特許第5980704号(P5980704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980704
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   H01L21/304 648L
   H01L21/304 651B
   H01L21/304 643A
   H01L21/304 648H
   H01L21/304 651H
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-53618(P2013-53618)
(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公開番号】特開2014-179525(P2014-179525A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2015年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】伊 藤 規 宏
【審査官】 井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−224514(JP,A)
【文献】 特開2012−195444(JP,A)
【文献】 特開2010−040818(JP,A)
【文献】 特開2004−296661(JP,A)
【文献】 特開2009−218376(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0194801(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平姿勢で保持する基板保持部と、
前記基板保持部を鉛直軸線周りに回転させる回転駆動部と、
前記基板に処理液を供給する処理液ノズルと、
前記基板保持部に保持された基板の周囲を囲んで処理液を回収する、上部が開放されたカップ体と、
前記基板保持部、前記ノズルおよび前記カップ体が収容される内部空間を有するハウジングと、
前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に第1清浄ガスを供給する第1ガス供給部と、
前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に、前記第1清浄ガスよりも湿度及び酸素濃度のうちの少なくともいずれかが低い第2清浄ガスを供給する第2ガス供給部と、
前記カップ体の内部の雰囲気を排気するためのカップ排気路と、
を備えた基板処理装置を用いて実行される基板処理方法であって、
前記カップ体の内部の雰囲気を排気し、かつ、前記基板を回転させながら、回転する前記基板に前記処理液を供給して、前記基板に所定の液処理を施す液処理工程と、
前記カップ体の内部の雰囲気を排気し、かつ、前記基板を回転させながら、前記液処理が施された基板を乾燥させる乾燥工程と、
を備え、
前記液処理工程が開始された後から所定時間が経過した第1の時点までは、前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に第1清浄ガスが供給され、
前記第1の時点において前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に供給されるガスが前記第1清浄ガスから前記第2清浄ガスに切り替えられ、
前記第1の時点から、前記乾燥工程において前記基板の表面の少なくとも一部において前記基板の表面を覆う液膜が消失して当該一部が露出し始める第2の時点に至るまでの第1の期間内に、前記ハウジングの内部空間内に形成される前記第2清浄ガスの流れモードが少なくとも一回変化するように、前記第2ガス供給部の動作状態を変化させ、
前記第2ガス供給部は、前記第2ガスの吐出方向を変化させることができる可動のガスノズルを有しており、前記流れモードを変化させることは、前記ガスノズルからの前記第2ガスの吐出方向を変化させることにより行われる、基板処理方法。
【請求項2】
前記第2清浄ガスの流れモードとして、前記基板の真上から前記基板に向かって流れる前記第2清浄ガスのダウンフローが支配的な第1の流れモードと、前記ダウンフローとは異なる前記第2清浄ガスの流れの割合が前記第1の流れモードより高くなる第2の流れモードとがあり、
前記第1の期間において、前記第2の流れモードによる前記第2清浄ガスの流れが少なくとも一回実現される、請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記第1の期間において、前記第1及び第2の流れモードによる前記第2清浄ガスの流れが少なくとも各一回ずつ実現される、請求項2記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記第2の時点より後の第2の期間において、前記第1の流れモードによる前記第2清浄ガスの流れが実現される、請求項2または3記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記液処理工程は、薬液を基板に供給する薬液処理工程と、前記薬液処理工程の後にリンス液を基板に供給するリンス処理工程とを含むとともに、前記リンス処理工程が終了すると前記乾燥工程が開始され、
前記乾燥工程において、前記リンス液と混和性があり、前記リンス液よりも揮発性が高く、かつ前記リンス液より表面張力が低い有機溶剤が基板に供給されることにより、前記リンス液が前記有機溶剤に置換されて、前記基板の表面が前記有機溶剤の液膜に覆われ、その後、この液膜が消失して前記基板が乾燥する、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記リンス工程中に前記第1の時点が設定される、請求項5記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記第1清浄ガスは、前記第1ガス供給部としてのファンフィルタユニットを介して供給される濾過されたクリーンルーム内の空気であり、前記第2清浄ガスは、ドライエアまたは窒素ガスである、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
基板を水平姿勢で保持する基板保持部と、
前記基板保持部を鉛直軸線周りに回転させる回転駆動部と、
前記基板に処理液を供給する処理液ノズルと、
前記基板保持部に保持された基板の周囲を囲んで処理液を回収する、上部が開放されたカップ体と、
前記基板保持部、前記ノズルおよび前記カップ体が収容される内部空間を有するハウジングと、
前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に第1清浄ガスを供給する第1ガス供給部と、
前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に、前記第1清浄ガスよりも湿度及び酸素濃度のうちの少なくともいずれかが低い第2清浄ガスを供給する第2ガス供給部と、
