特許第5980411号(P5980411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5980411記録媒体搬送装置及びインクジェット記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980411
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】記録媒体搬送装置及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/12 20060101AFI20160818BHJP
   B65H 5/34 20060101ALI20160818BHJP
   B41J 13/22 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   B65H5/12 A
   B65H5/34
   B41J13/22
【請求項の数】10
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-504259(P2015-504259)
(86)(22)【出願日】2014年2月26日
(86)【国際出願番号】JP2014054646
(87)【国際公開番号】WO2014136631
(87)【国際公開日】20140912
【審査請求日】2015年8月25日
(31)【優先権主張番号】特願2013-44311(P2013-44311)
(32)【優先日】2013年3月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 多可雄
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−173279(JP,A)
【文献】 特開2000−318139(JP,A)
【文献】 特開平09−066597(JP,A)
【文献】 特開2000−033686(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/161742(WO,A1)
【文献】 特開平01−133074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/00− 5/38
B65H 29/52
B41J 13/00−13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドが外周面に対向配置される印字胴であって、前記記録媒体の端部を前記外周面よりも内側に把持して回転搬送する印字胴と、
前記記録媒体の端部を外周面に把持して回転搬送して前記印字胴へ受け渡す第1の搬送胴及び前記記録媒体の端部を外周面に把持して回転搬送して前記第1の搬送胴へ受け渡す第2の搬送胴、又は前記印字胴から受け取った記録媒体の端部を外周面に把持して回転搬送する第1の搬送胴及び該第1の搬送胴から受け取った記録媒体の端部を外周面に把持して回転搬送する第2の搬送胴と、
を備え、
前記印字胴と前記第1の搬送胴との軸間距離は前記印字胴の半径と前記第1の搬送胴の半径との和よりも短い距離に設定され、前記第1の搬送胴と前記第2の搬送胴との軸間距離は前記第1の搬送胴の半径と前記第2の搬送胴の半径との和に設定されており、
前記印字胴は前記外周面よりも距離dだけ内側に前記記録媒体の端部を把持し、
前記印字胴と前記第1の搬送胴との軸間距離は、前記印字胴の半径と前記第1の搬送胴の半径との和よりも距離dだけ短い距離に設定されている記録媒体搬送装置。
【請求項2】
前記印字胴、前記第1の搬送胴、及び前記第2の搬送胴はそれぞれ回転軸にギアが連結され、前記印字胴のギアと前記第1の搬送胴のギア、及び前記第1の搬送胴と前記第2の搬送胴のギアとが直接噛み合い、
前記印字胴のギアを転位させて前記軸間距離を設定した請求項1に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項3】
前記印字胴のギア、前記第1の搬送胴のギア、及び前記第2の搬送胴のギアを駆動するモータを備えた請求項1又はに記載の記録媒体搬送装置。
【請求項4】
前記印字胴、前記第1の搬送胴、及び前記第2の搬送胴は、それぞれ直径が互いに整数倍の関係にある請求項1から3のいずれか1項に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項5】
前記印字胴、前記第1の搬送胴、及び前記第2の搬送胴は、それぞれ直径が同一である請求項に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項6】
前記印字胴及び前記第1の搬送胴は、前記記録媒体の端部を咥えて把持する咥え部をそれぞれ回転軸方向に沿って複数備え、前記印字胴の複数の咥え部と前記第1の搬送胴の複数の咥え部とは、前記回転軸方向にそれぞれ交互に配置されている請求項1から5のいずれか1項に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項7】
前記第1の搬送胴から前記印字胴へ又は前記印字胴から前記第1の搬送胴へと前記記録媒体を受け渡す際に、前記第1の搬送胴の複数の咥え部と前記印字胴の複数の咥え部とが同時に前記記録媒体の端部を咥える請求項に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項8】
前記印字胴の複数の咥え部は、前記印字胴の回転軸に対して外周面上の対称位置の2ヶ所に備えられる請求項又はに記載の記録媒体搬送装置。
【請求項9】
前記記録媒体の端部は先端部である請求項1から8のいずれか1項に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の記録媒体搬送装置と、
前記印字胴の外周面に対向配置したインクジェットヘッドと、
を備えたインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体搬送装置及びインクジェット記録装置に関し、特に多段ドラム型(タンデム型)の記録媒体搬送装置及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットによる印刷装置では、インクジェットヘッドと印字面との距離(through distance)は、安定的に噴射インク着弾位置を保つため、できる限り小さく設定される。一般的に、インクジェットヘッドと印字面との距離はおおよそ数ミリ以下、可能であれば1mm以下に設定されることが多い。
【0003】
一方、印刷機では、シート用紙の先端を咥え爪により咥えて搬送し、ドラムからドラムに受け渡す多段ドラム型(タンデム型)のシート用紙搬送技術が確立されている。印刷機に使用されるシート用紙搬送技術では、用紙を押さえている咥え爪表面は、ドラム表面から飛び出す構造になっている。
【0004】
このシート用紙搬送装置を利用して、インクジェットによる印刷を実現するためには、インクジェットヘッドが搭載されるドラム(以下、印字ドラムと呼ぶ)の咥え爪の飛び出し量を小さくする必要がある。
【0005】
このような課題に対し、特許文献1には、咥え爪が印字ドラムの周面から突出しないように、凹部の中に収容して配置する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−173279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多段ドラム型シート用紙搬送装置では、上流のドラムから下流のドラムへ用紙を受け渡す際に、上流のドラムの咥え部と下流のドラムの咥え部とで同時に用紙の先端部を咥える構造になっている。引用文献1では、印字ドラムの前段ドラムの咥え部はドラム外周面に配置され、印字ドラムの咥え部はドラム内側に配置されている。したがって、この2つのドラムの用紙の受け渡し時には、両ドラムの咥え部によって用紙の先端部が波打ち状態となって咥え渡しされることになる。これにより、用紙に変形が残留したり、しわが残ったりすることがある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、咥え部による記録媒体の歪みを抑えることができ、安定して記録媒体を搬送することができる記録媒体搬送装置及びインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために記録媒体搬送装置の一の態様は、記録媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドが外周面に対向配置される印字胴であって、記録媒体の端部を外周面よりも内側に把持して回転搬送する印字胴と、記録媒体の端部を外周面に把持して回転搬送して印字胴へ受け渡す第1の搬送胴及び記録媒体の端部を外周面に把持して回転搬送して第1の搬送胴へ受け渡す第2の搬送胴、又は印字胴から受け取った記録媒体の端部を外周面に把持して回転搬送する第1の搬送胴及び該第1の搬送胴から受け取った記録媒体の端部を外周面に把持して回転搬送する第2の搬送胴とを備え、印字胴と第1の搬送胴との軸間距離は印字胴の半径と第1の搬送胴の半径との和よりも短い距離に設定され、第1の搬送胴と第2の搬送胴との軸間距離は第1の搬送胴の半径と第2の搬送胴の半径との和に設定されている。
【0010】
本態様によれば、記録媒体の端部を外周面よりも内側に把持して回転搬送する印字胴と印字胴と連接する第1の搬送胴との軸間距離を印字胴の半径と第1の搬送胴の半径との和よりも短い距離に設定し、第1の搬送胴と第1の搬送胴と連接する第2の搬送胴との軸間距離を第1の搬送胴の半径と第2の搬送胴の半径との和に設定するようにしたので、記録媒体の歪みを抑えることができるとともに、第1の搬送胴と第2の搬送胴は記録媒体の端部を外周面に把持することができ、安定した搬送が可能となる。
【0011】
印字胴は外周面よりも距離dだけ内側に記録媒体の端部を把持し、印字胴と第1の搬送胴との軸間距離は、印字胴の半径と第1の搬送胴の半径との和よりも距離dだけ短い距離に設定されていることが好ましい。これにより、記録媒体の歪みを抑えることができる。
【0012】
