-基、ポリマーBのR
6の基を意味する。
【0064】
本発明の水性ゲルの好適な製造方法としては、例えば、酸性モノマーを含有するモノマー成分の水溶液を溶液重合させた後、得られたポリマーBと、ベタインモノマーを含有するモノマー成分の水溶液とを均一な組成となるように混合し、得られた混合物を溶液重合させてポリマーAを調製することにより、水性ゲルを得る方法、ベタインモノマーを含有するモノマー成分の水溶液を溶液重合させた後、得られたポリマーAと酸性モノマーを含有するモノマー成分とを均一な組成となるように混合し、得られた混合物を溶液重合させてポリマーBを調製することにより、水性ゲルを得る方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。これらの方法のなかでは、前者の方法は、工業的生産性を向上させる観点から好ましい。
【0065】
以上のようにして得られる本発明の水性ゲルは、塩が共存していてもゲル強度が低下しがたく、柔軟性および機械的強度を同時に満足するという優れた効果を奏することから、例えば、細胞培養シート、薬剤を固定化するための担体、絆創膏用ゲルなどの医療用材料、化粧パックなどの化粧料、紙おむつなどのトイレタリー用品、フジツボの付着防止用コーティング材、各種塗料などのコーティング材料、液晶画面保護膜用接着性ゲル、リチウム電池用ゲル電解質、透明アクチュエータ材料、圧電素子などの電気・電子系材料などに使用されることが期待されるものである。
【実施例】
【0066】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0067】
実施例1
厚さが5mmの透明な樹脂フィルムで製造された一辺の長さが10cmの立方体からなるセルを用意した。
【0068】
次に、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(AMPS)14.1g、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)0.6gおよび光重合開始剤として2−オキソグルタル酸0.01gを蒸留水100gに溶解させることにより、溶液Aを得た。
【0069】
一方、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン(CDME)18.6g、アクリルアミド1.4g、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)0.0014gおよび2−オキソグルタル酸0.001gを蒸留水100gに溶解させることにより、溶液Bを得た。
【0070】
次に、溶液Aを前記セルに入れ、その側面から紫外線照射機〔UVP(株)製、品番:95−0042−12〕を用いて照度4mW/cm
2、照射時間6時間、積算光量86.4J/cm
2にて紫外線を照射した。その後、溶液Bを前記セルに入れ、均一な組成となるように撹拌した後、再度、セルの側面から前記紫外線照射機を用いて照度4mW/cm
2、照射時間6時間、積算光量86.4J/cm
2にて紫外線を照射することにより、ゲルを調製した。
【0071】
前記で得られたゲルをセルから取り出し、縦9cm、横5mmの大きさとなるようにゲルをカッターナイフで裁断することにより、サンプル1を得た。
【0072】
実施例2
実施例1において、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン(CDME)の量を37.2gに変更し、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)の量を0.0028gに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてサンプル2を得た。
【0073】
実施例3
実施例1において、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン(CDME)の量を55.8gに変更し、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)の量を0.0042gに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてサンプル3を得た。
【0074】
比較例1
厚さが5mmの透明な樹脂フィルムで製造された一辺の長さが10cmの立方体からなるセルを用意した。
【0075】
次に、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(AMPS)14.1g、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)0.6gおよび2−オキソグルタル酸0.01gを蒸留水100gに溶解させることにより、溶液Aを得た。
【0076】
一方、アクリルアミド1.4g、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)0.0007gおよび2−オキソグルタル酸0.001gを蒸留水100gに溶解させることにより、溶液Bを得た。
【0077】
次に、溶液Aを前記セルに入れ、その側面から紫外線照射機〔UVP(株)製、品番:95−0042−12〕を用いて照度4mW/cm
2、照射時間6時間、積算光量86.4J/cm
2にて紫外線を照射した。その後、溶液Bを前記セルに入れ、均一な組成となるように撹拌した後、再度、セルの側面から前記紫外線照射機を用いて照度4mW/cm
2、照射時間6時間、積算光量86.4J/cm
2にて紫外線を照射することにより、ゲルを調製した。
【0078】
次に、前記で得られたゲルをセルから取り出し、縦9cm、横5mmの大きさとなるようにゲルをカッターナイフで裁断することにより、比較サンプル1を得た。
【0079】
実施例1〜3で得られたサンプル1〜3および比較例1で得られた比較サンプル1の物性として、引張試験機〔オリエンテック(株)製、品番:Tensilon RTC−1310A〕を用いて引張り強度およびヤング率を測定した。引張り強度の測定結果を
図1に、ヤング率の測定結果を
図2に示す。なお、
図1において、記号A〜Dは、それぞれ順に、実施例1〜3および比較例1で得られた比較サンプル1の試験結果を示す。
【0080】
図1に示された結果から、実施例1〜3で得られたサンプル1〜3は、いずれも、比較例1で得られた比較サンプル1と対比して、ひずみが約4.5mm以上の領域であっても引張り応力(応力)に優れていることがわかる。また、
図2に示された結果から、実施例1〜3で得られたサンプル1〜3は、比較例1で得られた比較サンプル1と対比して、同等またはそれ以上の弾性率(ヤング率)を示すことがわかる。したがって、実施例1〜3で得られたサンプル1〜3は、いずれも、比較例1で得られた比較サンプル1と対比して、ゲル強度が低下しがたく、柔軟性および機械的強度を同時に満足するという優れた効果を奏するものであることがわかる。