前記カップ体の内部の雰囲気を排気するためのカップ排気路と、
を備えた基板処理装置を用いて実行される基板処理方法であって、
前記カップ体の内部の雰囲気を排気し、かつ、前記基板を回転させながら、回転する前記基板に前記処理液を供給して、前記基板に所定の液処理を施す液処理工程と、
前記カップ体の内部の雰囲気を排気し、かつ、前記基板を回転させながら、前記液処理が施された基板を乾燥させる乾燥工程と、
を備え、
前記液処理工程が開始された後から所定時間が経過した第1の時点までは、前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に第1清浄ガスが供給され、
前記第1の時点において前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に供給されるガスが前記第1清浄ガスから前記第2清浄ガスに切り替えられ、
前記第1の時点から、前記乾燥工程において前記基板の表面の少なくとも一部において前記基板の表面を覆う液膜が消失して当該一部が露出し始める第2の時点に至るまでの第1の期間内に、前記ハウジングの内部空間内に形成される前記第2清浄ガスの流れモードが少なくとも一回変化するように、前記第2ガス供給部の動作状態を変化させ、
前記第2ガス供給部は、各々が独立して第2ガスを吐出する複数のガスノズルを有しており、前記流れモードを変化させることは、前記複数のガスノズルのうちの少なくとも1つのからの第2ガスの吐出流量を変化させることにより行われる、基板処理方法。
【請求項9】
前記基板処理装置は、前記ハウジングの上部に設けられ、前記第1清浄ガスを供給するための前記第1ガス供給部としてのファンフィルタユニットと、前記ファンフィルタユニットの下方に設けられ、前記ファンフィルタユニットから供給される第1ガスを整流して下方に導く、複数の貫通穴を有する整流板と、をさらに備えており、前記複数のガスノズルは、前記ファンフィルタユニットと前記整流板との間の空間に設けられている、請求項記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記基板処理装置は、前記ハウジングの上部に設けられ、前記第1清浄ガスを供給するための前記第1ガス供給部としてのファンフィルタユニットと、前記ファンフィルタユニットの下方に設けられ、前記ファンフィルタユニットから供給される第1ガスを整流して下方に導く、複数の貫通穴を有する整流板と、をさらに備えており、前記複数のガスノズルのうちの少なくとも一つは、前記ファンフィルタユニットと前記整流板との間の空間に設けられており、少なくとも他の一つは前記整流板の下方に設けられている、請求項記載の基板処理方法。
【請求項11】
基板処理装置において、
基板を水平姿勢で保持する基板保持部と、
前記基板保持部を鉛直軸線周りに回転させる回転駆動部と、
前記基板に処理液を供給する処理液ノズルと、
前記基板保持部に保持された基板の周囲を囲んで処理液を回収する、上部が開放されたカップ体と、
前記基板保持部、前記ノズルおよび前記カップ体が収容される内部空間を有するハウジングと、
前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に第1清浄ガスを供給する第1ガス供給部と、
前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に、前記第1清浄ガスよりも湿度及び酸素濃度のうちの少なくともいずれかが低い第2清浄ガスを供給する第2ガス供給部と、
前記カップ体の内部の雰囲気を排気するためのカップ排気路と、
この基板処理装置の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記カップ体の内部の雰囲気を排気し、かつ、前記基板を回転させながら、回転する前記基板に前記処理液を供給して、前記基板に所定の液処理を施す液処理工程と、
前記カップ体の内部の雰囲気を排気し、かつ、前記基板を回転させながら、前記液処理が施された基板を乾燥させる乾燥工程と、
を実行するにあたって、
前記液処理工程が開始された後から所定時間が経過した第1の時点までは、前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に第1清浄ガスが供給され、
前記第1の時点において前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に供給されるガスが前記第1清浄ガスから前記第2清浄ガスに切り替えられ、
前記第1の時点から、前記乾燥工程において前記基板の表面の少なくとも一部において前記基板の表面を覆う液膜が消失して当該一部が露出し始める第2の時点に至るまでの第1の期間内に、前記ハウジングの内部空間内に形成される前記第2清浄ガスの流れモードが少なくとも一回変化する
ように、前記第2ガス供給部の動作状態を変化させるように前記第1および第2ガス供給部の動作を制御し、
前記第2ガス供給部は、前記第2ガスの吐出方向を変化させることができる可動のガスノズルを有しており、前記流れモードを変化させることは、前記ガスノズルからの前記第2ガスの吐出方向を変化させることにより行われる、基板処理装置。
【請求項12】
基板処理装置において、
基板を水平姿勢で保持する基板保持部と、
前記基板保持部を鉛直軸線周りに回転させる回転駆動部と、
前記基板に処理液を供給する処理液ノズルと、
前記基板保持部に保持された基板の周囲を囲んで処理液を回収する、上部が開放されたカップ体と、
前記基板保持部、前記ノズルおよび前記カップ体が収容される内部空間を有するハウジングと、
前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に第1清浄ガスを供給する第1ガス供給部と、
前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に、前記第1清浄ガスよりも湿度及び酸素濃度のうちの少なくともいずれかが低い第2清浄ガスを供給する第2ガス供給部と、
前記カップ体の内部の雰囲気を排気するためのカップ排気路と、
この基板処理装置の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記カップ体の内部の雰囲気を排気し、かつ、前記基板を回転させながら、回転する前記基板に前記処理液を供給して、前記基板に所定の液処理を施す液処理工程と、
前記カップ体の内部の雰囲気を排気し、かつ、前記基板を回転させながら、前記液処理が施された基板を乾燥させる乾燥工程と、
を実行するにあたって、
前記液処理工程が開始された後から所定時間が経過した第1の時点までは、前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に第1清浄ガスが供給され、