印字胴、第1の搬送胴、及び第2の搬送胴はそれぞれ回転軸にギアが連結され、印字胴のギアと第1の搬送胴のギア、及び第1の搬送胴と第2の搬送胴のギアとが直接噛み合い、印字胴のギアを転位させて軸間距離を設定することが好ましい。これにより、適切に軸間距離を設定することができる。
【0013】
印字胴のギア、第1の搬送胴のギア、及び第2の搬送胴のギアを駆動するモータを備えることが好ましい。これにより、適切に記録媒体を搬送することができる。
【0014】
印字胴、第1の搬送胴、及び第2の搬送胴は、それぞれ直径が互いに整数倍の関係にあることが好ましい。また、それぞれ直径が同一であってもよい。これにより、適切に記録媒体を受け渡すことができる。
【0015】
印字胴及び第1の搬送胴は、記録媒体の端部を咥えて把持する咥え部をそれぞれ回転軸方向に沿って複数備え、印字胴の複数の咥え部と第1の搬送胴の複数の咥え部とは、回転軸方向にそれぞれ交互に配置されていることが好ましい。これにより、適切に記録媒体を把持することができる。
【0016】
第1の搬送胴から印字胴へ又は印字胴から第1の搬送胴へと記録媒体を受け渡す際に、第1の搬送胴の複数の咥え部と印字胴の複数の咥え部とが同時に記録媒体の端部を咥えることが好ましい。これにより、適切に記録媒体を受け渡すことができる。また、印字胴の複数の咥え部は、印字胴の回転軸に対して外周面上の対称位置の2ヶ所に備えられてもよい。
【0017】
記録媒体の端部は先端部であることが好ましい。これにより、適切に記録媒体を把持し、搬送することができる。
【0018】
上記目的を達成するためにインクジェット記録装置の一の態様は、記録媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドが外周面に対向配置される印字胴であって、記録媒体の端部を外周面よりも内側に把持して回転搬送する印字胴と、記録媒体の端部を外周面に把持して回転搬送して印字胴へ受け渡す第1の搬送胴及び記録媒体の端部を外周面に把持して回転搬送して第1の搬送胴へ受け渡す第2の搬送胴、又は印字胴から受け取った記録媒体の端部を外周面に把持して回転搬送する第1の搬送胴及び該第1の搬送胴から受け取った記録媒体の端部を外周面に把持して回転搬送する第2の搬送胴とを備え、印字胴と第1の搬送胴との軸間距離は印字胴の半径と第1の搬送胴の半径との和よりも短い距離に設定され、第1の搬送胴と第2の搬送胴との軸間距離は第1の搬送胴の半径と第2の搬送胴の半径との和に設定されている記録媒体搬送装置と、印字胴の外周面に対向配置したインクジェットヘッドとを備えた。
【0019】
本態様によれば、印字胴に対向して配置したインクジェットヘッドにより高精細なインクジェット印字が可能となる。また、記録媒体の歪みを小さく抑えることができ、印字胴への用紙の密着性を上げることができ、高精細なインクジェット印字が可能となる。さらに、印字胴と第1の搬送胴との軸間距離を、印字胴の半径と第1の搬送胴の半径との和よりも短い距離に設定したことで、第1の搬送胴と第2の搬送胴は記録媒体の端部を外周面に把持することができ、安定した搬送が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、記録媒体の歪みを抑えることができ、安定して記録媒体を搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、用紙搬送装置を示す側面図である。
図2図2は、用紙搬送装置の回転駆動機構の構成図である。
図3図3は、搬送胴の斜視図である。
図4図4は、搬送胴の俯瞰図である。
図5図5は、搬送胴とグリッパの模式図である。
図6図6は、搬送胴とグリッパの模式図である。
図7図7は、用紙搬送装置の用紙の搬送を示す図である。
図8図8は、用紙の波打ちを説明するための図である。
図9図9は、搬送胴とグリッパの模式図である。
図10図10は、用紙搬送装置の用紙の搬送を示す図である。
図11図11は、用紙の受け渡しを説明するための図である。
図12図12は、本実施形態に係る用紙搬送装置を示す側面図である。
図13図13は、本実施形態に係る用紙搬送装置の回転駆動機構の構成図である。
図14図14は、本実施形態に係る用紙搬送装置による用紙の搬送を示す図である。
図15図15は、本実施形態に係る用紙の受け渡しを説明するための図である。
図16図16は、本実施形態に係る用紙搬送装置の変形例を示す側面図である。
図17図17は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の一実施形態を示す全体構成図である。
図18図18は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の回転駆動機構の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0023】
<用紙搬送装置の概要>
図1は、用紙搬送装置を示す側面図である。用紙搬送装置200は、給紙部(不図示)から給紙された用紙Pを排紙部(不図示)まで搬送する装置であり、上流側から受け渡された用紙Pの先端を把持して回転し、用紙Pを外周面に保持しながら搬送して下流側に受け渡す搬送胴202,204,206,208,210を備えている。
【0024】
搬送胴202は、給紙部(不図示)から用紙Pを受け取り、搬送胴204へと用紙Pを搬送する。搬送胴202は、円筒状に組んだ枠体で構成され、その外周面上にはグリッパ202Aが備えられている。搬送胴202は、このグリッパ202Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、搬送胴204へと用紙Pを搬送する。なお、搬送胴202は、外周面上の2カ所(回転軸からみて対称位置)にグリッパ202Aが配設され、1回の回転で2枚の用紙Pが搬送できるように構成されている。搬送胴202と搬送胴204は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、互いのグリッパの位置が合うように駆動される。
【0025】
搬送胴204は、搬送胴202から用紙Pを受け取り、搬送胴206へと用紙Pを搬送する。搬送胴204は、円筒状に形成され、その外周面上にはグリッパ204Aが備えられている。搬送胴204は、このグリッパ204Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、搬送胴206へと用紙Pを搬送する。また、搬送胴204は、その周面に多数の吸引穴(図示せず)が所定のパターンで形成される。搬送胴204の周面に巻き掛けられた用紙Pは、この吸引穴から吸引されることにより、搬送胴204の周面に吸着保持されながら搬送される。これにより、高い平坦性をもって用紙Pを搬送することができる。
【0026】
搬送胴206は、搬送胴202と同様に構成されている。即ち、搬送胴206は、円筒状に組んだ枠体で構成され、その外周面上にはグリッパ206Aが備えられている。搬送胴206は、このグリッパ206Aによって搬送胴204から受け取った用紙Pの先端を把持し、回転することにより搬送胴208へと用紙Pを搬送する。
【0027】
搬送胴208は、搬送胴204と同様に構成されている。即ち、搬送胴208は、円筒状に形成され、その外周面上にはグリッパ208Aが備えられている。搬送胴208は、このグリッパ208Aによって搬送胴206から受け取った用紙Pの先端を把持し、回転することにより搬送胴210へと用紙Pを搬送する。
【0028】
搬送胴210についても、搬送胴202と同様に構成されている。また、搬送胴202,204,206,208,210は、それぞれ直径(グリッパの回転軌跡の直径)が同一に構成されている。
【0029】
図2は、図1と反対側の側面部に設けられた回転駆動機構の構成図である。同図に示すように、用紙搬送装置200には、用紙搬送系の動力源としてのモータ(以下「回転用モータ」という。)212が設けられている。この回転用モータ212の動力は、タイミングベルト(無端状の歯付きベルト)214を介してプーリ216に伝えられる。
【0030】
プーリ216には歯車218が同軸で一体に連結されており、プーリ216と共に歯車218が回転する。この歯車218と噛合する歯車220が、図2上で歯車218の左上に設けられており、歯車220は搬送胴202の端部に直結された歯車(ギア)222と噛合している。
【0031】
搬送胴202の歯車222は、搬送胴204の端部に設けられた歯車224と噛み合い、この歯車224は搬送胴206の端部に設けられた歯車226と噛み合っている。以下、歯車226は搬送胴208の歯車228と噛み合い、歯車228は搬送胴210の歯車230に噛合している。
【0032】
各歯車222〜230が搬送胴回転用歯車となっており、各歯車間の軸間距離を同一として、これらが連接された構造となっている。回転用モータ212の動力がタイミングベルト214、プーリ216、歯車218、220を介して各歯車222〜230に伝達され、これら歯車222〜230の連動によって全ての搬送胴202,204,206,208,210を回転させる。本例の場合、各搬送胴202,204,206,208,210の直径と歯車222〜230の直径(ピッチ円の直径)は一致しており、歯車222が1回転すると、搬送胴204,206,208,210も1回転する。
【0033】
図3図4は、搬送胴206と搬送胴208との拡大図であり、図3は斜視図、図4は俯瞰図である。図3図4に示すように、搬送胴206のグリッパ206Aは、爪形状を有し、搬送胴206の回転軸方向(用紙Pの搬送方向に直交する方向)に用紙Pの最大幅に対応する長さにわたって、一定の間隔をおいて複数設けられている。同様に、搬送胴208のグリッパ208Aは、爪形状を有し、搬送胴208の回転軸方向に用紙Pの最大幅に対応する長さにわたって、一定の間隔をおいて複数設けられている。
【0034】
また、これら複数のグリッパ206Aと複数のグリッパ208Aとは、用紙Pの搬送方向に直交する方向に交互に配置されている。これにより、グリッパ206Aと208Aとが干渉することなく、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しを行うことができる。
【0035】
ここでは、搬送胴206と搬送胴208とについて説明したが、他の搬送胴のグリッパについても同様に配置されている。
