(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980206
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】低い2−(ジメチルアミノメチル)−グルタロニトリル(DGN)含量を有する3−ジメチルアミノプリオニトリル(DMAPN)および低い2−(ジメチルアミノメチル)−グルタロニトリル(DGN)含量を有する3−ジメチルアミノプロピオニトリル(DMAPN)から3−ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 209/48 20060101AFI20160818BHJP
C07C 211/09 20060101ALI20160818BHJP
C07C 255/24 20060101ALN20160818BHJP
C07C 253/30 20060101ALN20160818BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20160818BHJP
【FI】
C07C209/48
C07C211/09
!C07C255/24
!C07C253/30
!C07B61/00 300
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-521074(P2013-521074)
(86)(22)【出願日】2011年7月21日
(65)【公表番号】特表2013-535455(P2013-535455A)
(43)【公表日】2013年9月12日
(86)【国際出願番号】EP2011062496
(87)【国際公開番号】WO2012013563
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2014年7月18日
(31)【優先権主張番号】10171187.7
(32)【優先日】2010年7月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング メーガーライン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン エーバーハート
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン−ペーター メルダー
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ ケーラー
(72)【発明者】
【氏名】ティロ ハーン
(72)【発明者】
【氏名】ミルコ クライチュマン
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ヘアブレヒト
【審査官】
鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−512415(JP,A)
【文献】
特開昭53−112814(JP,A)
【文献】
特表2009−514834(JP,A)
【文献】
特表2009−536177(JP,A)
【文献】
特表2014−511370(JP,A)
【文献】
特開平07−080312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 209/48
C07C 211/09
C07B 61/00
C07C 253/30
C07C 255/24
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−ジメチルアミノプロピオニトリル(DMAPN)を水素と触媒の存在下で反応させることにより、3−ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)を製造する方法において、使用されるDMAPNが、使用されるDMAPNに対して300質量ppm以下の2−(ジメチルアミノメチル)−グルタロニトリル(DGN)の含量を有し、且つ、前記方法は、ジメチルアミン(DMA)とアクリルニトリル(ACN)とを、水の存在下で、カスケード型反応器中で50〜80℃の温度範囲内且つ3〜8バールの圧力範囲内で反応させることによってDMAPNを製造する工程を含み、前記反応の際、DMA対ACNのモル比は、1.02:1〜1.10:1の範囲内にあり、且つ水の割合は、使用されるDMAおよびACNの総和に対して1〜8質量%の範囲内にあることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
DMAPNは、使用されるDMAPNに対して、100質量ppm以下のDGN含量を有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
アクリルニトリルをジメチルアミンと連続的に反応させ、DMAPN含有反応混合物にし、このDMAPN含有反応混合物を蒸留により後処理することにより、300ppm以下のDGN含量を有するDMAPNを製造することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
低沸点物を分離するための塔と難揮発性副生成物を分離するための他の蒸留塔とからなる塔装置中で蒸留を実施することを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
蒸留を1つの塔内で実施し、この場合低沸点物は、塔頂部を介して取得され、高沸点物は、塔底部を介して取得され、およびDMAPNは、ガス状または蒸気状で側方取出し口を介して取得されることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項6】
