特許第5980347号(P5980347)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980347
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】経皮吸収シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20160818BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 31/715 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   A61M37/00 505
   A61M37/00 530
   A61K9/70 401
   A61K8/02
   A61K47/36
   A61K47/38
   A61K8/73
   A61K37/02
   A61K31/7088
   A61K48/00
   A61K31/715
   A61K39/00
   A61K45/00
   A61K8/64
【請求項の数】8
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-546987(P2014-546987)
(86)(22)【出願日】2013年11月12日
(86)【国際出願番号】JP2013080538
(87)【国際公開番号】WO2014077244
(87)【国際公開日】20140522
【審査請求日】2015年4月23日
(31)【優先権主張番号】特願2012-249678(P2012-249678)
(32)【優先日】2012年11月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】吉田 淳哉
(72)【発明者】
【氏名】笠原 誠治
(72)【発明者】
【氏名】小山田 孝嘉
(72)【発明者】
【氏名】車 彦龍
【審査官】 和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0269685(US,A1)
【文献】 特開2012−196426(JP,A)
【文献】 特開2006−341089(JP,A)
【文献】 特開2012−200572(JP,A)
【文献】 特表2008−509747(JP,A)
【文献】 特表2003−501161(JP,A)
【文献】 特開2009−045766(JP,A)
【文献】 特開2007−037885(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/066763(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/094394(WO,A1)
【文献】 特開2011−012050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
A61K 8/02
A61K 8/64
A61K 8/73
A61K 9/70
A61K 31/7088
A61K 31/715
A61K 38/00
A61K 39/00
A61K 45/00
A61K 47/36
A61K 47/38
A61K 48/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体で支持されたシート部の表面に複数の微細な針状凸部が2次元配列で配列された経皮吸収シートの製造方法において、
支持体上に、経皮吸収材料を含有する複数の層を持ち、最下層を第一層、最上層を第t層(t≧2)とし、第n層の粘度をVnとした時、V1>V2≧・・・≧Vn≧・・・≧Vtとなり、さらに最下層以外の少なくとも1層に薬剤を含む複数層膜を形成する積層工程と、
前記針状凸部が反転した針状凹部が2次元配列で配列されたモールドを、前記支持体に支持された前記複数層膜の表面に押し付けて前記複数層膜を流動させることにより、前記針状凹部に経皮吸収材料の溶液を充填する充填工程と、
前記モールドを前記複数層膜の表面に押し付けたままの状態で前記複数層膜を固化する固化工程と、
前記固化した複数層膜を前記モールドから剥離する剥離工程と、を含む経皮吸収シートの製造方法。
【請求項2】
前記最下層の粘度が前記最上層の粘度の2倍以上である請求項1に記載の経皮吸収シートの製造方法。
【請求項3】
前記最上層の粘度は2〜30Pa・sである請求項1または2に記載の経皮吸収シートの製造方法。
【請求項4】
モールドの針状凹部の先端に空気抜き孔がある請求項1から3の何れか1に記載の経皮吸収シートの製造方法。
【請求項5】
前記経皮吸収材料は、水溶性の高分子物質である請求項1から4の何れか1に記載の経皮吸収シートの製造方法。
【請求項6】
経皮吸収材料を含有する複数の層の少なくとも1層の前記経皮吸収材料が、複数の水溶性高分子物質からなる請求項5に記載の経皮吸収シートの製造方法。
【請求項7】
前記水溶性の高分子物質の少なくとも1つは、ヒドロキシエチルデンプン、デキストラン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロースの何れか1である請求項5又は6に記載の経皮吸収シートの製造方法。
【請求項8】
前記薬剤は、ペプチド、タンパク質、核酸、多糖類、ワクチン、水溶性低分子化合物に属する医薬化合物、又は化粧品成分である請求項1から7の何れか1に記載の経皮吸収シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は経皮吸収シート及びその製造方法に係り、特に薬剤を微小針に集中させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体表面、即ち皮膚や粘膜などより、薬品(薬剤)などを投与する方法としては、主に液状物質または粉状物質を付着させる方法が殆どであった。しかしながら、これらの物質の付着領域は、皮膚の表面に限られていたため、発汗や異物の接触などによって、付着している薬品などが除去される場合があり、適量を投与することは困難であった。また、薬品を皮膚の奥深くに浸透させるためには、このような薬品の拡散による浸透を利用した方法では、浸透深さを確実に制御することは困難であるため、充分な薬効を得ることは困難であった。
【0003】
このような背景から、薬剤を含有する高アスペクト比の微小針(針状凸部)が形成された経皮吸収シートを用い、微小針を皮膚内に挿入することにより、薬品を注入する方法が行われている。経皮吸収シートとして使用するためには、薬剤を混入させる必要があるが、薬剤は高価なものが多いことから、微小針に集中させて薬剤を含有させることが必要になる。
【0004】
経皮吸収シートの製造方法としては、例えば特許文献1や特許文献2がある。
【0005】
特許文献1には、微小針の反転形状が形成されたモールドに、薬剤を含む材料溶液を充填・固化した後に、薬剤を含まない材料溶液を充填・固化する経皮吸収シートの製造方法が開示されている。これにより、微小針に効率的に薬剤を集中させることができるとされている。
【0006】
特許文献2は、微小針に効率的に薬剤を集中させるための技術ではなく、薬剤の徐放性を改良する技術であるが、次のように針状体を製造している。即ち、基板に易分解部材料を塗布した上に突起部材料を、モールドの針状凹部のある部分のみ選択塗布又は全面塗布した塗布層に、針状凸部の反転形状が形成された凹版を押圧した後、基板から凹版を剥離することにより針状体を製造する方法が開示されている。これにより、徐放性を有する経皮投与が可能となり、十分な機械的強度を有する針状体を製造できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−69253号公報
【特許文献2】特開2008−194288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の製造方法は、モールドに材料溶液を充填する充填工程において、薬剤を含む材料溶液の充填と、薬剤を含まない材料溶液の充填と、を2段階で充填している。このため、製造工程が多くなり生産効率が悪くなることがある。
【0009】
一方、特許文献2の製造方法は、一度の充填工程で行うことができ、特許文献1に比べて生産効率は改良される。しかし、モールドに2次元配列された複数の針状凹部の300μm程度(針状凹部の入口径の一般値)の微小領域に突起部材料を選択塗布することは、塗布を煩雑で且つ時間のかかる工程とする欠点がある。また、突起部材料を全面塗布すれば、塗布の煩雑性を解消できるが、突起部材料を針状凹部に集中的に充填させることができない。即ち、特許文献2の技術を単に適用しても、本発明で解決しようとする課題である、薬剤を微小針に集中させることは困難である 。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、薬剤を微小針に集中させることができ、しかも生産効率も良くなる経皮吸収シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は前記目的を達成するために、支持体で支持されたシート部の表面に複数の微細な針状凸部が2次元配列で配列された経皮吸収シートの製造方法において、支持体上に、経皮吸収材料を含有する複数の層を持ち、最下層を第一層、最上層を第t層(t≧2)とし、第n層の粘度をVnとした時、V1>V2≧・・・≧Vn≧・・・≧Vtとなり、さらに最下層以外の少なくとも1層に薬剤を含む複数層膜を形成する積層工程と、針状凸部が反転した針状凹部が2次元配列で配列されたモールドを、支持体に支持された複数層膜の表面に押し付けて複数層膜を流動させることにより、針状凹部に経皮吸収材料の溶液を充填する充填工程と、モールドを複数層膜の表面に押し付けたままの状態で複数層膜を固化する固化工程と、固化した複数層膜を前記モールドから剥離する剥離工程と、を含む経皮吸収シートの製造方法を提供する。