【0036】
図5の(a)部分は、搬送胴208とグリッパ208Aの模式図であり、図5の(b)部分は、グリッパ208A部分の拡大図である。同図に示すように、グリッパ208Aは、搬送胴208の外周面との間に用紙Pの先端を狭持する。したがって、グリッパ208Aの表面は、狭持部の厚みの分hだけ搬送胴208の外周面から飛び出している。
【0037】
なお、グリッパ204Aの構成は、グリッパ208Aと同様である。また、グリッパ202A,206A,210Aは、搬送胴202,206,210の回転方向が搬送胴208とは異なることに伴って、グリッパ208Aの向きとは反転するが、その他の構成はグリッパ208Aと同様である。したがって、各グリッパ202A,204A,206A,210Aは、グリッパ208Aと同様に、その表面が搬送胴202,204,206,210の外周面から飛び出した構造となっている。
【0038】
しかしながら、搬送胴208において搬送される用紙Pに対し、インクジェットヘッドからインクを吐出して画像を記録しようとした場合、用紙Pの記録面とインクジェットヘッドのノズル面との距離TD(Through Distance)が問題となる。即ち、インク着弾位置を安定化するためには、TDをできる限り小さく設定する必要があるが、インクジェットヘッドとグリッパとが衝突してしまうという問題が発生する。
【0039】
<用紙搬送装置の問題点1(用紙の波打ちの発生)>
この対策として、用紙Pの先端部を搬送胴208の外周面から内側に入り込ませた構造にすることが必要となる。図6の(a)部分は、このように構成した搬送胴238とグリッパ238Aの模式図であり、図6の(b)部分は、グリッパ238A部分の拡大図である。同図における符号238Bは、インクジェットヘッドを示している。搬送胴238は、用紙Pの先端部を外周面からdだけ内側に入れ込む構成としており、グリッパ238Aは、この内側に入り込んだ位置において搬送胴238との間に用紙Pの先端を狭持する。したがって、搬送胴238の外周面からのグリッパ238Aの飛び出し量は、図5に示した例よりもdだけ少なくなる。これにより、用紙Pの記録面とインクジェットヘッド238Bとの距離TDを小さく設定することができる。
【0040】
図7は、搬送胴238を用いた用紙搬送装置240の用紙Pの搬送を示す図である。用紙搬送装置240は、搬送胴202,204,206,238,210を備え、図1に示した用紙搬送装置200の搬送胴208に代えて、図6に示した搬送胴238を用いている。なお、同図における符号238Bは、インクジェットヘッドを示している。
【0041】
図7において、実線は用紙Pの先端部の軌跡を示し、一点鎖線は各搬送胴の歯車の駆動ピッチ円を示す。用紙搬送装置200と同様に、歯車間の軸間距離は、全て同一に設定されている。
【0042】
搬送胴202から搬送胴204、及び搬送胴204から搬送胴206においては、用紙Pの先端部の軌跡は連続している。したがって、グリッパを介した用紙Pの受け渡しが用紙変形を発生させずに行われている。
【0043】
これに対し、搬送胴206から搬送胴238においては、搬送胴206のグリッパ206Aが用紙Pを搬送胴206の外周面で把持しているのに対し、搬送胴238のグリッパ238Aが用紙Pを搬送胴238の外周面の内側で把持しているため、用紙Pの先端部の軌跡が不連続となっている。
【0044】
また、同様に、搬送胴238から搬送胴210への受け渡しにおいても、用紙Pの先端部の軌跡が不連続となっている。
【0045】
即ち、図8の(a)部分に示すように、搬送胴206から搬送胴238への用紙Pの受け渡し位置において、複数のグリッパ206Aの列と複数のグリッパ238Aの列とが距離dだけ離れてしまい、同一直線上に並ばない。したがって、それぞれのグリッパが用紙Pの先端を咥えると、図8の(b)部分に示すように、用紙Pの先端部に波打ちが発生してしまう。搬送胴238から搬送胴210への用紙Pの受け渡し時においても同様に波打ちが発生する。この波打ちは、特に用紙Pの厚みが大きいときに顕著に発生する。
【0046】
<用紙搬送装置の問題点2(用紙搬送位置精度の悪化)>
この用紙Pの波打ちを防止するために、搬送胴206の代わりに用紙Pの先端部を外周面からdだけ外側で把持する搬送胴を用いることが考えられる。図9の(a)部分は、このように構成した搬送胴252とグリッパ252Aの模式図であり、図9の(b)部分は、グリッパ252A部分の拡大図である。搬送胴252は、用紙Pの先端部を外周面からdだけ外側に突出させる構成としており、グリッパ252Aは、この外側に突出した位置において搬送胴252との間に用紙Pの先端を狭持する。
【0047】
図10は、搬送胴238及び搬送胴252を用いた用紙搬送装置260の用紙Pの搬送を示す図である。用紙搬送装置260は、それぞれ同じ直径の搬送胴262,264,266,268,270を備え、搬送胴264,268については、図6に示した搬送胴238を用いており、搬送胴262,266,270については、図9に示した搬送胴252を用いている。ここで、各搬送胴262,264,266,268,270のグリッパをそれぞれ262A,264A,266A,268A,270Aとする。
【0048】
また、用紙搬送装置260の回転駆動機構は、図2に示した用紙搬送装置200と同様であり、歯車間の軸間距離は、全て同一に設定されている。なお、同図における符号268Bは、インクジェットヘッドを示している。
【0049】
図10において、実線は用紙Pの先端部の軌跡を示し、一点鎖線は各搬送胴の歯車の駆動ピッチ円を示す。同図に示すように、各搬送胴262〜270において、用紙Pの先端部の軌跡は連続しており、グリッパを介した用紙Pの受け渡しが用紙変形を発生させずに行われている。
【0050】
即ち、図11の(a)部分に示すように、搬送胴266から搬送胴268への用紙Pの受け渡しは、搬送胴266の外周面から距離dだけ外側に突出し、かつ搬送胴268の外周面から距離dだけ内側に入り込んだ位置で用紙Pの受け渡しが行われる。搬送胴262から搬送胴264への受け渡しも同様である。
【0051】
また、搬送胴268から搬送胴270への用紙Pの受け渡しは、搬送胴268の外周面から距離dだけ内側に入り込み、かつ搬送胴270の外周面から距離dだけ外側に突出した位置で用紙Pの受け渡しが行われる。搬送胴264から搬送胴266への受け渡しも同様である。
【0052】
このように用紙Pの受け渡しが行われることで、用紙Pの先端部の軌跡が連続する。
【0053】
しかしながら、このように構成された用紙搬送装置260では、給紙部(不図示)から搬送胴262への用紙Pの受け渡しにおいて、位置決めと先端変形の2つの機能を同時に実現する必要がある。即ち、図11の(b)部分に示すように、搬送胴262のグリッパ262Aは、搬送胴262の外周面から距離dだけ外側に突出しているため、グリッパ262Aの位置に正確に用紙Pの先端を位置決めすると同時に、この突出したグリッパ262Aに先端を把持させるために用紙Pの先端を曲げ形状にする必要がある。したがって、用紙搬送位置精度の再現性が悪化するという問題が発生する。
【0054】
<実施形態>
〔用紙搬送装置の概要〕
図12は、本実施形態に係る用紙搬送装置を示す側面図である。用紙搬送装置100(記録媒体搬送装置の一例)は、給紙部(不図示)から給紙された用紙P(記録媒体の一例)を排紙部(不図示)まで搬送する装置であり、渡し胴102,106(第1の搬送胴の一例),110(第1の搬送胴の一例)、処理胴104(第2の搬送胴の一例)、印字胴108を備えている。
【0055】
渡し胴102は、給紙部(不図示)から用紙Pを受け取り、処理胴104へと用紙Pを搬送する。渡し胴102は、半径rの円筒状に組んだ枠体で構成され、その外周面上(半径rが描く軌跡面上)にはグリッパ102Aが備えられている(図5参照)。渡し胴102は、このグリッパ102Aによって用紙Pの先端をその外周面に把持して回転することにより、処理胴104へと用紙Pを搬送する。
【0056】
処理胴104は、渡し胴102から用紙Pを受け取り、渡し胴106へと用紙Pを搬送する。処理胴104は、半径rの円筒状に形成され、その外周面上にはグリッパ104Aが備えられている(図5参照)。処理胴104は、このグリッパ104Aによって用紙Pの先端をその外周面に把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、渡し胴106へと用紙Pを搬送する。
【0057】
また、処理胴104は、その周面に多数の吸引穴(図示せず)が所定のパターンで形成される。処理胴104の周面に巻き掛けられた用紙Pは、この吸引穴から吸引されることにより、処理胴104の周面に吸着保持されながら搬送される。これにより、高い平坦性をもって用紙Pを搬送することができる。
【0058】
処理胴104の用紙Pの搬送経路に対向する位置には、用紙Pに対して各種処理を行うための処理部(不図示)が設けられる。たとえば、用紙Pの印字面に処理液を塗布する処理液塗布装置等が設けられる。上述のように、処理胴104は、高い平坦性をもって用紙Pを搬送しており、用紙Pに対して適切に所望の処理を行うことができる。
【0059】
渡し胴106は、渡し胴102と同様に、半径rの円筒状に組んだ枠体で構成され、その外周面上にはグリッパ106A(咥え部の一例)が備えられている(図5参照)。渡し胴106は、このグリッパ106Aによって処理胴104から受け取った用紙Pの先端をその外周面に把持し、回転することにより印字胴108へと用紙Pを搬送する。
【0060】
印字胴108は、渡し胴106から用紙Pを受け取り、渡し胴110へと用紙Pを搬送する。印字胴108は、半径rの円筒状に形成され、用紙Pの先端部を外周面からdだけ内側に入れ込むように凹部を有して構成されており、この内側に入り込んだ位置にはグリッパ108A(咥え部の一例)が配置されている(図6参照)。印字胴108は、このグリッパ108Aによって用紙Pの先端をその外周面に把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、渡し胴110へと用紙Pを搬送する。
【0061】