蒸留を、隔壁を有する塔内で中央部分で実施し、この蒸留の際に、低沸点物は、塔頂部を介して取得され、高沸点物は、塔底部を介して取得され、およびDMAPNは、供給管に対向する、隔壁の側面で取得されることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項7】
触媒は、活性種としてCoまたはNiを含むことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
触媒は、Coの酸素化合物を還元することにより製造されることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、本明細書に援用するために、2010年7月29日に出願された暫定的米国出願61/368656を含む。
【0002】
本発明は、3−ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)の製造法に関する。更に、本発明は、低い2−(ジメチルアミノメチル)−グルタロニトリル(DGN)含量を有する、3−ジメチルアミノプロピオニトリル(DMAPN)と2−(ジメチルアミノメチル)−グルタロニトリル(DGN)との混合物に関する。
【0003】
3−ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン)は、工業製品、例えば液体石鹸にとって重要な中間生成物である。その上、DMAPAは、凝固剤を製造するための出発生成物として使用され、およびそれ自体、耐食性の性質を有する。
【0004】
DMAPAは、一般に、2工程プロセスによって製造される。
【0005】
第1の工程において、通常、アクリルニトリル(ACN)は、ジメチルアミン(DMA)と反応され、その際に、一般には、3−ジメチルアミノプロピオニトリル(DMAPN)が形成される。
【0006】
更に、DMAPNは、一般にさらなる工程において、DMAPAに還元される。
【0007】
WO 2007/128803の記載によれば、DMAPAの製造のために、一体製造法または一体装置が使用されることは、有利である。この場合、最初に得られた、
DMAPNを有する生成物流は、さらなる工程でDMAPAに変換するために、直接使用されるかまたは後精製後に使用される。この場合、WO 2007/128803の教示によれば、DMAPNのDMAPAへの還元反応のためには、この還元の際に使用される触媒の使用のために、第1の反応からのDMAPN生成物流の品質が決定的に重要である。従って、WO 2007/128803は、DMAとACNとを連続的な運転方式で反応させることによってDMAPNを製造する方法を教示しており、この場合最初にDMAおよび引続きACNが連続的に供給され、およびこの反応流の変換は、第1の反応領域内で行なわれ、および少なくとも部分的に第2の反応領域内で行なわれる。
【0008】
更に、こうして得られたDMAPNは、一般に、さらなる後処理なしに、他の反応領域内で水素で還元され、直ちにDMAPAになる。
【0009】
開示内容によれば、
DMAPNの水素化の際に、WO 2007/128803の教示により2つの別々の反応空間内で製造されるDMAPNがDMAPN水素化に使用される場合には、水素化触媒の寿命は、延長されうる。
【0010】
本発明の課題は、公知技術水準と比較して、DMAPNの水素化において使用される触媒の寿命がさらに改善されることにあった。殊に、望ましくない副反応、例えばニトリルの発熱分解、DMAPNのACNおよびDMAへの再分解またはDMAPAの縮合による第二級アミンの形成は、触媒の負荷を低減させる必要なしに、触媒の使用の間、少なく維持しうることが達成されるべきであった。工業的視点から、生成物中のDMAPNの含量が少ないことは、好ましく、それというのも、DMAPNをDMAPAと分離することは、困難であり、かつその後の使用において、望ましくない性質、例えば臭気および変色をまねくからである。水素化排出物中のDMAPNの含量は、実際に或る程度、初期値と比較して反応温度を高めることによって相殺されうる。それというのも、このことは、より高い変換率を生じるが、しかし、反応温度の上昇によって、品質の低下に影響を及ぼす別の副成分が生じるからである。従って、この理由から、反応温度は、任意に高めることができない。それに応じて、本発明の課題は、プロセス中に触媒の不活性化を少なくなるように維持し、それによって触媒の不変に良好な性能において触媒の寿命を延長することにあった。この性質のための1つの基準は、温度上昇率と運転時間とからの商である。温度上昇率と運転時間とからの商が小さいことは、触媒ができるだけ長時間、出発温度で運転されることが可能であり、および場合により触媒の不活性化の相殺に必要とされる温度上昇率が少ない結果となることを意味する。従って、副反応が極めて増加しすぎる臨界的温度には、できるだけ長時間到らない。従って、本発明の目的は、温度上昇率と触媒の運転時間との商を最小化することであった。
【0011】
本発明の課題は、3−ジメチルアミノプロピオニトリル(DMAPN)を水素と触媒の存在下で反応させることにより、3−ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)を製造する方法であって、使用されるDMAPNが、使用されるDMAPNに対して300質量ppm以下の2−(ジメチルアミノメチル)−グルタロニトリル(DGN)の含量を有することを特徴とする上記方法によって解決することができた。
【0012】
意外なことに、式(I)
【化1】