【0012】
本発明の一態様によれば、積層工程において、支持体上に、経皮吸収材料を含有する複数の層を持ち、最下層を第一層、最上層を第t層(t≧2)とし、第n層の粘度をVnとした時、V1>V2≧・・・≧Vn≧・・・≧Vtとなり、さらに最下層以外の少なくとも1層に薬剤を含む複数層膜を形成する。
【0013】
生産効率の観点からt=2または3であることが好ましく、t=2であることがより好ましい。
【0014】
そして、充填工程において、針状凸部(微小針)が反転した針状凹部が2次元配列で配列されたモールドを、支持体に支持された複数層膜の表面に押し付けて複数層膜を流動させることにより、針状凹部に経皮吸収材料を充填する。
【0015】
かかる充填工程において、積層された複数層膜の粘度が上方の層ほど低いことによって、モールドを複数層膜の表面に押し付けると、先ず粘度の最も低い第t層の経皮吸収材料溶液が流動して針状凹部に流れ込む。これにより、粘度の最も低い第t層の経皮吸収材料溶液のみがモールドの針状凹部に充填される。
【0016】
更に、モールドを数層膜の表面に押し付けると、第t層の次に粘度の高い第t−1層の経皮吸収材料溶液が流動して針状凹部に流れ込もうとする。これにより、既に針状凹部の途中まで充填されている第t層の経皮吸収材料溶液を針状凹部の先端側に押し込む。これを繰り返し、最後に最も粘度が高い第1層の経皮吸収材料溶液が充填されることにより、成形された経皮吸収シートの針状凸部に薬剤を集中させることができる。
【0017】
更に、固化工程では、モールドを複数層膜の表面に押し付けたままの状態で複数層膜を固化するので、充填された経皮吸収材料溶液が針状凹部内で固化収縮しても押し付け力により針状凹部の先端側に押し付けられる。これにより、針状凹部の形状を精度よく転写することができる。しかも、本発明は一度の充填工程で充填が終了するので、生産効率も良くなる。
【0018】
なお、使用する薬剤の中には熱により分解する危険があるものが多いため、本発明の積層工程、充填工程、及び剥離工程は、常温で行うことが好ましい。また、固化工程を乾燥により行う場合にも、乾燥温度は薬剤が分解しない低温度で行うことが好ましい。
【0019】
本発明の一態様においては、最下層の粘度が最上層の粘度の2倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがさらに好ましく、10倍以上であることが特に好ましく、20倍以上であることが最も好ましい。最上層と最下層の塗布性および流動性を両立するために最下層の粘度は最上層の粘度の1000倍以下であることが好ましい。
【0020】
最下層の粘度が最上層の粘度の2倍以上あれば、最上層の経皮吸収材料溶液が流動してから最下層の経皮吸収材料溶液が流動するまでの時間差を大きくすることができるので、針状凹部に最上層の経皮吸収材料溶液を集中的に充填することができる。この場合、最上層の粘度は2〜30Pa・sであることが好ましい。
【0021】
これにより、薬剤を微小針に一層集中させることができる。
【0022】
本発明においては、モールドの針状凹部の入口部にはテーパ形状のテーパ部を有することが好ましい。
【0023】
これにより、モールドを複数層膜の表面に押し付けて最上層の経皮吸収材料溶液を流動させたときに、最上層の経皮吸収材料溶液がテーパ部に集まるので最上層の経皮吸収材料溶液を針状凹部に充填され易くすることができる。その他の経皮吸収材料溶液についても同様である。
【0024】
本発明の一態様においては、テーパ部の底面形状が六角形に形成され、該テーパ部を有する針状凹部がハニカム構造状に配列されていることが好ましい。
【0025】
これにより、モールドを複数層膜の表面に押し付ける圧力によって、隣り合う針状凹部に経皮吸収材料が均等に充填され易くなる。
【0026】
本発明の一態様においては、モールドの押し付け面には、隣り合う針状凹部に充填される複数層膜の領域を均等に仕切るための囲い部材が突出されて設けられていることが好ましい。
【0027】
これにより、モールドを複数層膜の表面に押し付けたときに、個々の針状凹部に対して経皮吸収材料溶液の充填量が精度良く均等化されるので、成形された複数本の針状凸部のバラツキをなくすことができる。
【0028】
また、囲い部材と上記したハニカム形状に配列されたテーパ部とを組み合わせることが特に好ましい。
【0029】
本発明の一態様においては、針状凹部の先端に空気抜き孔があることが好ましい。これにより経皮吸収材料溶液を針状凹部の先端まで充填し易くなる。この場合、空気抜き孔の径は、1〜50μmであることが好ましい。1μm未満では空気孔としての役目を十分に果たせないと共に、50μmを超えると、成形された針状凸部のシャープ性が損なわれる。
【0030】
本発明の一態様においては、経皮吸収材料は水溶性の高分子物質であることが好ましい。
【0031】
水溶性の高分子物質としては、ヒドロキシエチルデンプン、デキストラン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロースの何れか1であることが好ましい。
【0032】
また薬剤としては、ペプチド、タンパク質、核酸、多糖類、ワクチン、水溶性低分子化合物に属する医薬化合物、又は化粧品成分であることが好ましい。
【0033】
薬剤を含有させる層に用いる水溶性の高分子物質としては、含有させる薬剤と相互作用しないものを用いることが好ましい。たとえば、タンパク質を薬剤として用いる場合、荷電性の高分子物質を混合すると、タンパク質と高分子物質が静電相互作用によって会合体を形成し凝集、沈殿してしまう。従って、薬剤に荷電性の物質を用いる場合にはヒドロキシエチルデンプン、デキストラン等の電荷を持たない水溶性高分子物質を用いることが好ましい。
【0034】
本発明の別の一態様は前記目的を達成するために、支持体で支持されたシート部の表面に複数の微細な針状凸部が2次元配列で配列された経皮吸収シートであり、針状凸部の先端部が薬剤とヒドロキシエチルデンプンを含み、針状凸部の基部がヒドロキシエチルデンプンとヒアルロン酸を含む、経皮吸収シートを提供する。
【0035】
本発明の更なる別の一態様は前記目的を達成するために、支持体で支持されたシート部の表面に複数の微細な針状凸部が2次元配列で配列された経皮吸収シートであり、針状凸部の先端部が薬剤とコンドロイチン硫酸を含み、針状凸部の基部がヒドロキシエチルデンプンを含む、経皮吸収シートを提供する。
【0036】
本発明の更なる別の一態様に係る経皮吸収シートによれば、皮膚にさし易く且つ折れにくい微小針をもった経皮吸収シートを構築できる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の経皮吸収シート及びその製造方法によれば、薬剤を針状凸部に集中させることができ、しかも生産効率も良くなる経皮吸収シートの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、本発明の実施の形態の経皮吸収シートの構造の説明図である。
図2A図2Aは、経皮吸収シートの微小針構造として四角錐の斜視図である。
図2B図2Bは、経皮吸収シートの微小針構造として四角錐の断面図である。
図3A図3Aは、経皮吸収シートの微小針構造として円錐の斜視図である。
図3B図3Bは、経皮吸収シートの微小針構造として円錐の断面図である。
図4A図4Aは、モールドの作製方法の説明図である。
図4B図4Bは、モールドの作製方法の説明図である。
図4C図4Cは、モールドの作製方法の説明図である。
図5図5は、モールド複合体の説明図である。
図6図6は、テーパ部が正六角形に形成された微小針構造をハニカム状に配列したモールドの説明図である。
図7図7は、微小針構造に囲い部材を形成した説明図である。
図8A図8Aは、本発明の実施の形態に係る経皮吸収シートの製造方法を説明する工程図である。
図8B図8Bは、本発明の実施の形態に係る経皮吸収シートの製造方法を説明する工程図である。
図8C図8Cは、本発明の実施の形態に係る経皮吸収シートの製造方法を説明する工程図である。
図8D図8Dは、本発明の実施の形態に係る経皮吸収シートの製造方法を説明する工程図である。
図9A図9Aは、本発明の実施の形態における充填工程での経皮吸収材料の動きを説明する説明図である。
図9B図9Bは、本発明の実施の形態における充填工程での経皮吸収材料の動きを説明する説明図である。
図9C図9Cは、本発明の実施の形態における充填工程での経皮吸収材料の動きを説明する説明図である。
図10A図10Aは、上層と下層の粘度が同じ場合の経皮吸収材料の動きを説明する説明図である。
図10B図10Bは、上層と下層の粘度が同じ場合の経皮吸収材料の動きを説明する説明図である。
図10C図10Cは、上層と下層の粘度が同じ場合の経皮吸収材料の動きを説明する説明図である。
図11A図11Aは、剥離工程の説明図である。
図11B図11Bは、剥離工程の説明図である。
図11C図11Cは、剥離工程の説明図である。
図12A図12Aは、実施例で製造する経皮吸収シートの微小針(突起形状)の側面図である。
図12B図12Bは、実施例で製造する経皮吸収シートの微小針(突起形状)の上面図である。