前記第1の時点において前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に供給されるガスが前記第1清浄ガスから前記第2清浄ガスに切り替えられ、
前記第1の時点から、前記乾燥工程において前記基板の表面の少なくとも一部において前記基板の表面を覆う液膜が消失して当該一部が露出し始める第2の時点に至るまでの第1の期間内に、前記ハウジングの内部空間内に形成される前記第2清浄ガスの流れモードが少なくとも一回変化する
ように、前記第2ガス供給部の動作状態を変化させるように前記第1および第2ガス供給部の動作を制御し、
前記第2ガス供給部は、各々が独立して第2ガスを吐出する複数のガスノズルを有しており、前記流れモードを変化させることは、前記複数のガスノズルのうちの少なくとも1つのからの第2ガスの吐出流量を変化させることにより行われる、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置のハウジングの内部空間の雰囲気を置換する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造のための一連の処理には、半導体ウエハ等の基板に処理液(例えば薬液)を供給することにより行われる液処理(例えば洗浄処理)が含まれる。処理液を供給する液処理の後には、処理液を除去するために基板にリンス液を供給するリンス処理が施され、その後、基板に乾燥処理が施される。
【0003】
このような処理を行う基板処理装置の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1の装置では、ウエハの疎水性を増大させる薬液を用いた液処理の後にウエハを乾燥するときにハウジングの内部空間にドライエアを供給し、それ以外のときにはFFUによる清浄エアを供給することにより、高価で除湿装置に負担をかけるドライエアの使用量を削減している。
【0004】
ドライエアの生成コストはFFUによる清浄エアと比較して高価である。また、除湿装置のドライエア生成能力は有限であり、一台の基板処理装置が一処理あたりに使用できるドライエア量にも制限がある。窒素ガスはドライエアよりもさらに高価である。従って、ドライエアまたは窒素ガスの使用量を可能な限り削減したいという要求がある。
【0005】
また、遅くともウエハの表面が乾燥して表面が露出する時点においては、ウエハの周囲の雰囲気の湿度は十分に低くなっていなければならない。さもなければ、ウエハ表面に結露が生じてウォーターマークひいてはパーティクルが発生するおそれがあるからである。このため、ウエハの周辺雰囲気をFFUによる清浄エア雰囲気からドライエア雰囲気または窒素ガス雰囲気に迅速に置換する要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−263485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、少ないドライガスの供給流量で基板上面近傍の雰囲気を効率良く置換する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、基板を水平姿勢で保持する基板保持部と、前記基板保持部を鉛直軸線周りに回転させる回転駆動部と、前記基板に処理液を供給する処理液ノズルと、前記基板保持部に保持された基板の周囲を囲んで処理液を回収する、上部が開放されたカップ体と、前記基板保持部、前記ノズルおよび前記カップ体が収容される内部空間を有するハウジングと、前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に第1清浄ガスを供給する第1ガス供給部と、前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に、前記第1清浄ガスよりも湿度及び酸素濃度のうちの少なくともいずれかが低い第2清浄ガスを供給する第2ガス供給部と、前記カップ体の内部の雰囲気を排気するためのカップ排気路と、を備えた基板処理装置を用いて実行される基板処理方法であって、前記カップ体の内部の雰囲気を排気し、かつ、前記基板を回転させながら、回転する前記基板に前記処理液を供給して、前記基板に所定の液処理を施す液処理工程と、前記カップ体の内部の雰囲気を排気し、かつ、前記基板を回転させながら、前記液処理が施された基板を乾燥させる乾燥工程と、を備え、前記液処理工程が開始された後から所定時間が経過した第1の時点までは、前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に第1清浄ガスが供給され、前記第1の時点において前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に供給されるガスが前記第1清浄ガスから前記第2清浄ガスに切り替えられ、前記第1の時点から、前記乾燥工程において前記基板の表面の少なくとも一部において前記基板の表面を覆う液膜が消失して当該一部が露出し始める第2の時点に至るまでの第1の期間内に、前記ハウジングの内部空間内に形成される前記第2清浄ガスの流れモードが少なくとも一回変化するように、前記第2ガス供給部の動作状態を変化させることを特徴とする基板処理方法が提供される。
【0009】
また、本発明の他の実施形態によれば、基板処理装置において、基板を水平姿勢で保持する基板保持部と、前記基板保持部を鉛直軸線周りに回転させる回転駆動部と、前記基板に処理液を供給する処理液ノズルと、前記基板保持部に保持された基板の周囲を囲んで処理液を回収する、上部が開放されたカップ体と、前記基板保持部、前記ノズルおよび前記カップ体が収容される内部空間を有するハウジングと、前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に第1清浄ガスを供給する第1ガス供給部と、前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に、前記第1清浄ガスよりも湿度及び酸素濃度のうちの少なくともいずれかが低い第2清浄ガスを供給する第2ガス供給部と、前記カップ体の内部の雰囲気を排気するためのカップ排気路と、この基板処理装置の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記カップ体の内部の雰囲気を排気し、かつ、前記基板を回転させながら、回転する前記基板に前記処理液を供給して、前記基板に所定の液処理を施す液処理工程と、前記カップ体の内部の雰囲気を排気し、かつ、前記基板を回転させながら、前記液処理が施された基板を乾燥させる乾燥工程と、を実行するにあたって、前記液処理工程が開始された後から所定時間が経過した第1の時点までは、前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に第1清浄ガスが供給され、前記第1の時点において前記ハウジングの内部空間の前記カップ体の上方の領域に供給されるガスが前記第1清浄ガスから前記第2清浄ガスに切り替えられ、前記第1の時点から、前記乾燥工程において前記基板の表面の少なくとも一部において前記基板の表面を覆う液膜が消失して当該一部が露出し始める第2の時点に至るまでの第1の期間内に、前記ハウジングの内部空間内に形成される前記第2清浄ガスの流れモードが少なくとも一回変化するように、前記第2ガス供給部の動作状態を変化させるように前記第1および第2ガス供給部の動作を制御することを特徴とする基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1の期間内に、ハウジングの内部空間内に形成される第2の清浄ガスの流れモードが少なくとも一回変化させることにより、ハウジング内の雰囲気を攪拌することができ、これにより、高コストな低湿度ガスである第2清浄ガスの使用を抑制しつつ、効率良くハウジング内の雰囲気を置換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る基板処理装置の全体構成を示す概略図である。