で示される2−(ジメチルアミノメチル)−グルタロニトリル(DGN)は、DMAPN中でニトリル水素化触媒の急速な不活性化を生じることが見い出された。これに対して、DGNの含量が300ppmの値を超えない場合には、公知技術水準と比較して、前記寿命のさらなる向上が達成されうる。実際に、WO 2007/128803には、水素化において使用されるDMAPNの品質は、DMAPNの水素化によって得られるDMAPAsの品質に決定的な影響を及ぼしうるが、しかし、DMAPNの如何なる特性値が水素化反応に影響を及ぼすのかについては何も指摘されていない。更に、WO 2007/128803に開示された方法により、間接的および直接的に300ppm以下のDGN含量を有するDMAPNが開示されている。また、公知技術水準の別の刊行物(例えば、WO−A−2007/051786、旧東ドイツ国特許第58306号明細書、旧東ドイツ国特許第222011号明細書、米国特許第4172091号明細書)には、如何にして300ppmのDGN含量を有するDMAPNを製造することができるかについての明らかで直接的な指摘は含まれていないし、DMAPN中のDGNの含量が後続の水素化に影響を及ぼすことも含まれていない。
【0013】
本発明による方法においては、使用されるDMAPNに対してDGN300ppm以下の含量を有するDMAPNが使用される。好ましくは、本発明による方法においては、250ppm以下、特に有利に150ppm以下、殊に有利に50ppm以下のDGN含量を有するDMAPNが使用される。
【0014】
好ましい実施態様において、DGN300ppm以下の含量を有するDMAPNは、ACNをDMAと連続的に反応させ、かつ引続き蒸留することにより製造されうる。この好ましい実施態様において、DMAPNの製造は、WO 2007/128803の教示またはWO 2007/051786の教示と同様に行なうことができ、当該文献の記載内容は、参照のために本明細書に援用される。
【0015】
好ましくは、ACNとDMAとの反応は、前記の好ましい実施態様において、カスケード型反応器中で行なわれ、この場合には、有利に2〜10個、特に有利に2〜8個、殊に有利に3〜7個の反応器が直列に接続されている。カスケード型反応器中でのDMAとACNとの反応は、様々な反応条件の調節を可能にする。それによって、反応流中の副生成物の割合を同時に減少させながら、ACNの完全な反応を達成させることができる。
【0016】
カスケード型反応器の反応器は、例えば攪拌容器型反応器、外部ポンプ循環路を備えた反応器(ループ型反応器)または管状反応器であってよく、この場合カスケード型反応器の単数の第1の反応器または複数の第1の反応器が攪拌容器型反応器であり、かつ前記カスケード型反応器の単数の最後の反応器または複数の最後の反応器が管状反応器であることは、好ましい。
【0017】
特に、反応温度は、好ましい実施態様において、反応器中で20℃〜120℃の範囲内にある。より好ましくは、40℃〜90℃の範囲であり、この場合には、さらに、カスケード型反応器の単数の最後の反応器中または複数の最後の反応器中の温度がカスケード型反応器の単数の第1の反応器中または複数の第1の反応器中よりも低い反応温度を有することは、好ましい。
【0018】
好ましい実施態様において、ACNとDMAとの反応は、好ましくは、1バール〜20バール、有利に2〜15バール、特に有利に3〜8バールの圧力範囲内で行なわれ、この場合この圧力は、一般に、それぞれの反応条件の際に使用されるDMAの固有圧力によって決定される。
【0019】
特に好ましい実施態様において、ACNとDMAとの反応は、水の存在下で行なわれる。
【0020】
反応が水の存在下で行なわれる場合には、水の割合は、使用されるACNおよびDMAの総和に対して、0.5〜10質量%の範囲内、特に有利に1〜8質量%の範囲内、殊に有利に3〜7質量%の範囲内にあるのが好ましい。更に、DMA対ACNのモル比は、好ましくは、1.00:1〜1.10:1、有利に1.01:1〜1.08:1、特に有利に1.02:1〜1.06:1である。
【0021】
反応において付加的な水を使用しない場合には、モル過剰量のDMAを使用することが好ましい。更に、DMA対ACNのモル比は、好ましくは1.02超:1、特に有利に1.04:1〜1.35:1、殊に有利に1.06:1〜1.25:1である。
【0022】
好ましい実施態様において、ACNおよびDMAおよび場合により水の供給は、互いに一緒に行なうことができるか、または互いに別々に行なうことができる。DMAおよびACNの供給は、有利には、互いに別々に行なわれる。特に好ましくは、前記供給は、最初にDMAを、既にDMAPNを含む循環流中に導入し、有利にDMAとDMAPNを一緒にすることに続けてACNを供給する方法で行なわれる。水は、例えば付加的に供給される形で反応流中に到達しうる。更に、少なくとも部分的にDMAは、水溶液の形で反応流に供給されることが可能である。このことは、例えば30〜70質量%のDMA水溶液の形で行なうことができる。その上、使用されるACNは、水を含んでいてよい。
【0023】
更に、DMAおよびACNが液体の形で供給されることは、好ましいことが証明された。DMAがガス状の状態で反応混合物に供給される方法と比較してより良好な空時収量でより高い変換率を許容する。従って、ACNならびにDMAの供給は、これらの出発物質がDMAPNの製造のために液状の形で存在することを保証する、適当な温度ならびに適当な圧力を有する。
【0024】
好ましい実施態様において、ACNをDMAと連続的に反応させることによって、DMAPN含有反応混合物が反応排出物として得られ、この反応排出物は、DMAPNと共に、一般に、なお、未反応のDMA、DGNおよび別の有機化合物、ならびに場合により水および場合により未反応のACNを含んでいてよい。
【0025】
DMAPNの一部分は、循環路流または循環流として前記方法に返送されてよく、この場合この返送は、有利に第1の反応器の後方で行なわれる。
【0026】
引続き、この好ましい実施態様において得られるDMAPN反応混合物は、熱的分離シーケンス中に導入され、この熱的分離シーケンス中でDMAPNの易揮発性副成分ならびに高沸点副成分が分離される。