図13図13は、実施例と比較例の充填率を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図を使用して、本発明の経皮吸収シート及びその製造方法の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0040】
[経皮吸収シートの針状凸部]
図1は本発明の実施の形態の経皮吸収シート1の構造図である。
【0041】
本発明の実施の形態の経皮吸収シート1は、支持体2と、シート部3と、シート部3の表面に2次元配列で配列された複数の微小針10(針状凸部)と、で構成される。
【0042】
この経皮吸収シート1において、微小針10の先端部が、薬剤と微小針10を形成するための経皮吸収材料を含み、微小針10の基部が、シート部3を形成するための経皮吸収材料を含むように構成される。
【0043】
即ち、微小針10を形成する経皮吸収材料とシート部3を形成する経皮吸収材料とが微小針10の部分とシート部3の部分とに綺麗に分かれるのではなく、シート部3を形成する経皮吸収材料が微小針10の基部に入り込んだ構造であることが好ましい。これにより、皮膚に刺し易く、折れにくい微小針10をもった経皮吸収シート1を形成することができる。
【0044】
図2A及び2Bは、微小針10の好ましい構造を示すものである。
【0045】
図2Aの斜視図及び図1Bの断面図に示すように、経皮吸収シート1に形成される微小針10の形状は、微小針10を皮膚表面に数100μmの深さで刺すために、(1)先端が充分に尖っていて、皮膚内に入る針の径も充分に細い(長さ/径のアスペクト比が高い)こと、(2)充分な強度がある(針が折れ曲がったりしない)こと、が必要である。
【0046】
そのため、(1)の要件を満たすためには、細くて尖った形状が必要であるが、これは(2)に相反し、細すぎると先端や根元で折れ曲がってしまい、太すぎると刺さらないため、図2Aに示すように、微小針10の稜線10Aは、微小針内側に湾曲した形状とすることが好ましい。このような形状とすることにより、先端を充分に尖らせる一方で、根元を広げることにより、折れにくくすることができる。また、四角錐状の微小針の稜線10A、10Aが該稜線同士の間の四角錐面10Cよりも張り出していることが好ましい。
【0047】
微小針10の形状は底面の一辺Xが0.1μm以上1000μm以下の範囲であり、高さYが0.3μm以上3000μm以下であることが好ましい。より好ましくは、一辺Xが10μm以上400μm以下の範囲であり、高さYが30μm以上1200μm以下である。
【0048】
そして、稜線10Aの湾曲の最大深さZは、稜線の始点と終点を結ぶ線分の長さをLとしたとき、0.04×L以上0.2×L以下であることが好ましい。また、微小針10の鋭利性を示す微小針先端10Bの曲率半径Rが20μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以下である。
【0049】
なお、図2A及び2Bは、四角錐状の微小針10について示しているが、図3A及び3Bに示す円錐状や他の三角錐等の角錐状の微小針も、同様の大きさであることが好ましい。なお、円錐状の場合においては、底面の直径Xが0.1μm以上1000μm以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは50μm以上500μm以下の範囲である。また、円錐面の湾曲の最大深さZは、円錐面の母線の始点と終点とを結ぶ線分の長さをLとしてとき、0.04×L以上0.2×L以下であることが好ましい。
【0050】
上記のように、経皮吸収シート1は微小針10が2次元配列で配列された凸部アレイである。微小針10が皮膚表面に刺さりやすくするため、微小針先端10Bをシャープにして充分に尖らせることが重要である。微小針先端10Bの曲率半径Rを10μm以下とすることが好ましい。曲率半径Rが10μm以下の先端を有する微小針10を形成するためには、モールド(型)に形成される凸アレイの反転型である針状凹部の先端(底)まで経皮吸収材料の溶液を注入して精密に転写できるかが重要なポイントになってくる。
【0051】
また、経皮吸収シートは、薬剤を含有する必要があるが、薬剤は高価なものが多いことから、微小針の部分に集中させて薬剤を含有させることがコスト面で重要になる。
【0052】
[経皮吸収シートの製造方法]
次に、本発明の実施の形態の経皮吸収シート1の製造方法を説明する。
【0053】
〈モールドの作製〉
図4Aから4Cは、モールド(型)の作製工程図である。
【0054】
図4Aに示すように、経皮吸収シート1を製造するためのモールド13を作製するための原版11を先ず作製する。
【0055】
この原版11の作製方法は2種類あり、1番目の方法は、Si基板上にフォトレジストを塗布した後、露光、現像を行う。そして、RIE(リアクティブイオンエッチング)等によるエッチングを行うことにより、原版11の表面に円錐の形状部12(微小針10に相当)のアレイを作製する。なお、原版11の表面に円錐の形状部12を形成するようにRIE等のエッチングを行う際には、Si基板を回転させながら斜め方向からのエッチングを行うことにより、円錐の形状部12を形成することが可能である。
【0056】
2番目の方法は、Ni等の金属基板に、ダイヤモンドバイト等の切削工具を用いた加工により、原版11の表面に四角錘などの形状部12(微小針10に相当)のアレイを形成する方法がある。
【0057】
次に、モールド13の作製を行う。具体的には、図4Bに示すように、原版11よりモールド13を作製する。通常のモールド13の作製には、Ni電鋳などによる方法が用いられる。原版11は、先端が鋭角な円錐形又は角錐形(例えば四角錐)の形状を有しているため、モールド13に形状が正確に転写され剥離することができ、しかも安価に製造することが可能な4つの方法が考えられる。
【0058】
1番目の方法は、原版11にPDMS(ポリジメチルシロキサン、例えば、ダウコーニング社製のシルガード(商標)184)に硬化剤を添加したシリコーン樹脂を流し込み、100℃で加熱処理し硬化した後に、原版11より剥離する方法である。2番目の方法は、紫外線を照射することにより硬化するUV硬化樹脂を原版11に流し込み、窒素雰囲気中で紫外線を照射した後に、原版11より剥離する方法である。3番目の方法は、ポリスチレンやPMMA(ポリメチルメタクリレート)等のプラスチック樹脂を有機溶剤に溶解させたものを剥離剤の塗布された原版11に流し込み、乾燥させることにより有機溶剤を揮発させて硬化させた後に、原版11より剥離する方法である。4番目の方法は、Ni電鋳により反転品を作成する方法である。
【0059】
これにより、原版11の円錐形又は角錐形の反転形状である針状凹部15が2次元配列で配列されたモールド13が作製される。このようにして作製されたモールド13を図4Cに示す。なお、上記4つのいずれの方法においてもモールド13は、何度でも容易に作製することが可能である。
【0060】
図5は、本発明の実施の形態の経皮吸収シート1の製造方法を行う上で、より好ましいモールド複合体14の態様を示したものである。図5において、(A)部は、モールド複合体14の断面図を示し、(B)部は、(A)部において円で囲まれた部分の拡大図である。
【0061】
図5に示すように、モールド複合体14は、針状凹部15の先端(底)に空気抜き孔15Aが形成されたモールド13と、モールド13の裏面に貼り合わされ、気体は透過するが液体は透過しない材料で形成された気体透過シート16と、を備える。空気抜き孔15Aは、モールド13の裏面を貫通する貫通孔として形成される。ここで、モールド13の裏面とは、針状凹部15の先端側の面を言う。これにより、針状凹部15の先端は空気抜く孔15A及び気体透過シート16を介して大気と連通する。
【0062】
このようなモールド複合体14を使用することで、針状凹部15に充填される経皮吸収材料溶液は透過せず、針状凹部15に存在する空気のみを針状凹部15から追い出すことができる。これにより、針状凹部15の先端(底)まで経皮吸収材料の溶液を充填することができるので、針状凹部15の形状を経皮吸収材料に精密に転写することができ、よりシャープな微小針10(針状凸部)を形成することができる。
【0063】
空気抜き孔15Aの径D(直径)としては、1〜50μmの範囲が好ましい。径Dが1μm未満では空気抜き孔としての役目を十分に果たせない。径Dが50μmを超えると、成形された微小針10の先端部のシャープ性が損なわれ易い。
【0064】
気体は透過するが液体は透過しない材料で形成された気体透過シート16としては、例えばラテックス(旭化成ケミカルズ社)を好適に使用できる。
【0065】
また、針状凹部15の入口部にはテーパ形状を有するテーパ部15Bを有することが好ましい。テーパ部15Bの角度θとしては、10°〜20°の範囲が好ましい。このテーパ角度範囲が、後記する充填工程においてモールド13を2層膜の表面に押し付けたときに、押し付け圧力が付与され易く、且つ経皮吸収材料溶液を針状凹部15に集めるための誘導性に優れている。
【0066】
この場合、図6に示すように、テーパ部15Bの底面形状が六角形に形成され、該テーパ部15Bを有する針状凹部15がハニカム構造状に配列されていることが好ましい。これにより、モールド13又はモールド複合体14を2層膜20の表面に押し付けたときの加圧力によって、隣り合う針状凹部15に経皮吸収材料が均等に充填され易くなる。
【0067】