また、印字胴108は、その周面に多数の吸引穴(図示せず)が所定のパターンで形成される。印字胴108の周面に巻き掛けられた用紙Pは、この吸引穴から吸引されることにより、印字胴108の周面に吸着保持されながら搬送される。これにより、高い平坦性をもって用紙Pを搬送することができる。
【0062】
印字胴108の用紙Pの搬送経路に対向する位置には、用紙Pの記録面に対してインクを吐出して画像を形成するインクジェットヘッド108Bが配置されている。印字胴108は、グリッパ108Aが内側に入り込んだ位置に配置されているため、用紙Pの記録面とインクジェットヘッド108Bとの距離TDを小さく設定することができる。また、印字胴108は、高い平坦性をもって用紙Pを搬送しているため、高品質に画像を形成することができる。
【0063】
渡し胴110は、渡し胴102と同様に、半径rの円筒状に組んだ枠体で構成され、その外周面上にはグリッパ110A(咥え部の一例)が備えられている(図5参照)。渡し胴110は、このグリッパ110Aによって印字胴108から受け取った用紙Pの先端をその外周面に把持し、回転することにより排紙部(不図示)へと用紙Pを搬送する。
【0064】
渡し胴102、処理胴104、渡し胴106、印字胴108、渡し胴110のグリッパ102A,104A,106A,108A,110Aは、それぞれ用紙Pの搬送方向に直交する方向に用紙Pの最大幅に対応する長さにわたって、一定の間隔をおいて複数設けられている(図3図4参照)。また、このグリッパ列は、それぞれの胴の外周面上の回転軸からみて対称位置となる2ヶ所に配設され、1回の回転で2枚の用紙Pが搬送できるように構成されている。
【0065】
各胴の複数のグリッパと、その胴に用紙Pを受け渡す胴の複数のグリッパとは、用紙Pの搬送方向に直交する方向に交互に配置されている(図3図4参照)。この2つの胴は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、互いのグリッパ列の位置が合うように駆動される。用紙Pの受け渡し時には、2つの胴のグリッパが、ともに(同時に)用紙Pの先端部を咥えた状態となる。
【0066】
また、渡し胴102と処理胴104との軸間距離、及び処理胴104と渡し胴106との軸間距離は2×r(それぞれ、渡し胴102の半径と処理胴104の半径との和、処理胴104の半径と渡し胴106の半径との和に相当)、渡し胴106と印字胴108との軸間距離、及び印字胴108と渡し胴110との軸間距離は2×r−d(それぞれ、渡し胴106の半径と印字胴108の半径との和より距離dだけ短い距離、印字胴108の半径と渡し胴110の半径との和より距離dだけ短い距離に相当)に設定されている。
【0067】
〔回転駆動機構の概要〕
図13は、図12と反対側の側面部に設けられた回転駆動機構の構成図である。同図に示すように、用紙搬送装置100には、用紙搬送系の動力源としての回転用モータ112が設けられている。この回転用モータ112の動力は、タイミングベルト114を介してプーリ116に伝えられる。
【0068】
プーリ116には歯車118が同軸で一体に連結されおり、プーリ116と共に歯車118が回転する。この歯車118と噛合する歯車120が、図13上で歯車118の左上に設けられており、歯車120は渡し胴102の回転軸と同軸に直結された歯車122と噛合している。
【0069】
渡し胴102の歯車122は、処理胴104の回転軸と同軸に直結された歯車124と噛み合い、この歯車124は渡し胴106の回転軸と同軸に直結された歯車126と噛み合っている。以下、歯車126は印字胴108の回転軸と同軸に直結された歯車128と噛み合い、歯車128は渡し胴110の回転軸と同軸に直結された歯車130に噛合している。
【0070】
各歯車122〜130が各胴の回転用歯車となっており、これらが連接された(直接噛み合った)構造となっている。回転用モータ112の動力がタイミングベルト114、プーリ116、歯車118、120を介して各歯車122〜130に伝達され、これら歯車122〜130の連動によって渡し胴102、処理胴104、渡し胴106、印字胴108、渡し胴110を回転させる。
【0071】
各歯車122〜130は、それぞれ半径rに構成されている。また、渡し胴102と処理胴104との軸間距離及び処理胴104と渡し胴106との軸間距離は2×rに設定されている。さらに、渡し胴106と印字胴108との軸間距離及び印字胴108と渡し胴110との軸間距離は、歯車128を転位させることにより、駆動比を維持したまま2×r―dに設定されている。
【0072】
このように、渡し胴102、処理胴104、渡し胴106、印字胴108、渡し胴110の直径と歯車122〜130の直径(ピッチ円の直径)は一致しており、渡し胴102が1回転すると、処理胴104、渡し胴106、印字胴108、渡し胴110も1回転する。
【0073】
なお、渡し胴102、処理胴104、渡し胴106、印字胴108、渡し胴110を回転させる動力伝達部材の歯車として、はすば歯車が用いられている。歯車としては、平歯車を用いることも可能であるが、滑らかな動力伝達を行うためには、はすば歯車や、やまば歯車を採用することが好ましい。はすば歯車は、歯部が斜めに形成されており、滑らかな動力伝達を実現できる。やまば歯車は、はすば歯車と比較してスラスト方向の力を低減できる利点があるが、はすば歯車よりも高コストである。したがって、本例では、滑らかな動力伝達と低コストを両立させる観点からはすば歯車が採用されている。
【0074】
〔用紙の先端部の軌跡〕
図14は、用紙搬送装置100の用紙Pの搬送を示す図である。同図において、実線は用紙Pの先端部の軌跡を示し、一点鎖線は各胴の歯車の駆動ピッチ円を示す。
【0075】
渡し胴102から処理胴104においては、用紙Pの先端は、同一直線上に並んだ複数のグリッパ102Aの列と複数のグリッパ104Aの列とにより、渡し胴102の外周面から処理胴104の外周面に受け渡される。したがって、用紙Pの先端部の軌跡は連続し、用紙Pの受け渡しが用紙変形(波打ち)を発生させずに行われている。
【0076】
同様に、処理胴104から渡し胴106においても、用紙Pの先端は、同一直線上に並んだ複数のグリッパ104Aの列と複数のグリッパ106Aの列とにより、処理胴104の外周面から渡し胴106の外周面に受け渡される。したがって、用紙Pの先端部の軌跡は連続し、用紙Pの受け渡しが用紙変形を発生させずに行われている。
【0077】
また、渡し胴106から印字胴108においては、用紙Pの先端は、グリッパ106Aとグリッパ108Aとにより、渡し胴106の外周面から印字胴108の外周面よりdだけ内側に受け渡される。
【0078】
ここで、渡し胴106と印字胴108との軸間距離が2×r−dに設定されているため、図15の(a)部分に示すように、複数のグリッパ106Aの列と複数のグリッパ108Aの列とが印字胴108の外周面からdだけ内側の位置で同一直線上に並ぶことになり、用紙Pの先端部の軌跡は連続し、用紙Pの受け渡しが用紙変形を発生させずに行われる。
【0079】
さらに、印字胴108から渡し胴110においても、用紙Pの先端は、グリッパ108Aとグリッパ110Aとにより、印字胴108の外周面よりdだけ内側から渡し胴110の外周面に受け渡される。
【0080】
ここで、図15の(a)部分に示すように、印字胴108と渡し胴110との軸間距離が2×r−dに設定されているため、複数のグリッパ108Aの列と複数のグリッパ110Aの列とが印字胴108の外周面からdだけ内側の位置で同一直線上に並ぶことになり、用紙Pの先端部の軌跡は連続し、用紙Pの受け渡しが用紙変形を発生させずに行われる。
【0081】
また、渡し胴102のグリッパ102Aは、渡し胴102の外周面との間に用紙Pを狭持するため、給紙部(不図示)から渡し胴102への用紙Pの受け渡しにおいては、図15の(b)部分に示すように、用紙先端を変形させる必要がなく、位置決めを行って受け渡せばよい。
【0082】
このように、用紙搬送装置100によれば、印字胴のグリッパを印字胴の外周面よりも内側に入り込ませるように配置したことで、印字胴に対向して配置したインクジェットヘッドにより高精細なインクジェット印字が可能となる。また、用紙歪みを小さく抑えることができ、胴への用紙の密着性を上げることができ、高精細なインクジェット印字が可能となる。さらに、印字胴とその前後の胴の軸間距離を、印字胴のグリッパを内側に配置した分だけ印字胴の歯車を転位させることにより駆動比を維持したまま短く設定し、それ以外の搬送胴間の軸間距離をそれぞれの搬送胴の半径の和としたことで、印字胴以外のグリッパを胴の外周面上に配置することができ、安定な搬送が可能となる。
【0083】
ここでは、渡し胴110から排紙部(不図示)へ用紙Pを受け渡しているが、図16に示す変形例のように、渡し胴110の後段にさらに用紙Pを外周面に把持する渡し胴111(第2の搬送胴の一例)が配置されている場合には、その渡し胴111と渡し胴110との軸間距離は、渡し胴111の半径と渡し胴110の半径との和に設定すればよい。なお渡し胴111のグリッパ111Aは、渡し胴102、処理胴104、渡し胴106、印字胴108、渡し胴110と同様に、用紙Pの搬送方向に直交する方向に用紙Pの最大幅に対応する長さにわたって、一定の間隔をおいて複数設けられている。また、グリッパ111Aの列は、渡し胴111の外周面上の回転軸からみて対称位置となる2ヶ所に配設され、1回の回転で2枚の用紙Pが搬送できるように構成されている。
【0084】
<インクジェット記録装置への適用>
図17は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の一実施形態を示す全体構成図である。
【0085】
このインクジェット記録装置10は、枚葉の用紙(記録メディア)Pに水性UVインク(水性媒体を使用したUV(紫外線)硬化型のインク)を用いてインクジェット方式で画像を記録するインクジェット記録装置であり、主として、用紙Pを給紙する給紙部12と、給紙部12から給紙された用紙Pの表面(画像記録面)に所定の処理液を付与する処理液付与部14と、処理液付与部14で処理液が付与された用紙Pの乾燥処理を行う処理液乾燥処理部16と、処理液乾燥処理部16で乾燥処理が施された用紙Pの表面に水性UVインクを用いてインクジェット方式で画像を記録する画像記録部18と、画像記録部18で画像が記録された用紙Pの乾燥処理を行うインク乾燥処理部20と、インク乾燥処理部20で乾燥処理された用紙PにUV照射処理(定着処理)を行って画像を定着させるUV照射処理部22と、UV照射処理部22でUV照射処理された用紙Pを排紙する排紙部24とで構成される。