【0027】
このために、好ましくは、低沸点物を分離するための塔と難揮発性副生成物を分離するための他の蒸留塔とからなる塔装置が使用されうる。
【0028】
特に好ましくは、低沸点物と高沸点物との分離は、1つの塔内で実施されてよく、この場合低沸点物は、塔頂部を介して取得され、高沸点物は、塔底部を介して取得され、およびDMAPNは、ガス状または蒸気状で側方取出し口を介して取得される。
【0029】
さらなる特に好ましい実施態様において、低沸点物と高沸点物との分離は、隔壁を有する塔内で中央部分で行なうことができ、この分離の際に、低沸点物は、塔頂部を介して取得され、高沸点物は、塔底部を介して取得され、およびDMAPNは、供給管に対向する、隔壁の側面で取得される。
【0030】
低沸点物(LS)、例えばDMA、ACN、場合により水および別の低沸点副成分は、低沸点物塔の塔頂部または濃縮部の塔頂部で取得される。DMAPNに関係する高沸点物(SS)は、より低い蒸気圧を有するDGNおよび場合により別の副成分である。これらの副成分は、回収部の塔底排出口または回収塔の塔底排出口を介して分離される。
【0031】
蒸留シーケンスの正確な運転条件は、使用される塔取付け物の分離能力に相応して、当業者によって、蒸留シーケンス中に導入される成分の測定されるかまたは推定される蒸気圧および蒸気液体相平衡(VLE)につき従来の計算法により算出されうる。
【0032】
好ましくは、蒸留シーケンスは、分離能力を向上させるための取付け物を有する。蒸留取付け物は、例えば底面、充填体堆積物または構造化された規則充填物として存在していてよい。隔壁塔にとって好ましくは、構造化された規則充填物が使用される。構造化された規則充填物を使用する際には、底面、例えばバルブ付き底面と比較して少ない圧力損失および少ない比液ホールドアップ(spezifische Fluessig−Hold−up)が好ましい。前記取付け物は、1つ以上の床中に存在していてよい。
【0033】
DMAPNの製造からの反応排出物は、特に蒸留塔の理論段の25%〜75%の空間範囲内に供給される(下から数えて)。例えば、供給は、例えば理論段の中央部の下方で行なうことができる。最適な供給位置は、当業者によって通常の計算道具で算出されてよい。
【0034】
低沸点物を分離するための理論的分離段、いわゆる濃縮部の数は、一般に、10〜50個、特に10〜30個の範囲内にある。高沸点物を分離するための理論的分離段、いわゆる回収部の数は、一般に、10〜50個、特に10〜30個の範囲内にある。
【0035】
単数または複数の蒸留塔の塔頂圧は、特に有利に0.1〜10バール、殊に有利に0.5〜5バールである。殊に有利には、単数または複数の蒸留塔は、常圧で運転される。
【0036】
低沸点物を分離するための塔と難揮発性の副成分を分離するための他の蒸留塔とからなる、塔装置における低沸点物と高沸点物との分離を行なう場合には、有利に低沸点物塔の塔底部での温度が調節され、この温度は、水の蒸発温度よりも上にあるが、DMAPNの蒸発温度よりも下にある。例えば、1バール(絶対圧)の塔頂圧の場合に、好ましくは、塔底温度は、100〜170℃、特に有利に110〜150℃に調節されうる。高沸点物塔の塔底部において、好ましくは、DMAPNの蒸発温度よりも上にあるが、DGNの蒸発温度よりも下にある温度に調節される。例えば、回収塔において、1バール(絶対圧)の塔頂圧の場合には、有利に塔底温度は、170〜200℃、特に有利に180〜195℃に調節されてよい。
【0037】
低沸点物塔の凝縮器は、一般に、DMAの主要部分または水が相応する塔頂圧で凝縮される温度で運転される。一般に、凝縮器の運転温度は、25〜100℃、特に25〜50℃の範囲内にある。
【0038】
特に、凝縮器で生じる凝縮物は、30%超、有利に50%超が低沸点物塔の塔頂部に返送される。蒸発に必要とされるエネルギーは、通常、塔底部内の内側にあるかまたは外側にある蒸発器によって導入される。
【0039】
低沸点物塔の凝縮器中で、主にDMAおよび場合により水および場合により別の低沸点有機副成分を含む凝縮物が生じる。この凝縮物は、出発生成物として、DMAPNの合成のための反応に返送されてよい。
【0040】
低沸点物塔の塔底排出口で、DMAPNは、DGNおよび場合により別の難揮発性副成分を有する塔底生成物として得られる。
【0041】
回収塔の塔底排出口で、DGNは、塔底生成物として得られ、および場合により別の難揮発性副成分が得られる(DGNの分離)。
【0042】
DMAPNは、回収塔の塔頂部で取得される。
【0043】
低沸点物が塔頂部を介して取得され、高沸点物が塔底部を介して取得され、およびDMAPNが液状または蒸気状で側方取出し口を介して取得される蒸留塔中で低沸点物と高沸点物とを分離するか、または低沸点物が塔頂部を介して取得され、高沸点物が塔底部を介して取得され、およびDMAPNが供給管に対向する、隔壁の側面で取得される、隔壁を有する塔中で中央部で低沸点物と高沸点物とを分離する場合には、有利に温度は、前記塔の塔底部中で調節され、この温度は、DMAPNの蒸発温度よりも上にあるが、しかし、DGNの蒸発温度よりも下にある。例えば、1バール(絶対圧)の塔頂圧の場合に、好ましくは、塔底温度は、170〜200℃、特に有利に180〜195℃に調節されうる。
【0044】
蒸留塔の凝縮器は、一般に、DMAの主要部分または水が相応する塔頂圧で凝縮される温度で運転される。
【0045】
一般に、凝縮器の運転温度は、25〜100℃、特に25〜50℃の範囲内にある。
【0046】
特に、凝縮器で生じる凝縮物は、30%超、有利に50%超が蒸留塔の塔頂部に返送される。蒸発に必要とされるエネルギーは、通常、塔底部内の内側にあるかまたは外側にある蒸発器によって導入される。
【0047】