図7は、微小針構造に囲い部材を形成した説明図であり、(B)部は、(A)部において円で囲った部分の拡大図である。図7に示すように、モールド13の押付面には、隣り合う針状凹部15に充填される経皮吸収材料の領域を均等に仕切るための囲い部材15Cが押付面から突出するように設けられていることが好ましい。図7は、隣り合う針状凹部15のテーパ部15Bの先端に囲い部材15Cを押付面から突出させるように設けている。囲い部材15Cの押付面からの突出量は、2層膜の厚みよりも小さいことが必要であり、上層の厚みと同等であることが好ましい。
【0068】
なお、図7は、モールド複合体14に囲い部材15Cを形成した例で示してあるが、空気抜き孔15Aや気体透過シート16を有しない通常のモールド13の場合にも適用できる。
【0069】
また、モールド13自体についても気体透過性の高い素材であることが更に好ましい。気体透過性の代表である酸素透過性は、1×10−12(mL/s・m・Pa)より大きいことが好ましく、1×10−10(mL/s・m・Pa)より大きいことがさらに好ましい。気体透過性を上記範囲とすることにより、モールド13の針状凹部15に存在する空気を針状凹部15から追い出すことができるので、転写性が良くなり、よりシャープな微小針10を形成することができる。
【0070】
上記の気体透過性を有する材料としては、シリコーン樹脂(例えば、ダウコーニング社製のシルガード184(登録商標)、信越化学工業株式会社のKE−1310ST(品番))、UV(Ultraviolet)硬化樹脂、プラスチック樹脂(例えば、ポリスチレン、PMMA(ポリメチルメタクリレート))を溶融、または溶剤に溶解させたものなどを挙げることができる。これらの中でもシリコーンゴム系の素材は繰り返し加圧による転写に耐久性があり、且つ、素材との剥離性がよいため、好適に用いることができる。また、金属製の素材としては、Ni、Cu、Cr、Mo、W、Ir、Tr、Fe、Co、MgO、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、α−酸化アルミニウム,酸化ジルコニウム、ステンレス(例えば、ボーラー・ウッデホルム社(Bohler-Uddeholm KK)のスタバックス材(STAVAX)(商標))などやその合金を挙げることができる。
【0071】
〈経皮吸収シートの製造〉
次に、図8Aから8Dにより、本発明の実施の形態の経皮吸収シート1の製造方法を説明する。
【0072】
なお、図8Aから8Dでは、モールド13として通常タイプのものを図示しているが、上記したモールド複合体14を使用すれば更に好ましい。
【0073】
(経皮吸収材料溶液の調製工程)
支持体2(基板ともいう)の上に塗布して2層膜20を形成するための塗布液である第1及び第2の経皮吸収材料溶液20A,20Bを調製する。
【0074】
なお、本実施の形態では、支持体2に形成される複数層膜として、上層と下層の2層膜20の例で説明するが、この層数に限定されるものではない。即ち、支持体2上に、経皮吸収材料を含有する複数の層を持ち、最下層を第一層、最上層を第t層(t≧2)とし、第n層の粘度をVnとした時、V1>V2≧・・・≧Vn≧・・・≧Vtとなり、さらに最下層以外の少なくとも1層に薬剤を含む複数層膜を形成することができればよい。
【0075】
第1の経皮吸収材料溶液20Aは、2層膜20の下層となる。第1の経皮吸収材料溶液20Aは、薬剤を含有せず、且つ、流動可能な粘度を持つように調整される。また、第2の経皮吸収材料溶液20Bは、2層膜20の上層となる。第2の経皮吸収材料溶液20Bは、薬剤を含有し、且つ、下層の第1の経皮吸収材料溶液20Aよりも流動性の大きい粘度を持つように調整される。
【0076】
ここで、流動可能な粘度とは、後記する充填工程でモールド13を2層膜20の表面に押し付けて圧力が付与されたときに流動する粘度をいう。
【0077】
第1の経皮吸収材料溶液20Aの粘度としては、200Pa・s以上であることが好ましい。粘度の上限は規定しなかったが、第1の経皮吸収材料溶液20Aはモールド13で加圧されたときに流動することが必要であり、流動性を有する限界が上限粘度となる。
【0078】
第2の経皮吸収材料溶液20Bの粘度としては、2〜30Pa・sであることが好ましい。粘度が下限粘度である2Pa・sである場合、モールド13により加圧されると第2の経皮吸収材料溶液20Bは流動するが、通常状態では流れ広がることはない。
【0079】
そして、下層を形成する第1の経皮吸収材料溶液20Aの粘度は、上層を形成する第2の経皮吸収材料溶液20Bの粘度よりも2倍以上高いことが好ましく、5倍以上であることがさらに好ましく、10倍以上であることが特に好ましく、20倍以上であることが最も好ましい。最上層と最下層の塗布性および流動性を両立するために、最下層の粘度は最上層の粘度の1000倍以下であることが好ましい。
【0080】
支持体2としては、2層膜20を支持できる薄膜状のものであれば限定されないが、特にPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等の比較的剛性のあるプラスチックフィルム、ガラス板、紙等を使用できる。
【0081】
第1及び第2の経皮吸収材料としては、高分子物質であればポリマー材料、天然物等に限定されないが、経皮吸収材料の微小針10が皮膚内に入ることから、特に水溶性の高分子物質を使用することが好ましい。
【0082】
水溶性の高分子物質としては、ヒドロキシエチルデンプン、デキストラン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロースの何れか1であることが好ましい。
【0083】
また、ポリマー材料としては、生体適合性のある樹脂を用いることが好ましい。このような樹脂としては、グルコース、マルトース、プルランなどの糖類、ゼラチンなどのタンパク質、ポリ乳酸、乳酸・グリコール酸共重合体などの生分解性ポリマーを使用することが好ましい。これらの中でもゼラチン系の素材は多くの支持体2と密着性をもち、ゲル化する材料としても強固なゲル強度を持つため、後述する剥離工程において、支持体2と密着させることができるので、好適に利用することができる。濃度は材料によっても異なるが、溶解液中に樹脂ポリマーが10〜40%含まれる濃度とすることが好ましい。また、溶解に用いる溶媒は、温水以外であっても揮発性を有するものであればよく、アルコールなどを用いることができる。そして、ポリマー樹脂の溶解液中には、用途に応じて体内に供給するための薬剤を共に溶解させることが可能である。
【0084】
各層の粘度を調整する方法としては、適当な高分子物質を選択する方法、高分子物質の溶媒含量を調整する方法、異なる高分子物質を適当な比率で混合する方法等が挙げられる。
【0085】
比較的低粘度であるヒドロキシエチルデンプン、デキストラン、コンドロイチン硫酸、グルコース、マルトース、プルラン、ゼラチン、ポリ乳酸、乳酸・グリコール酸共重合体などを低粘度層に含まれる経皮吸収材料として用い、これらにヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロースなどの高粘度の高分子物質を適当量添加したものを高粘度層に含まれる経皮吸収材料として用いることが好ましい。
【0086】
上記の組み合わせの経皮吸収材料を用いることにより、薬剤が微小針に集中した経皮吸収シートを生産効率よく製造することができる。
【0087】
低粘度層を形成する経皮吸収材料がヒドロキシエチルデンプン、デキストランおよびコンドロイチン硫酸から選ばれる少なくとも1つを含み、高粘度層を形成する経皮吸収材料が、ヒドロキシエチルデンプン、デキストランおよびコンドロイチン硫酸から選ばれる少なくとも1つと、ヒアルロン酸およびカルボキシメチルセルロースから選ばれる少なくとも1つを含むことが、より好ましい。
【0088】
低粘度層を形成する経皮吸収材料のうち、50重量%以上がヒドロキシエチルデンプン、デキストランおよびコンドロイチン硫酸から選ばれる高分子物質であることが好ましく、80%重量以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。高粘度層を形成する経皮吸収材料のうち、50重量%以上が、ヒドロキシエチルデンプン、デキストラン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸およびカルボキシメチルセルロースから選ばれる高分子物質であることが好ましく、80%重量以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。
【0089】
また、経皮吸収シートの針状凸部の先端部に薬剤、並びに、ヒドロキシエチルデンプン、デキストランおよびコンドロイチン硫酸から選ばれる少なくとも1つを含み、針状凸部の基部にヒドロキシエチルデンプン、デキストランおよびコンドロイチン硫酸から選ばれる少なくとも1つと、ヒアルロン酸およびカルボキシメチルセルロースから選ばれる少なくとも1つを含むことにより、薬剤利用効率が高く、破損しにくい経皮吸収シートとなる。針状凸部の先端部がヒドロキシエチルデンプンを含み、針状凸部の針基部がヒドロキシエチルデンプンとヒアルロン酸を含むことが好ましい。
【0090】
経皮吸収シートにおいて、針状凸部の先端部を形成する経皮吸収材料のうち、50重量%以上がヒドロキシエチルデンプン、デキストランおよびコンドロイチン硫酸から選ばれる高分子物質であることが好ましく、80%重量以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。針状凸部の基部を形成する経皮吸収材料のうち、50重量%以上が、ヒドロキシエチルデンプン、デキストラン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸およびカルボキシメチルセルロースから選ばれる高分子物質であることが好ましく、80%重量以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。