図2】ガスノズルの構成を概略的に示す断面図である。
図3図1に示す整流板に形成された貫通穴について説明する平面図である。
図4】ハウジングの雰囲気置換が行われる時の手順を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して発明の実施形態について説明する。図1に示すように、基板処理装置は、半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」と呼ぶ)を水平姿勢で保持する基板保持部10を有している。基板保持部10は、円板状のベース12とベース12に取り付けられた複数(例えば3つ)のチャック爪14とを有しており、ウエハW周縁部の複数箇所を前記チャック爪14により保持するメカニカルスピンチャックとして形成されている。ベース12には、外部の搬送アームとの間でウエハWの受け渡しを行う際に、ウエハの下面を支持して持ち上げるリフトピン16を有する図示しないプレートが組み込まれている。基板保持部10は、電動モータを有する回転駆動部18よって回転させることができ、これにより、基板保持部10により保持されたウエハWを鉛直方向軸線周りに回転させることができる。ベース12には、支柱19を介して、円環状の回転カップ20が取り付けられている。回転カップ20は、その内周面により、回転するウエハに供給された後にウエハから振り切られて飛散する処理液を受け止めて、処理液を回収するために設けられた後述するカップ体30に案内する。
【0013】
カップ体30は、最も外側に位置する不動の環状の第1カップ31と、その内側に位置する昇降可能な環状の第2カップ32と、さらにその内側に位置する昇降可能な環状の第3カップ33と、さらにその内側に位置する不動の内壁34とを有している。第2カップ32及び第3カップ33は、図1に概略的に示したそれぞれの昇降機構32A、33Aにより昇降する。第1カップ31と第2カップ32との間には第1流路311が形成され、第2カップ32と第3カップ33との間には第2流路321が形成され、第3カップ33と内壁34との間には第3流路331が形成される。カップ体30の底部には、第1流路311、第2流路321及び第3流路331に連通するカップ排気口35が形成されている。
【0014】
カップ排気口35には、カップ排気路36が接続されている。カップ排気路36には、流量調整弁37、例えばバタフライ弁が介設されている。カップ排気路36のさらに下流側には、カップ排気路36を酸性雰囲気排気ライン81、アルカリ性雰囲気排気ライン82または有機雰囲気排気ライン83に選択的に接続する切替弁40が設けられている。
【0015】
第1流路311、第2流路321及び第3流路331の各々の途中に屈曲部が設けられており、屈曲部で急激に向きを変えられることにより各流路を流れる気液混合流体から液体成分が分離される。分離された液体成分は、第1流路311に対応する液受け312、第2流路321に対応する液受け322、及び第3流路331に対応する液受け332内に落下する。液受け312、322、332は、それぞれに対応する排液口313、323、333を介して、工場の酸性液体廃液系、アルカリ性液体廃液系、有機液体廃液系(いずれも図示せず)に接続されている。
【0016】
基板処理装置はさらに、基板保持部10に保持されて回転するウエハWに向けて処理液を吐出(供給)する複数の処理液ノズルを備えている。本例では、酸性洗浄液(例えばDHF(希フッ酸))を吐出する酸性薬液ノズル51と、アルカリ性洗浄液(例えばSC−1)を吐出するアルカリ性薬液ノズル52と、リンス液(例えばDIW(純水))を吐出するリンス液ノズル53とが設けられている。また乾燥促進液(例えばIPA(イソプロピルアルコール))を供給する乾燥促進液ノズル54が設けられている。各ノズルには、処理液供給源に接続されるとともに開閉弁及び流量調整弁等の流量調整器が介設された処理液供給路を備えた図示しない処理液供給機構から、それぞれの処理液が供給される。
【0017】
基板保持部10及びカップ体30は、ハウジング60内に収容されている。ハウジング60の天井には、ファンフィルタユニット(FFU)70が設けられている。FFU70は、クリーンルーム内の空気を取り入れるためのファン71と、取り入れた空気を濾過するためのフィルタ72、具体的にはULPAフィルタが設けられている。このFFU70のダクト73内において、ファン71の下流側であってかつフィルタ72の上流側に、当該ダクト73中の通気を遮断することができるダンパ74が設けられている。
【0018】
ハウジング60の天井の下方には、多数の貫通穴76が形成された整流板75が設けられている。整流板75は、FFU70から下方に吹き出された清浄エア(CA)が、ハウジング60内の全体に流れるように整流する。ハウジング60の天井と整流板75との間の空間77には、当該空間77に窒素ガスまたはドライエアを吐出するガスノズル78が設けられている。ガスノズル78には、ガス供給源79A(窒素ガスボンベまたはドライエア生成装置)に接続されるとともに開閉弁及び流量調整弁等の流量調整器が介設されたガス供給路を備えたガス供給機構79Bから、窒素ガスまたはドライエアが供給される。ガスノズル78から吐出された気体は空間77内で拡散した後に、整流板75の貫通穴76を通って下方に向けて吐出される。なお、ドライエアは低湿度雰囲気が必要な場合に用いられ、窒素ガスは低湿度及び低酸素濃度雰囲気が必要な場合に用いられる。
【0019】
図2に示すように、ガスノズル78は、長手方向に沿って複数のガス吐出口78bを有する細長い管状部材78aにより構成されている。ガスノズル78には、このガスノズル78を長手方向軸線周りに回転させるための回転駆動機構78cが設けられている。すなわち、回転駆動機構78cを駆動することにより、ガスノズル78から吐出するドライエアの吐出方向を変化させることができる。ガスノズル78から吐出するドライエアの吐出方向を変化させることにより、空間77内の気流分布および圧力分布が変化するので、整流板75から下方に向けて吐出される気流の分布を変化させることができる。なお、図2には、回転駆動機構78cがサーボモーター(M)とプーリー/ベルト伝動機構により構成され、ガス供給機構79Bとガスノズル78とがフレキシブルチューブにより接続されている例を概略的に示したが、ガスノズル78およびその周辺部品の構成はこれに限定されるものではない。