【0086】
〈給紙部〉
給紙部12は、給紙台30に積載された用紙Pを1枚ずつ処理液付与部14に給紙する。給紙部12は、主として、給紙台30と、吸引装置(サッカー)32と、給紙ローラ対34と、フィーダボード36と、前当て38と、給紙ドラム40とで構成される。
【0087】
用紙Pは、多数枚が積層された束の状態で給紙台30に載置される。給紙台30は、図示しない給紙台昇降装置によって昇降可能に設けられる。給紙台昇降装置は、給紙台30に積載された用紙Pの増減に連動して、その駆動が制御され、束の最上位に位置する用紙Pが常に一定の高さに位置するように、給紙台30を昇降させる。
【0088】
記録メディアとしての用紙Pは、特に限定されないが、一般のオフセット印刷などで使用される汎用の印刷用紙(いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする用紙)を用いることができる。本例では塗工紙が用いられる。塗工紙は、一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙などが好適に用いられる。
【0089】
吸引装置(サッカー)32は、給紙台30に積載されている用紙Pを上から順に1枚ずつ取り上げて、給紙ローラ対34に給紙する。吸引装置(サッカー)32は、昇降自在かつ揺動自在に設けられたサクションフット32Aを備え、このサクションフット32Aによって用紙Pの上面を吸着保持して、用紙Pを給紙台30から給紙ローラ対34に移送する。この際、サクションフット32Aは、束の最上位に位置する用紙Pの先端側の上面を吸着保持して、用紙Pを引き上げ、引き上げた用紙Pの先端を給紙ローラ対34を構成する一対のローラ34A、34Bの間に挿入する。
【0090】
給紙ローラ対34は、互いに押圧当接された上下一対のローラ34A、34Bで構成される。上下一対のローラ34A、34Bは、一方が駆動ローラ(ローラ34A)、他方が従動ローラ(ローラ34B)とされ、駆動ローラ(ローラ34A)は、図示しないモータに駆動されて回転する。モータは、用紙Pの給紙に連動して駆動され、吸引装置(サッカー)32から用紙Pが給紙されると、そのタイミングに合わせて駆動ローラ(ローラ34A)を回転させる。上下一対のローラ34A、34Bの間に挿入された用紙Pは、このローラ34A、34Bにニップされて、ローラ34A、34Bの回転方向(フィーダボード36の設置方向)に送り出される。
【0091】
フィーダボード36は、用紙幅に対応して形成され、給紙ローラ対34から送り出された用紙Pを受けて、前当て38までガイドする。このフィーダボード36は、先端側が下方に向けて傾斜して設置され、その搬送面の上に載置された用紙Pを搬送面に沿って滑らせて前当て38までガイドする。
【0092】
フィーダボード36には、用紙Pを搬送するためのテープフィーダ36Aが幅方向に間隔をおいて複数設置される。テープフィーダ36Aは、無端状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。フィーダボード36の搬送面に載置された用紙Pは、このテープフィーダ36Aによって送りが与えられて、フィーダボード36の上を搬送される。
【0093】
また、フィーダボード36の上には、リテーナ36Bとコロ36Cとが設置される。
【0094】
リテーナ36Bは、用紙Pの搬送面に沿って前後に縦列して複数配置される(本例では2つ)。このリテーナ36Bは、用紙幅に対応した幅を有する板バネで構成され、搬送面に押圧当接されて設置される。テープフィーダ36Aによってフィーダボード36の上を搬送される用紙Pは、このリテーナ36Bを通過することにより、凹凸が矯正される。なお、リテーナ36Bは、フィーダボード36との間に用紙Pを導入しやすくするため、後端部がカールして形成される。
【0095】
コロ36Cは、前後のリテーナ36Bの間に配設される。このコロ36Cは、用紙Pの搬送面に押圧当接されて設置される。前後のリテーナ36Bの間を搬送される用紙Pは、このコロ36Cによって上面が抑えられながら搬送される。
【0096】
前当て38は、用紙Pの姿勢を矯正する。この前当て38は、板状に形成され、用紙Pの搬送方向と直交して配置される。また、図示しないモータに駆動されて、揺動可能に設けられる。フィーダボード36の上を搬送された用紙Pは、その先端が前当て38に当接されて、姿勢が矯正される(いわゆる、スキュー防止)。前当て38は、給紙ドラム40への用紙の給紙に連動して揺動し、姿勢を矯正した用紙Pを給紙ドラム40に受け渡す。
【0097】
給紙ドラム40は、前当て38を介してフィーダボード36から給紙される用紙Pを受け取り、処理液付与部14へと搬送する。給紙ドラム40は、円筒状に形成され、後述する回転駆動機構(図18参照)により回転する。給紙ドラム40の外周面上には、グリッパ40Aが備えられ、このグリッパ40Aによって用紙Pの先端が把持される。給紙ドラム40は、グリッパ40Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、処理液付与部14へと用紙Pを搬送する。
【0098】
給紙部12は、以上のように構成される。給紙台30の上に積載された用紙Pは、吸引装置(サッカー)32によって上から順に1枚ずつ引き上げられて、給紙ローラ対34に給紙される。給紙ローラ対34に給紙された用紙Pは、その給紙ローラ対34を構成する上下一対のローラ34A、34Bによって前方に送り出され、フィーダボード36の上に載置される。フィーダボード36の上に載置された用紙Pは、フィーダボード36の搬送面に設けられたテープフィーダ36Aによって搬送される。そして、その搬送過程でリテーナ36Bによってフィーダボード36の搬送面に押し付けられ、凹凸が矯正される。フィーダボード36によって搬送された用紙Pは、先端が前当て38に当接されることにより、傾きが矯正され、その後、給紙ドラム40に受け渡される。そして、その給紙ドラム40によって処理液付与部14へと搬送される。
【0099】
〈処理液付与部〉
処理液付与部14は、用紙Pの表面(画像記録面)に所定の処理液を付与する。この処理液付与部14は、主として、用紙Pを搬送する処理液付与ドラム42と、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pの印刷面に所定の処理液を付与する処理液付与ユニット44とで構成される。
【0100】
処理液付与ドラム42は、給紙部12の給紙ドラム40から用紙Pを受け取り、処理液乾燥処理部16へと用紙Pを搬送する。処理液付与ドラム42は、円筒状に形成され、後述する回転駆動機構(図18参照)により回転する。処理液付与ドラム42の外周面上には、グリッパ42Aが備えられ、このグリッパ42Aによって用紙Pの先端が把持される。処理液付与ドラム42は、このグリッパ42Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、処理液乾燥処理部16へと用紙Pを搬送する(1回転で1枚の用紙Pを搬送する。)。処理液付与ドラム42と給紙ドラム40は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。すなわち、同じ周速度となるように駆動されるとともに、互いのグリッパの位置が合うように駆動される。
【0101】
処理液付与ユニット44は、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pの表面に処理液をローラ塗布する。この処理液付与ユニット44は、主として、用紙Pに処理液を塗布する塗布ローラ44Aと、処理液が貯留される処理液槽44Bと、処理液槽44Bに貯留された処理液を汲み上げて、塗布ローラ44Aに供給する汲み上げローラ44Cとで構成される。汲み上げローラ44Cは、塗布ローラ44Aに押圧当接して設置されるとともに、一部を処理液槽44Bに貯留された処理液に浸漬させて設置される。この汲み上げローラ44Cは、処理液を計量して汲み上げ、塗布ローラ44Aの周面に一定の厚さで処理液を付与する。塗布ローラ44Aは、用紙幅に対応して設けられ、用紙Pに押圧当接されて、その周面に付与された処理液を用紙Pに塗布する。塗布ローラ44Aは、図示しない当接離間機構に駆動されて、処理液付与ドラム42の周面に当接する当接位置と、処理液付与ドラム42の周面から離間する離間位置との間を移動する。当接離間機構は、用紙Pの通過タイミングに合わせて、塗布ローラ44Aを移動させ、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pの表面に処理液を塗布する。
【0102】
なお、本例では、処理液をローラ塗布する構成としているが、処理液を付与する方法は、これに限定されるものではない。この他、インクジェットヘッドを用いて付与する構成やスプレーにより付与する構成を採用することもできる。
【0103】
処理液付与部14は、以上のように構成される。給紙部12の給紙ドラム40から受け渡された用紙Pは、処理液付与ドラム42で受け取られる。処理液付与ドラム42は、用紙Pの先端をグリッパ42Aで把持して、回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けて搬送する。この搬送過程で塗布ローラ44Aが用紙Pの表面に押圧当接され、用紙Pの表面に処理液が塗布される。
【0104】
ここで、この用紙Pの表面に塗布する処理液は、後段の画像記録部18で用紙Pに打滴する水性UVインク中の色材を凝集させる機能を有する処理液が塗布される。このような処理液を用紙Pの表面に塗布して水性UVインクを打滴することにより、汎用の印刷用紙を用いた場合であっても、着弾干渉等を起こすことなく、高品位な印刷を行うことができる。
【0105】
〈処理液乾燥処理部〉