【0091】
また、第2の経皮吸収材料溶液20Bに含有させる薬剤としては、薬剤としての機能を有するものであれば限定されないが、ペプチド、タンパク質、核酸、多糖類、ワクチン、水溶性低分子化合物に属する医薬化合物、又は化粧品成分から選択することが特に好ましい。
【0092】
また、第2の経皮吸収材料溶液20Bに含有させる水溶性の高分子物質としては、含有させる薬剤と相互作用しないものを用いることが好ましい。たとえば、タンパク質を薬剤として用いる場合、荷電性の高分子物質を混合すると、タンパク質と高分子物質が静電相互作用によって会合体を形成し凝集、沈殿してしまう。従って、薬剤に荷電性の物質を用いる場合にはヒドロキシエチルデンプン、デキストラン等の電荷を持たない水溶性高分子物質を用いることが好ましい。
【0093】
第2の経皮吸収材料溶液20Bの調製方法としては、例えば水溶性の高分子(ゼラチンなど)を用いる場合は、水溶性粉体を水に溶解し、溶解後に薬品を添加することで製造することができる。水に溶解しにくい場合、加温して溶解してもよい。温度は高分子材料の種類により、適宜選択可能であるが、約60℃の温度で加温することが好ましい(積層工程)。
【0094】
図8Aに示すように、支持体2上に、高粘度の第1の経皮吸収材料溶液20Aを塗布して下層を形成し、下層の上に低粘度の第2の経皮吸収材料溶液20Bを塗布して上層を形成する。これにより、支持体2の上に高粘度の下層と低粘度の上層とからなる粘度差を有する2層膜20が積層される。この場合、第2の経皮吸収材料溶液20Bで形成される上層は、成形しようとしている微小針10の成形後の設定固形分量と第2の経皮吸収材料溶液20Bの固形分濃度とに基づいて必要な第2の経皮吸収材料20Bの塗布量、即ち塗布厚みが設定される。
【0095】
即ち、針状凹部15の1個単位について、針状凹部15に充填する第2の経皮吸収材料20Bの固化工程後の固形分量(例えば乾燥等により微小針10が弾性を有する水分量まで固化する)の設定値と、経皮吸収材料の調製工程で調製した第2の経皮吸収材料溶液20Bの固形分濃度と、から必要な塗布量/針状凹部1個当たりを計算する。そして、針状凹部1個当たりの塗布量に、モールド13に形成された針状凹部15の数を掛けて得られた全体塗布量を、モールド13の2層膜20に押し付けられる面積で割ることにより上層の層厚みが算出される。ここで、押し付けられる面積は、モールド13に針状凹部が無く、平坦であると仮定して算出することとしてもよい。
【0096】
なお、下層を形成する第1の経皮吸収材料溶液20Aの塗布膜厚は特に制限はないが、厚く塗り過ぎると経皮吸収材料が無駄になるので、300〜500μm程度が好ましい。
【0097】
第1及び第2の経皮吸収材料溶液20A,20Bを塗布する塗布装置としては特に限定されないが、第2の経皮吸収材料溶液20Bは塗布厚みを精度良く塗布する必要があることから、一定量を塗布し易いスロットコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、グラビアコータ等の計量系の塗布装置が好ましい。
【0098】
上記した積層工程では、支持体2上に下層を塗布し、該下層に上層を塗布することにより2層膜20を形成する基本的な態様の他にも、以下の態様を行うことができる。
【0099】
〈態様1〉支持体2上に第1の経皮吸収材料溶液20Aを塗布して下層を形成した後に下層を一度乾燥し、該乾燥した下層に第2の経皮吸収材料溶液20Bを塗布して上層を形成する方法。
【0100】
〈態様2〉支持体2上に第1の経皮吸収材料溶液20Aを塗布して下層を形成した後に下層を一度乾燥し、該乾燥した下層に第2の経皮吸収材料溶液20Bを塗布して上層を形成した後に上層を一度乾燥し、その後に吸水させて2層膜20を形成する方法。
【0101】
〈態様3〉支持体2上に第1の経皮吸収材料溶液20Aを塗布・乾燥して下層を形成する。一方、支持体2上に第2の経皮吸収材料溶液20Bを塗布・乾燥して下層を形成する。そして、上層を支持体2から剥がして下層に貼り合わせた後、吸水させて2層膜20を形成する方法。
【0102】
上記態様1〜3において、上層及び下層の乾燥は、含水率で20質量%以下にすることが好ましい。
【0103】
(充填工程)
図8B及び8Cに示すように、上記の如く作製されたモールド13を、支持体2に支持された2層膜20の表面に押し付けて2層膜20を流動させることにより、針状凹部15に経皮吸収材料を充填する。
【0104】
かかる充填工程において、下層を形成する第1の経皮吸収材料溶液20Aと、上層を形成する第2の経皮吸収材料溶液20Bとは、粘度差を有することによって次のように流動する。
【0105】
図9Aに示すように、支持体2上に形成された2層膜20の上方にモールド13を位置させる。次に、図9Bに示すように、モールド13を、2層膜20の表面に押し付けて加圧する。これにより、2層膜20の上層が下層より粘度が低いことによって、先ず粘度の低い上層の第2の経皮吸収材料溶液20Bが流動して針状凹部15に流れ込む。これにより、粘度の低い第2の経皮吸収材料溶液20Bのみがモールド13の針状凹部15に充填されるが、針状凹部15の先端までは充満されない状態になる。
【0106】
図9Cに示すように、更にモールド13を2層膜20の表面に押し続けると、上層の次に粘度の高い下層の第1の経皮吸収材料溶液20Aが流動して針状凹部15に流れ込もうとする。これにより、既に針状凹部15に充填されている第2の経皮吸収材料溶液20Bを針状凹部15の先端側に押し込む。
【0107】
したがって、積層工程において、微小針10の固形分量と第2の経皮吸収材料溶液20Bの固形分濃度とに基づいて上層の層厚みを設定しておけば、薬剤を含有する第2の経皮吸収材料溶液20Bの略全量が針状凹部15内に充填される。この結果、成形された経皮吸収シート1の微小針10に薬剤を集中させることができる。
【0108】
モールド13が2層膜20の表面を押し付ける圧力は、モールド13が支持体2に向かって10〜2000μm/分の一定速度で変位することのできる圧力であることが好ましい。
【0109】
変位する速度が2000μm/分を超えて速くなると、上層の第2の経皮吸収材料溶液20Bが針状凹部15に充填されきらない前に、上層の第2の経皮吸収材料溶液20Bが針状凹部15の外側に流動して逃げてしまう。また、変位する速度が10μm/分未満では、充填工程での所要時間が長くなり、生産効率が低下する。
【0110】
また、充填工程の所領時間を短縮しようとする場合には、モールド13が支持体2に向かって10〜2000μm/分の速度範囲で次第に加速して変位するようにモールド13を2層膜20に押し付けることもできる。
【0111】
なお、使用する薬剤の中には熱により分解する危険があるものが多いため、本実施形態の積層工程、充填工程、及び剥離工程は、常温で行うことが好ましい。また、固化工程を乾燥により行う場合にも、乾燥温度は薬剤が分解しない低温度で行うことが好ましい。
【0112】
図10Aから10Cは、本発明の実施形態を説明するための対比図であり、2層膜30を形成する下層30Aと上層30Bとの粘度が同じ場合の経皮吸収材料の動きを示す。
【0113】
図10Aに示すように、2層膜20の上方にモールド13を位置させ、図10Bに示すように、モールド13を、支持体2に支持された2層膜30の表面に押し付けて加圧する。モールド13を押し付ける圧力は、図9Bに示す本発明の実施形態の場合と同様である。
【0114】
しかし、図10Bから分かるように、下層30Aと上層30Bの粘度が同じ場合には、モールド13を押し付けると、下層30Aと上層30Bとが同時に流動を開始する。これにより、図10Cに示すように、針状凹部15内には2層膜30のままの状態で下層30Aと上層30Bが充填される。即ち、針状凹部15の壁面側に上層30B部分が充填され、針状凹部15の中央部側に下層30A部分が上層30B部分に包まれる形で充填される。
【0115】
これにより、下層30Aと上層30Bの粘度が同じ場合には、成形された経皮吸収シート1の微小針10に薬剤を集中させることができない。
【0116】
(固化工程)
固化工程では、モールド13を2層膜20の表面に押し付けたままの状態、即ち、図8Cに示す状態で2層膜20を固化する。なお、固化される際には上層が針状凹部15に充填され、針状凹部15内は2層膜状態ではないため、正確には2層膜20を形成していた経皮吸収材料を固化するのであるが、ここでは簡略化して2層膜を固化すると表現する。
【0117】
固化の方法としては、乾燥固化を好適に行うことができる。
【0118】
乾燥固化方法としては、温風を吹き付ける。この温風は、除湿した温風が好ましく、例えば、35℃、相対湿度50%以下、より好ましくは10%以下である。乾燥させるために、高温の温風を流す際には、温風の温度が高すぎると、薬品によっては加熱による分解等により、効能が変化したりするため、吹きつける温風の温度には注意する必要がある。
【0119】
経皮吸収材料溶液が固化することにより、経皮吸収材料を針状凹部15内に充填したときよりも縮小しモールド13から経皮吸収材料の剥離が容易となる。また、この乾燥固化において、経皮吸収材料の水分量が低くなりすぎると剥離しにくくなるため、弾力性を維持している状態の水分量を残存させておくことが好ましい。具体的には、微小針10を構成する経皮吸収材料にも依存するが、10〜20%の水分量となったところで、乾燥を停止することが好ましい。