【0020】
図3(a)は、貫通穴76の配置を説明するための図であって、整流板75を上方から見た概略平面図である。図3(a)において、符号Weで示す円は基板保持部10に保持されたウエハWの外周縁を示しており、符号Ceで示す円はカップ体30の第1カップ31の上面開口の輪郭を示している。図3(a)にその一部のみが概略的に示されている貫通穴76は、その中心が正方格子状に、すなわちX方向及びY方向に同じピッチで並んでいる。基板保持部10に保持されたウエハWの中心部に対応する領域を符号A1で示し、その外側の領域を符号A2で示している。ウエハWが12インチウエハであるとした場合、領域A1は例えば直径62mmの円形の領域である。領域A2は、その内周縁の直径が62mmでその外周縁の直径が200mmの領域A1の外側のリング状の領域である。領域A3は領域A2の外側の全領域である。貫通穴76の直径は領域A1で最大であり、領域A2、A3の順に小さくなる。単位面積当たりの開口率は、領域A1が最大であり、A2、A3の順に小さくなる。
【0021】
ウエハW中央部に対向する領域において整流板75の開口率を増すことにより、図3(b)に示すように、ウエハW中央部に向かう強いダウンフローが生じ、この流れはカップ体30内に引き込まれる気流にあまり影響を受けることなくウエハWに到達する。このため、パーティクルが発生することを防止することができる。
【0022】
ハウジング60の下部(具体的には少なくともカップ体30の上部開口部より低い位置)であって、かつ、カップ体30の外部には、ハウジング60内の雰囲気を排気するためのハウジング排気口62が設けられている。ハウジング排気口62には、ハウジング排気路64が接続されている。ハウジング排気路64には、流量調整弁66例えばバタフライ弁が設けられている。ハウジング排気路64は、カップ排気路36の経路上で流量調整弁37と切替弁40の間に接続されている。なお、本明細書において、以下、記載の簡略化のため、カップ排気口35を介して行われる排気を「カップ排気」、ハウジング排気口62を介して行われる排気を「ハウジング排気」とも呼ぶこととする。
【0023】
図1に概略的に示すように、基板処理装置は、その全体の動作を統括制御するコントローラ(制御部)100を有している。コントローラ100は、基板処理装置の全ての機能部品(例えば、回転駆動部18、第2及び第3カップ32、33の昇降機構32A、33A、図示しない処理液供給機構、流量調整弁37、66、切替弁40、FFU70、図示しないガス供給機構等)の動作を制御する。コントローラ100は、ハードウエアとして例えば汎用コンピュータと、ソフトウエアとして当該コンピュータを動作させるためのプログラム(装置制御プログラムおよび処理レシピ等)とにより実現することができる。ソフトウエアは、コンピュータに固定的に設けられたハードディスクドライブ等の記憶媒体に格納されるか、あるいはCD−ROM、DVD、フラッシュメモリ等の着脱可能にコンピュータにセットされる記憶媒体に格納される。このような記憶媒体が図1において参照符号101で示されている。プロセッサ102は必要に応じて図示しないユーザーインターフェースからの指示等に基づいて所定の処理レシピを記憶媒体101から呼び出して実行させ、これによってコントローラ100の制御の下で基板処理装置の各機能部品が動作して所定の処理が行われる。
【0024】
次に、上記コントローラ100の制御の下で行われる基板処理装置の動作について説明する。なお、以下の説明において、ガスノズル78から供給されるガスはドライエアであるものとする。
【0025】
[酸性薬液洗浄処理]
ウエハWが基板保持部10により保持され、回転駆動部18によりウエハWが回転する。この回転するウエハWには、処理液として、酸性薬液ノズル51から酸性薬液例えばDHFが供給され、ウエハWに酸性薬液洗浄処理が施される。酸性薬液は遠心力によりウエハWから振り切られ、回転カップ20に受け止められる。このとき、第2カップ32及び第3カップ33が下降位置に位置しており、酸性薬液は第1カップ31と第2カップと32との間の第1流路311を通って流れる。
【0026】
このときFFU70のダンパ74は開状態であり、ファン71が回転している。従って、整流板75の貫通穴76から清浄エアが下方のウエハに向かって流れている。すなわち、ハウジング6の内部空間の整流板75の下方には清浄エアのダウンフローが形成されている。
【0027】
また、このとき、切替弁40はカップ排気路36と酸性雰囲気排気ライン81とを連通させている。従って、ウエハWの上方の空間に存在するガス(この場合ダウンフローを形成する清浄エア)は、第1カップ31の上部開口を介してカップ体30内に流入し、第1カップ31と第2カップと32との間の第1流路311を通って流れ、カップ排気口35から排出され、カップ排気路36及び切替弁40を通って酸性雰囲気排気ライン81に流れる。ウエハWの上方の空間に酸性薬液ミスト(微小液滴)を含む酸性薬液雰囲気(処理液雰囲気)が存在していても、このような酸性薬液雰囲気はカップ排気口35から排出されるので、ウエハWの上方の空間(詳細には、第1カップ31の上部開口の真上の内側空間A4)に滞留することはない。このため、滞留した処理液雰囲気が次工程に影響を与えること及びハウジング内壁を汚染することが防止されるか、或いは最小限に抑制される。
【0028】
なお、酸性薬液は、第1流路311を通って液受け312に落下する。液受け312に落ちた酸性薬液は、排液口313を介してカップ体30内から排出される。
【0029】
また、ハウジング60の内部空間のカップ30の周辺の空間に存在するガス(詳細には、第1カップ31の上部開口よりも外側領域の真上の外側空間A5)に存在するガス、及び当該空間に近い位置にある空間に存在するガスの一部)がハウジング排気口62から排出され、ハウジング排気路64及び切替弁40を通って酸性雰囲気排気ライン81に流れる。従って、カップ排気口から排出できないカップ周辺の空間に酸性薬液蒸気または酸性薬液ミストを含む酸性薬液雰囲気が存在していても、このような酸性薬液雰囲気は、カップ30の周辺の空間に滞留することはない。このため、滞留した処理液雰囲気が次工程に影響を与えること及びハウジング内壁を汚染することが防止または大幅に抑制される。
【0030】
[第1リンス処理]
次に、ウエハWの回転を継続したまま、酸性薬液ノズル51からの酸性薬液の吐出を停止し、代わりに、リンス液ノズル53から、処理液として、リンス液例えばDIWをウエハWに供給する。これによりウエハW上に残留する酸性薬液及び残渣が洗い流される。このリンス処理は、上記の点のみが酸性薬液洗浄処理と異なり、その他の点(ガス、処理液等の流れ)は酸性薬液洗浄処理と同じである。