前記凝縮器中で、主にDMAおよび場合により水および場合により別の低沸点有機副成分を含む凝縮物が生じる。
【0048】
この凝縮物は、出発生成物としてDMAPNの合成のための反応に返送されてよい。
【0049】
回収部の塔底排出口で、DGNは、塔底生成物および場合により別の難揮発性副成分として得られる(DGN分離)。
【0050】
DMAPNは、液状または蒸気状で側方取出し口を介して取得されるか、または、供給管に対向する、隔壁の側面で取得される。
【0051】
分離シーケンスの生成物として生じるDMAPNは、通常、DMAPN95質量%超、有利にDMAPN98質量%超、特に有利にDMAPN99質量%超の含量を有する。
【0052】
この好ましい実施態様において得られるDMAPNは、有利にDMAPNに対して300ppm以下のDGN含量、特に有利にDMAPNに対して250ppm以下の含量、殊に有利にDMAPNに対して150ppm以下の含量、殊にDMAPNに対して50ppm以下の含量を有する。
【0053】
殊に好ましい実施態様において、ジメチルアミンとアクリルニトリルとの反応は、水の存在下でカスケード型反応器中で50〜80℃の温度範囲内および3〜8バールの圧力範囲内で行なわれ、この場合DMA対ACNのモル比は、1.02:1〜1.10:1の範囲内にあり、および水の割合は、使用されるACNおよびDMAの総和に対して1〜8質量%の範囲内にある。この反応条件を維持する場合には、一般に、300ppm以下のDGN含量を有するDMAPNを得るために、DMAPNの製造からの反応排出物の蒸留による後処理は、不要である。
【0054】
こうして得られた
DMAPN中のDMAPN対DGNの質量比は、有利に1000000:1〜1000000:300の範囲内、特に有利に1000000:5〜1000000:250の範囲内、殊に有利に1000000:8〜1000000:150の範囲内、殊に1000000:10〜1000000:100の範囲内にある。
【0055】
それに応じて、本発明は、DMAPN対DGNの質量比が1000000:5〜1000000:250の範囲内にあることを特徴とする、DMAPNとDGNとの混合物にも関する。
【0056】
DMAPN中のDGNの含量は、当業者に公知の分析法によって、例えばガスクロマトグラフィーによって簡単に算出されうる。
【0057】
更に、DMAPAを製造するための本発明による方法において、水素が使用される。
【0058】
還元剤として、水素または水素を含むガスが使用されてよい。水素は、一般に工業的に純粋に使用される。水素は、水素を含むガスの形で、すなわち別の不活性ガス、例えば窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴンまたは二酸化炭素との混合物で使用されてもよい。前記ガスが、使用される水素化触媒に対して触媒毒、例えばCOを全く含まない場合および前記ガスが、使用される水素化触媒に対して触媒毒、例えばCOを含まない限り、水素を含むガスとして、例えばリフォーマー排ガス、リファイナリーガス等が使用されてよい。しかし、好ましくは、純粋な水素または本質的に純粋な水素、例えば水素99質量%超、有利に水素99.9質量%超、特に有利に水素99.99質量%超、殊に水素99.999質量%超の含量を有する水素が前記方法に使用される。
【0059】
300ppm以下のDGN含量を有するDMAPNと水素との反応は、アンモニアの存在下で行なうことができる。好ましくは、前記方法において、純粋なアンモニア、有利にアンモニア99質量%超、特に有利にアンモニア99.9質量%超の含量を有するアンモニアが使用される。
【0060】
この場合、好ましい実施態様において、アンモニアは、一般に、ニトリルに対するモル比において0.5:1〜100:1、特に2:1〜20:1の比で使用される。さらなる好ましい実施態様は、アンモニアが全く添加されない方法である。
【0061】
300ppm以下のDGN含量を有するDMAPNと水素との反応は、触媒の存在下で行なわれる。
【0062】
アミンへのニトリル官能基の水素化のための触媒として、殊に、活性種として周期律表の第8副族の1つ以上の元素(Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、有利にFe、Co、Ni、RuまたはRh、特に有利にCoまたはNiを含む触媒が使用されてよい。その中に含まれるのは、水素化活性金属と他の成分(有利にAl)からなる合金の浸出(活性化)によって得られる、いわゆる骨格触媒(ラニー(Raney(登録商標))タイプとも呼称され、以下、ラニー触媒とも呼称される)である。この触媒は、付加的に1つ以上の促進剤を含むことができる。特に好ましい実施態様において、ラニーニッケル触媒またはラニーコバルト触媒が使用される。
【0063】
触媒は、非担持触媒または担持触媒として使用されてよい。担体として、有利に金属酸化物、例えばAl
2O
3、SiO
2、ZrO
2、TiO
2、金属酸化物の混合物または炭素(活性炭、炭、黒鉛)が使用される。
【0064】
酸化物触媒は、使用前に、反応器の外側で、または反応器内で、金属酸化物の還元によって、水素を含むガス流中で高められた温度で活性化される。触媒が反応器の外側で還元される場合には、その後に酸素を含むガス流によって、または不活性材料中への埋設によって不動態化を行なうことができ、空気での制御されない酸化が回避され、および確実な取扱いが可能となる。不動態化された触媒を反応に使用する前に、この触媒は、通常、水素を含むガスで高められた温度で再活性化される。
【0065】