【0120】
(剥離工程)
図8Dに示すように、剥離工程では、支持体2に支持され固化した2層膜20を、モールド13から剥離する。具体的には、図11Aに示すように、モールド13が下側に、2層膜20を支持する支持体2が上側になるように位置させる。そして、図11Bに示すように、粘着層が形成されている剥離用シート22を支持体2に付着させる。材料剥離用シート22としては、例えばPETフィルムを採用できる。
【0121】
そして、剥離用シート22の端部より剥離用シート22をめくるようにして、モールド13から2層膜を剥離する。これにより、図11Cに示すように、剥離用シート22が付いた状態の経皮吸収材料シートが製造されるので、この後、支持体2から剥離用シート22を剥がす。これにより、経皮吸収シート1が製造される。
【0122】
また、図示しないが剥離方法の別態様としては、支持体2に複数の吸盤を取り付け、エアーで吸引することによって支持体2に吸着させ、吸盤を引っ張ることで剥離する方法もある。
【0123】
固化した2層膜20をモールド13から剥離する剥離工程は、重要な工程である。通常、本実施の形態のように、アスペクト比の高い微小針10の構造のものをモールド13から剥離する場合では、接触面積が大きいことから、強い応力がかかり、微小針10が破壊され、モールド13から剥離されることなく、モールド13の針状凹部15内に残存し、作製される経皮吸収シート1は致命的な欠陥を有するものとなってしまう。
【0124】
この点を踏まえ、本実施の形態においては、モールド13を構成する材料を、剥離が非常にしやすい材料により構成することが好ましい。また、モールド13を構成する材料を弾性が高く柔らかい材料とすることにより、剥離する際における微小針10にかかる応力を緩和することができる。
【0125】
また、経皮吸収シート1の表面の微小針10に残存している水分を蒸発させるために、剥離後に、再度乾燥した風を吹付けるか、真空乾燥を実施する場合もある。具体的には、梱包する直前において、経皮吸収シート1の水分量を10%以下、望ましくは5%以下とした後に梱包することが望ましい。もしくは、乾燥材と同封して梱包することによって、梱包後に経皮吸収シート1の水分量を10%以下、望ましくは5%以下にすることも可能である。
【実施例】
【0126】
以下に本発明の経皮吸収シート1の製造方法の具体的な実施例を説明する。
【0127】
[試験1]
試験1では、本発明の実施形態に係る経皮吸収シート1の製造方法の条件を満足する場合と満足しない場合とで、微小針10部分に集中される薬剤の比率(充填率)がどのように異なるかを調べた。
【0128】
<モールドの作製>
図12A及び12Bは、製造する経皮吸収シート1の突起形状を示すものであり、図12Aは側面図、図12Bは上面図である。
【0129】
図12A及び12Bに示すように、突起形状は、底面の一辺長さSが404μmで径Wが700μmの正六角形、上面直径が420μmの円形、高さがH42μmの六角錐台24の上に、底面直径Xが420μmで、高さYが700μmの円錐状の微小針10(針状凸部)が載った形状を有する。
【0130】
なお、六角錐台24がモールド13のテーパ部15Bに相当する。
【0131】
微小針10と微小針10との間のピッチP700μmとし、微小針先端10Bの曲率半径Rが5μm以下になるようにした。また、六角錐台24のテーパ角度θは16.7°とした。
【0132】
そして、一辺が40mmの平滑なNi板の表面に、上記の突起形状を図6に示すハニカム配列状に37個、研削加工することで原版11を作製した。
【0133】
次に、原版11上に、シリコーンゴム(ダウ・コーニング社製SILASTIC(商標) MDX4-4210(品番))を692μmの厚みで膜形成し、膜面から原版11の微小針先端部50μmを突出させた状態で熱硬化させ、剥離することで、直径が約30μmの空気抜き孔(貫通孔)を有するシリコーンゴム製の反転品を作製した。この反転品の中央領域には、上記した突起形状の反転形状である針状凹部15が37個ハニカム状に配列されており、この中央領域が2層膜への押付面となる。したがって、反転品の中央領域以外の部分は切り落とすことにより、直径が5mmのモールド13を作製した。そして、モールド13の裏面に気体透過シートを貼り合わせてモールド複合体14を形成した。
【0134】
(実施例1)
<経皮吸収材料溶液の調製>
下層を形成する第1の経皮吸収材料溶液20Aは、ヒドロキシエチルデンプン(分子量70000、フレゼニウスカービー社製)濃度が39質量%の水溶液と、ヒアルロン酸ナトリウム(分子量90〜105万、マルハニチロ食品社製)濃度が1質量%の水溶液とを混合した混合水溶液として調製した。
【0135】
また、上層を形成する第2の経皮吸収材料溶液20Bは、ヒドロキシエチルデンプン濃度が14質量%の水溶液に、薬剤としてヒト成長ホルモン(成長ホルモン ヒト 組換え体 生化学用 、和光純薬工業社製)を0.25質量%と、蛍光色素の一種であるFITC(フルオロセインイソチオシアネート:PD Research社製、FACS-D1(品番))濃度が0.001質量%となるように含有させた混合溶液として調製した。
【0136】
<積層工程>
上記の如く調製した第1の経皮吸収材料溶液20Aを、厚さが約300μmとなるように支持体2上に塗布し、35℃、相対湿度40%下で乾燥させて高粘度の下層を形成した。支持体2としてはガラス板を使用し、他の実施例も同様である。続いて、上記の如く調製した第2の経皮吸収材料溶液20Bを、厚さが110μmとなるように下層の上に塗布し、低粘度の上層を形成した。これにより、支持体2上に粘度差を有する2層膜20を形成した。
【0137】
下層及び上層の層状態での粘度の評価方法として以下の方法を用いた。まず、顕微ラマン分光測定によって充填工程直前の下層及び上層にピントを合わせて、その部位におけるCH基とOH基のシグナル比を、下層及び上層についてそれぞれ測定する。ピントは最表面からの距離によって上層及び下層の位置を予測し決定する。そして、予め作製した下層と同一組成の物質の各含水率とCH基とOH基のシグナル比との関係を表す検量線から、前記測定したシグナル比における含水率を求めることにより、下層の含水率を算出する。次に下層と同一組成の物質の、算出された含水率における粘度を測定し(マルバーン社製、The Bohlin Gemini HR nano Reometer System)、下層の粘度値とする。下層と同様の方法で上層の粘度値を算出する。
【0138】
上述の評価方法を用いて求めた高粘度な下層の粘度は1000Pa・sであり、低粘度な上層の粘度は2Pa・sであり、下層は上層よりも500倍粘度が高い。
【0139】
<充填工程>
支持体2上に2層膜20を塗布形成した直後に、上記の如く作製したモールド13を、2層膜20の表面に密着させ、200μm/minの一定速度で変位するようにモールド13を支持体2に向けて押し付け、モールド13の針状凹部15内に経皮吸収材料を充填した。針状凹部15に経皮吸収材料が完全に充填された時点でモールド13の押し付けを止めた。
【0140】
<2層膜の固化工程及び剥離工程>
モールド13の上面から10g/cmの圧力を2層膜20に加えながら、35℃、相対湿度40%下で乾燥させて2層膜20を固化した。その後、モールド13を2層膜から剥離し、経皮吸収シート1を作製した。
【0141】
(実施例2)
実施例2は、下層である第1の経皮吸収材料溶液20Aの組成以外は実施例1の条件と同様として経皮吸収シート1を作製した。
【0142】
即ち、ヒドロキシエチルデンプン濃度が39.5質量%、ヒアルロン酸ナトリウム濃度が0.5質量%の混合水溶液を、厚さが約300μmとなるように支持体2上に塗布し、35℃、相対湿度40%下で乾燥させて、下層を形成した。続いて、実施例1と同じ組成の第2の経皮吸収材料溶液20Bを下層の上に厚さが110μmとなるように塗布して上層を形成し、これにより2層膜20を形成した。上述のように作製された下層の粘度は200Pa・sであり、上層の2Pa・sであり、下層は上層よりも100倍粘度が高い。
【0143】
(実施例3)
実施例3は、下層である第1の経皮吸収材料溶液20Aの組成以外は実施例1の条件と同様として経皮吸収シート1を作製した。
【0144】
即ち、ヒドロキシエチルデンプン濃度が39.75質量%、ヒアルロン酸ナトリウム濃度が0.25質量%の混合水溶液を、厚さが約300μmとなるように支持体2上に塗布し、35℃、相対湿度40%下で乾燥させて、下層を形成した。続いて、実施例1と同じ組成の第2の経皮吸収材料溶液20Bを下層の上に厚さが110μmとなるように塗布して上層を形成し、これにより2層膜20を形成した。上述のように作製された下層の粘度は10Pa・sであり、上層の2Pa・sであり、下層は上層よりも5倍粘度が高い。
【0145】
(実施例4)
実施例4は、上層である第2の経皮吸収材料溶液20Bの組成を、実施例1と変えた以外は実施例1の条件と同様として経皮吸収シート1を作製した。
【0146】
即ち、実施例1と同じ第1の経皮吸収材料溶液20Aを、厚さが約300μmとなるように支持体2上に塗布し、35℃、相対湿度40%下で乾燥させて、下層を形成した。続いて、ヒドロキシエチルデンプン濃度が13.9質量%、ヒアルロン酸ナトリウム濃度が0.1質量%の混合水溶液に、薬剤としてヒト成長ホルモン濃度が0.25質量%、FITC濃度が0.001質量%となるように含有させた混合溶液を、厚さが110μmとなるように下層の上に塗布した。これにより、支持体2上に2層膜20を形成した。上述のように作製された下層の粘度は1000Pa・sであり、上層の粘度は30Pa・sであり、下層は上層よりも33倍粘度が高い。