処理液乾燥処理部16は、表面に処理液が付与された用紙Pを乾燥処理する。この処理液乾燥処理部16は、主として、用紙Pを搬送する処理液乾燥処理ドラム46と、用紙搬送ガイド48と、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの印刷面に熱風を吹き当てて乾燥させる処理液乾燥処理ユニット50とで構成される。
【0106】
処理液乾燥処理ドラム46は、処理液付与部14の処理液付与ドラム42から用紙Pを受け取り、画像記録部18へと用紙Pを搬送する。処理液乾燥処理ドラム46は、円筒状に組んだ枠体で構成され、後述する回転駆動機構(図17参照)により回転する。処理液乾燥処理ドラム46の外周面上には、グリッパ46Aが備えられ、このグリッパ46Aによって用紙Pの先端が把持される。処理液乾燥処理ドラム46は、このグリッパ46Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、画像記録部18と用紙Pを搬送する。なお、本例の処理液乾燥処理ドラム46は、外周面上の2カ所にグリッパ46Aが配設され、1回の回転で2枚の用紙Pが搬送できるように構成されている。処理液乾燥処理ドラム46と処理液付与ドラム42は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。すなわち、同じ周速度となるように駆動されるとともに、互いのグリッパの位置が合うように駆動される。
【0107】
用紙搬送ガイド48は、処理液乾燥処理ドラム46による用紙Pの搬送経路に沿って配設され、用紙Pの搬送をガイドする。
【0108】
処理液乾燥処理ユニット50は、処理液乾燥処理ドラム46の内側に設置され、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの表面に向けて熱風を吹き当てて乾燥処理する。本例では、2台の処理液乾燥処理ユニット50が、処理液乾燥処理ドラム内に配設され、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの表面に向けて熱風を吹き当てる構成とされている。
【0109】
処理液乾燥処理部16は、以上のように構成される。処理液付与部14の処理液付与ドラム42から受け渡された用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム46で受け取られる。処理液乾燥処理ドラム46は、用紙Pの先端をグリッパ46Aで把持して、回転することにより、用紙Pを搬送する。この際、処理液乾燥処理ドラム46は、用紙Pの表面(処理液が塗布された面)を内側に向けて搬送する。用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される過程で処理液乾燥処理ドラム46の内側に設置された処理液乾燥処理ユニット50から熱風が表面に吹き当てられて、乾燥処理される。すなわち、処理液中の溶媒成分が除去される。これにより、用紙Pの表面にインク凝集層が形成される。
【0110】
〈画像記録部〉
画像記録部18は、用紙Pの印刷面にC、M、Y、Kの各色のインク(水性UVインク)の液滴を打滴して、用紙Pの印刷面にカラー画像を描画する。この画像記録部18は、主として、用紙Pを搬送する画像記録ドラム52と、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pを押圧して、用紙Pを画像記録ドラム52の周面に密着させる用紙押さえローラ54と、用紙PにC、M、Y、Kの各色のインク滴を吐出するインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kと、用紙Pに記録された画像を読み取るインラインセンサ58と、インクミストを捕捉するミストフィルタ60と、ドラム冷却ユニット62とで構成される。
【0111】
画像記録ドラム52(印字胴の一例)は、処理液乾燥処理部16の処理液乾燥処理ドラム46から用紙Pを受け取り、インク乾燥処理部20へと用紙Pを搬送する。画像記録ドラム52は、円筒状に形成され、後述する回転駆動機構(図18参照)により回転する。画像記録ドラム52の外周面より内側に入り込んだ位置には、グリッパ52Aが備えられている。このグリッパ52Aが、画像記録ドラム52の外周面から距離dだけ内側において用紙Pの先端を把持する。画像記録ドラム52は、グリッパ52Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、インク乾燥処理部20へと用紙Pを搬送する。また、画像記録ドラム52は、その周面に多数の吸引穴(図示せず)が所定のパターンで形成される。画像記録ドラム52の周面に巻き掛けられた用紙Pは、この吸引穴から吸引されることにより、画像記録ドラム52の周面に吸着保持されながら搬送される。これにより、高い平坦性をもって用紙Pを搬送することができる。
【0112】
なお、この吸引穴からの吸引は一定の範囲でのみ作用し、所定の吸引開始位置から所定の吸引終了位置との間で作用する。吸引開始位置は、用紙押さえローラ54の設置位置に設定され、吸引終了位置は、インラインセンサ58の設置位置の下流側に設定される(たとえば、インク乾燥処理部20に用紙を受け渡す位置に設定される。)。すなわち、少なくともインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの設置位置(画像記録位置)とインラインセンサ58の設置位置(画像読取位置)では、用紙Pが画像記録ドラム52の周面に吸着保持されるように設定される。
【0113】
なお、用紙Pを画像記録ドラム52の周面に吸着保持させる機構は、上記の負圧による吸着方法に限らず、静電吸着による方法を採用することもできる。
【0114】
また、本例の画像記録ドラム52は、外周面上の2カ所にグリッパ52Aが配設され、1回の回転で2枚の用紙Pが搬送できるように構成されている。画像記録ドラム52と処理液乾燥処理ドラム46は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。すなわち、同じ周速度となるように駆動されるとともに、互いのグリッパの位置が合うように駆動される。
【0115】
用紙押さえローラ54は、画像記録ドラム52の用紙受取位置(処理液乾燥処理ドラム46から用紙Pを受け取る位置)の近傍に配設される。この用紙押さえローラ54は、ゴムローラで構成され、画像記録ドラム52の周面に押圧当接させて設置される。処理液乾燥処理ドラム46から画像記録ドラム52に受け渡された用紙Pは、この用紙押さえローラ54を通過することによりニップされ、画像記録ドラム52の周面に密着させられる。
【0116】
4台のインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、画像記録ドラム52による用紙Pの搬送経路に沿って一定の間隔をもって配置される。このインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、用紙幅に対応したラインヘッドで構成され、ノズル面が画像記録ドラム52の周面に対向するように配置される。各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、ノズル面に形成されたノズル列から、画像記録ドラム52に向けてインクの液滴を吐出することにより、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pに画像を記録する。
【0117】
なお、上記のように、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kから吐出させるインクは、水性UVインクが用いられる。水性UVインクは、打滴後に紫外線(UV)を照射することにより、硬化させることができる。
【0118】
インラインセンサ58は、画像記録ドラム52による用紙Pの搬送方向に対して、最後尾のインクジェットヘッド56Kの下流側に設置され、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kで記録された画像を読み取る。このインラインセンサ58は、たとえば、ラインスキャナで構成され、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pからインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kによって記録された画像を読み取る。
【0119】
なお、インラインセンサ58の下流側には、インラインセンサ58に近接して接触防止板59が設置される。この接触防止板59は、搬送の不具合等によって用紙Pに浮きが生じた場合に、用紙Pがインラインセンサ58に接触するのを防止する。
【0120】
ミストフィルタ60は、最後尾のインクジェットヘッド56Kとインラインセンサ58との間に配設され、画像記録ドラム52の周辺の空気を吸引してインクミストを捕捉する。このように、画像記録ドラム52の周辺の空気を吸引してインクミストを捕捉することにより、インラインセンサ58へのインクミストの進入を防止でき、読み取り不良等の発生を防止できる。
【0121】
ドラム冷却ユニット62は、画像記録ドラム52に冷風を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する。このドラム冷却ユニット62は、主として、エアーコンディショナー(図示せず)と、そのエアーコンディショナーから供給される冷気を画像記録ドラム52の周面に吹き当てるダクト62Aとで構成される。ダクト62Aは、画像記録ドラム52に対して、用紙Pの搬送領域以外の領域に冷気を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する。本例では、画像記録ドラム52のほぼ上側半分の円弧面に沿って用紙Pが搬送されるので、ダクト62Aは、画像記録ドラム52のほぼ下側半分の領域に冷気を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する構成とされている。具体的には、ダクト62Aの吹出口が、画像記録ドラム52のほぼ下側半分を覆うように円弧状に形成され、画像記録ドラム52のほぼ下側半分の領域に冷気が吹き当てられる構成とされている。
【0122】