特に好ましい固定床触媒は、欧州特許出願公開第0742045号明細書または欧州特許出願公開第0636409号明細書中に開示された、Mn、Pおよびアルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)でドープされたコバルト非担持触媒である。前記触媒の触媒活性材料は、水素での還元前に、それぞれ酸化物として計算した、コバルト55〜98質量%、殊に75〜95質量%、燐0.2〜15質量%、マンガン0.2〜15質量%およびアルカリ金属、殊にナトリウム0.05〜5質量%からなる。
【0066】
さらなる適当な触媒は、活性触媒においてコバルトおよび場合によりニッケルが3〜30nmの平均粒径を有することを特徴とする、欧州特許出願公開第1306365号明細書中に開示された、コバルトおよび場合により付加的にニッケルならびに粒子状担持材料上の少なくとも1つのさらなるドーピング金属を含む触媒である。
【0067】
DMAPAを製造するための本発明による方法は、有利に連続的な運転方式で行なわれる。これは、高い空時収量と関連した、特に効率的な変換率を可能にする。しかし、DMAPAの製造は、非連続的または半連続的に行なってもよい。
【0068】
水素化を実施することができる典型的な反応器は、例えば高圧攪拌容器型反応器、ループ型反応器、オートクレーブまたは固定床反応器である。好ましくは、本発明による方法は、高圧攪拌容器型反応器または固定床反応器中で実施される。殊に有利には、水素化は、固定床反応器中で実施される。
【0069】
固定床反応器は、上から下向きに(流動運転方式)、または下から上向きに(塔底運転方式)貫流されてよい。
【0070】
水素、DMAPNおよび場合によりアンモニアは、一緒に反応器の反応帯域中に、例えば予め混合された反応体流として供給されてよいか、または別々に供給されてよい。
【0071】
更に、返送流または循環流が進入してよい。
【0072】
水素化は、一般に、1〜500バール、有利に10〜400バールの圧力で、特に有利に20〜300バール、殊に有利に30〜200バールの圧力で実施される。圧力保持または圧力制御は、一般に、水素の計量供給により行なわれる。
【0073】
水素化は、一般に、20〜400℃、有利に40〜250℃、特に有利に50〜180℃、殊に有利に70〜150℃の温度で行なわれる。
【0074】
水素化反応器からの反応排出物は、有利に熱交換器上に導かれる。熱交換器上への移行後、水素化排出物の温度は、有利に20〜80℃の範囲内にある。
【0075】
好ましい実施態様において、水素化は、断熱的に行なわれる。
【0076】
水素化排出物は、通常、水素化に引続き後処理される。一般に、水素およびアンモニアは、水素化排出物と分離され、および分離後に再びプロセス中に返送されてよい。
【0077】
好ましくは、水素化排出物は、後処理のために分離器中に導入され、この分離器中で、液状粗製生成物は、ガス状成分、例えば水素、DMAおよびアンモニアと分離され、および出口を介して導出されうる。
【0078】
好ましい実施態様において、粗製生成物は、少なくとも部分的に反応流に循環運転方式で再び供給されうる。
【0079】
水素、DMAおよびアンモニアから生じる混合物は、さらなる出口を介して相分離器(Phasenscheider)から導出することができ、および同様に有利にプロセス中に返送されうるかまたは場合により分離後にDMAPNの製造に返送されうる。
【0080】
本発明は、公知技術水準と比較してDMAPNの水素化に使用される触媒の寿命をさらに改善することが可能である。
【0081】
殊に、望ましくない副反応、例えばニトリルの発熱分解、DMAPNのACNおよびDMAへの再分解またはDMAPAの縮合による第二級アミンの形成は、触媒の使用中に、触媒の負荷を低減する必要なしに、低く維持することができる。工業的視点から、生成物中のDMAPNの含量が少ないことは、好ましく、それというのも、DMAPNをDMAPAと分離することは、困難であり、かつその後の使用において、望ましくない性質、例えば臭気および変色をまねくからである。水素化排出物中のDMAPNの含量は、実際に或る程度、初期値と比較して反応温度を高めることによって相殺されうる。それというのも、このことは、より高い変換率を生じるが、しかし、反応温度の上昇によって、品質の低下に影響を及ぼす別の副成分が生じ、したがって、反応温度は、任意に高めることができないからである。本発明による方法は、プロセスの間に触媒の不活性化を少なくなるように維持し、それによって触媒の不変に良好な性能において触媒の寿命を延長することを可能にする。この性質のための1つの基準は、温度上昇率と運転時間とからの商である。温度上昇率と運転時間とからの商が小さいことは、触媒ができるだけ長時間、出発温度で運転されることが可能であり、および場合により触媒の不活性化の相殺に必要とされる温度上昇率が少ない結果となり、したがって副反応が極めて増加しすぎる臨界的温度には、できるだけ長時間到らないことを意味する。本発明による方法によって、温度上昇率と触媒の運転時間とからの商は、小さくなりうる。
【0082】
本発明を次の実施例につき説明する。
【実施例】
【0083】
実施例a)〜c):例1〜3のための使用製品としての3−ジメチルアミノプロピオニトリル(DMAPN)の製造
一般的実施:
DMAPNの製造は、場合により微少量の水の存在下で、アクリルニトリル(ACN)とジメチルアミン(DMA)との反応によって行なわれた。
【0084】
3個の直列に接続された攪拌型オートクレーブのカスケードからなる連続的装置が使用された(C1〜C3)。C1は、80mlの容量を有し、C2は、120mlの容量を有し、およびC3は、200mlの容量を有していた。場合により、C3の後方になお4個のさらなる攪拌型オートクレーブが一列に接続されうる: それぞれ270mlの容量を有するC4、C5、C6およびC7。容量とは、液体で充填される容量であると理解されたい。
【0085】
ACN、DMAおよび場合により水は、同時にC1の装置中に計量供給された。この運転方式は、真っ直ぐな通路内で行なわれた。オートクレーブ中の圧力は、5バールであった。