【0031】
[アルカリ性薬液洗浄処理]
次に、ウエハWの回転を継続したまま、リンス液ノズル53からのリンス液の吐出を停止し、第3カップ33を下降位置に維持したまま第2カップ32を上昇位置に移動させ、切替弁40を切り替えてカップ排気路36とアルカリ性雰囲気排気ライン82とを連通させる。次いで、ウエハWに、処理液として、アルカリ性薬液ノズル52からアルカリ性洗浄液例えばSC−1がウエハに供給され、ウエハWにアルカリ性薬液洗浄処理が施される。このアルカリ性薬液洗浄処理は、ガス及びアルカリ性薬液の排出経路が酸性薬液洗浄処理と異なり、他の点については酸性薬液洗浄処理と同じである。
【0032】
すなわち、ウエハWの上方の空間にあるガスは、第1カップ31の上部開口を介してカップ体30内に流入した後、第2カップ32と第3カップ33との間の第2流路321を通って流れ、カップ排気口35から排出され、カップ排気路36及び切替弁40を通ってアルカリ性雰囲気排気ライン82に流れる。ウエハWから飛散した薬液は、第2流路321を通って流れ、液受け322に落下し、排液口323を介してカップ体30内から排出される。ハウジング60の内部空間のカップ30の周辺の空間に存在するガスは、ハウジング排気口62から排出され、ハウジング排気路64及び切替弁40を通ってアルカリ性雰囲気排気ライン82に流れる。ハウジング60の内部空間に処理液雰囲気の滞留が生じることを防止または大幅に抑制される点も、酸性薬液洗浄処理と同じである。
【0033】
[第2リンス処理]
次に、ウエハWの回転を継続したまま、アルカリ性薬液ノズル52からのアルカリ性薬液の吐出を停止し、代わりに、リンス液ノズル53から、リンス液をウエハWに供給する。これによりウエハW上に残留するアルカリ性薬液及び残渣が洗い流される。この第2リンス処理は、ガス及び処理液(リンス液)の排出経路が第1リンス処理と異なり、他の点については第1リンス処理と同じである。
【0034】
[乾燥処理]
次に、ウエハWの回転を継続したまま、リンス液ノズル53からのリンス液の吐出を停止し、第2カップ32を上昇位置に維持したまま第3カップ33を上昇位置に移動させ(このときに図1に示す状態となる)、切替弁40を切り替えてカップ排気路36と有機雰囲気排気ライン83とを連通させる。これとほぼ同時に、ウエハWの中心部の真上に位置する乾燥促進液ノズル54からIPAがウエハWの中心部に向けて吐出される。これによりウエハWの表面上にあるDIWがIPAに置換されてゆき、ウエハWの表面全体がIPAの液膜に覆われるようになる。その後、乾燥促進液ノズル54はウエハWの周縁部に向かって移動し(スキャン動作)、IPAのウエハWに対する供給位置も周縁部に向かって移動する。乾燥促進液ノズル54がウエハWの周縁部に到達したら、ウエハWの回転を継続したまま、乾燥促進液ノズル54からのIPAの吐出を停止する。その後、ウエハWの回転が所定時間継続され、ウエハWの表面全体が乾燥したらウエハWの回転が停止される。
【0035】
上記の乾燥促進液ノズル54のウエハWの周縁部へ向けた移動に伴い、IPAの供給位置よりも半径方向内側領域においてウエハW表面にあるIPAが乾燥してウエハW表面が周辺雰囲気に露出し、露出領域はウエハW周縁部に向けて広がってゆき、最終的にはウエハWの表面全体が乾燥して周辺雰囲気に露出する。
【0036】
乾燥処理が行われているときには、FFU70のダンパは閉状態であり、ファン71が停止している。整流板75の貫通穴76からは、FFU70により供給される清浄エアの代わりに、ガスノズル78から吐出された低湿度のドライエアが下方のウエハWに向かって流れる。このドライエアのダウンフローは、第1カップ31の上部開口を介してカップ体30内に流入し、第3カップ31と内壁34との間の第3流路331を通って流れ、カップ排気口35から排出され、カップ排気路36及び切替弁40を通って有機雰囲気排気ライン83に流れる。従って、ウエハWの上方の空間を低湿度雰囲気することができる。このとき、流量調整弁66を制御することによって、後に詳述するようにハウジング排気の流量は液処理時よりも小さく(例えば液処理時の10分の1)されるか、あるいはゼロとされる。
【0037】
なお、IPAは、第3流路331を通って液受け332に落下する。液受け332に落ちた酸性薬液は、排液口333を介してカップ体30内から排出される。
【0038】
乾燥処理が終了したら、ガスノズル78からのドライエアの吐出が停止され、ダンパ74が開かれてFFU70のファン71が起動される。これとほぼ同時に、流量調整弁66の開度がもとに戻され、ハウジング排気の流量を、液処理時と同じにする。また、切替弁40を切り替えてカップ排気路36と酸性雰囲気排気ライン81とを連通させる。この状態で、処理済みのウエハWが図示しない搬送アームによりハウジング60外に搬出され、次いで、次に処理されるウエハWが図示しない搬送アームによりハウジング60内に搬入され、基板処理部10により保持される。このように、ウエハWの搬出入時には、ハウジング60内にFFU70から供給された清浄エアのダウンフローが形成され、液処理時と同様のカップ排気及びハウジング排気が行われる。以上により、1枚のウエハWに対する一連の処理が終了する。
【0039】
次に、各工程におけるハウジング60及びカップ30内の雰囲気及び気流について詳述する。薬液(酸性薬液、アルカリ性薬液)の雰囲気がハウジングの内部空間に滞留すると、滞留した薬液雰囲気がその後の工程(アルカリ性薬液洗浄処理、乾燥処理)に影響を与えること及びハウジング内壁を汚染するという問題がある。このため、薬液処理(酸性薬液洗浄処理及びアルカリ性薬液洗浄処理)を行うときには、FFU70により比較的大流量(例えば1200リットル/分)で清浄エアを供給し、清浄エアの供給流量に概ね対応する流量、例えば、カップ排気(カップ排気口35を通る排気)の流量が1000リットル/分、ハウジング排気(ハウジング排気口62を通る排気)の流量が200リットル/分で排気を行っている。このように比較的大流量の清浄エアの流れをカップ体30内に引き込むことにより、ウエハWから飛散した後にカップ体30の壁面に衝突することによりミスト化された薬液がウエハWに向かって逆流することが大幅に抑制される。また、ミスト化または気化した薬液が、ハウジング60の内部空間のカップ30の周辺の空間からウエハWの上方の空間に侵入したとしても、そのような薬液は、カップ内に引き込まれる清浄エアの流れに乗って、直ちにカップ内に引き込まれる。また、ハウジング排気に乗って、ハウジング60内の領域A5に対応する空間内に存在するミスト化または気化した薬液が、ハウジング60内から排出される。ここでハウジング排気の流量をあまり大きくすると、このハウジング排気口62に向かう気流にウエハWに向かう清浄エアのダウンフローが引きずられ、最も重要なウエハWの真上の気流が乱されるおそれがあるため、ハウジング排気の流量はカップ排気の流量より小さくしている。