ここで、画像記録ドラム52を冷却する温度は、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの温度(特にノズル面の温度)との関係で定まり、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの温度よりも低い温度となるように冷却される。これにより、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kに結露が生じるのを防止することができる。すなわち、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kよりも画像記録ドラム52の温度を低くすることにより、画像記録ドラム側に結露を誘発することができ、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kに生じる結露(特にノズル面に生じる結露)を防止することができる。
【0123】
画像記録部18は、以上のように構成される。処理液乾燥処理部16の処理液乾燥処理ドラム46から受け渡された用紙Pは、画像記録ドラム52で受け取られる。画像記録ドラム52は、用紙Pの先端をグリッパ52Aで把持して、回転することにより、用紙Pを搬送する。画像記録ドラム52に受け渡された用紙Pは、まず、用紙押さえローラ54を通過することにより、画像記録ドラム52の周面に密着される。これと同時に画像記録ドラム52の吸着穴から吸引されて、画像記録ドラム52の外周面上に吸着保持される。用紙Pは、この状態で搬送されて、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kを通過する。そして、その通過時に各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56KからC、M、Y、Kの各色のインクの液滴が表面に打滴されて、表面にカラー画像が描画される。用紙Pの表面にはインク凝集層が形成されているので、フェザリングやブリーディング等を起こすことなく、高品位な画像を記録することができる。
【0124】
インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kによって画像が記録された用紙Pは、次いで、インラインセンサ58を通過する。そして、そのインラインセンサ58の通過時に表面に記録された画像が読み取られる。この記録画像の読み取りは必要に応じて行われ、読み取られた画像から吐出不良等の検査が行われる。読み取りを行う際は、画像記録ドラム52に吸着保持された状態で読み取りが行われるので、高精度に読み取りを行うことができる。また、画像記録直後に読み取りが行われるので、たとえば、吐出不良等の異常を直ちに検出することができ、その対応を迅速に行うことができる。これにより、無駄な記録を防止できるとともに、損紙の発生を最小限に抑えることができる。
【0125】
この後、用紙Pは、吸着が解除された後、インク乾燥処理部20へと受け渡される。
【0126】
〈インク乾燥処理部〉
インク乾燥処理部20は、画像記録後の用紙Pを乾燥処理し、用紙Pの表面に残存する液体成分を除去する。インク乾燥処理部20は、画像が記録された用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pにバックテンションを付与するバックテンション付与機構66と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pを乾燥処理するインク乾燥処理ユニット68とで構成される。
【0127】
チェーングリッパ64は、インク乾燥処理部20、UV照射処理部22、排紙部24において共通して使用される用紙搬送機構であり、画像記録部18から受け渡された用紙Pを受け取って、排紙部24まで搬送する。
【0128】
このチェーングリッパ64は、主として、画像記録ドラム52に近接して設置される第1スプロケット64Aと、排紙部24に設置される第2スプロケット64Bと、第1スプロケット64Aと第2スプロケット64Bとに巻き掛けられる無端状のチェーン64Cと、チェーン64Cの走行をガイドする複数のチェーンガイド(図示せず)と、チェーン64Cに一定の間隔をもって取り付けられる複数のグリッパ64Dとで構成される。第1スプロケット64Aと、第2スプロケット64Bと、チェーン64Cと、チェーンガイドとは、それぞれ一対で構成され、用紙Pの幅方向の両側に配設される。グリッパ64Dは、一対で設けられるチェーン64Cに掛け渡されて設置される。
【0129】
第1スプロケット64Aは、画像記録ドラム52から受け渡される用紙Pをグリッパ64Dで受け取ることができるように、画像記録ドラム52に近接して設置される。この第1スプロケット64Aは、図示しない軸受に軸支されて、回転自在に設けられるとともに、図示しないモータが連結される。第1スプロケット64A及び第2スプロケット64Bに巻き掛けられるチェーン64Cは、このモータを駆動することにより走行する。
【0130】
第2スプロケット64Bは、画像記録ドラム52から受け取った用紙Pを排紙部24で回収できるように、排紙部24に設置される。すなわち、この第2スプロケット64Bの設置位置が、チェーングリッパ64による用紙Pの搬送経路の終端とされる。この第2スプロケット64Bは、図示しない軸受に軸支されて、回転自在に設けられる。
【0131】
チェーン64Cは、無端状に形成され、第1スプロケット64Aと第2スプロケット64Bとに巻き掛けられる。
【0132】
チェーンガイドは、所定位置に配置されて、チェーン64Cが所定の経路を走行するようにガイドする(即ち、用紙Pが所定の搬送経路を走行して搬送されるようにガイドする。)。本例のインクジェット記録装置10では、第2スプロケット64Bが第1スプロケット64Aよりも高い位置に配設される。このため、チェーン64Cが、途中で傾斜するような走行経路が形成される。具体的には、第1水平搬送経路70Aと、傾斜搬送経路70Bと、第2水平搬送経路70Cとで構成される。
【0133】
第1水平搬送経路70Aは、第1スプロケット64Aと同じ高さに設定され、第1スプロケット64Aに巻き掛けられたチェーン64Cが、水平に走行するように設定される。
【0134】
第2水平搬送経路70Cは、第2スプロケット64Bと同じ高さに設定され、第2スプロケット64Bに巻き掛けられたチェーン64Cが、水平に走行するように設定される。
【0135】
傾斜搬送経路70Bは、第1水平搬送経路70Aと第2水平搬送経路70Cとの間に設定され、第1水平搬送経路70Aと第2水平搬送経路70Cとの間を結ぶように設定される。
【0136】
チェーンガイドは、この第1水平搬送経路70Aと、傾斜搬送経路70Bと、第2水平搬送経路70Cとを形成するように配設される。具体的には、少なくとも第1水平搬送経路70Aと傾斜搬送経路70Bとの接合ポイント、及び、傾斜搬送経路70Bと第2水平搬送経路70Cとの接合ポイントに配設される。
【0137】
グリッパ64Dは、チェーン64Cに一定の間隔をもって複数取り付けられる。このグリッパ64Dの取り付け間隔は、画像記録ドラム52からの用紙Pの受け取り間隔に合わせて設定される。すなわち、画像記録ドラム52から順次受け渡される用紙Pをタイミングを合わせて画像記録ドラム52から受け取ることができるように、画像記録ドラム52からの用紙Pの受け取り間隔に合わせて設定される。
【0138】
チェーングリッパ64は、以上のように構成される。上記のように、第1スプロケット64Aに接続されたモータ(図示せず)を駆動すると、チェーン64Cが走行する。チェーン64Cは、画像記録ドラム52の周速度と同じ速度で走行する。また、画像記録ドラム52から受け渡される用紙Pが、各グリッパ64Dで受け取れるようにタイミングが合わせられる。
【0139】
バックテンション付与機構66は、チェーングリッパ64によって先端を把持されながら搬送される用紙Pにバックテンションを付与する。このバックテンション付与機構66は、主として、ガイドプレート72と、そのガイドプレート72に形成される吸引穴(図示せず)から空気を吸引する吸引機構(図示せず)とで構成される。
【0140】
ガイドプレート72は、用紙幅に対応した幅を有する中空状のボックスプレートで構成される。このガイドプレート72は、チェーングリッパ64による用紙Pの搬送経路(即ち、チェーンの走行経路)に沿って配設される。具体的には、第1水平搬送経路70Aと傾斜搬送経路70Bとを走行するチェーン64Cに沿って配設され、チェーン64Cから所定距離離間して配設される。チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pは、その裏面(画像が記録されていない側の面)が、このガイドプレート72の上面(チェーン64Cと対向する面:摺接面)の上を摺接しながら搬送される。
【0141】
ガイドプレート72の摺接面(上面)には、多数の吸引穴(図示せず)が所定のパターンで多数形成される。上記のように、ガイドプレート72は、中空のボックスプレートで形成される。吸引機構(図示せず)は、このガイドプレート72の中空部(内部)を吸引する。これにより、摺接面に形成された吸引穴から空気が吸引される。
【0142】
ガイドプレート72の吸引穴から空気が吸引されることにより、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pの裏面が吸引穴に吸引される。これにより、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pにバックテンションが付与される。
【0143】
上記のように、ガイドプレート72は、第1水平搬送経路70Aと傾斜搬送経路70Bとを走行するチェーン64Cに沿って配設されるので、第1水平搬送経路70Aと傾斜搬送経路70Bとを搬送されている間、バックテンションが付与される。
【0144】