【0147】
(実施例5)
実施例5は、下層である第1の経皮吸収材料溶液20Aの組成と、上層である第2の経皮吸収材料溶液20Bの組成とを、実施例1と変えた以外は実施例1の条件と同様として経皮吸収シート1を作製した。
【0148】
即ち、ヒドロキシエチルデンプン濃度が40質量%の水溶液を、厚さが約300μmとなるように支持体2上に塗布し、35℃、相対湿度40%下で乾燥させて、下層を形成した。続いて、コンドロイチン硫酸ナトリウム(局外規コンドロイチン硫酸ナトリウム、マルハニチロ食品社製)濃度が14質量%水溶液に、薬剤としてBSA(Alubumin, from bovin serum SIGMA社製)濃度が0.25質量%、FITC濃度が0.001質量%となるように含有させた混合溶液を、厚さが110μmとなるように下層の上に塗布した。これにより、支持体2上に2層膜20を形成した。上述のように作製された下層の粘度は200Pa・s、上層の粘度は10Pa・sであり、下層は上層よりも20倍粘度が高い。
【0149】
(実施例6)
実施例6は、下層である第1の経皮吸収材料溶液20Aの組成と、上層である第2の経皮吸収材料溶液20Bの組成とを実施例1と変えると共に、未乾燥の下層に上層を塗布した。また、下層及び上層の層厚みを変えた。それ以外の条件は実施例1の条件と同様として経皮吸収シート1を作製した。
【0150】
即ち、ヒドロキシエチルデンプン濃度が48.8質量%、ヒアルロン酸ナトリウム濃度が1.2質量%の混合水溶液を、厚さが約240μmとなるように支持体2上に塗布して下層を形成した。続いて、未乾燥の下層の上に、ヒドロキシエチルデンプン濃度が50質量%水溶液に、薬剤としてヒト成長ホルモン濃度が0.25質量%、FITC濃度が0.001質量%となるように含有させた混合溶液を、厚さが15μmとなるように塗布して上層を形成した。これにより、支持体2上に2層膜20を形成した。上述のように作製された下層の粘度は1000Pa・sであり、上層の粘度は2Pa・sであり、下層は上層よりも500倍粘度が高い。
【0151】
(実施例7)
実施例7は、下層及び上層の組成は実施例1と同様であるが、上層を塗布した後で乾燥し、更に水を塗布することにより加湿して2層膜を形成した。それ以外の条件は実施例1の条件と同様として経皮吸収シート1を作製した。
【0152】
即ち、実施例1と同じ第1の経皮吸収材料溶液20Aを、厚さが約300μmとなるように支持体2上に塗布し、35℃、相対湿度40%下で乾燥させて、下層を形成した。続いて、実施例1と同じ第2の経皮吸収材料溶液20Bを、厚さが110μmとなるように下層上に塗布した後、35℃、相対湿度40%下で乾燥させて、上層を形成した。続いて、上層の上に水を厚さが100μmとなるように塗布して加湿し、これにより支持体2上に2層膜20を形成した。上述のように作製された下層の粘度は1000Pa・sであり、上層の粘度は2Pa・sであり、下層は上層よりも500倍粘度が高い。
【0153】
(実施例8)
実施例8は、下層及び上層の組成は実施例1と同様であるが、下層と上層とを支持体2上に別個に塗布・乾燥した後、上層を支持体2から剥がして下層上に貼り合わせ後、水を塗布することにより加湿して2層膜20を形成した。それ以外の条件は実施例1の条件と同様として経皮吸収シート1を作製した。
【0154】
即ち、実施例1と同じ第1の経皮吸収材料溶液20Aを、厚さが約300μmとなるように支持体2上に塗布し、35℃、相対湿度40%下で乾燥させて、下層を形成した。また、実施例1と同じ第2の経皮吸収材料溶液20Bを、厚さが110μmとなるように支持体2上に塗布し、35℃、相対湿度40%下で乾燥させて、上層を形成した。
【0155】
そして、上層を支持体2から剥離し、下層上に密着するように貼り合わせた後、上層の上に水を厚さが100μmとなるように塗布し、2層膜20を形成した。上述のように作製された下層の粘度は1000Pa・sであり、上層の粘度は2Pa・sであり、下層は上層よりも500倍粘度が高い。
【0156】
(実施例9)
実施例9は、下層及び上層の組成は実施例1と同様であるが、支持体2上に塗布した下層を乾燥することなく、下層の上に上層を塗布して2層膜を形成すると共に、モールド13を2層膜20に押し付ける変位速度を実施例1〜8とは変えた。それ以外は、実施例1の条件と同様として経皮吸収シート1を作製した。
【0157】
即ち、実施例1と同じ第1の経皮吸収材料溶液20Aを、厚さが約300μmとなるように支持体2上に塗布し、下層を形成した。続いて、実施例1と同じ第2の経皮吸収材料溶液20Bを、厚さが110μmとなるように下層の上に塗布し、上層を形成した。これにより、支持体2上に2層膜20を形成した。上述のように作製された下層の粘度は1000Pa・sであり、上層の粘度は2Pa・sであり、下層は上層よりも500倍粘度が高い。
【0158】
このように形成された2層膜20の表面にモールド13を密着させ、モールド13を支持体2に向けて変位速度が10μm/minから200μm/minまで30sec間かけて加速させながら押し付け、モールド13の針状凹部15に経皮吸収材料を充填した。そして、針状凹部15に経皮吸収材料が完全に充填された時点でモールド13の変位を止めた。
【0159】
(比較例1)
比較例1は、下層と上層の粘度を同じにして経皮吸収シート1を作製した場合である。
【0160】
即ち、ヒドロキシエチルデンプン濃度が40質量%の水溶液を、厚さが約300μmとなるように支持体2上に塗布し、35℃、相対湿度40%下で乾燥させて、下層を形成した。続いて、ヒドロキシエチルデンプン濃度が14質量%水溶液に、薬剤としてヒト成長ホルモンを0.25質量%、FITC濃度が0.001質量%になるように含有させた混合溶液を、厚さが110μmとなるように下層の上に塗布して上層を形成した。上述のように作製された下層の粘度は2Pa・sであり、上層の粘度は2Pa・sであり、下層と上層の粘度は同じである。
【0161】
(比較例2)
比較例2は、下層の粘度よりも上層の粘度を高くして、経皮吸収シート1を作製した場合である。
【0162】
即ち、コンドロイチン硫酸ナトリウム濃度が40質量%の水溶液を、厚さが約300μmとなるように支持体2上に塗布し、35℃、相対湿度40%下で乾燥させて下層を形成した。続いて、ヒドロキシエチルデンプン濃度が14質量%水溶液に薬剤としてヒト成長ホルモン濃度が0.25質量%、FITC濃度が0.001質量%になるように含有させた混合溶液を、厚さが110μmとなるように下層の上に塗布して上層を形成した。上述のように作製された上層の粘度は200Pa・s、下層の粘度は10Pa・sであり、下層よりも上層の粘度が高い。
【0163】
(試験結果の評価方法)
上述のように作製された、実施例1〜9及び比較例1〜2の経皮吸収シートについて、薬剤を含有させた第2の経皮吸収材料溶液20Bの全量のうち、微小針10(針状凸部)に充填された第2の経皮吸収材料溶液20Bの充填率を調べた。これにより、薬剤を微小針10部分にどの程度集中させることができたかを評価することができる。充填率の測定方法としては、以下の2つの方法を採用した。
【0164】
<充填率の測定方法1>
充填率の測定方法1は、共焦点蛍光顕微鏡 (ニコン社製、C1plus+TE2000U(品番))にて経皮吸収シート1を観察し、経皮吸収シート全体のFITC蛍光強度に対して、微小針10部分のFITC蛍光強度が占める比率を測定した。FITCは上層である第2の経皮吸収材料溶液20Bのみに含有されており、微小針10部分のFITC蛍光強度が占める比率を測定することで、微小針10部分に充填された第2の経皮吸収材料溶液20Bの充填率を知ることができる。
【0165】
<充填率の測定方法2>
充填率の測定方法2は、経皮吸収シート1の微小針10部分を切断し水で溶解して第1溶解液とする。さらに、微小針10部分以外の経皮吸収シート1も水で溶解して第2溶解液とする。そして、第1溶解液及び第2溶解液にそれぞれ含まれる薬剤(ヒト成長ホルモン)の質量を、Coomassie (Bradford) Protein Assay Kit(サーモフィッシャーサイエンス株式会社製)を用いて定量し、薬剤量全体に対して微小針10部分に含まれる薬剤量の比率を充填率とした。充填率の測定方法2によれば、薬剤を微小針10にどの程度集中させることができたかを直接的に評価することができる。
【0166】
(充填率の評価基準)
・評価A…80%以上の薬剤が微小針に集中しており極めて良い。
【0167】
・評価B…60%以上80%未満の薬剤が微小針に集中しており良い。
【0168】
・評価C…50%以上60%未満の薬剤しか微小針に集中せず悪い。
【0169】
・評価D…50%未満の薬剤しか微小針に集中せず非常に悪い。
【0170】
そして、評価B以上を合格ラインとした。
【0171】
(試験1の結果)
実施例1〜9及び比較例1〜2の試験結果を図13の表に示す。なお、図13の充填率の数値は、充填率の測定方法1を使用して評価した数値であるが、評価方法2で測定した結果も評価方法1と同様である。
【0172】
図13の表から分かるように、本発明の経皮吸収シート1の製造方法で行った実施例1〜9は、62%以上の充填率であった。特に、上層の粘度が2〜10Pa・sであると共に、下層の粘度は200Pa・s以上であり、且つ下層の粘度が上層の粘度よりも20倍以上高い条件を満足する実施例1〜2、5〜9は80%以上の充填率であり、薬剤が微小針10に極めて良好に集中していることが分かった。
【0173】