【0040】
乾燥処理を行う際には、ハウジング60の外部の空間内の湿度の高い(あるいはハウジング60の内部空間の空気と比較においてパーティクル含有量の高い)空気がハウジング60の内部空間に流入しないように、ハウジング60の内部空間の圧力はハウジング60の外部の空間内の圧力と等しいか僅かに高いことが好ましい。すなわち、いずれの場合においても、ハウジング60の内部空間の圧力は、ハウジング60の外部の空間(クリーンルームの雰囲気)内の圧力と概ね等しいことが好ましい。このため、整流板75の貫通穴76から吐出されるガスの流量と、カップ排気及びハウジング排気の総流量とがほぼ同じである必要がある。
【0041】
薬液処理(酸性薬液洗浄処理及びアルカリ性薬液洗浄処理)の後のリンス処理(第1リンス処理、第2リンス処理)においては、前工程の薬液雰囲気が徐々に清浄化されてゆく。遅くともリンス処理の終了時点において、次工程(アルカリ性薬液洗浄処理、乾燥処理)に悪影響が無い程度にハウジング60内の雰囲気が清浄化されればよい。本実施形態では、第1リンス処理の開始から終了までの間におけるFFU70からの清浄エアの吐出流量、ハウジング排気の排気流量及びカップ排気の排気流量を、酸性薬液洗浄処理の時と同じにしている。また、第2リンス処理の開始時点から所定時間経過時点(後述の第1の時点)までの間におけるFFU70からの清浄エアの吐出流量、ハウジング排気の排気流量及びカップ排気の排気流量を、酸性薬液洗浄処理及びアルカリ性薬液洗浄処理の時と同じにしている。
【0042】
乾燥処理を行う際には、(条件1)IPAの吐出が開始された後、遅くともウエハ表面の少なくとも一部においてIPAの液膜が消失して当該一部が周辺雰囲気に露出し始める時点(第2の時点t2)には、ウエハWの周辺がドライエアの雰囲気に置換されて十分に低い湿度になっていることが好ましい。さもなければ、露出したウエハWの表面に結露が生じ、ウォーターマークひいてはパーティクル発生のおそれがあるからである。なお、(条件2)IPAの吐出が開始される時点において、ウエハWの周辺雰囲気の湿度が十分に低くなっていることがより好ましい。IPA中に雰囲気の水分が取り込まれることを抑制して、ウエハW上に残存するDIWの置換効率を向上させるためである。以下においては、条件1を満たすことを前提として説明を行うが、より厳しい条件である条件2を満たすようにしてもよい。乾燥処理の前工程である第2リンス処理時には、ハウジング60内はFFUからの清浄エアの雰囲気で満たされているため、これを低湿度のドライエアの雰囲気に置換する必要がある。
【0043】
ガスノズル78からのドライエアの吐出流量を薬液処理時のFFUからの清浄エアの供給流量と同等にし、ハウジング排気の排気流量及びカップ排気の排気流量も薬液処理時と同等にすることにより、清浄エア雰囲気からドライエア雰囲気への置換を比較的迅速に行うことができる。しかしながら、先に背景技術の項で述べたように、ドライエアは高価であり供給量にも制限がある。このため、ドライエアの使用量を削減しつつ、効率よく雰囲気の置換を行うことが求められる。これを実現するための手順について、図4も参照して以下に説明する。
【0044】
図4は、第2リンス処理の途中から乾燥処理の途中までの期間の各構成要素の動作をグラフ化して示したものである。最上段はリンス液ノズル53からのDIWの吐出状態を示しており、OFFが非吐出、ONが吐出を意味している。その1つ下の段は乾燥促進液ノズル(IPAノズル)54からのIPAの吐出状態を示しており、OFFが非吐出、ONが吐出を意味している。その1つ下の段は乾燥促進液ノズル(IPAノズル)54の位置を示しており、Cがウエハ中心の真上、Eがウエハ周縁の真上を意味している。その1つ下の段はFFU70の動作状態を示しており、OFFが停止、ONが作動(清浄エア供給)を意味している。その1つ下の段はカップ排気(カップ排気口35を介して行われる排気)の状態を示しており、OFFが停止、H高流量排気、Lが低流量排気をそれぞれ意味している。その1つ1つ下の段はハウジング排気(ハウジング排気口62を介して行われる排気)の状態を示しており、OFFが停止、ONが作動を意味している。
【0045】
図4に示すように、乾燥処理の直前の処理である第2リンス処理中の適当な時点(第1の時点t1)で、ハウジング60内に供給されるガスが、FFU70からの清浄エアから、ガスノズル78からのドライエアに切り替えられる。すなわち、FFU70のファン71が停止され、続いてダンパ74が閉じられる。その後直ちに、標準位置(図1において矢印で示すように斜め上方にドライエアを吐出する回転位置)にあるガスノズル78からドライエアが吐出される。この、第1の時点t1におけるガスの切り替えは、ハウジング60内のアルカリ薬液雰囲気(第2リンス処理の前工程の雰囲気)がハウジング60内から十分に除去されていることを前提として行われる。ガスノズル78からのドライエアの吐出流量は、ドライエアの使用量の削減を意図して比較的小さい値、例えば500リットル/分に設定され、供給ガスの切り替え前におけるFFU70からの清浄エアの供給流量(例えば1200リットル/分)よりもかなり小さい。また、前述したように、カップ排気及びハウジング排気の総流量は、ドライエアの吐出流量とほぼ同じ値にしなければならないため、供給ガスの切り替え前における1200リットル/分から500リットル/分まで減少させる。ここで、供給ガスの切り替え時にはハウジング60内は十分に清浄となっているので、ハウジング排気の排気流量は小さくしても構わない。従って、ハウジング排気の排気流量は、供給ガスの切り替え前における200リットル/分よりも小さい値、ここでは例えばゼロとされる。従って、カップ排気の排気流量は、供給ガスの切り替え前における1000リットル/分から、ドライエアの吐出流量と同じ値である500リットル/分に低減される。カップ排気及びハウジング排気の流量の調整は、流量調整弁37及び流量調整弁66の開度をそれぞれ調整することにより行われる。なお、このときのハウジング排気の排気流量はゼロに限定されるものではなく、FFU70稼働時よりも低い値、例えばFFU70稼働時の1/10程度の小流量としてもかまわない。
【0046】
この状態では、図3(b)で示したFFU70からの清浄エアのダウンフローと類似する形態(但し流速は小さい)のドライエアのダウンフローがハウジング60内に形成される。このとき、カップ排気が行われているため、ウエハWの真上の雰囲気はドライエアのダウンフローと一緒にカップ内に引き込まれてゆく。しかし、内側空間A4(第1カップ31の上面開口の真上の空間)内におけるダウンフローの流速は小さく、内側空間A4内にあるガスは、カップ排気により生じるカップ30内への吸引力により低速でカップ内に引き込まれてゆくだけである。このため、内側空間A4内でのガスの置換の進行は遅い。また、内側空間A4においては、その外側の外側空間A5内に高湿度ガス(FFU70からの清浄エア)が残存していると、この残存する高湿度ガスが内側空間A4に引き込まれてそこを流れるドライエアのダウンフローと混ざるので、ウエハWの上面近傍、特に外側空間A5に比較的近いウエハW周縁部の近傍空間の湿度が、ガスノズル78から吐出されるドライエアの湿度と同程度まで低くならない。