インク乾燥処理ユニット68は、チェーングリッパ64の内部(特に第1水平搬送経路70Aを構成する部位)に設置され、第1水平搬送経路70Aを搬送される用紙Pに対して乾燥処理を施す。このインク乾燥処理ユニット68は、第1水平搬送経路70Aを搬送される用紙Pの表面に熱風を吹き当てて乾燥処理する。インク乾燥処理ユニット68は、第1水平搬送経路70Aに沿って複数台配置される。この設置数は、インク乾燥処理ユニット68の処理能力や用紙Pの搬送速度(印刷速度に等しい)等に応じて設定される。すなわち、画像記録部18から受け取った用紙Pが第1水平搬送経路70Aを搬送されている間に乾燥させることができるように設定される。したがって、第1水平搬送経路70Aの長さも、このインク乾燥処理ユニット68の能力を考慮して設定される。
【0145】
なお、乾燥処理を行うことにより、インク乾燥処理部20の湿度が上がる。湿度が上がると、効率よく乾燥処理することができなくなるので、インク乾燥処理部20には、インク乾燥処理ユニット68と共に排気手段を設置し、乾燥処理によって発生する湿り空気を強制的に排気することが好ましい。排気手段は、たとえば、排気ダクトをインク乾燥処理部20に設置し、この排気ダクトによってインク乾燥処理部20の空気を排気する構成とすることができる。
【0146】
インク乾燥処理部20は、以上のように構成される。画像記録部18の画像記録ドラム52から受け渡された用紙Pは、チェーングリッパ64で受け取られる。チェーングリッパ64は、用紙Pの先端をグリッパ64Dで把持して、平面状のガイドプレート72に沿わせて用紙Pを搬送する。チェーングリッパ64に受け渡された用紙Pは、まず、第1水平搬送経路70Aを搬送される。この第1水平搬送経路70Aを搬送される過程で用紙Pは、チェーングリッパ64の内部に設置されたインク乾燥処理ユニット68によって乾燥処理が施される。すなわち、表面(画像記録面)に熱風が吹き当てられて、乾燥処理が施される。この際、用紙Pは、バックテンション付与機構66によってバックテンションが付与されながら乾燥処理が施される。これにより、用紙Pの変形を抑えながら乾燥処理することができる。
【0147】
〈UV照射処理部〉
UV照射処理部22は、水性UVインクを用いて記録された画像に紫外線(UV)を照射して、画像を定着させる。このUV照射処理部22は、主として、乾燥処理された用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pにバックテンションを付与するバックテンション付与機構66と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pに紫外線を照射するUV照射ユニット74とで構成される。
【0148】
上記のように、チェーングリッパ64とバックテンション付与機構66は、インク乾燥処理部20及び排紙部24と共に共通して使用される。
【0149】
UV照射ユニット74は、チェーングリッパ64の内部(特に傾斜搬送経路70Bを構成する部位)に設置され、傾斜搬送経路70Bを搬送される用紙Pの表面に紫外線を照射する。このUV照射ユニット74は、紫外線ランプ(UVランプ)を備え、傾斜搬送経路70Bに沿って複数配設される。そして、傾斜搬送経路70Bを搬送される用紙Pの表面に向けて紫外線を照射する。このUV照射ユニット74の設置数は、用紙Pの搬送速度(印刷速度に等しい)等に応じて設定される。すなわち、用紙Pが傾斜搬送経路70Bを搬送されている間に照射した紫外線によって画像を定着させることができるように設定される。したがって、傾斜搬送経路70Bの長さも、この用紙Pの搬送速度等を考慮して設定される。
【0150】
UV照射処理部22は、以上のように構成される。チェーングリッパ64に搬送されてインク乾燥処理部20で乾燥処理が施された用紙Pは、次いで、傾斜搬送経路70Bを搬送される。この傾斜搬送経路70Bを搬送される過程で用紙Pは、チェーングリッパ64の内部に設置されたUV照射ユニット74によりUV照射処理が施される。すなわち、UV照射ユニット74から表面に向けて紫外線が照射される。この際、用紙Pは、バックテンション付与機構66によってバックテンションが付与されながらUV照射処理が施される。これにより、用紙Pの変形を抑えながらUV照射処理を施すことができる。また、UV照射処理部22は、傾斜搬送経路70Bに設置されており、傾斜搬送経路70Bには傾斜したガイドプレート72が設置されているため、たとえ、用紙Pが搬送途中でグリッパ64Dから落下した場合であっても、ガイドプレート72上を滑らせて排出させることができる。
【0151】
〈排紙部〉
排紙部24は、一連の画像記録処理が行われた用紙Pを回収する。この排紙部24は、主として、UV照射された用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、用紙Pを積み重ねて回収する排紙台76とで構成される。
【0152】
上記のように、チェーングリッパ64は、インク乾燥処理部20及びUV照射処理部22と共に共通して使用される。チェーングリッパ64は、排紙台76の上で用紙Pを開放し、排紙台76の上に用紙Pをスタックさせる。
【0153】
排紙台76は、チェーングリッパ64から開放された用紙Pを積み重ねて回収する。この排紙台76には、用紙Pが整然と積み重ねられるように、用紙当て(前用紙当て、後用紙当て、横用紙当て等)が備えられる(図示せず)。
【0154】
また、排紙台76は、図示しない排紙台昇降装置によって昇降可能に設けられる。排紙台昇降装置は、排紙台76にスタックされる用紙Pの増減に連動して、その駆動が制御され、最上位に位置する用紙Pが常に一定の高さに位置するように、排紙台76を昇降させる。
【0155】
〈用紙搬送装置の構成〉
以上のように構成されたインクジェット記録装置10において、少なくとも処理液付与ドラム42、処理液乾燥処理ドラム46、画像記録ドラム52を含んだ搬送経路が、用紙搬送装置に相当する。
【0156】
図18は、図17と反対側の側面部を示す構成図であり、給紙ドラム40、処理液付与ドラム42、処理液乾燥処理ドラム46、及び画像記録ドラム52(複数の搬送胴の一例)の回転駆動機構を示している。同図に示すように、インクジェット記録装置10は、給紙ドラム40の回転軸と同軸に直結された歯車(ギア)90、処理液付与ドラム42の回転軸と同軸に直結された歯車92、処理液乾燥処理ドラム46の回転軸と同軸に直結された歯車94、画像記録ドラム52の回転軸と同軸に直結された歯車96を備えている。
【0157】
各歯車90〜96の直径は、それぞれ直結されている給紙ドラム40、処理液付与ドラム42、処理液乾燥処理ドラム46、画像記録ドラム52の直径と同一に形成されている。本例では、給紙ドラム40及び処理液付与ドラム42の半径はr、処理液乾燥処理ドラム46及び画像記録ドラム52の半径はrとなっている。このr、r、は、r=2×rの関係(互いに整数倍の関係の一例)を有している。
【0158】
また、歯車90は歯車92と噛み合っている。さらに、歯車92は歯車94と噛み合い、歯車94は歯車96と噛み合っている。また、給紙ドラム40と処理液付与ドラム42との軸間距離は2×r、処理液付与ドラム42と処理液乾燥処理ドラム46との軸間距離はr+rに設定されている。また、処理液乾燥処理ドラム46と画像記録ドラム52との軸間距離は、歯車96を転位させることにより、駆動比を維持したままr+r−dに設定されている。
【0159】
インクジェット記録装置10は、用紙搬送系の動力源としての回転用モータ(不図示)が設けられている。この回転用モータの動力は、歯車90,92,94,96の順に伝達され、これら歯車90,92,94,96の連動によって、給紙ドラム40,処理液付与ドラム42,処理液乾燥処理ドラム46,画像記録ドラム52が回転する。本例の場合、給紙ドラム40が2回転すると、処理液付与ドラム42が2回転、処理液乾燥処理ドラム46及び画像記録ドラム52が1回転する。
【0160】
このように構成された用紙搬送経路において、給紙ドラム40のグリッパ40A、処理液付与ドラム42のグリッパ42A、処理液乾燥処理ドラム46のグリッパ46Aは、それぞれドラムの外周面上に配置されているため、用紙Pの先端部の軌跡は連続し、グリッパを介した用紙Pの受け渡しが用紙変形を発生させずに行われる。
【0161】
また、画像記録ドラム52のグリッパ52Aは、画像記録ドラム52の外周面から距離dだけ内側に配置されているが、処理液乾燥処理ドラム46と画像記録ドラム52との軸間距離がr+r−dに設定されているため、処理液乾燥処理ドラム46のグリッパ46Aと画像記録ドラム52のグリッパ52Aは、用紙Pの受け渡し位置において同一直線上に並ぶ。したがって、用紙Pの先端部の軌跡は連続し、グリッパを介した用紙Pの受け渡しが用紙変形を発生させずに行われる。
【0162】
このように、インクジェット記録装置10によれば、画像記録ドラムのグリッパを画像記録ドラムの内側に入り込ませるように配置したことで、高精細なインクジェット印字が可能となる。また、用紙歪みを小さく抑えることができ、画像記録ドラムへの用紙の密着性を上げることができ、高精細なインクジェット印字が可能となる。さらに、画像記録ドラムとその前段のドラムの軸間距離を、画像記録ドラムのグリッパを外周面から内側に配置した分だけ画像記録ドラムの歯車を転位させることで駆動比を維持したまま短くし、それ以外のドラムの軸間距離をそれぞれのドラムの半径の和としたことで、画像記録ドラム以外のグリッパをドラムの外周面上に配置することができ、安定な搬送が可能となる。
【0163】
本発明の技術的範囲は、上記の実施形態に記載の範囲には限定されない。各実施形態における構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各実施形態間で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0164】
10…インクジェット記録装置、40…給紙ドラム、42…処理液付与ドラム、46…処理液乾燥処理ドラム、52…画像記録ドラム、90,92,94,96,118,120,122,124,126,128,130…歯車、100,200…用紙搬送装置、102,106,110…渡し胴、104…処理胴、108…印字胴、102A,104A,106A,108A,110A…グリッパ、112…回転用モータ、114…タイミングベルト、116…プーリ
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