一方、比較例1のように、下層と上層の粘度が同じ経皮吸収シートの場合には、充填率が51%となり、使用した薬剤の約半分が微小針10以外の部分に存在していることが分かる。また、比較例2のように、下層よりも上層の粘度を高くした経皮吸収シートの場合には、充填率が20%であり、薬剤がほとんど微小針10部分へ集中しないことが分かる。
【0174】
以上の実施例及び比較例の対比結果から、本発明によって、薬剤を微小針10(針状凸部)に集中させることができる。また、上層の粘度が下層の粘度よりも小さく針状凹部に上層が入り易い。
【0175】
[試験2]
試験2では、薬剤としてインフルエンザワクチン(インフルエンザHAワクチン、デンカ生研株式会社製)を用いて経皮吸収シート1を作製し、微小針10部分に集中される薬剤量を確認した。
【0176】
即ち、ヒドロキシエチルデンプン濃度が39質量%、ヒアルロン酸ナトリウム濃度が1質量%の混合水溶液を、厚さが約300μmとなるように支持体2上に塗布し、35℃、相対湿度40%下で乾燥させて、下層を形成した。続いて、ヒドロキシエチルデンプン濃度が14質量%水溶液に薬剤としてインフルエンザワクチンを0.1質量%になるように含有させた混合溶液を、厚さが110μmとなるように下層の上に塗布して上層を形成した。これにより、支持体2上に2層膜20を形成した。上述のように作製された下層の粘度は1000Pa・sであり、上層の粘度は2Pa・sであり、下層と上層の粘度差は500倍である。経皮吸収シート1を製造するその他の条件は試験1と同様である。
【0177】
そして、微小針10部分に含まれるインフルエンザワクチンの定量を次のように行った。即ち、微小針10部分を切断し水で溶解して溶解液を得た。そして、得られた溶解液に含まれるインフルエンザワクチンの質量を、Coomassie (Bradford) Protein Assay Kitを用いて定量した。定量の結果、微小針10部分のインフルエンザワクチンの質量は 1.4μgであり、経費吸収シート全体に含まれるインフルエンザワクチン重量1.7μgの83%であった。
【0178】
試験2の結果から、本発明の経皮吸収シートの製造方法を実施することによって、薬剤としてインフルエンザワクチンを用いた場合であっても、充填率は83%となり、薬剤を微小針10部分に集中させることができることが分かる。
【0179】
なお、試験2では、上記した<充填率の測定方法2>により薬剤量を直接測定したが、<充填率の測定方法1>で測定したときの充填率は82%となり、同様の結果であった。
【0180】
[試験3]
試験3では、試験1の場合で使用した経皮吸収材料とは異なる種類の経皮吸収材料を使用して本発明を行った場合である。
【0181】
即ち、デキストラン(名糖産業社製、デキストラン70)濃度が39質量%、ヒアルロン酸ナトリウム濃度が1質量%の混合水溶液を、厚さが約300μmとなるように支持体2上に塗布し、35℃、相対湿度40%下で乾燥させて、下層を形成した。続いて、デキストラン濃度が14質量%水溶液に、薬剤としてヒト成長ホルモン濃度が0.25質量%、FITC濃度が0.001質量%になるように含有させた混合溶液を、厚さが110μmとなるように下層の上に塗布し、上層を形成した。上述のように作製された下層の粘度は1000Pa・sであり、上層の粘度は1Pa・sであり、下層と上層の粘度差は1000倍である。経皮吸収シートを製造するその他の条件は試験1と同様として経皮吸収シート1を作製した。
【0182】
上述のように作製された経皮吸収シート1の充填率を試験1と同様に評価した結果、82%と良い結果であった。
【0183】
試験3の結果から、本発明の経皮吸収シートの製造方法を実施することによって、経皮吸収材料の種類を変えた場合であっても、充填率は82%となり、薬剤を微小針10部分に集中させることができることが分かる。
【0184】
[試験4]
試験4では、薬剤としてインシュリン(ペプチド研究所製、インスリン ヒト)を用いて経皮吸収シート1を作製し、微小針10部分に集中される薬剤量を確認した。
【0185】
即ち、ヒドロキシエチルデンプン濃度が48.8質量%、ヒアルロン酸ナトリウム濃度が1.2質量%の混合水溶液を、厚さが約240μmとなるように支持体2上に塗布して下層を形成した。続いて、未乾燥の下層の上に、ヒドロキシエチルデンプン濃度が50質量%水溶液に、薬剤としてインシュリン濃度が0.25質量%、FITC濃度が0.001質量%となるように含有させた混合溶液を、厚さが15μmとなるように塗布して上層を形成した。これにより、支持体2上に2層膜20を形成した。上述のように作製された下層の粘度は1000Pa・sであり、上層の粘度は2Pa・sであり、下層は上層よりも500倍粘度が高い。
【0186】
そして、微小針10部分に含まれるインシュリンの定量を次のように行った。即ち、微小針10部分を切断し水で溶解して溶解液を得た。そして、得られた溶解液に含まれるインシュリンの質量を、市販のInsulin Human ELISA Kitを用いて定量した。定量の結果、微小針10部分のインシュリンの質量は0.48μgであり、経費吸収シート全体に含まれるインシュリン重量0.58μgの82%であった。
【0187】
試験4の結果から、本発明の経皮吸収シートの製造方法を実施することによって、薬剤としてインシュリンを用いた場合であっても、充填率は82%となり、薬剤を微小針10部分に集中させることができることが分かる。
【0188】
なお、試験4では、上記した充填率の測定方法により薬剤量を直接測定したが、<充填率の測定方法1>で測定したときの充填率は82%となり、同様の結果であった。
【0189】
[試験5]
試験5では、薬剤としてビスフォスフォネート(和光純薬社製、リセドロン酸ナトリウム)を用いて経皮吸収シート1を作製し、微小針10部分に集中される薬剤量を確認した。
【0190】
即ち、ヒドロキシエチルデンプン濃度が39質量%、ヒアルロン酸ナトリウム濃度が1質量%の混合水溶液を、厚さが約300μmとなるように支持体2上に塗布し、35℃、相対湿度40%下で乾燥させて、下層を形成した。続いて、ヒドロキシエチルデンプン濃度が14質量%水溶液に薬剤としてビスフォスフォネートを濃度が0.1質量%になるように含有させた混合溶液を、厚さが110μmとなるように下層上に塗布した後、35℃、相対湿度40%下で乾燥させて、上層を形成した。続いて、上層の上に水を厚さが100μmとなるように塗布して加湿し、これにより支持体2上に2層膜20を形成した。上述のように作製された下層の粘度は1000Pa・sであり、上層の粘度は2Pa・sであり、下層は上層よりも500倍粘度が高い。
【0191】
そして、微小針10部分に含まれるビスフォスフォネートの定量を次のように行った。即ち、微小針10部分を切断し水で溶解して溶解液を得た。そして、得られた溶解液に含まれるビスフォスフォネートの質量を、LC-MSを用いて定量した。定量の結果、微小針10部分のビスフォスフォネートの質量は 0.48μgであり、経費吸収シート全体に含まれるビスフォスフォネート重量0.58μgの82%であった。
【0192】
試験5の結果から、本発明の経皮吸収シートの製造方法を実施することによって、薬剤としてビスフォスフォネートを用いた場合であっても、充填率は82%となり、薬剤を微小針10部分に集中させることができることが分かる。
【0193】
なお、試験5では、上記した充填率の測定方法により薬剤量を直接測定したが、<充填率の測定方法1>で測定したときの充填率は82%となり、同様の結果であった。
【0194】
[試験6]
試験6では、下層、中間層、上層の3層構成からなる経皮吸収材料を使用して本発明を行った場合である。
【0195】
即ち、ヒドロキシエチルデンプン濃度が39質量%、ヒアルロン酸ナトリウム濃度が1質量%の混合水溶液を、厚さが約260μmとなるように支持体2上に塗布し、35℃、相対湿度40%下で乾燥させて、下層を形成した。続いて、ヒドロキシエチルデンプン濃度が40質量%の水溶液を、厚さが約40μmとなるように下層上に塗布し、35℃、相対湿度40%下で乾燥させて、中間層を形成した。続いて、ヒドロキシエチルデンプン濃度が14質量%水溶液に、薬剤としてヒト成長ホルモン濃度が0.25質量%、FITC濃度が0.001質量%になるように含有させた混合溶液を、厚さが110μmとなるように中間層の上に塗布し、上層を形成した。上述のように作製された下層の粘度は1000Pa・sであり、中間層の粘度は2Pa・sであり、上層の粘度は2Pa・sであり、下層と上層の粘度差は500倍である。経皮吸収シートを製造するその他の条件は試験1と同様として経皮吸収シートを作製した。
【0196】
上述のように作製された経皮吸収シートの充填率を試験1と同様に評価した結果、82%と良い結果であった。
【0197】
試験6の結果から、本発明の経皮吸収シートの製造方法を実施することによって、経皮吸収シート材料として3層構成を用いた場合であっても、充填率は82%となり、薬剤を微小針10部分に集中させることができることが分かる。
【符号の説明】
【0198】
1…経皮吸収シート、2…支持体、3…シート部、10…微小針(針状凸部)、11…原版、12…形状部、13…モールド、14…モールド複合体、15…針状凹部、15A…空気抜き孔、15B…テーパ部、15C…囲い部材、16…気体透過シート、20…2層膜、20A…第1の経皮吸収材料溶液(下層用の溶液)、20B…第2の経皮吸収材料溶液(上層用の溶液)、22…剥離用シート、30…2層膜(対比例)、30A…下層(対比例)、30B…上層(対比例)
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13