【0047】
上記問題を解決するため、本実施形態では、第1の時点t1(ダウンフローガスを清浄エアからドライエアに切り替えた時点)から第2の時点t2(IPAが乾燥することにより少なくともウエハWの表面の少なくとも一部が周辺雰囲気に露出し始める時点)までの間の期間(第1の期間TP1)において、ハウジング60内に形成されるドライエアの流れの態様(流れモード)を少なくとも一回変化させている。なお、本実施形態においてウエハWの表面の少なくとも一部が周辺雰囲気に露出し始める時点(第2の時点t2)とは、図4に示すように、IPAを吐出している乾燥促進液ノズル54が、ウエハWの中心の真上からウエハ周縁に向けて移動を開始した少し後の時点であり、このとき、ウエハWの中心部が周辺雰囲気に露出する。
【0048】
上記の流れモードの変化は、前記標準位置(このとき主たる流れモードである第1の流れモードが実現される)にあるガスノズル78を回転させて、ガスノズル78からのドライエアの吐出方向を変化(例えば斜め下向きへの吐出に変化)させることにより実現することができる。こうすることにより、第1流れモードにおいて支配的であったウエハWの真上の整流板75からウエハWに向かうダウンフロー(図3(c)を参照)の流量及び流速は低下するが、その代わりに、それまでにガスの流れが無かったか殆ど無かったハウジング60内の外側空間A5内の領域(澱み領域)にも流れが生じ、ハウジング60内の雰囲気が攪拌される(第2の流れモード)。これにより澱み領域に残存していた高湿度の清浄エアの少なくとも一部がウエハ上方の空間に向かって流れて、カップ30内に吸引され易くなる。これによりハウジング60内の雰囲気の置換が促進される。上記第1の期間TP1内において、第1の流れモード及び第2の流れモードは少なくとも各一回ずつ実現されればよいが、それ以上の回数実現してもよい。
【0049】
ウエハ表面の少なくとも一部が周辺雰囲気に露出し始める時点である第2の時点t2において、少なくともウエハWの上面近傍において低湿度のドライエア雰囲気への置換が完了しているので(言い換えれば、そのようになるようにドライエア供給能力および排気能力を考慮して乾燥促進液ノズル54の動作タイミングが設定されているので)、第2の時点t2以降では第1の流れモードを継続的に実施することが好ましい。第1の流れモードが実現されているときに、ウエハWの上方にあるガスが設計意図通りにカップ体30内にスムースに流入し、かつ、一旦カップ内に流入したガスの吹き返しが最も生じ難いからである。
【0050】
上記の実施形態によれば、上記第1の期間TP1内において流れモードを少なくとも一度変化させることにより、ハウジング内で澱んでいる雰囲気を攪拌することができる。これによって、プロセス性能(プロセス結果)に影響を及ぼすことなく、製造に多くの用力が必要でかつ製造コストの高いドライエアの使用量を削減できる。さらに、ウエハ上面近傍の雰囲気を迅速に置換することができる。なお、ドライエアに代えて窒素ガスを用いた場合にも、高価な窒素ガスの使用量を削減しつつ、ウエハ上面近傍の雰囲気を迅速に置換することができるという同様の効果が得られる。
【0051】
上記の実施形態においては、1つのガスノズル78を回転してガスノズル78からのドライエアの吹き出し方向を変化させることにより、整流板75の貫通穴76から下方に吹き出すドライエアの分布、すなわち流れモードを変化させたが、これに限定されるものではない。
【0052】
例えば、整流板75の上方の空間77内においてガスノズル78と反対側の位置にガスノズル78’(図1中に一点鎖線で示す)を追加してもよい。この場合、ガスノズル78、78’は、吐出角度変更可能(回転可能)であってもよいし、そうでなくてもよい。この場合、これらガスノズル78、78’のうちの少なくとも一方からの第2ガスの吐出流量を変化させることにより、空間内の圧力分布が変化するので、これにより流れモードを変化させることができる。具体的には例えば、第1の流れモードを実現するときには、ガスノズル78及び78’から同流量(例えば、それぞれ250リットル/分の流量)でドライエアを吐出し、第2の流れモードを実現するときには、ガスノズル78及び78’のうちのいずれか一方の流量を減少させ(0にしてもよい)、他方の流量を増加させることができる。なお、ガスノズルの数をさらに増やしても構わない。
【0053】
また、ガスノズルを複数設ける場合、ガスノズルの配置位置は整流板75の上方に限定されるものではない。例えば、整流板75の上方に1つまたは複数のガスノズル78、78’ (図1中に一点鎖線で示す)を、整流板75の下方に1つまたは複数のガスノズル78” (図1中に一点鎖線で示す)をそれぞれ設けてもよい。この場合は、特に整流板75の下方にあるガスノズル78”により第2の流れモードを実現することにより、ハウジング60内の雰囲気を効率良く攪拌することができ、雰囲気置換効率を向上させることができる。また、この場合、第1の流れモードを実現する場合には、例えば、整流板75の上方にあるガスノズル78(78’)からドライエアを吐出すればよい。なお、各ガスノズル78,78’、78”は吐出角度変更可能であってもよいし、そうでなくてもよい。
【0054】
また、上記の実施形態では、ドライエアの流れモードが第1の流れモード及び第2の流れモードの2つであったが、さらに別の流れモードを設定してもよい。また、第1の期間TP1において、第1の流れモード(図3(b)に示すような整流板75の領域A1からウエハWに向かうダウンフローが支配的な流れモード)を実現することは必須ではない。2種類以上の流れモードが実現され、ある一つの流れモードにて澱みが生じているハウジング60内の領域に他の流れモードで流れが生じれば十分である。
【0055】
また、上記の実施形態では、ガスノズル78から吐出されるドライエアの流量が、FFU70から供給される清浄エアの流量より小さかったが、これに限定されるものではない。例えば、ドライエア流量が清浄エア流量と同じであってもよく、この場合も、流れモードを変えることによって清浄エア雰囲気からからドライエア雰囲気への置換を促進することができる。
【0056】
また、上記の実施形態では、基板処理装置が、ウエハから飛散する処理液を受け止める手段として、回転カップ20とその外側の回転しないカップ体30とを有しているが、基板処理装置に回転カップ20が無い場合にも上記実施形態の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0057】
W 基板(ウエハ)
10 基板保持部
18 回転駆動部
30カップ体
36 カップ排気路
51〜54 処理液ノズル
60 ハウジング
70、78 清浄ガス供給装置(FFU、ガスノズル)
100 制御部(コントローラ)
図1
図2
図3
図4