【0086】
こうして製造されたDMAPNは、さらなる後処理なしに直接水素化工程(実施例1〜3)に供給された。粗製DMAPNの一部分は、分離除去され、かつ副成分に関連して分析された。
【0087】
実施例a):実施例1のためのDMAPNの製造:
C1、C2およびC3の使用
温度C1:60℃、温度C2:70℃、温度C3:70℃、
ACNの計量供給:43.3g/時間、
DMAの計量供給:37.5g/時間(ACNに対してDMA2モル%の過剰量)、
水の計量供給:2.1g/時間(DMAおよびACNの使用された量に対して2.6質量%に相当する)。
【0088】
副成分に関連する分析:
高沸点の副生成物を分析するために、こうして製造されたDMAPN1403gの量を、ビグロー塔(Vigreux−Kolonne)を備えた蒸留装置中で100ミリバールおよび塔頂温度100〜105℃で、塔底温度が最大135℃になるまで、および10〜15gの残留物になるまで蒸発濃縮した。
【0089】
この残留物によってGC分析を実施した:
GCカラム:30m RTX−5、ID=0.32mm、フィルム厚さ=1.5μm、
温度プログラム:70℃−7℃/分−280℃−30分間。
【0090】
DGNを16分間の保持時間で検出した。
【0091】
最初に蒸留に使用されたDMAPNの量(1403g)に対するDGNの含量は、227ppmであった。
【0092】
実施例b):実施例2のためのDMAPNの製造:
C1、C2、C3、C4、C5、C6およびC7の使用、
温度C1:60℃、温度C2:70℃、温度C3:70℃、温度C4:70℃、温度C5:70℃、温度C6:70℃、温度C7:60℃、
ACNの計量供給:43.3g/時間、
DMAの計量供給:37.5g/時間(ACNに対してDMA2モル%の過剰量)。
【0093】
副成分に関連する分析:
高沸点の副生成物を分析するために、こうして製造されたDMAPN1406gの量を、ビグロー塔(Vigreux−Kolonne)を備えた蒸留装置中で100ミリバールおよび塔頂温度100〜105℃で、塔底温度が最大135℃になるまで、および10gの残留物になるまで蒸発濃縮した。
【0094】
この残留物によってGC分析を実施した(実施例a)参照):
最初に蒸留に使用されたDMAPNの量(1406g)に対するDGNの含量は、373ppmであった。
【0095】
実施例c):実施例3のためのDMAPNの製造
C1、C2、C3、C4、C5、C6およびC7の使用、
温度C1:60℃、温度C2:70℃、温度C3:70℃、温度C4:70℃、温度C5:70℃、温度C6:70℃、温度C7:60℃、
ACNの計量供給:43.3g/時間、
DMAの計量供給:37.5g/時間(ACNに対してDMA2モル%の過剰量)、
水の計量供給:4g/時間。
【0096】
高沸点の副生成物を分析するために、こうして製造されたDMAPN1014gの量を、ビグロー塔(Vigreux−Kolonne)を備えた蒸留装置中で100ミリバールおよび塔頂温度100〜105℃で、塔底温度が最大135℃になるまで、および5.3gの残留物になるまで蒸発濃縮した。
【0097】
この残留物によってGC分析を実施した(実施例a)参照):
最初に蒸留に使用されたDMAPNの量(1014g)に対するDGNの含量は、27ppmであった。
【0098】
実施例1〜3:実施例a)〜c)からのDMAPNの水素化
一般的実施:
DMAPNのDMAPAへの連続的な水素化を、100cmの加熱可能な長さおよび6mmの内径を有する、鉛直に構成された管状反応器中で実施した(反応器容積約28ml)。
【0099】
前記反応器をコバルト触媒26gで充填し、この場合このコバルト触媒の製造は、欧州特許出願公開第0636409号明細書中に記載されている(実施例 触媒A)。
【0100】
硝酸コバルト、硝酸マンガンおよび燐酸を水中に溶解することによって、コバルト10質量%、マンガン0.55質量%およびH
3PO
40.45質量%を含有する溶液を製造した。20%の炭酸ナトリウム溶液を添加することによって、50℃の温度で沈澱を行なった。生じた沈殿物を、洗浄水中でナトリウムまたは硝酸塩がもはや検出不可能になるまで洗浄した。こうして得られた固体を水と一緒にどろどろにすり潰し、および噴霧塔内に噴霧した(入口温度=550℃)。この噴霧物質を500℃で乾燥し、粉砕し、および押出機中で直径4mmのストランドに形成させた。このストランドを100〜120℃で乾燥し、引続き650℃で1時間およびその後に850℃で3時間か焼した。
【0101】
こうして製造された触媒前駆体は、コバルト90.4質量%、マンガン5.1質量%、ナトリウム0.3質量%および燐3.1質量%を含有した。
【0102】
引続き、この触媒を還元し(H
2、300℃、1バール)、および不動態化した(N
2/O
2、50℃、1バール)。この状態で触媒成形体を管状反応器中に取付け、およびこの実験室用装置を窒素で不活性化した。
【0103】
25Nl/hの水素流の下で、12時間以内に280℃に加熱し、280℃で12時間維持し、最終的にこの反応器を窒素流の下で冷却した。その後に、圧力を180バールに高め、4時間以内に、300mlの量のDMAPAを真っ直ぐな通路内で同時に50Nl/hの水素流で50℃で下から上へ触媒上に運搬した。
【0104】
引続き、DMAPNの水素化を開始した。そのために、下から上へDMAPN26.4g/時間、アンモニア液21.7g/時間および水素50Nl/hを触媒上に導いた。全ての実験の際の開始温度は、120℃であった。加熱は、オイルサーモスタットを用いて行なわれ、温度測定は、ジャケットの油浴中で行なわれた。この反応器を等温的に運転した。
【0105】
反応器への通過後、この反応混合物を180バールおよび室温でガス状成分と液状成分とに分離した。循環ポンプを用いて、液状成分の80g/時間の流れを前記反応器の入口に返送した。ガス状成分は、返送されなかった。反応混合物の残りの部分を20バールに放圧し、オンラインガスクロマトグラフィーを用いて分析し、最終的に1バールで排出物容器中に捕集した。
GCカラム:60m CP Volamine/WCOT 融解石英0.32mm、
温度プログラム:50℃−10分間−15℃/分−240℃−30分間。
【0106】
記載されたDMAPN値は、質量%である。
【0107】
最初の7日間以内で、すなわち最初の168時間以内で、この実験において、DMAPN供給量を段階的に52.8g/時間に高め、同時にNH
3供給量を43.4g/時間に高めた。それによって、この時間後、触媒負荷量は、毎時触媒1kg当たりDMAPN2.0kgであった。
【0108】
この試験の際、触媒の不活性化によって引き起こされた変換率の減少を相殺するために、120℃の初期温度を経過時間の増加と共に高めた。ガスクロマトグラフィーにより測定されたDMAPN量が約0.3%の値を超えたら直ちに、オイルジャケット中の温度を2℃だけ高めた。この試験を少なくとも1500時間の経過時間に亘って運転した。
【0109】
触媒の不活性化は、次のように定量化される:
次の記載からの商:必要とされる温度上昇率(0.3%以下の残留DMAPN含量を保証するために、ジャケット温度120℃から出発する経過時間に亘って)と経過時間とから。それによって、何時間の平均で温度を1℃だけ高めなければならないかが記載される。
【0110】
例1:
227ppmの2−(ジメチルアミノメチル)−グルタロニトリル(DGN)の含量を有する、実施例a)からのDMAPNを使用した。
【0111】
1600時間の試験時間後、残留DMAPN含量をなお0.3%未満に維持するためには、120℃の温度で十分であった。従って、触媒の不活性化は、1℃未満/1000時間(120℃−120℃/1600時間 1℃未満/1000時間)であった。
【0112】
例2(比較例):
373ppmの2−(ジメチルアミノメチル)−グルタロニトリル(DGN)の含量を有する、実施例b)からのDMAPNを使用した。
【0113】
1700時間後、残留DMAPN含量を約0.3%に維持するためには、温度を128℃に調節しなければならなかった。
【0114】
従って、触媒の不活性化は、1℃/213時間(128℃−120℃/1700時間=8℃/1700時間)であった。
【0115】
例3:
27ppmの2−(ジメチルアミノメチル)−グルタロニトリル(DGN)の含量を有する、実施例c)からのDMAPNを使用した。
【0116】
1600時間の試験時間後、残留DMAPN含量を明らかに0.3%未満に維持するためには、120℃の温度で十分であった。
【0117】
従って、触媒の不活性化は、1℃/1000時間(120℃−120℃/1700時間 1℃未満/1000時間)であった。
【0118】
例1〜3の比較は、例1および3における触媒の不活性化速度が最も低く、一方で、この速度は、例2において最も高いことを示す。
【0119】
例4:蒸留による300ppmよりもかなり少ないDGN含量を有するDMAPNの製造
ビグロー塔(Vigreux−Kolonne)を備えた実験室用蒸留装置中に、次の組成(有機成分に関連して)を有するDMAPNを装入する(GC分析:カラム:30m RTX−5、ID=0.32mm、フィルム厚さ=1.5μm、温度プログラム:70℃−7℃/分−280℃−30分間、面積百分率での評価):
DMAPN96.97%、
ジメチルアミン2.95%、
2−(ジメチルアミノメチル)グルタロニトリル0.02%(200ppm)。
【0120】
含水量は、0.3%であった。
【0121】
ところで、100ミリバールおよび最大100℃の塔底温度ならびに塔頂温度での蒸留によって、僅かな割合の留出物が取り出され、この留出物は、主要部分がDMAPNから成っていた。
【0122】
残留する塔底物の組成は、次のとおりであった:
DMAPN99.90%超、
ジメチルアミン0.01%未満、
2−(ジメチルアミノメチル)グルタロニトリル0.02%。
【0123】
含水量は、0.02%であった。
【0124】
ところで、第2の工程において、塔底生成物を100ミリバールおよび少なくとも100℃の塔底温度および塔頂温度で、なお微少量の残留物質だけが蒸留気泡中に残留するまで蒸留した。この留出物によって次の組成が測定された:
DMAPN99.95%。
【0125】
2−(ジメチルアミノメチル)グルタロニトリルは、検出されなかった。
【0126】
従って、DGN不含のDMAPNを得ることができた。
【0127】
例5:WO−2007/128803の実施例2に準拠するDMAPNの製造(比較例)
DMAのACNへの付着を、7個の攪拌容器からなる、連続運転されるカスケード型攪拌容器中で実施した。7個の攪拌容器の容積比は、1:1.5:2.5:3.4:3.4:3.4:3.4であった。反応を5バールの圧力で実施した。
【0128】
最初の2個の攪拌容器中の温度は、60℃であり、3番目から7番目の容器中の温度は、40℃であった。前記付着を、第1の攪拌容器の容積に対して、単位時間当りのアクリルニトリルの供給量として計算した、0.54kg/l/hの負荷量の際に実施した。DMA対ACNの使用物質のモル比率は、0.98であった。アクリルニトリル残留含量は、約2質量%であった(全反応搬出物に対して)。付着段階の容器中での反応混合物の平均滞留時間は、約16時間であった。
【0129】
こうして製造されたDMAPNの1406gの量を、上記したように(実施例a)参照)10gの残留物になるまで蒸留した。この残留物によって、GC分析を実施した(実施例a)参照):
GDNを16分の保持時間で検出した。
【0130】
最初に蒸留に使用されたDMAPNの量(1406g)に対するDGNの含量は、427ppmであった。